特許第6695145号(P6695145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695145
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】光源装置及び照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20200511BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20200511BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20200511BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20200511BHJP
   C12H 1/00 20060101ALN20200511BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200511BHJP
【FI】
   F21S2/00 600
   F21V9/30
   F21V9/08 100
   F21V9/08 400
   F21V19/00 450
   F21S2/00 231
   !C12H1/00
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-1005(P2016-1005)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-123244(P2017-123244A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 健吾
(72)【発明者】
【氏名】奥村 振一郎
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−156187(JP,A)
【文献】 特開2013−222709(JP,A)
【文献】 特開2013−257985(JP,A)
【文献】 特開2011−222665(JP,A)
【文献】 特開2011−199054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/08
F21V 9/30
F21V 19/00
C12H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色LED及び前記青色LEDに照射されることで黄色を発光する蛍光体によって白色光を照射する光源と、
前記光源の光が通過するカバーと、
を備え、
前記カバーは、
前記光源から照射された白色光のうち予め350(nm)〜550(nm)に定められた波長帯の光を、前記波長帯よりも長波長へ変換する波長変換部と、
前記波長変換部よりも前記光源から遠い位置に設けられ、前記波長帯の光を吸収する光吸収部とを含む
光源装置。
【請求項2】
前記波長帯には、
第1の波長範囲及び前記第1の波長範囲よりも長波長の第2の波長範囲が含まれており、
前記波長変換部は、
前記第1の波長範囲よりも前記第2の波長範囲の方が、前記光源の光の変換特性が高くなるように構成され、
前記光吸収部は、
前記第2の波長範囲よりも前記第1の波長範囲の方が、前記光源の光の吸収特性が高くなるように構成されている
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光吸収部は、
前記第2の波長範囲の波長のうちの最大側の波長以上において、前記光源の光の透過特性が最大となるように構成されている
請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光源が実装された基板をさらに備え、
前記基板には、
前記光源の実装面に光反射材が形成されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の光源装置と、
前記光源装置が設けられた体と、
前記筐体に取り付けられ、前記光源装置の光源の周囲に配置され、前記光源の光を反射する反射面が形成されている筒状の反射部と、
前記反射部のうち前記筐体に取り付けられている側とは反対側の開口端部に設けられ、前記光源装置のカバーを支持する外枠部と、
を備えた
照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールの日光臭は光劣化臭ともいわれ、瓶ビールを日光にさらした時に発生する異臭である。日光臭の原因物質は、ビールの苦味成分であるイソアルファ酸分子の側鎖部分が520(nm)以下の波長によって分解し、ビール中の含硫アミノ酸からできた発生期の硫化水素が結合して生成するチオール化合物である3−メチル−2−ブテン−1−チオールといわれている。このため、従来より、ビールの瓶には日光臭の要因となる520(nm)以下の波長(以下、特定波長帯とも称する)の光を吸収しやすい茶色の瓶が使用されている。
【0003】
しかし、ビールの瓶を茶色にしても、特定波長帯の光を瓶で吸収しきれず、日光臭が発生してしまうことがある。このため、ビール保管倉庫の照明には、特定波長帯をあまり含まないナトリウムランプが一般的に使われていた。
【0004】
その一方で、近年では、長寿命及び低消費電力等の観点から、照明用光源としては、LED及び有機EL等の発光ダイオードを搭載したものが普及してきている。この発光ダイオードの多くは、特定波長帯に分光分布のピーク波長をもつ。したがって、ビール保管倉庫においては、この発光ダイオードを用いた照明の普及が進んでいない。
【0005】
ところで、光源から照射された光の波長の一部を変換する波長変換シートを設けた光源装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。その他に、光源を収容するカバーに光源から照射された光の波長の一部を吸収するシートを設け、光源から照射される光のうち、特定波長帯の光をカットするものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−32373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光の波長の一部を吸収するシートを用いる手段は、光源から照射される光のエネルギーを吸収する分、エネルギー効率が低下してしまう。なお、エネルギー効率は、光源装置に投入する電力エネルギーに対する(以下、投入エネルギーとも称する)、光源装置から放射される光のエネルギー(以下、放射エネルギーとも称する)の割合である。
【0008】
波長変換シートを用いる手段では、光源から照射される光の波長の一部を変換することができる。しかし、波長変換シートが変換できる波長帯によっては、被照射体(例えば、上述のビールに対応)に影響を与える特定波長帯の光が残ってしまうことがある。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、エネルギー効率が低下してしまうことを抑制しながら、特定波長帯の光をカットすることができる光源装置及び照明器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光源装置は、青色LED及び青色LEDに照射されることで黄色を発光する蛍光体によって白色光を照射する光源と、光源の光が通過するカバーと、を備え、カバーは、光源から照射された白色光のうち予め350(nm)〜550(nm)に定められた波長帯の光を、予め定められた波長帯よりも長波長へ変換する波長変換部と、波長変換部よりも光源から遠い位置に設けられ、予め定められた波長帯の光を吸収する光吸収部とを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光源装置によれば、上記構成を有しており、まず、波長変換部によって、光源から照射された光の波長の一部を、予め定められた波長帯よりも長波長に変換する。これにより、予め定められた波長帯の放射エネルギーは減少するものの、この予め定められた波長帯よりも長波長に変換された光の放射エネルギーは増加する。このため、光源装置の放射エネルギーが減少することを抑制することができ、光源装置のエネルギー効率が減少してしまうことを抑制することができる。
また、本発明に係る光源装置によれば、波長変換部にて予め定められた波長帯の光を変換しきれない場合には、この光は波長変換部を通過してしまう。しかし、この変換しきれなかった光は、光吸収部にて吸収される。このため、光源装置では、日光臭の要因となる520(nm)以下の波長(特定波長帯)をより確実にカットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る光源装置100を備えた照明器具1の斜視図である。
図2図1に示す点線A−Aにおける断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る光源装置100が含む光源11の分光分布の図である。
図4】本発明の実施の形態に係る光源装置100の波長変換部の特性についての説明図である。
図5】本発明の実施の形態に係る光源装置100の光吸収部の特性についての説明図である。
図6】本発明の実施の形態に係る光源装置100が含む光源11から出射される光のうちの特定波長帯の光がカットされることを説明する図である。
図7】本発明の実施の形態に係る光源装置100から照射される光の分光分布を示した図である。
図8】本発明の実施の形態に係る光源装置100の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光源装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0014】
実施の形態.
図1は、本実施の形態に係る光源装置100を備えた照明器具1の斜視図である。図2は、図1に示す点線A−Aにおける断面図である。図1及び図2に基づいて、光源装置100及び照明器具1について説明する。
本実施の形態に係る光源装置100は、光のエネルギー効率が低下してしまうことを抑制しながら、特定波長帯の光をカットすることができる改良が加えられたものである。
【0015】
[構成説明]
照明器具1は、複数の光源11及び複数の光源11が実装された基板12を有する光源モジュール10(または光源)と、光源モジュール10から出射される光の波長特性を変換して出射するカバー20と、光源モジュール10が取り付けられる筐体30と、基板12の側方に配置される反射部40と、カバー20を反射部40との間に挟み込むように支持し筐体30に固定される外枠部50とを有している。
【0016】
なお、光源装置100は、複数の光源11、基板12及びカバー20に対応する構成を備えたものである。
【0017】
(光源モジュール10)
光源モジュール10は、光源11及び基板12を含む。また、光源11には、例えば、一般的に使用される白色LED、有機EL等の発光ダイオードを採用することができる。基板12は、複数の光源11が実装されている。なお、光源モジュール10は、図示しない点灯装置から電力が供給され点灯する。
光源11は、例えば、複数が基板12に実装される。基板12は、たとえば、ガラスエポキシ樹脂等で構成することができる。また、基板12には、光源11から照射された光を反射する光反射材が形成されているとよい。この光反射材は、例えば、光を高効率に反射することができる白色等の樹脂で構成することができる。そして、この光反射材は、基板12のうち、光源11と電気的に接続される部分以外の部分に形成するとよい。これにより、光源11から照射された光のうち、カバー20に直接進まない光も、カバー20に向けることができる。
【0018】
(カバー20)
カバー20は、例えば円板形状であり、光源11から照射された光等が通過する。カバー20は、例えば、光源11の対向位置に配置される。カバー20の厚みは、例えば、2〜3mm程度に設定する。カバー20は、予め定められた波長帯の光を別の波長域の光に変換する波長変換部21と、予め定められた波長帯の光を吸収する光吸収部22とを備えている。つまり、光吸収部22は、カバー20を予め定められた波長帯の光が通過してしまうことを防いでいる。
【0019】
波長変換部21は、光吸収部22よりも内側に配置されている。つまり、波長変換部21は、光吸収部22よりも光源11側(光源モジュール10側)に配置されており、光吸収部22よりも光源11に近い側に設けられている。また、波長変換部21及び光吸収部22のいずれについても、平面視形状は例えば円板形状で同様である。なお、波長変換部21及び光吸収部22の厚みについては、異なっていてもよく、適宜設定することができる。
【0020】
光吸収部22は、波長変換部21よりも外側に配置されている。つまり、光源11を出た光は、まず、波長変換部21に入り、その後に光吸収部22に入る。すなわち、光吸収部22は、波長変換部21よりも光源11に遠い側に設けられている。
【0021】
波長変換部21と光吸収部22とは面同士が接触して設けられている。なお、波長変換部21と光吸収部22とが面同士で接触して設けられた態様に限定されるものではない。波長変換部21及び光吸収部22は、例えば、波長変換部21と光吸収部22との間に、隙間が形成されるように離して配置してもよい。また、波長変換部21と光吸収部22との間に、別の部材(樹脂等)を設けてもよい。
【0022】
波長変換部21は、予め定められた波長帯の光を、この予め定められた波長帯よりも長波長の光に変換する機能を有している。ここで、予め定められた波長帯とは、例えば350(nm)〜550(nm)の範囲を指している。また、予め定められた波長帯よりも長波長とは、例えば、550(nm)より長い波長を指している。波長変換部21は、予め定められた波長帯よりも長波長の光に変換する機能を備えるため、光源11の光(励起光)によって励起する蛍光体を含んでいる。具体的には、次の通りである。
波長変換部21は、例えば、蛍光体を含むアクリル板で構成することができる。ここで、波長変換部21には、単一種類の蛍光体を用いてもよいし、複数種類の蛍光体を用いてもよい。
単一種類の蛍光体を用いる場合においては、蛍光体は、光源11の特定波長帯の光によって励起し、異なる分光分布の光(蛍光)を放射する橙〜赤色の蛍光体を用いる。橙〜赤色の蛍光体の成分は、例えば、ユーロピウム付活アルカリ土類窒化物蛍光体を用いることができる。なお、ユーロピウム付活アルカリ土類硫化物蛍光体を用いてもよいが、ユーロピウム付活アルカリ土類窒化物蛍光体の方が、耐水性及び温度消光等の特性面でメリットがある。
複数種類の蛍光体を用いる場合においては、橙〜赤色の蛍光体に加えて、光源11の特定波長帯の光によって励起し、異なる分光分布の光を発光する緑色〜黄色の蛍光体を用いるとよい。
その他に、波長変換部21は、例えば、ゴムシートに蛍光体を配合したものに対し、樹脂をラミネートして構成することもできる。
【0023】
なお、例えばビール保管倉庫の照明の場合には、先述したように、ビールの苦味成分を分解することがないように、520(nm)より長い波長の光で照明をすることが好ましい。光源装置100をビール保管倉庫の照明に用いるのであれば、光源装置100のカバー20で、350(nm)〜550(nm)の波長帯の光をカットし、550(nm)よりも長波長を照射するように構成する。
【0024】
ここで、予め定められた350(nm)〜550(nm)の予め定められた波長帯のうち、350(nm)〜450(nm)の範囲を第1の波長範囲と規定する。また、450(nm)〜550(nm)の範囲を第2の波長範囲と規定する。
【0025】
波長変換部21は、波長が第1の波長範囲に属する光のうちの一部(以下、一部の光k1とも称する)を、予め定められた波長帯よりも長波長に変換する機能を有する。すなわち、波長変換部21は、第1の波長範囲における光に基づく総エネルギーのうちの一部を、予め定められた波長帯よりも長波長の光に基づくエネルギーに変換している。なお、第1の波長範囲における光に基づく総エネルギーのうちの全部が変換されるわけではない。第1の波長範囲における光に基づく総エネルギーのうちの残りである他部が、波長変換部21で波長が変換されなかった光(以下、他部の光k2とも称する)である。
このように、波長変換部21から照射される光は、概ね、より長波長に変換された一部の光k1と、波長が変わらない他部の光k2と、から構成されることになる。
【0026】
波長変換部21は、第1の波長範囲だけでなく、第2の波長範囲についても長波長に変換する機能を有している。すなわち、波長変換部21は、波長が第2の波長範囲に属する光のうちの略全部(以下、略全部の光k3とも称する)を、予め定められた波長帯よりも長波長に変換する機能を有する。波長変換部21は、第2の波長範囲における光に基づく総エネルギーのうちの略全部を、予め定められた波長帯よりも長波長の光に基づくエネルギーに変換している。第2の波長範囲については、光に基づく総エネルギーのうちの略全部が変換される。第2の波長範囲における光に基づく総エネルギーのうちの僅かな残りである他部が、波長変換部21で波長が変換されなかった光(以下、他部の光k4とも称する)である。他部の光k4のエネルギーは、略全部の光k3と比較すると非常に小さい。
このように、波長変換部21から照射される光は、概ね、より長波長に変換された一部の光k3と、波長が変わらない他部の光k4と、から構成されることになる。
【0027】
光吸収部22は、波長が変換されなかった他部の光k2を吸収する機能を有する。つまり、光吸収部22は、波長変換部21で波長が変換されなかった第1の波長範囲の光を吸収する。これにより、第1の波長範囲の光が、光源装置100が設置される空間の光照射対象等に照射されることを防いでいる。他部の光k2の総エネルギーは大きいため、光吸収部22の第1の波長範囲の光の吸収特性は、その分強くなっている。つまり、光吸収部22は、光の吸収特性の特に強まる範囲(ピーク)が、第1の波長範囲に設定された素材で構成されている。
【0028】
光吸収部22は、波長が変換されなかった他部の光k4を吸収する機能も有する。つまり、光吸収部22は、波長変換部21で波長が変換されなかった第2の波長範囲の光を吸収する。他部の光k4の総エネルギーは小さいため、光吸収部22の第2の波長範囲の光の吸収特性は、第1の波長範囲の光の吸収特性と比較して、弱い。
ここで、光吸収部22は、光の吸収特性の特に強まる範囲が、第1の波長範囲に設定されているため、その周囲の波長範囲である第2の波長範囲においては、ゆるやかに光の吸収特性が弱まっている。しかし、他部の光k4のエネルギーが小さいので、光の吸収特性が弱まっていても賄うことができる。
【0029】
(筐体30)
筐体30は、光源モジュール10が取り付けられる略円板状の取付部31と、取付部31の光源モジュール10が取り付けられる面の反対面から突設して設けられ光源モジュール10から発生する熱を放熱するフィン32とを有している。
【0030】
(反射部40)
反射部40は、光源モジュール10の側方を囲むような略筒形状であり、内側の面が光源モジュール10からカバー20に向けて広がるように傾斜している。
【0031】
(外枠部50)
外枠部50は、反射部40の側方を囲むような略筒形状をしているものである。外枠部50は、一方の端部側が、径の中心側に突出して形成された内側鍔部51を含む。また、外枠部50は、他方の端部側が、径が大きくなる側に突出して形成された外側鍔部52を含む。内側鍔部51は、反射部40の端部とともに、カバー20を挟み支持する。また、外側鍔部52は、例えばねじ等により、筐体30の取付部31に固定される。
【0032】
[波長変換部等の特性等について]
図3は、本実施の形態に係る光源装置100が含む光源11の分光分布の図である。図4は、本実施の形態に係る光源装置100の波長変換部21の特性についての説明図である。図5は、本実施の形態に係る光源装置100の光吸収部22の特性についての説明図である。図3図5を参照して、光源11の特性、波長変換部21の特性及び光吸収部22の特性等について説明する。
【0033】
図3図5は、横軸が光の波長(nm)を示している。また、図3の縦軸は、光の強度を示しており、上にいくほど光の強度が強くなることを示している。図4及び図5の縦軸も光の強度に対応している。
なお、図4の縦軸の100%は、波長変換部21に入射する前の光の各波長の強度を示している。図4の実線で示す曲線は、波長変換部21から出射される光の各波長の強度を示している。したがって、図4の曲線のうち、100%よりも低い部分は、波長変換部21を通過する過程で光が弱められたことを示し、100%よりも高い部分は、波長変換部21を通過する過程で光りが強められたことを示している。
【0034】
図5も同様である。すなわち、図5の縦軸の100%は、光吸収部22に入射する前の光の各波長の強度を示している。図5の実線で示す曲線は、光吸収部22から出射される光の各波長の強度を示している。したがって、図5の曲線のうち、100%よりも低い部分は、光吸収部22を通過する過程で光が弱められたことを示し、100%よりも高い部分は、光吸収部22を通過する過程で光りが強められたことを示している。
【0035】
本実施の形態において、光源11は、一例として白色光を放射するものとして説明する。光源11は、例えば、青色発光するLED、及び、この青色発光するLEDの光によって黄色を発光する蛍光体等で構成することができる。光源11は、図3に示すように、主に、380(nm)〜780(nm)の波長域の光を有する。
【0036】
波長変換部21は、図4に示すように、第2の波長範囲において、第1の波長範囲よりも光の変換効率が強い特性となるように構成されている。すなわち、波長変換部21は、第2の波長範囲における変換効率が高くなっているということである。これは、光源11の分光分布のピークが450(nm)あたりであるため、波長変換部21の光の変換効率を高くする波長範囲をその450(nm)あたりに合わせたということである。これにより、光源11から出射される光の変換効率をより高め、エネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができるようになっている。
一方、波長変換部21は、第1の波長範囲においても波長の変換がなされるが、その特性は、第2の波長範囲との比較においては強くはない。図4に示すように、波長変換部21の作用によって、第1の波長範囲及び第2の波長範囲の光は、縦軸の100%より低くなっており弱められていることがわかり、また、これらの範囲より長波長の範囲の光については縦軸の100%よりも大きくなっており強められていることが分かる。
【0037】
[本実施の形態に係る光源装置100の有する効果]
図6は、本実施の形態に係る光源装置100が含む光源11から出射される光のうちの特定波長帯の光がカットされることを説明する図である。図6等を参照して、本実施の形態に係る光源装置100の有する効果について説明する。
【0038】
(効果1)
本実施の形態に係る光源装置100は、光を照射する光源11と、光源11の光が通過するカバー20と、を備え、カバー20は、光源11から照射された光のうち予め定められた波長帯wの光を、波長帯wよりも長波長へ変換する波長変換部21と、波長変換部21よりも光源11から遠い位置に設けられ、波長帯wの光を吸収する光吸収部22とを含むものである。ここで、予め定められた波長帯wとは、図6に示すように、第1の波長範囲及び第2の波長範囲より構成されている。以下において、予め定められた波長帯wは、単に波長帯wと略記することがある。
光源11から照射された波長帯wを含む光は、カバー20の波長変換部21において波長帯wよりも長波長に変換される。つまり、波長帯wの光を吸収してしまうのではなく、波長帯wよりも長波長に変換するということである。このように、光源装置100では、カバー20から光を照射するにあたって、波長帯wの光のエネルギーを利用するものであり、最終的にカバー20から照射される光の強さが低減してしまうことを抑制することができる。これは、図6に示すように、波長帯wよりも長波長範囲(特に、550(nm)〜650(nm)の範囲)においては、破線で示す曲線よりも実線で示す曲線の方が上側に来ていることから把握することができる。
また、波長変換部21で波長が変換されなかった波長帯wの波長に属する光は、光吸収部22にて吸収される。これにより、波長帯wの光が、光源装置100が設置される空間の光照射対象等に照射されることを防いでいる。これは、図6に示すように、波長帯wにおいては、破線で示す曲線よりも実線で示す曲線の方が下側にきており、縦軸の数値も0に近いことから把握することができる。
ここで、ビールの瓶には日光臭の要因となる特定波長帯は、520(nm)以下である。また、光源11の波長は、380(nm)〜780(nm)程度の範囲である。波長帯wは、特定波長帯及び光源11の波長の範囲の両方を満たす380(nm)〜520(nm)の範囲を包含している。本実施の形態に係る光源装置100は、波長帯wの放射エネルギーをカットしてしまうだけではなく、波長帯wよりも長波長の放射エネルギーに変換して利用するようにしている。このため、光源装置100の光のエネルギー効率が低下してしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る光源装置100は、波長変換部21にて波長が変換されなかった、波長帯wの光については、光吸収部22でカットすることができる。
【0039】
なお、本実施の形態に係る光源装置100は、各発光ダイオードに蛍光体を塗布するのではなく、カバー20に波長変換部21及び光吸収部22を形成することで、上述のように、カバー20から照射される光の強さが低減してしまうことを抑制するとともに、波長帯wの光が光源装置100が設置される空間の光照射対象等に照射されることを防ぐ効果を得ることができる。光源11の各発光ダイオードに蛍光体を塗布することで同様の効果を得ようとしても、発光ダイオードは複数ある分、その塗布による作業分の製造コストが発生する。一方、本実施の形態に係る光源装置100では、例えばカバー20の全域に、波長変換部21及び光吸収部22を形成する作業で済むので、各発光ダイオードに蛍光体を塗布することよりも作業負担を低減し、製造コストを低減させることができる場合がある。
【0040】
(効果2)
本実施の形態に係る光源装置100は、波長帯wは、第1の波長範囲及び第1の波長範囲よりも長波長の第2の波長範囲が含まれており、波長変換部21は、第1の波長範囲よりも第2の波長範囲の方が、光源11の光の変換特性が高くなるように構成され、光吸収部22は、第2の波長範囲よりも第1の波長範囲の方が、光源11の光の吸収特性が高くなるように構成されているものである。
図7は、本実施の形態に係る光源装置100から照射される光の分光分布を示した図である。
図7(a)は、光源11の光の分光分布を示している。
図7(b)は、光源11の光が波長変換部21に入射して、放射エネルギーの一部が長波長の放射エネルギーに変換されたときの分光分布を示している。
図7(c)は、光吸収部22に入射した光について、波長帯wの放射エネルギーが吸収されたときの分光分布を示している。
上記の光源装置100の効果2について図7に基づいて説明する。ここで、便宜的に、光源11から照射された光について、第1の波長範囲の波長の光と、第2の波長範囲の光と、第2の波長範囲よりも長波長である光とに分けて説明する。
【0041】
光源11からは、第1の波長範囲の光、第2の波長範囲の光、及び第2の波長範囲よりも長波長である光が照射される。図7(a)に示すように、第1の波長範囲の光の相対強度は、スペクトルL10で表され、第2の波長範囲の光の相対強度は、スペクトルL20で表され、第2の波長範囲よりも長波長の光の相対強度は、スペクトルL30で表されている。また、光源11の光の相対強度のピークは、第1の波長範囲に存在している。
【0042】
第1の波長範囲の光は、波長変換部21の作用により、放射エネルギーの一部が第2の波長範囲よりも長波長の光の放射エネルギーに変換される。その結果、図7(b)に示すように、波長変換部21から照射された第1の波長範囲の光の相対強度は、スペクトルL11で示されるように小さくなる。
第2の波長範囲の光は、波長変換部21の作用により、放射エネルギーの略全部が第2の波長範囲よりも長波長の放射エネルギーに変換される。その結果、図7(b)に示すように、波長変換部21から照射された第2の波長範囲の光の相対強度は、スペクトルL21で示されるように非常に小さくなる。
そして、図7(b)に示すように、波長変換部21から照射された第2の波長範囲よりも長波長の光の相対強度は、スペクトルL31で示されるように大きくなる。
【0043】
波長変換部21から出射された第1の波長範囲の光は、光吸収部22の作用により、放射エネルギーが吸収される。つまり、光の相対強度は、図7(c)に示すスペクトルL12のようになる。
波長変換部21から出射された第2の波長範囲の光についても、光吸収部22の作用により、放射エネルギーが吸収される。つまり、光の相対強度は、図7(c)に示すスペクトルL22のようになる。
波長変換部21から出射された第2の波長範囲よりも長波長の光は、波長が長いため、光吸収部22をそのまま通過する。そして、光照射対象等に照射されることになる。
【0044】
このように、本実施の形態に係る光源装置100は、波長変換部21は、第1の波長範囲よりも第2の波長範囲の方が、光源11の光の変換がしやすくなるように構成され、光吸収部22は、第2の波長範囲よりも第1の波長範囲の方が、光源11の光の吸収がしやすくなるように構成されているので、波長帯wの光をカットしながらも、波長帯wよりも長波長の放射エネルギーを増加させて光照射対象等に照射することができるという効果が得られるものとなっている。
【0045】
仮に、波長変換部21の特性が逆であると、すなわち第2の波長範囲よりも第1の波長範囲の方が光の波長の変換がしやすいものであると、次のような不具合がある。
波長変換部21の特性が逆となっていると、第1の波長範囲については放射エネルギーが非常に小さくなるが、第2の波長範囲については放射エネルギーが相当量残る。ここで、光吸収部22の特性は、第1の波長範囲については光を吸収しやすいが、第2の波長範囲については光を吸収しにくいものとなっている。したがって、第1の波長範囲の光については光吸収部22で吸収することができるが、第2の波長範囲の光については光吸収部22で吸収しきれず、カバー20をそのまま通過してしまう場合がある。
これは、光吸収部22のうち光を特に吸収しやすい範囲(光吸収波長領域)と、光を特に通過させやすい範囲(光透過領域)との間には、光吸収特性が若干落ちる変化領域が形成されてしまうことが避けにくいという事情があるからである。
したがって、波長変換部21は、第1の波長範囲よりも第2の波長範囲の方が、光源11の光の変換がしやすくなるように構成されていることが好ましい。これにより、より確実に波長帯wの光がカバー20から照射されてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
また、仮に、光吸収部22の特性が逆であると、すなわち、第1の波長範囲よりも第2の波長範囲の方が光の吸収がしやすいと次のような不具合がある。
図7(a)に示すように、第1の波長範囲の放射エネルギーの方が、第2の波長範囲の放射エネルギーよりも相対強度が大きい。しかし、光吸収部22の特性が逆となっていると、第1の波長範囲の放射エネルギーを吸収することができなくなってしまうことになる。したがって、波長変換部21の特性に対応するように、光吸収部22の特性が設定されていることが好ましい。
つまり、波長変換部21が、第1の波長範囲よりも第2の波長範囲の方が光源11の光の変換がしやすい場合には、光吸収部22は、第2の波長範囲よりも第1の波長範囲の方が光源11の光の吸収がしやすい特性を持たせることが好ましい。
【0047】
(効果3)
本実施の形態に係る光源装置100は、光吸収部22は、第2の波長範囲の波長のうちの最大側の波長以上において、光源11の光の透過特性が最大となるように構成されているものである。
ここで、光吸収部22は、第2の波長範囲よりも長波長の光の吸収特性、第2の波長範囲の光の吸収特性、第1の波長範囲の光の吸収特性の順番に、特性が強くなっている。
仮に、波長変換部21の特性が逆であることに加えて、さらに、光吸収部22の特性が高い波長側にずれていると、次のような不具合がある。なお、光吸収部22の特性が高い波長側にずれていると、第2の波長範囲よりも長波長の光の吸収特性、及び第2の波長範囲の光の吸収特性が強くなることに対応する。
この場合においては、波長変換部21の特性が逆であることから、第2の波長範囲については放射エネルギーが相当量残ることになるが、第2の波長範囲の光の吸収特性が強くなっているため、光を吸収することができる。しかし、波長変換部21にて折角、第2の波長範囲よりも長波長の放射エネルギーの大きくしたにもかかわらず、第2の波長範囲の光が光吸収部22にて吸収されてしまい、放射エネルギーが小さくなってしまうという不具合が生じる。
したがって、波長変換部21は、さらに、第2の波長範囲のうちの最大の波長において、光吸収特性が最小になる(光透過特性が最大になる)ようになっていることが好ましい。これにより、光源装置100の明るさが低減してしまうことを抑制することができる。また、ここでは、第2の波長範囲のうちの最大の波長と述べたが、それに限定されるものではなく、最大の波長からずれていてもよい。例えば、第2の波長範囲内であって第2の波長範囲の最大側(最大寄り)の波長で、光吸収特性が最小(光源11の光の透過特性が最大)になっていてもよい。
【0048】
(効果4)
本実施の形態に係る光源装置100は、光源11が実装された基板12をさらに備え、基板12には、光源11の実装面に光反射材が形成されているものである。これにより、発光ダイオードから照射された光のうちカバー20に直接進まなかったものについても、光反射材で反射させてカバー20に導くことができ、光源装置100の明るさが低減してしまうことを抑制することができる。
【0049】
(効果5)
本実施の形態に係る光源装置100を備えた照明器具1は、光源装置100が設けられた筺体と、筐体に取り付けられ、光源装置100の光源11の周囲に配置され、光源11の光を反射する反射面が形成されている筒状の反射部40と、反射部40のうち筐体30に取り付けられている側とは反対側の開口端部に設けられ、光源装置100のカバー20を支持する外枠部50と、を備えたものである。照明器具1は、上述の光源装置100と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、光照射対象等へ影響を与えない波長の境界値として550(nm)を境とした場合について一例を説明したが、それに限定されるものではない。例えば、光照射対象等の特性により境界値を変更しても良い。例えば、その境界値としては、500(nm)〜550(nm)を採用してもよい。
【0051】
なお、本実施の形態に係る光源装置100のカバー20は、波長変換部21及び光吸収部22のいずれについても、互いに同じ第1の波長範囲、同じ第2の波長範囲及び第2の波長範囲よりも長波長の範囲で特性が切り分けられていたが、それに限定されるものではない。波長変換部21における第1の波長範囲と、光吸収部22における第1の波長範囲とにずれていてもよい。第2の波長範囲等についても同様である。
【0052】
[変形例]
図8は、本実施の形態に係る光源装置100の変形例である。図8(a)は光源装置200の斜視図であり、図8(b)は図8(a)のB−B断面図である。
なお、本実施の形態では、光源モジュール10とカバー20を備えた図1に示すような光源装置100について説明をおこなったが、図8に示す態様の光源装置200であってもよい。
光源装置200は、たとえば断面円弧状の外郭であるカバー220と、カバー220の一端側に取り付けられた給電口金260と、カバー220の他端側に取り付けられたアース口金250と、カバー220に収納され、複数の光源11が設けられた光源モジュール10と、光源モジュール10が設けられた長尺状のヒートシンク290とを備えているものである。そして、カバー220は、波長変換部21と同様の機能を有する波長変換部221と、光吸収部22と同様の機能を有する光吸収部222とを備えている。
【0053】
なお、変形例以外においても、光源モジュール及びカバーを備える態様であれば、各種の照明機器に本実施の形態を適用することができる。例えば、長尺形状をしたベース照明に適用してもよいし、スクエア照明に適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 照明器具、10 光源モジュール、11 光源、12 基板、20 カバー、21 波長変換部、22 光吸収部、30 筐体、31 取付部、32 フィン、40 反射部、50 外枠部、51 内側鍔部、52 外側鍔部、100 光源装置、200 光源装置、220 カバー、221 波長変換部、222 光吸収部、250 アース口金、260 給電口金、290 ヒートシンク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8