特許第6695338号(P6695338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノディテック エービーの特許一覧

特許6695338熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置
<>
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000002
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000003
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000004
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000005
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000006
  • 特許6695338-熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695338
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】熱を電気エネルギーに変換するための熱サイクル内の装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20200511BHJP
   F25B 1/02 20060101ALI20200511BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20200511BHJP
   F01B 11/00 20060101ALI20200511BHJP
   F01B 7/16 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H02K35/02
   F25B1/02 Z
   H02K7/18 Z
   F01B11/00
   F01B7/16
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-530017(P2017-530017)
(86)(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公表番号】特表2018-511284(P2018-511284A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】SE2016050013
(87)【国際公開番号】WO2016118062
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2019年1月9日
(31)【優先権主張番号】1530005-6
(32)【優先日】2015年1月19日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】319006461
【氏名又は名称】ノディテック エービー
【氏名又は名称原語表記】Noditech AB
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】ホリングワース,ハーディー
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−189185(JP,A)
【文献】 特表2003−518358(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02472604(GB,A)
【文献】 国際公開第2013/141805(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/012299(WO,A2)
【文献】 特表2003−533630(JP,A)
【文献】 特開2011−223662(JP,A)
【文献】 特開2004−071540(JP,A)
【文献】 特表2007−505259(JP,A)
【文献】 特表2003−534759(JP,A)
【文献】 特表2010−500856(JP,A)
【文献】 特表2006−504064(JP,A)
【文献】 特開平03−251661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
F01B 7/16
F01B 11/00
F25B 1/02
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱ポンプの熱サイクルで圧縮された作動流体(F1)内の利用可能なある量の熱力学エネルギーを電気エネルギーに変換するよう構成された変換ユニット(CONV)の形態の装置であって、前記変換ユニット(CONV)は、
少なくとも一つの閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)であって、前記シリンダの長手方向に移動可能なピストン(11,22,31,41,51)をそれぞれ収容する閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)を有し、
前記閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)は、前記シリンダに前記作動流体を交互に供給し、膨張した作業流体(F1)を前記シリンダから送出するように順次開放及び閉鎖される弁(V1in、V1out、V4in、V4out)をその両端に有し、前記シリンダ内の前記作動流体は、圧力低下及び温度低下のもとで膨張によって、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動で機械的に移動させ、
前記ピストンの少なくとも一部が磁性体から成るために、前記シリンダ内(10,20,30,40,50)の前記ピストン(11,22,31,41,51)は永久磁化されており、
線型移動の間の前記ピストンの少なくとも磁化された部分をコイル(15,25,35,45,55)が包囲するように、前記コイルが前記シリンダの包被表面に組み込まれて配置され、それにより、前記ピストンが往復運動で移動する際に前記コイル内で電気エネルギーが発生させられ
前記装置は、3つのダブルストロークシリンダ(30,40,50)のシステムが相互接続されて3−シリンダ変換ユニット(CONV)のシステムを構成しており、圧縮器(C)の下流の加圧された作動流体(F1)が前記シリンダのそれぞれの端部の入口に順に供給され、いずれかの前記シリンダ内でピストン(31,41,51)が頂点位置にあるときに、弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)がそれぞれの入口への作動流体の流入を制御するように適合されている、装置。
【請求項2】
前記シリンダ(10,20,30,40,50)が、それぞれの端部にピストンディスク(12,13)を備えるピストンロッド(14,34,44,54)から成るピストン(11,31,41,51)を含むダブルストロークシリンダとして設計され、前記ピストンロッドは前記シリンダ内で往復運動で走行するよう適合され、前記コイルは、前記シリンダの中央に配置され、前記ピストンロッドが通過移動するスルーホールを有し、前記ピストンロッドは磁性を帯びており、前記シリンダの両端に、前記ピストンロッドの移動と同時に作動流体を供給するための入口が設けられている、請求項1の装置。
【請求項3】
前記ピストンが前記シリンダ(10,30,40,50)内を往復運動で移動する時間中、前記コイル(15,35,45,55)とそれぞれの前記ピストンディスク(12,13)の間に形成された空間の間を気体が自由に流れることができるようにオーバーフローチャネル(16,36,46,56)を備える、請求項2の装置。
【請求項4】
前記シリンダが、前記シリンダ内を往復運動で移動するよう配置された自由飛走ピストン(22)であるピストンを有するダブルストロークシリンダとして設計され、前記コイル(21)が前記シリンダ(20)の筐体に組み込まれ、前記ピストン(22)が磁性を帯びており、前記シリンダの両端に、前記ピストンの前記往復運動と同時に作動流体を供給するための入口が設けられている、請求項1の装置。
【請求項5】
前記入口に作動流体を供給する前記弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)が開放時間の間に120度の位相シフトを有して順に開放される、請求項1〜4のいずれかの装置。
【請求項6】
シリンダ(30,40,50)の一端にあるピストン(31,41,51)がピストンストロークを行う時間の間、同じ前記シリンダの他端の出口弁(V1out、V2out、V3out、V4out、V5out、V6out)が膨張した作動流体(F1out)の流出のために開かれる、請求項の装置。
【請求項7】
それぞれの前記ピストン(31,41,51)がそのストローク長Lの距離xだけ移動する圧力段階の間、それぞれの前記入口弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)が開放され、それによって、前記ピストンは膨張段階の間距離L−x移動し、xは、ストローク長Lの1/5程度の大きさである、請求項の装置。
【請求項8】
前記シリンダ(30,40,50)内に配置される前記コイル(35,45,55)内で前記ピストン(31,41,51)の移動中に電圧が誘導され、前記コイル(35,45,55)が3相交流を発生するために互いに連結される、請求項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1の装置を含むことを特徴とする熱サイクルであって、
前記熱サイクルは作動流体(F1)を含み、前記作動流体(F1)は、蒸発器(EVAP)内で作動流体と熱交換する媒体内に含まれる熱を吸収するのに使用され、
前記蒸発器(EVAP)内での冷媒からの熱の吸収後の前記作動流体は、前記圧縮器(C)内で圧縮され、より高い圧力及びより高い温度を与えられ、その後、前記作動流体の少なくとも1つのサブフローが前記変換ユニット(CONV)に供給され、前記変換ユニット内での作動流体の膨張及び温度低下中に前記作動流体に含まれるエネルギーが電気エネルギーに変換され、変換ユニット(CONV)を通過した後の前記作動流体が前記熱サイクルの回路を完成するように前記蒸発器(EVAP)に還流される、熱サイクル。
【請求項10】
前記作動流体によって完成される前記回路に副冷却器(UC)が連結され、前記作動流体が前記蒸発器(EVAP)に還流される前に前記作動流体の圧力及び温度を更に低下するために、前記副冷却器が前記変換ユニット(CONV)から出る流れの中に配置される、請求項の熱サイクル。
【請求項11】
前記副冷却器(UC)から放出された熱は、前記蒸発器(EVAP)を横断する冷媒によって吸収されるように適合される、請求項10の熱サイクル。
【請求項12】
前記流体が前記蒸発器(EVAP)に誘導される前に前記作動流体の圧力及び温度を最適なレベルに適合させるように、膨張バルブ(Exp2)が前記副冷却器(UC)及び前記蒸発器(EVAP)の間に配置される、請求項10の熱サイクル。
【請求項13】
高温かつ加圧された作動流体(F1)が開放されるべき入口弁に適時に案内され、膨張された作動流体を出口弁から適時流出させるように、弁制御装置が予め決定されたスケジュールに従ってそれぞれの弁の開放及び閉鎖を案内する、請求項1〜の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル内で、作動流体が気体又は液体でもよい媒体から熱を吸収し、熱サイクル内の前記熱が少なくとも部分的に熱サイクル内の変換ユニットで放射される、熱サイクル内の装置に関する。本装置は放射された熱を電気エネルギーに変換するよう設計される。
【背景技術】
【0002】
作動流体を圧縮し移送する圧縮器の助けにより作動流体が第1の媒体から第2の媒体に熱を移送するのに使用される熱サイクルを利用する装置は近年ますます広く利用されるようになってきている。例えば、熱ポンプ(ヒートポンプ)は、岩盤、地面又は湖からエネルギーを抽出するために使用される。冷却技術において、熱ポンプは、食料品、住居を冷却するために又は他の目的で使用され、これらの場合、熱サイクル内の熱源を構成する、冷却されるべきものが対象である。以下において、それゆえ、熱ポンプの概念は、意図される使用が加熱であれ、冷却であれ、記述される方法で熱を移送するそれらすべての型の装置に使用されるであろう。
【0003】
熱ポンプにおいては、回路内で循環して圧縮器、凝縮器及び蒸発器を通る流体が作動し、それにより、循環中に流体がそれぞれ熱を放射し、熱を吸収する。ここで熱ポンプは既知の方法により可逆カルノープロセスで作動し、流体は、低温で媒体から熱量Qを受け、より高温で媒体に熱量Qを放射する。このプロセスを有効にするために、以下の定理にしたがって、仕事を供給しなければならない。
W=Q−Q
【0004】
プロセス効率は以下のように記載されても良い。
η=(Q−Q)/Q=1−T/T
ここで、T温度は低熱源、T温度は高温熱源である。
【0005】
通常、熱ポンプに関連して、動作係数COPの概念もまた用いられており、熱ポンプの効率を評価するのに用いられ得る。可逆カルノープロセスについては動作係数は次のように記述される。
COPH,rev=1/(1−T/T)=T/(T−T
これは、高温熱源から低熱源に移動可能な仕事の入力単位あたりの熱量を表し、通常単にCOPと称され、しばしばCOP値と呼ばれる。
【0006】
各種エネルギー価格の地球規模での上昇により、熱ポンプに関わる解決策は過去数十年の間に著しく増加し、熱ポンプをより効率的にするために、様々なオペレータによって多くの開発及び資源が投資されている。今日の熱ポンプでは、動作効率(COP値)は約5を達成している。これは、熱ポンプが消費するエネルギーの5倍を最適には伝えることを意味する。この最適値は、例えば、地熱暖房用の熱ポンプで達成されてもよく、この場合、地熱は、例えば住居暖房用の、温度に対する要求が低い消費者の加熱のための低温熱源として利用される。
【0007】
現在、熱ポンプシステムの効率を更に上げようと非常な努力がなされている。しかしながら、とりわけ、高効率プレート熱交換器、低エネルギー遠心ポンプ、よりエネルギー効率のよいスクロール圧縮器、及び最適化された冷媒混合物(すなわち、熱ポンプサイクルで回路を完成する作動流体)の導入により、上記の高COP値を達成するための技術がすでに洗練されており、更なる高値を達成することは難しいことが証明されていた。更に、最適な方法で熱ポンプのサイクルを制御するための洗練された制御システムを達成するために資源がすでに費やされてきた。したがって、従来の機器を使用した場合、動作効率を数割増やす以外に技術は超えることが困難な限界に達しているように見える。
【0008】
先行技術では、熱ポンプ用回路内で作動流体が用いられる。作動流体は熱ポンプ内を循環中に液体、液体/気体混合物及び気体の異なる状態の間で変態される媒体である。作動流体は気体状態の第1の段階において、低圧p及び低温tの第1の状態から高圧p及び高温tの第2の状態に圧縮されることでサイクルを完了する。その後、作動流体は凝縮器内で熱交換され、ここで、作動流体は熱サイクルに属する第1の媒体によって冷却され、それにより、圧力p及び温度tの第3の状態になる(ただし、p<p<p及びt<t<t)。作動流体はその後蒸発器に送られ、コレクタ回路に属する第2の媒体と蒸発器内で熱交換され、そこでこの第2の媒体は作動流体に熱を放射し、これにより作動流体は拡張し、第1の状態で支配的な圧力及び温度に実質的に戻る。
【0009】
記載された先行技術は、熱を、例えば、岩盤から吸収し、例えば住居用の加熱システムに熱を放出する熱ポンプによって例示されてもよい。このような熱ポンプにおいて、作動流体の圧縮に必要な仕事は通常、ここではパワー/電力Pを熱ポンプ回路に移送すると言われる電動機によって駆動される圧縮器より供給される。サイクルの間、最適な使用において、動作係数(coefficient of performance)が5になるとき、作動流体は凝縮器内において、加熱に利用される熱回路を完成する第1の媒体にパワー5Pを移送する。
【0010】
凝縮器を通過中、作動流体は冷却され、従って上記のように気/液混合の状態になる。この混合物は更にスロットル弁を経て蒸発器を流れ、それによって、混合物は実質的に液体状態となり、その後、液体状態の作動流体は次に気体状態の作動流体に膨張する。蒸発に必要とされる蒸気発生熱は、この場合、作動流体との熱交換のために蒸発器内を循環する第2の媒体から吸収する。この場合、吸収されるパワーは4Pである。第2の媒体はコレクタ回路を完成し、コレクタ回路は、この例では、適切な方法で岩盤から熱を吸収するために岩盤内を巡回するように適合された第2の媒体を含む。先行技術の装置において、圧縮器、凝縮器及び蒸発器は最適な方法で互いに補足し合うように、かつ、当の用途に必要とされるパワーを熱回路に移送するよう設計される。
【0011】
熱ポンプが冷却目的で使用される場合、作動流体は、冷却されるべき1つ又は複数の対象物(例えば、食料品又は室内空気)から直接、ことによると熱交換器を介して、熱を吸収してもよく、したがって、蒸発器の同等物を構成する。熱サイクルにおいて、熱は作動流体からこの場合大気中に放出され、熱交換器では吸収された熱を送出する媒体に放出される。これは、上記の通り凝縮器に相当する装置内で起こる。
【0012】
先行技術として、公開公報WO2013/141805A1を参照する。この公開公報は熱サイクル内での作動流体のエネルギー含量の利用について記載している。前記公報に記載される内容はそのすべてが本特許出願に組み込まれる。熱を電気エネルギーに変換するために上記作動流体からのエネルギー吸収を示す公開公報はWO2005/024189A1である。後者によれば、蒸発器内での冷媒の最大抽出が望ましく、それによって熱サイクル内で更なる凝縮器が使用される。加えて、熱は本明細書に記述される方法では電気エネルギーに変換されない。
【0013】
本発明の目的は、熱を電気エネルギーに変換する際に、熱サイクル内で作動流体内に含まれる熱のより効果的な利用を実証する熱ポンプサイクルを提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、熱ポンプ内の熱サイクル内の装置を提供し、前記装置では、蒸発器内で作動流体と熱交換する媒体に含まれる熱を吸収するのに前記作動流体が使用され、その後、前記蒸発器内で熱を吸収した後の前記作動流体が圧縮器内で圧縮され、より高い圧力及びより高い温度を与えられ、それによりこのプロセス内で熱力学的エネルギーが前記作動流体に供給され、かつ、前記圧縮器の下流の前記作動流体内のエネルギー含量の少なくとも一部を電気エネルギーに変換するように前記装置が設計され、前記装置を通過後に前記作動流体が熱サイクル内の回路を完成する(complete/周回する/一周する)ように蒸発器へと還流される。
【0015】
前記装置は、変換ユニットから構成され、前記変換ユニットは、少なくとも1つの閉鎖シリンダを有し、前記閉鎖シリンダは、前記シリンダの長手方向に移動可能なピストンを順に収容する。好ましくは、1つ以上のそのようなシリンダ、例えば、利用可能なエネルギーの利用をより効率的にするために、3つのシリンダが1つのユニットに相互に連結された装置が使用される。作動流体は、シリンダの入口に配置された制御弁を介してシリンダの端部で交互に前記シリンダに供給される。この位置での作動流体は、高圧及び高温の気体状態で生じるので、この気体は、第1段階で、反対側の、シリンダの他の端部に対して、すなわち、この気体が注入されるシリンダの第一の端部に関して反対の側面に対して内向きの力でピストンの上側を押す。ピストンがシリンダの他の端部に対して移動させられると、ピストンの低い側の正面の空間に存在するすでに膨張した気体が、前記他の端部の出口を介して押し出される。このプロセスの次のシーケンスにおいて、第2の入口で制御弁を介してシリンダの他端に作動流体が供給されるようにシーケンスが変更され、それによって、プロセスが反対方向で繰り返される。
【0016】
熱及び圧力の形の作動流体内のエネルギー含量は、したがって、圧力低下及び温度低下のもと膨張により、ピストンをシリンダ内の線型往復運動で機械的に移動させる。
【0017】
磁石がピストンに組み込まれ、電圧が誘導され得るコイルが、シリンダ内での線型往復運動の間ピストンの磁石を取り囲むようにシリンダに近接させて配置され、それにより、作動流体内のエネルギー含量を電気エネルギーに移転することにより電気エネルギーを発生させる。ここで、ピストンの少なくとも一部分が永久磁石として磁化され、したがって、磁石は、ピストンを包囲するシリンダ内にその全体が収容される。コイルはこのように、ピストンの設計に応じて、シリンダ壁、すなわち、包被表面(envelope surface)内に組み込まれ、被服表面と共に組み込まれ、あるいは、シリンダの包被表面の内側に沿って配置される。この構成では、ピストンロッド等の機械部品はシリンダの外側には存在しない。これは、本明細書に記載される種類のシリンダのエネルギー変換バッテリを形成するブロックに一つ以上のシリンダを配置する場合に有利である。
【0018】
シリンダ内のピストンは異なる方法で設計されてよい。一例として、ピストンは、その端部にピストンディスクが用いられるロッドの形をとる。この場合、ピストンディスク間のピストンロッドは永久磁石である金属から成る。ピストンロッドがコイル内でコイル内の穴を通って往復運動で走行するように、コイルはシリンダの中央部に配置され、それにより、この場合のコイルは包被表面の内側のシリンダ壁に近接されて配置される。他の実施形態において、シリンダの端部間を自由に走行するように設計された自由飛走型ピストン(free-flying piston)が使用される。この変形例では、コイルはシリンダ壁、すなわち、シリンダの包被表面と一体化され、ピストンは永久磁石として構成される。ピストンは一部だけが磁化されてもよい。その端部にディスクを有するピストンの例において、ピストンロッドだけが永久的に磁化される。自由飛走型ピストンの使用において、ピストンはその全体が永久的に磁化され得る。本明細書に記載される変換ユニットは線型高温気体ジェネレータ(発生器)と称される。
【0019】
本発明は、先行技術による熱ポンプ回路の変型形態である。この目的を達成するために、主たる目的は、予定された加熱/冷却条件でプラント内のコレクタ回路からより多くの熱を吸収するように、所定の手段と共に、熱ポンプ回路を配置することである。これを達成するために、凝縮器内で熱回路に必要な電力、あるいは、冷却装置の場合、蒸発器内で吸収されるのに必要な電力を生成するのに必要な大きさよりも大サイズの(overdimensioned/高規格の)圧縮器により多くの電力を移送するように、圧縮器を駆動する電動機(電気モーター)が配置されてもよい。この処置によって、ある作動係数の場合、追加エネルギーが熱ポンプ回路内の作動流体に供給される。熱回路は上記の必要とされる電力用に設計されているので、この熱回路に追加的に供給されたエネルギーをすべて凝縮器に送達することはできない。代わりに、凝縮器のバイパスが凝縮器の出口からさらに蒸発器の入口までに配置される。このバイパスにおいて、本発明による変換ユニットは圧縮器からの気体の流れ中に配置される。圧縮器の外の高圧及び高温の高温気体の流れは別れて、一部は凝縮器、一部は変換ユニットを流れる。変換ユニットを通過し、その後凝縮器を通ることなく圧縮器に戻る一部の流体はここで変換回路と呼ぶ回路内を流れる。凝縮器を有する回路及び変換回路の両方は作動流体によって横断され/横切られ、作動流体はこのようにして両方のサブフロー内で同様の方法で、圧縮され、凝縮され、膨張される。これは、作動流体が既知の方法でカルノーサイクルを完成し、完成した熱ポンプ回路内の作動流体の両サブフローの作動係数が5に達する作動係数が割り当てられ得ることを意味する。変換回路内の変換ユニットを横切る作動流体のサブフローは気/液混合体に凝縮され、それにより凝縮器を通過するサブフロー内での第2の状態から第3の状態への気体の変換と似たプロセスを経る。変換ユニットを高温気体流れが横断し、蒸気内のエネルギーが機械的エネルギーに変換され、この機械的エネルギーは今度は前記コイル及び移動可能な磁石により変換ユニット内に組み込まれる線型のジェネレータを介して電気的エネルギーに変換される。この電気的エネルギーは、圧縮器を駆動する電動機の操作に利用されるか、電気ネットワークへと送出される。
【0020】
本発明の一つ形態に従い、請求項1の特徴的な性質を備えた装置が記述的に例示される。請求項1の装置を利用する熱サイクルは独立した装置請求項10に示される。
【0021】
本発明の更なる実施の形態は各従属項に示される。
【0022】
熱サイクル中に本発明による装置が配置された熱サイクルの例の数は従属項で示される。
【0023】
本発明による変換ユニットの1つの利点は、熱ポンプ回路内の圧力及び熱の過剰という形の従来完全には利用されていなかった資源の利用が可能になることである。さらに、熱ポンプ内でのエネルギー移送という形で所定のエネルギーを生成するために消費される電気エネルーが非常に少ないので、本発明は環境の向上に貢献する。該当する電力領域とは無関係に冷却/加熱技術の全領域内で応用分野が広いので、本発明の可能性は大きい。
【0024】
本発明の更なる有効な実施の形態は本発明の詳細な記載に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1a及び図1bは、本発明の1態様による単一−シリンダ変換ユニットの一例を示す概略図である。
図2図2は、単一−シリンダ変換ユニットの変形形態である。
図3図3は、図1による3つのシリンダが3−シリンダユニット内に相互接続された変換ユニットの一例を示す概念図である。
図4図4は、低い値の熱を高い値の熱及び電気的エネルギーに変換するために熱サイクル内で本発明による変換ユニットが使用される概念図である。
図5図5は、低い値の熱を電気的エネルギーにだけ変換するために変換ユニットが使用される、図4に関して簡素化された熱回路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するため、いくつかの実施の形態が示され、添付の図面について参照される。
【0027】
図1a及び図1bは、ここでは変換ユニットCONVとして表される本発明の一形態による装置の例を示す。変換ユニットCONVは、例えば、熱サイクル内で熱ポンプで圧縮された作動流体内で利用可能なエネルギーを電気エネルギーに変換することを意図される。したがって、作動流体は加圧され、高温を有する。変換ユニットが使用されるこのような熱回路の例が更に説明される。
【0028】
図1a及び図1bは、変換ユニットの主要な簡素で基本的な実施形態を示す。この場合、図1aはシリンダ10を表す。制御弁V1inで、一例では熱サイクル内の作動流体から成る、高温の加圧された気体F1が導入される。シリンダ10内にピストン11が配置される。ピストン11はシリンダの二端部間を往復運動で走行し得る。ピストンのそれぞれの端部において、ピストンディスク12及び13が形成され、これらのピストンディスクはロッド(ここでピストンロッド14と呼ばれる)によって結合される。ピストンディスクにはシリンダ10の壁に対するシールが設けられている。ピストンは単一片で形成されてもよく、ピストンロッド14とピストンロッドの端部に取り付けられるピストンディスク12及び13の形態でもよい。コイル15がピストンロッド14を包囲し、ピストンロッド14に対して気密状態で密封し(シールし)、それにより、シリンダ10の長手方向での走行動作時に、ピストンロッドがコイル15を通って通過するような態様で、コイル15がシリンダ10内に中心的に搭載される。ピストンロッド14は永久磁石である材料から成る。この配置により、ピストンロッド14がコイルを通って移動するとコイル15に電圧が誘導される。
【0029】
気体F1がバルブV1inを通って流れるように制御され、第1のピストンディスク12の外向面に当たると、シリンダ10の他方の端部に向けてピストンが移動させられる(図1aの通り)。第2のピストンディスク13の外向面の正面の空間に存在する気体はその結果、同時開放弁V4outを経てシリンダ10から押し出される。弁V1out及びV4inはプロセスのこの第1段階の間は閉じられる。オーバーフローチャネル16は、二つのピストンディスク12,13間の空間に含まれる気体を、ピストンディスク12,13とコイル15との間に形成される各空間の間で自由に流れ得ることを確実にし、それにより、ピストンの走行中に、これらの二つの空間の間の圧力均一化が提供される。電圧がコイル15に誘導される。ピストン11がシリンダ10の端部の端部位置に到達すると、プロセスが反対方向に進行する(図1b参照)。弁V4in及びV1outが開かれる一方、第2のピストンストロークで弁V1in及びV4outは閉じたままに保持される。上記されたピストン11についての第1のストロークに対応する方法で、ピストン11が今度は第1のストロークに対して反対側の方向に押される。膨張した気体はV1outから放出される。このピストンの反対ストロークの間、新たな電圧インパルスがコイルに発生する。その結果、プロセスは2ストロークプロセスを示し、ピストン11の各ストロークで電圧が発生する。シリンダに送られる気体F1は一例として約20kPaの圧力及び60から120℃の程度のオーダーの温度を有する。シリンダ内での膨張後、気圧は5−6kPaの程度のオーダーに減圧される一方、温度は10から30℃の範囲に低下する。
【0030】
図2は変換ユニットCONV用のシリンダ20の変形形態を図示する。この変形形態において、シリンダー20は、シリンダ20の包被表面に組み込まれたコイル21を備える(コイルは、コイルのワイヤ巻線内のワイヤの断面を表す点で図示される。)。コイルは、例えば、シリンダ壁内に鋳造されてもよい。この変形形態によると、シリンダ20の端部間を往復運動で走行しうる自由飛走(free fly)ピストン22が使用される。この場合、ピストンは永久磁石であるように適合される。この方法において、ピストン22は、シリンダ20内のピストン22のそれぞれのストロークでコイル21に電力を誘導する。図1a及び1bによる代替案で示される方法と対応する方法で、弁V1in、V4out、V4in及びV1outは、図1a及び1bによるシリンダのそれぞれのストロークと同時に開かれ、閉じられる。これは、気体F1をシリンダに流入させ、ピストン22を、第1のストロークで、図中の右端部に対して突き動かし、第2ストロークで、図中のシリンダの左端部に対して突き動かすよう作用する。ピストン22は、ピストンをシリンダの包被表面と垂直なピストン表面に従って走行させる誘導手段を備えてもよい。また、この変形形態では、シリンダ内のそれぞれの方向のピストン22のストロークで、この場合はコイル21に、電圧が誘導される。
【0031】
図3は変換ユニットCONVを示す図であり、この例では上記図1a及び1bに記載されたシリンダ10に基づく3−シリンダユニットが図示される。ここで、シリンダは符号30,40,50で示される。ピストンは符号31,41,51で、コイルは符号35,45,55で示される。作動流体F1(ここでは、図中にF1inと表示する)は、ここでは、各シリンダの第1のストロークの間、左側の導管を介してそれぞれのシリンダ30,40,50に通される。3つのシリンダは順次的に配列されるので、1つの完結したサイクルにおいて、ピストンストロークが、第1のシリンダ30内の右へのピストンストロークの第1のピストン31で開始し、第3のシリンダの第3のピストン51の左へのピストンストロークで終了、その後、シーケンスが再び完結するように、制御弁V1in、V2in、V3in、V4in、V5in及びV6inが120度の位相シフトで順次開放されるように適合される。作動流体F1は、各シリンダの第2のピストンストロークの間、右側の導管を介してそれぞれのシリンダ30,40,50へ通される(ここでは、図においてF1inで表示する)。既に示したように、ピストンの内部空間の間の気圧はオーバーフローチャネル36,46,56を通じて均一化される。排出弁V1out、V2out、V3out、V4out、V5out及びV6outは既に示したようにピストン31,41,51のストロークと同時的に開放及び閉鎖され、それによって、膨張した気体F1は、ピストンストロークに起因して、導管を通じて順を追って排出される(ここで、膨張した作動流体はF1outと表示される)。膨張した気体F1outは、膨張した気体として熱サイクルに戻ってくる気体であり、圧力低下及び温度低下を受ける。
【0032】
入口弁V1in、V2in、V3in、V4in、V5in及びV6inの制御は、本実施形態では、おおよそストローク長の1/5程の間、すなわち、圧力段階の間、シリンダで各入口弁は高温気体F1を散布するように手配される。この後、それぞれの弁は閉じられる。そして、高温気体F1の膨張段階は、ピストン10,20,30,40,50の追加的なストローク長の4/5となるであろう。仮にそれぞれのピストンのストロークが例えば150mmであるとすると、圧力段階はピストンのストロークの最初の30mmであることを意味する。この過程はそれぞれのピストンについてそれぞれの方向で起きる。したがって、図3の3−シリンダユニットのプロセスは、第1の弁V1inが第1の圧力段階中開放されることを意味する。ピストン31が30mm動いたときに、第1の弁は閉まり、その後、第2のピストン41の圧力段階中、すなわち、シリンダ40内を第2のピストンが30mmだけ走行するその期間、第2の弁V2inが開かれる。その後、高温気体F1が6つの入口弁V1in、V2in、V3in、V4in、V5in及びV6inのそれぞれを介して周期的に散布され、各シリンダ30,40,50の両方向のピストンストロークにおいて個々のピストン31,41,51に仕事をするまで、プロセスは対応する態様で繰り返される。
【0033】
一般的に個々の入口弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)は圧力段階の間開放され、その間、個々のピストン31,41,51はそのストローク長Lの距離xだけ移動し、それにより膨張段階中にピストンは距離L−xだけ移動する。ここで、xはストローク長Lの1/5の長さ程度である。
【0034】
シリンダ(30,40,50)の一端でピストンがピストンストロークを行う間、同じシリンダの他端の出口弁V1out、V2out、V3out、V4out、V5out、V6outは膨張した作動流体F1outの流出のために開放される。当然、弁制御装置は、高温で加圧された作業流体が適時に開放されるべき弁に導かれ、膨張した作動流体が適時に出口弁から排出されるように、予め定められたスケジュールに従って、各弁の開放及び閉鎖をガイドする。この弁制御装置は図中には示されていない。
【0035】
ピストン31,41,51がピストンストロークを完了するとき、ピストンは磁化されているので、各ストロークで誘導電圧がコイル35,45,55で順に発生する。ピストンストロークが120度の位相で時間的にずれているので、3相交流電流が自動的に発生するであろう。発生した電圧の利用及び電流曲線の変調はここでは記載されない。
シリンダ30,40,50は、車両用の内燃機関と同じ型のブロックで、例えば、軽金属または他の金属から成るブロックとして形成されてもよく、入口チャネル、出口チャネル及び冷却チャネルがそのブロックに組み込まれる。
【0036】
図4は、本発明による変換ユニットCONVが使用された熱サイクルを示す。この図は変換回路を含む本発明による完全な熱ポンプを示す。冷媒である作動流体F1は、Mainと呼ばれる主回路内、及びTransfと呼ばれる変換回路内を循環する。作動流体は熱ポンプの用途に合わせて選択されてよい。例えば、加熱目的及び冷却プラント用に異なる種類の作動流体が使用されてもよい。一例として、とりわけ、地熱加熱用ポンプで使用されるR407Cを挙げることができる。
【0037】
以下では、岩盤、湖又は地面からのエネルギーの抽出に基づく住居加熱用に使用される熱ポンプについて記述する。圧力、温度又は他のパラメータに関してここに示す例はその種の熱ポンプに関する。これは、仮に本発明による熱ポンプの他の使用が適用可能である場合、パラメータの他の値が適用可能であり得ることを意味する。
【0038】
ここに、熱ポンプ回路を通る経路の間における作動流体のデータの概要が示される。表示された値は例示としてのみ考えられるべきであり、問題となる目的によって変化してよい。図中の地点1で、回路内の作業流体F1は第1の状態である気体状態であり、約2kPaの圧力及び−5℃の温度を有してよい。圧縮器Cを通過する際、気体は高温気体状態である第2の状態(地点2で)に圧縮される。ここで、作動流体の圧力は約22kPaとなり、温度は約120℃に達してよい。圧縮器C内で作動流体を圧縮するエネルギーは、電動機Mを介して電気的エネルギーを供給することによって得られる。もちろん、他の種類の機械的仕事を用いて圧縮器Cにエネルギーを供給することが可能である。
【0039】
ここでは高温気体の形態である作動流体の第1のサブフローは、主回路Main内を凝縮器CONDに向けて移送される。凝縮器は熱交換器として設計され、熱ポンプが住居を加熱する当の実施例では、ラジエータ又は床暖法コイルの形態であり得る熱回路Q内を循環する第1の媒体が凝縮器CONDを横断する。既知の方法では熱回路Qは凝縮器を横断するコイルを有する。第1の媒体は通常、水であり、凝縮器中の高温気体としての作動流体との熱交換で高温気体によって加熱される。加熱された水はVoutで熱回路へと流出し、そして、低下された温度でVinで凝縮器CONDに戻される。したがって、熱回路を利用している間、熱は凝縮器から送出される。作動流体から凝縮器内に送達された熱は、高温気体の温度低下という結果を生じさせ、それゆえ大半が液体に凝縮される。作動流体において気/液状態が発生する。ここでは(地点3で)第3の状態と呼ぶ。この第3の状態において、圧力は約10kPaに達し、温度は約65℃以下に低下するが、すべては凝縮器内のエネルギー出力に依存する。
【0040】
主回路Main内で凝縮器から作動流体は蒸発器EVAPに送られる。蒸発器EVAPもまた熱交換器を構成し、この場合、コレクタ回路Coll内を循環する冷媒である第2の媒体から熱を吸収する。第2の媒体(冷媒)は、本質的に液相の媒体、例えば、スピリット−水溶液(spirit-water solution)の形態をとり、これは、例えば、地熱、湖又は地面ヒーティングの場合、既知の方法で岩盤、湖また地面から熱を吸収するコイル(コレクタ回路)内を循環する。仮に代替例として、蒸発器が冷却回路の一部であるとすると、冷媒は、例えば、冷却されたカウンター等を循環する。冷却回路においては、冷媒は周辺大気でよい。
【0041】
コレクタ回路は蒸発器EVAPを横断し、蒸発器内で主回路Mainのコイルと共に熱交換構造を形成する。主回路Main内の作動流体は、本質的に液相で蒸発器内に入り、ここで熱交換構造内での冷媒との熱交換で冷媒から熱を吸収する。入口Cinで蒸発器に導入された冷媒を介して蒸発器EVAPに熱が供給される。そして、コレクタ回路を介して加えられたこの熱は、本質的に液相で蒸発器に供給された作動流体を蒸発する。蒸発のための蒸気発生熱は冷媒から得られる。このように冷却された冷媒は、コレクタ回路内で熱源(原盤、湖又は地面)に出口Coutで戻される。冷却装置の場合、冷媒は冷却される対象物に戻される。冷媒が空気である空気加熱ポンプの場合、作動流体F1が熱交換バッテリ内で環境大気と熱交換し得るので、コレクタ回路は必要ない。
【0042】
蒸発器EVAPに流入するのを許される気/液状態の作業流体の流量制御は、凝縮器と蒸発器との間に配置され、上述の通り、本質的に液体の状態で、蒸発器EVAPに供給される作動流体の温度及び圧力を低下させる膨張弁Exp1を介して通常制御される。これまで説明された熱ポンプ回路Mainの動作は、原則として先行技術による熱ポンプの機能を示している。この先行技術によれば、膨張弁Exp1の先の回路内にすでに過剰圧力が存在する場合でも圧縮器Cが動作するので、いくらかのエネルギーが失われる。
【0043】
上記の熱サイクルにおいて、本発明による装置を構成する変換ユニットを使用する場合、作動流体の第2のサブフローは、凝縮器CONDを迂回するバイパスラインを通り、それによって、作動流体F1は、圧縮器Cからの作動流体の出口の下流の第1のシャント弁で方向転換される。このサブフローは、このように、変換回路Transf内を流れる。変換回路Transf内のこのサブフロー内に、変換ユニットCONVが配置され、主回路Main内の膨張弁Exp1の下流の蒸発器EVAPの入口に、第2のシャント弁S2を介して主回路Mainにサブフローが戻される前に、サブフローが変換ユニットCONVを横断する。所定の動作の場合、第2のシャント弁S2は、変換ユニット上のサブフローを蒸発器の下流で主回路Mainに戻すために開放されてよい。
【0044】
変換ユニットCONVからの作動流体F1outの流れは蒸発器EVAPの上流で主回路Mainに戻せるにはまだ温度が高すぎかつ圧力が高すぎるので、副冷却器UCが変換ユニットからの流れ内に配置される。凝縮器である副冷却器UCは熱交換機として設計され、この例では、好ましくは蒸発器EVAPのコレクタ回路Collをも横断する冷媒である媒体が副冷却器UCを横断する。したがって、熱は作動流体から副冷却器内の熱交換構造内の冷媒に移され、これは、作動流体が膨張弁Exp2を介して主回路Mainに返送され得るように圧力及び温度が作動流体内で低下することを意味する。この場合、コレクタ回路Coll内の冷媒は入口Cinで副冷却器UC内に導入される。冷媒は蒸発器EVAPの出口Coutで熱ポンプのコレクタ回路Collから送出される。
【0045】
図4は代替案も示し、代替案では、ループAlt内の冷媒が変換ユニットCONVに送られる。変換ユニットCONVは包囲されてもよく、それにより、冷媒が適切な方法で包囲を通って流れてユニットCONVから余剰熱を吸収するよう配される。ループAltが使用されるときは、図中の点i及びkの間にはもはやいかなる接続もない。仮にこの代替例が利用されるなら、変換ユニットはもちろん製造するのがより複雑となるが、作動流体からのエネルギー吸収を最適化することができる。この場合、変換ユニットはコレクタ回路Coll内の冷媒により冷却され、その後、その冷媒は上述した冷却チャネルを通って流れる。これらの冷却チャネルは上述の金属のモーターブロック状の構造に配されてもよい。
【0046】
好ましくは上記の2つ以上のシリンダを備えた、線型の高温−気体ジェネレータである変換ユニットCONVは、第1のシャント弁S1を介して変換ユニットCONVを通って流れるように制御された圧縮器Cからの圧縮された作動流体である高温気体F1の全フロー、あるいは、サブフローから成る高温−気体のフロー(流れ)によって駆動され、それによって、線型の高温−気体ジェネレータは所望の態様で使用されてよい電気エネルギーを送達する。高温−気体ジェネレータは例えば、圧縮器Cの駆動モータMの動作への寄与として使用される電気エネルギーを生成してもよい。駆動モータMに電気エネルギーを送るのに代えて、又は、それと同時に、余剰電気を外部の電気ネットワークへと送出してもよい。従って、回路内で発生する圧力及び温度の低下により熱ポンプ回路内で利用可能な余剰エネルギーに依拠して、かつ、上述の態様によるコレクタ回路の形成及び熱ポンプ回路の設計によって生成されたコレクタ回路からの利用可能なエネルギー出力の増大のために、変換ユニットCONVは、駆動モータMの電気エネルギーの要求を緩和することに寄与する。
【0047】
圧縮器Cはピストン圧縮器、スクロール圧縮器、またはスクリュー圧縮器でよい。蒸発器EVAPは、その順で、間接蒸発器タイプであってもよく、通常プレート熱交換器の形態であってもよい。あるいは、蒸発は、例えば、土地/湖ヒーティング用の蒸発コイル内で直接生じてもよく、又は大気用のフランジバッテリから成ってもよい。好ましくは、圧縮器Cは速度制御dc圧縮器である。
【0048】
本発明による変換ユニットCONVを使用するとき、蒸発は、既存の膨張弁Exp1を介したデマンド制御された追加の作動流体で補足することによって、分岐され、固定された蒸発プロセスを有してもよい。これは、蒸発が有することのできる温度吸収(熱吸収)の値によって制御される膨張弁によって行われる。この方法により、いわゆる液体衝撃(liquid knock)による破壊のリスク無しに圧縮器Cが仕事を行うことができるように最大の蒸発が達成される。
【0049】
図4はまた、制御ユニットCONTRを示す。この制御ユニットは熱ポンプの動作で起こり得る動作ケースを監視する。したがって、制御ユニットCONTRは、圧縮器Cの開始及び停止、シャント弁S1,S2、膨張弁Exp1及びExp2それぞれの制御、変換ユニットCONTRのすべての制御弁を制御し、変換ユニットの発電機から送出される電圧を制御する電圧調節器REGを制御する。熱ポンプの制御は従来技術に属するので、制御操作のモードについてはここで詳細には記載しない。
【0050】
熱ポンプ回路の機能説明
開始に際し、シャント弁S1は、制御ユニットCONTRからの制御により、変換ユニットCONVを通る気体流れのために閉じられる。制御された膨張弁Exp1を用いて圧縮器Cが動作圧力に得ると、制御ユニットCONTRは、各段階において変換回路Transfへの気体流れを制御する弁S1に開放インパルスを送り、それによって変換ユニットCONVは、発生した電圧の送出を調節する電圧調節器REGへの電圧の発生を開始する。高温−気体流れが、本発明の1実施形態によれば熱回路内の加熱要求(あるいは、冷凍装置の場合は蒸発器での冷却要求)に関して好ましくは過大設計された(overdimensioned)速度制御dc圧縮器Cを制御するように、シャント弁S1は電圧調節器REG及び制御ユニットCONTRを介して制御される。変換回路を通るサブフローの圧力は落ちているという事実ゆえに、蒸発器EVAPには制限され、制御され、分流された低圧の気/液流れが直接供給される。本発明による熱ポンプ回路内の圧力及び温度の使用は、いくつかの別の方法で実行されてもよく、そのうちの好ましい実施形態のみがここに記載されている。チャージタンクが熱サイクル内に組み込まれてもよい。このチャージタンク内で、作動中に圧力が積み上げられてよく、それにより、プロセスが通常動作状態に達することができるように圧力が積み上げられるまで最初にしばらく駆動されなければならない圧縮器C無しで(プロセスが通常動作状態に達することができるように圧力が積み上げられるまで最初にしばらく圧縮器Cを駆動させる必要なしに)開始時から回路内のチャージタンク内で利用可能な圧力を使用することにより熱ポンプの敏速な始動が達成され得る。
【0051】
前述のように、ここに記載される熱ポンプ回路は冷却装置として使用されてもよい。これらの適用では、望ましくいは、蒸発器EVAPでの外部媒体、例えば第2の媒体としての空気の冷却であり、この外部媒体は、蒸発器EVAP内で冷却コイルを通り、作動流体が空気から熱を吸収する。加熱目的に関して上記した実施形態のように、回路の設計を制御する凝縮器の熱回路内の電力要求が開始点であるのとは異なり、本明細書に記載の発明が冷却装置内で使用されるのであれば、回路を設計するときは、開始点は、むしろ蒸発器EVAP内での望ましい冷却効果である。
【0052】
変換ユニットCONVが熱ポンプ内の熱サイクル内で電気を生成するためにのみ使用される場合、そのような回路の一例が図5に図示される。熱はいかなる熱回路内でも生成されないので、凝縮器CONDが省略されている違いの他は図4の回路と同じである。代わりに、エネルギー抽出のすべては、Transと呼ばれる変換回路内で行われ、電気エネルギーは変換ユニットCONVで発生される。したがって、弁S1及び膨張弁Exp1は共に省略される。
【0053】
電気エネルギーが上記による熱ポンプの熱サイクルにより冷却装置内で発生される場合、冷媒は、食料品等の対象物の冷却用の回路Coll内を循環する冷媒であろう。冷却装置の場合、空調プラントの問題であれば、冷媒は蒸発器EVAP内で作動流体を蒸発させる空気から成る。これらの場合、コレクタ回路Collに冷媒を移送するコイルは省略されてよい。凝縮器COND内及び副冷却器UC内それぞれを移送される熱は、周辺環境に直接送られてもよく、加熱目的に使用されてもよい。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
熱ポンプの熱サイクルで圧縮された作動流体(F1)内の利用可能なある量の熱力学エネルギーを電気エネルギーに変換するよう構成された変換ユニット(CONV)の形態の装置であって、前記変換ユニット(CONV)は、
少なくとも一つの閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)であって、前記シリンダの長手方向に移動可能なピストン(11,22,31,41,51)をそれぞれ収容する閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)を有し、
前記閉鎖シリンダ(10,20,30,40,50)は、前記シリンダに前記作動流体を交互に供給し、膨張した作業流体(F1)を前記シリンダから送出するように順次開放及び閉鎖される弁(V1in、V1out、V4in、V4out)をその両端に有し、前記シリンダ内の前記作動流体は、圧力低下及び温度低下のもとで膨張によって、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動で機械的に移動させ、
前記ピストンの少なくとも一部が磁性体から成るために、前記シリンダ内(10,20,30,40,50)の前記ピストン(11,22,31,41,51)は永久磁化されており、
線型移動の間の前記ピストンの少なくとも磁化された部分をコイル(15,25,35,45,55)が包囲するように、前記コイルが前記シリンダの包被表面に組み込まれて配置され、それにより、前記ピストンが往復運動で移動する際に前記コイル内で電気エネルギーが発生させられる、
ことを特徴とする装置。
<請求項2>
前記シリンダ(10,20,30,40,50)が、それぞれの端部にピストンディスク(12,13)を備えるピストンロッド(14,34,44,54)から成るピストン(11,31,41,51)を含むダブルストロークシリンダとして設計され、前記ピストンロッドは前記シリンダ内で往復運動で走行するよう適合され、前記コイルは、前記シリンダの中央に配置され、前記ピストンロッドが通過移動するスルーホールを有し、前記ピストンロッドは磁性を帯びており、前記シリンダの両端に、前記ピストンロッドの移動と同時に作動流体を供給するための入口が設けられている、請求項1の装置。
<請求項3>
前記ピストンが前記シリンダ(10,30,40,50)内を往復運動で移動する時間中、前記コイル(15,35,45,55)とそれぞれの前記ピストンディスク(12,13)の間に形成された空間の間を気体が自由に流れることができるようにオーバーフローチャネル(16,36,46,56)を備える、請求項2の装置。
<請求項4>
前記シリンダが、前記シリンダ内を往復運動で移動するよう配置された自由飛走ピストン(22)を有するダブルストロークシリンダとして設計され、前記コイル(21)が前記シリンダ(20)の筐体に組み込まれ、前記ピストン(22)が磁性を帯びており、前記シリンダの両端に、前記ピストンの前記往復運動と同時に作動流体を供給するための入口が設けられている、請求項1の装置。
<請求項5>
3つのダブルストロークシリンダ(30,40,50)のシステムが相互接続されて3−シリンダ変換ユニット(CONV)を構成しており、圧縮器(C)の下流の加圧された作動流体(F1)が前記シリンダのそれぞれの端部の前記入口に順に供給され、いずれかの前記シリンダ内でピストン(31,41,51)が頂点位置にあるときに、弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)がそれぞれの入口への作動流体の流入を制御するように適合されている、請求項2〜4のいずれかに記載の装置。
<請求項6>
前記入口に作動流体を供給する前記弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)が開放時間の間に120度の位相シフトを有して順に開放される、請求項5の装置。
<請求項7>
シリンダ(30,40,50)の一端にあるピストン(31,41,51)がピストンストロークを行う時間の間、同じ前記シリンダの他端の出口弁(V1out、V2out、V3out、V4out、V5out、V6out)が膨張した作動流体(F1out)の流出のために開かれる、請求項6の装置。
<請求項8>
それぞれの前記ピストン(31,41,51)がそのストローク長Lの距離xだけ移動する圧力段階の間、それぞれの前記入口弁(V1in、V2in、V3in、V4in、V5in、V6in)が開放され、それによって、前記ピストンは膨張段階の間距離L−x移動し、xは、ストローク長Lの1/5程度の大きさである、請求項6の装置。
<請求項9>
前記シリンダ(30,40,50)内に配置される前記コイル(35,45,55)内で前記ピストン(31,41,51)の移動中に電圧が誘導され、前記コイル(35,45,55)が3相交流を発生するために互いに連結される、請求項6に記載の装置。
<請求項10>
請求項1の変換ユニット(CONV)を含むことを特徴とする熱サイクルであって、
前記熱サイクルは作動流体(F1)を含み、前記作動流体(F1)は、蒸発器(EVAP)内で作動流体と熱交換する媒体内に含まれる熱を吸収するのに使用され、
前記蒸発器(EVAP)内での冷媒からの熱の吸収後の前記作動流体は、圧縮器(C)内で圧縮され、より高い圧力及びより高い温度を与えられ、その後、前記作動流体の少なくとも1つのサブフローが前記変換ユニット(CONV)に供給され、前記変換ユニット内での作動流体の膨張及び温度低下中に前記作動流体に含まれるエネルギーが電気エネルギーに変換され、変換ユニット(CONV)を通過した後の前記作動流体が前記熱サイクルの回路を完成するように前記蒸発器(EVAP)に還流される、熱サイクル。
<請求項11>
前記作動流体によって完成される前記回路に副冷却器(UC)が連結され、前記作動流体が前記蒸発器(EVAP)に還流される前に前記作動流体の圧力及び温度を更に低下するために、前記副冷却器が前記変換ユニット(CONV)から出る流れの中に配置される、請求項10の熱サイクル。
<請求項12>
前記副冷却器(UC)から放出された熱は、前記蒸発器(EVAP)を横断する冷媒によって吸収されるように適合される、請求項11の熱サイクル。
<請求項13>
前記流体が前記蒸発器(EVAP)に誘導される前に前記作動流体の圧力及び温度を最適なレベルに適合させるように、膨張バルブ(Exp2)が前記副冷却器(UC)及び前記蒸発器(EVAP)の間に配置される、請求項11の熱サイクル。
<請求項14>
高温かつ加圧された作動流体(F1)が開放されるべき入口弁に適時に案内され、膨張された作動流体を出口弁から適時流出させるように、弁制御装置が予め決定されたスケジュールに従ってそれぞれの弁の開放及び閉鎖を案内する、請求項1〜9の装置。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5