(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記切り替え準備工程を行うための第一の条件が満たされた後に、供給に使用されていない前記調節弁の開度を制御する、請求項1に記載の燃料ガス充填システム。
前記制御装置は、前記第一の条件が満たされた後、前記切り替え工程を行うための第二の条件が満たされた後に、使用中の調節弁から、第一の条件が満たされた後に開度を調節された前記調節弁に変更する、請求項2又は3に記載の燃料ガス充填システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の差圧充填において、充填元の蓄圧器の圧力が減少し、蓄圧器と調節弁の下流側との圧力差が小さくなると、水素充填装置は、通常、流量を上げるために調節弁の開度を大きくする。その後、さらに圧力差が小さくなると、充填速度を保つため、充填元の蓄圧器を圧力が高い蓄圧器に切り替えるが、この時、充填元の蓄圧器の圧力が大きく変化すると、調節弁の開度の制御が間に合わず、開度が大きい状態で水素ガスの充填が行われてしまう。そうすると、水素ガスの流量が急に増加してしまうため、FCVの車載タンク内に瞬間的に過剰な圧力上昇が生じてしまう。そのため、安全で効率的に水素を充填することができないという問題があった。このような問題は、水素に限らず、短時間で容器に高圧充填される燃料ガス全般に共通する問題である。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、安全で効率的に燃料ガスを充填することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、燃料ガスを貯留する複数の蓄圧器と、開度を調節することによって前記蓄圧器から容器に供給される前記燃料ガスの流量を制御可能な2以上の調節弁と、前記調節弁の開度を制御する制御装置と、を備え、前記調節弁が並列に設けられ、前記制御装置は、いずれかの調節弁を介して前記燃料ガスが供給されている間で供給に使用される使用中蓄圧器を切り替える前に、供給に使用されていない調節弁の開度を予め調節する切り替え準備工程と、前記使用中蓄圧器と供給に使用される調節弁とを供給に使用されていない待機中蓄圧器と開度を調節した前記調節弁とに切り替える切り替え工程とを行い、切り替え後に、開度を調節した前記調節弁を介して前記燃料ガスの充填を行う制御をする燃料ガス充填システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の燃料ガス充填システムであって、前記制御装置は、前記切り替え準備工程を行うための第一の条件が満たされた後に、供給に使用されていない前記調節弁の開度を制御する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の燃料ガス充填システムであって、前記蓄圧器内の圧力と、前記調節弁の下流側の圧力とをそれぞれ検出する圧力測定装置をさらに備え、前記第一の条件は、前記使用中蓄圧器内と、前記調節弁の下流側との圧力差に関する条件であり、前記制御装置は、前記使用中蓄圧器内の圧力と、前記調節弁の下流側の圧力との圧力差が予め定められた第一の設定値に達した場合に前記第一の条件が満たされたと判定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の燃料ガス充填システムであって、前記制御装置は、前記第一の条件が満たされた後、前記切り替え工程を行うための第二の条件が満たされた後に、使用中の調節弁から、第一の条件が満たされた後に開度を調節された前記調節弁に変更する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の燃料ガス充填システムであって、前記第二の条件は、前記使用中蓄圧器内と、前記調節弁の下流側との圧力差に関する条件であり、前記制御装置は、前記使用中蓄圧器内の圧力と、前記調節弁の下流側の圧力との圧力差が予め定められた第二の設定値に達した場合に前記第二の条件が満たされたと判定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の燃料ガス充填システムであって、前記燃料ガスが水素であり、前記容器が燃料電池自動車の車載タンクである。
【0012】
本発明の一態様は、燃料ガスを貯留する複数の蓄圧器と、開度を調節することによって前記蓄圧器か
ら容器に供給される前記燃料ガスの流量を制御可能な2以上の調節弁と、前記調節弁の開度を制御する制御装置と、を備え、前記調節弁が並列に設けられた燃料ガス充填システムにおける燃料ガス充填方法であって、前記制御装置が、いずれかの調節弁を介して前記燃料ガスが供給されている間で供給に使用される使用中蓄圧器を切り替える前に、供給に使用されていない調節弁の開度を予め調節する切り替え準備工程と、前記使用中蓄圧器と供給に使用される調節弁とを供給に使用されていない待機中蓄圧器と開度を調節した前記調節弁とに切り替える切り替え工程とを行い、切り替え後に、開度を調節した前記調節弁を介して前記燃料ガスの充填を行う制御をする燃料ガス充填方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、安全で効率的に燃料ガスを充填することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における水素充填システム1を含む水素充填環境の構成図である。
水素充填システム(燃料ガス充填システム)1は、FCV2の車載タンク内に水素ガス(燃料ガス)を供給するためのシステムである。水素充填システム1では、蓄圧器内と調節弁の下流側との差圧充填により、高圧の水素ガス(以下、単に「水素ガス」という。)を充填する。水素充填システム1は、例えば水素ステーションなどである。FCV2は、水素ガスと酸素ガスとの化学反応によって発生した電力を動力源として走行する燃料電池自動車である。
【0016】
次に、水素充填システム1の具体的な構成について説明する。水素充填システム1は、制御装置10と、蓄圧器20−1〜20−N(Nは2以上の整数)と、圧力計21−1〜21−Nと、遮断弁22−1〜22−Nと、逆止弁23−1〜23−Nと、第一遮断弁24−1と、第二遮断弁24−2と、第一調節弁25−1と、第二調節弁25−2と、流量計26と、遮断弁29と、圧力計30と、充填カプラ31と、温度計(不図示)とを備える。第一遮断弁24−1、第二遮断弁24−2、第一調節弁25−1及び第二調節弁25−2は、流量制御部として構成される。
【0017】
制御装置10は、遮断弁22−1〜22−N、第一遮断弁24−1、第二遮断弁24−2、第一調節弁25−1、第二調節弁25−2、遮断弁29、圧力計21−1〜21−N、流量計26及び温度計(不図示)と電気的に接続されている。制御装置10は、遮断弁22−1〜22−N、第一遮断弁24−1、第二遮断弁24−2及び遮断弁29の開閉を制御する。また、制御装置10は、第一調節弁25−1及び第二調節弁25−2の開度を調節する。制御装置10の制御により遮断弁22−1〜22−Nのいずれかが開放されると、開放された遮断弁22−1〜22−Nに接続されている蓄圧器20−1〜20−Nから水素ガスが供給ライン11に供給される。
【0018】
供給ライン11は、配管である。供給ライン11の配管サイズは、例えば外径6.35mm〜9.53mmである。また、供給ライン11の材質は、特に限定されるものではないが、配管内の圧力は高圧となることから、金属製であることが望ましい。一般的には、ステンレス製の鋼管が用いられる。
【0019】
蓄圧器20−1〜20−Nは、圧縮機(不図示)により圧縮された高圧の水素ガスを貯留する。蓄圧器20−1〜20−Nは、高圧の水素ガスを蓄圧することができれば、材質や形状に特に限定されるものではない。一般的に、蓄圧器20−1〜20−Nは、大型のマンガン鉱製の継ぎ目なしボンベやカードルなどが用いられる。
圧力計21−1〜21−Nは、それぞれ、蓄圧器20−1〜20−Nと遮断弁22−1〜22−Nとの間に設けられ、蓄圧器20−1〜20−N内の水素ガスの圧力を検出する。
【0020】
遮断弁22−1〜22−Nは、それぞれ、蓄圧器20−1〜20−Nに対して設けられる。遮断弁22−1〜22−Nは、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスの供給を遮断可能な弁である。遮断弁22−1〜22−Nが閉じられている場合には、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスの供給が遮断される。遮断弁22−1〜22−Nが開放されている場合には、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスが供給ライン11に供給される。遮断弁22−1〜22−Nは、制御装置10の制御に応じて開閉される。
【0021】
逆止弁23−1〜23−Nは、それぞれ、遮断弁22−1〜22−Nに対して設けられる。逆止弁23−1〜23−Nは、供給ライン11内を流れる水素ガスの逆流を防ぐ弁である。本実施形態では、逆止弁23−1〜23−Nは、蓄圧器20−1〜20−NからFCV2の方向にのみ水素ガスが供給可能となる向きに設置される。
【0022】
流量制御部は、蓄圧器20−1〜20−Nから供給された水素ガスの流量を制御する。流量制御部には、供給ライン11を流れる水素ガスが流れる第一の供給ライン12と、第二の供給ライン13とが設けられる。第一の供給ライン12及び第二の供給ライン13は、配管である。第一の供給ライン12及び第二の供給ライン13の配管サイズは、例えば外径6.35mm〜9.53mmである。また、第一の供給ライン12及び第二の供給ライン13の材質は、特に限定されるものではないが、配管内の圧力は高圧となることから、金属製であることが望ましい。一般的には、ステンレス製の鋼管が用いられる。流量制御部から流れた水素ガスは、流量計26に供給される。
【0023】
また、第一の供給ライン12には第一遮断弁24−1及び第一調節弁25−1が設けられ、第二の供給ライン13には第二遮断弁24−2及び第二調節弁25−2が設けられる。第一遮断弁24−1及び第二遮断弁24−2は、水素ガスの供給を遮断可能な弁である。第一遮断弁24−1及び第二遮断弁24−2のどちらかが閉じられている場合には、閉じられている遮断弁からの水素ガスの供給が遮断される。第一遮断弁24−1及び第二遮断弁24−2のどちらかが開放されている場合には、開放されている遮断弁から水素ガスが供給される。第一遮断弁24−1及び第二遮断弁24−2は、制御装置10の制御に応じて開閉される。
【0024】
本実施形態では、流量制御部の供給ライン、遮断弁及び調節弁の組は2組であったが、これに限定されることではなく、3組以上が並列に設けられていてもよい。
充填中において、流量制御部は、いずれか一つの調節弁が用いられる。また、蓄圧器が切り替わる前に、使用されていない調整弁の内の一つの開度が、切り替え準備工程時に調節される。
本実施形態では調節弁に対応した遮断弁を設けたが、これに限定されることではなく、3方弁や4方弁など複数の弁が一体になったブロック弁を設けても良い。
さらに、調節弁が、開閉速度が非常に早く、完全に閉止可能な場合は、遮断弁等を必ずしも設けなくてもよい。
【0025】
第一調節弁25−1は、本体部がニードル弁で構成されており、開度調節可能な弁である。第一調節弁25−1の開度が調節されることにより水素ガスの流量が制御される。
第二調節弁25−2は、本体部がニードル弁で構成されており、開度調節可能な弁である。第二調節弁25−2の開度が調節されることにより水素ガスの流量が制御される。
充填中には、流量制御部に設けられた第一調節弁25−1及び第二調節弁25−2のいずれか一つの調節弁が用いられる。また、充填に使用される蓄圧器20(以下、「使用中蓄圧器」という。)が切り替わる前に、使用されていない調節弁(以下、「待機中調節弁」という。)の内の一つの開度が調節される。なお、以下の説明では、充填に使用されていない蓄圧器20を待機中蓄圧器と記載する。
本実施形態では、第一調節弁25−1と第二調節弁25−2は同じ型式の弁を用いたが、これに限定されることではない。しかしながら、型式やCv値は同じであることが望ましい。
【0026】
遮断弁29は、充填終了時に水素ガスの供給を遮断する弁である。遮断弁29が閉じられている場合には、FCV2の車載タンクへの水素ガスの供給が遮断される。遮断弁29が開放されている場合には、FCV2の車載タンクへ水素ガスが供給される。遮断弁29は、制御装置10の制御に応じて開閉される。
圧力計30は、遮断弁29と充填カプラ31との間に設けられ、調節弁の下流側の水素ガスの圧力を検出する。圧力計30によって検出された水素ガスの圧力値は、制御装置10に入力される。
【0027】
充填カプラ31は、水素充填システム1とFCV2とを接続するための結合部材である。充填カプラ31によって水素充填システム1とFCV2とが接続されることにより、水素充填システム1からFCV2に水素ガスの供給が可能になる。
温度計(不図示)は、水素ガスの温度を測定する。この温度は、切り替え準備工程での次に使用する調節弁の開度の算出に用いられる。本実施形態では温度計の一例として熱電対を用いるが、これに限定されることではなく、水素ガスの温度が測定できるものであればよい。
【0028】
なお、以降の説明において、蓄圧器20−1〜20−Nについて特に区別しない場合には蓄圧器20と記載する。また、圧力計21−1〜21−Nについて特に区別しない場合には圧力計21と記載する。また、遮断弁22−1〜22−Nについて特に区別しない場合には遮断弁22と記載する。また、逆止弁23−1〜23−Nについて特に区別しない場合には逆止弁23と記載する。また、第一調節弁25−1及び第二調節弁25−2について特に区別しない場合には調節弁25と記載する。また、圧力計21及び30について特に区別しない場合には圧力計と記載する。
【0029】
次に、
図2及び
図3を用いて本実施形態における水素充填システム1の処理の流れについて説明する。
図2及び
図3は、FCV2の車載タンクに対して水素ガスを充填する際の処理の流れを示す概略図である。なお、
図2及び
図3では、説明の簡単化のため、制御装置10(
図2及び
図3では不図示)、2つの蓄圧器20(20−1〜20−2)、5つの遮断弁22(22−1〜22−2、24−1〜24−2、29)、2つの逆止弁23(23−1〜23−2)、第一調節弁25−1、第二調節弁25−2及びFCV2の車載タンクを用いて説明する。なお、全弁が閉状態を初期状態とする。
【0030】
まず、制御装置10は、FCV2の車載タンク内に水素ガスを充填するために、使用中蓄圧器に対応する弁を開放する。ここで、使用中蓄圧器が、蓄圧器20−1であるとする。この場合、制御装置10は、蓄圧器20−1に対応する遮断弁22−1と、第一遮断弁24−1と、第一調節弁25−1と、遮断弁29とを開放する(
図2(A))。遮断弁22−1と、第一遮断弁24−1と、第一調節弁25−1と、遮断弁29とが開放されると、蓄圧器20−1に貯留されている水素ガスが差圧充填により供給ライン11及び第一の供給ライン12を介してFCV2の車載タンクに充填される。この際の第一調節弁25−1の開度は、調節弁の下流側の圧力が目標昇圧率に追従するような値に調節される。その後、差圧充填により蓄圧器20−1内の圧力は低下し、調節弁の下流側の圧力は上昇する。蓄圧器20−1内の圧力と調節弁の下流側の圧力との圧力差が小さくなってくると、水素ガスの流量を確保するため、第一調節弁25−1の開度が大きくなる(開度が100%に近づく)。ここで、第一調節弁25−1を最初に使用したが、これに限定されることではなく、最初に第二調節弁25−2を使用してもよい。
【0031】
また、制御装置10は、定期的に各種情報を取得する。例えば、制御装置10は、各圧力計及び流量計26からそれぞれ圧力値及び流量値の情報を取得する。充填が行われている間、制御装置10は、切り替え準備条件(第一の条件)が満たされたか否か判定する。切り替え準備条件とは、使用中蓄圧器を待機中蓄圧器に切り替える準備を行うための条件である。切り替え準備条件の具体例として、使用中蓄圧器内の圧力と調節弁の下流側の圧力との圧力差が、予め設定された第一の設定値に達することが挙げられる。使用中蓄圧器内の圧力と調節弁の下流側の圧力との圧力差が、第一の設定値に達した場合、制御装置10は切り替え準備条件が満たされたと判定する。この時、制御装置10は、使用中蓄圧器の切り替え準備を行う。具体的には、制御装置10は、高圧状態の待機中蓄圧器への切り替え後に、FCV2の車載タンクに急激な充填が行われないようにするために、次に使用する蓄圧器20内の圧力、調節弁の下流側の圧力及び取得した水素の流量値を基に待機中調節弁(
図2及び3では、第二調節弁25−2)の開度を算出し、算出した開度に待機中調節弁を予め調節する(
図2(B))。この時の待機中調節弁の開度は、第一調節弁25−1の開度よりも小さいのが一般的である。
【0032】
本実施形態の待機中調節弁の開度の算出方法は、充填開始時から切り替え準備条件が満たされるまでの水素ガスの流量値及び調節弁の下流側の圧力値から近似曲線を算出する方法が挙げられる。近似曲線を算出する方法としては、例えば最小二乗法を用いる例で説明するが、これに限定されることではない。制御装置10は、算出した近似曲線を用いて、後述する切り替え条件が満たされる予定のタイミングの水素流量及び調節弁の下流側の圧力値を推定する。
【0033】
次に、待機中調節弁の開度は、Cv値の計算式である式1または式2と、水素充填システムに設けられた調節弁(待機中調節弁)のCv値と開度との関係式とから求められる。
【数1】
【数2】
【0034】
式1及び式2のQgは切り替え条件が満たされる予定のタイミングの水素流量の推定値、P1は次に使用される蓄圧器20内の圧力値、P2は切り替え条件が満たされる予定のタイミングの調節弁の下流側の圧力値の推定値、tは図に記さなかった温度計によって検出された、切り替え準備条件が満たされた時の水素ガスの温度、Ggは水素ガスの比重(0.0695)を表す。
待機中調節弁の開度が調節されたら、切り替え準備が完了する。
【0035】
その後、制御装置10は、切り替え条件(第二の条件)が満たされたか否か判定する。切り替え条件とは、使用中蓄圧器を待機中蓄圧器に切り替えを行うための条件である。切り替え条件の具体例として、使用中蓄圧器内の圧力と調節弁の下流側の圧力との圧力差が、予め設定された第二の設定値に達することが挙げられる。第二の設定値は、第一の設定値よりも小さい値である。使用中蓄圧器内の圧力と調節弁の下流側の圧力との圧力差が、第二の設定値に達した場合、制御装置10は切り替え条件が満たされたと判定する。この時、制御装置10は、使用中蓄圧器を待機中蓄圧器に切り替え作業を開始する。具体的には、まず制御装置10は、使用中蓄圧器に対応する遮断弁22−1と、第一遮断弁24−1とを閉止する(
図3(A))。
【0036】
その直後に、制御装置10は、次に使用する待機中蓄圧器(例えば、蓄圧器20−2)に対応する遮断弁22−2と、第二遮断弁24−2とを開放する(
図3(B))。遮断弁22−2と、第二遮断弁24−2とが開放されると、蓄圧器20−2に貯留されている水素ガスが差圧充填により供給ライン11及び第二の供給ライン13を介してFCV2の車載タンク内に充填される。第二調節弁25−2の開度は、流量が一定となるように、予め小さくなるように調節されているため、圧力が高い蓄圧器20に切り替わっても、流量に大きな変動が起こらない。なお、第一調節弁25−1の開度は、その後一旦閉じられ、次の蓄圧器20の切り替え準備時に、調節される。
その後、制御装置10は、使用中蓄圧器を切り替えながら、FCV2の車載タンク内への充填を行う。そして、規定の充填終了の条件に達したら、遮断弁29が閉止され、充填は終了となる。ここで、開度及び圧力差の時間変化は直線で表したが、実際は曲線である。
【0037】
図4は、FCV2に対して水素ガスを充填する際の処理の流れを示すタイミングチャートである。
図4では、蓄圧器20を3台(蓄圧器20−1、蓄圧器20−2及び蓄圧器20−3)用いた例について説明する。なお、各蓄圧器20は、水素ガスが略満タン貯留されているとする。
図4において、横軸は充填時間を表し、縦軸は調節弁の開度と、使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差に関する情報を表す。
図4のaで示される範囲は第一調節弁25−1の開度に関する情報を表し、
図4のbで示される範囲は第二調節弁25−2の開度に関する情報を表し、
図4のcで示される範囲は使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差に関する情報を表す。
図4において、折れ線40は第一調節弁25−1の開度の遷移を表し、折れ線41は第二調節弁25−2の開度の遷移を表し、折れ線42は使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差の遷移を表す。
【0038】
充填開始時には、使用中蓄圧器として蓄圧器20−1が使用され、第一調節弁25−1が開放されて充填が行われるとする。充填が開始されると、折れ線40で示されるように時間の経過とともに第一調節弁25−1の開度が大きくなっていき、折れ線42で示されるように使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が小さくなっていく。時刻t1で使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第一の設定値に達すると、待機していた第二調節弁25−2の開度が調節される。これにより、折れ線41で示されるように第二調節弁25−2の開度が少し大きくなる。その後、使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第二の設定値に達するまで第二調節弁25−2の開度は維持される。このとき、流量が変動し、維持していた開度では、蓄圧器の切り替え時に流量差が生じる場合は、第二調節弁25−2の開度は微調整される。
【0039】
そして、時刻t2で使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第二の設定値に達すると、使用中蓄圧器が蓄圧器20−1から蓄圧器20−2に切り替えられる。蓄圧器の切り替えと略同時に調節弁が第一調節弁25−1から第二調節弁25−2に切り替えられる。その後、第一調節弁25−1の開度が絞られていき、やがて開度が0%になり待機状態となる。第二調節弁25−2は、時間の経過とともに、予め調節された開度から開度が徐々に大きくなっていく。また、使用中蓄圧器が切り替えられたことにより、使用中蓄圧器(蓄圧器20−2)内と調節弁の下流側との圧力差が大きくなる。ただし、充填開始時t0に比べて調節弁の下流側の圧力が高くなっている。そのため、切り替え後の使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差は充填開始時t0に比べて小さい。
【0040】
差圧充填により、切り替え後の使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が小さくなっていき、時刻t3で使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第一の設定値に達すると、待機していた第一調節弁25−1の開度が調節される。これにより、折れ線40で示されるように第一調節弁25−1の開度が少し大きくなる。その後、使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第二の設定値に達するまで第一調節弁25−1の開度は維持される。このとき、流量が変動し、維持していた開度では、蓄圧器の切り替え時に流量差が生じる場合は、第一調節弁25−1の開度は微調整される。
【0041】
そして、時刻t4で使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差が第二の設定値に達すると、使用中蓄圧器が蓄圧器20−2から蓄圧器20−3に切り替えられる。蓄圧器の切り替えと略同時に調節弁が第二調節弁25−2から第一調節弁25−1に切り替えられる。その後、第二調節弁25−2の開度が絞られていき、やがて開度が0%になり待機状態となる。第一調節弁25−1は、時間の経過とともに、予め調節された開度から開度が徐々に大きくなる。また、使用中蓄圧器が切り替えられたことにより、使用中蓄圧器(蓄圧器20−3)内と調節弁の下流側との圧力差が大きくなる。ただし、充填開始時t0及び1回目の切り替え時t2に比べて調節弁の下流側の圧力が高くなっている。そのため、切り替え後の使用中蓄圧器内と調節弁の下流側との圧力差は充填開始時t0及び1回目の切り替え時t2に比べて小さい。その後、充填が完了するまで上記の処理が繰り返し実行される。なお、調節弁の数が3つ以上の場合には、各調節弁の開度を順番に調節することにより、上記の処理が実行される。
その後、時刻t5で充填は終了となる。
【0042】
以上のように構成された水素充填システム1によれば、安全で効率的に水素ガスを充填することができる。
【0043】
<変形例>
本実施形態では、水素ガスの充填先としてFCV2の車載タンクを例に説明したが、これに限定されることではない。例えば、水素ガスの充填先は、水素ガスを充填可能な容器であれば、カードルやローダーなどどのような容器であってもよい。
本実施形態では、燃料ガスとして水素ガスを例に説明したが、燃料ガスは電気化学反応によって電力を発生させてFCV2に用いることができるガスであればどのようなガスであってもよい。
【0044】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。