(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695175
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/36 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
G03B9/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-50356(P2016-50356)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-167227(P2017-167227A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【審査官】
登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−089296(JP,A)
【文献】
特開2010−276791(JP,A)
【文献】
実開平02−123919(JP,U)
【文献】
特開2001−350176(JP,A)
【文献】
特開平07−152065(JP,A)
【文献】
特開平08−069029(JP,A)
【文献】
特開平08−152672(JP,A)
【文献】
特開平05−281590(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/088675(WO,A1)
【文献】
特開平01−289928(JP,A)
【文献】
特開2005−173122(JP,A)
【文献】
特開2006−133617(JP,A)
【文献】
特開平05−323509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状または略方形状に形成された露光用の開口部を有する地板と、
前記開口部の開閉状態を切り替えるよう動作する羽根と、
前記羽根と対向する位置に配置された板状部材と、
前記羽根を動作させる駆動機構部と、を備え
前記板状部材は、前記開口部の一辺に対応し、前記開口部を挟んで前記駆動機構部の反対側に位置する辺を有し、
前記辺は、前記開口部の前記一辺に沿った略直線状の上下部分と、前記上下部分よりも前記開口部の前記一辺に対して離間した中央部分とを有し、
前記中央部分は、複数の凹凸を有する波打ち形状であって、前記辺の略中央部が前記開口部から最も離間する波打ち形状になっている、
フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記板状部材は、前記開口部と重なるように形成された中間開口部を有する中間板であって、前記地板との間の空間に前記羽根が収容される羽根室を形成する中間板である、
請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
方形状または略方形状に形成され、前記開口部と共に露光用の開口を形成する補助開口部を有する補助地板であって、前記地板との間の空間に前記羽根が収容される羽根室を形成する補助地板をさらに備え、
前記板状部材は、前記羽根を押さえるよう前記羽根室に配置された羽根押え板である、
請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォーカルプレンシャッタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、カメラなどに用いられるフォーカルプレンシャッタなどに関する。
【背景技術】
【0002】
羽根群によって地板の開口部(画枠)を開閉することで撮像素子またはフィルムに対する露光を行うフォーカルプレンシャッタでは、地板と補助地板との間に形成された羽根室に配置された羽根群を駆動機構により駆動することで開口部の開閉状態を変化させ、露光が行われる構成となっている。このようなフォーカルプレンシャッタにおいて、羽根群と地板または補助地板との間には、羽根群のバタつきを抑えるために羽根押え板が配置される構成となることが多い。また、羽根群を2組有する2幕構成のフォーカルプレンシャッタでは、先羽根群と後羽根群との間に中間板が配置される構成となる。このようなフォーカルプレンシャッタでは、開口部の端部で入射光が反射することで本来の色表現ができなくなったり、ゴーストやフレアが発生したりすることを防止するための構成を採ることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−141366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフォーカルプレンシャッタでは、開口部の端部での入射光が反射することに起因するゴーストやフレア発生の対策として、羽根押え板や中間板の開口部を地板の開口部よりも拡大する形状にすることがあった。しかしながら、羽根押え板や中間板の開口部を拡大すると、羽根押え板や中間板そのものが拡大してしまい、それに伴いシャッタ全体が大型化する原因となり、ひいてはカメラ全体が大型化してしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
方形状または略方形状に形成された露光用の開口部(1a)を有する地板(1)と、
前記開口部の開閉状態を切り替えるよう動作する羽根(5、6)と、
前記羽根と対向する位置に配置された板状部材(羽根押え板4、または中間板3)と、を備え
前記板状部材の前記開口部の一辺に対応する辺は、前記開口部の前記一辺に沿った略直線状の上下部分(4a、4b)と、前記上下部分よりも前記開口部の前記一辺に対して離間した中央部分(c)とを有する、
フォーカルプレンシャッタである。
【0007】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、板状部分の中央部分が開口部の一辺に対して離間しているため、当該部分が入射光を反射することを抑制することができる。これによって、ゴーストやフレアの発生を防止し、高品質の画像を撮像することが可能となる。また、板状部分の上下部分では開口部の一辺に沿った直線形状となっているため、当該板状部分の大型化を抑制しつつ、羽根を押さえるための面積や、破損を防止するのに十分な面積を確保する構成とすることができる。
【0008】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
方形状または略方形状に形成され、前記開口部と共に露光用の開口を形成する補助開口部を有する補助地板であって、前記地板との間の空間に前記羽根が収容される羽根室を形成する補助地板をさらに備え、
前記板状部材は、前記羽根を押さえるよう前記羽根室に配置された羽根押え板である。
【0009】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、羽根押え板による入射光の反射を抑制し、ゴーストやフレアの発生を防止する構成とすることができる。
【0010】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記板状部材の中央部分は、波打ち形状になっている。
【0011】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、板状部材の中央部分による光の反射を乱反射とすることができ、これによって反射された不要光が撮像された画像に対して与える影響を低減させることができる。ひいては、当該フォーカルプレンシャッタを備えるカメラ等の撮像装置で撮像された画像を高画質化させることが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記いずれかのフォーカルプレンシャッタを備える、カメラなどの撮像装置を含む。
【0013】
上記構成の撮像装置によれば、装置を比較的小型に構成しつつ、羽根押え板の開口部などによる入射光の反射に起因する撮像画像の画質の低下を防止した構成とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】羽根走行前のフォーカルプレンシャッタの平面図。
【
図2】羽根走行後のフォーカルプレンシャッタの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
2.補足事項
【0016】
<1.実施形態>
本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、羽根群を押さえる羽根押え板、及び/または中間板の、開口部の短辺に沿った辺の中央部分が波打ち形状に形成されている点に特徴のひとつがある。以下、本実施形態のフォーカルプレンシャッタについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの、羽根走行前の平面図である。
図2は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの、羽根走行後の平面図である。すなわち、
図1の状態から撮像のためのレリーズが行われ、先羽根群5及び後羽根群6(後述)が走行した後の状態が
図2の状態である。
図3は、本実施形態の羽根押え板の拡大図である。
図4は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの分解斜視図である。
図4に示された分解斜視図では、補助地板2が省略されている。
【0018】
図1、
図2及び
図4に示されるように、本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、地板1、補助地板2、中間板3、羽根押え板4、先羽根群5、後羽根群6、及び駆動機構部7などを含んで構成される。先羽根群5及び後羽根群6は、それぞれアーム5a及び5b、並びにアーム6a及び6bに連結軸を介して接続されている。アーム5a、5b、6a及び6bは、駆動機構部7に連結されている。なお、本実施形態では、先羽根群5及び後羽根群6を備える2幕構成のフォーカルプレンシャッタを例に挙げて説明するが、本実施形態の特徴的な構成は、羽根群が1組のみの単幕構成のフォーカルプレンシャッタにも適用可能である。
【0019】
<地板1>
地板1は、フォーカルプレンシャッタの基板部分であって、露光開口(画枠)として機能する矩形状の開口部1aが形成されている(
図1、
図2、及び
図4参照)。
図1に示されるように、地板1には駆動機構部7が搭載される。本実施形態のフォーカルプレンシャッタを搭載する撮像装置では、開口部1aの先(被写体とは反対側)には撮像素子が配置される。ただし、露光開口の形状は、たとえば一辺が略V字状となっている形状や、角の部分が異型となっている略矩形であってもよい。さらに、露光開口が正方形または略正方形であってもよい。なお、矩形および正方形はまとめて「方形」という事がある。
【0020】
<補助地板2>
補助地板2は、地板1と対向する位置に、地板1に対して所定の間隔を空けて取り付けられる。補助地板2には、地板1に形成された開口部1aと類似した矩形状の開口部2aが形成されている(
図1、及び
図2参照)。地板1と補助地板2との間の空間は、先羽根群5及び後羽根群6を含む部材が収容される羽根室と呼ばれる。
【0021】
<中間板3>
中間板3は、地板1と補助地板2との間の羽根室に配置される(
図4参照)。
図4に示されるように、地板1と中間板3との間には、先羽根群5が配置され、補助地板2と中間板3との間には、羽根押え板4及び後羽根群6が配置される。中間板3には、地板1の開口部1aと補助地板2の開口部2aと重なり合うように、開口部3dが形成されている。開口部3dを形成する辺のうち短辺となる一辺(
図1、
図2、及び
図4における右側の辺)は、その一部が波打ち形状に形成されている。すなわち、中間板3の一の短辺は、その長辺側と接する上下部分においては、地板1(または補助地板2)の開口部1a(または2a)に沿った略直線形状となっており、この略直線形状から先の中央部分においては、地板(または補助地板2)の開口部1a(または2a)からやや離間した波打ち形状(波状)に形成されている。
【0022】
<羽根押え板4>
羽根押え板4は、地板1と補助地板2との間の羽根室であって、中間板3と後羽根群6との間に配置される(
図4参照)。特に
図3に示されるように、羽根押え板4は、後羽根群6の、アーム6a及び6bが接続された端部とは逆の端部近傍を覆うコ型(U字型)形状となっている。羽根押え板4の内側の一辺は、地板1の開口部1aと補助地板2の開口部2aの一の短辺に沿うような形状に形成されているが、特に本実施形態では、この羽根押え板4の内側の一辺に特徴がある。すなわち、羽根押え板4の開口部1a及び2aに対応する一辺は、開口部1a及び2aの長辺側と接する上下部分においては、地板1(または補助地板2)の開口部1a(または2a)に沿った略直線形状となっており、この略直線形状から先の中央部分においては、地板(または補助地板2)の開口部1a(または2a)からやや離間した波打ち形状(波状)に形成されている。すなわち、羽根押え板4の開口部1a及び2aに対応する一辺は、中間板3と対応する一辺と類似形状となっている。羽根押え板4は、後羽根群6の動作時の揺れを軽減するよう機能する。
【0023】
<先羽根群5>
先羽根群5は、地板1と補助地板2により画定される羽根室において、地板1と中間板3との間に配置される。先羽根群5は、駆動機構部7により駆動され、これによって開口部1a及び2aにより画定される露光開口(画枠)を開閉するよう動作する。先羽根群5は複数枚の羽根により構成され、アーム5a及び5bを介して駆動機構部7に連結される。
【0024】
<後羽根群6>
後羽根群6は、地板1と補助地板2により画定される羽根室において、羽根押え板4と補助地板2との間に配置される。後羽根群6は、駆動機構部7により駆動され、これによって開口部1a及び2aにより画定される露光開口(画枠)を開閉するよう動作する。後羽根群6は複数枚の羽根により構成され、アーム6a及び6bを介して駆動機構部7に連結される。
【0025】
<駆動機構部7>
駆動機構部7は、地板1に搭載され、電磁石またはバネ等を利用した動力によって、羽根群を動作させるよう構成される。ユーザによりカメラ等の撮像装置のレリーズが行われると、駆動機構部7が動作し、その動力はアーム5a、5b、6a及び6bを介して先羽根群5及び後羽根群6に伝達される。これにより、先羽根群5及び後羽根群6が動作して露光開口(画枠)を開閉し、撮像素子に対する露光(入射光の照射)が行われる。
【0026】
上記のとおり、本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、中間板3及び羽根押え板4の、開口部1a(及び2a)の短辺に対応する一辺の中央部分が、開口部1a(及び2a)の当該短辺に対して離間しているため、当該中央部分が入射光を反射することを抑制することができる。これによって、ゴーストやフレアの発生を防止し、高品質の画像を撮像することが可能となる。また、中間板3及び羽根押え板4の当該一辺の上下部分では、開口部1a(及び2a)の対応する短辺に沿った直線形状となっているため、中間板3及び羽根押え板4の大型化を抑制しつつ、先羽根群5及び後羽根群6を押さえるための面積や、破損を防止するのに十分な面積を確保する構成とすることができる。
【0027】
また、本実施形態のフォーカルプレンシャッタによれば、中間板3及び羽根押え板4の上記一辺の中央部分を波打ち形状にしているため、当該中央部分による入射光の反射を乱反射とすることができ、これによって反射された不要光が撮像された画像に対して与える影響を低減させることができる。ひいては、当該フォーカルプレンシャッタを備えるカメラ等の撮像装置で撮像された画像を高画質化させることが可能となる。
【0028】
<2.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0029】
上記実施形態では、中間板3と羽根押え板4との双方が、開口部1a及び2aの短辺に対応する一辺において直線形状部と波打ち形状部とを有する構成について説明したが、中間板3と羽根押え板4とのいずれかがこのような特徴を有する構成としても一定の効果が得られる
。
【0030】
また、上記実施形態では、先羽根群5及び後羽根群6を備える所謂2幕構成のフォーカルプレンシャッタを例に挙げて説明したが、羽根群を1組のみ備える所謂単幕構成のフォーカルプレンシャッタにも適用可能である。この場合、中間板3は不要な構成となるため、羽根押え板4の一辺が、直線形状部と波打ち形状部とを有する構成を採用する。
【0031】
また、他の実施形態では、羽根押え板4は、中間板3と先羽根群5との間に設けられてもよい。さらに、その他の実施形態では、中間板3と先羽根群5との間、および中間板3と
後羽根群
6との間のそれぞれに羽根押え板4が設けられてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、CCDやC−MOSなどの撮像素子を利用することを想定して説明しているが、上記実施形態のフォーカルプレンシャッタはフィルムを用いた撮像装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のフォーカルプレンシャッタは、ゴーストやフレアの発生を抑制した撮像装置用のシャッタ装置などとして利用される。
【符号の説明】
【0034】
1…地板
2…補助地板
3…中間板
1a、2a、3d…開口部
4…羽根押え板
5…先羽根群
6…後羽根群
5a、6a…アーム
7…駆動機構部