(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694974
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】衝突を回避するために電子駐車ブレーキを利用して車両にブレーキをかけるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20200511BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20200511BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B60T8/00 C
B60T13/74 G
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-563017(P2018-563017)
(86)(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公表番号】特表2019-520254(P2019-520254A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017062961
(87)【国際公開番号】WO2017220292
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】15/187,911
(32)【優先日】2016年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】パリック,サミアー
【審査官】
的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0187217(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009029456(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00−21/13
21/34−21/38
B60T 7/12−8/1769
8/32−8/96
13/00−13/74
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にブレーキをかけるための方法であって、前記方法は、
第1の電子プロセッサによって、前記車両が衝突する可能性があるか否かを判定することと、
前記第1の電子プロセッサによって、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を判定することと、
第2の電子プロセッサによって、電子駐車ブレーキが既に起動されているか否かを判定することと、
前記電子駐車ブレーキが起動され、前記車両が前記衝突する可能性があると判定することに応じて、前記第2の電子プロセッサによって、前記電子駐車ブレーキを制御することにより、前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量と前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量との比較に基づいた前記車両の減速量を提供することと、を備える、方法。
【請求項2】
前記電子駐車ブレーキを制御することは、前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量及び前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を評価することと、
前記車両の減速量を提供するように前記電子駐車ブレーキを作動させることであって、前記車両の減速量は、前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量と前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量との比較についての評価に基づいている、ことと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両が衝突する可能性があるか否かを判定することは、前方センサからの距離データを受け取ることと、前記距離データを評価することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記車両が衝突する可能性があると判定することに応じて、前記車両の電子駐車ブレーキを自動的に作動させることを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
車両にブレーキをかけるためのシステムであって、前記システムは、
近接センサに通信可能に結合された衝突回避制御装置であって、前記車両が衝突する可能性があるか否かを判定すること及び第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を判定することを行うように構成された衝突回避制御装置と、
前記衝突回避制御装置に通信可能に結合されたブレーキシステム制御装置であって、電子駐車ブレーキが既に起動されているか否かを判定することと、前記電子駐車ブレーキが起動されているとき及び前記車両が前記衝突する可能性があるときに応じて、前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量と前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量との比較に基づいた前記車両の減速量を提供するように前記電子駐車ブレーキを制御することと、を行うように構成されたブレーキシステム制御装置と、を備える、システム。
【請求項6】
前記ブレーキシステム制御装置は、
前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量及び前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を評価することと、
前記車両の減速量を提供するように前記電子駐車ブレーキを作動させることであって、前記車両の減速量は、前記電子駐車ブレーキの予定された最大減速量と前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量との比較についての前記評価に基づいている、ことと、を行うように更に構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ブレーキシステム制御装置が有する第2の電子プロセッサによって実行される命令は、前記車両が衝突する可能性があるとき、前記車両の電子駐車ブレーキを自動的に作動させるための命令を更に含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の物体は、第2の車両、建物、樹木、及び歩行者からなる群から選択された少なくとも1 つのものを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記近接センサは、レーザ距離計センサ、レーダセンサ、及び超音波センサからなる群から選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量は、前記第1の物体との衝突を回避するのに必要な理想的な減速量である、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電子駐車ブレーキを利用して車両にブレーキをかけるための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、駐車ブレーキは、機械的に制御される。最近では、電子駐車ブレーキ(EPB)が導入されている。電子駐車ブレーキは、静的及び動的の2つのモードで構成されてもよい。静的モードは、(例えば、丘の上に駐車する際に)車両を停止状態に保持するために駐車ブレーキを適用するという従来の使用事例をカバーする。動的モードは、車両が動いている間に、駐車ブレーキを作動させることを含む。電子駐車ブレーキ以外に、センサを使用して車両の衝突を防止する様々なドライバ支援システム(例えば、自動緊急ブレーキ(AEB)システム)がある。AEBシステムは、切迫した衝突の存在を判定して、車両のステアリング及び/又はブレーキ操作を制御することにより、切迫した衝突の影響を回避又は減少させる。
【発明の概要】
【0003】
緊急の又はエスカレートした運転状況において、ドライバがEPBを起動させる場合、ブレーキ操作は、通常、車両の電子安定性制御(ESC)モジュールによって制御される。一旦、ESCモジュールがEPBを介して起動されると、ESCモジュールは、車両の所定の減速プロファイルを実行する。しかし、いくつかのエスカレートした運転状況においては、車両の所定の減速プロファイルは、切迫した衝突の影響を回避するのに十分な減速を提供しない。
【0004】
いくつかの実施形態は、AEBシステムがECSモジュールに、EPB操作の所定の減速プロファイルよりも大きい減速を実行することを要求する場合に、ESCモジュールがそのように実行する方法及びシステムを提供する。特定の実施形態は、ESCモジュールが、EPBの所定の減速の最大減速と、AEBシステムの最大減速との間で、制御される減速を調整し得る方法及びシステムを提供する。
【0005】
1つの実施形態が、車両にブレーキをかけるための方法を提供する。方法は、第1の電子プロセッサによって、車両が衝突状態にあるのか非衝突状態にあるのかを判定することを含む。方法は、また、第1の電子プロセッサによって、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を判定することを含む。方法は、また、第2の電子プロセッサによって、電子駐車ブレーキが既に起動されているか否かについて判定することを含む。電子駐車ブレーキが起動され、車両が衝突状態にあると判定することに応じて、方法は、また、第2の電子プロセッサによって、電子駐車ブレーキを制御することにより、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量及び電子駐車ブレーキの予定された最大減速量に基づいた車両の減速量を提供することを含む。
【0006】
別の実施形態が、車両にブレーキをかけるためのシステムを提供する。システムは、衝突防止制御装置を含み、この装置は、近接センサに通信可能に結合されて、車両が衝突状態にあるか非衝突状態にあるかを判定するように構成されている。衝突防止制御装置は、また、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を判定するように構成されている。システムは、また、ブレーキシステム制御装置を含み、この装置は、衝突防止制御装置に通信可能に結合されて、電子駐車ブレーキが既に起動されているか否かを判定するように構成されている。電子駐車ブレーキが起動されているとき、及び車両が衝突状態にあるときに応じて、ブレーキシステム制御装置は、また、電子駐車ブレーキを制御することにより、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量及び電子駐車ブレーキの予定された最大減速量に基づいた車両の減速量を提供するように構成されている。
【0007】
本発明の別の態様及び実施形態が、詳細な説明及び添付図面の考察によって明かになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両にブレーキをかけるためのシステムを概略的に示す。
【
図2】
図1のシステムの衝突回避制御装置を概略的に示す。
【
図3】
図1のシステムのブレーキシステム制御装置を概略的に示す。
【
図4】
図1のシステムを使用して車両にブレーキをかけるための方法を示すフローチャートである。
【
図5】いくつかの実施形態に従う、車両のブレーキ操作を制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、それ自体の適用において、以下の説明で述べられるか又は以下の図面に例示される構成の詳細及び構成要素の配列に限定されないことを理解すべきである。本発明は、別の実施形態が可能であり、そして、様々な態様で実践又は実行されることが可能である。
【0010】
また、複数のハードウェア及びソフトウェアベースの装置、並びに複数の様々な構造的構成要素が、本発明を実装するために使用されてもよいことが留意されるべきである。更に、本発明の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、及び議論のために構成要素の大部分が単にハードウェアにだけ実装されるかのように例示及び説明されることがある電子構成要素又はモジュールを含んでもよい。しかし、当業者であれば、本詳細な説明を読むことに基づいて、少なくとも1つの実施形態において、本発明の電子ベースの態様が、1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な(例えば、非一過性コンピュータ可読媒体に記憶された)ソフトウェアに実装されてもよいことを認識するであろう。このように、複数のハードウェア及びソフトウェアベースの装置、並びに複数の様々な構造的構成要素が、本発明を実装するために利用されてもよいことに留意されるべきである。
【0011】
図1は、車両12にブレーキをかけるためのシステム10を示す。
図1に示す例では、システム10は、衝突回避制御装置14と、電子安定性制御(「ESC」)モジュール16と、を含む。衝突回避制御装置14及び電子安定性制御モジュール16の全部又は部分は、公知の制御装置及び/又はソフトウェアを使用して実装されてもよい。いくつか実施形態では、衝突回避制御装置14は、ESCモジュール16の内部に含まれる。
【0012】
システム10は、また、車両と車両を囲む物体との間の距離を判定するための1つ又は複数のセンサを含む。提供した例では、システム10は、車両と車両10の前にある物体との間の距離を感知する前方センサ18を含む。前方センサ18は、1つ又は複数の超音波センサ、レーダセンサ、レーザ距離計、又は付近を感知できる別のセンサを使用して実装されてもよい。前方センサ18が、図示した例に含まれているけれども、後ろ向きセンサ、又は車両12の別の位置に設置された1つ又は複数のセンサが使用されてもよい。システム10は、また、複数の車両センサ20を含む。複数の車両センサ20は、車両12の様々な状態を感知するためのセンサを含む。例えば、複数のセンサ20は、車輪速度、加速度、ブレーキ圧力、ステアリング角又は車両軌跡、及び別の車両状態を感知してもよい。複数のセンサ20は、車両12全体にわたって様々な及び/又は追加の位置に設置されてもよく、
図1に示す位置に限定されない。
【0013】
システム10は、複数のブレーキ22を含む。示した実施形態では、ブレーキ22のそれぞれは、車両12の1つの車輪23と関連している。いくつかの実施形態では、ブレーキ22は、油圧ブレーキ22である。システム10は、より少数の又は追加の前方センサ18、ブレーキ22、追加の若しくは別の構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、衝突回避制御装置14は、ESCモジュール16に含まれる。
【0014】
システム10内の構成要素は、様々な有線接続を使用して相互に通信可能に接続されてもよい。場合によっては、構成要素の全部又は一部は、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス又は類似の通信バスに接続される。いくつかの例では、近距離無線通信(NFC)又は別の類似のプロトコルを使用して実装される無線接続が、使用されてもよい。
【0015】
衝突回避制御装置14は、第1の電子プロセッサ24(例えば、マイクロプロセッサ又は別の好適なデバイス)と、第1のメモリ26と、第1の入出力インタフェース28と、を含む。第1の電子プロセッサ24と、第1のメモリ26と、第1の入出力インタフェース28とは、1つ又は複数の制御又はデータ接続又はバスを介して通信する。第1の電子プロセッサ24は、第1のメモリ26から、本明細書で説明された制御手順及び方法に関連した命令を取り出すように構成されている。第1の電子プロセッサ24は、また、第1のメモリ26に記憶された命令を実行するように構成されている。
【0016】
第1のメモリ26は、非一過性のコンピュータ可読媒体の例であって、例えば、プログラム記憶領域と、(例えば、距離データを記憶するための)データ記憶領域と、を含んでもよい。プログラム記憶領域及びデータ記憶領域は、読取り専用メモリ(「ROM」)及びランダムアクセスメモリ(「RAM」)等の様々なタイプのメモリの組合せを含んでもよい。ソフトウェアは、ファームウェア、1つ又は複数のアプリケーション、プログラムデータ、フィルタ、ルール、1つ又は複数のプログラムモジュール、及び別の実行可能命令を含んでもよい。例えば、ソフトウェアは、車両にブレーキをかけるための命令、及びそのための関連するデータを含んでもよい。
【0017】
第1の入出力インタフェース28は、衝突回避制御装置14(及びそれの構成要素)と様々な入出力装置との間に通信リンクを提供する。例えば、衝突回避制御装置14は、第1の入出力インタフェース28を通して前方センサ18と通信する。一実施形態では、衝突回避制御装置14は、第1の入出力インタフェース28を通して複数のセンサ20及び/又はESCモジュール16と通信する。
【0018】
一実施形態では、衝突回避制御装置14、より具体的には、第1の電子プロセッサ24は、本明細書で説明された方法に従って、第1のメモリ26に記憶された命令を実行することにより車両についての衝突回避分析を行う。以下で更に詳細に説明するように、衝突回避制御装置14が命令を実行することにより、もはや回避できない物体への切迫した衝突を判定して、切迫した衝突の影響を回避又は低減するように車両ブレーキ操作を行ってもよい。
【0019】
図1に示した例では、ESCモジュール16は、ブレーキシステム制御装置30と、電子駐車ブレーキ31と、を含む。
図3への参照によってわかるように、ブレーキシステム制御装置30は、第2の電子プロセッサ32(例えば、マイクロプロセッサ又は別の好適なデバイス)と、第2のメモリ34と、第2の入出力インタフェース36と、を含む。第2の電子プロセッサ32と、第2のメモリ34と、第2の入出力インタフェース36とは、1つ又は複数の制御又はデータ接続又はバスを介して通信する。第2の電子プロセッサ32、第2のメモリ34、及び第2の入出力インタフェース36についての基本動作及び多数の変動は、本明細書で説明された別の電子プロセッサ、メモリ、及び入出力インタフェースに関して説明されたものと同様である。したがって、これらの態様についての更なる詳細は、明かに、特定の実施形態において、第2の電子プロセッサ32が、例えば、第2のメモリ34に記憶されたコンピュータ可読命令(「ソフトウェア」)を実行すると注記する以外のものを提供しない。
【0020】
ブレーキシステム制御装置30、より具体的には、第2の電子プロセッサ32は、第2のメモリ34に記憶された命令を実行して車両ブレーキ操作を行う。いくつかの実施形態では、ブレーキシステム制御装置30は、車両12のブレーキ22のうちの1つ又は複数を作動させることによって、駐車ブレーキ機能を実行するか、又は電子駐車ブレーキとして作用する。ブレーキシステム制御装置30は、1つ又は複数のブレーキ22を対称的に作動させる(例えば、一組のブレーキ22を一様に作動させる)か、又は非対称的に作動させてもよい(例えば、ブレーキのうちの1つを別のブレーキよりも大きく作動させてもよい)。いくつかの実施形態では、電子駐車ブレーキ31が起動されると、ブレーキシステム制御装置30は、予定されたブレーキ操作プロファイルに従って、ブレーキ22のうちの1つ又は複数を作動させる。
【0021】
図4は、車両にブレーキをかけるための1つの方法50を示す。方法50は、(ブロック52において)、衝突回避制御装置14の第1の電子プロセッサ24によって、車両12が衝突状態にあるか非衝突状態にあるかを判定することを含む。衝突回避制御装置14は、前方センサ18からの距離データ、及び、例えばセンサ20のうちの1つからの車両速度データを用いることにより、衝突の可能性を判定してもよい。車両12は、回避制御装置14が、車両12と物体(例えば、第1の物体)との間に衝突が生じる可能性があると判定したとき、衝突状態にあると見なされる。車両12は、回避制御装置14が、車両12と第1の物体との間に衝突が生じる可能性が低いと判定したとき、非衝突状態にあると見なされる。
【0022】
方法50は、また、(ブロック54において)衝突回避制御装置14の第1の電子プロセッサ24によって、第1の物体との衝突を回避するのに必要な減速量を決定することを含む。衝突回避制御装置14は、前方センサ18からの距離データ、センサ20のうちの1つ又は複数から収集された速度データ、車両の現在の軌跡、あるいはこれらの組合せを使用して、この判定を行う。
【0023】
方法50のブロック56では、ブレーキシステム制御装置30の第2の電子プロセッサ32が、電子駐車ブレーキ31が既に起動されているか否かを判定する。この判定は、例えば、起動入力が第2の入出力インタフェース36を介して既に受け取られているか否かに基づいてなされてもよい。起動入力は、例えば、車両12のドライバが、車両12の車室内にある電子駐車ブレーキボタンを押圧したときに受け取られてもよい。ブレーキシステム制御装置30は、また、電子駐車ブレーキ31が起動されたことを、複数のセンサ20によって収集された車両データ、例えば、車両12の速度が有意な割合で減少しているか否かに基づいて判定してもよい。
【0024】
電子駐車ブレーキ31が起動された場合、ブレーキシステム制御装置30は、電子駐車ブレーキ31のブレーキ操作プロファイル(例えば、予定された最大減速量)に従って、車両12のブレーキ操作を作動させる。
【0025】
(ブロック58において)車両12の電子駐車ブレーキ31が起動されたこと、及び車両12が衝突状態にあることを判定することに応じて、第2の電子プロセッサ32は、電子駐車ブレーキ31を制御することにより車両12の追加の減速量を提供する。第2の電子プロセッサ32は、物体との切迫した衝突を回避するのに必要な減速量、及び電子駐車ブレーキ31の予定された最大減速量に基づいて、電子駐車ブレーキ31によって提供される車両12の減速量を制御する。
【0026】
言い換えると、ブレーキシステム制御装置30は、電子駐車ブレーキ31によって提供される予定される最大減速量を、第1の物体との切迫した衝突を回避するのに必要な減速量と調整する。いくつかの実施形態では、電子駐車ブレーキ31によって提供される車両12の減速量は、第1の電子プロセッサ24によって判定された切迫した衝突を回避するのに必要な理想的なブレーキ操作量である。
【0027】
図5は、車両のブレーキ操作を制御する方法70を示す。方法70は、1つの例として提供され、提供されるステップは、二者択一の順序で、又は同時に実行されてもよい。方法70は、(ブロック72において)車両12が衝突状態にあるか否かを判定することを含む。車両12が衝突状態にない(例えば、衝突の可能性が低い)場合、方法70は、(ブロック72において)車両12が衝突状態にあるか否かを判定することに戻る。車両12が衝突状態にある(例えば、衝突の可能性がある)場合、方法70は、(ブロック74において)車両12の電子駐車ブレーキ31が起動されているか否かを判定する。車両12の電子駐車ブレーキ31が起動されていない場合、方法70は、(ブロック72において)車両12が衝突状態にあるか否かを判定することに戻る。車両12の電子駐車ブレーキ31が起動されている場合、方法70は、(ブロック76において)電子駐車ブレーキ31が提供するブレーキ操作量(EPB
Brake)を判定する。方法70は、また、(ブロック78において)衝突を回避するのに必要なブレーキ操作量(C
Brake)を判定することを含む。一旦、方法70がEPB
Brake及びC
Brakeを判定すると、方法70は、(ブロック80において)EPB
BrakeがC
Brake以上であるか否かを判定する。EPB
BrakeがC
Brake以上であるとき、EPB
Brakeは、車両12に十分なブレーキ操作を提供して切迫した衝突を回避する(例えば、切迫した衝突を回避するのにより大きいブレーキ操作の必要がない)。そのため、(ブロック82において)EPB
BrakeがC
Brake以上であるとき、方法70は、終了する。EPB
BrakeがC
Brake以上ではないとき、EPB
Brakeは、切迫した衝突を回避するのに十分なブレーキ操作を車両12に提供しない。方法70は、(ブロック84において)車両の電子駐車ブレーキ31が提供するブレーキ操作量を調整する。
【0028】
エスカレートした運転状況において(例えば、車両12が衝突状態にあるとき)、車両12のドライバは、車両12の電子駐車ブレーキ31を起動させてもよい。ドライバが電子駐車ブレーキ31を起動させるとき、電子駐車ブレーキ31は、電子駐車ブレーキ31の所定のブレーキ操作プロファイルに従って、ブレーキ操作の予定された最大量(EPB
Brake)を提供するだけである。切迫した衝突を回避するのに必要なブレーキ操作量(C
Brake)が、電子駐車の所定のブレーキ操作プロファイル(EPB
Brake)内で利用可能な最大量よりも大きいと、衝突回避制御装置14が判定した場合、衝突回避制御装置14は、追加のブレーキ操作を(電子駐車ブレーキ31又は複数のブレーキ22を介して)提供することの要求をブレーキシステム制御装置30に送る。切迫した衝突を回避するのに必要なブレーキ操作量が所定のブレーキ操作プロファイル内で利用可能な最大量未満である場合、衝突回避制御装置14は、電子駐車ブレーキ31の動作を修正することを何も行わずに、電子ブレーキの動作を所定のブレーキ操作プロファイル内に維持する。この意味で、ブレーキシステム制御装置30は、電子駐車ブレーキ31を制御又は調整することにより、車両が衝突状態にあるか非衝突状態にあるかに従って追加の減速を提供してもよい。
【0029】
このように、本発明は、とりわけ、車両にブレーキをかけるための方法及びシステムを提供する。本発明の様々な特徴及び長所が、以下の請求項において述べられる。
【符号の説明】
【0030】
10 システム
12 車両
14 衝突回避制御装置
16 電子安定性制御モジュール
18 前方センサ18
20 車両センサ
22 ブレーキ
23 車輪
24 第1の電子プロセッサ
26 第1のメモリ26
28 第1の入出力インタフェース
30 ブレーキシステム制御装置
31 電子駐車ブレーキ
32 第2の電子プロセッサ
34 第2のメモリ
36 第2の入出力インタフェース