(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記炭素積算量が前記第1閾値よりも多く前記第2閾値以下であり、かつ、予測される電力量の需要が予め定められた量以下である場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量を、前記炭素積算量が前記第1閾値以下で、かつ、前記予測される電力量の需要が前記予め定められた量よりも多い場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量よりも増加させる制御を行う請求項1に記載の燃料電池システム。
前記制御部は、前記炭素積算量が前記第1閾値よりも多く前記第2閾値以下であり、かつ、予測される熱量の需要が予め定められた量以上である場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量を、前記炭素積算量が前記第1閾値以下で、かつ、前記予測される熱量の需要が前記予め定められた量よりも少ない場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量よりも増加させる制御を行う請求項1に記載の燃料電池システム。
前記導出部は、前記改質器において前記炭化水素の転化率が減少する割合に基づいて、前記第1閾値及び前記第2閾値の各々を更に導出する請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
前記導出部は、前記改質器における炭素の析出のし易さを示す炭素活量を更に導出し、導出した炭素活量を変換して得られる単位時間当たりの炭素析出量を時間的に積算することにより前記炭素積算量を導出する請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
前記改質器は、前記炭化水素と前記二酸化炭素との第1改質反応により水素と一酸化炭素を生成し、前記炭化水素と前記酸素との第2改質反応により水素と一酸化炭素を生成し、
前記炭化水素、前記一酸化炭素、前記二酸化炭素、前記水素、及び前記酸素の各々の平衡状態での分圧p(CH4)、p(CO)、p(CO2)、p(H2)、及びp(O2)は、前記第1改質反応における反応比率をw、前記第2改質反応における反応比率をv、前記燃料ガスの単位時間当たりの供給量をA、前記二酸化炭素の単位時間当たりの供給量をα、前記酸素の単位時間当たりの供給量をβとした場合、
p(CH4)=A×(1−w−v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(CO)=A×(2w+v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(CO2)=α−(A×w)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(H2)=A×(2w+2v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(O2)=β−(A×0.5v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
で表わされ、
前記第1改質反応及び前記第2改質反応の各々における平衡定数K1、K2は、
K1=p(H2)2×p(CO)2/p(CH4)/p(CO2)
K2=p(H2)2×p(CO)/p(CH4)/p(O2)0.5
で表わされ、
前記炭素活量をAc、前記燃料電池の炭素析出反応における平衡定数をK3とした場合、
Ac=K3×p(CO)2/p(CO2)
で表わされ、
前記導出部は、前記燃料ガスの単位時間当たりの供給量A、前記二酸化炭素の単位時間当たりの供給量α、及び前記酸素の単位時間当たりの供給量βに応じて導出される前記反応比率w、vに基づいて、前記分圧p(CO)及びp(CO2)の各々の値を導出し、導出した各々の値から前記炭素活量Acを導出する請求項6に記載の燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のS/C比を大きくする場合、燃料電池の発電に対する抵抗成分となる水蒸気や窒素がスタックに多く供給され、燃料電池の発電効率を低下させる。また、O/C比を大きくする場合、燃料と酸素の発熱反応によって燃料が消費され、システムの発電効率を低下させる。
【0009】
これに対して、上記特許文献3に記載の技術では、二酸化炭素を改質に利用するため、水蒸気による電圧の低下を抑制し、燃料の消費を抑え、高い発電効率を得ることができる。しかしその反面、温度が低下した場合等に、炭素析出耐性が水蒸気や酸素に比べて低く、炭素の析出を十分に抑制できない場合がある。
【0010】
一方、上記特許文献2に記載の技術では、炭素除去時に常に酸素が供給されるため、改質器にて発電に利用したい炭化水素燃料、水素や一酸化炭素まで酸化され、発電効率を低下させる可能性がある。また、上記特許文献1に記載の技術では、水蒸気が酸化剤として供給されるため、酸素を供給する場合と同様に発電効率を低下させる可能性がある。つまり、上記特許文献1〜3に記載の技術では、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することは困難である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することができる燃料電池システム、制御装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の燃料電池システムは、炭化水素を含む燃料ガス、及び、二酸化炭素と空気中の酸素の少なくとも一方の改質剤が供給される改質器を備えた燃料電池と、前記改質器の改質反応により予め定められた時間内に析出する炭素の量を積算して炭素積算量を導出する導出部と、前記導出部により導出された炭素積算量が第1閾値よりも多く、前記第1閾値よりも大きい第2閾値以下である場合、前記二酸化炭素を前記酸素よりも多く前記改質器に供給し、前記炭素積算量が前記第2閾値よりも多い場合、前記酸素を前記二酸化炭素よりも多く前記改質器に供給する制御を行う制御部と、を備えたものである。
【0013】
この燃料電池システムによれば、炭素積算量を考慮することなく常に二酸化炭素と空気中の酸素のいずれか一方を他方よりも多く供給する場合と比べ、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の燃料電池システムは、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記制御部が、前記炭素積算量が前記第1閾値よりも多く前記第2閾値以下であり、かつ、予測される電力量の需要が予め定められた量以下である場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量を、前記炭素積算量が前記第1閾値以下で、かつ、前記予測される電力量の需要が前記予め定められた量よりも多い場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量よりも増加させる制御を行うものである。
【0015】
また、請求項3に記載の燃料電池システムは、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記制御部が、前記炭素積算量が前記第1閾値よりも多く前記第2閾値以下であり、かつ、予測される熱量の需要が予め定められた量以上である場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量を、前記炭素積算量が前記第1閾値以下で、かつ、前記予測される熱量の需要が前記予め定められた量よりも少ない場合に前記改質器に供給する前記二酸化炭素の量よりも増加させる制御を行うものである。
【0016】
この燃料電池システムによれば、電力量や熱の需要に応じて二酸化炭素及び酸素の供給量を制御するため、無駄に改質剤を供給することがなく、経済性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の燃料電池システムは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記導出部が、前記改質器において前記炭化水素の転化率が減少する割合に基づいて、前記第1閾値及び前記第2閾値の各々を更に導出するものである。
【0018】
この燃料電池システムによれば、炭化水素の転化率が減少する割合に基づいて2つの閾値を導出しているため、炭素積算量の多少の判定を精度良く行うことができる。
【0019】
また、請求項5に記載の燃料電池システムは、請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、前記第1閾値が、前記炭化水素の転化率が減少する割合が第1割合である場合に析出する炭素の量に相当し、前記第2閾値が、前記炭化水素の転化率が減少する割合が前記第1割合よりも高い第2割合である場合に析出する炭素の量に相当するものである。
【0020】
この燃料電池システムによれば、炭化水素の転化率が減少する割合が第1割合である場合に析出する炭素の量を第1閾値、第1割合よりも高い第2割合である場合に析出する炭素の量を第2閾値とするため、炭素積算量の多少の判定を精度良く行うことができる。
【0021】
また、請求項6に記載の燃料電池システムは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記導出部が、前記改質器における炭素の析出のし易さを示す炭素活量を更に導出し、導出した炭素活量を変換して得られる単位時間当たりの炭素析出量を時間的に積算することにより前記炭素積算量を導出するものである。
【0022】
この燃料電池システムによれば、炭素活量を導出し、さらに、炭素活量から炭素積算量を導出しているため、比較的容易な手法で正確な炭素積算量を得ることができる。
【0023】
また、請求項7に記載の燃料電池システムは、請求項6に記載の燃料電池システムにおいて、前記改質器が、前記炭化水素と前記二酸化炭素との第1改質反応により水素と一酸化炭素を生成し、前記炭化水素と前記酸素との第2改質反応により水素と一酸化炭素を生成し、
前記炭化水素、前記一酸化炭素、前記二酸化炭素、前記水素、及び前記酸素の各々の平衡状態での分圧p(CH
4)、p(CO)、p(CO
2)、p(H
2)、及びp(O
2)が、前記第1改質反応における反応比率をw、前記第2改質反応における反応比率をv、前記燃料ガスの単位時間当たりの供給量をA、前記二酸化炭素の単位時間当たりの供給量をα、前記酸素の単位時間当たりの供給量をβとした場合、
p(CH
4)=A×(1−w−v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(CO)=A×(2w+v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(CO
2)=α−(A×w)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(H
2)=A×(2w+2v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
p(O
2)=β−(A×0.5v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v))
で表わされ、
前記第1改質反応及び前記第2改質反応の各々における平衡定数K1、K2が、
K1=p(H
2)
2×p(CO)
2/p(CH
4)/p(CO
2)
K2=p(H
2)
2×p(CO)/p(CH
4)/p(O
2)
0.5
で表わされ、
前記炭素活量をAc、前記燃料電池の炭素析出反応における平衡定数をK3とした場合、
Ac=K3×p(CO)
2/p(CO
2)
で表わされ、
前記導出部が、前記燃料ガスの単位時間当たりの供給量A、前記二酸化炭素の単位時間当たりの供給量α、及び前記酸素の単位時間当たりの供給量βに応じて導出される前記反応比率w、vに基づいて、前記分圧p(CO)及びp(CO
2)の各々の値を導出し、導出した各々の値から前記炭素活量Acを導出するものである。
【0024】
この燃料電池システムによれば、改質反応及び炭素析出反応の各々における各成分の平衡状態での分圧及び平衡定数から炭素活量を導出し、さらに、炭素活量から炭素積算量を導出しているため、比較的容易な手法で正確な炭素積算量を得ることができる。
【0025】
一方、上記目的を達成するために、請求項8に記載の制御装置は、炭化水素を含む燃料ガス、及び、二酸化炭素と空気中の酸素の少なくとも一方の改質剤が供給される改質器を備えた燃料電池の運転を制御する制御装置であって、前記改質器の改質反応により予め定められた時間内に析出する炭素の量を積算して炭素積算量を導出する導出部と、前記導出部により導出された炭素積算量が第1閾値よりも多く、前記第1閾値よりも大きい第2閾値以下である場合、前記二酸化炭素を前記酸素よりも多く前記改質器に供給し、前記炭素積算量が前記第2閾値よりも多い場合、前記酸素を前記二酸化炭素よりも多く前記改質器に供給する制御を行う制御部と、を備えたものである。
【0026】
さらに、上記目的を達成するために、請求項9に記載のプログラムは、コンピュータを、請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システムが備える導出部及び制御部として機能させるものである。
【0027】
上記の制御装置及びプログラムの各々によれば、炭素積算量を考慮することなく常に二酸化炭素と空気中の酸素のいずれか一方を他方よりも多く供給する場合と比べ、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、本発明によれば、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム10の全体構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池20と、制御装置30と、を備えている。燃料電池20は、改質器22と、スタック(燃料電池本体)24と、燃焼器26と、を備えている。これら改質器22、スタック24、及び燃焼器26は、ホットボックス内に収容されている。
【0032】
改質器22は、スタック24の前段に配置されている。この改質器22には、都市ガスGfが供給される。都市ガスGfは、炭化水素を含む燃料ガスの一例である。燃料ガスとしては、都市ガス以外でもよく、バイオガス、又は、都市ガス及びバイオガスの混合ガス等を用いてもよい。都市ガスGfの組成は、13Aガスの場合、約90%がメタン(CH
4)である。メタンは、炭化水素の一例である。なお、ここでいうバイオガスとは、動植物に由来する有機性廃棄物をメタン発酵させることで発生する可燃性ガスを意味する。バイオガスの代表的な組成は、メタンが約60%、二酸化炭素(CO
2)が約40%であるが、組成が変化する場合がある。
【0033】
改質器22は、二酸化炭素と空気中の酸素(O
2)の少なくとも一方の改質剤が供給される。つまり、改質器22には、都市ガスGfに二酸化炭素CO
2を供給して改質する二酸化炭素改質器と、都市ガスGfに空気中の酸素O
2を供給して改質させる部分酸化改質器と、が設けられている。
【0034】
改質器22は、改質用の触媒を有する。改質用の触媒には、高活性で炭素析出耐性の高い触媒が用いられる。担持する担体の酸化物は、塩基性であることが望ましい。担体には、一例として、アルカリ土類金属である酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)等が用いられる。塩基性の担体を用いることにより、触媒表面に化学吸着する二酸化炭素CO
2が安定化し、メタンの分解によって生成した炭素と化学吸着した二酸化炭素CO
2との反応が促進される。上記改質用の触媒としては、一例として、Ru/MgO、Rh/BaO、Ni/SrTiO
3等が挙げられる。この改質器22における二酸化炭素CO
2による改質反応は、下記式(1)に示す通りである。なお、式(1)は、第1改質反応の一例を示す。
【0035】
CH
4+CO
2 → 2H
2+2CO …(1)
【0036】
また、この改質器22における空気中の酸素O
2による改質反応は、下記式(2)に示す通りである。なお、式(2)は、第2改質反応の一例を示す。
【0037】
CH
4+0.5O
2 → 2H
2+CO …(2)
【0038】
スタック24には、一例として、固体酸化物形燃料電池が適用される。このスタック24は、積層された複数のセルを有している。各セルは、燃料極、電解質層、及び空気極を有している。各セルの燃料極には、改質器22にて生成された改質ガスが供給され、各セルの空気極には、酸化剤ガスとして空気が供給される。
【0039】
空気極では、下記式(3)で示されるように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層を通って燃料極に到達する。
【0040】
(空気極反応)
1/2O
2+2e
− → O
2− …(3)
【0041】
一方、燃料極では、下記式(4)及び式(5)で示されるように、電解質層を通ってきた酸素イオンが改質ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水蒸気、二酸化炭素、及び電子が生成される。燃料極で生成された電子は、外部回路を通って空気極に到達する。そして、このようにして電子が燃料極から空気極に移動することにより、各セルにおいて発電される。また、各セルは、発電時に以上の電気化学反応に伴ってジュール熱が発生する。
【0042】
(燃料極反応)
H
2+O
2− → H
2O+2e
− …(4)
CO+O
2− → CO
2+2e
− …(5)
【0043】
この燃料極で発生するガス(以下、アノードオフガスという。)には、燃料極反応にて生成された水蒸気及び二酸化炭素の他に、改質器22にて生成されスタック24の燃料極で未反応の水素及び一酸化炭素が含まれる。燃料電池20内を流通するアノードオフガスの温度は、例えば、200℃以上800℃以下である。
【0044】
燃焼器26は、スタック24の後段に配置されている。この燃焼器26には、スタック24の空気極から排出されたガス(以下、カソードオフガスという。)が供給されると共に、スタック24の燃料極から排出されたアノードオフガスが供給される。アノードオフガスには、上述の通り、スタック24の燃料極にて未反応の水素及び一酸化炭素が含まれており、燃焼器26は、酸素を含むカソードオフガスを利用してアノードオフガスを燃焼する。この燃焼器26の燃焼に伴い生成された燃焼排ガスは、燃料電池20の外部に排出される。
【0045】
一方、制御装置30は、燃料電池20の運転を制御する。制御装置30は、演算部32及び記憶部34を含んで構成されている。記憶部34には、炭素積算量(以下、積算炭素析出量Caという。)に基づいて二酸化炭素CO
2及び酸素O
2の各々の供給量を制御し、燃料電池20の運転を制御するためのプログラム34Aが予め記憶されている。プログラム34Aは、例えば、制御装置30に予めインストールされていてもよい。プログラム34Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又は、ネットワークを介して配布して、制御装置30に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD(Hard Disk Drive)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が挙げられる。
【0046】
演算部32は、CPU(Central Processing Unit)を含み、記憶部34に記憶されているプログラム34Aを読み出して実行することにより、導出部32A、需要予測部32B、判定部32C、及び運転制御部32Dとして機能する。
【0047】
ところで、二酸化炭素を改質に利用する場合、水蒸気を利用した場合における電圧の低下を抑制し、高い発電効率を得ることができる。しかしその反面、温度が低下した場合等に、炭素析出耐性が水蒸気や酸素に比べて低く、析出する炭素を十分に抑制できない場合がある。
【0048】
一方、空気中の酸素を用いて部分酸化により改質を行う場合、改質器にて発電に利用したい水素や一酸化炭素まで酸化され、発電効率を低下させる可能性がある。しかし、酸素による改質は、二酸化炭素よりも炭素析出耐性が高く、炭素の析出を短時間で抑制するためには有効である。
【0049】
また、上記式(1)に示す二酸化炭素による改質反応は、吸熱反応である。一方、上記式(2)に示す酸素による改質反応は、発熱反応であり、発熱によるエネルギーロスが発生する。従って、二酸化炭素と酸素とを適宜混合することで、発熱を抑え、発電効率の低下を抑制することができると考えられる。
【0050】
以上の事柄を踏まえ、二酸化炭素及び空気中の酸素を用いて改質を行う場合に、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することが望まれている。
【0051】
そこで、本実施形態に係る導出部32Aは、改質器22の改質反応により予め定められた時間内に析出する炭素の量を積算して積算炭素析出量Caを導出し、導出した積算炭素析出量Caを判定部32Cに出力する。また、導出部32Aは、積算炭素析出量Caの判定に用いる第1閾値TH1及び第2閾値TH2を導出し、導出した第1閾値TH1及び第2閾値TH2を判定部32Cに出力する。第2閾値TH2は、第1閾値よりも大きく、一例として最大許容値を示す。第1閾値TH1<第2閾値TH2の関係を有する。この導出部32Aによる積算炭素析出量Ca、第1閾値TH1、及び第2閾値TH2の導出方法については後述する。
【0052】
需要予測部32Bは、必要とされる電力量の需要を予測し、予測した電力量の需要(以下、単に電力需要Waという。)を判定部32Cに出力する。なお、電力量の需要を予測する方法としては、特に限定されるものではないが、一例として、燃料電池20にて過去に発電した電力量の実績値に基づいて予測してもよい。
【0053】
電力需要に代えて熱需要を予測してもよい。この場合、需要予測部32Bは、必要とされる熱量の需要を予測し、予測した熱量の需要を判定部32Cに出力する。なお、熱量の需要を予測する方法としては、一例として、燃料電池20にて過去に供給した熱量の実績値に基づいて予測してもよい。
【0054】
判定部32Cは、導出部32Aにより導出された積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下であるか否かを判定する。また、判定部32Cは、積算炭素析出量Caが第2閾値TH2よりも多いか否かを判定する。また、判定部32Cは、電力需要Waが予め定められた量以下であるか否かを判定する。そして、判定部32Cは、これらの判定結果を運転制御部32Dに出力する。
【0055】
運転制御部32Dは、燃料電池20の運転を制御する。ここで、本実施形態に係る運転制御部32Dは、判定部32Cの判定結果に基づいて、改質器22に供給される二酸化炭素CO
2及び酸素O
2の各々の供給量を制御する。なお、運転制御部32Dは、都市ガスGfの供給量の制御も行う。運転制御部32Dは、制御部の一例である。
【0056】
都市ガスGfの供給経路50には第1バルブ41が設けられている。この供給経路50には、第1バルブ41と燃料電池20との間に流量計Fm1が設けられている。流量計Fm1は、都市ガスGfの供給量を計測する。二酸化炭素CO
2の供給経路52には第2バルブ42が設けられている。この供給経路52には、第2バルブ42と燃料電池20との間に流量計Fm2が設けられている。流量計Fm2は、二酸化炭素CO
2の供給量を計測する。酸素O
2の供給経路54には第3バルブ43が設けられている。この供給経路54には、第3バルブ43と燃料電池20との間に流量計Fm3が設けられている。流量計Fm3は、酸素O
2の供給量を計測する。流量計Fm1〜Fm3の各々は、導出部32Aに接続される。
【0057】
上記の第1バルブ41、第2バルブ42、及び第3バルブ43の各々の開度は、運転制御部32Dにより制御される。つまり、都市ガスGfの供給量は、運転制御部32Dが第1バルブ41の開度を制御することにより調整される。同様に、二酸化炭素CO
2の供給量は、運転制御部32Dが第2バルブ42の開度を制御することにより調整される。酸素O
2の供給量は、運転制御部32Dが第3バルブ43の開度を制御することにより調整される。
【0058】
運転制御部32Dは、判定部32Cにより積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下と判定された場合、二酸化炭素CO
2を酸素O
2よりも多く改質器22に供給する制御を行う。運転制御部32Dは、判定部32Cにより積算炭素析出量Caが第2閾値TH2よりも多いと判定した場合、酸素O
2を二酸化炭素CO
2よりも多く供給する制御を行う。
【0059】
すなわち、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下の範囲は、炭素の析出量がある程度多い範囲を示す。このため、二酸化炭素CO
2を酸素O
2よりも多く供給する制御を行うことで、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制することができる。一方、積算炭素析出量Caが第2閾値TH2よりも多い範囲は、炭素の析出量がかなり多い範囲を示す。このため、酸素O
2を二酸化炭素CO
2よりも多く供給する制御を行うことで、炭素の析出を短時間で抑制することができる。なお、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1以下の範囲では、炭素の析出量が比較的少なく、二酸化炭素CO
2及び酸素O
2の各々の供給量は特に限定されない。一例として、二酸化炭素CO
2の供給量が酸素O
2の供給量と略等しいか、酸素O
2の供給量よりもやや多い程度としてもよい。
【0060】
ここで、電力需要Waを考慮してもよい。例えば、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下であり、かつ、電力需要Waが予め定められた量以下である場合に改質器22に供給する二酸化炭素CO
2の量をL1とする。また、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1以下で、かつ、電力需要Waが予め定められた量よりも多い場合に改質器22に供給する二酸化炭素CO
2の量をL2とする。この場合、運転制御部32Dは、L1>L2となるように、二酸化炭素CO
2の供給量を増加させる制御を行う。
【0061】
より具体的には、積算炭素析出量Caが比較的少なく、予測される電力需要Waが比較的多い場合、二酸化炭素CO
2の供給量をL2にして定格運転を行う。ここでいう定格運転とは、燃料電池20を定格出力で運転している状態を示す。そして、積算炭素析出量Caがある程度多くなり、予測される電力需要Waが比較的少ない場合、二酸化炭素CO
2の供給量をL1(>L2)にして、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制できるようにする。ここで、燃料電池20における炭素析出反応は、一例として下記式(6)により示される。
【0063】
なお、電力需要Waに代えて熱需要を考慮してもよい。この場合、例えば、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下であり、かつ、熱需要が予め定められた量以上である場合に改質器22に供給する二酸化炭素CO
2の量をL1とする。また、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1以下で、かつ、熱需要が予め定められた量よりも少ない場合に改質器22に供給する二酸化炭素CO
2の量をL2とする。この場合、運転制御部32Dは、L1>L2となるように、二酸化炭素CO
2の供給量を増加させる制御を行う。
【0064】
なお、燃料電池20の起動時においては、改質器22の温度が低い状態であるため、二酸化炭素CO
2による改質では炭素が析出する場合がある。そこで、炭素の析出を抑制するために、酸素O
2を二酸化炭素CO
2よりも多く供給するほうが望ましい。この場合、二酸化炭素CO
2の供給量を0(ゼロ)にして、酸素O
2のみを供給する場合を含む。一方、燃料電池20を定格運転している場合、発電効率の低下を抑制するために、二酸化炭素CO
2を酸素O
2よりも多く供給するほうが望ましい。
【0065】
次に、導出部32Aによる第1閾値TH1及び第2閾値TH2の導出方法について説明する。
【0066】
本実施形態に係る燃料電池20を、予め定めた運転条件に従って試験運転し、第1閾値TH1及び第2閾値TH2を予め導出しておく。
【0067】
(S1)まず、運転条件として、都市ガス(メタン)Gf、二酸化炭素CO
2、及び酸素O
2の各ガスの供給量(供給比率)と、改質器22の作動温度と、を設定する。運転条件として、例えば、都市ガス(メタン)Gfの単位時間当たりの供給量をA[mol/h]、二酸化炭素CO
2の単位時間当たりの供給量をα[mol/h]、酸素O
2の単位時間当たりの供給量をβ[mol/h]、改質器22の作動温度をT[K](一例として923K(=650℃))に設定する。なお、都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量βは、比率(例えば、A:α:β=1:x:y)で表すようにしてもよい。また、本実施形態ではH
2Oを供給しないが、飽和水蒸気として含まれる可能性があるため、考慮してもよい。
【0068】
(S2)上記の運転条件で改質器22を運転し、改質器22から出てくる改質ガスをガス分析器(ガスクロマトグラフィ等)により分析し、メタン、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素の各々の濃度を得る。得られた濃度から下記の式(7)を用いて、メタンの転化率Convを導出する。なお、Convはメタンの転化率[%]、F
CH4はメタンの濃度、F
COは一酸化炭素の濃度、F
CO2は二酸化炭素の濃度を示す。
【0069】
Conv={1−F
CH4/(F
CH4+F
CO+F
CO2)}×100 …(7)
【0070】
(S3)上記の運転条件で引き続き改質器22を運転させ続け、一定時間(一例として170時間(約1週間))が経過した時点でのメタンの転化率Convを、上記式(7)を用いて導出する。そして、メタンの転化率Convが顕著な低下を示し、かつ、スタック24のメタン転化率許容値(一例として60%)を下回った場合に、試験運転を終了する。
【0071】
(S4)改質器22の内部の触媒を取り出し、赤外吸収法等を用いて、触媒における炭素析出量を計測し、計測値を得る。触媒中の炭素析出量として、例えば、10wt%(質量パーセント濃度)が得られる。
【0072】
上記(S1)〜(S4)の処理を繰り返すことにより、
図2に示すように、一定時間における炭素析出量の計測値Cmとメタンの転化率Convとの関係を得る。なお、上記(S1)において、上記運転条件は1つではないため、各ガスの供給量及び改質器22の作動温度をいくつか設定し、一定時間における炭素析出量の計測値Cmとメタンの転化率Convとのプロットを増やすことが望ましい。
【0073】
図2は、本実施形態に係る炭素析出量の計測値Cmとメタンの転化率Convとの関係の一例を示すグラフである。
図2において、横軸は炭素析出量の計測値Cmを示し、縦軸はメタンの転化率Convを示す。
【0074】
図2に示す炭素析出量の計測値Cmとメタンの転化率Convとの関係を示すデータは、導出部32Aに入力される。そして、導出部32Aは、メタンの転化率Convが減少する割合に基づいて、第1閾値TH1及び第2閾値TH2の各々を導出する。第1閾値TH1は、
図2に示すメタンの転化率Convが減少する割合が第1割合である場合の炭素析出量の計測値Cmに相当する。第1割合は、一例として1%である。また、第1割合は、例えば、1%以上5%未満の範囲としてもよい。第2閾値TH2は、
図2に示すメタンの転化率Convが減少する割合が第2割合である場合の炭素析出量の計測値Cmに相当する。第2割合は、第1割合よりも高く、一例として5%である。第2割合は、例えば、5%以上10%未満の範囲としてもよい。
【0075】
なお、スタック24のアノードには、一般的に、Ni-YSZ(イットリア安定化ジルコニア)が使用されており、改質器22から出てくる改質ガスにメタンが残存していてもスタック24の内部での改質が可能である。しかし、メタンが多く残っている場合にはスタック24内で炭素が析出し、性能を低下させる可能性がある。
【0076】
上記YSZは、特に塩基性があるわけではなく、炭素析出耐性を高めた構造ではないため、一般的に、二酸化炭素改質用の触媒と比較し、炭素が析出し易い。そこで、改質器22の場合と同様に、下記(S11)〜(S14)の処理を繰り返し行い、上述のスタック24のメタン転化率許容値を導出するようにしてもよい。
【0077】
(S11)まず、運転条件として、例えば、都市ガスGfの供給量をA[mol/h]、二酸化炭素CO
2の供給量をα[mol/h]、酸素O
2の供給量をβ[mol/h]、スタック24の作動温度をT[K](一例として923K(=650℃))に設定する。なお、都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量βは、比率(例えば、A:α:β=1:x:y)で表すようにしてもよい。また、本実施形態ではH
2Oを供給しないが、飽和水蒸気として含まれる可能性があるため、考慮してもよい。
【0078】
(S12)上記の運転条件でスタック24を運転し、スタック24から出てくる改質ガスをガス分析器(ガスクロマトグラフィ等)により分析し、メタン、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素の各々の濃度を得る。得られた濃度から上記式(7)を用いて、メタンの転化率を導出する。このとき、スタック24の作動電圧を計測しておく。
【0079】
(S13)上記の運転条件で引き続きスタック24を運転させ続け、一定時間(一例として170時間(約1週間))が経過した時点でのメタンの転化率Convを、上記式(7)を用いて導出する。そして、メタンの転化率が顕著な低下を示す場合、又は、スタック24の性能許容値を下回った場合に、試験運転を終了する。
【0080】
(S14)スタック24の内部材料を取り出し、赤外吸収法等を用いて、取り出した内部材料における炭素析出量を計測し、計測値を得る。例えば、10wt%(質量パーセント濃度)が得られる。
【0081】
上記(S11)〜(S14)の処理を繰り返すことにより、一定時間における炭素析出量の計測値と、スタック24の作動電圧と、メタンの転化率との関係を得る。この関係から、スタック24のメタン転化率許容値が導出される。
【0082】
次に、
図3〜
図5を参照して、導出部32Aによる積算炭素析出量Caの導出方法について説明する。
【0083】
図3は、本実施形態に係る炭素活量Acと単位時間当たりの炭素析出量Ctとの関係の一例を示すグラフである。
図3において、横軸は炭素活量Acを示し、縦軸は単位時間当たりの炭素析出量Ctを示す。なお、炭素活量Acとは、改質器22における炭素の析出のし易さを示す指標の一例である。炭素活量Acの値が大きいほど、炭素が析出し易いとされる。
【0084】
導出部32Aには、上記(S1)〜(S4)での試験運転の場合と同様の運転条件とし、都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量βが入力される。また、導出部32Aには、気体定数R(単位:J/mol・K)、改質器22の作動温度T(単位:K)、及びファラデー定数F(単位:C/mol)が入力される。導出部32Aには、上記式(1)によって定まるギブス自由エネルギーΔG1の値g1[J/mol]が入力され、上記式(2)により定まるギブス自由エネルギーΔG2の値g2が入力される。さらに、導出部32Aには、上記式(6)により定まるギブス自由エネルギーΔG3の値g3が入力される。
【0085】
導出部32Aは、上記式(1)に対応する平衡定数K1、上記式(2)に対応する平衡定数K2、及び上記式(6)に対応する平衡定数K3を、下記式(8)〜式(10)により各々導出する。但し、g1〜g3は、ギブス自由エネルギーΔG1〜ΔG3の値[J/mol]、Rは気体定数、Tは作動温度である。
【0086】
K1=Exp(−ΔG1/RT)=Exp(−g1/RT) …(8)
K2=Exp(−ΔG2/RT)=Exp(−g2/RT) …(9)
K3=Exp(−ΔG3/RT)=Exp(−g3/RT) …(10)
【0087】
一方、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、及び酸素の各々の平衡状態での分圧p(CH
4)、p(CO)、p(CO
2)、p(H
2)、及びp(O
2)、は、下記式(11)〜式(15)により表わされる。但し、wは上記式(1)における反応比率、vは上記式(2)における反応比率、αは二酸化炭素CO
2の単位時間当たりの供給量[mol/h]、βは酸素O
2の単位時間当たりの供給量[mol/h]、Aは都市ガスGfの単位時間当たりの供給量[mol/h]である。
【0088】
p(CH
4)=A×(1−w−v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v)) …(11)
p(CO)=A×(2w+v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v)) …(12)
p(CO
2)=α−(A×w)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v)) …(13)
p(H
2)=A×(2w+2v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v)) …(14)
p(O
2)=β−(A×0.5v)/ (A×(1−w−v))+(A×(2w+v))+(α−(A×w))+(A×(2w+2v))+(β−(A×0.5v)) …(15)
【0089】
また、上記式(1)における平衡定数K1は、下記式(16)により表わされ、上記式(2)における平衡定数K2は、下記式(17)により表わされる。
【0090】
K1=p(H
2)
2×p(CO)
2/p(CH
4)/p(CO
2) …(16)
K2=p(H
2)
2×p(CO)/p(CH
4)/p(O
2)
0.5…(17)
【0091】
さらに、炭素活量Acは、下記式(18)により表わされる。但し、K3は、上記式(6)に対応する平衡定数で、上記式(10)により導出される。
【0092】
Ac=K3×p(CO)
2/p(CO
2) …(18)
【0093】
上記において、平衡定数K1、K2は、ある作動温度Tの下で既知の値である。上記式(11)〜式(17)の関係から、反応比率w、vを未知数とする2つの連立方程式が成立する。この2つの連立方程式を解くと、反応比率w、vの値が得られ、上記の各分圧pが決定する。そして、平衡定数K3もある作動温度Tの下で既知の値であるため、上記式(18)から炭素活量Acが導出される。
【0094】
すなわち、
図3に示すグラフは、上記により導出された炭素活量Acを、単位時間当たりの炭素析出量Ctに対応付けたものである。なお、単位時間当たりの炭素析出量Ctは、
図2に示す一定時間における炭素析出量の計測値Cmを単位時間当たりの炭素析出量に換算して得られるものである。これにより、単位時間当たりの炭素析出量Ctと炭素活量Acとの関係が得られる。
【0095】
図4は、本実施形態に係る炭素活量Acから単位時間当たりの炭素析出量Ctへの変換の一例を示すグラフである。
図4の左図において、横軸は時間を示し、縦軸は炭素活量Acを示す。
図4の右図において、横軸は時間を示し、縦軸は単位時間当たりの炭素析出量Ctを示す。
【0096】
燃料電池20を実際に運転する場合の運転条件(改質器22に供給されるガスの量及び改質器22の作動温度)は、上記試験運転における燃料電池20の運転条件と異なる場合がある。導出部32Aは、実際の運転時に流量計Fm1〜Fm3で計測された都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量β、さらに、改質器22の作動温度Tに基づいて、上記式(8)〜式(18)を用いて、炭素活量Acを導出する。導出した炭素活量Acを
図4の左図に示す。そして、導出部32Aは、上述の
図3に示す単位時間当たりの炭素析出量Ctと炭素活量Acとの関係を用いて、
図4の左図に示す炭素活量Acを、
図4の右図に示す単位時間当たりの炭素析出量Ctに変換する。
【0097】
図5は、本実施形態に係る積算炭素析出量Caと時間との関係の一例を示すグラフである。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は積算炭素析出量Caを示す。
【0098】
図5に示すように、導出部32Aは、
図4の右図に示す単位時間当たりの炭素析出量Ctを、さらに、時間的に積算することにより積算炭素析出量Caを導出する。具体的には、積算炭素析出量Caは、下記式(19)により導出される。なお、Caは積算炭素析出量を示し、Ct(=Ct1+Ct2+Ct3+…)は単位時間当たりの炭素析出量を示す。
【0099】
Ca=ΣCt=Ct1+Ct2+Ct3+… …(19)
【0100】
次に、
図6を参照して、本第1の実施形態に係る制御装置30の作用を説明する。なお、
図6は、第1の実施形態に係るプログラム34Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
演算部32は、燃料電池20の運転開始が指示された場合に、記憶部34に記憶されているプログラム34Aを読み出して実行する。
【0101】
まず、
図6のステップ100では、運転制御部32Dが、燃料電池20の起動処理を行う。この場合、運転制御部32Dは、第1バルブ41、第2バルブ42、及び第3バルブ43の各々の開度を調整し、都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量βが所定の比率になるように制御する。燃料電池20の起動状態においては、作動温度が低いため、酸素O
2の供給量βを二酸化炭素CO
2の供給量αよりも多くし、炭素の析出を抑制しながら起動させる。なお、この場合、二酸化炭素CO
2の供給量αを0(ゼロ)にし、酸素O
2のみを供給するようにしてもよい。
【0102】
次に、ステップ102では、運転制御部32Dが、燃料電池20の作動温度が所定温度に達し、定格出力での定格運転に移行したか否かを判定する。定格運転に移行したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ104に移行し、定格運転に移行していないと判定した場合(否定判定の場合)ステップ102で待機となる。
【0103】
ステップ104では、運転制御部32Dが、燃料電池20を定格出力で定格運転する制御を行う。定格運転の状態では、二酸化炭素CO
2の供給量αを酸素O
2の供給量βよりも多くして、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を抑制する。
【0104】
ステップ106では、運転制御部32Dが、定格運転開始から所定時間が経過したか否かを判定する。定格運転開始から所定時間が経過したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ108に移行し、定格運転開始から所定時間が経過していないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ106で待機となる。
【0105】
ステップ108では、導出部32Aが、都市ガスGfの供給量A、二酸化炭素CO
2の供給量α、及び酸素O
2の供給量βの各々の計測値に応じて、炭素活量Acを導出し、導出した炭素活量Acを単位時間当たりの炭素析出量Ctに換算する。そしてさらに、単位時間当たりの炭素析出量Ctを時間的に積算して積算炭素析出量Caを導出する。なお、炭素活量Acは、上記式(8)〜式(18)を用いて導出される。また、積算炭素析出量Caは、上記式(19)を用いて導出される。
【0106】
ステップ110では、判定部32Cが、導出部32Aにより導出された積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多いか否かを判定する。積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多いと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ112に移行し、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1以下であると判定した場合(否定判定の場合)、ステップ104に戻る。
【0107】
ステップ112では、判定部32Cが、導出部32Aにより導出された積算炭素析出量Caが第2閾値TH2(>TH1)よりも多いか否かを判定する。積算炭素析出量Caが第2閾値TH2よりも多いと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ114に移行し、積算炭素析出量Caが第2閾値TH2以下であると判定した場合(否定判定の場合)、ステップ116に移行する。
【0108】
ステップ114では、運転制御部32Dが、判定部32Cの判定結果に従って、一定時間、酸素O
2の供給量βを二酸化炭素CO
2の供給量αよりも多くする制御を行う。そして、ステップ120に移行する。
【0109】
一方、ステップ116では、判定部32Cが、需要予測部32Bにより予測された電力需要Waが一定量以下であるか否かを判定する。電力需要Waが一定量以下であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ118に移行し、電力需要Waが一定量より多いと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ104に戻る。なお、電力需要Waに代えて熱需要を判定に用いてもよい。つまり、判定部32Cが、需要予測部32Bにより予測された熱需要が一定量以上であるか否かを判定する。熱需要が一定量以上であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ118に移行し、熱需要が一定量より少ないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ104に戻る。
【0110】
ステップ118では、運転制御部32Dが、判定部32Cの判定結果に従って、一定時間、二酸化炭素CO
2の供給量αを、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1以下で、かつ、電力需要Waが一定量よりも多い場合に供給する二酸化炭素CO
2の供給量よりも増加させる制御を行う。つまり、ステップ118での二酸化炭素CO
2の供給量αは、ステップ104での二酸化炭素CO
2の供給量よりも多い。なお、この場合、酸素O
2の供給量βを0(ゼロ)にし、二酸化炭素CO
2のみを供給するようにしてもよい。そして、ステップ120に移行する。
【0111】
ステップ120では、運転制御部32Dが、燃料電池20の運転終了の指示が有ったか否かを判定する。燃料電池20の運転終了の指示が有ったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ122に移行し、燃料電池20の運転終了の指示が無いと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ104に戻る。なお、一例として、操作者による運転終了の指示を受け付けた場合に、燃料電池20の運転を終了すると判定してもよい。
【0112】
ステップ122では、運転制御部32Dが、第1バルブ41、第2バルブ42、及び第3バルブ43を全閉にし、都市ガスGf、二酸化炭素CO
2、及び酸素O
2の供給を停止する。運転制御部32Dは、燃料電池20の運転を終了する制御を行い、上記一連の処理を終了する。
【0113】
図7は、本実施形態に係る導出部32Aによる処理内容の一例の説明に供する模式図である。
【0114】
図7に示すように、導出部32Aは、入力値群1〜入力値群3が入力される。入力値群1には、気体定数R[J/mol・K]と、改質器22の作動温度T[K]と、ファラデー定数F[C/mol]と、が含まれる。入力値群2には、ギブス自由エネルギーΔG1〜ΔG3の値g1〜g3[J/mol]が含まれる。入力値群3には、都市ガスGfの供給量A[mol/h]と、二酸化炭素CO
2の供給量α[mol/h]と、酸素O
2の供給量β[mol/h]と、が含まれる。
【0115】
そして、導出部32Aは、上記入力値群1〜入力値群3に含まれる各パラメータを用いて、積算炭素析出量Caを導出する。積算炭素析出量Caは、上記式(8)〜式(18)により導出される炭素活量Acを単位時間当たりの炭素析出量Ctに変換し、変換した単位時間当たりの炭素析出量Ctを時間的に積算することで導出される。
【0116】
本実施形態によれば、積算炭素析出量Caが第1閾値TH1よりも多く第2閾値TH2以下である場合に、二酸化炭素CO
2を酸素O
2よりも多く供給する制御を行う。一方、積算炭素析出量Caが第2閾値TH2を超える場合に、酸素O
2を二酸化炭素CO
2よりも多く供給する制御を行う。この制御により、発電効率の低下を抑制しながら、炭素の析出を効果的に抑制することができる。
また、電力需要Waに応じて二酸化炭素CO
2及び酸素O
2の供給量を制御するため、無駄に改質剤を供給することがなく、経済性を向上させることができる。
【0117】
以上、実施形態として燃料電池システム及びその制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、このプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体の形態としてもよい。
【0118】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0119】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。