特許第6695428号(P6695428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6695428金属基材用テクスチャー加工されたワークロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695428
(24)【登録日】2020年4月23日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】金属基材用テクスチャー加工されたワークロール
(51)【国際特許分類】
   B21B 27/00 20060101AFI20200511BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20200511BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20200511BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20200511BHJP
   B23H 9/04 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B21B27/00 B
   B21B3/00 J
   B21B1/22 L
   B24B1/00 Z
   B23H9/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-529617(P2018-529617)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公表番号】特表2019-507014(P2019-507014A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】US2016062087
(87)【国際公開番号】WO2017099957
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】62/265,692
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】レナート・ルフィノ・ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・カルバーリョ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーノ・マヌエル・ポボア・フェレイラ
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−057296(JP,A)
【文献】 特公昭56−013565(JP,B1)
【文献】 特開2005−246432(JP,A)
【文献】 特開平10−099905(JP,A)
【文献】 特開2003−053401(JP,A)
【文献】 特開2002−045906(JP,A)
【文献】 特開平07−039918(JP,A)
【文献】 特開2004−223567(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0272466(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0122327(US,A1)
【文献】 特開2010−168552(JP,A)
【文献】 米国特許第3619881(US,A)
【文献】 特開平04−228210(JP,A)
【文献】 特表2012−521287(JP,A)
【文献】 米国特許第3796361(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00−35/14
B21B 1/00−11/00
B21B 47/00−99/00
B23H 1/00−11/00
B24B 1/00−1/04
B24B 9/00−19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークロールをテクスチャー加工する方法であって、
未仕上げのワークロール表面を研削して、0.30μm〜0.50μmのRa値を有する研削ワークロール表面を形成することと、
前記研削されたワークロール表面を放電テクスチャー加工して、0.50μm〜0.8μmのRa値を有する放電テクスチャー加工されたワークロール表面を形成することと、
前記放電テクスチャー加工されたワークロール表面を研磨して、金属基材上に光沢仕上げを施すための研磨されたワークロール表面を形成することであって、研磨されたワークロールが0.30μm〜0.70μmのRa値を有すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記放電テクスチャー加工されたワークロール表面は、最小の異方性の等方性表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ワークロールをテクスチャー加工する方法であって、
未仕上げのワークロール表面を研削して、0.30μm〜0.50μmのRa値を有する研削ワークロール表面を形成することと、
前記研削されたワークロール表面を放電テクスチャー加工して、0.50μm〜0.8μmのRa値を有する放電テクスチャー加工されたワークロール表面を形成することと、
前記放電テクスチャー加工されたワークロール表面を研磨して、金属基材上に光沢仕上げを施すための研磨されたワークロール表面を形成することであって、研磨されたワークロールが0.30μm〜0.70μmのRa値を有することと
前記研磨されたワークロールを冷間圧延機に挿入することと、
前記金属基材上に前記光沢仕上げを施すための前記研磨されたワークロールで前記金属基材を冷間圧延することと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記金属基材は、アルミニウムシート又はアルミニウム合金シートである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,692号の優先権を主張し、この出願の全ては参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概ね金属圧延用ワークロールに関する。より具体的には、本開示は、圧延中に金属基材上に光沢仕上げを施すためのテクスチャー加工されたワークロール、及び金属基材上に光沢仕上げを施すためのワークロールにテクスチャー加工する方法に関するが、これらに限定するものではない。
【背景技術】
【0003】
金属圧延を用いて、原料、例えばインゴット又はより厚い金属ストリップから金属ストリップを形成することができる。金属圧延は、スタンド圧延機の一組のワークロールの間を通過する金属ストリップ又は基材(例えば、アルミニウム又は他の金属材料)に作用し、一組のワークロールが圧力を印加して金属ストリップの厚さを減少させる。
【0004】
金属基材を圧延するために使用されるワークロールのテクスチャーは、金属圧延操作の実施及び圧延される金属基材の最終材料特性において重要な要素となり得る。例えば、細かく研磨された又は平滑なワークロールは、圧延作業中に金属ストリップを掴むのに十分な摩擦を提供できない場合がある。逆に、比較的粗いテクスチャーを有するワークロールは、金属ストリップへの望ましくない表面仕上げを転写することを避けるために、及びワークロール上の粗い表面テクスチャーの突起が加工中に破断する傾向による許容できない程度の破片を生成することを避けるために、金属ストラップの厚さの減少は小さく抑えられる。ワークロールの表面仕上げ及び/又は表面テクスチャーを変更するために、様々な技術を使用することができる。多くのワークロールをテクスチャー加工するプロセスは、表面粗さを大幅に増加させ圧延加工の品質及び効率に影響を与え得る。金属ストリップ上に所望のテクスチャーを付与するためにワークロールをテクスチャー加工することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0005】
用語の具体的表現及び同様の用語は、この開示の主題及び以下の特許請求の範囲の全てを広く参照することが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定するものでもなく、以下の特許請求の範囲の意味又は範囲を限定するものでもないと理解すべきである。本明細書で対象にする本開示の実施形態は、この概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって規定される。この概要は、本開示の様々な態様の概要を概観するものであり、以下の発明を実施するための形態の節で更に説明されるいくつかの概念を紹介する。概要は、特許請求の範囲に記載にされる主題の重要な、又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に記載にされる主題の範囲を決定するために単独で使用されることを意図するものでもない。主題は、本開示の明細書全体、任意の又は全ての図面、並びに各請求項の適切な部分を参照することにより、理解されるべきである。
【0006】
本開示のいくつかの態様及び特徴は、圧延プロセス中に金属基材(例えば、金属シート又は金属プレート)上に等方性の光沢仕上げを施すためのワークロールをテクスチャー加工すること、及び金属基材上に等方性の光沢仕上げを施すためのテクスチャー加工されたワークロールに関する。いくつかの実施例では、金属基材は、アルミニウムシート又はアルミニウム合金シートとすることができる。光沢仕上げは、金属基材の表面上にわずかに艶消しの外観を有する比較的均一な光沢を指すことができる。光沢仕上げされた金属基材は、均一な光沢と、最小限の異方性を有する等方性の表面(例えば、全方向で実質的に同一な表面)とを有することができる。種々の技術を使用して、金属基材上に光沢仕上げを施すためのワークロール(例えば、冷間圧延機ワークロール)をテクスチャー加工することができる。例えば、ワークロールを研削若しくは研磨し、及び/又は放電テクスチャー加工(「EDT」)技術により、ワークロールをテクスチャー加工することができる。いくつかの実施例では、技術を組み合わせて使用することにより金属基材の表面上に光沢仕上げを施すためのワークロールをテクスチャー加工することができる。
【0007】
1つの非限定的な例によれば、ワークロールの表面を研削することによりワークロールをテクスチャー加工し、表面の粗さを減少させ、研削されたワークロール表面を形成することができる。研削されたワークロール表面は、約0.2μm〜約0.5μmの表面粗さ(Ra)値を有することができる。別の例では、研削されたワークロールは約0.3μm〜約0.5μmのRa値を有することができる。いくつかの実施例では、研削されたワークロール表面は、約−1.5〜約0.5の歪度(Rsk)値を有することができる。その後、様々なEDT技術を使用して研削されたワークロール表面をテクスチャー加工してEDTワークロール表面を形成することができる。EDTワークロール表面は、約0.5μm〜約1.0μmのRa値を有することができる。別の実施例では、EDTワークロール表面は、約0.5μm〜約0.8μmのRa値を有することができる。EDTワークロール表面は、約−1.0〜約1.0のRsk値を有することができる。EDTワークロール表面はまた、約80/cm〜約140/cmのピークカウント(Pc)を有してもよい。いくつかの実施例では、EDTワークロール表面は、最小限の異方性を有する等方性表面であることができる。EDTワークロール表面を研磨して、EDTワークロール表面の粗さを低減し、研磨されたワークロール表面を形成することができる。研磨されたワークロール表面は、約0.3μm〜約0.7μmのRa値を有することができる。研磨されたワークロール表面はまた、約−3.0〜約0.0のRsk値を有することができる。研磨されたワークロール表面はまた、約100/cm〜約180/cmのPcを有することができる。
【0008】
いくつかの実施例では、約0.3μm〜約0.7μmのRa値を有する研磨されたワークロール表面を使用して、金属基材上に光沢仕上げを施すことができる。1つの例示的な用途では、約0.3μm〜約0.7μmのRa値を有する研磨されたワークロール表面を有するワークロールを冷間圧延機に使用して、金属基材を冷間圧延して金属基材上に光沢仕上げを施すことができる。約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有する研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材は、例えば高圧に対する抵抗の増大、摩擦の低減、又は潤滑剤保持の増大を含む特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の例示的な実施例は、以下の図面を参照して以下に詳細に説明される。
【0010】
図1A】一実施例による研削されたワークロール表面の概略斜視図である。
図1B図1Aの研削されたワークロール表面の粗さを示すグラフである。
図1C】放電テクスチャー加工後の図1Aの研削されたワークロール表面の概略斜視図である。
図1D】放電テクスチャー加工後のワークロール表面の粗さを示すグラフである。
図1E】研磨されている図1Cのワークロール表面の表面テクスチャーの概略斜視図である。
図1F】研磨後の図1Eのワークロール表面の概略斜視図である。
図1G図1Fのワークロール表面の粗さを示すグラフである。
図2】本開示の一実施例による、金属シートを圧延するための金属ワークロール上の設計された表面仕上げの顕微鏡写真である。
図3】本開示の一実施例による、金属基材上に光沢仕上げを施すために使用することができるワークロールをテクスチャー加工するためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施例による、研磨されたワークロールを用いて金属基材上に光沢仕上げを施すためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の主題は、法的要件を満たすために、本明細書では具体的に説明されているが、この説明は必ずしも特許請求の範囲の限定を意図するものではない。特許請求の範囲に記載される主題は、他の方法で具現化されてもよく、異なる要素又は工程を含んでもよく、及び他の既存又は将来の技術と共に使用されてもよい。この説明は、個々の過程の順序又は要素の配置が明示的に記載されている場合を除いて、様々な過程の間、又は様々な要素の間の、特定の順序又は配置を意味するものとして解釈されるべきではない。
【0012】
本開示のいくつかの態様及び特徴は、金属基材、限定されるものではないが、例えば缶を製造する、又は他の製品若しくは用途に使用するアルミニウムシート上に、光沢仕上げを付与するためのワークロール上に設計されたテクスチャー又は特定のテクスチャーを施すことにより、ワークロールをテクスチャー加工することに関する。光沢仕上げは、表面がわずかに艶消しの外観を有する比較的均一な光沢を有するような、金属基材の表面上の仕上げを指してもよい。光沢仕上げされたワークロールの表面は、明るいシート仕上げ(例えば、箔状仕上げ)の外観と標準的な缶材料仕上げの外観との中間の外観を有することができる。別の実施例では、光沢仕上げは、金属基材の表面上の「サテン光沢」外観を指してもよい。更に別の実施例では、光沢仕上げされた金属基材の表面は等方性であり、従来の圧延グリット仕上げに比べて異方性が最小である。
【0013】
いくつかの実施例では、金属基材上に光沢仕上げを施すために、ワークロール(例えば、冷間圧延機ワークロール)をテクスチャー加工することができる。例えば、放電テクスチャー加工(「EDT」)技術を使用してワークロールの表面を研削することによりワークロールの表面をテクスチャー加工し、そしてワークロールの表面を研磨して最終的なワークロールに設計された表面テクスチャーを施す(例えば、特定の又は所望の表面テクスチャーを有するワークロール)ことにより、ワークロールはテクスチャー加工される。EDTを使用してワークロールをテクスチャー加工した後にワークロールの表面を研磨することにより、EDT表面のピーク上部を滑らかにすることができる。いくつかの実施例では、金属基材上に光沢仕上げを付与するために上記のようにテクスチャー加工されたワークロールを、EDT技術を使用した後にワークロールの表面粗さ(Ra)値が約0.3μm〜約0.7μmになるまで研磨することができる。
【0014】
金属基材上に光沢仕上げを施すためのワークロールを製造する例示的な方法は、ワークロールの表面のRa値が、約0.20μm〜約0.50μmになるまで、未仕上げのワークロール(例えば、ひっかき傷や他の欠陥を含まない平滑なワークロール)を研削する工程を含むことができる。別の実施例では、方法は、ワークロールの表面のRa値が約0.30μm〜約0.50μmになるまで未仕上げのワークロールを研削することを含むことができる。未仕上げのワークロールを研削することは、ワークロールの表面のRsk値が約−1.5〜約0.5になるまで、未仕上げのワークロールを研削することを含むこともできる。次に、ワークロールは、放電テクスチャー加工によって更に処理され、最小異方性及び約0.50μm〜約1.0μmのRa値を有する等方性表面テクスチャーを製造することができる。別の実施例では、ワークロールは、放電テクスチャー加工によって加工され、最小異方性及び約0.50μm〜約0.8μmのRa値を有する等方性表面テテクスチャーを製造することができる。等方性表面テクスチャーはまた、約−1.0〜約1.0のRsk値又は約80/cm〜約140/cmのPcを有することができる。等方性表面テクスチャーを有するワークロールを研磨して、約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有するワークロール表面を形成することができる。ワークロール表面のテクスチャーはまた、約−3.0〜約0.0のRsk値、又は約100/cm〜約180/cmのPcを有することができる。
【0015】
金属基材上に等方性の光沢仕上げを施す別の例示的な方法は、約0.20μm〜約0.50μmのRa値の表面テクスチャーを有する研削されたワークロール(例えば、約0.30μm〜約0.50μmのRa値の表面テクスチャーを有する研削されたワークロール)を形成するために、未仕上げのワークロールを研削することと、約0.50μm〜約1.0μmのRa値(例えば、約0.50μm〜約0.8μmのRa値)を有する等方性のワークロール表面テクスチャーを作製するために研削されたワークロールを放電テクスチャー加工することと、約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有する設計された又は特定の表面テクスチャーを有する仕上げワークロールを製造するために、等方性のワークロール表面テクスチャーを研磨することと、仕上げワークロールを冷間圧延機に挿入することと、金属基材上に等方性の光沢仕上げを施すために仕上げワークロールで金属基材を冷間圧延することと、を含む。
【0016】
約0.30μm〜約0.70μmのRa値の表面テクスチャーを有するワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材上に強化された特性を付与することができる。例えば、約0.30μm〜約0.70μmのRa値の表面テクスチャー加工されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、等方性の光沢仕上げを金属基材上に施すことができる。また、表面テクスチャー加工されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、高圧力に対する金属基材の抵抗が改善され、早期破損せずにより高い変形を許容することができる。別の実施例では、表面テクスチャー加工されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の摩擦係数を低下させることができる。更に別の実施例では、表面テクスチャー加工されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の潤滑剤保持性を改善することができ、これにより金属基材を飲料缶又は他の高度に形成された金属製品に更に加工するために後で必要とされる潤滑剤の量を低減させることができる。更に別の実施例では、表面テクスチャー加工されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材がより一貫した摩擦特性を有し、絞り加工、深絞り加工、及び他の高度に形成する金属成形プロセス中の金属性能を改善する。いくつかの実施例では、設計された表面テクスチャーワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の成形性が改善され、それにより金属基材に後続の製造又は処理中に、問題、例えば製品の割れを起こしにくくさせることができる。
【0017】
特に、これらの利点により、金属シート又は金属プレートの形態であることができる金属基材を、上記のような表面テクスチャー加工されたワークロールを用いて冷間圧延し、更に飲料缶、飲料缶部品(例えば、缶本体、缶端部、又は缶タブ)、飲料ボトル、他の食品容器、及び/又は他の高度に形成された金属製品に、改善された容易さと効率で加工することができる。例えば、本明細書に記載されるような表面テクスチャー加工されたワークロールによって付与される等方性光沢表面を有する金属基材の1つ又は複数の改善されたトライボロジー特性は、金属シート若しくは金属プレートの摩擦特性が材料の異なるバッチ間で、及び/又は金属シート若しくは金属プレートの同じストリップでより一貫性があるので、より速い加工及びより安定した動作条件が可能になる。更に、金属基材の表面の改善された潤滑を保持する能力は、加工中の摩擦を更に低減し、金属基材に余分な潤滑剤を塗布する必要性を低減し得る。いくつかの実施例では、金属シート又は金属プレートの摩擦の品質及び一貫性を改善すると、後続の成形動作中での金属のかじり、耳、及びしわが減少される、より速い加工をもたらすことができる。
【0018】
これらの例示的な実施例は、本明細書で論じられる一般的な主題を読者に紹介するために挙げられ、開示される概念の範囲を限定するものではない。以下の節では、図面を参照して様々な追加の特徴及び例を説明するが、図面中の同様の数字は同様の要素を示し、例示的な例を説明するのに異方性の記述を使用するが、例示的な実施例のように、本開示を限定するために使用されるべきではない。
【0019】
図1A及び図1Bは、それぞれ、研削されたワークロール表面の概略斜視図及び研削されたワークロール表面の粗さを示すグラフである。ワークロールは、最初に、設計されたテクスチャー表面の形成に支障をきたす可能性がある跡、ひっかき傷、及び/又は他の欠陥がない標準的な表面仕上げで始まり、約0.2μm〜約0.5μmのRa値(例えば、約0.3μm〜約0.5μmのRa値)を有する表面仕上げを得るように、(例えば、グリットホイールを使用して)研削されることができる。ワークロールを研削した後、ワークロールの表面は、ピーク及び谷からなり、並びに異方性であることができる。
【0020】
図1C及び図1Dは、それぞれ、図1A図1Bのワークロール表面の放電テクスチャー加工(EDT)後の概略斜視図及びEDTワークロール表面の表面粗さを示すグラフである。図1Cに示すように、EDTプロセス後のワークロールのテクスチャーは、比較的均一な、等方性の一連の方向の偏りのない円錐形のピークである。いくつかの実施例では、ワークロールをテクスチャー加工するためにEDTプロセスを使用することにより、図1Aの研削されたテクスチャー上で仕上げを行い、方向の偏りのない等方性分布を有する約0.5μm〜約1.0μmのRa値を有するワークロール上にテクスチャーを製造する。別の実施例では、ワークロールをテクスチャー加工するためにEDTプロセスを使用することにより、約0.5μm〜約0.8μmのRa値を有するテクスチャーをワークロール上に製造することができる。いくつかの実施例では、EDTプロセスで製造されるワークロール上のテクスチャーは、間隔も、方向も、テクスチャー形状も均一ではない場合がある。むしろ、EDTプロセスによって製造されるテクスチャーは、巨視的なレベルで、EDTテクスチャーが方向の偏りのない等方性であるという程度にまでランダム化されることができる。この段階では、ワークロールのテクスチャーは、金属シート又は金属プレートを比較的大幅に厚さを減少させて圧延するのには適し得ない、比較的鋭いギザギザのピークを有するものとして特徴付けられることができる。このテクスチャーの鋭いピークは比較的弱く、厚さが約5%を超えて減少すると破損し、金属シート又は金属プレート上に破片の蓄積をもたらすことがある。
【0021】
図1Eは、上記のようにEDTプロセスによって製造されるテクスチャーのピークを除去する最終的な研磨工程を受けるワークロール表面の概略斜視図である。図1Eに示す実施例では、図1Dに示されるワークロールのEDTテクスチャーの比較的細く弱いピークが研磨中に破損して放棄される可能性がある。
【0022】
図1F及び図1Gは、それぞれ、設計された表面テクスチャーを形成するために研磨した後のワークロール表面の概略斜視図及び研磨されたワークロール表面の粗さを示すグラフである。図1Fに示す実施例では、ワークロール表面を研磨することにより、EDTテクスチャーの鋭いピークを除去することができ、それによりワークロールの表面テクスチャーがより平坦な頂部を有し、約0.3μm〜約0.7μmのより低いRa値を有する結果となる。更に、図1F及び図1Gに示される表面テクスチャーは、より多くの負の歪に向かう傾向があり、表面テクスチャーが比較的深いくぼみ及びより平坦なピークによって特徴付けられ得ることを示す。いくつかの実施例では、この表面テクスチャーは、金属シート又は金属プレートを5%を超えて厚さを減少させ圧延することに、よりよく適応することができる。設計された表面テクスチャーの平坦なピークは、より耐久性があり、破壊や破片の蓄積なしに、より大きな圧力及び圧延効率を可能にする。
【0023】
図2は、金属シートを圧延するための金属ワークロール上の設計された表面仕上げの顕微鏡写真である。いくつかの実施例では、金属ワークロール上の設計された表面仕上げは、約0.3μm〜約0.7μmのRa値の表面テクスチャーを有する金属ワークロール(例えば、図1F及び図1Gに関して上述した表面テクスチャーを有する研磨されたワークロール)を指すことができる。
【0024】
いくつかの実施例では、金属基材上に等方性の光沢仕上げを付与するために、ワークロールをテクスチャー加工することができる。図3は、金属基材上に光沢仕上げを付与するのに使用されることができるワークロール上に設計された表面テクスチャーを製造するためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【0025】
ブロック302では、未仕上げのワークロールを研削して、約0.2μm〜約0.5μmのRa値の研削仕上げ又は表面テクスチャーを有する研削されたワークロールを製造することができる。別の実施例では、未仕上げのワークロールを研削して、約0.3μm〜約0.5μmのRa値(例えば、約0.35μmのRa値又は任意の他の適切なRa値)の研削仕上げ又は表面テクスチャーを有する研削されたワークロールを製造することができる。未仕上げのワークロールは、標準的な表面仕上げが施され、かつ設計された表面テクスチャーの用途を妨げる可能性があるひっかき傷も、傷も、くぼみも、他の表面欠陥もない滑らかなワークロールであることができる。場合によっては、未仕上げのワークロールを任意の適切な商業的供給源から得ることができる。未仕上げのワークロールを、任意の適切な材料、例えば、鋼、セラミックス、又は設計された表面テクスチャーを有するワークロールを製造するのに適した任意の別の材料から作製することができる。
【0026】
グリットホイールを使用して未仕上げのワークロールを研削することができる。グリットホイールの例としては、360以下のグリットホイールが挙げられるが、これに限定されない。ワークロールの表面の特定の若しくは所望の粗さ又はRa値が得られるまで、グリットホイールを用いて、未仕上げのワークロールを研削することができる。例えば、グリットホイールを使用して未仕上げのワークロールの表面を約0.20μm〜約0.50μm(例えば、約0.30μm〜約0.50μm)のRa値に研削して、更に処理され得る研削されたワークロールを製造することができる。別の実施例では、グリットホイールを使用して未仕上げのワークロールの表面を約−1.5〜約0.5のRsk値に研削することができる。
【0027】
ブロック304では、研削されたワークロールを放電テクスチャー加工して、EDTワークロールを形成することができる。放電テクスチャー加工工程は、ブロック302で製造される研削されたテクスチャーを、約0.5μm〜約1.0μmのより大きなRa値を有するテクスチャー加工された仕上げ又は等方性テクスチャーに仕上げることができる。別の実施例では、放電テクスチャー加工工程は、ブロック302で製造される研削されたテクスチャーを、約0.5μm〜約0.8μmのRa値(例えば、約0.6μm、約0.75μmのRa値、又は任意の他の適切なRa値)を有するテクスチャー加工された仕上げ又は等方性テクスチャーに仕上げることができる。場合によっては、ワークロールを放電テクスチャー加工することは、放電又はスパークを使用して、研削されたワークロールの表面を繰り返し溶融及び凝固させることを含むことができる。得られたEDTテクスチャーは、くぼみ、ピーク、及び谷があり、並びに異方性がない粗い表面であることができる。
【0028】
場合によっては、研削されたワークロールを、特定の若しくは所望の粗さ又はRa値が得られるまで、放電テクスチャー加工することができる。例えば、約0.50μm〜約1.0μmのRa値(例えば、約0.5μm〜約0.8μmのRa値)を有するEDTワークロールを形成するために研削されたワークロールを放電テクスチャー加工することができる。別の実施例では、EDTワークロールは、約−1.0〜約1.0のRsk値を有することができる。更に別の実施例では、EDTワークロールは、約80/cm〜約140/cmのPc値を有することができる。場合によっては、研削されたワークロールを放電テクスチャー加工する間に使用される電極の極性を、研削されたワークロールを放電テクスチャー加工しながら交互に替えることができ、これによりEDTワークロールのRa値に影響を及ぼすことができる。
【0029】
ブロック306において、EDTワークロールを研磨して、研磨されたワークロールを形成する。いくつかの実施例では、サンドベルト、紙やすり、超仕上盤等を使用してEDTワークロールを研磨し、研磨仕上げを達成することができる。EDTワークロールを研磨するのに使用できる紙やすりの種類の例としては、2×15μmの紙やすり又は1×9μmの紙やすりが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施例では、ブロック304において研削されたワークロールを放電テクスチャー加工することにより、EDTワークロールの表面上に鋭いピークを形成することができる。EDTワークロールを使用して金属基材を冷間圧延する場合、鋭いピークが折れて金属基材上に破片を形成することがある。いくつかの実施例では、ブロック306においてEDTワークロールを研磨することにより、鋭いピークを破壊し、EDTワークロールを滑らかにすることができ、そしてそれは冷間圧延の間に金属基材上に破片を形成するのを防ぐことができる。
【0031】
またブロック306においてEDTワークロールを研磨することは、ブロック304のEDTワークロールよりも低いRa値を有することができる研磨されたワークロールを形成することができる。例えば、研磨されたワークロールは、約0.30μm〜約0.70μmのRa値(例えば、0.6μm、0.65μmのRa値、約0.6μm〜0.65μmのRa値、又は任意の他の適切なRa値)を有することができる。いくつかの実施例では、研磨されたワークロールは、約−3.0〜約0.0のRsk値を有することができる。更に別の実施例では、研磨されたワークロールは、約100/cm〜約180/cmのPc値を有することができる。
【0032】
いくつかの実施例では、約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有する研磨されたワークロールを使用して、金属基材上に光沢仕上げを施すことができる。例えば、図4は、一実施例に従って研磨されたワークロールを用いて金属基材上に光沢仕上げを施すためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【0033】
ブロック402において、研磨されたワークロールを冷間圧延機へ挿入する。研磨されたワークロールは、約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有するワークロール(例えば、図3のブロック306で形成される研磨されたワークロール)であることができる。
【0034】
ブロック404において、研磨されたワークロールを用いて金属基材を圧延することができる。金属基材は、アルミニウムシート若しくはアルミニウム合金シート、又は任意の適切な基材であることができる。場合によっては、研磨されたワークロールを用いて金属基材を冷間圧延し、金属基材上へ光沢仕上げを施し、これは、上述したように、金属基材が均一な光沢であることを指し、及び/又は最小限の異方性で等方性の表面を有する金属基材であることを指すことができる。
【0035】
いくつかの実施例では、金属基材に光沢仕上げを施すことにより、金属基材を、強い異方性がない僅かな表面のピークを有する光沢仕上げから利益を得ることができるあらゆる製品(例えば、リソグラフィー用途、缶用途、及びラッカー用途等であるが、これに限定されない)に適したものにすることができる。例えば、本明細書に記載の光沢仕上げは、缶の端部(例えば、飲料缶の端部)、缶本体(例えば、飲料缶の本体)、缶タブ(例えば、飲料缶のタブ)、反射体、塗装された及びラミネートされた製品、標識、輸送、陽極酸化品質、並びに装飾仕上げに適切であることができる。光沢仕上げを缶の端部又は他の製品に施すことは、粗さのピークの体積が同程度の平均直交粗さに対して減少されるので、コーティング重量を低減する可能性があるとして、有利であることができる。
【0036】
更に、約0.30μm〜約0.70μmのRa値を有する研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の特性を向上させることができる。例えば、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の高圧に対する耐性を増加させ、早期に故障することなく高い変形を許容することができる。別の実施例では、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の摩擦係数を減少させることができる。更に別の実施例では、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の潤滑剤保持性を向上させることができ、これにより後に金属基材が必要とする潤滑剤の量を低減させることができる。例えば、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材に負の歪が生じ(例えば、金属基材の表面内に延在する谷を有する)、これにより金属に貯蔵される潤滑剤の量を増加させることができる。
【0037】
いくつかの実施例では、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材が金属基材全体にわたってより一貫した摩擦特性を有するようにすることができる。いくつかの例では、研磨されたワークロールを使用して金属基材を冷間圧延することにより、金属基材の成形性が改善され、それにより低い成形性、例えば製品の割れ、に起因する問題を起こしにくい金属基材を得ることができる。
【0038】
図示も、記載もされていない構成要素及び工程だけでなく、図面に記載されている、又は上述されている構成要素の異なる構成も可能である。同様に、いくつかの特徴及び部分的組合せは有用であり、他の特徴及び部分的組合せを参照することなく使用することができる。本発明の実施形態は、例示的な目的で記載され、制限的な目的で記載されておらず、代わりの実施形態は、この特許の読者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、上述の又は図面に示される実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態の変更を行うことができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4