特許第6695551号(P6695551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695551
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】物体の成分量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   G01N27/72
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-71222(P2017-71222)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173330(P2018-173330A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】306017014
【氏名又は名称】地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】千田 麗誉
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 義英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 強
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−165910(JP,A)
【文献】 特開2015−175639(JP,A)
【文献】 特開平03−035158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0241302(US,A1)
【文献】 特開2011−058830(JP,A)
【文献】 特開平10−282782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記検出部の励磁体及び検出体を、巻回したコイルが密集して露出する密集面を有して形成し、上記励磁体の密集面と上記検出体の密集面を対向させて該励磁体及び検出体を重畳させ、上記被検対象の物体が配置されるステージを設け、該ステージを上記検出体の密集面に沿って設け、
上記検出部に、巻回されたコイルを有した調整体を備え上記励磁回路で発生させられた磁束により該調整体のコイルに誘導起電力を出力する調整共振回路を設け、上記調整体を、巻回したコイルが密集して露出する密集面を有して形成し、該調整体の密集面を上記励磁体の密集面及び/または上記検出体の密集面に対向させて該調整体を上記励磁体及び/または検出体に重畳させ、該励磁体及び検出体に対して磁気的に結合させたことを特徴とする物体の成分量測定装置。
【請求項2】
少なくとも上記検出体を、コイルを中心軸を中心に且つ中心軸方向に所要幅を有するように板状に巻回し、表裏面を密集面として構成したことを特徴とする請求項1記載の物体の成分量測定装置。
【請求項3】
少なくとも上記検出体を、コイルを平面上で該平面に直交する中心軸を中心に渦巻状に巻回して形成し、該中心軸に直交する表裏面を密集面として構成したことを特徴とする請求項1記載の物体の成分量測定装置。
【請求項4】
上記励磁体,検出体及び調整体の少なくとも何れかを、コアにコイルを巻回して形成したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の物体の成分量測定装置。
【請求項5】
上記励磁体,検出体及び調整体の少なくとも何れかを、上記巻回したコイルの集合体を複数備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の物体の成分量測定装置。
【請求項6】
上記調整共振回路を備えた検出部と、該調整共振回路を備えない別の検出部とを、成分量の測定範囲によって、選択使用可能にしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の物体の成分量測定装置。
【請求項7】
検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記励磁体を、筒状に巻回されたコイルと、一端側が上記コイルに挿通された磁性体からなる棒状のコアとを備えて構成し、
上記検出体を、上記コアの他端側であって該コアから離間して該コアと同軸で配置され外周面を密集面とした筒状に巻回されたコイルで構成し、
上記励磁体,コア及び検出体を、被検対象の物体が上記検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うように位置させて当該検出体によってそのコイルに出力される出力量を検出可能に支持体に支持したことを特徴とする物体の成分量測定装置。
【請求項8】
検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記励磁体及び検出体を、コイルを巻回して外周面を密集面とした筒状に形成し、上記励磁体を、上記検出体内に同軸で挿入し、上記励磁体及び検出体を、被検対象の物体が上記検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うように位置させて当該検出体によってそのコイルに出力される出力量を検出可能に支持体に支持し、
巻回されたコイルを有した調整体を備え上記励磁回路で発生させられた磁束により該調整体のコイルに誘導起電力を出力する調整共振回路を設け、上記調整体を、コイルを巻回して外周面を密集面とした筒状に形成するとともに、上記検出体内に同軸で挿入して支持体に支持したことを特徴とする物体の成分量測定装置。
【請求項9】
上記制御部を、予め、特定の成分に係る成分量既知のサンプル物体において求められ、該サンプル物体の特定成分と上記検出共振回路で検出され上記検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量との相関を記憶する相関記憶手段と、上記検出共振回路で検出される出力量と上記相関記憶手段が記憶した相関とから物体の特定の成分に係る成分量を算出する成分量算出手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の物体の成分量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の特定の成分に係る成分量を非破壊で測定する物体の成分量測定装置に係り、特に、電磁誘導法によって被検対象の成分量を測定する物体の成分量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の物体の成分量測定装置としては、例えば、特開2003−194960号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。図21に示すように、この成分量測定装置Saは、物体Wの特定の成分である水分量を測定するもので、棒状のコア101に巻回されたコイル102を有した励磁体103を備えこの励磁体103のコイル102に所定の交流電圧を付与して励磁体103に磁束を発生させる励磁回路100と、棒状のコア111に巻回されたコイル112を有し励磁体103に磁気的に結合させられた検出体113を備え励磁体103で発生させられた磁束により検出体113のコイル112に出力される誘導起電圧を検出する検出共振回路110とを備え、励磁体103のコア101の端部101aと検出体113のコア111の端部111aとの間に発生させられた磁束内に被検対象の物体Wを臨ませ、検出共振回路110で検出された電圧に基づいて水分量を測定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−194960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の成分量測定装置Saにあっては、被検対象の物体Wを、励磁体103のコア101の端部101aと検出体113のコア111の端部111aとの間に発生させられた磁束内に臨ませているので、コア101,111の端部101a,111a間に生じるエアのギャップに起因して物体Wの測定感度に劣っているという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、物体の測定感度の向上を図った物体の成分量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための本発明の物体の成分量測定装置は、検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記検出部の励磁体及び検出体を、巻回したコイルが密集して露出する密集面を有して形成し、上記励磁体の密集面と上記検出体の密集面を対向させて該励磁体及び検出体を重畳させ、上記被検対象の物体が配置されるステージを設け、該ステージを上記検出体の密集面に沿って設けた構成としている。
【0006】
ここで、物体とは、固形物,液体,気体,これらの混合体であり、検出共振回路に生じる誘導起電圧の低下や位相の変化から水分や溶融物質分等の成分が測定できるものであればどのようなものでも良い。
また、誘導起電力に係る出力量とは、複素誘導起電力に係り、例えば、誘導起電圧,その位相などを挙げることができる。制御部においては、例えば、誘導起電圧の変化量や、位相差に基づいて物体の特定の成分に係る成分量を算出することができる。誘導起電圧の変化量は、例えば、ステージ上に物体がない状態の誘導電圧を基準とし、この誘導起電圧の基準に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の比率とすることができる。また、位相差は、誘導起電圧の基準の位相に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の位相の差を言い、例えば、ステージ上に物体がない状態の誘導電圧の位相を基準とし、この誘導起電圧の基準の位相に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の位相の位相差とすることができる。
【0007】
この構成においては、励磁体の密集面と検出体の密集面とを絶縁体を介して接合させても良く、また、互いに所要間隔離間させても良い。ステージは、検出体の密集面で構成しても良く、別途、例えば、プラスチックシートや板等の専用の部材で構成しても良い。専用の部材で構成する場合には、これを検出体の密集面に接合させても良く、また、検出体の密集面から所要間隔離間させても良い。
【0008】
これにより、物体の特定の成分に係る成分量を測定するときは、検出部において、ステージ上に被検対象の物体を配置し、励磁回路により交流電圧を付与すると、励磁体のコイルに磁束が発生し、この磁束の一部は、検出共振回路の検出体を透過しコイルに誘導起電力が出力される。そして、励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体が臨んでいるので、静電容量が変化して共振周波数が低いほうにシフトし共振特性およびインピーダンスの変化が生じる。それにより、電圧や電流が変化し磁束の変化が生じ磁気的結合の度合いが変化し、検出共振回路では誘導起電力に係る出力量が検出される。制御部においては、この出力量に基づいて物体の特定の成分に係る成分量が測定される。この場合、励磁体の密集面と検出体の密集面を対向させて励磁体及び検出体を重畳させ、しかも、ステージを検出体の密集面に沿って設けたので、ステ―ジ上の物体を透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。
【0009】
そして、本発明においては、少なくとも上記検出体を、コイルを中心軸を中心に且つ中心軸方向に沿って所要幅有して板状に巻回し、表裏面を密集面とて構成したことが有効である。検出体は、板状にしたことでコイルの密集面の面積、つまり、被検体との接触面積が大きくなる。これにより、被検体が有るときと無い(空気)ときで検出体の静電容量(浮遊容量)の差が大きく出るため、接触面積が小さいときと比べてより、測定感度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明においては、少なくとも上記検出体を、コイルを平面上で該平面に直交する中心軸を中心に渦巻状に巻回して形成し、該中心軸に直交する表裏面を密集面として構成した構成したことが有効である。検出体は、板状にしたことでコイルの密集面の面積、つまり、被検体との接触面積が大きくなる。これにより、被検体が有るときと無い(空気)ときで検出体の静電容量(浮遊容量)の差が大きく出るため、接触面積が小さいときと比べてより、測定感度を向上させることができる。また、コイルを渦巻状にするので製造が容易になる。
【0011】
また、本発明においては、上記励磁体及び検出体の少なくとも何れかを、コアにコイルを巻回して形成したことが有効である。コアに巻回するので磁気的結合を制御し易くすることができる。
【0012】
更に、本発明においては、上記励磁体及び検出体の少なくとも何れかを、上記巻回したコイルの集合体を複数備えて構成したことが有効である。
これにより被検体の成分分布の測定を容易に行うことができる。
【0013】
そして、本発明においては、必要に応じ、上記検出部に、巻回されたコイルを有した調整体を備え上記励磁回路で発生させられた磁束により該調整体のコイルに誘導起電力を出力する調整共振回路を設け、上記調整体を、巻回したコイルが密集して露出する密集面を有して形成し、該調整体の密集面を上記励磁体の密集面及び/または上記検出体の密集面に対向させて該調整体を上記励磁体及び/または検出体に重畳させ、該励磁体及び検出体に対して磁気的に結合させた構成としている。
【0014】
この構成においては、調整体の密集面は、励磁体の密集面及び/または検出体の密集面と絶縁体を介して接合させても良く、また、互いに所要間隔離間させても良い。これにより、調整体を設けたので、検出体のコイルからの出力量を調整することができ、受信電圧の振幅と位相の周波数特性を制御して感度を向上させることができる。調整体は、複数備えるようにして良い。
【0015】
そして、調整体を備えた構成においては、少なくとも上記検出体を、コイルを中心軸を中心に且つ中心軸方向に所要幅を有するように板状に巻回し、表裏面を密集面として構成したことが有効である。検出体は、板状にしたことでコイルの密集面の面積、つまり、被検体との接触面積が大きくなる。これにより、被検体が有るときと無い(空気)ときで検出体の静電容量(浮遊容量)の差が大きく出るため、接触面積が小さいときと比べてより、測定感度を向上させることができる。
【0016】
また、調整体を備えた構成においては、少なくとも上記検出体を、コイルを平面上で該平面に直交する中心軸を中心に渦巻状に巻回して形成し、該中心軸に直交する表裏面を密集面として構成することができる。検出体は、板状にしたことでコイルの密集面の面積、つまり、被検体との接触面積が大きくなる。これにより、被検体が有るときと無い(空気)ときで検出体の静電容量(浮遊容量)の差が大きく出るため、接触面積が小さいときと比べてより、測定感度を向上させることができる。また、コイルを渦巻状にするので製造が容易になる。
【0017】
また、調整体を備えた構成においては、上記励磁体,検出体及び調整体の少なくとも何れかを、コアにコイルを巻回して形成したことが有効である。コアに巻回するので磁気的結合を制御し易くすることができる。
【0018】
更に、調整体を備えた構成においては、上記励磁体,検出体及び調整体の少なくとも何れかを、上記巻回したコイルの集合体を複数備えて構成したことが有効である。
これにより被検体の成分分布の測定を容易に行うことができる。
【0019】
そしてまた、本発明においては、必要に応じ、上記調整共振回路を備えた検出部と、該調整共振回路を備えない別の検出部とを、成分量の測定範囲によって、選択使用可能にした構成としている。被検対象の物体の性状に合わせて、調整共振回路を備えた検出部と、調整共振回路を備えない別の検出部とを、使い分けて使用することにより、より精度の高い成分量の測定をすることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明の物体の成分量測定装置は、検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記励磁体を、筒状に巻回されたコイルと、一端側が上記コイルに挿通された磁性体からなる棒状のコアとを備えて構成し、
上記検出体を、上記コアの他端側であって該コアから離間して該コアと同軸で配置され外周面を密集面とした筒状に巻回されたコイルで構成し、
上記励磁体,コア及び検出体を、被検対象の物体が上記検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うように位置させて当該検出体によってそのコイルに出力される出力量を検出可能に支持体に支持した構成としている。
【0021】
これによっても、被検対象の物体が検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うので、物体を透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。また、棒状のコアを利用することで送信部から離れた測定部でも測定が可能になる。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明の物体の成分量測定装置は、検出部と制御部とを備え、上記検出部を、巻回されたコイルを有した励磁体を備え該励磁体のコイルに所定の交流電圧を付与して該励磁体に磁束を発生させる励磁回路と、巻回されたコイルを有し上記励磁体に磁気的に結合させられた検出体を備え上記励磁体で発生させられた磁束により該検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路とを備えて構成し、該検出部で、上記励磁体及び検出体に発生させられた磁束内に被検対象の物体を臨ませ、上記制御部で、上記検出共振回路で検出された出力量に基づいて該物体の特定の成分に係る成分量を算出する物体の成分量測定装置において、
上記励磁体及び検出体を、コイルを巻回して外周面を密集面とした筒状に形成し、上記励磁体を、上記検出体内に同軸で挿入し、上記励磁体及び検出体を、被検対象の物体が上記検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うように位置させて当該検出体によってそのコイルに出力される出力量を検出可能に支持体に支持した構成としている。
これによっても、被検対象の物体が検出体の密集面の一部若しくは全部を外側から覆うので、物体を透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。
【0023】
この場合、巻回されたコイルを有した調整体を備え上記励磁回路で発生させられた磁束により該調整体のコイルに誘導起電力を出力する調整共振回路を設け、上記調整体を、コイルを巻回して外周面を密集面とした筒状に形成するとともに、上記検出体内に同軸で挿入して支持体に支持した構成とすることができる。これにより、調整体を設けたので、検出体のコイルからの出力量を調整することができ、受信電圧の振幅と位相の周波数特性を制御して感度を向上させることができる。
【0024】
また、必要に応じ、上記制御部を、予め、特定の成分に係る成分量既知のサンプル物体において求められ、該サンプル物体の特定成分について上記検出共振回路の検出体のコイルに出力される誘導起電力に係る相関を記憶する相関記憶手段と、上記検出共振回路で検出される出力量及び上記相関記憶手段が記憶した相関に基づいて物体の特定の成分に係る成分量を算出する成分量算出手段とを備えて構成している。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、検出体のコイルの密集面に被検対象の物体が位置するので、物体を透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度を向上させることができる。また、棒状のコアを利用するものにおいては、送信部から離れた測定部でも測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の励磁体,検出体及び調整体の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において別の検出部の構成を示す図である。
図5】本発明の検出部の検出原理を示す図である。
図6】本発明の検出部において、調整共振回路を備えた検出部と、調整共振回路を備えない検出部との相違を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置により物体の成分の測定する際のフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の別の例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の励磁体,検出体及び調整体の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の励磁体,検出体及び調整体の別の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の励磁体,検出体及び調整体のまた別の例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において検出部の励磁体,検出体及び調整体の更にまた別の例を示す図である。
図13】本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置において他の励磁体及び検出体を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図14】本発明の別の実施の形態に係る物体の成分量測定装置の検出部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
図15】本発明の別の実施の形態に係る物体の成分量測定装置の検出部を用いて物体の成分の測定する際の状態を示し、(a)は物体との関係を示す斜視図、(b)は物体の測定時の状態を示す断面図である。
図16】本発明のまた別の実施の形態に係る物体の成分量測定装置の検出部を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は右側面図である。
図17】本発明の実施例に係る成分量測定装置の検出部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図18】本発明の実施例に係る成分量測定装置において、調整共振回路を備えた検出部による測定に係る検量線を、調整共振回路を備えない検出部による測定に係る検量線とともに示し、(a)は水分と電圧との関係を示すグラフ図、(b)は水分と位相差との関係を示すグラフ図である。
図19】本発明の別の実施例に係る成分量測定装置の検出部において、(a)はその構成を示す図、(b)は水分と電圧との関係、及び、水分と位相差との関係を示すグラフ図である。
図20】本発明の実施例に係る成分量測定装置において、塩蔵わかめについての検量線を示し、(a)は水分量と電圧との関係を示すグラフ図、(b)は水分量と位相差との関係を示すグラフ図、(c)は塩分量と電圧との関係を示すグラフ図、(d)は塩分量と位相差との関係を示すグラフ図である。
図21】従来の成分量測定装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る物体の成分量測定装置について詳細に説明する。
【0028】
図1乃至図3に示すように、実施の形態に係る物体の成分量測定装置Sは、検出部Kと制御部Cとを備えて構成されている。検出部Kは、巻回されたコイル2を有した励磁体3を備えこの励磁体3のコイルに所定の交流電圧を付与してこの励磁体3に磁束を発生させる励磁回路1と、巻回されたコイル12を有し励磁体3に磁気的に結合させられた検出体13を備えるとともに励磁体3で発生させられた磁束によりこの検出体13のコイル12に出力される誘導起電力に係る出力量を検出する検出共振回路10とを備え、この検出部Kで、励磁体3及び検出体13に発生させられた磁束内に被検対象の物体Wを臨ませ、制御部Cで、検出共振回路10で検出された出力量に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出するものである。
【0029】
励磁回路1において、励磁体3は、図3に示すように、巻回したコイル2が密集して露出する密集面5,6を有した板状に形成されている。コイル2は、中心軸Pを中心に且つ中心軸P方向に沿って所要幅Lを有して板状に巻回されており、この板状に巻回されたコイル2の集合体の面積の広い平面状の表裏面が密集面5,6として構成されている。コイル2は、導線を絶縁体で被覆した周知の構成のもので、矩形板状のコア4に巻回されている。コア4を特に設けることなく巻回したものでも良い。コア4に巻回した場合には磁気的結合を制御し易くすることができる。励磁回路1は、図1及び図2に示すように、励磁体3の巻回されたコイル2(励磁コイル)と、コイル2に電源から電圧を付与する正弦波発信回路8を有した送信機7とを備えている。
【0030】
検出共振回路10において、検出体13は、図3に示すように、励磁体3と同様に形成され、巻回したコイル12が密集して露出する密集面15,16を有した板状に形成されている。コイル12は、中心軸Pを中心に且つ中心軸P方向に沿って所要幅Lを有して板状に巻回されており、この板状に巻回されたコイル12の集合体の面積の広い平面状の表裏面が密集面15,16として構成されている。コイル12は、導線を絶縁体で被覆した周知の構成のもので、矩形板状のコア14に巻回されている。コア14を特に設けることなく巻回したものでも良い。コア4に巻回した場合には磁気的結合を制御し易くすることができる。
【0031】
検出共振回路10は、図1及び図2に示すように、検出体13の巻回されたコイル12(検出コイル)と、コイル12に接続されたコンデンサ17と、励磁体3で発生させられた磁束により検出体13のコイル12に出力される誘導起電力に係る出力量を検出する受信器20とを備えている。受信器20は、電圧の最大振幅を出力量として検出する振幅最大値検出回路21と、電圧との位相を出力量として検出する位相検出回路22と、振幅最大値検出回路21及び位相検出回路22からのアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換して出力するA/D変換器23とを備えている。
【0032】
また、検出部Kは、巻回されたコイル32を有した調整体33を備え励磁回路1で発生させられた磁束により調整体33のコイルに誘導起電力を出力する調整共振回路30を備えている。調整共振回路30において、調整体33は、図3に示すように、励磁体3と同様に形成され、巻回したコイル32が密集して露出する密集面35,36を有した板状に形成されている。コイル32は、中心軸Pを中心に且つ中心軸P方向に沿って所要幅Lを有して板状に巻回されており、この板状に巻回されたコイル2の集合体の面積の広い平面状の表裏面が密集面35,36として構成されている。コイル2は、導線を絶縁体で被覆した周知の構成のもので、矩形板状のコア34に巻回されている。コア34を特に設けることなく巻回したものでも良い。コア4に巻回した場合には磁気的結合を制御し易くすることができる。調整共振回路30は、図2に示すように、調整体33の巻回されたコイル32と、コイル32に接続されたコンデンサ37とを備えている。
【0033】
そして、励磁体3,検出体13及び調整体33は、略同じ大きさに形成されている。励磁体3及び検出体13は、励磁体3の表面の密集面5と検出体13の裏面の密集面16を対向させて重畳させられている。また、調整体33は、調整体33の密集面を励磁体3の密集面及び/または検出体13の密集面に対向させて、励磁体3及び/または検出体13に重畳させられ、励磁体3及び検出体13に対して磁気的に結合させられている。実施の形態では、調整体33は、励磁体3と検出体13との間に介装されており、調整体33の表面の密集面35は検出体13の裏面の密集面16に対向させられ、調整体33の裏面の密集面36は励磁体3の表面の密集面5に対向させられている。励磁体3,検出体13及び調整体33同士の間隔は適宜に定められ、図示外の基台に支持されている。必要に応じ、励磁体3と調整体33との間、調整体33と検出体13との間には、プラスチック等の絶縁板を介装している。励磁体3,検出体13及び調整体33同士の間隔や、調整共振回路30のコンデンサ37の容量を調整するなどして、予め、励磁体3,検出体13及び調整体33相互の磁気的結合度を調整しておく。
【0034】
更に、本装置Sは、被検対象の物体Wが配置されるステージ40を備えている。ステージ40は、例えば、プラスチックシートで形成され、検出体13の表面の密集面15側に設けられている。実施の形態では、検出体13の表面の密集面15に接合して重畳させられている。即ち、励磁体3,検出体13,調整体33及びステージ40は、密集面5,6,15,16,35,36を互いに平行にし、これらの密集面5,6,15,16,35,36に直交する一方向R(実施の形態では上下方向)に重畳させられている。ステージ40は、側壁のある容器状に形成し、その底面を検出体13の表面の密集面15に対して重畳し、被検対象の物体Wを収容可能に形成することもできる。
【0035】
また、本装置Sは、上記の図2に示す調整共振回路30を備えた検出部K(A)と、図4に示す調整共振回路30を備えない別の検出部K(B)とを、成分量の測定範囲によって、選択使用可能な構成となっている。調整共振回路30を備えない別の検出部K(B)は、図4に示すように、上記の調整共振回路30を備えた検出部Kの構成から、調整共振回路30を除いた構成のものであり、調整体33がなく、励磁体3及び検出体13の間隔は適宜に定められ、図示外の基台に支持されている。必要に応じ、励磁体3と検出体13との間には、プラスチック等の絶縁板を介装している。励磁体3及び検出体13の間隔を調整するなどして、予め、励磁体3及び検出体13相互の磁気的結合度を調整しておく。
【0036】
更にまた、本装置Sは、図1に示すように、物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する制御部Cを備えている。制御部Cは、CPUやメモリなどの機能によって実現され、予め、特定の成分に係る成分量既知のサンプル物体Wにおいて求められ、このサンプル物体Wの特定成分について検出共振回路10の検出体13のコイル12に出力される誘導起電力に係る相関を記憶する相関記憶手段50と、検出共振回路10で検出される出力量及び相関記憶手段50が記憶した相関に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する成分量算出手段51とを備えて構成している。
【0037】
詳しくは、相関記憶手段50は、サンプル物体Wの特定成分と、ステージ40上に物体Wがない状態の誘導電圧を基準とし、この誘導起電圧の基準に対するステージ40上に物体があるときの誘導電圧の変化量(比率)との相関(検量線)を記憶するとともに、サンプル物体Wの特定成分と、ステージ40上に物体がない状態の誘導電圧の位相を基準とし、この誘導起電圧の基準の位相に対するステージ40上に物体があるときの誘導電圧の位相の位相差との相関(検量線)を記憶する。
【0038】
制御部Cは、図1に示すように、振幅最大値検出回路21からの電圧の最大振幅から、ステージ40上に物体Wがない状態の誘導電圧の最大振幅を基準とし、この誘導起電圧の最大振幅の基準に対するステージ40上に物体Wがあるときの誘導電圧の最大振幅における変化量(比率)を算出する振幅変化量算出手段52と、位相検出回路22からの電圧の位相から、ステージ上に物体がない状態の誘導電圧の位相を基準とし、この誘導起電圧の基準の位相に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の位相の位相差を算出する位相差算出手段53とを備えている。
【0039】
そして、成分量算出手段51は、振幅変化量算出手段52の算出結果から、相関記憶手段50が記憶した相関に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する。また、位相差算出手段53の算出結果から、相関記憶手段50が記憶した相関に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する。また、本装置Sにおいては、成分量算出手段51の算出結果を表示する表示部54や、算出結果を出力するプリンタ(図示せず)が備えられている。
【0040】
物体の特定の成分として、例えば、水分量の場合、後述の実施例で示すが、図18(a)に示すように、サンプル物体Wの水分量に対する誘導起電圧の変化量(空気の電圧を1としたときの比率規格化受信電圧)の検量線を作成しておく。あるいはまた、図18(b)に示すように、サンプル物体Wの水分量に対する位相の変化量(空気の位相を基準)の検量線を作成しておく。相関記憶手段50は、この検量線の関係を記憶しておく。
【0041】
ここで、図5及び図6を用い、検出共振回路10での検出原理について説明する。例えば、成分量として水分の場合で説明する。図5(a)に示すように、サンプル物体Wに水分が含まれていない場合、検出共振回路10の共振周波数と調整共振回路30の共振周波数は同じ値である。このとき受信電圧の周波数特性は単峰性の特性となる。図5(b)に示すように、サンプル物体Wが水分を含むと検出共振回路10側の静電容量が大きくなり検出回路10の共振周波数が低い方にシフトする。そしてこのときの受信電圧の周波数特性は谷が浅い双峰性の特性となる。調整共振回路30の共振周波数は固定されており水などの成分量に依存せず変化しない。更に、図5(c)に示すように、サンプル物体Wの水分が増えるとさらに静電容量が増え、検出共振回路10の共振周波数はより低い方にシフトする。このとき受信電圧の周波数特性は深い双峰性の特性となる。
【0042】
即ち、サンプル物体Wに水分が含まれていない場合、周波数帯で位相の傾きが急峻な周波数特性となる。サンプル物体Wが水分を含むとこの傾きが周波数の低い方にシフトし更に傾きが小さくなだらかな特性となる。さらにサンプル物体Wの水分が増えるとさらに位相の傾きがなだらかなまま周波数の低い方にシフトする。以上の受信電圧および位相特性において、測定周波数をfmとすると、水分が多いときと少ないときで受信電圧および位相にレベル差が出来る。このレベル差が測定範囲であり、この範囲のどの値かを知ることで水分量を知ることが出来る。
【0043】
図6に示すように、調整共振回路30を用いない場合と、用いた場合を比較すると、図6(a)に示すように、調整共振回路30を用いない場合には、波形の傾きが大きいので、すぐに測定限界を迎えるが、図6(b)に示すように、調整共振回路30を用いる場合には、緩い傾きになることから、同じ周波数のシフト量でも、測定限界を迎えずに、測定余地を生じ、測定分解能は低下するものの、測定範囲を拡大させることができる。
【0044】
従って、本成分量測定装置Sにより、物体Wの特定の成分に係る成分量を測定するときは、図7に示すフローチャートを用いて説明すると以下のようになる。
先ず、調整共振回路30を備えた検出部Kを用いる場合について説明する。予め、ステージ40上に物体Wがない状態で電圧及び電圧の位相を測定する。励磁回路1により交流電圧を付与すると(S1)、励磁体3に磁束が発生し(S2)、検出部Kは調整共振回路30を備えているので(S3Yes)、調整体33のコイル32に磁束が発生するとともに(S4)、磁束の一部は、検出共振回路10の検出体13を透過しコイル12に誘導起電力が出力される(S5)。そして、被検対象の物体Wがないので(S6No)、検出共振回路10の位相検出回路22では検出された電圧の基準の振幅と位相を記憶する(S7)。
【0045】
この状態で、ステージ40上に被検対象の物体Wを配置して、その成分量を測定する。上記と同様に、励磁回路1により交流電圧を付与すると(S1)、励磁体3に磁束が発生し(S2)、検出部Kは調整共振回路30を備えているので(S3Yes)、調整体33のコイルに磁束が発生するとともに(S4)、磁束の一部は、検出共振回路10の検出体13を透過しコイル32に誘導起電力が出力される(S5)。そして、今度は、被検対象の物体Wがあるので(S6Yes)、即ち、励磁体3及び検出体13に発生させられた磁束内に被検対象の物体Wが臨んでいるので、磁束に変化を生じせしめ、電圧の振幅及びその位相に変化を生じさせる(S8)。これにより、振幅最大値検出回路21においては、振幅最大値を出力量として検出処理して(S9,S10)、A/D変換器23を介して(S12)、制御部Cに出力する。一方、位相検出回路22においては、基準の位相との位相差を出力量として検出処理し(S9,S11)て、A/D変換器23を介して(S12)、制御部Cに出力する。制御部Cにおいては、A/D変換器23からの出力を一時的に記憶する(S13)。
【0046】
この場合、励磁体3の密集面5と検出体13の密集面16を対向させて励磁体3及び検出体13を重畳させ、しかも、ステージ40を検出体13の別の密集面15側に設けたので、ステージ40上の物体Wを透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。また、調整体33を設けたので、検出体13のコイル12からの出力量を調整することができ、特性を制御して感度を向上させることができる。
【0047】
そして、制御部Cにおいて、振幅変化量算出手段52が、振幅最大値検出回路21からの電圧の最大振幅から、ステージ上に物体がない状態の誘導電圧を基準とし、この誘導起電圧の基準に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の変化量(比率)を算出する(S14)。また、位相差算出手段53が、位相検出回路22からの電圧の位相から、ステージ上に物体がない状態の誘導電圧の位相を基準とし、この誘導起電圧の基準の位相に対するステージ上に物体があるときの誘導電圧の位相の位相差を算出する(S14)。
そして、成分量算出手段51は、振幅変化量算出手段52の算出結果から、相関記憶手段50が記憶した相関に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する(S15)。また、位相差算出手段53の算出結果から、相関記憶手段50が記憶した相関に基づいて物体Wの特定の成分に係る成分量を算出する(S15)。成分量算出手段51の算出結果は、表示部54に表示され(S16)、あるいは、プリンタで出力される。尚、成分量の出力は、2種あるが、何れかを出力するように構成し、あるいは、データを統合して出力するように構成してよい。
【0048】
一方、調整共振回路30を備えない別の検出部Kを用いる場合は、上記と同様に、予め、ステージ40上に物体Wがない状態で電圧及び電圧の位相を測定する。励磁回路1により交流電圧を付与すると(S1)、励磁体3に磁束が発生し(S2)、検出部Kは調整共振回路30を備えていないので(S3No)、磁束の一部は、検出共振回路10の検出体13を透過しコイル12に誘導起電力が出力される(S5)。そして、被検対象の物体Wがないので(S6No)、検出共振回路10の位相検出回路22では検出された電圧の基準の振幅と位相を記憶する(S7)。
【0049】
この状態で、ステージ40上に被検対象の物体Wを配置して、その成分量を測定する。上記と同様に、励磁回路1により交流電圧を付与すると(S1)、励磁体3に磁束が発生し(S2)、検出部Kは調整共振回路30を備えていないので(S3No)、磁束の一部は、検出共振回路10の検出体13を透過しコイル12に誘導起電力が出力される(S5)。そして、今度は、被検対象の物体Wがあるので(S6Yes)、即ち、励磁体3及び検出体13に発生させられた磁束内に被検対象の物体Wが臨んでいるので、磁束に変化を生じせしめ、電圧の振幅及びその位相に変化を生じさせる(S8)。その後の工程は、上述したと同様に推移する。このため、被検対象の物体Wの性状に合わせて、調整共振回路30を備えた検出部K(A)と、調整共振回路30を備えない別の検出部K(B)とを、使い分けて使用することにより、より精度の高い成分量の測定をすることができる。
【0050】
図8には、検出部Kの別の例を示す。これは、上記の調整共振回路30を備えた検出部Kと同様に構成されるが、上記とは調整体33の位置が異なっている。即ち、調整体33は、励磁体3の裏面の密集面6側に設けられており、調整体33の表面の密集面35は励磁体3の裏面の密集面6に対向させられ、励磁体3の表面の密集面5は検出体13の裏面の密集面16に対向させられている。これによっても上記と同様の作用,効果を奏する。
【0051】
次に、励磁体3,検出体13及び調整体33の変形例を示す。図9に示すものは、偏平状のコイル2,12,32を基板からなるコア4,14,34にエッチングにより形成したものであり、表裏のコイル2,12,32はスルーホールの導体68を介して接続されている。即ち、コイル2,12,32は中心軸Pを中心にコア4,14,34に巻回されて板状に形成されており、表裏面を密集面(5,15,35),(6,16,36)として構成したものである。上記と同様の作用,効果を奏する。
【0052】
図10に示すものは、コイル2,12,32を平面上で該平面に直交する中心軸Pを中心に渦巻状に巻回して形成し、中心軸Pに直交する表裏面を密集面(5,15,35),(6,16,36)として構成したものである。後述の試験例で示すが、図19には、この構成に係る励磁体3,検出体13及び調整体33を用いた物体Wの成分量測定装置Sの例を示している。これによれば、検出体13とステージ40との間のギャップdが大きくても対応できる。
【0053】
図11に示す励磁体3,検出体13及び調整体33は、巻回したコイル2,12,32の集合体60を複数備えて構成したものである。この集合体60は、図9と同様に、コア(4,14,34)を構成する基板69に行列状に組み付けられている。
【0054】
図12に示す励磁体3,検出体13及び調整体33は、巻回したコイル2,12,32の集合体60を、行列状に複数備えて構成したものである。各集合体60は、基板としての支持板63にエッチングにより、コイル2,12,32を中心軸を中心に渦巻状に形成したものである。
【0055】
図13にはまた別の励磁体3及び検出体13を示す。これは、励磁体3及び検出体13を合体させたもので、コア7をフェライト等の磁性体で偏平リング状に形成し、互いに対向する一対の扁平部64a,64bを有して形成し、両扁平部64a,64bに夫々コイル2,12を巻回し、一方の偏平部64a及びコイル2を励磁体3として構成し、他方の偏平部64b及びコイル12を検出体13として構成したものである。
【0056】
尚、励磁体3,検出体13及び調整体33の組合せは、同じ形態のもの同士の組合せでなくても良い。例えば、励磁体3として板状のコアにコイルを巻回したもの(図9)を用い、検出体13としてコイルの集合体60を複数備え励磁体3と同じ大きさのもの(図11)を用いるなど、適宜変更して差支えない。
【0057】
図14には、別の実施の形態に係る物体Wの成分量測定装置の検出部Kを示している。これは、励磁体3を、筒状に巻回されたコイル2と、一端側がコイル2に挿通された磁性体からなる棒状のコア70とを備えて構成し、検出体13を、コア70の他端側であってコア70から離間してコア70と同軸で配置され外周面を密集面71とした筒状に巻回されたコイル12で構成し、励磁体3,コア70及び検出体13を、被検対象の物体Wが検出体13の密集面71の一部若しくは全部を外側から覆うように位置させて検出体13によってそのコイル12に出力される出力量を検出可能に支持体73に支持したものである。
【0058】
従って、この成分量測定装置Sを用いるときは、図15に示すように、被検対象の例えば木材からなる物体Wに支持体73が挿通される穴Waを開け、この穴Waに、支持体73を挿入し、被検対象の物体Wが検出体13の密集面71の全部を外側から覆うようにする。これによっても、被検対象の物体Wが検出体13の密集面71の全部を外側から覆うので、物体Wを透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。また、棒状のコア70を利用することで送信部から離れた測定部でも測定が可能になる。
【0059】
図16には、また別の実施の形態に係る物体Wの成分量測定装置の検出部Kを示している。これは、検出体13,励磁体3及び調整体33を、コイル2,12,32を巻回して外周面全体を密集面とした筒状に形成している。コイル2,12,32は、支持体73に支持した筒状のコア4,14,34に巻回されている。検出体13の内径を励磁体3の外径より大きく設定し、励磁体3の内径を調整体33の外径より大きく設定し、励磁体3及び調整体33を、検出体13内に同軸で挿入して構成している。この検出体13を用いた成分量測定装置Sを用いるときは、図15に示すと同様に、被検対象の例えば木材からなる物体Wに検出体13が挿通される穴Waを開け、この穴Waに、検出体13を挿入し、被検対象の物体Wが検出体13の密集面の全部を外側から覆うようにする。これによっても、被検対象の物体Wが検出体13の密集面の全部を外側から覆うので、物体Wを透過する磁束にギャップが生じることがなく、そのため、測定感度が向上させられる。
【実施例】
【0060】
次に、実施例を示す。
図17に装置構成を示す。この装置においては、図2に示すと同様の調整共振回路30を備えた検出部K(A)と、図4に示すと同様の調整共振回路30を備えない別の検出部K(B)とを作成した。検出部Kにおいて、励磁体3,検出体13及び調整体33は、図10に示すと同様に構成され、コイルはプリント両面基板において線のパターンをエッチングにより作成し両面のパターン端をスルーホールで貫通して製作した。励磁体3,検出体13及び調整体33の大きさは、コアの板厚tを2mm、縦500mm、横300mmにした。励磁体3,検出体13及び調整体33は、基台80に設けられており、検出体13と調整体33との間には樹脂板81が介装されている。ステージ40は、検出体13に付設した樹脂シート82を用い、周囲を側壁83で囲繞し、容器状に形成した。側壁83も樹脂シート82で被覆した。容器寸法は縦700mm、横500mm、深さ150mmである。
【0061】
この装置を用いて、被検対象は水分を含む紙とし、その紙の水分量について試験した。出力量を、電圧と位相差にし、水分量を変えて、検量線を作成した。
図18に、調整共振回路30を備えない検出部Kを使用した装置の試験結果と、調整共振回路30を備えた検出部Kを使用した装置の試験結果を示す。
【0062】
このことから、調整共振回路30を用いない場合、水分量が40重量%以下の領域における測定分解能は、受信電圧については約1.3倍良く、位相差については約1.2倍良く測定が可能である。また、逆に水分量が40重量%より多い領域においては、調整共振回路30を用いたほうが測定分解能がよい。受信電圧は約10倍、位相差では約1.5倍測定分解能が良い。よって、水分量が40重量%以下領域の測定は、調整共振回路30を用いない場合が有利であり、水分量が40重量%より多い領域では、調整共振回路30を用いたほうが有利であることが分かった。即ち、水分量0〜40重量%においては、調整共振回路30を備えない検出部Kを使用した装置の分解能が高く、水分量40重量%を超えるものについては、調整共振回路30を備えた検出部Kを使用した装置の分解能が高く、被検対象の性状に応じて使い分けることが良いことが分かった。
【0063】
次に、別の実施例を示す。これは、図19に示すように、図10に示すと同様の渦巻状に巻回した励磁体3,検出体13及び調整体33を用いた検出部Kを備えた成分量測定装置Sである。励磁体3,検出体13及び調整体33のコイルは直径1.8mmの被覆された銅線で直径約150mmの渦巻き形状とした。この装置を用いて、被検対象は水分を含む紙とし、その紙の水分量について試験した。特に、ギャップdについて検証した。結果を図19(b)に示す。この結果から、検出コイルと被検対象物を5mm離しても測定が可能であることが分かった。即ち、水分量20重量%〜70重量%の領域において、受信電圧も位相差も単調な減少変化をしていることから被検対象物から5mm離れたところでも十分に測定可能であることが分かる。
【0064】
<試験例>
図17に示す装置を用いて、塩蔵わかめを測定サンプルに用いて測定を行い、水分量(測定エリア内の重量)及び塩分の量(測定エリア内の重量)の検量線を求めた。その結果を図20に示す。図20のいずれも、多項式の関数で検量線を作成でき、これを用いて水分量(測定エリア内の重量)や塩分の量(測定エリア内の重量)の推定が可能である。
【0065】
尚、上記実施の形態において、検出部Kの構成は上述したものに限定されるものではなく、被検対象の物体Wが検出体13の密集面側に設けられるようにすれば、適宜変更して差支えない。また、被検対象や、測定する成分は、どのようなものでも良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、例えば、塩蔵わかめ,シイタケ,麺類等の農水産加工物を始め、種々の物体Wの品質管理などに、極めて有用になる。
【符号の説明】
【0067】
S 成分量測定装置
W 物体(被検対象)
K 検出部
C 制御部
1 励磁回路
2 コイル(励磁コイル)
3 励磁体
4 コア
5,6 密集面
7 送信機
8 正弦波発信回路
10 検出共振回路
12 コイル(検出コイル)
13 検出体
14 コア
15,16 密集面
17 コンデンサ
20 受信器
21 振幅最大値検出回路
22 位相検出回路
23 A/D変換器
30 調整共振回路
32 コイル(調整コイル)
33 調整体
34 コア
35,36 密集面
37 コンデンサ
40 ステージ
50 相関記憶手段
51 成分量算出手段
52 振幅変化量算出手段
53 位相差算出手段
54 表示部
60 集合体
63 支持板
64 コア
64a,64b 扁平部
70 コア
71 密集面
73 支持体
80 基台
81 樹脂板
82 樹脂シート
83 側壁
図1
図2
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