特許第6694977号(P6694977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694977ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694977
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20200511BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20200511BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200511BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20200511BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20200511BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20200511BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08L69/00
   C08K3/22
   C08K3/00
   C08K5/521
   C08L23/00
   C08L51/06
【請求項の数】14
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2019-9988(P2019-9988)
(22)【出願日】2019年1月24日
(62)【分割の表示】特願2017-138811(P2017-138811)の分割
【原出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2019-70162(P2019-70162A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-221075(P2013-221075)
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】山中 康史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創貴
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−314664(JP,A)
【文献】 特開2005−126711(JP,A)
【文献】 特開2013−057008(JP,A)
【文献】 特開2007−077208(JP,A)
【文献】 特開2013−173823(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0190783(US,A1)
【文献】 特開平08−041302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部及び(E)ポリオレフィン系離型剤0.01〜3質量部を含有し、(E)ポリオレフィン系離型剤の滴点が100℃以下であることを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項2】
(B)ポリカーボネート樹脂が、28000を超える粘度平均分子量を有するものである請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度が0.9dl/g以上である請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(F)エラストマーを、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、5〜20質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項5】
(F)エラストマーが、アクリル系コア/シェル型グラフト共重合体である請求項4に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項6】
(F)エラストマーの平均粒子径が300nm以上である請求項4又は5に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(G)滴下防止剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(H)下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物の金属塩を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.001〜1質量部含有する請求項1〜のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
請求項4〜のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品であって、成形品のコア部において、前記(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂は共連続相を形成し、(F)エラストマーは(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在するモルフォロジーを有することを特徴とする成形品。
【請求項11】
成形品のコア部において、(D)アンチモン化合物の80%以上が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相中に存在する請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
成形品の表層部において、(F)エラストマー相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20である請求項10又は11に記載の成形品。
【請求項13】
(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤が、(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在する請求項1012のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項14】
電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体のいずれかである請求項13のいずれか1項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱変色性及び離型性に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド車のように、電動モータを動力源に含む自動車が普及しており、そのような自動車のためのバッテリー充電用の充電スタンドを設置することが推進されており、またバッテリー充電のための電気自動車用充電器コネクタや、あるいはまた電池キャパシタ用ホルダーが利用されてきている。
【0003】
電気自動車用充電器コネクタあるいは電池キャパシタ用ホルダー、電気自動車用充電スタンドを構成するための筺体等には高度の難燃性が要求され、金属製のものが多く使用されている。また、これを樹脂化する動きもあり、各種の樹脂が検討されつつある。
なかでも、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性等エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に用いられており、これを難燃化する検討がなされている。
【0004】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に難燃性を付与する方法としては、一般的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ハロゲン化合物や難燃助剤として三酸化アンチモン(特許文献1参照)を用いた難燃剤を添加することにより、難燃化する方法がよく知られている。また、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体等は、他の電気電子部品と同様に、機器の小型化、軽量化の趨勢から薄肉小型化されてきており、それに利用される成形品も小型化と薄肉化が進んでおり、薄肉成形品において高度の難燃性が要求されるが、成形品が薄肉になるほど難燃化の達成は難しくなる。
【0005】
また、電気電子機器分野では、難燃性に加えて、電気的負荷に対する発火に対する安全性の確保のため、電気的特性の一つである耐トラッキング性に優れていることが必要である。
【0006】
さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶特性に優れるため衝撃強度に代表される靭性が不十分であるという課題を有しており、この課題を解決するためにポリマーアロイの研究が従来から行われ、その難燃処方についても各種の提案がなされている。
例えば、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系難燃剤、難燃助剤およびエステル交換防止剤を構成成分とする難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示され、また、特許文献3には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エラストマー、難燃剤及び難燃助剤からなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献4には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン系ゴム及び難燃剤からなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、電気電子機器分野における要求物性は、益々高度化してきており、従来の処方では対応が困難になってきている。
さらに、射出成形においても離型抵抗力が増加しない優れた離型性が要求されており、例えば成形型から取り出す際のエジェクターピン痕等の発生がない、表面外観が良好で、また、反りのないものが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−66746号公報
【特許文献2】特開2007−314664号公報
【特許文献3】特開平6−100713号公報
【特許文献4】特開2005−112994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱変色性及び離型性に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に、ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、アンチモン化合物をそれぞれ特定の量で含有し、さらにポリオレフィン系離型剤を含有することにより、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱変色性及び離型性に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品が提供される。
【0011】
[1](A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部及び(E)ポリオレフィン系離型剤0.01〜3質量部を含有し、(E)ポリオレフィン系離型剤の滴点が100℃以下であることを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[2](B)ポリカーボネート樹脂が、28000を超える粘度平均分子量を有するものである上記[1]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[3](A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度が0.9dl/g以上である上記[1]又は[2]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[4]さらに、(F)エラストマーを、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、5〜20質量部含有する上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[5](F)エラストマーが、アクリル系コア/シェル型グラフト共重合体である上記[4]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[6](F)エラストマーの平均粒子径が300nm以上である上記[4]又は[5]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[7]さらに、(G)滴下防止剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【0012】
]さらに、(H)下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物の金属塩を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.001〜1質量部含有する上記[1]〜[]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表し、M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0013】
]上記[1]〜[]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
10]上記[4]〜[]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品であって、成形品のコア部において、前記(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂は共連続相を形成し、(F)エラストマーは(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在するモルフォロジーを有することを特徴とする成形品。
11]成形品のコア部において、(D)アンチモン化合物の80%以上が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相中に存在する上記[10]に記載の成形品。
12]成形品の表層部において、(F)エラストマー相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20である上記[10]又は[11]に記載の成形品。
13](C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤が、(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在する上記[10]〜[12]のいずれかに記載の成形品。
14]電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体のいずれかである上記[]〜[13]のいずれかに記載の成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱変色性及び離型性に優れた樹脂材料であるので、各種の電気電子機器部品、特に電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクタ、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例7で得た成形品のコア部のSTEM写真である。
図2】実施例7で得た成形品のコア部のSTEM写真である。
図3】実施例7で得た成形品の表層部のSEM写真である。
【0016】
[発明の概要]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部及び(E)ポリオレフィン系離型剤0.01〜3質量部を含有し、(E)ポリオレフィン系離型剤の滴点が100℃以下であることを特徴とする。
【0017】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0018】
[(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を構成する主成分である(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT樹脂」と略称することもある。)としては、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子を示す。即ち、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0019】
PBT樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0020】
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
【0021】
PBT樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。PBT樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
【0022】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0023】
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることができる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0024】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0025】
PBT樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、これらの共重合体は、共重合量が、PBT樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
そして、これら共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の総量100質量%中に、10〜100質量%、更には30〜100質量%、特には50〜100質量%である。
【0026】
PBT樹脂の極限粘度([η])は、0.9dl/g以上であるものが好ましい。極限粘度が0.9dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また極限粘度は、1.8dl/g以下であることが好ましく、1.6dl/g以下であることがより好ましく、1.3dl/g以下であることがさらに好ましい。1.8dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
【0027】
[(B)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(B)ポリカーボネート樹脂を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0028】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0029】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20000以上であることが好ましく、より好ましくは23000以上、さらに好ましくは25000以上、特に28000を超えるものであることが好ましい。粘度平均分子量が20000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
【0032】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
【0033】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0034】
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(B)ポリカーボネート樹脂が20〜50質量部であり、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、より好ましくは43質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。上記下限値を下回ると、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、寸法安定性が低下する。また、上記上限値を上回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
【0035】
[(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤を含有する。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)等各種のものがあるが、本発明においては、ハロゲン系難燃剤として、臭素系の、しかも臭素化ポリカーボネート系難燃剤を含有することを特徴とする。(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、(B)ポリカーボネート樹脂との相溶性がよく、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤が(B)ポリカーボネート樹脂相に存在しやすくなり、耐衝撃性が向上する。
【0036】
(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0037】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、成形品内の分散不良を引き起こし、成形品外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
【0038】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。なお、臭素化ポリカーボネート系難燃剤の粘度平均分子量は、(B)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定と同様の方法で求めることができる。
【0039】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
【0040】
(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5〜40質量部であり、好ましくは7質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下である。(C)難燃剤の含有量が少なすぎると樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
【0041】
[(D)アンチモン化合物]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(D)アンチモン化合物を含有する。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)およびアンチモン酸ナトリウムが好ましい例として挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性の点から三酸化アンチモンが好ましい。
【0042】
(D)アンチモン化合物は、樹脂組成物中の(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度が、両者の合計で3〜25質量%であることが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、20質量%を超えると機械的強度が低下する傾向にある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
【0043】
本発明においては、(D)アンチモン化合物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、(D)アンチモン化合物が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在しやすくなり、(B)ポリカーボネート樹脂に対する悪影響が抑制でき、溶融混練、成形加工時の熱安定性が良好となり、耐衝撃性の低下が抑えられ、さらに、難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なくなる傾向となる。
マスターバッチ中の(D)アンチモン化合物の含有量は20〜90質量%であることが好ましい。(D)アンチモン化合物が20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合するポリブチレンテレフタレート系樹脂への難燃性向上効果が小さい。一方、アンチモン化合物が90質量%を超える場合は、アンチモン化合物の分散性が低下しやすく、これをポリブチレンテレフタレート系樹脂に配合すると熱可塑性樹脂組成物の難燃性が不安定になり、また難燃剤マスターバッチ製造時の作業性も著しく低下する、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、好ましくは30〜85質量%であり、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜75質量%である。
【0044】
(D)アンチモン化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜15質量部であり、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下する。また、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
【0045】
[(E)ポリオレフィン系離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(E)ポリオレフィン系離型剤を含有することを特徴とする。離型剤としては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、本発明では、耐衝撃性、耐加水分解性及び離型性の点で、ポリオレフィン化合物系の離型剤を含有する。
【0046】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が好ましく挙げられ、中でも、ポリオレフィン系化合物の分散が良好であるという点から、質量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のポリエチレンワックスが好ましい。
【0047】
また、本発明においては、ポリオレフィン系化合物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と親和性のある官能基を付与されていないものが好ましいが、カルボキシル基(カルボン酸(無水物)基、即ちカルボン酸基および/又はカルボン酸無水物基を表す。以下同様。)、ハロホルミル基、エステル基、カルボン酸金属塩基、水酸基、アルコシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等の、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と親和性のある官能基を付与されたものも使用できる。この濃度は、ポリオレフィン系化合物の酸価として、5mgKOH/gを超えて50mgKOH/g未満が好ましく、中でも10〜40mgKOH/g、さらには15〜30mgKOH/g、特に20〜28mgKOH/gであることが好ましい。
また、揮発分が少なく、同時に離型性の改良効果も著しい点で、ポリオレフィン系化合物としては、酸化ポリエチレンワックスを使用することもできる。
なお、酸価は、0.5mol KOHエタノール溶液による電位差滴定法(ASTM D1386)に従って測定することができる。
【0048】
また、(E)ポリオレフィン系離型剤は、その滴点が100℃以下であるものが好ましく、より好ましくは90℃以下である。またその下限は通常50℃、好ましくは60℃である。滴点が50℃未満であると、成形品を射出成形する前の予備乾燥時に離型剤がブリードしやすく、ペレット同士が融着する場合があり好ましくない。また、滴点が100℃を超えると離型効果が低下しやすいため、好ましくない。
なお、滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。なお、ポリオレフィン系離型剤が、滴点測定が難しいものである場合は、示差走査熱量測定(DSC)による融点を、本発明における滴点とすることができる。
【0049】
(E)ポリオレフィン系離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して0.01〜3質量部である。0.01質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面外観が低下する傾向があり、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また、成形時にガスが発生しやすく、樹脂流動末端部でのガス焼けや、成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは1.2質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
【0050】
[(F)エラストマー]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(F)エラストマーを含有することが好ましい。(F)エラストマーとしては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。
【0051】
(F)エラストマーの具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0052】
また(F)エラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0053】
(F)エラストマーは、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系及び/又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものが好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0054】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0055】
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
【0056】
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%ある。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、90質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
【0057】
(F)エラストマーの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下が特に好ましく、800nm以下が最も好ましい。また、下限は通常50nmであり、好ましくは100nmであり、より好ましくは150nm、さらに好ましくは200nm、特に好ましくは300nm以上、最も好ましくは400nm以上、特に500nm以上である。このような粒子径のエラストマーを使用することにより、面衝撃性等の耐衝撃性、耐湿熱性、離型性等の成形性が良好となる傾向にあり好ましい。
【0058】
なお、(F)エラストマーの平均粒子径は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)等により、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形品断面のモルフォロジーを観察することで測定できる。
具体的には、SEM、STEM、TEM分析装置を用い、成形品断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に平行な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜100,000倍の倍率により観察される。
【0059】
また、(F)エラストマーのガラス転移温度は、−30℃以下であることが好ましく、−35℃以下であることがより好ましく、−40℃以下であることがさらに好ましく、−50℃以下であることが特に好ましい。このようなガラス転移温度を有する(F)エラストマー原料を使用することにより、成形品の表層部において、エラストマーの配向によりエラストマーの扁平度(エラストマーの長径と短径の比)が向上しやすく、耐衝撃特性が大幅に良好となる傾向にあり好ましい。
なお、(F)エラストマーのガラス転移温度は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)のピーク温度を求めることにより測定することができる。具体的には、200℃で加熱した熱プレス機を用いて、(F)エラストマー原料を、0.7mm厚×10cm×10cmの型枠にて3分間プレス成形し、水冷後に0.7mm厚×5.5mm×25mmの測定用試験片を切り出し、50〜−100℃の温度範囲で、昇温速度3℃/min、周波数110Hzの条件で動的粘弾性測定を行い、得られるtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度とする。
【0060】
本発明の(F)エラストマーとして好ましく用いられるアクリル系コア/シェル型エラストマーの製造方法には乳化重合方法があり、これはコア重合とシェル重合とを含む方法である。
【0061】
前記コア重合は、アクリル酸エステル単量体を重合して行われ、この時、アクリル酸エステルの分子構造には二重結合が一つ存在するため、重合完了後に二重結合が存在せず、優れた耐候性を示し、またガラス転移温度が低いために良好な耐衝撃性を示す。アクリル酸エステル単量体以外にも、エラストマーとしてゴム構造を形成し、耐衝撃性を付与するため、ならびにガラス転移温度を制御するために一定範囲の架橋剤を用いる。一定範囲にて配合された架橋剤は、重合中のラテックスの安定性を維持させるだけでなく、加工中、ならびに樹脂組成物中でも、コア構造が球形から扁平形態へ容易に変形しやすいように作用する。
【0062】
前記シェル重合は、通常塩化ビニル樹脂と相溶性に優れたメタクリル酸エステルを単量体として用い、コア表面でグラフト重合を進行させることによって行われる。エラストマーの分散性を高めるために、シェルはアクリロニトリル単量体を少量含んでいてもよい。
【0063】
乳化重合によるアクリル系コア/シェル型エラストマーの公知の製造方法には大きく2種類の方法がある。第1の方法は米国特許第5,612,413号に開示されたものであって、粒子の大きさが小さい種(Seed)を重合し、単量体を2〜4工程に分けて投入して種を成長させた後、シェル成分単量体を投入してコア表面を囲うことによってコア/シェル構造を完成させる多段階乳化重合方法である。第2の方法は欧州特許0527605(A1)に開示されたものであって、100nm以下の大きさのコア・シェル構造を有するラテックスを重合し、凝集過程(Agglomeration)を通じて所望の大きさの粒子に成長させた後、凝集粒子上にカプセル化シェルを形成させることによってコア/シェル構造を形成する微細凝集(Microagglomeration)方法である。
【0064】
(F)エラストマーのガラス転移温度は、エラストマーの架橋密度が高ければ大きくなり、ゴムの架橋密度が低ければ低くなる。従って、架橋密度の程度はエラストマーを製造する際の架橋剤の使用量によって調整可能であり、架橋剤を極めて少量用いることで、ガラス転移温度の低いエラストマーを製造することができる。しかし、架橋剤の使用量があまりに少ない場合は、重合中にラテックスの安定性が低下するため、ガラス転移温度の制御が困難になる場合があるので、好ましくない。
【0065】
本発明の好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマーは、例えば、種(seed)を重合し、コア成分単量体を2〜4回に分けて重合してコアゴム粒子を成長させた後、シェル成分単量体を投入してシェルでコア表面を囲うことによって製造される、粒径が400〜900nmの大粒径エラストマーである。
【0066】
このために前記大粒径エラストマーは、それらの各々のコアが、i)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;及びii)架橋剤0.001〜5.0質量部を含むことが好ましい。
【0067】
前記アクリル酸エステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を含むことが好ましく、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又はこれらの混合物を含むアクリル酸エステルであることがさらに好ましい。
また、前記架橋剤は、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼンからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を用いることが好ましい。1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート又はこれらの混合物を含むことがより好ましい。前記架橋剤は、本発明の各々のエラストマーで全単量体に対して0.001〜5質量部を用いることが好ましい。架橋剤の含有量が全単量体に対して0.001質量部未満であると、加工中のハンドリングが乏しく、5質量部を超えると、エラストマーのコアが脆性を示し、衝撃補強効果が低下する場合がある。
【0068】
また、前記大粒径エラストマーは、シェルが、i)アルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸エステル80〜100質量部を含み、ii)シェル成分のガラス転移温度を調整するために、さらにエチルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートを10質量部以下の割合で添加することができ、iii)マトリックスとシェルとの相溶性を増加させるために、さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなニトリル化合物を10質量部以下の割合で添加することもできる。
【0069】
また、本発明の好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマー(大粒径エラストマー)のコアは、全単量体に対して70〜95質量%のゴム成分単量体を含むことが好ましい。70質量%未満であると、ゴム含有量が小さくなって耐衝撃補強性が低下しやすく、95質量%を超えるとシェル成分がコアを完全に囲うことができないために、マトリックス中のゴムの分散がよく行われなくなり、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0070】
重合後のエラストマーは、電解質で凝析させた後にろ過して得ることでき、前記電解質としては塩化カルシウム等が好ましい。
【0071】
本発明において好ましく用いられる、低ガラス転移温度及び平均粒子径が大きい、好ましくは400nm以上のアクリル系コア/シェル型エラストマーを製造する工程をより詳細に説明する。その製造方法は以下の工程を主として含む。
【0072】
前記低ガラス転移温度を有する大粒径エラストマーは、
i)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;重合開始剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜10質量部;及びイオン交換水1000質量部;を含む混合物を、60〜80℃の温度で架橋反応させて種(seed)を製造する1次重合工程と、
ii)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜6質量部;及びイオン交換水80質量部;を含むエマルジョン混合物を前記i)工程で製造した種に連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してコアラバーを製造する2次重合工程と、
iii)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜6質量部;及びイオン交換水80質量部;を含むエマルジョン混合物を前記ii)工程で製造した2次重合物に連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してコアラバーを製造する3次重合工程と、
iv)アルキル基の炭素数が1〜4であるアクリル酸エステル80〜100質量部;エチルアクリレート、メチルアクリレート及びブチルアクリレートからなる群より選択されるアクリル酸エステル10質量部以下;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選択されるニトリル成分10質量部以下;乳化剤0.001〜4質量部;及びイオン交換水150質量部;を含むエマルジョン混合物を前記iii)段階で製造したコアに連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してシェルを形成させる4次重合工程を含む方法で製造される。
【0073】
前記大粒径エラストマーの製造に用いられる重合開始剤は、架橋反応を起こすことのできるいかなる化合物も用いることができ、具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスブチロニトリル、ブチルヒドロパーオキサイド及びクメンヒドロパーオキサイド等を用いることができる。
【0074】
また、前記大粒径エラストマーの製造に用いられる乳化剤は、不飽和脂肪酸カリウム塩、オレイン酸カリウム塩、ソジウムラウリルスルフェート、ソジウムドデシルベンゼンスルフェート等のイオン系乳化剤と非イオン系乳化剤等を用いることができる。
【0075】
このようにして製造されたた大粒径エラストマーにイオン交換水を投入し、固形分含有率を10質量%と低くした後、10質量%の塩化カルシウム溶液を混合物に投入してポリマー粒子を凝析させる。凝析スラリーは90℃まで昇温して熟成させ冷却する。その後、冷却されたスラリーをイオン交換水で洗浄しろ過することで、本発明において好ましく用いられる、アクリル系コア/シェル型エラストマーを得ることができる。
【0076】
(F)エラストマーの好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5〜20質量部である。(F)エラストマーの含有量が5質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さく、20質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下しやすい。(F)エラストマーのより好ましい含有量は、7質量部以上であり、16質量部以下、さらには13質量部以下である。
【0077】
[(G)滴下防止剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(G)滴下防止剤を含有することが好ましい。
(G)滴下防止剤としては、フルオロポリマーが好ましい。
フルオロポリマーとしては、フッ素を有する公知のポリマーを任意に選択して使用できるが、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。
フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製、テフロン(登録商標)6J、ダイキン工業社製、ポリフロン(登録商標)F201L、ポリフロンF103等が挙げられる。
【0078】
また、フルオロエチレン樹脂の水性分散液として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン工業社製フルオンD−1、住友スリーエム社製TF1750等も挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も、フルオロポリマーとして使用することができる。その具体例を挙げると、三菱レイヨン社製メタブレン(登録商標)A−3800等が挙げられる。
【0079】
(G)滴下防止剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.12質量部以上、特に好ましくは0.15質量部以上であり、より好ましくは0.6質量部以下、さらに好ましくは0.45質量部以下、特に好ましくは0.35質量部以下である。(G)滴下防止剤の含有量が少なすぎると、樹脂組成物の難燃性が不十分となる可能性があり、逆に多すぎても樹脂組成物の成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じる可能性がある。
【0080】
[その他含有成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、強化充填材、顔料、紫外線吸収剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0081】
<安定剤>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。特に、リン系安定剤を含有すると、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂のエステル交換反応を効果的に抑制することができ、耐衝撃性等の機械的特性が良好となる傾向にあり好ましい。また、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂と(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤との相互の相溶性を格段に向上させることができ、後記するモルフォロジー構造を有する成形品を安定して形成しやすくなる。
【0082】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機リン酸エステル化合物が好ましい。
【0083】
有機リン酸エステル化合物は、リン原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が1〜3個結合した部分構造を有するものである。なお、これらのアルコキシ基やアリールオキシ基には、さらに置換基が結合していてもよい。好ましくは、有機リン酸エステル化合物の金属塩であり、金属としては、周期律表第Ia、IIa、IIb及びIIIaから選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、中でも、マグネシウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムがさらに好ましく、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛が特に好ましい。
【0084】
本発明においては、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物を用いることが好ましく、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物を用いることがより好ましく、下記一般式(1)又は(2)で表される有機リン酸エステル化合物を用いることがさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
【化5】
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
【0086】
【化6】
一般式(2)中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
【0087】
【化7】
一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。
【0088】
【化8】
一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0089】
【化9】
一般式(5)中、R15はアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0又は1のとき、2つのR15は同一でも異なっていてもよい。
【0090】
一般式(1)〜(5)中、R〜R15は、通常は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性等の観点からは、炭素数2〜25のアルキル基であるのが好ましく、更には炭素数6〜23のアルキル基であるのが最も好ましい。アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、一般式(1)、(2)のMは亜鉛であるのが好ましく、一般式(3)、(4)のM’はアルミニウムであるのが好ましい。
【0091】
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては一般式(1)の化合物としてはビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、一般式(2)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、一般式(3)の化合物としてはトリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、一般式(4)の化合物としては1個のモノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、一般式(5)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェートやジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。中でも、ビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、モノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。
【0092】
有機リン酸エステル化合物としては、エステル交換抑制効果が非常に高く、成形加工時の熱安定性がよく成形性に優れ、射出成形機での計量部の設定温度を高めに設定することが可能となって成形が安定すること、また耐加水分解性、耐衝撃性が優れる観点から、前記一般式(1)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、前記一般式(2)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩等のステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を用いるのが好ましい。これらの市販のものとしては、城北化学工業製「JP−518Zn」等がある。
【0093】
また、有機ホスファイト化合物や有機ホスホナイト化合物も使用することができる。
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、好ましくは、下記一般式:
O−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0094】
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0095】
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
−P(OR)(OR
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0096】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0097】
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
【0098】
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0099】
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0100】
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜0.8質量部であり、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部、特に好ましくは0.1〜0.5質量部である。
【0101】
<紫外線吸収剤>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐光性改良効果を有する点から、さらに紫外線吸収剤を含有することも好ましい。特に、上記したリン系安定剤及び/またはフェノール系安定剤と併用することにより、耐光性がより向上しやすい傾向にある。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物等の有機紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤またはマロン酸エステル系紫外線吸収剤がより好ましく、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0102】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0103】
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0104】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類、特に2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が挙げられ、このようなマロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、BASF社製「B−CAP」等が挙げられる。
【0105】
紫外線吸収剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐光性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
【0106】
<顔料>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐光性、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性改良効果を有する点から、さらに顔料を含有することも好ましい。顔料としては、例えば、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等)等の黒色顔料、酸化鉄赤等の赤色顔料、モリブデートオレンジ等の橙色顔料、酸化チタン等の白色顔料、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料等)等が挙げられる。なかでも、着色性、耐候性の点から、カーボンブラックを配合することが好ましく、耐衝撃性、難燃性、耐加水分解性の点から酸化チタンを配合することが好ましい。
【0107】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、酸化チタンを含有することが好ましい。酸化チタンを、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(E)ポリオレフィン系離型剤と共にそれぞれ所定の量で含有することにより、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の結晶化が適度に遅延し、より高い耐衝撃性を達成でき、また難燃性もより向上する。さらに、樹脂組成物の着色等の目的でカーボンブラックを配合する場合には、カーボンブラックの凝集等による成形品ウエルド部や成形品段差部等における外観不良が発生する場合があるが、酸化チタンを配合することによって、その外観不良がより改善されやすいことが明らかとなった。これは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の混合樹脂に、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(E)ポリオレフィン系離型剤を特定含有する樹脂組成物に特有に確認される効果である。
【0108】
用いられる酸化チタンは、製造方法、結晶形態および平均粒子径などは、特に限定されるものではない。酸化チタンの製造方法には硫酸法および塩素法があるが、硫酸法で製造された酸化チタンは、これを添加した組成物の白度が劣る傾向があるため、本発明の目的を効果的に達成するには、塩素法で製造されたものが好適である。
【0109】
また、酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、耐光性の観点からルチル型の結晶形態のものが好適である。酸化チタンの平均粒子径は、0.01〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.7μmであることがさらに好ましく、特に好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒子径が0.01μm未満では樹脂組成物製造時の作業性に劣り、3μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりしやすい。なお、平均粒子径の異なる酸化チタンを2種類以上混合して使用してもよい。
【0110】
なお、酸化チタンは、オルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理することが好ましいが、その前にはアルミナ系表面処理剤で前処理するのが好ましい。アルミナ系表面処理剤としてはアルミナ水和物が好適に用いられる。さらにアルミナ水和物とともに珪酸水和物で前処理しても良い。前処理する方法は特に限定されるものではなく、任意の方法によることが出来る。アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物による前処理は、酸化チタンに対して1〜15質量%の範囲で行なうのが好ましい。
【0111】
アルミナ水和物で、必要に応じて更に珪酸水和物で前処理された酸化チタンは、更にその表面をオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理することによって、熱安定性を大幅に改善することが出来る他、酸化チタンの活性を適度に抑えることによって、(B)ポリカーボネート樹脂の分子量低下による耐衝撃性等の機械的特性の低下や、耐加水分解性の低下を抑制しやすい傾向となり好ましい。
【0112】
オルガノシロキサン系表面処理剤としては、無機化合物粒子の表面と反応する反応性の官能基を持つ反応性官能基含有有機珪素化合物が好ましい。反応性の官能基としては、Si−H基、Si−CH基、Si−OH基、Si−NH基、Si−OR基が挙げられるが、Si−H基、Si−OH基、Si−OR基を持つものがより好ましく、Si−H基、Si−CH基をもつ有機珪素化合物が、特に好ましい。
【0113】
Si−H、Si−CH基含有有機珪素化合物としては、分子中にSi−H基又はSi−CH基を持つ化合物であれば特に制限されず、適宜選択して用いればよいが、なかでも、ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシクロ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(エチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(フェニルハイドロジェンシロキサン)、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(エチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ヘキシルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(オクチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(フェニルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)((2−メトキシエトキシ)メチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)(フェノキシメチルシロキサン)]コポリマー等のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0114】
酸化チタンのオルガノシロキサン系表面処理剤による表面処理法には、(1)湿式法と(2)乾式法とがある。湿式法は、オルガノシロキサン系の表面処理剤と溶剤との混合物に、アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンを加え、撹拌した後に脱溶媒を行い、更にその後100〜300℃で熱処理する方法である。乾式法は、上記と同様に前処理された酸化チタンとポリオルガノハイドロジェンシロキサン類とをヘンシェルミキサーなどで混合する方法、前処理された酸化チタンにポリオルガノハイドロジェンシロキサン類の有機溶液を噴霧して付着させ、100〜300℃で熱処理する方法などが挙げられる。
【0115】
シロキサン化合物の処理量としては、酸化チタン100質量部に対し、通常0.01〜10質量部である。処理量が、上記下限値未満の場合は、表面処理効果が低く、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性、難燃性、耐加水分解性が低下しやすい。また、処理量が、上記上限値を超える場合は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性が低下しやすくなるため好ましくない。
このような観点より上記処理量は、酸化チタン100質量部に対し、0.1〜6質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましく、1〜4質量部が特に好ましい。
【0116】
顔料の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.05〜10質量部である。0.05質量部未満であると、耐光性、耐衝撃性、難燃性、耐加水分解性改良効果が十分でない場合があり、10質量部を超えると機械的物性、成形性が低下する場合がある。顔料の含有量は、より好ましくは0.05〜8質量部、さらに好ましくは0.1〜6質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0117】
特に、顔料が酸化チタンである場合は、酸化チタンの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、また、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。酸化チタンの含有量が0.5質量部未満であると、耐衝撃性、難燃性、耐加水分解性改良効果が十分でない場合があり、10質量部を超えると機械的物性、成形性が低下する場合がある。
【0118】
また、顔料がカーボンブラックである場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.05〜5質量部である。0.05質量部未満であると、耐光性改良効果が十分でない場合があり、5質量部を超えると機械的物性が低下する場合がある。顔料の含有量は、好ましくは0.07〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
【0119】
特に、本発明においては、カーボンブラックを配合した場合に発生しやすい、カーボンブラックの凝集等による成形品ウエルド部や成形品段差部等における外観不良が、酸化チタンを配合することによって、より改善されやすいことが明らかとなった。これは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の混合樹脂に、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(E)ポリオレフィン系離型剤を特定量含有する樹脂組成物に特有に確認される効果であり、顕著な効果である。
【0120】
<強化充填材>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、強化充填材を含有してもよいが、高い耐衝撃性が必要な場合は、強化充填材は含有しないことが好ましい。強化充填材を含有する場合は、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有する強化充填材が好ましく、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状又は無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。なかでも、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
なお、結晶化速度向上の目的で核剤としてタルク等の充填材を使用する場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して1質量%以下、好ましくは0.6質量部以下の量で配合してもよい。
【0121】
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0122】
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
【0123】
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
【0124】
強化充填材の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0〜100質量部である。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、中でも15〜80質量部、さらに好ましくは30〜80質量部、特には40〜70質量部である。
【0125】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン等が挙げられる。
【0126】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂又は(B)ポリカーボネート樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
【0127】
上述したように、本発明においては、(D)アンチモン化合物を、熱可塑性樹脂、特に(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂とのマスターバッチとして配合することが、溶融混練、成形加工時の熱安定性や、難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なく良好である点から好ましい。マスターバッチ化する方法は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂とアンチモン化合物を溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練の方法としては、単軸又は二軸押出機型混練機、混練ロールもしくはカレンダーロールなどの連続式混練機、又は、加圧ニーダー、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いる方法等が挙げられる。中でも二軸押出機を使用することが好ましい。
また、溶融混練の際には、予め熱可塑性樹脂(好ましくはポリブチレンテレフタレート系樹脂)を、乾燥することも好ましい。乾燥としては熱風乾燥が好ましく、その温度は好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜130℃で、乾燥時間は、好ましくは1〜5時間、より好ましくは2〜4時間である。
【0128】
押出機を使用する場合は、熱可塑性樹脂(好ましくはポリブチレンテレフタレート系樹脂)及びアンチモン化合物を押出機に供給し、溶融混錬し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、冷却、切断してマスターバッチのペレットが製造される。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、10<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、15<(L/D)<70を満足することがより好ましい。かかる比が10以下では、熱可塑性樹脂とアンチモン化合物が微分散しにくく、逆に100を超えても熱可塑性樹脂が分解しやすくなり好ましくない。
【0129】
溶融混練の条件としては、温度はバレル温度で好ましくは140〜320℃、より好ましくは160〜310℃である。溶融温度が140℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルやアンチモン化合物の凝集が多発しやすく、逆に320℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
【0130】
溶融混練時のスクリュー回転数は、100〜1,000rpmであることが好ましく、120〜800rpmがより好ましい。スクリュー回転数が100rpm未満であると、アンチモン化合物が微分散しにくい傾向にあり、逆に1,000rpmを超えても、熱可塑性樹脂が分解しやすくなる傾向となり好ましくない。また、吐出量は5〜2,000kg/hrであることが好ましく、10〜1,500kg/hrがより好ましい。吐出量が5kg/hr未満であると、ストランドが安定せず、歩留まりが低下する傾向にあり、2,000kg/hrを超えても、アンチモン化合物が凝集しやすく、分散性が低下する傾向となり好ましくない。
【0131】
溶融混練に供する原料の熱可塑性樹脂(好ましくはポリブチレンテレフタレート系樹脂)及びアンチモン化合物の割合は、熱可塑性樹脂とアンチモン化合物の合計100質量%基準で、アンチモン化合物を20〜90質量%とすることが好ましい。アンチモン化合物が20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合する熱可塑性樹脂への難燃性向上効果が少ない。一方、アンチモン化合物が90質量%を超える場合は、アンチモン化合物の分散性が低下しやすく、このマスターバッチを(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂に配合すると本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の難燃性が不安定になり、また難燃剤マスターバッチ製造時の作業性も著しく低下する、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、熱可塑性樹脂とアンチモン化合物の合計100質量%基準で、好ましくは30〜85質量%であり、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜75質量%である。
【0132】
熱可塑性樹脂(好ましくはポリブチレンテレフタレート系樹脂)とアンチモン化合物を溶融混練してマスターバッチ化する際には、必要に応じて安定剤等の各種の添加剤を配合することもできる。
【0133】
アンチモン化合物マスターバッチの配合は、得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中のアンチモン化合物の含有量が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物全体100質量%において、0.5〜10質量%であるように配合することが好ましく、より好ましくは0.7〜9質量%、さらに好ましくは1〜8質量%、特には1.5〜7質量%、最も好ましくは2〜6質量%である。
【0134】
(D)アンチモン化合物をマスターバッチで配合する場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(E)ポリオレフィン系離型剤及び他の所望の成分を、それぞれ所望の割合で押出機等の混練機にフィードするが、この際、アンチモン化合物マスターバッチは、他の原料とは別に設けた専用のフィーダーから押出機に供給することが好ましい。アンチモン化合物マスターバッチは、(A)〜(C)、(E)成分及び他の所望の添加剤と混合して同じフィーダーから供給するのではなく、独立した専用のフィーダーから供給することが、分級が抑制され、難燃性、耐衝撃性が良好となり、ばらつきも少ない点から好ましい。
アンチモンバスターバッチを専用のフィーダーから供給する場合は、押出機のホッパーに、専用のフィーダーから他の原料と同時にフィードしてもよいし、押出機の途中にフィードしてもよい。押出機の途中にフィードする場合は、ニーディングゾーンよりもホッパー側にフィードすることが好ましい。
【0135】
これらの成分を溶融混練する際の加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0136】
[樹脂組成物成形品のモルフォロジー]
上述したように、本願発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐衝撃性の点から、(F)エラストマーを含有することが好ましい。そして、(F)エラストマーを好ましく含有する本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる成形品は、好ましくは、成形品のコア部において、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂は共連続相を形成し、(F)エラストマーは(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在するモルフォロジーを有する。また、好ましくは、(D)アンチモン化合物も、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在する。
ここで、コア部とは、成形品の深さ20μm未満の表層部を除く部分で、成形品の樹脂組成物流動方向に平行な断面の中心部をいい、表層部とは、成形品の表面から深さ20μm内部までの表層部分であって、樹脂組成物流動方向に平行な断面をいう。
【0137】
共連続相とは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる相と、(B)ポリカーボネート樹脂同士が互いに接している相とが、共に連続相をなしていることを意味する。このような共連続構造を有することにより、また、(F)エラストマーは(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在するモルフォロジーを有することにより、本発明の成形品は、難燃性及び耐衝撃性の両方に優れるという特性を発現することが容易となる。共連続相の構造、形状及びその大きさは限定されない
【0138】
なお、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形品のモルフォロジーの観察は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)等により成形品断面を観察することで測定できる。
具体的には、SEM、STEM、TEM分析装置を用い、成形品断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に平行な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜100,000倍の倍率により観察される。
【0139】
図1、2は、成形品のモルフォロジーの一例を示すものであって、本発明の実施例7で得られた成形品のコア部のSTEM写真である。
図1中、流動方向は図1において左から右方向である。薄い灰色部分が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相であり、それより濃い灰色が(B)ポリカーボネート樹脂の相であり、両者は共連続構造を形成しているのが分かる。その(B)ポリカーボネート樹脂相中に白い丸の形で存在しているのが(F)エラストマーの相であり、(F)エラストマーが(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在していることが分かる。
薄い灰色部分の(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相中において、黒い部分で粒子径の大きいものが(D)アンチモン化合物(図1では三酸化アンチモン)であり、(D)アンチモン化合物の80%以上は(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の相に分散して存在していることも確認された。黒い部分で粒子径の小さいものは二酸化チタンと考えられる。また、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在すると考えられる。
【0140】
成形品コア部における(F)エラストマーの、(B)ポリカーボネート樹脂相中における平均径は、200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることがさらに好ましく、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
また、(D)アンチモン化合物の平均径は、4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、さらには2μm以下であることが好ましい。
【0141】
(F)エラストマー相や(D)アンチモン化合物のドメイン(又は粒子)粒子径(分散径)等は、モルフォロジー観察で得られた像をそのまま又はこれらの像にコントラストを強調あるいは、明暗の調整又は両方の調整を像に施すことにより読み取ることができる。
(F)エラストマー相や(D)アンチモン化合物の粒子径等は、200個以上の粒子径を測定し、その最大径を算術平均して算出される。
【0142】
また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形品は、成形品の表層部においては、(F)エラストマー相は樹脂の流れ方向に伸びており、その長径と短径の比(長径/短径)が3〜20であることが好ましく、4〜19であることがより好ましく、6〜18であることがさらに好ましい。なお、長径とは、エラストマー粒子の最大径をいい、短径とは、長径に垂直な方向の径のうちの最大径とする。また、表層部とは、成形品表面から深さ20μmまでの領域をいう。
【0143】
成形品の表層部のこのような好ましいモルフォロジーは、例えば、図3を観察することにより確認できる。図3は、本発明の実施例7で得られた成形品の表層部のSEM写真である。
図3において、成形時の樹脂の流れ方向は図の左から右への方向である。薄い灰色で水平方向に細長く伸びているのが(F)エラストマー相であり、樹脂の流れ方向に伸びていることが確認できる。(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂は層状構造を形成していると考えられる。白い部分で粒子径の大きいものは(D)アンチモン化合物、粒子径の小さいものは二酸化チタンであると考えられる。
このように、本発明の成形品は、好ましくはこのような特異なモルフォロジー構造を有する。
【0144】
[成形品モルフォロジーの好ましい制御法]
成形品は、このようなモルフォロジー構造を有することによって、難燃性と耐衝撃性の両方により優れた難燃性の成形品となる。
成形品の製造に用いるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混練するだけでは、上記で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混練することが推奨される。
以下に、上記で規定するモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
【0145】
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物、(E)ポリオレフィン系離型剤及び(F)エラストマーを、それぞれ所定の割合で混合後、ダイノズルが設けられた単軸又は二軸の押出機に供給後、溶融混練し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、切断してペレットを製造する。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、10<(L/D)<150の関係を満足することが好ましく、15<(L/D)<120の関係を満足することがより好ましく、20<(L/D)<100の関係を満足することがさらに好ましく、30<(L/D)<70を満足することが特に好ましい。かかる比が10以下では、(B)ポリカーボネート樹脂と(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(F)エラストマーが微分散しにくく、逆に150を超えても、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤の熱劣化が著しく、微分散されにくくなる傾向があり好ましくない。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1〜10mmの円形ノズルが好ましく、直径2〜7mmの円形ノズルがより好ましい。
【0146】
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は200〜300℃であることが好ましく、210〜295℃であることがより好ましい。溶融温度が200℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルが多発しやすく、逆に300℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
【0147】
溶融混練時のスクリュー回転数は、100〜1,000rpmであることが好ましく、150〜800rpmがより好ましい。スクリュー回転数が100rpm未満であると、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(F)エラストマーが微分散しにくい傾向にあり、逆に1,000rpmを超えても、(D)アンチモン化合物が凝集し、微分散しない傾向となり好ましくない。また、吐出量は5〜1,000kg/hrであることが好ましく、10〜900kg/hrがより好ましい。吐出量が5kg/hr未満であると、(D)アンチモン化合物の分散性が低下する傾向にあり、1,000kg/hrを超えても、アンチモン化合物の再凝集により、分散性が低下する傾向となり好ましくない。
【0148】
ダイノズルにおけるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物のせん断速度は、10〜10,000sec−1であることが好ましく、50〜5,000sec−1であることがより好ましく、70〜1,000sec−1であることがさらに好ましい。せん断速度を上記の範囲とすることにより、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(F)エラストマーの再凝集を抑制し、本発明で規定するモルフォロジーを安定して形成しやすい傾向にあり、好ましい。かかるせん断速度は、一般的に樹脂組成物の吐出量とダイノズルの断面の形状より決定されるものであり、例えば、ダイノズルの断面が円形の時は、
γ=4Q/πr
により算出することができる。ここで、γはせん断速度(sec−1)、Qはダイノズル1本当たりの樹脂組成物の吐出量(cc/sec)、rはダイノズル断面の半径(cm)をそれぞれ表す。
【0149】
ダイノズルからストランド状に押し出された樹脂組成物は、ペレタイザー等により切断しペレット形状とするが、切断時のストランドの表面温度が60〜150℃、特に70〜150℃となるようにストランドを冷却することが好ましい。通常、空冷、水冷等の方法により冷却されるが、冷却効率の点で、水冷することが好ましい。かかる水冷にあたっては、水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよく、水温と冷却時間を調整することにより、所望のストランド表面温度とすることができる。このようにして製造されたペレットの形状は、円柱状の場合は、径が好ましくは1〜8mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mm、長さが好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mmである。
【0150】
また、上記ダイノズルにおけるせん断速度γ(sec−1)と上記ストランド切断時のストランドの表面温度T(℃)との関係が、
1×10<(γ・T)<9.9×10
の関係を満足することにより、電気絶縁性、靱性、難燃性が向上する傾向にあり、好ましい。(γ・T)の値を上記範囲とすることにより、上記で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しやすい傾向となる。また、樹脂組成物の各成分の分散不良による成形品表面の肌荒れ現象や、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(F)エラストマーの再凝集による靱性の低下を抑制しやすく、さらに、機械的特性、難燃性及び絶縁特性等を良好に保つことが容易となる。(γ・T)の下限は1×10であることがより好ましく、上限は8.5×10であることがより好ましい。
(γ・T)の値を上記の範囲に調整するためには、上記のせん断速度とストランドの表面温度を調整すればよい。
【0151】
上記の好ましい条件を単独でも、また複数を組み合わせて適用することにより、上記で規定するモルフォロジー構造を有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を製造することができるが、中でも、(γ・T)の値が上記式を満たすような製造条件を採用することが効果的である。
【0152】
このようなポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法を採用することにより、上記で規定するモルフォロジー構造を有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形品を安定して製造することができる。しかし、その製造は、かかる方法に限られるものではなく、上記で規定するモルフォロジー構造が得られる限り、他の方法を用いてもよい。
【0153】
また、上記したモルフォロジー構造を有する成形品を安定して形成しやすくするには、以下の1)〜8)の方法・条件を適用したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて成形品を製造することも好ましい。
1)(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤中の不純物である塩素化合物の含有量を、通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、さらには0.05質量%以下、特には0.03質量%以下とすることが好ましい。このように制御することで、上記で規定するモルフォロジー構造を安定して形成しやすくなる。
不純物である塩素化合物は塩素化ビスフェノール化合物等である。このような塩素化合物が上記量以上存在すると、上記のモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。なお、塩素化合物含有量は、270℃で10分間の加熱により発生したガスを、ガスクロマトグラフィー法により分析し、デカン換算の値として定量することができる。
【0154】
2)ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中の遊離の臭素、塩素、硫黄の量を特定量以下にすることも上記のモルフォロジー構造を安定して形成しやする上で有効である。遊離の臭素の量は、800ppm以下とすることが好ましく、700ppm以下がより好ましく、650ppm以下がさらに好ましく、480ppm以下が特に好ましい。また、含有量を0ppmまでに除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、その下限量は、通常1ppmであり、好ましくは5ppmであり、より好ましくは10ppmである。
遊離の塩素の量は、500ppm以下とすることが好ましく、350ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましく、150ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の塩素含有量は、塩素がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。塩素は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気、樹脂の冷却水等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、500ppm以下と制御することが好ましい。
また、遊離の硫黄の量は、250ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の硫黄含有量は、硫黄がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在していたかは限定されない。硫黄は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、250ppm以下と制御することが好ましい。
【0155】
なお、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中の遊離臭素、塩素、硫黄の含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で樹脂組成物を加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて定量することにより求めることができる。
【0156】
3)また、(D)アンチモン化合物として、三酸化アンチモンを使用する。
【0157】
4)難燃剤として、臭素化ポリカーボネート系難燃剤を使用する。臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、他の難燃剤に比べて(B)ポリカーボネート樹脂相に取り込まれやすいため、これにより(B)ポリカーボネート樹脂相が大きくなり、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂が共連続構造を形成しやすくなる。
【0158】
5)(F)エラストマーの平均粒子径が、300〜1,500nmと比較的大きな粒子径のものを使用する。これにより(F)エラストマーを取り込んだ(B)ポリカーボネート樹脂相が大きくなり、(B)ポリカーボネート樹脂相同士が接触しやすくなることにより、コア部において共連続構造を形成しやすくなり、さらに表層部において、(F)エラストマー相が樹脂流動方向に配向しやすくなる。
【0159】
6)(D)アンチモン化合物を、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂とのマスターバッチとして配合する。これにより、(D)アンチモン化合物が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在しやすくなる。
【0160】
7)安定剤として、上述した(H)下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物の金属塩、好ましくはステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を配合する。これにより、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂とのエステル交換がより抑制されやすく、溶融混練や成形加工時の熱安定性に優れるため、本発明のモルフォロジー構造を有する成形品を安定して形成しやすくなる。
【0161】
8)また、射出成形により成形品を製造する場合は、例えば、射出成形機のスクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。特に、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。例えば、シリンダー温度を調整する場合は、好ましくは230〜280℃、より好ましくは240〜270℃に設定する。背圧を調整する場合は、好ましくは2〜15MPa、より好ましくは4〜10MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは20〜300rpm、より好ましくは20〜250rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、射出速度を5〜1,000mm/sec、さらには10〜900mm/sec、特に20〜800mm/sec、30〜700mm/sec、40〜500mm/secの成形条件を採用することが好ましい。これにより、表層部において、(F)エラストマー相が樹脂流動方向に配向しやすくなる。これらの中でも、成形品表層部において、(F)エラストマー相をより配向させやすくするために、射出速度を調整する方法を採用することが特に好ましい。
【0162】
特に、上記4)〜8)により、コア部において、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂の共連続構造が形成され耐衝撃性が向上し、さらに、表層部では、(F)エラストマー相が配向することにより、衝撃によるクレイズの伸長がエラストマー配向相で停止するため、耐衝撃性の向上につながると考えられる。
また、(B)ポリカーボネート樹脂を劣化させやすい(D)アンチモン化合物が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在しやすくなるため、(B)ポリカーボネート樹脂に対する悪影響が抑制でき、耐衝撃性の低下が抑えられる傾向となる。
【0163】
これら1)〜8)の方法・条件は、これを単独でも、また複数を組み合わせて適用することも好ましく、また前記した樹脂組成物の製造条件と組み合わせて適用することでもより可能となる。
【0164】
上記の方法で得られる本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、結晶化温度が100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。また、UL94に準拠した厚み1.5mmの難燃性がV−0、UL94 5V試験に準拠した厚み3.0mmの難燃性が5VA判定であることが好ましい。また、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が30kJ/m以上であることが好ましく、40kJ/m以上であることがより好ましく、45kJ/m以上であることがさらに好ましい。面衝撃強度は、成形品が全破壊するときの高さが80cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、150cm以上であることがさらに好ましい。なお、結晶化温度、難燃性、耐衝撃性の評価方法は、後述の実施例に記載の通りである。
【0165】
[成形品]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形した成形品は、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品、調理器具等の家電製品の部品等として好適に使用でき、特には電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクタ、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適であり、特には電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体として好適に使用できる。
電気自動車用充電器コネクタは、蓄電量が低下した場合に充電器を備えた設備において充電することになるが、当該設備で使用する電気自動車用充電器の接触式コネクタである。電池キャパシタ用ホルダーは、充電器(バッテリー)とは別に非常用補助電源としての大容量キャパシタを保持するホルダーである。電池キャパシタ用筐体は、上記キャパシタを構成する筐体である。また、電気自動車用充電スタンド用筺体は、100Vあるいは200Vの交流電源から電気自動車のバッテリーに充電するためのスタンドを構成する筺体である。
これら成形品の形状、大きさ、厚み等は任意である。
【0166】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて上記成形品を製造する方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも射出成形が好ましい。
【実施例】
【0167】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
【0168】
【表1】
【0169】
なお、上記臭素化ポリカーボネート系難燃剤中の遊離の臭素、塩素、硫黄含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により定量した。三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で臭素化ポリカーボネート系難燃剤を加熱し、発生した臭素、塩素及び硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて測定した。
【0170】
(実施例1〜7、比較例1〜2)
表1に示す各成分を表2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、噛み合い型同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX−30α」、スクリュー径32mm、L/D=52)に40kg/hrにて供給した。押出機のバレル設定温度C1〜C15を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ノズル数4穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)211sec−1の条件下でストランドとして押出した。押出した直後のストランド温度は270℃であった。
押出されたストランドを、温度30〜50℃の範囲に調整した水槽に導入して急冷した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で65℃まで冷却され(γ・T=1.4×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物のペレットを得た。
なお、(D)アンチモン化合物は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン(登録商標)5020」50質量%と、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン(登録商標)5008」50質量%の混合物をベース樹脂としたアンチモン化合物のマスターバッチとして使用し(マスターバッチ中の(D)アンチモン化合物の含有量は70質量%)、アンチモン化合物マスターバッチは独立した専用のフィーダーから、ブレンドしたその他の成分は根元フィーダーから、押出機へ供給した。
【0171】
下記(1)〜(5)の評価用の試験片は、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX80−9E)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃、下記(5)での離型性の評価以外は冷却時間15秒、下記(5)離型性の評価は冷却時間10秒の条件で射出成形した試験片について、評価した。なお、成形に際して、樹脂組成物はその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。
加えて、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧150MPa、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、射出速度120mm/sec、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で、(6)モルフォロジー観察用のISO引張試験片(厚さ4mm)を射出成形した。
【0172】
(1)難燃性
UL94試験用試験片(125mm×12.5mm×1.5mmt)を成形し、UL94規格に準拠して、V−0、V−1、V−2の判定をした。
また、UL94 5V Bar試験用試験片(125mm×12.5mm×3.0mmt)及び5V Plate試験用試験片(150mm×150mm×3.0mmt)を成形し、UL94 5V試験に準拠して、5VA、5VBの判定を行った。
【0173】
(2)耐衝撃特性
ノッチ付シャルピー衝撃強度:
ISO多目的試験片(厚さ4.0mm)を射出成形し、ISO179規格に準拠して試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、ノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
面衝撃強度:
大きさ150×80×40mmの箱型成形品(肉厚1.5mmt)を成形し、2.975kgの鋼球を所定の高さから落下させ、成形品が全破壊するときの高さ(単位:cm)を求めた。全破壊するときの高さが高いほど、面衝撃性に優れているといえる。なお、試験は205cmの高さまで行い、205cmで破壊しないものを「>200」と表中に記載した。
【0174】
(3)耐加水分解特性
ISO多目的試験片(厚さ4.0mm)を用い、ISO527に準拠し、引張速度50mm/分の条件で、引張強度(処理前)を測定した(単位:MPa)。
また、ISO多目的試験片(厚さ4.0mm)を、プレッシャークッカー試験機(平山製作所社製)を用いて、温度121℃、相対湿度100%、圧力2atmの条件で、75時間処理し、同様に引張強度(75hr処理後)を測定した(単位:MPa)。
【0175】
(4)耐熱変色特性
大きさ100×100×3mmtの平板試成形品を射出成形し、温度160℃の熱風オーブン中に100時間放置した。試験片の試験前後の成形品について、GretagMacbeth社製「CE−7000A」(光源:D65、視野:10°、方式:SCI)を用いて色差測定を行い、ΔEを求めた。
【0176】
(5)離型性
大きさ150mm×80mm×40mmの箱形成形品(肉厚1.5mm)を射出成形し、中央部エジェクターピンに取り付けた圧力センサーにて、成形品が金型から離型する時にかかる圧力(離型抵抗値、単位:MPa)を測定し評価した。
【0177】
(6)モルフォロジー観察:
得られたISO引張試験片(厚さ4mm)のコア部(深さ20μm未満の表層部以外の部分で、試験片断面の中心部の、樹脂組成物流動方向に平行な断面)から、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ100nmの超薄切片を切り出した。得られた超薄切片を四酸化ルテニウムで40分染色後、日立ハイテク社製「S−4800」を用い、加速電圧25kVの条件で、STEM観察した。
【0178】
得られたSTEM写真をもとに、以下の評価を行った。
i)(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相及び(B)ポリカーボネート樹脂相が、共連続相を形成しているかどうか。共連続相を形成しているものを「○」、形成していないものを「×」と下記表2に記載した。
ii)(F)エラストマーが(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在しているどうか。(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在する場合を「PC相」、(B)ポリカーボネート樹脂相に存在しない場合を「×」と記した。
iii)(F)エラストマー相の粒子径の測定
200個の最大粒子径を測定し、算術平均して算出した。
iv)(D)アンチモン化合物が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相中に存在するかどうか。なお、(D)アンチモン化合物の80%以上が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相中に存在する場合を「PBT相」、(D)アンチモン化合物の80%以上が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在しない場合を「×」とした。
【0179】
また、表層部観察用の試料としては、得られたISO引張試験片断面の表層部(深さ20μm未満の表層部)を、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ100nmの超薄切片を切り出した後の切削断面を用いた。得られた切削断面を四酸化ルテニウムで40分染色後、日立ハイテク社製「SU8020」を用い、加速電圧3kVの条件で、SEM観察した。
【0180】
得られたSEM写真をもとに、以下の評価を行った。
v)(F)エラストマー相が樹脂の流れ方向に伸びているかどうか(伸びているものを「○」、伸びていないものを「×」)。
vi)(F)エラストマー相の長径と短径の比の測定
(F)エラストマー相200個について、長径と短径を測定し、長径/短径比を算術平均した。なお、長径とは、エラストマー粒子の最大径とし、短径とは、長径に垂直な方向の径のうちの最大径とした。
【0181】
実施例7の成形品のコア部は、それぞれ図1、2に示すとおりであり(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相及び(B)ポリカーボネート樹脂相が共連続相を形成していること、(F)エラストマーが(B)ポリカーボネート樹脂相中に存在していること、(D)アンチモン化合物の80%以上が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の相中に均一に分散して存在していることが確認できた。実施例7では、難燃剤として(C)臭素化ポリカーボネートを使用しているため、難燃剤は、(B)ポリカーボネート樹脂相に存在していると考えられる。また、実施例7の表層部を示す図3から、表層部において(F)エラストマー相が樹脂の流れ方向に伸びていることも確認できた。また、実施例1〜6の成形品についても同様のモルフォロジーを示していることが確認された。
【0182】
さらに、上述の各特性評価(1)〜(5)用の試験片についても、同様にモルフォロジー観察を行った結果、上記モルフォロジー観察用のISO引張試験片(厚さ4mm)について行った実施例、比較例と同様のモルフォロジー観察結果であることが確認された。
以上の評価結果を、以下の表2に示す。
【0183】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱変色性及び離型性に優れた樹脂組成物であるので、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品、調理器具等の家電製品の部品として、例えば、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクタ、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適であり、産業上の利用性は非常に高いものがある。
図1
図2
図3