【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 第50回スーパーマーケット・トレードショー2016 開催場所 住 所 東京都江東区有明3−10−1 東京ビッグサイト 開催日 平成28年2月10日〜12日 3日間
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の冷却装置は、例えば加熱調理直後の食材(以下、単に食材と言う。)を冷却対象にしており、食材の味や風味を保持し、さらに雑菌が繁殖しやすい温度帯における温度低下時間を短縮するために、大形のファンで大量の冷却空気を送給して食材を急速冷却し、あるいは急速冷凍する。そのため、食材の断片や脂質あるいは煮汁などが冷却空気に吹き飛ばされて、ファンや冷却フィン、あるいは冷却室の周囲壁などに付着する。
【0003】
上記のような食材の断片や脂質などを洗浄するために、冷却室の内部に洗浄構造を設けた冷却庫が特許文献1に開示されている。そこでは、冷却室の天井部に回転しながら洗浄水(水道水)を周囲に散水するスプリンクラー状の散水器が設けてあり、さらにシロッコファンに洗浄水を供給するための散水管が、同ファンの給気部に配置してある。洗浄時には、散水器で洗浄水を冷却室の内部に散水し、同時に吸気部に供給した洗浄水でシロッコファンのファンブレードを洗浄し、さらに同ファンの周囲に飛び散った洗浄水で冷却器や、冷却ユニットの内部を洗浄する。洗浄後の洗浄水は、冷却室の底部に設けた排水部から排出される。排水部には臭気トラップが設けてあり、冷却室の底壁は、その4周縁から臭気トラップに向かって下り傾斜させてある。
【0004】
この種の冷却装置においては、大量の水道水を散水器および散水管から送出しながら冷却室の内部を洗浄するので、冷却室の底壁で受止められた洗浄水の全てが排水部へ向かって流動する。そのため、前後方向、あるいは左右方向から流動してきた洗浄水が、排水部の開口面において互いに衝突して滞留しやすく、洗浄水を効果的に整然と流下させることができない。また、排水部に臭気トラップが設けてある特許文献1の冷却庫の場合には、臭気トラップの貯水カップに洗い流された食材の断片が溜まりやすいため、洗浄水を流下させるのにさらに時間がかかることが想定される。
【0005】
上記のような、洗浄水の滞留を防ぐための排水部構造として、本発明においては洗浄水どうしの衝突を防いで、洗浄水を整然と流下させる堰止め体を排水口に設けるが、このように、排水の流れを阻害して排水能力を向上することは、特許文献2の排水口用アダプターに見ることができる。そこでは、排水口の開口面を覆うスノコ板の上面に、棒状のフィンを十文字状に配置して、排水口へ向かって流動した排水を棒状のフィンで堰止めて、排水が排水口付近で渦を巻くのを抑制し排水能力を向上している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の排水口用アダプターは、排水溝へ向かって流動した排水が排水口付近で渦を巻くことを前提としており、その場合の排水の量はさほどでもなく、せいぜい棒状のフィンで堰止められる程度の水量でしかない。そのため、特許文献1の冷却庫のように、大量の洗浄水が排水部へ向かって流動し衝突するような場合には、たとえ特許文献2の排水口用アダプターを使用したとしても、排水口用アダプターの全体が洗浄水中に水没するため、洗浄水の衝突を防ぐことはできない。また、洗浄水を効果的に流下させるうえで、排水口の開口面を覆うスノコ板が邪魔になる。
【0008】
本発明に係る洗浄構造においては、冷却室の下方に配置した貯水タンク内の洗浄水を循環させて、冷却器および循環ファンなどの洗浄を行うが、こうした洗浄水循環型の洗浄構造では洗い流された食材の断片が貯水タンクの内部に沈殿しやすい。そのため、冷却装置の使用期間が長くなると、貯水タンクの内部にぬめりが形成されて異臭を放つおそれがあり、冷却室の内部を衛生的な状態に保持することが困難になる。こうした状況を避けるには、例えば排水口にストレーナーを設けて、食材の断片が貯水タンクに入込むのを防止するのが効果的である。しかし、ストレーナーを設けると、その分だけ排水口における通水抵抗が増加するうえ、ストレーナーで濾しとった食材の断片によって洗浄水の流が妨げられて、洗浄水を効果的に流下させることができなくなる。
【0009】
本発明の目的は、洗浄水が冷却室の底に設けた排水口で衝突し干渉するのを防止して、洗浄水を効果的に流下できるようにした冷却装置を提供することにある。
本発明の目的は、排水口に設けたストレーナーで食材の断片が貯水タンク内に入り込むのを確実に防止して、冷却室の内部を衛生的な状態に保持でき、しかも濾しとった食材の断片による通水抵抗の増加を極力小さくして、洗浄水を効果的に流下できる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷却装置は、
図2に示すように、冷却室2の内部に、冷熱を供給する冷却器15と、冷気を循環させる循環ファン16と
が設けられている。冷却装置は、これら冷却器15、循環ファン16、および冷却室2の内部を洗浄する洗浄水循環型の洗浄構造を備える。洗浄構造は、冷却室2の内部に洗浄水を供給する給水部27と、冷却室2の下方に配置されて洗浄水を貯留する貯水タンク31と、貯水タンク31内の洗浄水を給水部27に加圧送給する送給ポンプ32
とを備えている。冷却室2の底壁に設けた排水口41に、排水口41に流入した洗浄水を貯水タンク31へ流下させる排水筒42を固定する。
図1に示すように、排水筒42に、洗浄水中の食材の断片を濾しとるストレーナー55と、排水口41へ向かって流動する洗浄水同士の衝突を防止する堰止め体56を、着脱自在に装着する。堰止め体56は、排水口41へ向かって流動する洗浄水を堰止める衝立状の複数のダム壁71と、ダム壁71に連続する縦長のガイド壁72を備えている。排水口41へ向かって流動する洗浄水を、ダム壁71で堰止めながらガイド壁72に沿って流下案内して、ストレーナー55でろ過された洗浄水を貯水タンク31へ戻すことを特徴とする。
【0011】
図7に示すように堰止め体56は、一対のダム壁71と一対のガイド壁72を一体に備えた堰止めエレメント69で構成する。堰止めエレメント69は、ダム壁71およびガイド壁72が堰止め体56の中心軸線から放射状に延びる状態で立体化されて、各堰止めエレメント69どうしが分離不能に固定してある。
【0012】
堰止め体56は、3個以上の堰止めエレメント69で構成する。堰止めエレメント69は長手方向に沿って断面V字状に折曲げられて、折曲げ線の両側に対称形状のダム壁71とガイド壁72を備えている。各堰止めエレメント69の山折線Lが中心になる状態で、各堰止めエレメント69を固定して、ダム壁71およびガイド壁72を2重壁状に形成する。
【0013】
冷却室2の底壁に排水口41を凹み形成する。ストレーナー55の入口開口の周囲にリング状のフランジ壁67を張出し形成する。堰止め体56のダム壁71の下面にリング状の装着座70を固定する。ストレーナー55のフランジ壁67および堰止め体56の装着座70を、排水口41の内面に係合装着して、ストレーナー55および堰止め体56を排水口41で傾動不能に保持する。
【0014】
貯水タンク31の底壁から排水路45を導出し、排水路45の中途部に同水路45を開閉する排水バルブ46を配置する。洗浄構造による洗浄過程およびすすぎ過程が終了する毎に、循環ファン16および送給ポンプ32の作動を停止させ、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、冷却室2の内部に冷却器15と、循環ファン16と、洗浄水循環型の洗浄構造が設けてある冷却装置において、冷却室2の底壁に設けた排水口41に排水筒42を設け、排水筒42の内部にストレーナー55と、堰止め体56を装着するようにした。また、堰止め体56は、洗浄水を堰止める複数のダム壁71と、同壁71に連続する縦長のガイド壁72を備えるようにした。こうした冷却装置によれば、排水口41へ向かって流動する洗浄水を、ダム壁71で堰止めながらガイド壁72に沿って流下案内できるので、洗浄水どうしが衝突し干渉して排水口41の周辺部分に滞留するのを解消し、洗浄水を効果的に貯水タンク31へ流下できる。また、ストレーナー55でろ過された洗浄水を貯水タンク31へ流下させるので、食材の断片が貯水タンク31内に入り込むのを確実に防止できる。従って、食材の断片が貯水タンク31の内部に沈殿し、長期使用時に有機物が腐敗し雑菌が繁殖するのを解消して、冷却室2の内部を衛生的な状態に保持できる。
【0016】
一対のダム壁71と一対のガイド壁72を備えた堰止めエレメント69で堰止め体56を構成すると、堰止め体56を構成する場合に、用意すべき堰止めエレメント69の数を減らすことができ、その分だけ堰止め体56の製造コストを削減できる。また、堰止めエレメント69を、ダム壁71およびガイド壁72が堰止め体56の中心軸線から放射状に延びる状態で立体化し固定することにより、排水口41に向かって流動する洗浄水を、堰止めエレメント69のダム壁71で分散して堰止めることができる。従って、洗浄水が偏った方向から流動して堰止め体56に衝突するような場合でも、逆向きの洗浄水の流れで衝突衝撃を緩和し相殺でき、洗浄水の流動作用によって堰止め体56が傾動し、あるいは排水口41から浮き離れるのを防止して、常に適正に堰止め作用を発揮できる。
【0017】
断面V字状に折曲げられて、折曲げ線の両側に対称形状のダム壁71とガイド壁72を備えた堰止めエレメント69によれば、平板状の堰止めエレメント69に比べて曲げ強度を向上できる。また、各堰止めエレメント69の山折線Lが中心になる状態で、各堰止めエレメント69を固定して、ダム壁71およびガイド壁72を2重壁状に形成することにより、堰止め体56の構造強度および剛性を向上できる。従って、ダム壁71やガイド壁72が他物に衝突して曲げ変形するのをよく防止でき、ダム壁71による洗浄水の堰止め作用と、ガイド壁72による洗浄水の流下作用を常に適確に発揮させることができる。
【0018】
ストレーナー55のフランジ壁67および堰止め体56の装着座70を、排水口41の内面に係合装着すると、ストレーナー55および堰止め体56を排水口41で傾動不能に保持して、洗浄水の衝突衝撃を堰止め体56と排水口41で受止めることができる。これにより、洗浄水の衝突衝撃で堰止め体56およびストレーナー55がずれ動くのを確実に防止できるうえ、ストレーナー55に流入する洗浄水の勢いでストレーナー55および堰止め体56が排水口41から浮き離れるのを確実に防止できる。また、ストレーナー55および堰止め体56の中心を排水口41の中心に一致させて、排水口41へ向かって不規則に流動する洗浄水を、均等に堰止めてストレーナー55の内部へ的確に流下案内できる。
【0019】
洗浄過程およびすすぎ過程が終了する毎に、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出すると、ストレーナー55を通り抜けた食材の微細な断片を洗浄水と共に排出できる。従って、貯水タンク31の内面に食材の微細な断片が付着して腐敗し、あるいは雑菌が繁殖するのをよく防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例)
図1ないし
図7は、本発明に係る冷却装置の実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従うものとする。
図2および
図3において、冷却装置は断熱箱からなる本体ケース1と、本体ケース1の内部の冷却室2を揺動開閉するドア4と、本体ケース1を支持する基台3などを備えている。冷却室2の内部には、冷却ユニット5と、食材が収納されたトレーP(ホテルパン)を載置する載置棚6と、後述する洗浄構造が設けてある。基台3の内部は上機械室7aと下機械室7bに区画されており、下機械室7bの内部に圧縮機8、凝縮器9、および送風ファン10などの冷凍機器が収容してある。上機械室7aの前面には操作パネル11が配置してある。
【0022】
図3および
図4に示すように、冷却ユニット5は中空箱状のユニットケース14と、同ケース14の内部に配置した縦長の冷却器15と、上下一対の大形の循環ファン16と、冷却器15の受風面に配置した除霜用のヒーター17などで構成してある。冷却器15は、一対の前後枠の間に、繰り返し反復屈曲される冷媒管18と一群のフィン19を配置して構成してある。循環ファン16は軸流ファンからなり、載置棚6側の内部空気を吸込んで、加圧後の空気を冷却器15へ向かって送給する。
【0023】
冷却器15を通過した熱交換後の冷気は、冷却室2の左壁に衝突して冷却器15の前後および上下から載置棚6側へ流動し、冷却室2の右壁に衝突して反転したのち、載置棚6に載置したトレーP内の食材を冷却しながら、再び循環ファン16に吸い込まれる。ヒーター17はシーズヒーターからなり、
図3に示すように冷却器15の受風面に沿って反復屈曲する状態で配置してある。循環ファン16は、ファンシュラウド22に固定したモーター支持腕23で支持してある。ユニットケース14は、冷却室2の左壁に固定した上ブラケット24と下ブラケット25に固定してある(
図2参照)。
【0024】
食材の味や風味を保持し、さらに雑菌が繁殖しやすい温度帯における温度低下時間を短縮するために、この種の冷却装置では、大形の循環ファン16で大量の冷却空気を送給して食材を急速冷却する。そのため、食材の断片や脂質あるいは煮汁などが冷却空気に吹き飛ばされて、循環ファン16やフィン19、あるいは冷却室2の周囲壁などに付着する。こうした食材の断片や脂質などを水洗い洗浄するために、冷却室2の内部に洗浄水循環型の洗浄構造を設けている。
【0025】
図2および
図3に示すように、洗浄構造は、冷却室2の内部に洗浄水を供給する給水部27と、冷却室2の下方の上機械室7aに配置されて洗浄水を貯留する貯水タンク31と、貯水タンク31内の洗浄水を給水部27に加圧送給する送給ポンプ32などで構成する。給水部27は天井部に配置した第1洗浄体29と、冷却ユニット5の内部に配置した第2洗浄体30を備えている。第1洗浄体29は市販のスプリンクラーであり、洗浄水を噴出するときの噴出反力で垂直軸回りに回転しながら洗浄水を噴出して、冷却室2の内面壁および冷却ユニット5の外面を洗浄する。
【0026】
図3および
図4に示すように第2洗浄体30は、断面が四角形状のノズル管33の管壁に、第1ノズル穴34と第2ノズル穴35の一群を形成して構成してある。第2洗浄体30は、冷却器15の受風面の上下4個所に配置されて、その前後端がホルダー36で支持してあり、各第2洗浄体30の前端は、冷却器15の前端に配置した上下方向に長い給水管37に接続してある。第2洗浄体30は、第1ノズル穴34が冷却器15に向かって傾斜し、第2ノズル穴35が循環ファン16へ向かって傾斜する状態で支持されている。そのため、第1ノズル穴34を通る洗浄水は冷却器15へ向かって斜め上方へ噴出され、第2ノズル穴35を通る洗浄水は循環ファン16へ向かって斜め上方へ噴出される。また、両ノズル穴34・35を通る洗浄水の一部は、ユニットケース14の内面に向かって噴出される。第1ノズル穴34の隣接ピッチに比べて、第2ノズル穴35の隣接ピッチは大きく設定してあり、これにより大量の洗浄水を冷却器15に噴出して、冷却器15のフィン19間に付着しやすい食材の断片や煮汁等を確実に洗浄できるようにしている。
【0027】
洗浄開始時に洗浄水を貯水タンク31に貯留するために、冷却室2の天井に送水管40を設け、送水管40の入口側を上水道に接続している。さらに、冷却室2の底壁2aに凹み形成した排水口41に排水筒42を設けて、送水管40から放出された洗浄水を貯水タンク31に流下できるようにしている。給水通路はその中途部に設けた給水バルブ43(
図3参照)で開閉できる。送給ポンプ32で加圧された洗浄水は、循環水路44を介して第1洗浄体29および第2洗浄体30に送給される。
図3において符号45は排水路、符号46は排水バルブ、符号47は満水位を検知する水位センサー、符号48はオーバーフロー路である。本体ケース1の上部には、乾燥モードにおいて冷却室2に外部空気を供給して、冷却室2内を強制的に換気する換気構造49が設けてある。
【0028】
以上のように構成した冷却装置は、後述する洗浄過程、およびすすぎ過程において大量の洗浄水が給水部27から冷却室2内に供給される。また、各過程において冷却室2の周囲壁や冷却器15などから流下した洗浄水は、冷却室2の底壁2aで受止められて排水口41へと流動する。
図5に示すように、排水口41は底壁2aの中央に形成してあり、排水口41へ向かう洗浄水を円滑に流下させるために、底壁2aは、左右側縁および前後縁から排水口41へ向かって下り傾斜させた4個の傾斜面53で形成してある。こうした排水構造では、三角形状の各傾斜面53に沿って流動する洗浄水は、排水口41に近づくほど流れが集約され勢いを増しながら排水口41の開口面に向かって流動する。そのため、各傾斜面53を流動した洗浄水は、排水口41の開口面で互いに衝突して滞留しやすい。
【0029】
上記のような排水口41における洗浄水の滞留を解消し、さらに食材の断片が貯水タンク31内に入り込むのを防止するために、排水口41に固定した排水筒42の内部にストレーナー55を装着し、その内部に堰止め体56を配置している。
図1および
図6に示すように、排水筒42は、筒本体57の上端にフランジ壁58を有し、筒本体57の上部周面にねじ部59が形成してあるプラスチック成型品からなる。排水口41の底壁の開口60の周縁壁にパッキン61を載置した状態で、排水筒42の筒本体57を上方から開口60に係合し、ナット62をねじ部59にねじ込むことにより、排水筒42を排水口41に固定することができる。この状態の排水筒42は、
図6に示すように冷却室2の底壁2aと、同壁2aの外面を覆う断熱材2bと、断熱材2bの外面を覆う外底壁2cを上下に貫通する状態で、筒本体57の下部が外底壁2cの下方に突設して、貯水タンク31の上壁に設けた受水穴63からタンク内に入り込んでいる。このように貯水タンク31の内部は、筒本体57と受水穴63の間の隙間を介して大気開放してある。
【0030】
ストレーナー55は、ステンレス製のメッシュ材で形成した上下に長く、下すぼまり状の有底筒からなるろ過体66と、その入口開口の周縁部の上下に固定したステンレス製のリング状のフランジ壁67を備えている。洗浄過程においては、洗浄水とともにストレーナー55に流入した食材の断片がろ過体66で濾しとられてその内底に堆積する。そのため、洗浄過程においてろ過体66の内部に堆積した食材の断片の堆積量が多くなると、ろ過体66のろ過面積が小さくなり、洗浄過程の終盤、あるいはすすぎ過程において、洗浄水を貯水タンク31へ効果的に流下させることができなくなる。
【0031】
上記のような不具合を解消し、洗浄過程やすすぎ過程において、食材の断片の堆積量が多くなったとしても、ストレーナー55に流入した洗浄水を貯水タンク31へ支障なく流下させるために、ろ過体66を上下に長い筒状に形成して、大量の食材の断片が堆積した場合でも、ろ過体66のろ過面積を余裕のある状態で確保できるようにした。このように、上下に長いストレーナー55は、排水筒42に装着した状態において、その底部が貯水タンク31の満水水位より上側に位置する状態で、排水筒42の下方に突出している。
【0032】
図7に示すように、堰止め体56は、それぞれステンレス板材で形成した4個の堰止めエレメント69とリング状の装着座70で構成する。堰止めエレメント69は、洗浄水を堰止める上部のダム壁71と、ダム壁71に連続して下方へ延びるガイド壁72を一体に備えている。この実施例における堰止めエレメント69は、長手方向に沿って断面V字状に折曲げられており、折曲げ線の両側に対称形状のダム壁71とガイド壁72が設けてある。4個の堰止めエレメント69は、それぞれの山折線Lが中心になる状態で背中合わせ状に接合して固定し、ガイド壁72に外嵌した状態の装着座70をダム壁71の下面に固定することにより分離不能に一体化される。この実施例では、ストレーナー55のフランジ壁67と、堰止め体56の装着座70を固定して、ストレーナー55と堰止め体56を一体化した。
【0033】
堰止め体56は、ダム壁71およびガイド壁72がその中心軸線から放射状に延びる状態で立体化されており、ダム壁71およびガイド壁72はそれぞれ2重壁状になっている。なお、山折線Lからダム壁71の径方向突端までの張出し長さは、山折線Lからガイド壁72の上端における張出し長さより充分に大きく設定してある。上記のように、断面V字状に形成した堰止めエレメント69によれば、平板状の堰止めエレメント69に比べて曲げ強度を向上できる。また、隣接するダム壁71とガイド壁72が互いに面接触状に接当する状態で、ダム壁71およびガイド壁72を2重壁状に形成することにより、堰止め体56の構造強度および剛性を向上できる。これに伴い、ダム壁71やガイド壁72が他物に衝突して曲げ変形するのをよく防止して、ダム壁71による洗浄水の堰止め作用と、ガイド壁72による洗浄水の流下作用を常に適確に発揮させることができる。
【0034】
排水口41へ向かって傾斜壁53の周囲から流動する洗浄水を受止めて、対向する流れの洗浄水どうしが衝突し干渉するのを防ぐために、ダム壁71は、排水口41へ向かって流動する洗浄水中に水没しない高さで衝立状に形成する。こうした堰止め体56によれば、堰止め体56に向かって流動してきた洗浄水を、衝立状の一対のダム壁71で確実に堰止めてその勢いを削ぎ、ストレーナー55の入口開口から円滑に流下させることができる。
【0035】
ストレーナー55のろ過体66を排水筒42の内部に挿嵌することにより、ストレーナー55および堰止め体56を排水筒42に装着することができる。この状態のストレーナー55のフランジ壁67の周縁と、堰止め体56の装着座70の周縁は、
図1に示すように、それぞれ排水口41の内面に係合するので、ストレーナー55および堰止め体56を排水口41で傾動不能に保持して、洗浄水の衝突衝撃を堰止め体56と排水口41で受止めることができる。また、洗浄水の衝突衝撃で堰止め体56およびストレーナー55がずれ動くのを確実に防止でき、さらに、ストレーナー55に流入する洗浄水の勢いでストレーナー55および堰止め体56が排水口41から浮き離れるのを確実に防止できる。ストレーナー55および堰止め体56の中心を排水口41の中心に一致させて、排水口41へ向かって不規則に流動する洗浄水を、均等に堰止めてストレーナー55の内部へ的確に流下案内できる。なお、ストレーナー55のろ過体66の内周面とガイド壁72は小さな隙間を介して隣接しており、ガイド壁72の下端はろ過体66の内底と小さな隙間を介して正対している。
【0036】
冷却装置を構成する各機器の作動状態を制御するために、操作パネル11の後部に制御部51を設けている(
図3参照)。制御部51には、冷凍機器を作動させて、食材を急速冷却ないしは急速冷凍する冷却モードと、洗浄構造を作動させて、冷却室2の内面壁および冷却ユニット5の内外を洗浄する洗浄モードと、換気構造49、循環ファン16、およびヒーター17を作動させて冷却室2内を乾燥させる乾燥モードなどを実行するためのプログラムが予め登録してある。操作パネル11には、モード選択ボタンやスタートボタン、あるいは各運転モードの運転条件を調整する調整画面などが設けてあり、これらのボタンおよび調整画面を操作して冷却装置の運転状態を制御できる。
【0037】
冷却モード時には、食材が収納されたトレーPを載置棚6に載置したのち、冷凍機器と、冷却器15と、循環ファン16を作動させ、食材を大量の冷却空気に晒して急速冷却する。冷却モードは、食材の温度が予定温度にまで低下した時点で終了するので、トレーPを庫外へ取り出して冷却室2内を空の状態にする。
【0038】
洗浄モードでは、洗浄、前段すすぎ洗浄、後段すすぎ洗浄の各洗浄過程を経て洗浄を行う。洗浄過程においては、まず、給水バルブ43を開状態に切換えて、水道水を送水管40から冷却室2内へ流下させ、排水筒42から落下した洗浄水を貯水タンク31内に溜める。貯水タンク31内のレベルが満水状態になると、水位センサー47から出力される信号に基づき給水バルブ43が閉じ状態に切換えられる。この状態で、循環ファン16とヒーター17を作動させ、さらに送給ポンプ32を作動させて、第1洗浄体29および第2洗浄体30に洗浄水を送給し、第1洗浄体29から噴出した洗浄水で、冷却室2の内面壁および冷却ユニット5の外面を洗い流す。また、第2洗浄体30の第1ノズル穴34から冷却器15およびユニットケース14の内面に向かって洗浄水を噴出し、さらに、第2ノズル穴35から循環ファン16へ向かって洗浄水を噴出する。
【0039】
第1洗浄体29から噴出された洗浄水の一部は、内部空気とともに循環ファン16に吸い込まれて、ファンブレード、ファンシュラウド22、およびモーター支持腕23を洗浄する。また、第1ノズル穴34から噴出された洗浄水は、冷媒管18やフィン19に付着した食材の断片などを洗い流し、その一部はヒーター17の鞘管に接触して加熱された状態で流下する。さらに、第2ノズル穴35から噴出された洗浄水は、循環ファン16で加圧された空気に跳ね飛ばされてユニットケース14の内面や、冷却器15の受風面に衝突し、ヒーター17の保護管に接触して加熱された状態で流下する。
【0040】
上記のように、洗浄水の循環経路にヒーター17を配置しておくことにより、貯水タンク31内の洗浄水の温度を徐々に上昇でき、やがて温水状態の洗浄水で冷却器15や循環ファン16などを洗浄できる。従って、落ちにくい油汚れを温水状態の洗浄水で効果的に洗い流すことができる。所定の時間が経過して洗浄過程が終了したら、循環ファン16、ヒーター17、および送給ポンプ32の作動を停止させ、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出する。汚れた洗浄水の排出が終了するのを待って、給水バルブ43を開状態に切換え、水道水を送水管40から冷却室2内へ流下させ貯水タンク31へ送給する。これにより、冷却室の底壁、排水筒42の周囲壁、あるいは貯水タンク31の底壁に付着している、食材の断片や沈殿物などを洗い流したのち排水バルブ46を閉じ状態に戻して、より清潔な状態で前段すすぎ過程に移行することができる。
【0041】
前段すすぎ洗浄過程においては、基本的に洗浄過程と同様にしてすすぎ洗浄を行うが、必ずしも洗浄水を温水化する必要はないので、ヒーター17は作動停止状態にしておくことができる。所定の時間が経過して前段すすぎ洗浄過程が終了したら、循環ファン16、および送給ポンプ32の作動を停止させ、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出したのち、排水バルブ46を閉じ状態に戻す。後段すすぎ洗浄過程においては、前段すすぎ洗浄過程と同様にしてすすぎ洗浄を行う。所定の時間が経過して後段すすぎ洗浄過程が終了したら、循環ファン16、および送給ポンプ32の作動を停止させ、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出したのち、排水バルブ46を閉じ状態に戻す。以上のように、洗浄過程およびすすぎ過程が終了する毎に、排水バルブ46を開状態にして貯水タンク31内の洗浄水を排水路45から排出すると、ストレーナー55を通り抜けた食材の微細な断片を洗浄水と共に排出できる。従って、貯水タンク31の内面に食材の微細な断片が付着して腐敗し、あるいは雑菌が繁殖するのをよく防止できる。
【0042】
乾燥モードでは、循環ファン16とヒーター17を作動させて、洗浄時に各機器に付着した水滴および水塊を、循環ファン16から送給される大量の加圧空気で吹飛ばし、さらにヒーター17の熱で冷却室2の内部空気を加熱しながら乾燥を行う。この状態の冷却室2の内部空気は、水分を含んで高い湿度状態になっている。そのため、循環ファン16で内部空気を繰返し循環させても、冷却器15の冷媒管18やフィン19に付着した水滴を効果的に乾燥させることができない。
【0043】
冷却室2内の乾燥を効果的に行うために、乾燥モードにおいては、換気構造49の換気ファンで湿度の低い外部空気を冷却室2内に送給し、冷却室2内を強制的に換気しながら内部空気を循環させる。このように、外部空気を強制的に冷却室2内に送給すると、送給された外部空気に相当する量の内部空気が換気構造49から排出される。従って、冷却器15の冷媒管18やフィン19に付着した水滴をより短い時間で効果的に乾燥させて、冷却室2内における有機物の腐敗や雑菌の繁殖を防止し、冷却室2の内部を衛生的な状態に保持できる。所定の時間が経過して乾燥処理が終了したら、循環ファン16およびヒーター17の作動を停止し、さらに換気ファンの作動を停止する。全ての作業が終了したら、堰止め体56およびストレーナー55を排水筒42から取出して、ストレーナー55内に堆積した食材の断片を廃棄し、ろ過体66および堰止め体56を洗浄し乾燥させて、排水筒42に再装着する。
【0044】
洗浄過程およびすすぎ過程においては、大量の洗浄水が傾斜壁53に沿って排水口41へ向かって流動する。しかし、排水口41に堰止め体56を設け、衝立状の複数のダム壁71で流動する洗浄水を受止めて、ガイド壁72に沿って流下させるので、対向する流れの洗浄水どうしが衝突し緩衝するのを確実に防止して、洗浄水を貯水タンク31へ効果的に戻すことができる。このとき、堰止め体56に向かって流動してきた洗浄水は、直角に折れ曲がる一対のダム壁71で堰止められてその勢いが削がれるので、ガイド壁72に沿って流下するか、装着座70の内縁から落下する以外になく、堰止め体56に向かって流動してきた洗浄水が排水口41の周辺部分に滞留するのを解消し、洗浄水を効果的に貯水タンク31へ流下できる。
【0045】
また、洗浄水とともにストレーナー55に流入した食材の断片を、ストレーナー55のろ過体66で濾しとるので、食材の断片が貯水タンク31内に入り込むのを確実に防止できる。従って、冷却装置の使用期間が長くなった場合でも、洗い流された食材の断片が貯水タンク31の内部に沈殿してぬめりが形成されるのを解消でき、有機物が腐敗し雑菌が繁殖するのを解消して、冷却室2の内部を衛生的な状態に保持することができる。さらに、上記の実施例では、ろ過体66を上下に長い筒状に形成して、大量の食材の断片が堆積した場合でも、ろ過体66のろ過面積を余裕のある状態で確保できるようにするので、ろ過体66の内部に堆積した断片より上側のろ過面から洗浄水を支障なく流下できる。従って、洗浄過程およびすすぎ過程において、ストレーナー55で濾しとられた食材の断片による通水抵抗の増加を極力小さくして、洗浄水を効果的に循環させることができる。
【0046】
図8は堰止め体56の別の実施例を示す。そこでは、平板状の2個の堰止めエレメント69で堰止め体56を形成するようにした。堰止めエレメント69にはダム壁71とガイド壁72が一体に設けてあり、一方の堰止めエレメント69には、ダム壁71の上端からガイド壁72の上下方向の中途部にわたってスリット73が形成してある。また、他方の堰止めエレメント69には、ガイド壁72の下端からガイド壁72の上下方向の中途部にわたってスリット74が形成してある。これらのスリット73・74が互いに係合する状態で2個の堰止めエレメント69を直交状に組んだのち、ガイド壁72に外嵌した装着座70をダム壁71の下面に固定することにより、2個の堰止めエレメント69を分離不能に一体化することができる。
【0047】
図9は堰止めエレメント69の別の実施例を示す。そこでは、ダム壁71の上縁に部分円弧状の規制壁76を形成して、洗浄水がダム壁71の上縁を乗越えて流動するのを規制壁76で防止できるようにした。規制壁76は、ダム壁71に対して傾斜する平坦壁、あるいはダム壁71に対して直角に折曲げられた平坦壁で形成してあってもよい。
【0048】
図10は堰止めエレメント69のさらに別の実施例を示す。そこでは、ダム壁71の壁面に水平方向に延びる一対の規制リブ77を設けて、洗浄水がダム壁71の上縁側へ流動して乗越えるのを規制リブ77で防止できるようにした。
【0049】
上記の実施例では、堰止め体56を偶数個の堰止めエレメント69で構成して、その平面視形状を十文字状に形成したが、その必要はなく、奇数個の堰止めエレメント69で堰止め体56を構成することができる。例えば、断面がV字状の3個の堰止めエレメント69で堰止め体56を構成することができ、その場合に一対のダム壁71が挟む角度は120度であればよい。冷却装置の給水部27は、実施例で説明した構造である必要はなく、冷却器15や循環ファン16の構造や配置形態に応じて配置してあればよい。上記の実施例では、ストレーナー55と堰止め体56を分離不能に一体化したが、その必要はなく、ストレーナー55と堰止め体56をそれぞれ独立部品化することができ、その場合には、両者55・56の洗浄を簡便に行える。また、堰止め体56は、1個の堰止めエレメント69とリング状の装着座70で構成することができる。その場合の堰止めエレメント69は、
図8で説明した平板状の1個の堰止めエレメントとして構成してあればよく、例えば堰止めエレメント69の右面壁および左右面壁に設けたダム壁71で洗浄水を堰止めることができる。さらに、堰止めエレメント69はプラスチック成型品で形成してあってもよい。