特許第6695600号(P6695600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6695600-非広告デジタル写真データ展示方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6695600
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】非広告デジタル写真データ展示方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 7/00 20060101AFI20200511BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20200511BHJP
   G03G 15/36 20060101ALI20200511BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20200511BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20200511BHJP
   G09F 7/16 20060101ALI20200511BHJP
   G09F 7/18 20060101ALI20200511BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   G03G7/00 M
   B41M3/06 C
   G03G15/36
   B41J3/407
   B41J3/60
   G09F7/16 F
   G09F7/18 F
   G09F13/04 R
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-91678(P2019-91678)
(22)【出願日】2019年5月14日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3219816号
【原出願日】2018年11月9日
【審査請求日】2019年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503138020
【氏名又は名称】株式会社昇寿堂
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼戸 良▲教▼
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭49−015273(JP,Y1)
【文献】 特開昭62−180387(JP,A)
【文献】 実公昭36−002339(JP,Y1)
【文献】 特開平07−261686(JP,A)
【文献】 特開2009−226693(JP,A)
【文献】 特開2002−099230(JP,A)
【文献】 特開2011−116070(JP,A)
【文献】 特開平08−156163(JP,A)
【文献】 特表昭59−502078(JP,A)
【文献】 実開昭60−178883(JP,U)
【文献】 特開昭61−138983(JP,A)
【文献】 特開昭63−201685(JP,A)
【文献】 特開平03−207652(JP,A)
【文献】 特開平06−250595(JP,A)
【文献】 特開2007−203724(JP,A)
【文献】 特開2016−085289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 7/00
B41M 5/00
G09F 13/00
B32B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの写真についてのデジタル写真データであって広告ではないデジタル写真データを印刷された写真として展示する非広告デジタル写真データ展示方法であって、
当該デジタル写真データにより当該一つの同じ写真がシートの両面に同じ位置で同一の大きさで且つ透視した際に完全に重なる向きに印刷されるよう当該デジタル写真データ及び印刷条件を600dpi以上の解像度を有するデジタル印刷機のデータ入力部に入力する入力ステップと、
当該デジタル印刷機を使用し、不透明度が60%以上70%以下の半透明であって厚さが142μm以上158μm以下であるシートの両面に当該一つの同じ写真を同じ位置で同一の大きさで且つ透視した際に完全に重なる向きに600dpi以上の解像度で印刷して写真印刷物を得る印刷ステップと、
印刷ステップにおいて得られた写真印刷物に対しシートの両側から光が入射する状態で当該写真印刷物を展示する展示ステップとを含んでおり、
印刷ステップにおける前記両面の写真(両側で光沢性が異なるものを除く)の印刷位置のずれは0より大きく100μm以下であり、
前記半透明のシートは、一方の側の面から入射して反対側の面の写真に反射して一方の側の面から出射する光を遮蔽しないものであり、
前記写真印刷物は、ISO5シリーズで規定される透過濃度が4.0以上である部分を有することを特徴とする非広告デジタル写真データ展示方法。
【請求項2】
前記両面の写真の印刷位置のずれは、0より大きく50μm以下であることを特徴とする請求項1記載の非広告デジタル写真データ展示方法。
【請求項3】
前記写真印刷物を透明な板に貼り付けた状態で展示することを特徴とする請求項1又は2に記載の非広告デジタル写真データ展示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、デジタル印刷により写真を印刷した写真印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷技術の進歩により、写真印刷においても、高画質・高精細で写真を印刷することができるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-095781号公報
【特許文献2】特開2001-121865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二次元的な審美性の範囲で画質が高められているのにとどまり、三次元的な、即ち銀塩写真におけるカラーポジフィルムが持っていたような奥行き感のあるデジタル印刷技術は今のところ開発されていない。
本願の発明は、上記のような状況を考慮して為されたものであり、平面的な印刷でありながらポジフィルム的な奥行き感のある優れた写真印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、この出願の請求項1記載の発明は、一つの写真についてのデジタル写真データであって広告ではないデジタル写真データを印刷された写真として展示する非広告デジタル写真データ展示方法であって、
当該デジタル写真データにより当該一つの同じ写真がシートの両面に同じ位置で同一の大きさで且つ透視した際に完全に重なる向きに印刷されるよう当該デジタル写真データ及び印刷条件を600dpi以上の解像度を有するデジタル印刷機のデータ入力部に入力する入力ステップと、
当該デジタル印刷機を使用し、不透明度が60%以上70%以下の半透明であって厚さが142μm以上158μm以下であるシートの両面に当該一つの同じ写真を同じ位置で同一の大きさで且つ透視した際に完全に重なる向きに600dpi以上の解像度で印刷して写真印刷物を得る印刷ステップと、
印刷ステップにおいて得られた写真印刷物に対しシートの両側から光が入射する状態で当該写真印刷物を展示する展示ステップとを含んでおり、
印刷ステップにおける前記両面の写真(両側で光沢性が異なるものを除く)の印刷位置のずれは0より大きく100μm以下であり、
前記半透明のシートは、一方の側の面から入射して反対側の面の写真に反射して一方の側の面から出射する光を遮蔽しないものであり、
前記写真印刷物は、ISO5シリーズで規定される透過濃度が4.0以上である部分を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記両面の写真の印刷位置のずれは、0より大きく50μm以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記写真印刷物を透明な板に貼り付けた状態で展示するという構成を有する。
【発明の効果】
【0006】
以下に説明する通り、この出願の請求項1記載の発明によれば、平面的な印刷でありながらカラーポジフィルム的な奥行き感のある鮮烈な印象を視る者に与える状態で非広告デジタル写真データによる写真印刷物が展示される
また、シートの不透明度が60%以上70%以下であるので、より強い照明で背後から照明をしたり、シートの厚さを薄くしたりする必要がなく、この点でより好適なものとなる。
さらに、両側の写真の印刷位置のずれが100μm以下であるので、写真のシャープネスを低下させずに上記効果を得ることができる。
また、ISO5シリーズで規定される透過濃度が4.0以上である部分を有するので、カラーポジフィルム的な奥行き感を与える効果がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本願発明の実施形態の写真印刷物の斜視概略図である。
図2】実施形態の写真印刷物の制作のためにシート1の両面にデジタル印刷機により印刷を行う状態を示した概略図である。
図3】実施形態の写真印刷物における透かし多重印刷の効果について示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、実施形態の写真印刷物の斜視概略図である。この写真印刷物は、半透明のシート1の両面に同一の写真21,22を同一の大きさで印刷した印刷物である。図1において、(A)と(B)は、互いに逆の方から見た斜視概略図である。
【0009】
尚、写真21,22は、シート1よりも少し小さい大きさで印刷されており、シートの両側の面の縁には少しマージン(印刷されていない領域)がある。但し、マージンをゼロとすることも可能である。
【0010】
まず、半透明のシート1について説明する。実施形態において、シート1は、薄白色で適度な不透明度を有するものである。不透明度は、60〜70%程度であることが好ましい。不透明度は透過率の逆であるので、これは、可視域の波長における平均の透過率が30〜40%程度であることを意味する。
【0011】
シート1の材質は、上記不透明度に加え、必要な耐久性と強度を有していれば、任意のものを採用し得るが、この実施形態では合成紙が使用されている。例えば、ポリプロピレン系の合成紙が好適に使用され得る。
【0012】
より具体的な一例を示すと、シート1には、ポリプロピレン系二軸延伸式フィルム法合成紙が好適に使用できる。厚さは、上記不透明度の達成する範囲で任意であるが、142μm〜158μm程度とすることが好ましい。このような合成紙は、例えば、株式会社ユポ・コーポレーションからユポ電飾用紙として販売されており(「ユポ」は同社の登録商標)、適宜のものを選択して使用することができる。
【0013】
次に、印刷された写真21,22について説明する。
前述したように、シート1の両面には同一の写真21,22が同一の大きさで印刷される。この実施形態では、後述するように写真21,22はデジタル印刷により印刷されるので、「同一の写真」とは、同一の写真データ(イメージデータ)により印刷されるという意味である。したがって、「同一の大きさ」とは、同一の拡縮(拡大又は縮小の倍率)で印刷されるという意味である。
【0014】
さらに、両面の写真21,22は、たてよこの向きにおいて同じ向きに印刷されており、且つ同じ位置に印刷されている。したがって、両面の写真21,22は、透視した際に完全に重なる状態で視認される。「透視した際に完全に重なる状態」とは、人間の目で視た際に、両側の写真21,22がずれた状態では視認されないという意味である。物理的に完全に重なる、即ちズレがゼロということはあり得ない。両面の写真21,22の印刷位置のズレは、どんなに高性能の印刷機を使用しても発生する。しかし、そのズレが人間の目で視たときに認識されなければ良い。この意味で、印刷位置のズレは±100μm以下とすることが好ましく、±50μm以下とすることがより好ましい。
【0015】
このような印刷を行う印刷機(デジタル印刷機)について、図2を参照して説明する。図2は、実施形態の写真印刷物の制作のためにシート1の両面にデジタル印刷機により印刷を行う状態を示した概略図である。
【0016】
前述したように、実施形態における写真21,22の印刷には、±100μm以下、より好ましくは±50μm以下の位置精度が要求される。このように高い位置精度で印刷が行えるデジタル印刷機は、高級機種ということになってくるが、例えば、オランダに本社のあるXeikon N.V.社(Brieversstraat 70 4529 GZ Eede, Netherlands)からXEIKONのブランド名で販売されているデジタルカラー印刷機が該当する。より具体的には、XEIKON5000plus等を好適に使用することができる。尚、XEIKONの印刷機は、日本では、Xeikon N.V.社の日本法人であるザイコンジャパン株式会社(東京都文京区)を通じて購入することができる。
【0017】
実施形態の写真印刷物の制作に使用されるデジタル印刷機3は、図2に示すように、ロール方式の印刷物となっている。つまり、シート1はロール状に巻かれており(以下、シートロールという。)、引き出されて印刷位置において印刷がされる機構となっている。
【0018】
より具体的に説明すると、図2に示すように、デジタル印刷機3は、シート1に対して印刷を行う印刷ユニット31と、シートロール11を搭載するロール搭載部32と、印刷が行われたシート1を切断する裁断部34と、ロール搭載部32からシート1を引き出して印刷ユニット31に供給した後、裁断部まで搬送するシート1搬送系33と、印刷するパターンのデータを入力するデータ入力部35と、データ入力部35に入力されたデータに従って印刷ユニット31等を制御する制御ユニット36とを備えている。
【0019】
このデジタル印刷機3は、乾式電子写真方式で印刷を行うものとなっており、印刷ユニット31は、感光体ドラム、露光光源、トナー供給部、現像部等を備えている。本実施形態のデジタル印刷機3は、シート1の両面に同時にカラー印刷を行うため、シート13の搬送ラインの両側に各色の印刷ユニット31を設けた構成となっている。各印刷ユニット31では、その色の印刷パターンに応じて感光体を帯電させてトナーを付着させ、そのトナーが付着した面にシート1が圧接されながら搬送されるようにして印刷が行われる。
【0020】
印刷ユニット3の下流側には、トナーの定着を行う定着ユニット37が設けられている。定着ユニット37は、ヒータの熱によりトナーの定着を行うものである。その他、定着後にシート13の冷却を行う冷却ユニットが設けられている。
シート1搬送系33は、シート1の搬送ラインに沿って多数のローラ331を設けた構成となっている。多数のローラ331のうちの少なくとも一つは駆動ローラ332と圧力ローラ333であり、シート1を挟んで引っ張ることで搬送を行うものである。
また、ガイドローラ331のうちの幾つかは、調湿ユニット38に設けられたものとなっている。調湿ユニット38は、シート13を印刷に先立って加熱することでその湿り気を調節するユニットである。
【0021】
図2のデジタル印刷機3を使用して写真印刷物の制作を行う場合、写真データが予め準備され、データ入力部35に入力される。写真データは、カメラマンがカメラ(通常はデジタルカメラ)で撮影したデータである。カメラマンは、プロアマを問わない。
【0022】
尚、写真データは、文字通りの意味で写真21,22のデータである。写真データは、JPEGやBMPといった汎用イメージデータの形式であり得るが、それでも、そのデータは、デジタルカメラで撮影したデータか、又はアナログカメラで撮影したデータをデジタル化したものということになる。つまり、グラフィックソフトウェアで全て作成したイメージデータは、写真データではない。写真データをグラフィックソフトウェアで加工してもそれは写真データであるが、全てグラフィックソフトウェアで作成したイメージデータは、元になる写真データが存在しないので、写真データではない。言い換えると、現実に存在する物を写し撮ったデジタルデータであり、それが存在しない場合は写真データではない。
【0023】
デジタル印刷機3を使用して印刷を行う場合、作業者は、各種印刷条件をデータ入力部35に予め入力する。この中には、両面での印刷位置、印刷の向きの入力が含まれるが、上記の通り同じ位置、同じ向きの印刷となるよう入力を行う。
【0024】
機械の動作が開始されると、シート1搬送系が所定の速度でシート1を送る。この例のデジタル印刷機3は、各色の印刷ユニット31が上下に並んでおり、シート1は上下方向(例えば下から上)に搬送されながら、両面にカラー印刷がされる。図2に示すように、一方の側の面に各色の印刷を行う各印刷ユニット31と、他方の側の面に各色印刷を行う各印刷ユニット31とは、少し上下にずれて配置されている。各印刷ユニット31により印刷が行われ、定着ユニット37によりインクが定着すると、シート1の当該印刷箇所は、裁断部34に送られ、所定の位置で裁断が行われる。これにより、実施形態の写真印刷物の制作が完了する。
【0025】
このようにして制作される実施形態の写真印刷物は、半透明のシート1の両面に同じ写真21,22が同じ位置、同じ大きさ、同じ向き(完全に重なる向き)に印刷されているので、透かし多重印刷の効果で、カラーポジフィルム的な奥行き感のある鮮烈な写真印刷物となる。この点について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態の写真印刷物における透かし多重印刷の効果について示した概略図である。
【0026】
透かし多重印刷の語は、新規な造語であって、この明細書において初めて使用される用語である。透かし多重印刷は、平面的な印刷であっても、カラーポジフィルムが持っていたような奥行き感のある美しい写真21,22の印刷をデジタル印刷において行うことができないだろうかという課題の下、発明者が鋭意研究を行った結果、想到した印刷技術である。
【0027】
図3は、透かし多重印刷の効果を説明するため、両面の写真21,22を実際より離して描いており、模式的に表現している。実施形態の写真印刷物では、表、裏というのは特にないが、便宜上、図3において、写真印刷物を視る人の目eがある側を表側とし、これとは反対側を裏側とする。
【0028】
図3に示すように、実施形態の写真印刷物を目eで視た場合、目eは表側の写真21を捉える他、シート1が半透明であるため、裏側に印刷されている写真22も捉える。この際、両側の写真21,22は、位置精度±100μm以下という精度で位置が一致しているため、ずれたものとして視認されることはなく、一つの写真として人間の視角認識系は判断する。その一方で、人間の目eに入ってくる光線は、表側の写真21からの光線と裏側の写真22からの光線との双方であるため、奥行きを持った印象即ち立体感が視角認識に追加される状態となる。
【0029】
特に、濃淡の境界部分(コントラストの部分)では、コントラストがより強調され、奥行き感のある鮮烈な視感を与える。この現象(効果)のより詳しい原因については不明であるが、発明者が、写真を片面にのみ印刷した写真印刷物と両面に印刷した実施形態の写真印刷物とを比べたところ、顕著な現象として確認された。
【0030】
このような透かし多重印刷の効果は、写真だからこそ得られるものであると考えられる。つまり、写真というのは、現実にある物を写し撮ったイメージ図であるから、人間は、それを前提にそのイメージを視る。写真は、被写体が風景であったり人物であったりするが、いずれにしても被写体は奥行きを有するものである。奥行きを有するものであることを脳が前提として了解しなから表裏からの光線を目で捉えるため、脳での認識も奥行き感のあるものとなると考えられる。
【0031】
いずれにしても、実施形態の写真印刷物は、薄白色の半透明シート1の両面に同じ写真21,22を同じ位置に完全に重なる向きで印刷しているため、奥行き感のある鮮烈な視感を視る者に与える。このため、例えばプロのカメラマンが撮った写真を展示会で展示するといった用途に特に好ましいものとなる。この他、結婚式用の記念写真、お葬式用の遺影写真等でも好適に利用できるし、さらに観光地のPR用ポスター写真(観光地の風景写真)の用途にも好適に利用できる。
【0032】
このような実施形態の写真印刷物は、裏側の写真22がシート1を通して認識されることを利用しているため、裏側から光が入る状態で鑑賞するとより効果が高くなる。単に太陽や部屋の明かりにかざすだけでも良いが、背後から照明される状態で展示するとより効果的である。即ち、内部に照明器具を備えたボックス状のものを用意し、その前面に写真印刷物を装着して背後から照明した状態として鑑賞するとより好適である。写真印刷物を透明な板に張り付け、背後から照明する構成であっても良い。
【0033】
また、上述した透かし多重印刷の効果は、よりコントラストの高い写真を印刷した場合に顕著である。表と裏の双方からの光線を捉えることによる効果が、高コントラストの(光線の量の違いが大きい)写真の方がより強調されるからである。この場合のコントラストは、オリジナルの写真が持っているコントラストであり、実施形態で言えば、写真21,22のデータにおけるコントラストということになる。より具体的には、ISO5シリーズで規定される透過濃度が4.0以上となる部分を持つ写真データについて写真21,22と印刷すると、ポジフィルムが持っていたような奥行き感がさらに強調されるので、より好適である。
【0034】
尚、「半透明」の一般的な定義は特にないが、不透明度が20〜80%であれば「半透明」ということができ、実施可能である。このうち、実施形態のシートは60〜70%の不透明度であると説明したが、不透明度70%を越えていても、裏側からの照明を強くする等の方法により透かし多重印刷の効果を得ることができるので、実施は可能である。この意味で、不透明度が70%以下である構成は、裏側からの照明を特に強くしなくても良いという効果がある。
【0035】
また、不透明度が60%未満になってくると、表裏の写真21,22のずれが視認され易くなるが、この場合は、シート1の厚さを薄くすることで対応が可能である。シート1の厚さを薄くすると、シート1の耐久性や強度が低下してしまう場合が多い。この意味で、不透明度が60%以上というのは、シート1の耐久性強度を確保し易いという意義がある。
【0036】
また、印刷位置の精度は±100μm以下が好ましいと説明したが、位置精度がこれよりも多少低くても実施が可能である。印刷位置の精度が低い場合、表裏の写真21,22のずれが視認され易くなるので、写真のシャープネスを少し下げ、少しぼかした状態で印刷することで対応が可能である。この場合は、写真データを予め加工し、シャープネスを下げたデータとしておく。この意味で、印刷位置の精度±100μm以下である構成は、シャープネスを損なうことなく印刷が可能であり、この意味で好ましい。印刷位置の精度±50μm以下であると、この効果がさらに高められるので、より好ましい。
【0037】
尚、上記実施形態では、シート1は、薄白色の半透明であったが、乳白色の半透明でも良く、多少青みがかっていたり、薄緑であったりしても良い。ただ、写真の色調に影響を与えないという意味では、白系(乳白色、薄いグレー)の方が好ましい。
【0038】
また、シート1の材質としては、PETのようなポリエチレン系の合成紙でも良く、ポリスチレン系の合成紙が採用されることもあり得る。また、適切な不透明度や耐久性を有していれば、パルプ紙のような天然由来の材質のものを使用しても良く、表面にコーティングをして耐久性を高めたり、適度な不透明度を付与したりしたもの等が採用されることもあり得る。
【0039】
尚、デジタル印刷機としては、必要な印刷位置精度を達成でき、両面にカラー印刷ができるものであれば、前述した例以外のものを使用することができる。また、印刷の方式についても、レーザー等による乾式の他、インクジェットのような湿式の印刷を行うデジタル印刷機であっても良い。また、シート1を一枚ずつ送って印刷する枚葉式のデジタル印刷機が使われる場合もある。ロース式の場合でも、印刷済みものをいったんロール状に巻き取り、別の場所に持っていって裁断するロールツーロール式のデジタル印刷機が使用されることもある。
【0040】
また、デジタル印刷機の解像度については説明を省略したが、上述したように実施形態の写真印刷物はより高級感のある印刷物となるため、高い解像度を達成する印刷機を使用することが好ましい。例えば、600dpi以上の解像度を達成する印刷機を使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 シート
21 表側の写真
22 裏側の写真
3 デジタル印刷機
【要約】
【課題】 平面的な印刷でありながらポジフィルム的な奥行き感のある優れた写真印刷物を提供する。
【解決手段】 半透明のシート1の両面に同一の写真21,22が同一の大きさでデジタル印刷機により印刷された写真印刷物である。両面の写真21,22は、透視した際に完全に重なる向きに印刷されている。シート1の印刷前の不透明度は60%以上70%以下であり、両面の写真21,22の印刷位置のずれは100μm以下である。写真印刷物は、透明な板に貼り付けた状態で展示されたり、内部に照明器具を備えたボックスの前面に装着されたりして展示される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3