(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
添加材が、ガラス粒子、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、セラミック、モレキュラーシーブ、ゼオライト、粘土、無機酸化物、鉱物及びポリマーから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語VOxは、好ましくは混合酸化物担体上に分散された+5の酸化状態のバナジウムを有する、バナジウムの酸化物を意味する。バナジウムの主な酸化物は、
酸化バナジウム(II)(一酸化バナジウム)、VO;
酸化バナジウム(III)(三酸化二バナジウム又は三酸化バナジウム)、V
2O
3;
酸化バナジウム(IV)(二酸化バナジウム)、VO
2;及び
酸化バナジウム(V)(五酸化バナジウム)、V
2O
5
である。
【0014】
用語「VOx前駆体」とは、バナジウムを含み、か焼においてバナジウムの酸化物を形成する化合物を意味する。このような化合物の例としては、オキシ硫酸バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、及びオキシ三塩化バナジウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
用語「MoO
3前駆体」とは、モリブデンを含み、か焼においてモリブデンの酸化物を形成する化合物を意味する。このような化合物の例としては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、塩化モリブデン、シュウ酸モリブデン、及び酢酸モリブデンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
用語「WO
3前駆体」とは、タングステンを含み、か焼においてタングステンの酸化物を形成する化合物を意味する。このような化合物の例としては、塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム又は予め製造されたタングステン/チタニアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
用語「TiO
2前駆体」とは、チタンを含み、か焼においてチタンの酸化物を形成する化合物を意味する。このような化合物の例としては、四塩化チタン、三塩化チタン及びオキシ硫酸チタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で用いられる用語「か焼する」又は「か焼」とは、空気中又は酸素中で材料を加熱することを意味する。この定義は、IUPACのか焼の定義と一致するものである。(IUPAC. Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the “Gold Book”). Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997). XMLオンライン修正バージョン: http://goldbook.iupac.org (2006-)、創作者M. Nic, J. Jirat, B. Kosata;改訂者A. Jenkins. ISBN 0-9678550-9-8.doi:10.1351/ goldbook)。金属塩を分解し、触媒内の金属イオンの交換を促進し、触媒を基材に接着させるために、か焼が行われる。か焼に用いられる温度は、か焼される材料中の成分に応じて決まり、一般に、約400℃から約900℃の間でおよそ1から8時間の間、である。幾つかの事例では、か焼は約1200℃までの温度で行われうる。本明細書に記載の方法を含む用途では、か焼は、一般に、約400℃から約700℃の温度でおよそ1から8時間の間、好ましくは約400℃から約650℃の温度でおよそ1から4時間の間、行われる。
【0019】
本明細書で用いられる用語「約」は、おおよそを意味し、その用語が関連する値の、任意選択的に±25%、好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%、又は最も好ましくは±1%の範囲のことを指す。
【0020】
用語「基材」とは、その上に膜が配置される固体材料を意味する。基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であって差し支えなく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、金属、好ましくは鋼、さらに好ましくはステンレス鋼又はFecralloyで構成されうる。
【0021】
用語「膜」とは、薄いコーティング又は被覆を意味する。膜の厚さについては、後述される。
【0022】
用語「再生された物品」とは、使用済み触媒を有する使用済み物品から作製された物品を意味する。
【0023】
用語「使用済み物品」とは、使用済み触媒を含む物品又は有効レベルのSCR活性をもたらさない触媒を含む物品を意味する。物品は、SCR法に使用されたものである必要はなく、不合格又は規格外の物品も含みうる。
【0024】
用語「使用済み触媒」とは、以前に物品上に堆積された触媒であって、触媒のSCR活性が触媒の使用に許容されないレベルまで低下している触媒を意味する。
【0025】
さまざまな数値要素についての1つ又は複数の範囲が提供される場合、その1つ又は複数の範囲は、別記されない限り、その値を含みうる。
【0026】
1つの態様では、本発明は、(a)基材;及び(b)基材上に堆積された膜;を含む物品に関し、ここで、膜はVO
x、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含み、物品は窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。酸化バナジウム、酸化モリブデン又は酸化タングステン、及びチタニアを含む触媒は、SCR法での使用についてよく知られている。同様の触媒及びそれらの調製方法の例は、参照することによりその教示が本明細書に取り込まれる、米国特許第5225390号;同第6054408号、及び同第7842644号を参照されたい。膜は、0.1から5重量%のVO
x、0.5から20重量%のMoO
3又はWO
3、及び75から99.4重量%のTiO
2を含んでもよく、0.5から4重量%のVOx、1から15重量%のMoO
3又はWO
3、及び81から98.5重量%のTiO
2を含みうる。膜は、0.5から2重量%のVOx、1から10重量%のMoO
3又はWO
3、及び88から98.5重量%のTiO
2を含みうる。膜中のVOxの量は、0.1重量%以上5重量%以下でありうる。膜中のVOxの量は、約0.1重量%;約0.2重量%;約0.3重量%;約0.4重量%;約0.5重量%;約0.6重量%;約0.7重量%;約0.8重量%;約0.9重量%;約1.0重量%;約1.5重量%;約2.0重量%;約2.5重量%;約3.0重量%;約3.5重量%;約4.0重量%;約4.5重量%;約5.0重量%でありうる。膜中のMoO
3又はWO
3の量は、0.5重量%以上20重量%以下の範囲でありうる。膜中のMoO
3又はWO
3の量は、約0.5重量%;約0.6重量%;約0.7重量%;約0.8重量%;約0.9重量%;約1重量%;約2重量%;約3重量%;約4重量%;約5重量%;約6重量%;約7重量%;約8重量%;約9重量%;約10重量%;約11重量%;約12重量%;約13重量%;約14重量%;約15重量%;約16重量%;約17重量%;約18重量%;約19重量%;約20重量%でありうる。膜中のTiO
2の量は、75から99.4重量%までの範囲でありうる。膜中のTiO
2の量は、最小で、約75重量%;約80重量%;約85重量%;約90重量%;約91重量%;約92重量%;約93重量%;約94重量%から、最大で、約95重量%;約96重量%;約97重量%;約98重量%;約99重量%;約99.1重量%;約99.2重量%;約99.3重量%;約99.4重量%までの範囲でありうる。これらのVO
x、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2の量は本明細書に記載される本発明の各態様にも適用する。
【0027】
コーティング物品は、一般に、0.1から5mm、さらに好ましくは0.2から2mm、最も好ましくは0.5から1.5mmの範囲の厚さを有する。
【0028】
物品は、約20μm以上、約500μm以下の厚さを有しうる膜を含む。膜の最小の厚さは、包含的に、約20μm、約30μm、約40μm又は約50μmでありうる。膜の最大の厚さは、包含的に、約450μm、約400μm、約350μm、約300μm、約250μm、約200μm、又は約1500μmでありうる。膜は、約50μmから約450μm、約50μmから約400μm、約50μmから約350μm、約50μmから約300μm、約50μmから約250μm、約50μmから約200μm、又は約50μmから約150μmの厚さを有しうる。これらの膜の厚さは本明細書に記載される本発明の各態様にも適用される。
【0029】
基材はモノリス又はプレートの形態であってよく、好ましくはプレートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、金属、好ましくは鋼、さらに好ましくはステンレス鋼又はFecralloyを含む。
【0030】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜、静電コーティング、ディップコーティング膜又は基材上に堆積するのに適した任意の他のタイプの膜でありうる。
【0031】
物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量の触媒、及び(a)350℃から400℃の間の温度でのNOx変換の高められた活性;及び(b)380℃から430℃の間の温度でのSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。好ましくは、本明細書に記載される物品の基材上のコーティングは、プレート触媒上の積層などの他の形態の物品に使用されるものよりも少ない質量の触媒を含む。本発明はいかなる特定の動作理論にも制限されないが;しかしながら、これらの改善は、特に請求項に記載される触媒組成を通常の動作条件下で用いる場合に、NOx還元は物質移動によって制限される一方で、SOxの還元は温度依存性であり、速度論的に制限されるという事実を上手に活用しうるものである。よって、高濃度の活性触媒を有する薄層は、NOxの変換に悪影響を及ぼすことなく、SOxの酸化を成功裏に低減することができる。
【0032】
NOxの変換における触媒の活性は、382℃において、反応器内に含まれる、触媒膜を有する物品上に、NO、NH
3、O
2、H
2O、SO
2及びN
2の混合物を含むガスを通過させ;NOxの濃度変化を測定することによって決定することができる。このような手順は、VGB Guideline for the Testing of DENOX Catalysts, VGB-R 302 He, 2
nd revised edition (1998)に記載されている。NOxの濃度は、FTIRガス分析器を使用して決定することもできる。同様に、SOxの変換における触媒の活性は、400℃において、NOxの変換の測定に用いられるものと同一のタイプの反応器内に含まれる、触媒膜を有する物品上に、O
2、H
2O、SO
2及びN
2の混合物を含むガスを通過させ;SOxの濃度変化を測定することによって決定することができる。SOxの濃度は、EPA法8Aを使用して決定することができる。使用可能な方法の詳細は、下記の実施例においても提供される。
【0033】
好ましい態様では、コーティング物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して少ない質量を有する。コーティング、とりわけスプレーコーティングはまた、基材、例えば金属メッシュの外表面を、触媒が存在しない内部空間を残しつつコーティングすることによって、表面積を増大させる機会も提供する。その結果、積層によって作製された物品と比較して、物品を通るガス状混合物の拡散が促進され、及びNOxの変換が向上する。より軽量なコーティング物品では、二酸化硫黄の酸化の割合も低下する。
【0034】
NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比は、0.22以上0.35以下でありうる。NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比は、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34及び0.35でありうる。好ましくは変換率の比は、少なくとも約0.25から約0.30までである。これらの比はまた、本明細書に記載される本発明の各態様にも適用される。
【0035】
別の態様では、本発明は、(a)基材;及び(b)基材上に堆積された、VOx、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含む膜;を含む物品に関する。好ましくは膜は、0.1から5重量%のVOx又はVOx前駆体、0.5から20重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含む。物品は、か焼の際に、窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。
【0036】
膜は、上述の組成及び厚さを有しうる。
【0037】
基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であって差し支えなく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、金属、好ましくは鋼、さらに好ましくはステンレス鋼又はFecralloyを含む。
【0038】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング、ディップコーティングを含むさまざまな技法によって形成されうる。
【0039】
物品は、か焼の際に、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び、(a)382℃でのNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃でのSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0040】
他の態様では、本発明は選択的触媒還元に有用な再生された物品に関する。通常の使用では、SCRに用いられる物品は、不活性になりうる。不活性化した物品を取り換える代わりに、再活性化することがより望ましい場合がある。最初に担体から粒子を除去し、次いで新しい触媒を適用することによって使用済み物品を再活性化することは、当技術分野で知られている。本発明のこれらの態様に従った物品の触媒活性を再生する方法では、(A)基材;(b)基材の表面上の使用済み触媒;及び(c)VOx、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含む、使用済み触媒上に堆積される膜を含む物品が形成される。好ましくは膜は、0.1から5重量%のVOx又はVOx前駆体、0.5から20重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含む。物品は、か焼の際に、窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。
【0041】
膜は、上述の組成及び厚さを有しうる。
【0042】
基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であって差し支えなく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、金属、好ましくは鋼、さらに好ましくはステンレス鋼又はFecralloyを含む。
【0043】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0044】
物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び、(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0045】
再生された物品は、(a)基材;(b)基材の表面上の使用済み触媒;及び(c)VOx、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含む、使用済み触媒上に堆積される膜を含む。好ましくは膜は、0.1から5重量%のVOx、0.5から20重量%のMoO
3、WO
3、又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2を含む。物品は、窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。
【0046】
膜は、上述したような組成及び厚さを有しうる。
【0047】
基材は、モノリス又はプレートの形態であってよく、好ましくはプレートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材好ましくはステンレス鋼を含む。
【0048】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0049】
物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び、(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、選択的触媒還元活性を有する物品の生産方法に関する。本方法は、(a)コーティングされた基材を形成する工程であって、(i)VOx又はVOx前駆体、(ii)MoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び(iii)TiO
2又はTiO
2前駆体を含む触媒膜を基材上に堆積することによって、コーティングされた基材を形成する工程と、(b)コーティングされた基材をか焼する工程とを含む。膜は、0.1から5重量%のVOx又はVOx前駆体、0.5から20重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含みうる。膜は、0.5から2重量%のVO
x又はVO
x前駆体、1から10重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び88から98.5重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含みうる。膜は、約20μmから約500μmまで、好ましくは約50μmから約150μmまでの厚さを有しうる。基材は、モノリス又はプレートの形態であってよく、好ましくはプレートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、好ましくはステンレス鋼を含む。基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0051】
上述の方法によって調製された物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0052】
コーティングされた基材のか焼は、400℃から1200℃の範囲内、好ましくは400℃から650℃の範囲内の温度で行われうる。
【0053】
触媒、添加剤、及び水を含むウォッシュコート懸濁液は、担体のコーティングに使用するために調製される。ウォッシュコートは、好ましくは、20から60重量%、さらに好ましくは25から50重量%、最も好ましくは30から40重量%の範囲内の固形分を有する。よって、水は、好ましくは40から80重量%、さらに好ましくは50から75重量%、最も好ましくは60から70重量%で存在する。固形分は触媒及び任意の添加剤を含む。通常、固体は、50から99重量%、さらに好ましくは60から95重量%、及び最も好ましくは75から85重量%の触媒を含む。ガラス粒子、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、セラミック、モレキュラーシーブ、ゼオライト、粘土、無機酸化物、鉱物、ポリマー、又は他の材料を含みうる添加剤は、固形分の残部を構成する。好ましくは、固体は、1から50重量%、さらに好ましくは5から40重量%、最も好ましくは15から25重量%の添加剤を含む。
【0054】
ウォッシュコート成分は所望のいずれかの順序で合わされ、均質な懸濁液が作出されるまで混合される。好ましくは、高剪断混合が用いられる。
【0055】
ウォッシュコートが基材に適用される前に、基材は、ウォッシュコート懸濁液でコーティングされるより先に、好ましくは、250℃から1000℃の範囲、さらに好ましくは300℃から900℃、最も好ましくは400℃から800℃の範囲の温度に加熱される。ウォッシュコートは、好ましくはウォッシュコート懸濁液中の水及び任意の他の揮発性材料を蒸発させて基材上に触媒膜を堆積させることが可能なほど熱い基材上に、好ましくは噴霧によって、コーティングされる。
【0056】
膜は、スプレーコーティング、ディップコーティングによって基材に適用することができ、又はコーティングを静電的に適用してもよい。スプレーコーティングは他の分野ではよく知られているが、本明細書に記載のSCR触媒とともに使用することは知られておらず、転造圧力又は押出成形などの他の通常使用される方法と比較した場合に、スプレーコーティングの利点は明らかになっていない。スプレーコーティングは、一般に、触媒、添加剤、及び水を含むウォッシュコート懸濁液を調製することを含む。加圧空気、窒素、又は他のガスは、スプレーガン、噴霧器、又は同様の装置と共に、コーティングされる基材に、触媒懸濁液の薄層をスプレー又はミストとして適用するのに用いられる。スプレーコーティングが加熱された基材に適用される場合、水は蒸発し、触媒膜は基材上に堆積する。スプレーコーティングは、任意の所望の厚さの触媒膜を徐々に作出するために複数回、適用することができる。
【0057】
ディップコーティングは、一般に、触媒、添加剤、及び水を含むウォッシュコート懸濁液を調製することを含む。基材をウォッシュコート懸濁液に浸漬し、その後、取り出して、コーティングされる基材に触媒懸濁液の薄層を適用してもよい。ウォッシュコート層を有する基材をバルクウォッシュコート混合物から取り出し、水を蒸発させるためにウォッシュコートを有する基材を加熱するときに水の蒸発を助けるために、コーティング物品及び/又はウォッシュコート懸濁液を高温で使用して、基材の表面に触媒膜を有する基材を形成することができる。ウォッシュコートを高温で使用する場合、蒸発によって失われた水の量を元に戻すためにウォッシュコートに水を加えない限り、水の蒸発に起因して、組成は経時によって変化しうる。基材をウォッシュコート溶液に複数回浸漬し、浸漬と浸漬の合間に水を除去することによって、基材の表面に触媒膜を有する基材を再コーティングして、所望の厚さの触媒膜を徐々に作出することができる。
【0058】
触媒膜が適用された後、コーティングされた基材は、所望の混合酸化物触媒を生成し、かつ、粒子間結合の生成によって接着性及び凝集性を生成するために、か焼される。コーティングされた基材の加熱により、水分及び任意の他の揮発性材料も除去される。好ましくは、コーティングされた基材は、400℃から1200℃の範囲内の温度、好ましくは450℃から700℃、さらに好ましくは500℃から650℃でか焼される。か焼は、好ましくは乾燥条件下で行われるが、水熱的に、すなわち、ある程度の水分含量の存在下でも行われうる。
【0059】
基材はステンレス鋼から作製され、好ましくは比較的高い幾何学的表面積を有する。基材はメッシュ、シート、プレート、モノリス、ハニカム等の形態をとりうる。好ましい基材はステンレス鋼メッシュのように穿孔される。好ましくは、基材は、フルーティング、積層、及び/又は配置して、積層可能な単位又は群にすることが可能である。基材は好ましくは、コーティングより先にか焼される。例えば、ステンレス鋼メッシュは、コーティングより先に、500℃から1000℃、好ましくは600℃から900℃に、好ましくは炉内で、ホットプレート上で、又は別の方法によって加熱される。基材はまた、グリットブラスト又はサンドブラストなどによって研磨処理されうる。
【0060】
(i)VOx又はVOx前駆体、(ii)MoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び(iii)TiO
2又はTiO
2前駆体を含む触媒膜を基材上に堆積することによってコーティングされた基材を形成する工程(a)は、複数のサブ工程を含みうる。コーティングされた基材は、(ii)MoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び(iii)TiO
2又はTiO
2前駆体を含む触媒膜を基材上に堆積することによって形成されうる。この膜コーティングされた基材は、次に、約650℃から1200℃の間の温度でか焼されうる。か焼された膜は、次に、(i)VOx又はVOx前駆体を含む膜でコーティングされて、か焼された膜上に膜を有する基材が形成されうる。か焼された膜上に膜を有する基材は、約500℃から700℃の間の温度でか焼されうる。
【0061】
本発明の別の態様は、VO
x又はVO
x前駆体、MoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、TiO
2又はTiO
2前駆体を含む膜を基材の表面に備えた物品の生産方法であって、この方法は、0.1から5重量%のVO
x又はVO
x前駆体、0.5から20重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含む触媒膜を基材上に堆積することによってコーティングされた基材を形成することを含む。
【0062】
物品は、上述の組成及び厚さを有しうる膜を含む。
【0063】
基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であって差し支えなく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材 好ましくはステンレス鋼を含む。
【0064】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0065】
物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び、か焼の際に、(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0066】
本発明のさらに別の態様では、使用済みSCR物品から選択的触媒還元触媒を生成する方法は、(a)使用済み物品から微粒子を除去すること;(b)コーティングされた基材を形成することであって、(a)VO
X又はVO
X前駆体、(b)MoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び(c)TiO
2又はTiO
2前駆体を含む触媒膜を基材上に堆積することによって、コーティングされた基材を形成すること;及び(c)コーティングされた基材をか焼することを含む。
【0067】
膜は、0.1から5重量%のVOx又はVOx
前駆体、0.5から20重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び75から99.4重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含みうる。膜は、0.5から2重量%のVOx又はVOx前駆体、1から10重量%のMoO
3、MoO
3前駆体、WO
3、WO
3前駆体又はそれらの混合物、及び88から98.5重量%のTiO
2又はTiO
2前駆体を含みうる。膜は、約20μmから約500μmまで、好ましくは約50μmから約150μmまでの厚さを有しうる。基材は、モノリス又はプレートの形態であってよく、好ましくはプレートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は好ましくはステンレス鋼を含む。基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0068】
上述の方法によって調製された物品は、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0069】
本発明の1つの態様は、選択的触媒還元のための方法に関する。この方法では、窒素酸化物を含むガス状混合物は、上述したように、還元体と本発明のコーティング物品の存在下で、選択的に還元される。窒素酸化物(主にNO及びNO
2)は、還元体が酸化されるとともに、N
2へと還元される。アンモニアが還元体の場合、N
2は酸化生成物でもある。通常、いくらかのNH
3が空気によってNO又はN
2Oへと酸化されるが、理想的には反応生成物は水とN
2のみである。
【0070】
SCR法は、好ましくは、100℃から650℃の範囲内、好ましくは250℃から600℃の範囲内の温度で行われうる。
【0071】
還元体は窒素化合物又は短鎖(C
1−C
8)炭化水素でありうる。好ましくは、還元体は窒素化合物である。適切な窒素化合物としては、アンモニア、ヒドラジン、及び、例えば、尿素、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びギ酸アンモニウムなどのアンモニア前駆体が挙げられる。アンモニアが特に好ましい。アンモニアが還元体の場合、この方法は「NH
3−SCR」法と理解される。
【0072】
窒素酸化物を含むガス状混合物は、N
2、O
2、CO、CO
2、SO
2、HCl及びH
2Oなどの他の非NOxガスに加えて、NO、NO
2、及びN
2Oの1種以上を含みうる。典型的には、排ガスは、1から10,000ppm、さらに典型的には10から1,000ppm、さらになお典型的には50から500ppmのNOを含む。
【0073】
SCR法、とりわけNH
3−SCRの例については、参照することによりその教示が本明細書に取り込まれる、米国特許第4695437号;同第4782039号;同第6713030号;同第7264785号;同第7498010号;及び同第8091351号を参照のこと。
【0074】
ガス状混合物中の窒素酸化物を選択的に還元する方法は、(a)基材;及び(b)基材上に堆積された膜を含む物品の存在下、窒素酸化物を含むガス状混合物を還元体と接触させる工程を含み;ここで、膜は、VOx、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含み、物品は、窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。膜は、0.1から5重量%のVO
x、0.5から20重量%のMoO
3又はWO
3、及び75から99.4重量%のTiO
2を含んでもよく、0.5から4重量%のVOx、1から15重量%のMoO
3又はWO
3、及び81から98.5重量%のTiO
2を含みうる。膜は、0.5から2重量%のVOx、1から10重量%のMoO
3又はWO
3、及び88から98.5重量%のTiO
2を含みうる。物品は、窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する。
【0075】
膜は、上述の組成及び厚さを有しうる。
【0076】
基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であって差し支えなく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は好ましくは穿孔される。基材は、好ましくはステンレス鋼を含む。
【0077】
基材上に堆積される膜は、スプレーコーティング膜又はディップコーティング膜でありうる。
【0078】
物品は、か焼の際に、同様の寸法及び組成の積層物品と比較して、より少ない質量、及び、(a)382℃でのNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃でのSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを有しうる。か焼した物品を使用する、NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比については、先に述べられている。
【0079】
(a)基材;及び(b)基材上に堆積された膜を含む物品の存在下、窒素酸化物を含むガス状混合物を還元体と接触させる工程であって;ここで、膜がVOx、MoO
3又はWO
3、及びTiO
2を含み、物品が窒素酸化物を含むガス中の窒素酸化物の変換を触媒する、接触させる工程は、約100℃から約650℃の範囲の温度、好ましくは約170℃から約460℃の範囲の温度で行われうる。
【0080】
好ましくは、還元体はアンモニアである。
【0081】
本方法は、(a)382℃におけるNOx変換の高められた活性;及び(b)400℃におけるSOx変換の低下された活性のうち、少なくとも1つを提供しうる。NOxの変換率(kNOx)のSOxの変換率(kSOx)に対する比は、先に述べられている。
【0082】
コーティング物品は、SCR用途、特にNH
3−SCRにとって有用である。適切な用途としては、中でも、火力発電所、ガスタービン、石炭火力発電所及び熱電併給プラントなどの固定汚染源、化学産業及び石油化学産業に用いられるプラント及び精製用の加熱器及びボイラー、加熱炉、コークス炉、コーヒー焙煎プラント、地方自治体の廃棄物プラント、及び焼却炉に由来する排ガス処理が挙げられる。コーティング物品は車両用途にも有用であり、中でも注目すべきは、ディーゼル又は他のリーンバーン内燃機関から、又は液化石油ガス又は天然ガスで駆動するエンジンからの排気の処理である。
【0083】
コーティング物品及び再生された物品は、発電所、とりわけ石炭又は高硫黄燃料をエネルギー源として使用するプラントに有用である。発電所は通常、大気圧下、及び高い微粒子環境下において、300℃から420℃の範囲の温度で動作する。石炭の硫黄含量は石炭のタイプに応じて変化し、瀝青炭は0.7から4.0%の硫黄含量を有する。典型的には、排ガスは500から1500ppmの範囲の硫黄含量を有するが、一部の排ガス源では、硫黄含量は2000から3000ppm以上になる。高硫黄含量燃料源は、さらに酸化されてSO
3をもたらすSO
2の量の制御を困難にしうる。発電所は、NOxを除去するためにSCR触媒に依拠しているが、SO
2の酸化の割合を最小限に抑えつつ、NOxを除去する能力を有する触媒を必要としている。本発明のコーティング物品は、より低いkSOx酸化率を可能にすることにより、積層によって作製された同様の物品を改良する。
【0084】
以下の実施例は本発明の単なる例示であり、当業者は本発明の精神及び特許請求の範囲内にある多くのバリエーションを認識するであろう。
【実施例】
【0085】
実施例1
スプレーコーティングしたバナジウム酸/モリブデン酸物品の調製
酸化チタン(アナターゼ)(112g)をメタバナジン酸アンモニウム(130gの水中、3.7091gのNH
4VO
3)の溶液と約60℃で合わせ、懸濁液を得た。ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物(30gの水中、0.8715gの(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O)の溶液を、約40℃で加え、その後、コロイド状シリカ分散液(40%の分散、52.50g)及びアルミナ繊維(7.0g)を加え、懸濁液をよく混合した。得られた水性のウォッシュコート(400g)は35%(112g)の全固形分を有し、そのうち触媒は80%であり、シリカ分散液は15%であり、アルミナ繊維は5%である。触媒は、TiO2上に0.6重量%のVO
x及び2.7重量%のMoO
3を含んでいた。
【0086】
穿孔したステンレス鋼メッシュのストリップ(400mm×25mm×600μm)を750℃で2時間、下向き姿勢でか焼した。メッシュストリップをホットプレート上で180℃に加熱した。ウォッシュコートを、1mmのノズルを有する重力送りのKITE FIAC(UK)圧縮空気スプレーガンから加熱されたメッシュストリップ上に直接適用した。ストリップの両側に5回又は6回の噴霧の後、約2g(1.65から1.92g)の触媒を各ストリップ上に堆積させた。ストリップを500℃で2時間、か焼した。ノギスを使用して測定して、スプレーコーティング物品は1.04mmの合計厚さを有し、触媒膜は0.44mmの厚さを有していた。スプレーコーティングしたストリップは、10から11gの範囲及び平均10.5gの質量を有していた。
【0087】
比較実施例2
積層されたバナジウム酸/モリブデン酸物品の調製
チタニアを熱モノエタノールアミンに溶解したメタバナジン酸アンモニウムの混合物と合わせ、混合物を混練してペーストを形成することによって、TiO
2上に0.6重量%のVOx及び2.7重量%のMoO
3を含んだ触媒を調製した。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物をペーストに直接加え、混合物をさらに混練した。
【0088】
酸化チタン(アナターゼ)(269.47g)をモノエタノールアミン(MEA)(5.1g)中、メタバナジン酸アンモニウム(2.23g)の混合物と合わせ、次いでこの混合物を混練してペースト状にした。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物(9.60g)をペーストに直接加え、混練を続けた。触媒は、TiO
2上に0.6重量%のVO
x及び2.7重量%のMoO
3を含んでいた。
【0089】
次に、ガラス繊維(13.3g)、結合剤(0.78g)、レオロジー改質剤(6.8g)を加え、よく混合した。ペーストをステンレス鋼メッシュ上に押圧し、得られたプレートを560℃の温度で約1時間、か焼した。ノギスを使用して測定して、積層された物品は0.99mmのプレート厚さを有し、触媒膜は0.40mmの厚さを有していた。積層されたプレートの全質量は、約18から約22gの範囲であり、平均して約20gであった。
【0090】
kNOx/kSOxの評価の一般手順
各触媒ストリップを6.5mmの間隔で反応管に垂直に取り付け、合成ガス混合物を反応管に通過させた。NOx試験用の合成ガス混合物は、SOx試験用の合成混合物とは異なっていた。合成ガス混合物の組成は以下に提示される。
【0091】
反応器への入口及び反応器からの出口のガスの組成を、複数の化合物を同時に分析するオンラインFTIR分光法によって決定した。機器の内部の水分の凝縮及び塩の形成を避けるために、試料電池の温度を約230℃に保持した。NOx変換について、NH
3及びNOxの入口及び出口濃度を比較した。凝縮器及びガス洗浄瓶を使用してSO
2及びSO
3を抽出し、G20 Compact Mettler Toledo滴定装置を使用した滴定によって各濃度を決定した。
【0092】
1.
NOx試験:
4つの触媒ストリップを6.5mm間隔で反応管に垂直に取り付け、合成ディーゼル排ガス混合物を反応管に通過させた。反応管への入口における合成排ガス混合物の組成は、約400ppmのNO、400ppmのNH
3、5%のO
2、10%のH
2O、500ppmのSO
2、及び残部のガスはN
2であった。これは、還元体として使用したアンモニアを含んでいる。以下の情報はガス流に関する:全流量:74.0L/分;公称領域速度:55.5m/時間;公称直線速度:1.71m/秒;公称空間速度:15400時間
−1.等温条件下、320℃、350℃、又は382℃においてNOx変換を決定した。
【0093】
2.
SOx試験:
各触媒ストリップを反応管に垂直に取り付け、合成排ガス混合物を反応管に通過させた。反応管への入口におけ排ガス混合物の組成は、0ppmのNO、0ppmのNH
3、5%のO
2、10%のH
2O、500ppmのSO
2、及び残部のガスはN
2であった。以下の情報はガス流に関する: 全流量:16.6L/分;公称領域速度:12.5m/時間;公称直線速度:0.39m/秒;公称空間速度:3470時間
−1。SOx変換を、等温条件下、400℃で決定した。
【0094】
kNOx(382℃)及びkSOx(400℃)の値を以下の速度方程式から算出した:
kSOx=−(Q/V
c)ln(1−X
SO2)
及び
kNOx=−AV ln(1−X
NOx)
式中、Qは全流量(m
3/h)であり、V
cは全触媒容積(m
3)であり、X
SO2はSO
2の部分変換であり、AVは、AV = Q/(V
ca)として定義される領域速度(m/h)であり;ここで式中、aは単位容積あたりの幾何学的表面積(m
2/m
3)であり及びX
NOxはNO
xの部分変換である。kNOxは触媒の幾何学的表面積(m
2/m
3)を考慮して算出され、一方、kSOxは触媒容積(m
3)に基づいて算出される。kNOxの値はm/時間を単位として報告され、kSOxの値は時間
−1を単位として報告される。
【0095】
比較実施例1の積層された物品及び実施例2のスプレーコーティング物品に用いられた触媒は、同一の最終的な組成(TiO
2上、0.6重量%のVO
x、2.7重量%のMoO
3)を有し、両プレートは同様の触媒膜厚さ(約400μm)を有するが、スプレーコーティングしたストリップの方がより小さい質量を有する。表1及び2に示すように、スプレーコーティング物品は、積層された物品と比較した場合、3つの温度すべてにおいて、より高いkNOx値を有し、400℃において、より低い平均kSOx値を有する。その結果として、スプレーコーティング物品のkNOx/kSOx比は、積層された物品のものと比較した場合に、顕著に大きい。
【0096】
増大したkNOx/kSOx比をもたらすことができる触媒は、三酸化硫黄(主な酸性雨成分)の生成量を最小限に抑えつつ、NOxの実現しうる最良の還元を達成するために望ましい。
【0097】
【0098】
【0099】
SOx及びSO
3の上記濃度は、反応器の出口で測定した。
【0100】
kNOx/kSOxの値は382℃で測定したkNOxから算出される。
【0101】
実施例3
スプレーコーティングしたバナジウム酸/タングステン酸物品の調製
メタバナジン酸アンモニウム及び10%のWO
3を含むチタニアを水(約315g)に懸濁し、高剪断条件下でコロイド状シリカ分散液(40%の分散、69.30g)及びアルミナ繊維(9.25g)と合わせた。得られた水性のウォッシュコート(500g)は37%の固形分及び3.35のpHを有する。ウォッシュコート内の固体はTiO
2上に1.7重量%の分散したメタバナジウム酸及び10重量%のWO
3を含む。
【0102】
穿孔したステンレス鋼メッシュの3つのストリップ(400mm×25mm×600μm)を、下向き姿勢で、750℃でか焼した。メッシュストリップをホットプレート上で150℃に加熱した。バナジウム酸含有ウォッシュコートを、スプレーガンから加熱されたメッシュストリップ上に直接適用した。ストリップの両側に5回又は6回の噴霧の後、1.65から1.92gの触媒を各ストリップ上に堆積させた。ストリップを500℃で2時間、か焼した。スプレーコーティング物品は、約0.84mmの厚さを有していた。
【0103】
実施例3のスプレーコーティング物品のNOx還元活性及びSOx酸化活性を、先に説明したように測定し(下記に示すものを除く)、比較実施例2の積層された物品から得られたものと比較した。結果を表3に示す。
NOx試験:
温度:382℃;公称領域速度:74.0m/時間;公称空間速度:15,400時間
−1。
SOx試験:
公称領域速度:16.6m/時間;公称直線速度:0.38m/秒;公称空間速度:3450時間
−1。
【0104】
【0105】
実施例3は、積層された物品と比較した場合に、スプレーコーティングが高い触媒ローディングを可能にすることを実証している。その触媒膜はより薄いが、スプレーコーティング物品は、はるかに高い濃度の活性触媒成分を取り込み、より高いkNOx/kSOx比を生じる。
【0106】
先の実施例は単に例示として意図されており、以下の特許請求の範囲により本発明の範囲が規定されるものである。