(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
【0011】
一実施形態に係るシフト装置100について、
図1〜
図4を参照して説明する。本実施形態に係るシフト装置100は、車両の運転者がシフト(ギア)を切り替えるために操作する装置である。シフト装置100は、運転席の周囲に設置される。
【0012】
図1は、本実施形態に係るシフト装置100の一例を示す外観斜視図である。
図1のシフト装置100は、シフトパネル1と、シフトレバー2と、把持部3と、接触検出部4と、解除ボタン(セレクトボタン)5と、を備える。
【0013】
シフトパネル1は、シフト装置100の表面を覆うパネルであり、表面が車内に露出する。シフトパネル1は、移動部11と、表示部12と、を有する。
【0014】
移動部11は、シフトレバー2が移動する開口部である。移動部11には、それぞれ異なるシフトに対応する複数のシフトポジションが予め設けられる。運転者は、シフトレバー2をシフトポジションに位置させることにより、当該シフトポジションに対応するシフトに車両のシフトを切り替えられる。
【0015】
表示部12は、シフトポジションの位置と、各シフトポジションに対応するシフトと、を表示する部分であり、シフトパネル1の表面に設けられる。
図1の例では、車両のシフトとして、P(パーキング)、R(リターン)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2(2速)、及び1(1速)が表示されている。移動部11における、表示部12に表示された各シフトに隣接する位置が、各シフトに対応するシフトポジションに相当する。
図1の例では、シフトレバー2は、Rに対応するシフトポジションに位置している。以下、P、R、N、D、2、及び1に対応するシフトポジションを、それぞれPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、2速レンジ、及び1速レンジと称する。
【0016】
なお、車両のシフトの種類及び配置や、シフトパネル1の形状は、上記の例に限られない。また、表示部12は、シフトパネル1の表面ではなく、把持部3の表面に設けられてもよい。また、シフト装置100は、シフトパネル1を備えなくてもよい。
【0017】
シフトレバー2は、シフトパネル1の下方から、移動部11を挿通するように立設される棒状部材である。シフトレバー2の基部(下端)は、各シフトポジションに移動可能なように車体に取り付けられる。また、シフトレバー2の先端(上端)には、把持部3が設けられる。
【0018】
把持部3は、シフトレバー2の先端に設けられたノブであり、運転者(ユーザ)により把持される。運転者が把持部3を把持して移動させることにより、シフトレバー2が移動する。把持部3は、シフトレバー2の先端以外の部分(中央部など)に設けられてもよい。
【0019】
接触検出部4は、把持部3の表面に設けられ、運転者の手が接触したことを検出することにより、運転者が把持部3を把持したことを検出する。接触検出部4は、感圧センサや静電センサなどの、運転者の接触を検出可能な任意のセンサにより構成される。接触検出部4は、運転者の把持部3への接触を検出すると、接触を検出したことを示す接触信号(検出結果)を出力する。
【0020】
図1の例では、接触検出部4は、把持部3の表面の一部を覆うシート状のセンサにより構成されている。このような構成の場合、接触検出部4の面積は、広い方が好ましく、例えば、把持部3の表面の3割以上であるのが好ましい。このような構成により、接触検出部4は、運転者の接触を確実に検出できる。また、後述する解除部7は、接触信号に基づいて、運転者による把持部3の把持と、運転者による把持部3への意図せぬ接触と、を精度よく区別できる。
【0021】
なお、接触検出部4は、把持部3の表面に設けられた複数の点状、線条、又はシート状のセンサにより構成されてもよい。この場合、接触検出部4を構成する各センサは、把持部3の表面の広い面積(例えば、3割以上の面積)に点在するように、それぞれ離間して設けられるのが好ましい。このような構成により、接触検出部4は、運転者の接触を確実に検出できる。また、後述する解除部7は、接触信号に基づいて、運転者による把持部3の把持と、運転者による把持部3への意図せぬ接触と、を精度よく区別できる。
【0022】
解除ボタン5は、シフトレバー2の移動の規制を解除するために把持部3に設けられたハードウェアボタンである。運転者は、解除ボタン5を押圧することにより、シフトレバー2の移動の規制を解除できる。解除ボタン5は、運転者による押圧されると、押圧されたことを示す押圧信号を出力する。
【0023】
図2は、本実施形態に係るシフト装置100の一例を示す側面図である。
図2における破線矢印は、信号の主たる流れを示している。
図2に示すように、シフト装置100は、規制部6、解除部7、及び位置検出部8を更に備える。規制部6、解除部7、及び位置検出部8は、
図2に示す通り、シフトパネル1の下方に配置される。
【0024】
規制部6は、シフトレバー2の移動を規制する装置である。規制部6として、電磁的な機構や機械的な機構によりシフトレバー2の移動を規制する任意のロック機構を利用できる。本実施形態において、規制部6は、シフトレバー2の位置によらず、シフトレバー2の移動を規制する。また、規制部6による規制は、解除部7により解除される。言い換えると、規制部6による規制は、解除部7により解除されない限り解除されない。
【0025】
解除部7は、規制部6によるシフトレバー2の移動の規制を解除する制御回路である。解除部7は、マイコンやECU(Engine Control Unit)などにより構成される。解除部7は、接触検出部4、解除ボタン5、及び位置検出部8と信号線で接続され、接触検出部4、解除ボタン5、及び位置検出部8から出力信号を入力される。解除部7は、接触検出部4、解除ボタン5、及び位置検出部8から入力された信号に基づいて、規制部6による規制を解除するか判定する。解除部7は、規制部6による規制を解除すると判定した場合、規制部6による規制を解除する。
【0026】
なお、
図2の例では、解除部7が規制部6と信号線で接続され、解除部7が規制部6を制御することにより、規制を解除する場合を想定している。しかしながら、解除部7は、規制部6による規制を解除する外部機構と信号線で接続され、当該外部機構を制御することにより、規制を解除してもよい。
【0027】
位置検出部8は、シフトレバー2の位置を検出する。位置検出部8は、磁気センサやロータリセンサなどの、シフトレバー2の位置を検出可能な任意のセンサにより構成される。位置検出部8は、シフトレバー2の位置を検出すると、検出された位置を示す位置信号を出力する。
【0028】
次に、本実施形態における規制の解除方法について説明する。
【0029】
本実施形態において、解除部7は、解除ボタン5が押圧されると、規制部6による規制を解除する。すなわち、解除部7は、解除ボタン5から押圧信号が入力された場合、規制部6による規制を解除する。解除ボタン5が押圧された場合、接触検出部4及び位置検出部8からの信号によらず、規制は解除される。
【0030】
また、解除部7は、解除ボタン5が押圧されていない場合、シフトレバー2が第1ポジションに位置し、かつ、運転者が把持部3を把持している場合、規制部6による第1ポジションから第2ポジションへの規制を解除する。すなわち、解除部7は、位置検出部8からシフトレバー2が第1ポジションに位置することを示す位置信号を入力され、かつ、運転者が把持部3を把持していると判定した場合、規制部6による第1ポジションから第2ポジションへの規制を解除する。
【0031】
解除部7は、接触検出部4により運転者の接触が検出されていない場合、運転者は把持部3を把持していないと判定する。
【0032】
一方、解除部7は、例えば、接触検出部4により運転者の接触が検出されている場合、すなわち、接触検出部4から接触信号を入力されている場合、運転者が把持部3を把持していると判定する。また、解除部7は、接触検出部4から接触信号を入力されており、かつ、当該接触信号が所定の条件を満たす場合に、運転者が把持部3を把持していると判定してもよい。所定の条件として、運転者の接触が継続して所定時間以上検出されていること、及び接触信号の信号強度が所定の閾値以上であること、などが挙げられる。
【0033】
このように、接触信号に基づいて、運転者が把持部3を把持しているか判定することにより、解除部7は、運転者による把持部3の把持と、把持部3に対する運転者の意図せぬ接触と、を区別できる。
【0034】
また、接触検出部4が、広い面積を有するシート状のセンサや広い面積に離間して配置された複数のセンサにより構成されている場合、解除部7は、離間した複数地点での運転者の接触が検出されている場合に、運転者が把持部3を把持していると判定してもよい。これにより、解除部7は、運転者による把持部3の把持と、把持部3に対する運転者の意図せぬ接触(例えば、指先の意図せぬ接触)と、を精度よく区別できる。
【0035】
第1ポジションは、運転者による把持部3の把持により、第2ポジションへの規制が解除されるシフトポジションである。第1ポジションとして、1つ又は複数のシフトポジションが予め設定される。シフトレバー2が第1ポジションに位置する場合、運転者は、解除ボタン5を押圧することなく、把持部3を把持するだけで規制部6による規制を解除できる。したがって、第1ポジションとして、DレンジやNレンジなどの、緊急時の操作が要求されるシフトポジションを設定するのが好ましい。これにより、運転者は、緊急時において、シフトレバー2を第1ポジションから第2ポジションへ速やかに移動できる。
【0036】
第2ポジションは、運転者による把持部3の把持により、第1ポジションからの移動の規制が解除されるシフトポジションである。第2ポジションとして、1つ又は複数のシフトポジションが予め設定される。また、第2ポジションは、各第1ポジションに対してそれぞれ設定される。
図1の例のように、シフトポジションが一列に配置される場合、第2ポジションとして、第1ポジションに隣接するシフトポジションが設定される。
【0037】
ここで、
図3は、本実施形態における規制の解除処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態において、解除部7は、接触検出部4、解除ボタン5、及び位置検出部8のいずれかから信号を入力されるたびに、又は定期的に、
図3の処理を実行する。
【0038】
まず、解除部7は、解除ボタン5が押圧されたか、すなわち、解除ボタン5から押圧信号が入力されているか判定する(ステップS101)。
【0039】
解除部7は、押圧信号が入力されている場合(ステップS101のYES)、規制部6による規制を解除する(ステップS105)。これにより、運転者は、シフトレバー2を所望のシフトポジションへ移動できる。解除部7は、シフトレバー2の移動中、規制の解除を継続し、シフトレバー2が新たなシフトポジションに位置したことが位置検出部8により検出されると、規制の解除を終了する。新たなシフトポジションには、元のシフトポジションが含まれる。
【0040】
一方、解除部7は、押圧信号が入力されていない場合(ステップS101のNO)、接触信号に基づいて、運転者が把持部3を把持しているか判定する(ステップS102)。判定方法は上述の通りである。
【0041】
解除部7は、接触信号が入力されていない場合、すなわち、運転者が把持部3を把持していないと判定した場合(ステップS102のNO)、規制部6による規制を解除せず(ステップS106)、処理を終了する。
【0042】
一方、解除部7は、接触信号に基づいて、運転者が把持部3を把持していると判定した場合(ステップS102のYES)、シフトレバー2が第1ポジションに位置するか、すなわち、位置検出部8からシフトレバー2が第1ポジションに位置することを示す位置信号が入力されているか判定する(ステップS103)。
【0043】
解除部7は、シフトレバー2が第1ポジション以外のシフトポジションに位置することを示す位置信号が入力されている、すなわち、シフトレバー2が第1ポジションに位置することを示す位置信号が入力されていない場合(ステップS103のNO)、規制部6による規制を解除せず(ステップS106)、処理を終了する。
【0044】
一方、解除部7は、シフトレバー2が第1ポジションに位置することを示す位置信号が入力されている場合(ステップS103のYES)、規制部6による、シフトレバー2による第2ポジションへの規制を解除する(ステップS104)。これにより、運転者は、シフトレバー2を第2ポジションへ移動できる。解除部7は、シフトレバー2の移動中、規制の解除を継続し、シフトレバー2が新たなシフトポジションに位置したことが位置検出部8により検出されると、規制の解除を終了する。新たなシフトポジションには、元のシフトポジション(第1ポジション)が含まれる。
【0045】
図4は、
図1のシフトポジションに対して設定された第1ポジション及び第2ポジションの一例を示す図である。
図4の例では、第1ポジションとして、Nレンジ及びDレンジが設定されている。また、Nレンジの第2ポジションとして、Dレンジが設定され、Dレンジの第2ポジションとして、Nレンジが設定されている。
【0046】
図4の例では、Pレンジ及びRレンジの間、Rレンジ及びNレンジの間、Nレンジ及びDレンジの間、Dレンジ及び2速レンジの間、及び2速レンジ及び1速レンジの間のシフトレバー2の移動の規制は、解除ボタン5を押圧することにより解除される。また、Nレンジ及びDレンジの間のシフトレバー2の移動の規制は、運転者が把持部3を把持することにより解除される。第1ポジション及び第2ポジションを
図4のように設定することにより、運転者は、余計な操作を行うことなく、NからDへ、又はDからNへ、シフト切り替えられる。
【0047】
以上説明した通り、本実施形態によれば、シフトレバー2の移動は、運転者が把持部3を把持するか、解除ボタン5を押圧しない限り、規制部6により規制される。したがって、シフトレバー2に物がぶつかった場合であっても、シフトレバー2は移動しない。これにより、運転者の意図しないシフトレバー2の移動、すなわち、シフトレバー2の誤操作が抑制されるため、車両の安全性が向上する。
【0048】
また、本実施形態によれば、第1ポジションに位置するシフトレバー2の規制は、運転者が把持部3を把持することにより解除される。したがって、運転者は、シフトレバー2を第1ポジションから第2ポジションへ速やかに移動できる。第1ポジション及び第2ポジションとして、緊急時の操作が要求されるシフトポジションを設定することにより、緊急時におけるシフトレバー2の操作の遅れを抑制できる。これにより、車両の操作性が向上する。
【0049】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0050】
また、本国際出願は、2017年4月6日に出願した日本国特許出願第2017−076127号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。