(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695568
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】アスファルト用施工性改善剤
(51)【国際特許分類】
E01C 7/26 20060101AFI20200511BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20200511BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
E01C7/26
C08K5/05
C08L95/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-139204(P2016-139204)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-9376(P2018-9376A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】山仲 藍子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 紀宏
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−277613(JP,A)
【文献】
特開昭56−008462(JP,A)
【文献】
特開平02−292368(JP,A)
【文献】
特開平02−228363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
C08K 3/00〜 13/08
C08L 1/00〜101/14
C09K 5/00〜 5/20
C09K 3/00〜 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、骨材およびアスファルト用施工性改善剤の混合物からなるアスファルト合材であって、
前記アスファルト用施工性改善剤が、下記式(1)で示される化合物であ
り、前記アスファルト100重量部に対して、0.1〜3重量部の前記アスファルト用施工性改善剤
を含有することを特徴とする、アスファルト合材。
【化1】
(式(1)中、
R
1は炭素数6〜14のアルキル基又はアシル基を示し、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、
xは1〜5の整数を示す。)
【請求項2】
アスファルト、骨材およびアスファルト用施工性改善剤の混合物からなるアスファルト合材を製造する方法であって、
前記アスファルト用施工性改善剤が、下記式(1)で示される化合物であ
り、前記アスファルト100重量部に対して、0.1〜3重量部の前記アスファルト用施工性改善剤
を添加することを特徴とする、アスファルト合材の製造方法。
【化1】
(式(1)中、
R1は炭素数6〜14のアルキル基又はアシル基を示し、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、
xは1〜5の整数を示す。)
【請求項3】
アスファルトおよび骨材を含有するアスファルト合材の施工性を改善する方法であって、
前記アスファルト100重量部に対して、下記式(1)で示される化合物を0.1〜3重量部添加することを特徴とする、アスファルト合材の施工性を改善する方法。
【化1】
(式(1)中、
R1は炭素数6〜14のアルキル基又はアシル基を示し、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、
xは1〜5の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、道路舗装等に使用されるアスファルト用施工性改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装用に用いられるアスファルト合材は、骨材とアスファルトを混合して製造されるが、混合するために加熱してアスファルトの粘度を低下させる必要がある。しかし、アスファルトは熱によって劣化してしまうため、過剰な熱をかけることは好ましくない。特に近年、道路工事などで掘り起こされたアスファルト舗装廃材を、新規アスファルトや骨材と混合して、再利用するようになってきている。アスファルト舗装廃材に含まれるアスファルトは劣化しており、新規アスファルトと比較すると柔軟性が低く、新規アスファルトのみを使用する場合と同じ温度では製造することが難しい。
【0003】
そこで、製造温度を上げることにより舗装廃材中のアスファルトを柔らかくすることはできるが、このためには高温にする必要があるため、舗装廃材中のアスファルトと混合された新規アスファルトの劣化が進む可能性があり、この方法は適切ではない。このため、製造温度をなるべく上げることなしに、舗装廃材中のアスファルトを柔軟化させることが望まれている。
【0004】
アスファルト合材の製造時や舗装施工時における作業性改善のためにアスファルト舗装廃材中のアスファルトを柔軟化させる方法として、軽油等の鉱油を添加する方法(特許文献1)や、鉱油と脂肪酸アルキルエステルや油脂を併用してアスファルトに添加する方法(特許文献2、3、4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−333515
【特許文献2】特開2005−154464
【特許文献3】特開2005−154466
【特許文献4】特開2010−248472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、温度が低下した時にアスファルトの粘度が急激に上がり、施工しにくくなることがあった。そのため、施工時に温度が低下してもアスファルトを軟化させる効果が高いアスファルト用施工性改善剤が求められている。
【0007】
更に、アスファルト用施工性改善剤を添加してからの保管時間が長くなると、保管の間に熱がかかり続けることにより、引火点や沸点未満の温度であっても気化してしまうため、軟化効果が低下してしまうことがある。そのため、アスファルト用施工性改善剤には耐熱性も求められている。
【0008】
本発明の課題は、アスファルトに添加して軟化させることで施工性を改善し、さらにアスファルトを加熱して保管しても軟化効果の低下が生じにくいような、アスファルト用施工性改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、式(1)で示される化合物をアスファルトに添加することにより、アスファルト舗装時の施工性が改善されると共に、高い耐熱性も得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、
以下のものである。
(1)
アスファルト、骨材およびアスファルト用施工性改善剤の混合物からなるアスファルト合材であって、
前記アスファルト用施工性改善剤が、下記式(1)で示される化合物であ
り、前記アスファルト100重量部に対して、0.1〜3重量部の前記アスファルト用施工性改善剤
を含有することを特徴とする、アスファルト合材。
【化1】
(式(1)中、
R
1は炭素数6〜14のアルキル基又はアシル基を示し、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、
xは1〜5の整数を示す。)
(2)
アスファルト、骨材およびアスファルト用施工性改善剤の混合物からなるアスファルト合材を製造する方法であって、
前記アスファルト用施工性改善剤が、前記式(1)で示される化合物であ
り、前記アスファルト100重量部に対して、0.1〜3重量部の前記アスファルト用施工性改善剤
を添加することを特徴とする、アスファルト合材の製造方法。
(3)
アスファルトおよび骨材を含有するアスファルト合材の施工性を改善する方法であって、
前記アスファルト100重量部に対して、前記式(1)で示される化合物を0.1〜3重量部添加することを特徴とする、アスファルト合材の施工性を改善する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の
アスファルト合材によれば、アスファルトを軟化させ、製造、運搬、施工作業における施工性を改善することができ、さらにアスファルト用施工性改善剤の耐熱性から、アスファルトを加熱して保管しても軟化効果の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアスファルト用施工性改善剤は、式(1)で示される化合物からなる。
【化2】
(式(1)中、R
1は炭素数6〜14のアルキル基又はアシル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、xは1〜5の整数を示す。)
【0013】
式(1)中のR
1は、アルキル基又はアシル基を表し、炭素数は6〜14であり、好ましくは8〜14であり、より好ましくは10〜12である。R
1の炭素数が6未満の場合は耐熱性が不足することがある。また、R
1の炭素数が14を超えた場合、アスファルト軟化力が低下することがある。
このアルキル基又はアシル基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。また、このアルキル基又はアシル基は、分岐であってもよく、直鎖であってもよい。その中でも、R
1は、アシル基であることが特に好ましく、直鎖であることがさらに好ましい。
【0014】
R
1の好ましいアシル基の具体例としては、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基が挙げられ、その中でもデカノイル基が特に好ましい。
【0015】
式(1)中のAOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。具体例としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、好ましくはオキシブチレン基である。炭素数が4を超える場合には、アスファルト軟化力が不足することがある。また、炭素数が1の場合には、耐熱性が不足することがある。
【0016】
式(1)中のxは、1〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1である。yが5を超える場合は、アスファルトの軟化力が不足することがある。
【0017】
本発明のアスファルト用施工性改善剤は、新規アスファルトに対して使用でき、再生アスファルトに対しても使用でき、更に新規アファルトと再生アスファルトとの混合物に対しても使用できる。具体的には、新規アスファルトとしては、例えばストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、石油アスファルトに改質剤としてSBS等のポリマーを加えた改質アスファルト、排水性舗装用高粘度アスファルトが挙げられる。また、再生アスファルトとしては、古くなったり傷んだアスファルト舗装を破砕して利用した再生アスファルトが挙げられる。
【0018】
また、式(1)の化合物の添加量は限定されないが、アスファルト100質量部に対し、式(1)の化合物を0.1〜3質量部添加することが好ましい。
【0019】
本発明のアスファルト用施工性改善剤は、アスファルトを加温して流動性を持たせた状態であれば、いずれの段階で添加してもよいが、通常は、アスファルト合材を製造する時に添加する。アスファルト合材は、一般的には、アスファルト、砕石、砂利、石粉等からなる骨材、式(1)の化合物からなるアスファルト用施工性改善剤、および必要に応じてその他の添加剤を混合して製造される。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
表1に示す化合物a〜hについて評価を行い、評価結果を表2に示した。表1には、式(1)のR
1、AO、xをそれぞれ示す。なお、表2の「ブランク」は、アスファルト用施工性改善剤を添加していない比較例を示す。
【0021】
(粘度)
50ml容量のガラス瓶にアスファルト(ストレートアスファルト 60/80 昭和シェル石油)を約40g量り取り、表2に示すように、表1に示される各化合物をそれぞれアスファルトに対し1重量%になるよう添加し、撹拌し、各サンプルを調製した。調製したサンプルの粘度を60℃にて測定し、以下のとおり評価した。
◎:粘度が130Pa・s以下
○:粘度が130Pa・sより大きく150Pa・s以下
×:粘度が150Pa・sより大きい
【0022】
(耐熱性)
ハロゲン水分計にてアスファルト用施工性改善剤を120℃で5分間加熱した際の重量変化を測定し、減量率を算出した。減量率が大きいほど、高温で保管された際に気化する可能性が高いことが示される。よって、以下のとおり評価した。
○:1.0%未満
×:1.0%以上
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
実施例1〜5のアスファルト用施工性改善剤では、良好なアスファルト軟化効果と耐熱性が得られた。
【0026】
比較例1では、式(1)におけるR
1が大きい化合物fを用いているが、アスファルト軟化効果が低い。
比較例2では、式(1)におけるR
1が大きく、かつxが大きい化合物gを用いているが、アスファルト軟化効果が低い。
比較例3では、式(1)におけるxが大きい化合物hを用いているが、アスファルト軟化効果が低い。
比較例4および5では、脂肪酸メチルエステルを用いているが、アスファルト軟化効果は良好であるが、耐熱性が劣る。