(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695572
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】タンクローリ車用弁装置
(51)【国際特許分類】
B67D 7/78 20100101AFI20200511BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
B67D7/78 D
F16K37/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-101108(P2018-101108)
(22)【出願日】2018年5月28日
(65)【公開番号】特開2019-206973(P2019-206973A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚彦
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−055300(JP,A)
【文献】
特開2000−085900(JP,A)
【文献】
特開平09−280405(JP,A)
【文献】
特開平02−275317(JP,A)
【文献】
特開昭52−145828(JP,A)
【文献】
実開平06−042404(JP,U)
【文献】
実開平02−073198(JP,U)
【文献】
実開平01−148000(JP,U)
【文献】
特開昭60−252244(JP,A)
【文献】
実開昭60−145683(JP,U)
【文献】
実開昭60−093000(JP,U)
【文献】
実開昭57−154535(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0107035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/00− 7/86
F16K 37/00
B65D 88/12
B60P 3/22− 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハッチを有し、各ハッチの注油ホース接続口が底弁を介して共通配管に接続され、該共通配管の注油ホース接続口近傍に、上流と下流とをそれぞれ弁体により液室に区画し一部を光透過部材で構成した目視管ユニットUを接続してなるタンクローリ車用弁装置において、
前記上流側の弁体には当該弁の上流側、及び下流側の液の有無及び弁の開閉を検出するセンサ構成部材が配設されているタンクローリ車用弁装置。
【請求項2】
前記センサ構成部材は、相対向する窓を備えたハウジングにプリズムと受光素子とを収容し、前記光透過部材からの光、及び前記プリズムからの光を受光素子で検出するように構成されている請求項1に記載のタンクローリ車用弁装置。
【請求項3】
前記弁体はバタフライ弁により構成され、前記センサ構成部材は弁板の回転中心を構成する部材に設けられている請求項2に記載のタンクローリ車用弁装置。
【請求項4】
前記センサ構成部材は、前記バタフライ弁の弁棒軸に収容されている請求項3に記載のタンクローリ車用弁装置。
【請求項5】
前記センサ構成部材は、前記バタフライ弁の操作棒に収容されている請求項3に記載のタンクローリ車用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリ車用弁装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油槽所から給油所に燃料油を配送するための手段としてのタンクローリ車は、タンクが複数のハッチに仕切られ、それぞれのハッチの下方に底弁を介して共通配管が接続されており、各ハッチには配送先の注文に応じて例えば1番のハッチにレギュラーガソリン、2番のハッチに軽油、3番のハッチに灯油と各ハッチ毎に異なる燃料油を積込むことができる。
【0003】
このようなタンクローリでの荷卸し作業は、例えば特許文献1に見られるように共通配管の適所の一部を透光材で構成したサイトグラスを設けてサイトグラスにより目視で液の有無を確認したり、共通配管に発光素子と受光素子とからなる液検出手段やサーミスタなどの感温抵抗体からなる液検出手段により共通配管内の液の有無を検出してハッチの荷卸し完了を知ることが提案されている。
【0004】
このようなタンクローリでは、1つのハッチの荷卸ろしが終了すると、ハッチの底弁を閉じ、サイトグラスで目視管ユニット内の燃料油の有無を確認したのち注油ホースを外すことがおこなわれている。
ところが、注油ホースの取り外し前にサイトグラスでの目視による残油の確認を怠って注油ホースを外してしまうと燃料油が注油ホース接続口から飛散してしまうという問題がある。
【0005】
また、サイトグラスによる場合は夜間にあっては液の有無の確認が不能であり、また流路に受光素子を組み込むと、構造が複雑、大型化する等の問題があり、またサーミスタを使用して液の有無を検知する構造では外気温度とローリの燃料油の温度とに大きな隔たりがない場合には検出ができないなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1-148000号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、目視確認ミスなどのヒューマンエラーによる漏油を防止でき、しかも流路構造の複雑化を招くことのない弁装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のハッチを有し、各ハッチの注油ホース接続口が底弁を介して共通配管に接続され、該共通配管の注油ホース接続口近傍に、上流と下流とをそれぞれ弁体により液室に区画し一部を光透過部材で構成した目視管ユニットUを接続してなるタンクローリ車用弁装置において、前記上流側の弁体には当該弁の上流、及び下流側の液の有無及び弁の開閉を検出するセンサ構成部材が配設されている。
【発明の効果】
【0009】
光透過部材からの光の有無や液による光路の変化を検出して弁の開閉や共通配管内の液の有無をセンサ構成部材により検出でき、人為的ミスによる液漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】図(A)、(B)はそれぞれ上流側のバタフライ弁の構造を弁筐の一部を切り欠いて下流側と上流側とから示す図。
【
図3】バタフライ弁の構造を弁棒軸から弁板を取り外した状態で弁板の弁棒軸受と弁棒軸とを一部切り欠いて示す図。
【
図4】図(A)はセンサ構成部材、及び図(B)、(C)は、それぞれセンサ構成部材の表裏の構造を示す図、及び図(D)は機能を模式的に示す図。
【
図5a】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【
図5b】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【
図5c】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【
図6】図(A)、(B)は、それぞれ本発明の第二実施例を、弁板の構造で示す図。
【
図7】図(A)(B)はそれぞれ上流側に配置される第一の弁に取り付けるセンサ構成部材を示す図
【
図8a】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【
図8b】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【
図8c】弁の開度とセンサ構成部材の位置関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の弁装置を備えたタンクローリ車の注油ホース接続口近傍の第一実施例を示すものであって、タンクローリ車の各ハッチの底弁1に接続された共通配管2の注油ホース接続口3の近傍には上下流の関係となるように二台の弁、この実施例ではバタフライ弁4、5が接続されて1つの液室6が区画されている。この液室6には外部から内部の流体を確認できる窓を構成する光透過部材、いわゆるサイトグラス7が設けられていて、これらバタフライ弁4,5、液室6、サイトグラス7により目視管ユニットUが構成されている。
【0012】
上流側のバタフライ弁4にはその開閉、共通配管2、及び液室6の液の有無を検知する
光学式液センサからなるセンサ構成部材8が配置され、信号線9により液の有無、弁の開閉を示す信号を出力している。
【0013】
図2は、上流側のバタフライ弁4の詳細を弁筐の一部を切り欠いて示すものであって、弁筐10に回動自在に組み込まれる弁板11には、配置されたとき上下となり回動軸C―C上に位置するところには、レバー12に連結する操作棒13と弁棒軸受14が配置され、この弁棒軸受14に弁筐10の弁棒軸15が回動可能に挿入されている。
【0014】
弁棒軸受14は、
図3に示したように相対向する位置に窓16,17が形成されており、また弁棒軸15は、窓16,17と重なる位置で、かつ相互が相対向する窓18,19が形成され、内部に液の存在の検知と弁板11の角度位置(開閉)とを検出するセンサ構成部材8が組み込まれている。
【0015】
センサ構成部材8は、
図4(A)〜(C)に示したように相対向する窓16、17のそれぞれ正対するように上下方向に延びるように2つのプリズム構成部材21、21’と、各プリズム構成
部材21、21’により形成される斜面a,b、及び斜面a’,b’(
図4(D))に対向し、斜面a,a’に光線を照射する発光素子22a,22a’と、向かい合う他方の斜面b、b’からの反射光を受ける受光素子22b,22b’と、サイトグラス7から入射した光の変化を検出する受光素子23,23’とが基板24に配置されている。
【0016】
基板24は、これの両面に配置された2組のセンサー構成部材のうちの一方の組、つまり発光素子22a、受光素子22b、受光素子23が常時、つまり弁板11の開度にかかわりなく共通配管側を、また他方の組のセンサー構成部材、つまり発光素子22a’、受光素子22b’、受光素子23’がサイトグラス側に正対している。
【0017】
このように構成されたセンサ構成部材8は、一方側に例を採ると液が存在する場合には発光素子22aの光線は斜面aを通過して外部に出射光Aとなって出てしまい受光素子22bには入射せず、液有信号となる。一方、液が存在しない場合には面aで全反射を受け、他方の面bから回帰光Bとなって受光素子22bに入射して液無信号となる。
【0018】
この実施例において、第一の組のセンサ構成部材(発光素子22a、受光素子22b、受光素子2
3)が共通配管2の側を、また他方の組のセンサ構成部材(発光素子22a’、受光素子22b’、受光素子23’)が液室6(サイトグラス7)の側を向くように配置されている場合を例に採って説明する。
【0019】
1つのハッチの荷卸をすべくローリの注油ホース接続口3と地下タンクの注油口とを注油ホースにより接続し、上流側の第一の弁4が閉弁状態であることを受光素子23,23’の信号により確認し、また下流側の第二の弁5の閉弁も確認する。すなわち、第一の弁4が閉弁状態では(
図5a)、第一の弁4の上流側(共通配管2の側)には入射光はないが、下流側にはサイトグラス7からの光が入射するため、表1に示したように受光素子23には入射光はなく、また受光素子23’にはサイトグラス7の光が入射するので弁4の閉弁が確認できる。
【0021】
次いで所定の油種と油量を収容したハッチの底弁1を開くと、共通配管2に燃料油が流れ込み、第一の弁4で停止する。この状態では前述のごとく共通配管2側の受光素子23には入射光はなく、また液室6側の受光素子23’にはサイトグラス7の光が入射する一方、発光素子22aの光はプリズム構成部材21により形成された面
aを透過して受光素子22bには入射せず、また、液室2側には液が存在しないので、発光素子22a’からの光はプリズム構成部材
21’による面
a’、b’での反射を受けて受光素子2
2b’に入射する。これにより共通配管2側に液が流入したことが判断できる。
【0022】
ついで第一の弁4を開いて半開程度になると(
図5b)
、弁棒軸受14の窓16,17が弁棒軸15により閉鎖されるため受光素子23、23’には光が入射しない。さらに弁板11を回動させ第一の弁4を全開にすると再び窓16,17と窓18,19が重なり(
図5c)、液室6にも液が流れ込み、液は第二の弁5で停止する。この時点でサイトグラス7から液室6の液の色を見て油種を確認する。全開の状態では受光素子23,23’にはともにサイトグラス7からの光が入射する。このようにして油種の一致が確認できた段階で、第二の弁5を開弁して荷卸ろしを行う。
【0023】
荷卸ろしが完了した時点でそれぞれの第一、第二の弁4,5をそれぞれ閉弁する。弁4が閉弁している場合は、弁棒軸受14の窓16,17と弁棒軸15の窓18,19が重なるが共通配管2側の受光素子23に光が入射せず、また受光素子23’にはサイトグラス7からの光が入射するので、第一の弁4が完全に閉弁したことが判断される。
【0024】
一方、荷卸ろしが不完全で液室6に液が残留している場合には液室6側の受光素子22b
’には発光素子22a
’の光が入射しないため液有りと判断できる。
【0025】
すなわち、この実施例では、全閉状態は共通配管側が「暗」、サイトグラス側が「明」となり、半開状態では共通配管側が「暗→明」、サイトグラス側が「明」となり、さらに全開の状態では共通配管側が「明」、サイトグラス側も共通配管と同程度の「明」となるので3つの状態を確実に検出できる。
【0026】
このように、荷卸ろし後の残液の有無をセンサ構成部材8により自動的に確認できるため、注油ホースの取り外し時の燃料油の飛散を防止できる。そればかりでなく同一のセンサで弁の閉弁も検出することができる。
【0027】
なお、第一の実施例においては弁棒軸15にセンサ構成部材8を内蔵させているが、
図6に示したように弁板11の操作棒13に、弁板11の両面に窓25、25’を形成してセンサ構成部材8を、
図7に示したように第一の実施例と同様のセンサ構成部材8を天地を逆向きに収容しても同様の作用効果を奏する。
【0028】
すなわち第一の弁4が閉弁の状態では(
図8a)、共通配管2側には光が入射せず、またサイトグラス7側には入射があるので全閉であることが判断できる。なお、
図8a〜
図8cでは受光素子23,23’の図示が省略されている。
また、今の状態では第一実施例の場合と同様に共通配管2、液室6には液が存在しないため発光素子22
a、22a’からの光はプリズム構成部材の斜面
で反射されて受光素子22b、22b’に入射する。
【0030】
次いで所定の油種と油量を収容したハッチの底弁1を開くと、共通配管2に燃料油が流れ込み、第一の弁4で停止する。この状態では前述のごとく共通配管2側の受光素子23には入射光はなく、また液室
6側の受光素子23’にはサイトグラス7の光が入射する一方、発光素子22aの光はプリズム構成部材21による面aから透過して受光素子22bには入射せず、他方液室
6側には液が存在しないので、発光素子22a’からの光はプリズム構成部材の反射を受けて受光素子23b’に入射する。これにより共通配管2側に液が流入したことが判断できる。
【0031】
ついで第一の弁4を開いて半開程度になると(
図8b)センサ構成部材8の窓25,25’からの光が受光素子23、23’に入射する。さらに第一の弁4を全開すると(
図8c)、液室6に液が流れ込み第二の弁5で停止する。この時点でサイトグラス7から液室6の液の色を見て油種を確認する。全開の状態では窓25,25’がサイトグラス7の側に向くので受光素子23,23’にはともにサイトグラス7からの光が入射する。このようにして油種の一致が確認できた段階で、第二の弁5を開弁して荷卸ろしを行う。
【0032】
荷卸ろしが完了した時点でそれぞれの第一、第二の弁4,5をそれぞれ閉弁する。ハッチの液が完全に排出されている場合には液室6
に液が存在していないので、センサ構成部材8の
液室6側の受光素子22b
’には発光素子22a’の光が入射するので、液の不存在が確認できる。
一方、荷卸ろしが不完全で液室6に液が残留している場合には発光素子22a
’の光が透過してしまうため液室6側の受光素子22b
’に入射せず液有りと判断できる。
【0033】
このように、荷卸ろし後の残液の有無をセンサ構成部材により自動的に確認できるため、注油ホースの取り外し時の燃料油の飛散を防止できる。そればかりでなく同一のセンサで弁の開閉も検出することができる。
すなわち、この実施例では表2に示すように全閉状態は共通配管側が「暗」、サイトグラス側が「明」となり、半開状態では共通配管側が「暗から明に変化」、サイトグラス側が「明」となり、さらに全開の状態では共通配管側が「明」、サイトグラス側が「明」となるので弁の3つの開閉状態を確実に検出できる。
【0034】
この実施例によればレバー12の一部に表示手段や報知手段26を内蔵させてセンサ構成部材8の検出情報を表示する構造を比較的容易に実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば弁板の回転軸構成部材に受発光素子を組込むことにより弁開閉センサ、及び液検出センサを構成できるため、流路管の改修を要することなく荷卸し作業をセンサにより管理できる。
【符号の説明】
【0036】
1 底弁 2 共通配管 3 注油ホース接続口 4、5 バタフライ弁 6 液室 7 サイトグラス 8 センサ構成部材 10 弁筐 11 弁板 13 操作棒 14 弁棒軸受 15 弁棒軸 16,17 窓 21、21’ プリズム構成部材 22a、22a’ 発光素子 22b、22b’ 受光素子 23、23’ 受光素子 24 基板 U 目視管ユニット