(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の従来技術にあっては、上側ボディの材料供給口の上から未溶融の熱硬化性のプラスチック材料を供給するので、成形装置を設置する際のスペース高さが高くなってしまう。このため、設置場所が限定されてしまうという課題がある。
また、閉塞手段によって、材料供給口を閉塞すると共に、この材料供給口に連なるポットを封止するので、閉塞手段の構造が複雑化してしまう。このため、閉塞手段を交換する等の成形作業が煩雑になってしまうと共に、製造コストが増大するという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、設置スペースの高さを抑えることができると共に、成形作業を容易化でき、さらに製造コストも低減できる熱硬化性プラスチックの成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置は、上下方向に相対移動可能な上側ボディおよび下側ボディを有し、前記下側ボディに設けられ、未溶融の熱硬化性のプラスチック材料
を複数の成形サイクル分量だけ収容可能なポットと、前記上側ボディに設けられ、該上側ボディと前記下側ボディとの相対移動によって前記ポットに挿入されることで、該ポットと協働して前記プラスチック材料を封止するプランジャと、前記下側ボディに設けられ、前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料を導出する充填通路と、を有する材料供給部と、前記ポットに供給された未溶融の前記プラスチック材料を溶融可能な温度に前記材料供給部を加熱する予熱手段と、キャビティを有し、前記材料供給部の下方に配置されて上下方向に移動可能に設置され、上方移動により前記材料供給部に当接したときに前記材料供給部の前記充填通路と前記キャビティとが連なり、さらなる上方移動により、前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料が前記キャビティに充填される可動型と、前記可動型の前記キャビティに充填された前記プラスチック材料を硬化可能な温度に前記可動型を加熱する加熱手段と、
上側ボディの下側ボディとの合わせ面に設けられ、前記可動型の上昇量が所定値に達したことを検出するストローク量検出手段と、を備え、前記上側ボディおよび前記下側ボディは、これら上側ボディと下側ボディとの間で前記ポットが開口するように上下方向に相対移動することを特徴とする。
【0009】
このように、上側ボディおよび下側ボディは、これら上側ボディと下側ボディとの間でポットが開口するように上下方向に相対移動するので、上側ボディと下側ボディとの間からポットに直接未溶融のプラスチック材料を供給できる。このため、上側ボディの上にプラスチック材料を供給するためのスペースを確保する必要がなくなるので、設置スペースの高さを抑えることができる。
また、上側ボディに閉塞手段であるプランジャを設け、上側ボディと下側ボディとの相対移動によって、プランジャとポットとが協働してプラスチック材料を封止するように構成している。このため、プランジャの構成が簡素化できる。よって、成形作業を容易化でき、さらに製造コストも低減できる。
【0010】
本発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置において、前記プランジャは、前記上側ボディに固定されたベース部と、前記ベース部の前記下側ボディ側に、前記ベース部に対して着脱可能に設けられた成形部と、に分割構成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、成形作業の工程に応じてプランジャ全体を交換することなく、成形部だけを交換すればよくなる。このため、成形作業をさらに容易化できる。
また、プランジャ全体を成形作業の工程に応じて複数用意する必要がなく、成形部だけを複数用意すればよくなるので、成形装置の製造コストを低減できる。
【0012】
本発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置において、前記成形部は、未溶融の前記プラスチック材料が供給されている前記ポットを封止して前記プラスチック材料の成形を行う際に用いられる成形駒と、最終成形後に残存する前記プラスチック材料を取り出すための取出し駒と、からなることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、成形作業時のプラスチック材料の取出し作業を容易化できる。このため、成形作業をさらに容易化できる。
【0014】
本発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置は、前記取出し駒の前記ベース部とは反対側の面に、蟻溝が形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、蟻溝にプラスチック材料が入り込み、このプラスチック材料と取出し駒とが係合された状態になる。このため、簡素な構造で、取出し駒によるプラスチック材料の取り出しを容易に行うことができる。
また、取出し駒によってプラスチック材料を取り出した後、蟻溝の溝延在方向に沿ってプラスチック材料をスライド移動させるだけで、取出し駒からプラスチック材料を取り外すことができる。このため、成形作業をさらに容易化できる。
【0016】
本発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置は、前記ベース部の前記成形部側の面に、前記上下方向に沿う断面形状がT字状のT溝が形成されており、前記成形部の前記ベース部側の面に、前記T溝に前記上下方向と直交する水平方向から挿入可能な凸部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、T溝の溝延在方向に沿って成形部をスライド移動させるだけで、ベース部に対して成形部を着脱させることが可能になる。このため、成形部の交換作業を容易化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボディおよび下側ボディは、これら上側ボディと下側ボディとの間でポットが開口するように上下方向に相対移動するので、上側ボディと下側ボディとの間からポットに直接未溶融のプラスチック材料を供給できる。このため、上側ボディの上にプラスチック材料を供給するためのスペースを確保する必要がなくなるので、設置スペースの高さを抑えることができる。
【0019】
また、上側ボディに閉塞手段であるプランジャを設け、上側ボディと下側ボディとの相対移動によって、プランジャとポットとが協働してプラスチック材料を封止するように構成している。このため、プランジャの構成が簡素化できる。よって、成形作業を容易化でき、さらに製造コストも低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(熱硬化性プラスチックの成形装置)
図1は、熱硬化性プラスチックの成形装置(以下、単に成形装置という)1の断面図であって、型開き状態を示す。
同図に示すように、成形装置1は、上側に配置された金属製の材料供給ブロック(材料供給部)10と、材料供給ブロック10の下方に配置された金属製の可動型40と、可動型40を昇降する昇降台60と、後述のポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給するためのホッパ装置80と、を主要構成として備えている。なお、以下の説明では、成形装置1を設置した状態で、重力方向上側を単に上側、重力方向下側を単に下側、重力方向に直交する方向を水平方向などと称して説明する。
【0023】
材料供給ブロック10は、互いに上下方向に相対移動可能に設けられたプレート状の上側ボディ12、およびプレート状の下側ボディ13と、材料供給ブロック10を加熱する予熱装置14と、を備えている。
下側ボディ13は、上側ボディ12の下方に配置されている。下側ボディ13は、上側ボディ12に支持装置(不図示)を介して昇降可能に支持されている。また、下側ボディ13には、上側に開口部15aが形成されるようにポット15が凹設されている。ポット15は、上下方向からみて略四角状に形成されている。このように形成されたポット15に、未溶融のプラスチック材料90が供給される。
【0024】
さらに、下側ボディ13の下面には、例えばベーク板等からなる断熱プレート17が設けられている。この断熱プレート17には、ポット15に連通する小径の充填通路18が複数(例えば、この実施形態では2つ)貫通形成されている。充填通路18の数は、成形装置1が1サイクルで一度に成形することができる成形品(製品)の数と一致する。
【0025】
一方、上側ボディ12の下面には、ポット15に対応する位置に、このポット15に挿入可能なブロック状のプランジャ70が設けられている。プランジャ70によって、ポット15内が封止される。そして、支持装置(不図示)により上側ボディ12と下側ボディ13とが接近すると、ポット15の容量が縮小する。
ここで、上側ボディ12と下側ボディ13とが最も離間した型開き状態では、ポット15からプランジャ70が完全に抜けており、上側ボディ12と下側ボディ13との間からポット15の開口部15aが完全に露出した状態になる。
【0026】
材料供給ブロック10を加熱する予熱装置14は、主に下側ボディ13を加熱するように構成されている。予熱装置14は、ポット15に供給されたプラスチック材料90を、溶融状態に保持することができる温度(例えば80〜90゜C)に制御可能となっている。以下、この温度を溶融保持温度と称する。
【0027】
可動型40は、昇降台60に載置されるベース部41と、ベース部41の上に設置された底部ブロック42と、底部ブロック42の上に設置された中間ブロック43と、中間ブロック43の上に配置され底部ブロック42に支持装置(不図示)を介して昇降可能に支持された浮遊ブロック44と、を備えている。
中間ブロック43には、材料供給ブロック10に設けられている充填通路18と同数のキャビティ45が設けられている。キャビティ45は、中間ブロック43を厚さ方向(上下方向)に貫通するように形成されている。
【0028】
このような構成のもと、各キャビティ45の上部は開口しているが、下部開口は底部ブロック42によって閉塞されている。浮遊ブロック44には、キャビティ45と同数のスプル46が貫通形成されている。スプル46はキャビティ45と比較して極めて小径の管状をなしている。この実施形態では、キャビティ45とスプル46によって、製品を成形するための製品成形部が構成される。
【0029】
充填通路18、キャビティ45、およびスプル46は、同一鉛直線上に配置されている。そして、後述するように、可動型40を上昇させて型締めしたときに、浮遊ブロック44の上面が材料供給ブロック10の断熱プレート17の下面に当接する。さらに、中間ブロック43の上面が浮遊ブロック44の下面に当接する。これにより、ポット15、充填通路18、スプル46、およびキャビティ45がそれぞれ連通される。
【0030】
また、可動型40は加熱装置49によって、キャビティ45とスプル46に充填された溶融状態のプラスチック材料90を硬化させることができる温度(例えば150〜200゜C)に制御可能となっている。
以下、この温度を硬化温度と称する。なお、加熱装置49は、可動型40と一体に構成しなくてもよく、予め加熱装置49で所定温度に加熱しておいた可動型40を、加熱装置49から取り外して昇降台60に載置するようにしてもよい。
【0031】
また、成形装置1には、昇降台60が所定高さに上昇して型締め状態となったときにオンとなるリミットスイッチ65が設置されている。より具体的には、リミットスイッチ65は、最終サイクル(最終成形)においてポット15内の材料が一定量以下となったことを検出し、可動型40がストローク(上昇)したときにオンするように設けられている。例えば、本実施形態では、上側ボディ12の下面(上側ボディ12の下側ボディ13との合わせ面)に、リミットスイッチ65が設けられている。
なお、ここでいう最終サイクル(最終成形)とは、サイクルの開始時にポット15に1サイクル分のプラスチック材料90が残っている状態で行うサイクルであり、この実施形態では3サイクル目となる。このリミットスイッチ65は、ポット15内の材料が一定量以下となったことを検出し、可動型40のストローク量が所定値に達したことを検出するストローク量検出手段と言うことができる。
【0032】
ポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給するためのホッパ装置80は、未溶融状態(例えば粉状やペレット状)のプラスチック材料90を貯留するためのホッパ本体81と、ホッパ本体81に貯留されたプラスチック材料90をポット15の開口部15aに搬送する搬送機構82と、を備えている。
ホッパ本体81は、上部が開口した箱状に形成されている。ホッパ本体81の底部81aには、プラスチック材料90を排出するための排出口83が貫通形成されている。
【0033】
搬送機構82は、水平方向に沿ってスライド移動可能な2つのスライドプレート84,85(第1スライドプレート84、第2スライドプレート85)が上下方向に重なるように設けられたものである。
第1スライドプレート84は、ホッパ本体81の下面に配置され、ホッパ本体81の排出口83を下側から閉塞可能に設けられている。また、第1スライドプレート84は、先端側がホッパ本体81の下面からポット15の開口部15aの真上に至る間をスライド移動可能なように設けられている。
【0034】
第1スライドプレート84の先端側には、排出口83に連通可能な2次貯留部86が、第1スライドプレート84の厚さ方向(
図1上下方向)両側に開口するように形成されている。2次貯留部86の容積は、この実施形態では3サイクル分のプラスチック材料90の容積よりも若干大きくなるように設定されている。2次貯留部86の容積は、1サイクル分のプラスチック材料90の容積より大きければよい。また、第1スライドプレート84の伸長状態(ポット15の開口部15aの真上まで第1スライドプレート84の先端側がスライド移動した状態)では、ポット15の開口部15aの真上に、2次貯留部86が位置する。
【0035】
一方、第2スライドプレート85は、第1スライドプレート84の下面側に配置され、第1スライドプレート84に対してスライド移動可能に構成されている。また、第2スライドプレート85は、第1スライドプレート84の2次貯留部86を下側から閉塞可能に構成されている。さらに、第2スライドプレート84も、第1スライドプレート84に対応するように、その先端がホッパ本体81の下面からポット15の開口部15aの真上に至る間をスライド移動可能なように設けられている。
【0036】
(プランジャ)
図2、
図3は、プランジャ70の斜視図である。
図2に示すように、プランジャ70は、ポット15の形状に対応するように略四角形のブロック状に形成されている。プランジャ70は、上側ボディ12に固定されるベース部71と、ベース部71の下面に設けられ、このベース部71に対して着脱自在に設けられた成形部72と、により構成されている。
ベース部71の下面(成形部72との合わせ面)には、T溝73が下面全体にわたって形成されている。また、T溝73は、水平方向からみてT字状になるように形成されている。
【0037】
一方、成形部72の上面(ベース部71との合わせ面)には、T溝73に対応するように、T字凸部74が突設されている。また、T溝73およびT字凸部74は、ベース部71に対して成形部72を水平方向にスライド移動させることにより、T溝73にT字凸部74を挿入させたり、T溝73からT字凸部74を取り外したりできるように形成されている。これにより、T溝73にT字凸部74を完全に挿入した状態(
図2に示す状態)では、ベース部71から成形部72が脱落することがない。
【0038】
ここで、成形部72は、
図2に示す成形駒75と、
図3に示す取出し駒76と、の2種類の駒からなる。
図2に示す成形駒75は、プラスチック材料90の成形時に使用される。
図3に示す取出し駒76も成形時に使用されるが、最終サイクル終了後に使用されるものである。
より具体的には、最終サイクル終了後にポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90を、ポット15から取出す際に使用される(詳細については、後述の熱硬化性プラスチックの成形方法で説明する)。このため、成形駒75の下面(ベース部71とは反対側の面)75aは、平坦面とされているが、取出し駒76の下面76aには、複数(例えば、本実施形態では2つ)の蟻溝77が形成されている。蟻溝77は、取出し駒76の下面76a全体に渡って形成されている。
【0039】
(熱硬化性プラスチックの成形方法)
次に、
図1、
図4〜
図12に基づいて、成形装置1を用いて実施する熱硬化性プラスチックの成形方法を説明する。
図4〜
図7、
図9は、成形装置1を用いて実施する熱硬化性プラスチックの成形方法の工程説明図である。
図8、
図10、
図11は、熱硬化性プラスチックの成形方法の各工程での成形装置1の状態を示す断面図である。
ここで、前述したように、成形装置1のサイクルの開始時では、ポット15にプラスチック材料90が残っている状態になっている。このため、
図4では、成形が終了した時点(型締めされた状態)で、成形装置1にプラスチック材料90が残っている状態を示す。なお、通常の成形サイクル(成形品(製品)を成形するサイクル)では、プランジャ70の成形部72として、成形駒75(
図2参照)が採用される。
【0040】
図4に示すように、成形品の成形が終了した時点では、ホッパ装置80の搬送機構82が縮退されている。この搬送機構82の縮退状態では、第1スライドプレート84の2次貯留部86がホッパ本体81の排出口83の真下に位置している。また、第1スライドプレート84の2次貯留部86を、第2スライドプレート85の先端側が閉塞している。これにより、2次貯留部86に所定量(3サイクル分よりも若干多い程度の量)の未溶融のプラスチック材料90が貯留される。
【0041】
この状態から、
図1、
図5に示すように、昇降台60により可動型40を下降させて、材料供給ブロック10から可動型40を離反させて型開き状態にする。この際、可動型40が最下点に下降すると、可動型40の浮遊ブロック44が材料供給ブロック10の断熱プレート17から離間すると共に、上側ボディ12と下側ボディ13とが最も離間した型開き状態になる。型開き状態では、ポット15からプランジャ70が完全に抜けており、上側ボディ12と下側ボディ13との間からポット15の開口部15aが完全に露出した状態になる。
また、型開き状態とした後、可動型40を昇降台60から取り外し、可動型40からプラスチック製品92を取り出すと共に、別の可動型40を昇降台60上にセットし(すなわち、可動型40の段取り換えを行い)、次のサイクルに備える。なお、プラスチック製品92の成形方法については、以下に詳述する。
【0042】
図6に示すように、次のサイクル(1サイクル目)では、上側ボディ12と下側ボディ13との間に、ホッパ装置80の搬送機構82が伸長される。この伸長状態では、第1スライドプレート84と第2スライドプレート85とが一体となって伸長される。つまり、第1スライドプレート84の2次貯留部86が第2スライドプレート85の先端側で閉塞されたままの状態で、これら第1スライドプレート84と第2スライドプレート85とが伸長される。また、搬送機構82の伸長状態では、下側ボディ13に形成されているポット15の開口部15aの真上に、第1スライドプレート84の2次貯留部86が位置している。
【0043】
続いて、
図7、
図8に示すように、第1スライドプレート84を伸長させた状態のまま第2スライドプレート85を縮退させる。すると、第1スライドプレート84の2次貯留部86の下側が開口され、この2次貯留部86に貯留されていた未溶融のプラスチック材料90がポット15内に供給される。
この状態では、材料供給ブロック10の上側ボディ12と下側ボディ13とが、予熱装置14によって溶融保持温度に予熱されている。また、可動型40は、加熱装置49によって硬化温度に加熱されている。
【0044】
なお、前述したように、第1スライドプレート84の2次貯留部86には、3サイクル分よりも若干多い程度の量の未溶融のプラスチック材料90が貯留され、この量の未溶融のプラスチック材料90がそのままポット15内に供給されることになる。すなわち、3サイクル分の成形が終了したときにポット15内にプラスチック材料90が残る。したがって、ポット15への材料供給時におけるプラスチック材料90の計量精度は低くてよい。つまり、2次貯留部86の形成精度は高く設定されている必要がない。
【0045】
ポット15に供給された未溶融のプラスチック材料90は、予熱温度に管理された上側ボディ12および下側ボディ13から熱を受け、ポット15内にて溶融して、溶融プラスチック91となる。
そして、ポット15へのプラスチック材料90の供給終了後に、型締めするために、昇降台60を上昇させていく。昇降台60が上昇すると、可動型40の全体が上昇する。そして、まず、可動型40の浮遊ブロック44が材料供給ブロック10の断熱プレート17に当接し、ここで、浮遊ブロック44の上昇が停止される。このとき、材料供給ブロック10の充填通路18と浮遊ブロック44のスプル46とが連通する。
【0046】
さらに昇降台60が上昇すると、中間ブロック43と底部ブロック42とベース部41が一体となって上昇し、停止している浮遊ブロック44に接近していく。そして、浮遊ブロック44の下面に、中間ブロック43の上面が当接する。このとき、中間ブロック43のスプル46と底部ブロック42のキャビティ45とが連通する。この結果、可動型40のキャビティ45およびスプル46に、材料供給ブロック10のポット15が連通する。
【0047】
さらに昇降台60が上昇すると、可動型40が材料供給ブロック10を押圧し、可動型40と材料供給ブロック10の下側ボディ13とが一体となって上昇する。この結果、下側ボディ13のポット15内に、材料供給ブロック10の上側ボディ12に設けられたプランジャ70が嵌合された状態で相対的に前進し、ポット15内の溶融プラスチック91を圧縮していく。
【0048】
圧縮された溶融プラスチック91は、下側ボディ13および断熱プレート17の充填通路18から押し出され、可動型40のスプル46およびキャビティ45に充填されていく。すなわち、材料供給ブロック10に可動型40を押圧することにより、ポット15内で溶融した溶融プラスチック91を圧縮する。そして、この溶融プラスチック91を、充填通路18から押し出してキャビティ45とスプル46に充填する。
【0049】
スプル46およびキャビティ45に溶融プラスチック91が完全に充填されると、昇降台60の上昇に伴って溶融プラスチック91の圧力が上昇していく。昇降台60の位置が所定値に達したときに昇降台60の上昇を停止し、所定時間、この型締め位置に保持する。
つまり、昇降台60の上昇停止タイミング(型締め位置)は昇降台60の位置により管理する。ここで、
図9、
図10は、最終サイクル(3サイクル目)における型締め状態を示している。
【0050】
図9、
図10に示すように、この型締め状態において、キャビティ45とスプル46に充填された溶融プラスチック91は、硬化温度に管理された可動型40から熱を受けて硬化し、プラスチック製品92となる(製品成形工程)。
なお、型締め状態において材料供給ブロック10と可動型40とが当接するが、材料供給ブロック10の下側ボディ13の下面には断熱プレート17が設けられているので、可動型40から材料供給ブロック10への熱伝導が防止され、ポット15内の溶融プラスチック91が硬化温度になることはない。
【0051】
次に、
図5に戻り、昇降台60により可動型40を下降させて、可動型40を材料供給ブロック10から離反させて型開き状態に戻す。そして、可動型40を昇降台60から取り外し、可動型40からプラスチック製品92を取り出すと共に、別の可動型40を昇降台60上にセットし(すなわち、可動型40の段取り換えを行い)、再び次のサイクルに備える。
【0052】
ここで、本実施形態では、ポット15に3サイクル分の溶融プラスチック91が収容されている。このため、3サイクル目が終了するまではポット15に未溶融のプラスチック材料90を補充しない。
【0053】
そして、
図11に示すように、最終サイクル終了後に1サイクル目に戻らない場合、ポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90を取出す。この際、プランジャ70の成形部72は、取出し駒76に付け替えられる。そして、一旦型締め状態として溶融されたプラスチック材料90を硬化させる。このとき、取出し駒76に形成されている蟻溝77(
図3参照)に、残存するプラスチック材料90が入り込んだ状態で、このプラスチック材料90が硬化する。このため、取出し駒76とプラスチック材料90とが係合された状態になる。
【0054】
この後、型締め状態から昇降台60により可動型40を下降させて、この可動型40を、材料供給ブロック10から離反させて型開き状態にする。すると、取出し駒76側にプラスチック材料90が取り付いた状態で型開きされる。取出し駒76に取り付いたプラスチック材料90は、蟻溝77の延在方向に沿ってスライド移動することにより、取出し駒76からプラスチック材料90を容易に取り外すことができる。
【0055】
ここで、
図12に基づいて、連続的に(3サイクル以降も)プラスチック製品92を成形する場合におけるポット15への未溶融のプラスチック材料90の補充タイミングについて説明する。
図12は、本実施形態における成形サイクルを示すタイムスケジュールである。
前述したように、各サイクルにおいて昇降台60の上昇停止タイミング(型締め位置)は、昇降台60の位置により管理している。そして、1サイクル毎にポット15内の溶融プラスチック91が減少していくので、型締め位置(可動型40あるいは昇降台60の位置)が1サイクル毎に上昇していく。しかしながら、1サイクル目と2サイクル目における型締め位置では昇降台60がリミットスイッチ65の高さまで達していない(リミットスイッチ65の高さまで上側ボディ12に下側ボディ13が接近していない)ので、プラスチック材料90の補充は行わない。
【0056】
そして、3サイクル目(最終サイクル)になると、可動型40が型締め位置に達する直前に、下側ボディ13にリミットスイッチ65が接触し、リミットスイッチ65をオンさせる。このようにリミットスイッチ65がオンした場合で、且つ1サイクル目に戻る場合、3サイクル目の成形サイクルの終了後の型開き状態において、可動型40の段取り換え(製品取り出し)と並行して、搬送機構82によってポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給する。そしてこの後、再び次の1サイクル目の成形サイクルを開始する。
【0057】
これに対し、リミットスイッチ65がオンした場合で、且つポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90を取出す場合、3サイクル目の成形サイクルの終了後の型開き状態において、プランジャ70の成形部72を、成形駒75から取出し駒76に付け替える。そして、この取出し駒76によって、ポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90を取り出す(取出し工程)。これにより、熱硬化性プラスチックの成形作業が完了する。
【0058】
このように、上述の実施形態における熱硬化性プラスチックの成形方法は、次の(1)〜(3)の工程を備えている。すなわち、
(1)下側ボディ13に設けられたポット15に、未溶融の熱硬化性のプラスチック材料90を供給し、ポット15内でプラスチック材料90を溶融する工程。
(2)キャビティ45を有する可動型40を材料供給ブロック10に押圧することにより、ポット15内で溶融した溶融プラスチック91を圧縮し、材料供給ブロック10の充填通路18から押し出して可動型40のキャビティ45とスプル46に充填し、これらキャビティ45、スプル46に充填された溶融プラスチック91を加熱し硬化させる工程。
(3)可動型40を材料供給ブロック10から離反させて、キャビティ45、スプル46で硬化させたプラスチック製品92を取り出す工程(製品成形工程)。
(4)可動型40のストローク量が所定値に達した場合には、当該サイクルの終了後に、型開き状態とし、再び材料供給ブロック10のポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給する工程。
(5)可動型40のストローク量が所定値に達した場合で、且つ熱硬化性プラスチックの成形作業を完了させる場合、ポット15内に残存している溶融されたプラスチック材料90を取り出す工程(取出し工程)。
【0059】
とりわけ、上記(1)の工程を備えることにより、材料供給ブロック10のポット15に直接、未溶融のプラスチック材料90を供給し、このポット15内でプラスチック材料90を溶融させるので、工程および制御を簡略化することができ、生産性が向上する。また、工程および制御の簡略化により、設備コストの低減を図ることができる。さらに、上記(4)の工程を備えることにより、ポット15へのプラスチック材料90の補給タイミングの管理が容易になる。
【0060】
また、ポット15内に未溶融のプラスチック材料90を供給するにあたって、下側ボディ13に、上側に開口部15aが形成されるようにポット15を凹設している。これに加え、上側ボディ12と下側ボディ13とが最も離間した型開き状態では、ポット15からプランジャ70が完全に抜けており、上側ボディ12と下側ボディ13との間からポット15の開口部15aが完全に露出した状態になるように構成されている。このため、上側ボディ12と下側ボディ13との間に、搬送機構82の各スライドプレート84,85を水平方向にスライド移動させて、ポット15に直接未溶融のプラスチック材料90を供給することができる。よって、上側ボディ12の上にプラスチック材料90を供給するためのスペースを確保する必要がなくなるので、成形装置1の設置スペースの高さを抑えることができる。
【0061】
また、上側ボディ12にプランジャ70を設け、上側ボディ12と下側ボディ13との相対移動によって、ポット15内にプランジャ70が嵌合された状態で相対的に前進し、ポット15内の溶融プラスチック91を圧縮していく。つまり、プランジャ70とポット15とが協働してプラスチック材料90を封止する。このため、プランジャ70の構成が簡素化できる。よって、成形作業を容易化でき、さらに製造コストも低減できる。
【0062】
また、プランジャ70は、上側ボディ12に固定されるベース部71と、ベース部71の下面に設けられ、このベース部71に対して着脱自在に設けられた成形部72と、により分割構成されている。このため、成形作業の工程(製品成形工程または取出し工程)に応じてプランジャ70全体を交換することなく、成形部72だけを成形駒75または取出し駒76の何れかに交換すればよくなる。このため、成形作業をさらに容易化できる。
【0063】
また、プランジャ70全体を成形作業の工程に応じて複数用意する必要がなく、成形部72だけを複数用意すればよくなるので、成形装置1の製造コストを低減できる。
そして、取出し駒76は、下面76aに複数の蟻溝77が形成されているので、取出し駒76を簡素な構造としつつ、ポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90の取り出しを容易に行うことができる。また、取出し駒76に取り付いたプラスチック材料90を取り外す際は、蟻溝77の溝延在方向に沿ってプラスチック材料90をスライド移動させるだけで、取出し駒76からプラスチック材料90を取り外すことができる。このため、成形作業をさらに容易化できる。
【0064】
さらに、ベース部71の下面には、T溝73が形成されている。一方、成形部72の上面には、T溝73に対応するように、T字凸部74が突設されている。このため、ベース部71に対して成形部72をT溝73の延在方向に沿ってスライド移動させるだけで、ベース部71に成形部72を取り付けたり、ベース部71から成形部72を取り外したりすることができる。このため、成形部72の交換作業を容易化できる。
【0065】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ポット15へのプラスチック材料90の補給を3サイクル毎とした場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ポット15の容量設定により、2サイクル毎や4サイクル毎、またはそれ以上とすることが可能である。
【0066】
また、上述の実施形態では、ポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給するにあたって、2つのスライドプレート84,85(第1スライドプレート84、第2スライドプレート85)を有する搬送機構82を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、搬送機構82は、型開き状態の上側ボディ12と下側ボディ13との間からポット15に直接未溶融のプラスチック材料90を供給可能なように構成されていればよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態では、プランジャ70は、ベース部71に形成されたT溝73と、成形部72に突設されたT字凸部74とにより、これらベース部71と成形部72とを着脱可能とした場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ベース部71にT字凸部74を突設し、成形部72にT溝73を形成してもよい。また、T溝73やT字凸部74に限られるものではなく、ベース部71と成形部72とが着脱可能に構成されていればよい。
【0068】
また、成形部72を構成する取出し駒76に蟻溝77を形成し、この蟻溝77によって、ポット15に残存している溶融されたプラスチック材料90の取り出しを行う場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、取出し駒76に、この取出し駒76とプラスチック材料90とを係合可能な加工が施されていればよい。