特許第6695229号(P6695229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6695229決定装置、決定方法および決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695229
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】決定装置、決定方法および決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20200511BHJP
【FI】
   G06Q30/02 398
   G06Q30/02 382
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-141721(P2016-141721)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-13872(P2018-13872A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立見 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 晋吉
【審査官】 海江田 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−025645(JP,A)
【文献】 特開2016−163236(JP,A)
【文献】 特開2015−043148(JP,A)
【文献】 特開2005−196752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0033196(US,A1)
【文献】 高口 太朗他,統計熱力学形式を用いたコミュニティ構造の抽出,第5回 ネットワーク生態学シンポジウム予稿集 [CD−ROM],2009年 3月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コミュニティに属する利用者のうち、対となる利用者を特定する特定部と、
前記コミュニティに属する利用者をフェルミ粒子と見做し、特定された対となる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做して、超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づき、利用者に対する情報の提供態様を決定する決定部と、
を有することを特徴とする決定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記コミュニティに属する利用者の属性情報、または、当該コミュニティに属する利用者間のメッセージの内容に基づいて、所定の関連性を有する二人の利用者を対となる利用者とする
ことを特徴とする請求項1に記載の決定装置。
【請求項3】
前記コミュニティにおける特定商品に関連するメディアへのアクセス数に基づく値を前記コミュニティに対応する対応系における温度と見做して、当該対応系の相情報を生成する生成部
をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の決定装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記コミュニティにおける特定商品への潜在的な興味の度合いを前記コミュニティに対応する対応系の内部エネルギーと見做して、当該対応系の相情報を生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の決定装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記コミュニティの大きさを当該コミュニティに対応する対応系の体積と見做して、当該対応系の相情報を生成する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の決定装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記コミュニティに属する利用者が発信した情報の量を、前記コミュニティに対する対応系における生成演算子と見做して、当該対応系の相情報を生成する
をさらに有することを特徴とする請求項3〜5のうちいずれか1つに記載の決定装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記特定部が特定した対となる利用者に対する情報の影響力を示す値を前記コミュニティに対する対応系を構成する粒子に対するロンドンの侵入長と見做して、当該対応系の相情報を生成する
ことを特徴とする請求項3〜6のうちいずれか1つに記載の決定装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記対応系の相情報として、当該対応系が超伝導状態に遷移する臨界温度を算出する
ことを特徴とする請求項3〜7のうちいずれか1つに記載の決定装置。
【請求項9】
前記生成部は、BCS理論とギャップ方程式とに基づいて、前記対応系の臨界温度を算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の決定装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記コミュニティに対応する対応系の相情報に基づいて、前記対応系の相をより情報が伝達されやすい相へと変化させる情報の配信態様を決定する
ことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決定装置、決定方法および決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの飛躍的な普及に伴い、インターネットを介した情報配信が盛んに行われている。このような情報配信の一例として、利用者の属性や利用者が閲覧した情報等に基づいて、利用者が興味を有する商品等を予測し、予測した商品等の広告を配信する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−116440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、広告等の情報を効果的に配信できるとは言えない場合がある。
【0005】
例えば、夫婦や恋人等のペアを構成する利用者は、ペアとして購買行動を行う場合がある。しかしながら、従来技術では、各利用者が興味を有すると予測される情報を配信しているに過ぎないため、ペアとして行動する利用者に対し、適切な広告を配信できない場合がある。
【0006】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、ペアを構成する利用者に対し、広告などの情報を効果的に配信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る決定装置は、コミュニティに属する利用者のうち、対となる利用者を特定する特定部と、前記コミュニティに属する利用者をフェルミ粒子と見做し、特定された対となる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做して、超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づき、利用者に対する情報の提供態様を決定する決定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、ペアを構成する利用者に対し、広告などの情報を効果的に配信することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る決定装置が実行する決定処理の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る決定装置の構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るコミュニティ情報データベースに登録される情報の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る戦略マップデータベースに登録される情報の一例である。
図5図5は、実施形態に係る決定装置が実行する決定処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図6図6は、ハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願に係る決定装置、決定方法および決定プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する。)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る決定装置、決定方法および決定プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0011】
[実施形態]
〔1−1.決定装置の一例〕
まず、図1を用いて、決定装置が実行する決定処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る決定装置が実行する決定処理の一例を示す図である。図1では、決定装置10は、以下に説明する決定処理を実行する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。また、決定装置10は、利用者に対して広告等のコンテンツを配信する機能を有する。
【0012】
また、決定装置10は、インターネット等の所定のネットワークNを介して、任意の装置と通信が可能である。決定装置10は、端末装置100、コミュニティサーバ110、メディアサーバ120、および電子商取引サーバ130と通信が可能である。なお、端末装置100、コミュニティサーバ110、メディアサーバ120、および電子商取引サーバ130については、図1における図示を省略した。
【0013】
ここで、端末装置100は、任意の利用者が使用するスマートフォンやタブレット等のスマートデバイスであり、3G(3rd Generation)やLTE(Long Term Evolution)等の無線通信網を介して任意のサーバ装置と通信を行うことができる携帯端末装置である。なお、端末装置100は、スマートデバイスのみならず、デスクトップPCやノートPC等の情報処理装置であってもよい。
【0014】
コミュニティサーバ110は、SNSに関する各種のサービスを利用者に対して提供する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。例えば、コミュニティサーバ110は、所定のコミュニティC01に属する利用者に対し、ブログ、マイクロブログ、掲示板、メッセージ等に関する各種のサービスを提供する。また、コミュニティサーバ110は、各種サービスの配信履歴のログを管理する機能を有する。
【0015】
メディアサーバ120は、任意のメディアに関するコンテンツを利用者に対して提供する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。例えば、メディアサーバ120は、ニュース、音楽コンテンツ、動画コンテンツ、ブログ、マイクロブログ、ポータルサイト等、各種のコンテンツを端末装置100に配信する。また、メディアサーバ120は、各種コンテンツの配信履歴のログを管理する機能を有する。
【0016】
電子商取引サーバ130は、電子商取引に関する各種のサービスを提供する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。例えば、電子商取引サーバ130は、電子商店街やオークションに関する各種のサービスを提供する。また、電子商取引サーバ130は、電子商取引に関連する各種の履歴のログを管理する機能を有する。
【0017】
〔1−2.決定処理の一例〕
ここで、利用者に対してコンテンツの配信を行う際、利用者の属性や発言等に基づいて、利用者が興味を有すると推定されるコンテンツを選択し、選択したコンテンツを配信する技術が考えられる。このような技術に基づいて、例えば、コミュニティC01に属する利用者が話題にしている商品を特定し、特定した商品の広告をコミュニティC01に属する利用者に提供するといった手法が考えられる。しかしながら、このような技術では、広告等の情報を効果的に配信できない場合がある。
【0018】
例えば、夫婦や恋人等、ペアを構成する利用者は、各人の趣味趣向のみならず、ペアとしての趣向に基づき、同様の購買行動を行うと考えられる。また、ペアのみならず、ある条件を満たしたグループでは、そのグループに属する複数の利用者がグループとしての趣向に基づいて、同様の購買行動を行うと考えられる。しかしながら、従来技術では、このようなペアやグループとして行動する利用者の趣向を考慮していないため、広告を効果的に配信しているとは言えない場合がある。
【0019】
そこで、決定装置10は、個々の利用者の心的状態といった趣向のみならず、所定の条件を満たしたペアに属する利用者の趣向が統一されると見做して、広告等の情報の提供態様を決定する。すなわち、決定装置10は、各利用者の状態といったミクロな視点と、コミュニティC01の状態といったマクロな視点とを考慮して、コミュニティC01に対して提供する情報の提供態様を決定する。
【0020】
具体的には、決定装置10は、対となる利用者を特定する。そして、決定装置10は、対となる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做し、利用者間における情報の量を熱量と見做して、超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づき、利用者に対する情報の提供態様を決定する。
【0021】
例えば、決定装置10は、SNS等に登録された情報やメッセージの内容等から、コミュニティC01に属する利用者のうち、婚姻関係にある利用者や恋人関係にある利用者等、ペアとして見做すことができる利用者を特定する。また、決定装置10は、コミュニティC01に属する各利用者をフェルミ粒子と見做し、ペアとして見做すことができる利用者をボーズ凝縮してボーズ粒子となる利用者と見做すことで、対応系を仮定する。そして、決定装置10は、コミュニティC01内における情報の量を熱量と見做し、対応系における超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づいて、コミュニティC01に対する情報の提供態様を決定する。
【0022】
以下、決定装置10が実行する決定処理の内容について説明する。まず、コミュニティC01に対してある商品の広告を配信した際の現象について考える。例えば、各利用者の購買行動や心的状況を考慮すると、各利用者はそれぞれ独立した購買行動を行ったり、独立した心的状況を有すると考えられる。このため、コミュニティC01に対応する系(以下、「対応系」と記載する。)を仮定すると、決定装置10は、各利用者を重複した振る舞いを起こさない粒子、すなわち、同じ状態を取ることができないフェルミ粒子と見做すことができると考えられる。
【0023】
また、コミュニティC01内で各利用者がそれぞれ個別の心理状態である場合等には、いずれかの利用者に対して特定の商品(以下、「特定商品」と記載する。)の広告を配信したとしても、その情報はコミュニティC01内であまり広がらない(伝播しない)と考えられる。このような状態は、情報の伝播を対応系における電流の伝播と見做すと、対応系の相が常伝導状態であると見做すことができると考えられる。
【0024】
一方、コミュニティC01内の各利用者がペアを組んだ状態である場合には、いずれかの利用者に対して特定商品の広告を配信すると、ペアに属する利用者に対して情報が伝達され、同様の消費行動を取ると考えられる。このため、ペアに属する利用者は、対応系において、ボーズ凝縮したフェルミ粒子と見做すことができる。このため、コミュニティC01内の多くの利用者がペアとなった場合は、情報の伝播を対応系における電流の伝播と見做すと、対応系の相がボーズ凝縮を起こし、超伝導状態であると見做すことができると考えられる。
【0025】
そこで、決定装置10は、コミュニティC01の各利用者をフェルミ粒子と見做し、ペアとなる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做す。そして、決定装置10は、対応系の相の状態をコミュニティC01における状態と見做して、コミュニティC01に対する効果的な広告の配信態様を決定する。より具体的には、決定装置10は、コミュニティC01の対応系において、超伝導状態と常伝導状態が相転移する温度(以下、「臨界温度」と記載する。)をBCS理論(Bardeen Cooper Schrieffer theory)に基づいて算出する。そして、決定装置10は、コミュニティC01内の特定商品に関する情報量を熱量と見做して、対応系における状態を特定し、対応系の状態が常伝導状態であるか超伝導状態であるかに応じて、広告の配信態様を決定する。
【0026】
〔1−3.あてはめの一例〕
ここで、上述した決定処理を実行するためには、コミュニティC01内における情報量を、コミュニティC01に対応する系におけるエネルギーにあてはめ、利用者を系を構成する粒子と見做して、熱力学やBCS理論に基づき、系の相情報を算出することとなる。そこで、以下の説明では、当てはめの一例について説明する。なお、以下のあてはめは、あくまで一例であり、情報量に基づく値を系のエネルギーの指標とするのであれば、任意のあてはめを採用してもよい。また、決定装置10は、以下に説明するあてはめにおいては、任意の計数や重みづけを考慮した処理を実行してもよい。また、以下の説明では、特定商品と関連する情報を単に「情報」と記載する場合がある。
【0027】
例えば、コミュニティC01に属する利用者が特定商品と関連するコンテンツやメディア(以下、「メディア」と総称する。)にアクセスした回数は、コミュニティC01に対応する系(以下、「対応系」と記載する。)の内部のエネルギーの度合いを示す値、すなわち温度と見做すことができる。そこで、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者が所定の分野のメディアにアクセスした回数(以下、「メディアアクセス数」と記載する。)に基づく値を、対応する系の温度の値「T」とする。例えば、決定装置10は、特定商品と関連するニュースや広告、特定商品について他の利用者が投稿したブログ等を閲覧した回数、取得した回数、および配信を受付けた回数等をメディアアクセス数として利用者ごとに取得する。そして、決定装置10は、コミュニティC01に属する各利用者のメディアアクセス数に基づいて、対応系の温度を示す値「T」を算出する。なお、決定装置10は、特定商品の名称等が含まれるメディア、すなわち、特定商品と直接的に関連するメディアのみならず、特定商品と対応する店舗や特定商品を示唆する内容のメディア等、特定商品と間接的に関連するメディアについてのメディアアクセス数を取得してもよい。
【0028】
また、コミュニティC01に属する利用者のうち、特定商品に対して潜在的に興味を有する利用者の数や、特定の利用者のみが閲覧できる情報の量等、コミュニティC01における特定商品への潜在的な興味は、対応系におけるエネルギーのうち、熱量等として顕在化していないエネルギー、すなわち内部エネルギーと見做すことができる。そこで、決定装置10は、コミュニティC01における特定商品への潜在的な興味の度合いを示す値に基づいて、内部エネルギーの値「U」を算出してもよい。例えば、決定装置10は、利用者間でのみやり取りされるメッセージのうち、特定商品に関連するメッセージの量等、掲示板等ではなく、特定の利用者のみが閲覧できる情報の量を、潜在的な興味の度合いを示す値として取得する。また、決定装置10は、特定商品に関連するメッセージを特定の利用者にのみ送信した利用者の数を、潜在的な興味の度合いを示す値として取得する。そして、決定装置10は、取得した各値に基づいて、内部エネルギーの値「U」を算出する。なお、決定装置10は、上述した情報以外にも、コミュニティC01における潜在的な興味の度合いを示す情報であれば、任意の情報を考慮して、内部エネルギーの値「U」を算出してよい。
【0029】
また、コミュニティC01に属する利用者の数は、対応系の大きさを示す情報と見做すことができる。そこで、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者の数を、対応系を構成する粒子の数と見做す。
【0030】
ここで、ペアやグループとなった利用者は、コミュニティ内での流行に関わらず、ペアやグループとしての購買行動を起こすと予測される。すなわち、ペアやグループとなった利用者は、外部の雑音(広告やメッセージ等)に影響されにくい状態となる。このため、ペアやグループとなった利用者は、超伝導状態となり、外部磁場からの影響を受けにくい状態であると見做すことができる。一方、常伝導状態となった系には、外部からの磁場が侵入するが、超伝導状態となった系には、系の内部から磁場を排除しようとする力が働き、磁場が外部へと押し出される。この結果、超伝導状態の系に対して外部磁場を加えた場合には、ロンドンの侵入長と呼ばれる長さだけ磁場が侵入する。このため、ロンドンの侵入量は、ペアやグループと対応する系の外部磁場に対する感受性、すなわち、ペアやグループに対応する広告やメッセージ等の影響力(感受性)と見做すことができる。そこで、決定装置10は、ペアやグループに対する、広告やメッセージの影響力を、ロンドンの侵入長と見做す。
【0031】
例えば、決定装置10は、ペアやグループに属する利用者のうち、一部の利用者に対して特定商品の情報を配信した際に、他の利用者に対して特定商品の情報がどれくらい伝達されたかを、影響力を示す情報として、メッセージの内容やSNSの投稿内容等に基づいて特定する。また、決定装置10は、ペアやグループに属する利用者に対して特定商品の情報を配信した際に、各利用者がどれくらい特定商品を購入したかを、影響力を示す情報として、購買履歴等に基づいて特定する。そして、決定装置10は、特定した影響力を示す情報に基づく値を算出し、算出した値をロンドンの侵入長と見做してもよい。
【0032】
また、BCS理論を用いて臨界温度「Tc」を算出する場合には、生成演算子と呼ばれる演算子を用いた計算を行う。ここで、生成演算子は、ボーズ凝縮する状態の粒子の数を1つ増加させる演算子である。このため、生成演算子は、特定商品に対して興味が沸き起こった量と見做すことができる。そこで、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者がSNSに投稿した特定商品に関する情報の量や、特定商品に関連するメッセージの量等を取得し、取得した量に基つく値を生成演算子に対応付ける。
【0033】
上述した当てはめの元、決定装置10は、BCS理論とギャップ方程式と呼ばれる式を用いて、対応系が超伝導状態に遷移する臨界温度「Tc」を相情報として算出する。また、決定装置10は、上述したあてはめの元、情報配信時に対応系が有する温度やエネルギーを算出する。そして、決定装置10は、情報配信時に対応系が常伝導状態であるか超伝導状態であるかに基づいて、広告の配信態様を決定する。
【0034】
〔1−4.相情報を用いた処理の一例〕
また、決定装置10は、生成した相情報を用いて、特定商品の広告を配信する態様を決定する。例えば、決定装置10は、相情報に基づいて、対応系が相転移するまでに必要な熱量の値と圧力の値とを算出する。より具体的には、決定装置10は、対応系で粒子がボーズ凝縮を発生させ、全体として同様の動きをするまでに、広告配信量をどれだけ減少させる必要があるかを特定する。そして、決定装置10は、特定した量だけ広告配信量を減少させる。そして、決定装置10は、対応系の状態が超伝導状態となった場合には、常伝導状態の際よりも少ない広告を配信するだけで、ボーズ凝縮した粒子に対応する利用者全員に影響を与えることができる。この結果、決定装置10は、各利用者の広告を配信するよりも、広告費用を削減することができる。すなわち、決定装置10は、広告費用に対する効果を向上させることができる。
【0035】
〔1−5.数式の一例〕
次に、決定装置10が相情報を算出する際に用いる数式の一例について説明する。なお、以下の式の具体的な導出方法については、例えば、非特許文献1(”Theory of Superconductivity” J.Bardeen, L.N.Cooper, J.R.Schrieffer, Physical Review Volume 108, Number 5, December 1, 1957)や、非特許文献2(http://www.phys.aoyama.ac.jp/~w3-jun/achievements/study_sc_chara.html、インターネット、平成28年7月15日検索)等に詳しい。
【0036】
例えば、x軸の正の側に対応系となる超伝導対が存在するとして、z軸方向に磁場Bが印加されているとすると、超伝導体内部の磁場は、以下の式(1)で表すことができる。ここで、「x」は、磁場の算出対象となる位置のx軸方向の座標を示し、「λ」は、磁場の算出対象となる位置が対応系の表面からどれだけ内側であるかを示す値である。
【0037】
【数1】
【0038】
続いて、臨界温度「Tc」を算出する処理について説明する。例えば、BCS理論におけるハミルトニアンから求めることができるギャップ方程式は、以下の式(2)で表すことができる。ここで、式(2)に示す「Δ」を2倍した場合には、クーパー対となってボーズ凝縮を起こした状態を壊すために必要なエネルギーである超伝導ギャップの値に対応する。決定装置10は、このようなギャップ方程式において、エネルギーの値や超伝導ギャップの値、対応系における粒子の数等から、常伝導状態から超伝導状態へと相が変化する臨界温度「Tc」を算出することができる。
【0039】
【数2】
【0040】
また、式(2)中のV(k,k’)は、以下の式(3)で表すことができる。このようなギャップ方程式において、臨界温度「Tc」は、外部から広告等といったマスメディアの情報が対応系に入らない状態に遷移する温度であると見做すことができる。そこで、決定装置10は、臨界温度「Tc」以下では、外部からマスメディアの情報が入らない状態となると仮定して、式(2)、式(3)から臨界温度「Tc」を算出する。
【0041】
【数3】
【0042】
また、量子力学では、2体の波動関数は、以下の式(4)で示すことができる。
【0043】
【数4】
【0044】
ここで、第2量子化を考慮すると、式(4)は、式(5)に変換することができる。ここで、式(5)に示す「ck↑」、「c-k↓」は、生成演算子であり、コミュニティC01において特定商品に対する興味の増加と対応する。
【0045】
【数5】
【0046】
また、BCS理論における波動関数は、以下の式(6)で表すことができる。
【0047】
【数6】
【0048】
この結果、BCS理論における波動関数の基底状態は、以下の式(7)で表すことができる。ここで、式(7)のうち「u」は、電子対の非占有確率、すなわち、コミュニティC01に属する利用者のうちペアとなっていない利用者の数に対応する係数であり、「v」は、電子対の占有確率、すなわち、コミュニティC01に属する利用者のうちペアとなっている利用者の数に対応する係数である。
【0049】
【数7】
【0050】
決定装置10は、上述した式(1)〜(7)に基づいて、コミュニティC01の対応系で相転移が生じる臨界温度「Tc」を相情報として算出する。そして、決定装置10は、算出した臨界温度「Tc」に基づいて、コミュニティC01に対する広告の配信態様を決定する。
【0051】
〔1−6.決定処理の一例〕
次に、図1を用いて、決定装置10が実行する決定処理の一例について説明する。まず、決定装置10は、コミュニティC01に関する各種の情報量をパラメータとして取得する(ステップS1)。例えば、決定装置10は、コミュニティサーバ110、メディアサーバ120、電子商取引サーバ130等から、上述したあてはめに必要な各種の情報を収集する。そして、決定装置10は、コミュニティC01に属する各利用者をフェルミ粒子と見做し、コミュニティC01における特定商品の情報量をエネルギーと見做して、相図に基づいて、特定商品の広告の配信対応、すなわち広告戦略を決定する(ステップS2)。
【0052】
例えば、決定装置10は、コミュニティC01に属する各利用者をそれぞれフェルミ粒子と見做す(ステップS3)。例えば、決定装置10は、利用者U01と利用者U02とをそれぞれ異なる状態のフェルミ粒子であると見做す。続いて、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者の中から、ペアとなる利用者を特定し、特定したペアがボーズ凝縮したフェルミ粒子として見做す(ステップS4)。なお、後述するように、決定装置10は、ペアとなる利用者の数を増やすため、情報配信やイベント等を開催してもよい。例えば、決定装置10は、コミュニティサーバ110等に登録した各種の登録情報やメッセージの内容に応じて、恋人や夫婦となる利用者のペアを特定する。
【0053】
また、決定装置10は、コミュニティサーバ110等に登録した各種の登録情報やメッセージの内容に応じて、相性が良いと予測される利用者、すなわち、ペアとなりうる利用者を特定する。そして、決定装置10は、ペアとなりうる利用者がペアとなるように、すなわち、フェルミ粒子をボーズ粒子と見做すことができるように、広告等の情報配信やイベントの開催等を提案する。
【0054】
例えば、BCS理論においては、図1中(a)に示すように、格子振動をしている正電荷を帯びた粒子中を負電荷を帯びた1つの電子(フェルミ粒子)が移動した場合、図1中(b)に示すように、負電荷を帯びた電子に正電荷を帯びた粒子が少し引き付けられることとなる。この結果、図1中(c)に示すように、正電荷を帯びた粒子が引き付けられた結果、正電荷の密度が他の領域よりも濃くなる部分が生じる。この結果、図1中(d)に示すように、正電荷の密度が濃くなった部分に他の電子が引き寄せられることとなる。この結果、2つの電子は対として動くように見える。こここで、各電子に引力的な相互作用が働いた場合、BCS理論により、電子対は、ボーズ凝縮することが示されている。このようなボーズ凝縮が生じた場合、対応系は、超伝導状態に落ち込むこととなる。
【0055】
そこで、決定装置10は、ペアとなりうる利用者がペアとなるように、広告配信やイベント等を開催させることにより、コミュニティC01内部でペアとなる利用者の数を増加させる。この結果、決定装置10は、対応系をより超伝導状態に近しい状態へと導くこととなる。
【0056】
続いて、決定装置10は、ロンドンの侵入長をペアに対して伝播する情報量と見做す(ステップS5)。例えば、図1中(f)に示すように、常伝導状態の物質に対して外部磁場を印加した場合には、磁力が物質中を通り抜けることとなる。一方、図1中(g)に示すように、常伝導状態の物質に対して外部磁場を印加していない場合には、磁場等は生じない。
【0057】
ここで、図1中(f)に示すように、外部磁場を印加した物質を超伝導状態にしたり、図1中(g)に示すように、外部磁場を印加していない物質を超伝導状態にした後で、外部磁場を印加した場合には、図1中(h)に示すように、磁場が物質中から外へと押し出される。そこで、決定装置10は、外部磁場をコミュニティC01における特定商品の情報と見做し(例えば、磁力を情報量と見做し)、特定商品の情報がペアとなる利用者に対しておよぼす影響度をロンドンの侵入長と見做す。
【0058】
そして、決定装置10は、BCS理論とギャップ方程式とに基づいて、常伝導状態と超伝導状態との相転移を起こす臨界温度「Tc」を算出し、対応系における相転移を示す相図を生成する(ステップS6)。例えば、決定装置10は、コミュニティC01におけるメディアアクセス数やメッセージの量等に基づく値をコミュニティC01におけるエネルギーの値や温度と見做してギャップ方程式から臨界温度「Tc」を算出する。また、決定装置10は、コミュニティC01のうち、ペアとなる利用者の数の比率を電子対の占有確率と見做し、ペアではない利用者の数の比率を電子対の非占有確率と見做して、BCS理論における波動関数の基底状態から、対応系の状態を特定する。
【0059】
そして、決定装置10は、コミュニティC01における情報量を対応系のエネルギーと見做して、広告戦略を選択する(ステップS7)。例えば、決定装置10は、広告配信時において、対応系が常伝導状態である場合には、コミュニティC01の個人個人に対し、通常の広告戦略に基づいて、広告の配信を行う。すなわち、決定装置10は、各利用者の属性に基づいて、各利用者に対し、広告を配信する。一方、決定装置10は、対応系が超伝導状態である場合には、広告の効果を高く見積もった状態で、広告の配信を行う。すなわち、決定装置10は、少ない広告を配信した場合にも、コミュニティC01全体に広告が伝播する(すなわち、超伝導状態)状態であると見做して、広告の配信対応を選択する。そして、決定装置10は、決定した配信態様で、広告をコミュニティC01の利用者に対して配信する(ステップS8)。
【0060】
〔1−7.相を制御する処理の一例〕
ここで、決定装置10は、広告効果をより高めるために、対応系が超伝導状態となるように、コミュニティC01の状態を制御してもよい。例えば、式(7)に示すように、ペアとなる利用者の数が多ければ多い程、対応系の状態は、超伝導状態へと近づく。そこで、決定装置10は、ペアとなる利用者が多くなるような各種の処理を実行してもよい。例えば、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者のうち、ペアとなりうる複数の利用者に対し、互いの情報を提供してもよい。また、決定装置10は、ペアとなりうる複数の利用者に対してイベントへの参加を提案してもよい。また、決定装置10は、ペアとなりうる複数の利用者がペアとなるように、各種の情報配信やカップリングサービス等の処理を行ってもよい。
【0061】
また、対応系の温度が臨界温度「Tc」よりも低い場合には、超伝導状態に遷移すると予測される。そこで、決定装置10は、対応系の温度が臨界温度「Tc」よりも低くなるまで、特定商品に関する情報の配信を停止することで、コミュニティC01内での特定商品に関する情報量、すなわち、対応系のエネルギーを減少させる。ここで、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者が、特定商品に関する投稿等を行った場合に、かかる投稿をコミュニティC01の他の利用者に見せないようにするといった処理を行ってもよい。そして、決定装置10は、対応系の温度が臨界温度「Tc」よりも低くなった後に、特定商品に関する情報の配信を行うことで、より効果的な広告の配信を行ってもよい。
【0062】
〔2.決定装置の構成〕
以下、上記した決定処理を実現する決定装置10が有する機能構成の一例について説明する。図2は、実施形態に係る決定装置の構成例を示す図である。図2に示すように、決定装置10は、通信部20、記憶部30、および制御部40を有する。
【0063】
通信部20は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部20は、ネットワークNと有線または無線で接続され、端末装置100、コミュニティサーバ110、メディアサーバ120、電子商取引サーバ130との間で情報の送受信を行う。
【0064】
記憶部30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。また、記憶部30は、コミュニティ情報データベース31、戦略マップデータベース32、コンテンツデータベース33を記憶する。
【0065】
コミュニティ情報データベース31は、コミュニティに関する各種の情報が登録される。例えば、図3は、実施形態に係るコミュニティ情報データベースに登録される情報の一例を示す図である。図3に示すように、コミュニティ情報データベース31には、「コミュニティID(Identifier)」、「ユーザID」、「接続情報」、「ユーザ特定」、「アクセス履歴」、「通信履歴」、「購買履歴」等といった項目を有する情報が登録される。
【0066】
ここで、「コミュニティID」とは、コミュニティを識別する識別子である。また、「ユーザID」とは、利用者を識別する識別子である。また、「接続情報」とは、対応付けられた「ユーザID」が示す利用者と家族関係や友人関係にある利用者等、コミュニティ内で直接的な関連性を有する利用者として登録された利用者の識別子である。また、「ユーザ特定」とは、対応付けられた「ユーザID」が示す利用者の性別や年代等といったデモグラフィックな属性を示す情報である。
【0067】
また、「アクセス履歴」とは、対応付けられた「ユーザID」が示す利用者がアクセスしたメディア(コンテンツ等)やアクセスを行った日時を示す情報である。また、「通信履歴」とは、SMS(Short Message Service)等、対応付けられた「ユーザID」が示す利用者がコミュニティ内の他の利用者との間で行った通信の内容や日時を示す情報である。また、「購買履歴」とは、対応付けられた「ユーザID」が示す利用者が過去に購入した商品等の購買対象や購買日時を示す情報である。
【0068】
例えば、図3に示す例では、コミュニティ情報データベース31には、コミュニティID「コミュニティ#1」、ユーザID「ユーザ#1」、接続情報「ユーザ#2、ユーザ#3」、ユーザ特定「男性、30代」、アクセス履歴「アクセス履歴#1−1」、通信履歴「通信履歴#1−1」、購入履歴「購入履歴#1−1」等が対応付けて登録されている。このような情報は、ユーザID「ユーザ#1」が示す利用者が「コミュニティ#1」が示すコミュニティに属し、ユーザID「ユーザ#2」、「ユーザ#3」が示す利用者と関連性を有する利用者として登録されている旨を示す。また、このような情報は、ユーザID「ユーザ#1」が示す利用者が、アクセス履歴「アクセス履歴#1−1」が示す内容のメディアアクセス、具体的には、「アクセス日時#1」が示す日時に「コンテンツ#1」が示すメディアを閲覧する等といったメディアアクセスを行った旨を示す。また、このような情報は、ユーザID「ユーザ#1」が示す利用者が、通信履歴「通信履歴#1−1」が示す内容の通信、具体的には、「通信日時#1」が示す日時にユーザID「ユーザ#2」が示す利用者とメッセージのやり取りをした旨を示す。また、このような情報は、ユーザID「ユーザ#1」が示す利用者が、購入履歴「購入履歴#1−1」内容の購買、具体的には、「購買日時」が示す内容の購買行動、具体的には、「購買日時#1」が示す日時に、「購買対象#1」が示す商品等を購買した旨を示す。
【0069】
図2に戻り、説明を続ける。戦略マップデータベース32は、各コミュニティの相情報が広告の配信態様を決定するための戦略マップとして登録される。例えば、図4は、実施形態に係る戦略マップデータベースに登録される情報の一例である。図4に示すように、戦略マップデータベース32には、「コミュニティID」、および「戦略マップ」といった項目を有する情報が登録される。
【0070】
ここで、「戦略マップ」とは、対応付けられた「コミュニティID」が示すコミュニティに対してどのような配信態様で広告を配信すればよいかを示す情報であり、具体的には、「コミュニティID」が示すコミュニティの対応系における臨界温度を示す情報である。例えば、図4に示す例では、コミュニティID「コミュニティ#1」と戦略マップ「相図#1」とが対応付けて登録されている。このような情報は、例えば、「コミュニティ#1」が示すコミュニティの対応系の相図が「相図#1」である旨を示す。なお、本実施形態では、戦略マップとして「相図」を生成する例について説明するが、実施形態は、これに限定するものではなく、例えば、臨界温度を示す数値等であってもよい。
【0071】
図2に戻り、説明を続ける。コンテンツデータベース33は、配信対象となるコンテンツが登録される。例えば、コンテンツデータベース33には、各コミュニティC01に対して配信される広告として、各特定商品の広告コンテンツのデータが登録されている。
【0072】
図2に戻り、説明を続ける。制御部40は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって、決定装置10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部40は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0073】
図2に示すように、制御部40は、取得部41、特定部42、算出部43、生成部44、決定部45、および提供部46を有する。
【0074】
取得部41は、決定処理を実行するために必要な各種の情報を取得する。より具体的には、取得部41は、コミュニティC01に関する情報量をパラメータとして取得する。例えば、取得部41は、コミュニティサーバ110から、コミュニティC01に属する利用者に関する情報、利用者間の接続関係、利用者間でやり取りされたメッセージの情報等を取得する。また、取得部41は、メディアサーバ120から、コミュニティC01に属する利用者のアクセス履歴を取得する。また、取得部41は、電子商取引サーバ130から、コミュニティC01に属する利用者の購買履歴を取得する。そして、取得部41は、取得した各情報をコミュニティ情報データベース31に登録する。
【0075】
特定部42は、コミュニティ情報データベース31に登録された各種の情報を解析し、決定処理に必要な各種の情報を取得する。例えば、特定部42は、コミュニティC01内でやり取りされたメッセージの履歴から、特定商品の情報がユーザ間でやり取りされた量等、ペアとなる利用者を特定するために用いられる各種の情報を取得する。そして、特定部42は、コミュニティC01に属する利用者のうち、ペアとなる利用者を特定する。
【0076】
例えば、特定部42は、婚姻関係にある旨が予め登録された利用者や、恋人関係にある旨が予め登録された利用者等をペア(対)となる利用者として特定する。また、特定部42は、ユーザ間でやり取りされたメッセージの履歴や内容等に基づいて、婚姻関係や恋人関係にあると推定される利用者、すなわち、ペアであると見做すことができる利用者を特定する。なお、特定部42は、婚姻関係や恋人関係にある利用者以外にも、共通した購買行動を起こし得ると推定される利用者をペアとなる利用者として特定してもよい。
【0077】
算出部43は、相情報の生成に必要な値を算出する。例えば、算出部43は、利用者のアクセス履歴から、各コミュニティに属する利用者が行った特定商品に関連するメディアへのアクセスを特定し、特定したアクセスの数をパラメータとして取得する。また、算出部43は、各コミュニティに属する利用者の属性をユーザ特性から取得する。また、算出部43は、通信履歴から、あるコミュニティに属するユーザ間で行われた特定商品に関連するメッセージの量等を特定する。また、算出部43は、購買履歴から、あるコミュニティに属する利用者が特定商品を購買した数等を特定する。
【0078】
また、算出部43は、接続情報に基づいて、あるコミュニティ内における利用者間の接続関係を特定し、特定した接続関係を図や立体に置き換えた際に、図や立体の最外点を被覆する多様体の体積や、最外点同士を結ぶ距離のうち、最も長い距離等をコミュニティの大きさを示すパラメータとして取得する。すなわち、算出部43は、上述した熱力学へのあてはめに用いる各種のパラメータを、コミュニティ情報データベース31に登録された情報から取得する。なお、算出部43は、上述した各種のパラメータ以外にも、上述した各種の情報(例えば、興味の伝播量やメディアアクセスの変化量等)を取得する。
【0079】
そして、算出部43は、相情報の生成に必要な値を算出する。より具体的には、算出部43は、対応系における温度「T」の値等、対応系の状態を示す値を算出する。例えば、算出部43は、特定商品を購買した数等を含むメディアアクセス数に基づいて、対応系の温度の値を算出し、特定商品への潜在的な興味の度合いを示す値から、内部エネルギーの値を算出する。
【0080】
生成部44は、算出部43によって算出された対応系における温度「T」の値や、内部エネルギーの値「U」の値、粒子の数等に基づいて、ギャップ方程式やBCS理論に基づいてから臨界温度「Tc」を算出する。そして、生成部44は、生成した臨界温度を示す相図を生成し、生成した相情報を戦略マップとして戦略マップデータベース32に登録する。
【0081】
例えば、生成部44は、コミュニティC01における特定商品に関連するメディアへのアクセス数に基づく値をコミュニティに対応する対応系における温度と見做す。また、生成部44は、コミュニティC01における特定商品への潜在的な興味の度合いをコミュニティC01に対応する対応系の内部エネルギーと見做す。また、生成部44は、コミュニティC01の大きさを当該コミュニティに対応する対応系の体積と見做す。また、生成部44は、ペアとなる利用者の数の割合を特定し、特定した割合を対応系におけるボーズ粒子の割合と見做す。また、生成部44は、コミュニティに属する利用者が発信した情報であって、特定商品に関する情報の量を、対応系における生成演算子と見做す。また、生成部44は、利用者に対する情報の影響力を示す値を、対応系を構成する粒子に対するロンドンの侵入長と見做す。そして、生成部44は、BCS理論に基づいて、臨界温度「Tc」を算出する。
【0082】
決定部45は、コミュニティC01に属する利用者をフェルミ粒子と見做し、特定された対となる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做して、超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づき、利用者に対する情報の提供態様を決定する。より具体的には、決定部45は、対応系の相情報に基づいて、対応系の相をより情報が伝達されやすい相へと変化させる情報の配信態様を特定する。
【0083】
例えば、決定部45は、戦略マップデータベース32から戦略マップとしてコミュニティC01の対応系における臨界温度「Tc」の値を読み出す。また、決定部45は、コミュニティC01における特定商品に関連するメディアへのアクセス数に基づく値をコミュニティC01に対応する対応系における温度と見做して、対応系が常伝導状態であるか超伝導状態であるかを判定する。そして、決定部45は広告配信時におけるコミュニティC01の状態が常伝導状態であるか、超伝導状態であるかに基づいて、広告の配信態様を決定する。
【0084】
例えば、決定部45は、コミュニティC01の状態が常伝導状態である場合には、超伝導状態に相転移させるため、コミュニティC01における特定商品の情報量が少なくなるように、広告の配信を停止したりする旨を決定してもよい。また、決定部45は、ペアとなりうる利用者を特定し、特定した利用者に対して、カップリングサービスの提供やイベントへの参加の提案を行う旨を決定する。なお、決定部45は、例えば、情報の抑え込み等を行う場合には、対応系が超伝導状態から常伝導状態となるように、広告の配信等を行うことで、うわさ等といった情報の抑え込みやいわゆる情報の火消等を実現してもよい。このように、決定装置10は、対応系の相を変化させるように、広告の配信態様を制御することで、情報のハレーションリスクをコントロールすることができる。
【0085】
提供部46は、決定した配信態様で、広告をコミュニティC01に対して提供する。例えば、提供部46は、決定部45によって決定された量の広告をコミュニティC01に対して提供する。
【0086】
〔3.決定装置が実行する処理の流れの一例〕
次に、図5を用いて、決定装置10が実行する決定処理の流れの一例について説明する。図5は、実施形態に係る決定装置が実行する決定処理の流れの一例を説明するフローチャートである。まず、決定装置10は、コミュニティC01に関する情報をパラメータとして取得する(ステップS101)。続いて、決定装置10は、各利用者をフェルミ粒子と見做す(ステップS102)。続いて、決定装置10は、ペアとなる利用者を特定し(ステップS103)、ペアとなる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做す(ステップS104)。また、決定装置10は、ペアとなる利用者に対する情報の影響力をロンドンの侵入長と見做し(ステップS105)、コミュニティC01における情報量をエネルギーと見做して、BCS理論とギャップ方程式とに基づき、相図を生成する(ステップS106)。そして、決定装置10は、相図に基づいて、コンテンツの配信方針を決定し(ステップS107)、決定した配信方針で、コンテンツを配信を行い(ステップS108)、処理を終了する。
【0087】
〔4.変形例〕
上記では、決定装置10による決定処理の一例について説明した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。以下、決定装置10が実行する決定処理のバリエーションについて説明する。
【0088】
〔4−1.装置構成〕
上述した例では、決定装置10は、相情報を決定装置10内で生成した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、決定装置10は、図2に示した取得部41、特定部42、算出部43、生成部44を有する生成装置等が生成した相情報を取得し、取得した相情報を用いて、広告の配信態様を決定してもよい。また、決定装置10は、記憶部30に登録された各データベース31〜33を外部のストレージサーバに登録させてもよい。
【0089】
〔4−2.その他〕
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0090】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2に示した決定部45および提供部46は統合されてもよい。
【0091】
また、上記してきた各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0092】
〔5.プログラム〕
また、上述してきた実施形態に係る決定装置10は、例えば図6に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図6は、ハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ1000は、出力装置1010、入力装置1020と接続され、演算装置1030、一次記憶装置1040、二次記憶装置1050、出力IF(Interface)1060、入力IF1070、ネットワークIF1080がバス1090により接続された形態を有する。
【0093】
演算装置1030は、一次記憶装置1040や二次記憶装置1050に格納されたプログラムや入力装置1020から読み出したプログラム等に基づいて動作し、各種の処理を実行する。一次記憶装置1040は、RAM等、演算装置1030が各種の演算に用いるデータを一次的に記憶するメモリ装置である。また、二次記憶装置1050は、演算装置1030が各種の演算に用いるデータや、各種のデータベースが登録される記憶装置であり、ROM(Read Only Memory)、HDD、フラッシュメモリ等により実現される。
【0094】
出力IF1060は、モニタやプリンタといった各種の情報を出力する出力装置1010に対し、出力対象となる情報を送信するためのインタフェースであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)やDVI(Digital Visual Interface)、HDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)といった規格のコネクタにより実現される。また、入力IF1070は、マウス、キーボード、およびスキャナ等といった各種の入力装置1020から情報を受信するためのインタフェースであり、例えば、USB等により実現される。
【0095】
なお、入力装置1020は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等から情報を読み出す装置であってもよい。また、入力装置1020は、USBメモリ等の外付け記憶媒体であってもよい。
【0096】
ネットワークIF1080は、ネットワークNを介して他の機器からデータを受信して演算装置1030へ送り、また、ネットワークNを介して演算装置1030が生成したデータを他の機器へ送信する。
【0097】
演算装置1030は、出力IF1060や入力IF1070を介して、出力装置1010や入力装置1020の制御を行う。例えば、演算装置1030は、入力装置1020や二次記憶装置1050からプログラムを一次記憶装置1040上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0098】
例えば、コンピュータ1000が決定装置10として機能する場合、コンピュータ1000の演算装置1030は、一次記憶装置1040上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部40の機能を実現する。
【0099】
〔6.効果〕
上述したように、決定装置10は、コミュニティに属する利用者のうち、対となる利用者を特定する。そして、決定装置10は、コミュニティに属する利用者をフェルミ粒子と見做し、特定された対となる利用者をボーズ凝縮する粒子と見做して、超伝導状態と常伝導状態との相転移を示す相情報に基づき、利用者に対する情報の提供態様を決定する。このため、決定装置10は、ペアを構成する利用者に対し、広告などの情報を効果的に配信することができる。
【0100】
また、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者の属性情報、または、コミュニティC01に属する利用者間のメッセージの内容に基づいて、所定の関連性を有する二人の利用者を対となる利用者とする。このため、決定装置10は、コミュニティC01の対応系におけるボーズ粒子と見做すことができる利用者を特定することができる。
【0101】
また、決定装置10は、コミュニティC01における特定商品に関連するメディアへのアクセス数に基づく値をコミュニティC01に対応する対応系における温度と見做す。また、決定装置10は、コミュニティC01における特定商品への潜在的な興味の度合いをコミュニティC01に対応する対応系の内部エネルギーと見做す。また、決定装置10は、コミュニティC01の大きさをコミュニティC01に対応する対応系の体積と見做す。また、決定装置10は、コミュニティC01に属する利用者が発信した情報の量を、コミュニティC01に対する対応系における生成演算子と見做す。また、決定装置10は、特定した対となる利用者に対する情報の影響力を示す値をコミュニティに対する対応系を構成する粒子に対するロンドンの侵入長と見做す。そして、決定装置10は、BCS理論とギャップ方程式とに基づいて、対応系の相情報として、対応系が超伝導状態に遷移する臨界温度を算出する。このため、決定装置10は、コミュニティC01における利用者の状態を反映することができる対応系の相情報を生成することができる。
【0102】
また、決定装置10は、対応系の相情報に基づいて、対応系の相をより情報が伝達されやすい相へと変化させる情報の配信態様を決定する。このため、例えば、決定装置10は、特定商品の情報をコミュニティ内で効率的に伝達させることができる。
【0103】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0104】
また、上記してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、特定部は、特定手段や特定回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 決定装置
20 通信部
30 記憶部
31 コミュニティ情報データベース
32 戦略マップデータベース
33 コンテンツデータベース
40 制御部
41 取得部
42 特定部
43 算出部
44 生成部
45 決定部
46 提供部
100 端末装置
110 コミュニティサーバ
120 メディアサーバ
130 電子商取引サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6