特許第6695141号(P6695141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695141
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】光学レンズ部材をテーピングする方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20200511BHJP
   B24B 13/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   G02C13/00
   B24B13/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-546963(P2015-546963)
(86)(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公表番号】特表2016-501390(P2016-501390A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2013075915
(87)【国際公開番号】WO2014090723
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年9月2日
【審判番号】不服2018-10427(P2018-10427/J1)
【審判請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】12306568.2
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518040079
【氏名又は名称】エシロール エンテルナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】エリック ガコワン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス カストロ
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 高松 大
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/003939(WO,A1)
【文献】 米国特許第5343657(US,A)
【文献】 特表平7−509411(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2199021(EP,A1)
【文献】 特開2009−125850(JP,A)
【文献】 特開平11−309657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
B24B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造される光学レンズ部材(10)をテーピングする方法であって、
− 第1の基準系に関連付けられた第1の光学面(11)と製造される第2の光学面(12)とを含む光学レンズ部材(10)が提供される光学レンズ部材提供工程(S1)であって、前記第1及び第2の光学面は外周面(14)により接続され、前記第1の基準系は前記光学レンズ部材の前記第1の光学面上及び/又は前記外周面上の少なくとも1つの基準素子(111)により識別される、工程と、
− 接着テープ(17)が前記第1の面の少なくとも一部を覆うとともに前記基準素子を覆わないままにするように前記レンズ部材の前記第1の面上に設けられるテーピング工程(S2)と、
前記テーピング工程中に、前記接着テープの一部が、前記光学レンズ部材の前記第1の光学面上に配置された後、前記基準素子が覆われないままにするように切り離され除去される切断工程とを含む方法。
【請求項2】
前記光学レンズ部材の前記第1の光学面は中央帯(112)と周辺帯(113)とに分割され、前記第1の基準系を識別する前記基準素子は前記周辺帯に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周辺帯(113)は前記第1の光学面の前記外周面(14)から10mm以下の距離にわたって延びる環形状を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中央帯は研削される前の前記光学レンズの前記第1の光学面の最終形状に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記テーピング工程中に、前記接着テープは前記中央帯だけを覆うように設けられる、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
− 請求項1〜5のいずれか一項に記載のレンズ部材提供工程及びテーピング工程と、
− ブロッカー基準系を有するブロッカーが設けられるブロッカー提供工程(S3)と、
− 光学レンズ部材がブロッキング位置の前記ブロッカー上にブロックされるブロック工程(S4)であって、前記ブロッキング位置は第1の基準系を使用することにより前記ブロッカー基準系に対して判断される、工程(S4)と
を含む光学レンズ部材をブロックする方法。
【請求項7】
− 請求項6に記載のレンズ部材提供工程、テーピング工程、ブロッカー提供工程、及びブロック工程と、
− 製造される光学レンズの第2の面に対応する面データが提供される面データ提供工程(S5)と、
− 第1及び前記第2の面の相対位置が反映されるように、前記光学レンズ部材の前記第2の面が前記面データと基準素子により識別される第1の基準とに従って製造される製造工程(S6)と
を含む光学レンズ製造方法。
【請求項8】
− 前記第1の基準系と前記ブロッカー基準系との間のブロッキング位置決め誤差が判断される比較工程(S51)と、
− 前記第1及び第2の面の前記相対位置が反映されるようにレンズ製造ツールの操作パラメータが前記面データと前記ブロッキング位置決め誤差とに従って構成される構成工程(S52)とを更に含み、且つ、
− 前記製造工程中に、前記光学レンズ部材は前記レンズ製造ツールの前記操作パラメータを使用して製造される、請求項7に記載の光学レンズ製造方法。
【請求項9】
− 前記面データは更に、前記製造される光学レンズの前記第1の面に対する前記第2の面の位置を含み、
前記製造工程は、
○前記光学レンズの前記第2の面が前記面データに従って機械加工される機械加工工程(S62)と、
○前記第2の面の第2の基準系を識別する第2の基準素子が前記光学レンズの前記第2の面上に設けられる第2の基準素子提供工程(S63)と
を含み、
第2の基準素子は、第2の面が第1の面に対して位置決めするために使用される、請求項7又は8に記載の光学レンズ製造方法。
【請求項10】
前記基準素子は光学的マーク及び/又は少なくとも1つの機械的素子を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記機械的素子は前記光学レンズ部材の少なくとも前記外周面上に形成された面取り帯に対応する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記製造工程は、前記第2の基準素子提供工程前に第2の基準素子が、少なくとも、前記光学レンズの屈折特性を表す光学データと前記第1及び第2の基準素子が観測される観測条件を表す観測データとに従って判断される第2の基準素子判断工程(S61)を更に含む、請求項に記載の光学レンズ製造方法。
【請求項13】
プロセッサにアクセス可能な1つ又は複数の格納された一連の命令であって、前記プロセッサにより実行されると前記プロセッサに請求項8〜12のいずれか一項に記載の工程を実行させる1つ又は複数の格納された一連の命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造される光学レンズ部材をテーピングする方法、光学レンズ部材をブロックする方法、及び光学レンズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における本発明の背景の論述は、本発明の状況について説明するために含まれる。これは、参照される資料のいずれも特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で公表された、既知であった、又は一般的知識の一部であったことを認めるものではない。
【0003】
光学レンズは通常、プラスチック又はガラス材料で作られ、通常、所要矯正処方を提供するために互いに協働する2つの対向面を有する。これらの面の一方の他方に対する位置決め又はこれらの面の一方の形状が不正確な場合、光学誤差が生成され得る。
【0004】
所要矯正処方に対する光学レンズの製造は通常、半製品レンズ又はレンズブランクの表面を機械加工する工程を含む。通常、半製品レンズは仕上げ面、例えば前面と未仕上げ面、例えば裏面とを有する。レンズの裏面を機械加工して材料を除去することにより、所望矯正処方の、前面に対する裏面の所要形状及び位置を生成することができる。
【0005】
レンズの製造中、半製品レンズは、光学誤差の発生を防止するとともに作動力の良好な伝搬を可能にするために、様々な製造作業中にブロッキングシステム(blocking system)上の正確な位置に確実に維持されることが重要である。
【0006】
従来、半製品レンズは仕上げ面上に彫り込みマーク(engraved markings)を備える。彫り込みマークはレンズの仕上げ面の設計の基準系を定義する。
【0007】
半製品レンズの未仕上げ面を正確に製造するために、半製品レンズはレンズの仕上げ面をブロッカー(blocker)上にブロックすることにより維持される。半製品レンズをブロッカーへ固定するために様々な材料が採用され得る。これらの材料としては、接着剤、熱可塑性プラスチック材料、及び低温可融合金が挙げられる。
【0008】
このような材料の使用は、レンズの仕上げ面がブロッカー上にブロックされるまで保護されることを必要とする。半製品レンズをブロックする前に、保護テープが通常、仕上げ面上に配置される。
【0009】
保護テープは、例えば半製品レンズを通した彫り込みマークの観察を困難にし得る。したがって、半製品レンズがブロックされる位置を正確に判断することは困難であり得る。ブロッカー上の半製品レンズの不正確な位置は最終レンズの光学誤差を生成し得る。
【0010】
更に、未仕上げ面を製造した後に光学レンズの両光学面の相対位置を正確に判断することは困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、両面の位置決めの精度が向上された光学レンズの製造を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によると、光学レンズ部材をテーピングする方法が提供される。本方法は、
− 第1の基準系に関連付けられた第1の光学面と製造される第2の光学面とを含む光学レンズ部材が提供される光学レンズ部材提供工程であって、第1及び第2の光学面は外周面により接続され、第1の基準系は光学レンズ部材の第1の光学面上及び/又は外周面上の少なくとも1つの基準素子により識別される、工程と、
− 接着テープが第1の面の少なくとも一部を覆うとともに基準素子を覆わないままにするようにレンズ部材の第1の面上に設けられるテーピング工程と
を含む。
【0013】
有利には、基準素子が覆われないままにするように接着テープを設けることでこのような基準素子の位置の判断の精度を向上させる。したがって、オペレータは光学レンズ部材の第1の面を保護する一方で基準素子したがって第1の基準系の位置をより容易且つ正確に判断し得る。
【0014】
単独で又は組み合わせで考えられ得る別の実施形態によると、
− テーピング工程中、本方法は、接着テープの一部が、光学レンズ部材の第1の光学面上に配置された後、基準素子が覆われないままにするように切り離され除去される切断工程を更に含み、及び/又は
− テーピング工程中、接着テープはプレカットチップ(pre−cut chip)として設けられ、及び/又は
− 光学レンズ部材の第1の光学面は中央帯(central zone)と周辺帯(peripheral zone)とに分割され、第1の基準系を識別する基準素子は周辺帯に存在し、及び/又は
− 周辺帯は第1の光学面の側面から10mm以下の距離にわたって延びる環形状を有し、及び/又は
− 中央帯は、研削される前の光学レンズの第1の光学面の最終形状に対応し、及び/又は
− テーピング工程中に、接着テープは中央帯だけを覆うように設けられ、及び/又は
− 基準素子は光学的マーク及び/又は少なくとも1つの機械的素子を含み、及び/又は
− 機械的素子は単一又は複数の機械加工済み支持帯、例えば光学レンズ部材の少なくとも外周面上に形成された面取り帯に対応する。
【0015】
本発明はまた、
− 本発明によるレンズ部材提供工程及びテーピング工程と、
− ブロッカー基準系を有するブロッカーが設けられるブロッカー提供工程と、
− 光学レンズ部材がブロッキング位置のブロッカー上にブロックされるブロック工程であって、ブロッキング位置は第1の基準系を使用することによりブロッカー基準系に対して判断される、工程と
を含む光学レンズ部材をブロックする方法に関する。
【0016】
本発明は更に、光学レンズ製造方法に関する。本方法は、
− 本発明による、レンズ部材提供工程、テーピング工程、ブロッカー提供工程、及びブロック工程と、
− 製造される光学レンズの第2の面に対応する面データが提供される面データ提供工程と、
− 第1及び第2の面の相対位置が反映されるように、光学レンズ部材の第2の面が面データと基準素子により識別される第1の基準とに従って製造される製造工程と
を含む。
【0017】
単独で又は組み合わせで考えられ得る別の実施形態によると、
− 本方法は、
− 第1の基準系とブロッカー基準系との間のブロッキング位置決め誤差が判断される比較工程と、
− 第1及び第2の面の相対位置が反映されるようにレンズ製造ツールの操作パラメータが面データとブロッキング位置決め誤差とに従って構成される構成工程とを更に含み、且つ
− 製造工程中、光学レンズ部材はレンズ製造ツールの操作パラメータを使用して製造され、及び/又は
− 面データは更に、製造される光学レンズの第1の面に対する第2の面の位置を含み、製造工程は、
○光学レンズの第2の面が面データに従って機械加工される機械加工工程と、
○第2の面の第2の基準系を識別する第2の基準素子が光学レンズの第2の面上に設けられる第2の基準素子提供工程と
を含み、及び/又は
− 製造工程は、第2の基準素子提供工程前に第2の基準素子が、少なくとも、光学レンズの屈折特性を表す光学データと第1及び第2の基準素子が観測される観測条件を表す観測データとに従って判断される第2の基準素子判断工程を更に含む。
【0018】
本発明は更に、プロセッサにアクセス可能な1つ又は複数の格納された一連の命令であって、プロセッサにより実行されるとプロセッサに本発明による方法の工程を実行させる1つ又は複数の格納された一連の命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0019】
次に本発明の非限定的実施形態について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の様々な実施形態による方法の工程を表すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に従って製造される光学レンズ部材の概略側面図である。
図3】本発明の実施形態に従って機械加工される光学レンズ部材の予め成形された面の平面上面図である。
図4】本発明の一実施形態によるテーピング工程を実施するために使用され得る装置の実施例の概略側面図である。
図5】ブロッキング装置上にブロックされたレンズ部材の概略断面図である。
図6】本発明の一実施形態によるブロッキング台上のレンズ部材の概略図である。
図7図6のブロッキング台のブロッキング装置とブロック板との接触面の平面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図中の要素は簡略化及び明確化のために示されており、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、本発明の実施形態の理解を深めるのを支援するために他の要素に対して誇張されることがある。
【0022】
本発明の意味では、「設計」は、一般的光学系の光学機能を定義できるようにする一組のパラメータを指定するために当業者に公知の広く使用される用語であり、各眼用レンズ製造者は、特に非球面レンズと累進レンズの製造者自身の設計を有する。一例として、すべての距離ではっきり見るために老眼者の能力を回復し、また中心視覚、中心外視覚、双眼視覚などのすべての生理学的視覚機能を最適に反映し、不要な非点収差を最小化するような、累進表面の最適化の累進レンズ「設計」の結果。
【0023】
本発明の意味では、「製造パラメータ」は製造方法に関与する様々な製造装置の設定パラメータである。本発明の意味では、「方法パラメータ」はレンズの製造に使用される製造装置に関する任意の測定可能パラメータを含む。
【0024】
図1に示す本発明の実施形態によると、製造される光学レンズ部材をテーピングする方法は少なくとも
− 光学レンズ部材提供工程S1と
− テーピング工程S2と
を含む。
【0025】
光学レンズ部材提供工程S1中に、製造される光学レンズ部材が提供される。
【0026】
図2に表されるように、光学レンズ部材10は、第1の設計による第1の光学面、例えば予め成形された前面11を有する。得られた完成光学レンズの使用中、予め成形された前面11は観察中の物体の最も近くに配置される。光学レンズ部材は更に、例えば点線により表される完成光学レンズの裏面13を提供する製造工程により修正される第2の光学面12を含む。第2の光学面12は、所要光学的処方に従って、裏面13が前面11に対して方向付けられ前面から間隔を置かれるように、機械加工具により機械加工される。第1及び第2の光学面は外周面14により接続される。
【0027】
本発明の本実施形態では、第1の面はレンズ部材の前面であり、第2の面は裏面であるが、本発明の別の実施形態では、第1の面が半製品レンズ部材の裏面であり得、第2の面が前面で有り得ることが理解される。
【0028】
更に、本発明の本実施形態では、光学レンズの裏面は機械加工処理により形成されるが、本発明の別の実施形態では、レンズの両方又はいずれか一方の面が機械加工処理により形成され得ることが理解される。
【0029】
更に、製造される面13は図2では凹面で表されるが、この表面13は同様に良好な凸面又は任意の他の湾曲面で有り得ることが理解される。
【0030】
図3を参照すると、基準素子111が、第1の面11の第1の設計の位置決めのための第1の基準系を定義する基準特徴としてレンズ部材10の第1の面11に設けられる。
【0031】
図3に表されるように、レンズ部材の第1の光学面は中央帯112と周辺帯113とに分割され得る。基準素子111は周辺帯113内に存在する。
【0032】
本発明の一実施形態によると、周辺帯113は10mm以下(例えば5mm以下)の距離にわたって第1の光学面11の側面から延びる環形状を有する。有利には、このような周辺帯内に基準素子111を有することで、得られる完成光学レンズの装着者を妨害するこのような基準素子を有するリスクを制限する。実際、周辺帯は、装着者により選択される眼鏡フレームに合うように完成光学レンズを研削する際に研削される可能性が高い。
【0033】
本発明の一実施形態によると、中央帯112は、機械加工された後及び研削される前の光学面の第1の光学面の最終形状に対応し得る。したがって、基準素子111は、周辺帯113が除去されるため装着者を妨害するリスクを生じない。
【0034】
本発明の一実施形態によると、基準素子111は、光学的マーク、例えばレンズ部材の第1の光学面上の数マイクロメートルの深さを有する彫り込みマークであり得る、又は機械的素子、例えば光学レンズ部材10の少なくとも外周面上に形成された面取り帯を含む。
【0035】
本発明の意味では、光学的マークは光学的手段により検知され得るマークである。
【0036】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2の光学面を接続する外周面14が第1の機械的基準として使用され得、外周面14と光学面の一方の面との間の傾斜を形成する部分が第2の機械的基準として使用され得る。傾斜を形成する部分は面取り帯であり得る。
【0037】
機械的マークは、例えば外周面14上又は第1の光学面上の溝付き帯(grooved zone)を含み得る。
【0038】
機械的マークは外周面14上に形成された複数(例えば3個)のノッチを含み得る。
【0039】
テーピング工程S2中、接着テープは、第1の光学面の少なくとも一部を覆うとともに少なくとも基準素子が覆われないままにするように、レンズ部材の第1の光学面上に設けられる。
【0040】
好適な粘着性テープの実施例は米国特許第6,036,013号明細書に示される。
【0041】
図3に示す実施形態によると、接着テープは中央帯だけを覆うように配置され得る。この状況は、テープの使用をレンズ部材使用可能面だけに縮小することができるため、有利である。
【0042】
接着テープは、例えば円形状又は卵形又は楕円形状のプレカットチップとして設けられ、レンズ部材の第1の光学面の上に(例えば中央帯の上に)配置され得る。プレカットチップは光学レンズ部材の第1の光学面の平均直径より小さい平均直径を有する。プレカットチップは、例えば真空ベースの装置を使用して、手動で又は自動的に配置され得る。
【0043】
有利には、接着テープをプレカットチップとして設けることで、オペレータがテーピング工程を実施するのをより容易にする。
【0044】
本発明の実施形態によると、テーピング工程は、第1の光学面全体をテーピングする工程と、接着テープの一部が、基準素子を覆わないままにするように切り離され除去される切断工程とを含み得る。
【0045】
接着テープは切断刃及び/又は加熱チップ(heating tip)を使用することにより除去され得る。
【0046】
図4に表されるように、数ミリメートルのリング15の端から離れた内部溝16を有するリング15が光学レンズ部材10の周囲に設けられる。このとき、接着テープ17は、第1の光学面11の上に配置され、例えば内部溝内でホットチップ(hot tip)18を動かすことにより切断され得る。
【0047】
本発明の一態様によると、光学レンズ部材は、テーピングされた後、ブロックされる。
【0048】
図1に表されるように、本発明によるブロック方法は、テーピング工程後に、ブロッカー提供工程S3とブロック工程S4とを含み得る。
【0049】
ブロッカー提供工程S3中、ブロッカー基準系を有するブロッカーが設けられる。
【0050】
ブロック工程S4中、光学レンズ部材はブロッキング位置のブロッカー上にブロックされる。ブロッキング位置は、第1の基準系を使用することによりブロッカー基準系に対して判断される。
【0051】
次に図5を参照すると、製造工程中にレンズ部材10を正しい位置にブロックするためのレンズブロッキング装置はインサート21とブロックリング22とを含む。レンズ部材10の下面、インサート21、及びブロックリング22により画定される空洞中にブロック鋳込み材料(blocking cast material)24が注がれる。ブロック鋳込み材料24は、機械加工のために所望位置にレンズ部材10のブロッカーを設けるために冷却し固化する。
【0052】
図6に示すように、レンズブロッキング装置20はブロッキング台30の一部である。ブロッキング台30は、ブロッキング台30の上部板31上に配置されたブロッキング装置20と、自由位置から、ブロッキング装置20上の適所にレンズ部材10を保持するクランプ位置へと移動され得るクランプアーム35とを含む。ブロッキング台30はまた、ブロッキング装置20上のレンズ部材10の位置決めを撮像するディジタルカメラ36とディジタルカメラ36からの像を観察するための画面37とを含む。レンズ部材10はまた、ディジタルカメラ36を使用することなくオペレータにより直接観察され得る。
【0053】
図7に示すように、ブロッキング装置20は、ブロックリング22上に設けられた位置合わせマーク222と中央マーク211とを含むブロッカー基準マークを備える。インサートがブロックリングの中心に設けられる場合、中央マーク211はインサート上に設けられる。ブロッキング台30の上部板31は、上部板31上にブロックリング22を受け入れることに専従する。リング上の位置合わせマーク222は、リング22がブロック板31上に正しく配置され得るようにする上部板31上の対応する位置決め突起を受け入れるための穴を含み得る。位置合わせマーク222は更に、位置合わせを支援するために基準軸に追随する線状マークを備え得る。
【0054】
レンズ部材10がブロッキング装置20上に配置された後、オペレータは、ブロッキング工程を続ける前にブロッキング装置20の基準マークに対するレンズ部材10の基準マーク111の直接視覚化により、位置決めの質に関する初期判断をなし得る。オペレータが初期位置決めに満足しなければ、レンズ部材10はブロッキング装置20上に手動で又は自動的に再配置され得る。オペレータが位置決めに満足すれば、ブロッキング装置20上の適切な位置にレンズ部材10を保持するようにクランプアーム35が配置され得る。
【0055】
次に、ブロッキング装置20上のレンズ部材10の位置決めはディジタルカメラ36を使用して定量化され得る。レンズ部材10の位置決め状態を測定するために、ブロッキング装置20上に設けられたレンズ部材と基準マーク211及び222との上に設けられた基準素子111は、図6に示すように、ブロッキング装置20のカメラ36によりレンズ部材10を通して観察される。レンズ部材10の屈折特性に起因するレンズ部材10の前面11上に配置された基準素子111の像のズレは、ブロックリング22上の基準マークに対する第1の基準系の位置の測定を行う際に考慮される。
【0056】
周辺帯113は、レンズ部材がブロッキング装置上にブロックされたときでもレンズ部材を通してマークを見えるように保つ利点を提供する。周辺帯113はまた、ブロックリングの機械的基準部と協働するとともにレンズ部材の位置決めを助けるレンズ部材の外側部を遊離する。周辺帯113のいかなる膜の存在も完成光学レンズ内に制御不能光学プリズムを生成するであろう。
【0057】
本発明による方法は更に、光学レンズ部材をブロックした後に、光学レンズ部材の第2の光学面を製造する工程を含み得る。図1に示すように、本方法は更に、面データ提供工程S5と製造工程S6を含み得る。
【0058】
面データ提供工程S5中、製造される光学レンズの第2の光学面13に対応する面データが提供される。
【0059】
製造工程S6中、光学レンズ部材の第2の面は、面データと、第1及び第2の面の相対位置が反映されるように基準素子により識別される第1の基準とに従って製造される。
【0060】
製造方法の精度と製造された光学レンズの質とを向上させるために、本方法は、製造工程S6の前に比較工程S51と構成工程S52を含み得る。
【0061】
比較工程S51中、ブロッキング位置誤差が判断される。ブロッキング位置誤差は、第1の基準系とブロッカー基準系との位置の違いに対応する。
【0062】
構成工程S52中、レンズ製造ツールの操作パラメータは、第1及び第2の面の相対位置が反映されるように、面データとブロッキング位置決め誤差とに従って構成される。
【0063】
第1及び第2の光学面の相対位置の簡単な制御方法を提供するために、本発明による方法の製造工程S6は、第2のマーク判断工程S61、機械加工工程S62、及び第2のマーク工程S63を含み得る。
【0064】
第2のマーク判断工程S61中、第2の面の第2の基準系を識別する第2のマークが判断される。第2のマークは、少なくとも光学レンズの屈折特性を表す光学データと第1及び第2のマークが観測される観測条件を表す観測データとに従って判断され得る。
【0065】
光学データは、光学レンズを製造するための装着者の処方を少なくとも表す。
【0066】
例えば、第2のマークは、第2の面が第1の面に対して正しく位置決めされるときの観測条件における基準素子111と同じ位置に現われるように決定され得る。有利には、オペレータは第1及び第2の基準系の相対位置を非常に容易にチェックし得る。
【0067】
第2のマークは位置決め誤差公差を考慮するように決定され得る。
【0068】
光学レンズ部材の第2の光学面は、面データに従って機械加工工程S62中に機械加工される。
【0069】
第2のマーク判断工程S61中に判断された第2のマークは、第2のマーク提供工程S63中に、機械加工された第2の光学面上に設けられる。
【0070】
本方法の全体的な精度を向上させるために、第2のマーク提供工程中、光学レンズは機械加工工程中と同じ位置にブロックされる。
【0071】
本発明は、一般的発明概念の限定無しに、実施形態を用いて上に説明された。特に、上述の実施形態では、基準素子はカメラを使用することにより識別されたが、基準素子の位置を判断できるようにする任意の判断装置を使用し得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7