特許第6695603号(P6695603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6695603
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】物体識別方法および物体識別システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
【請求項の数】12
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-155842(P2019-155842)
(22)【出願日】2019年8月28日
【審査請求日】2019年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318008716
【氏名又は名称】株式会社スペース二十四インフォメーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明宏
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−296737(JP,A)
【文献】 特開昭51−113262(JP,A)
【文献】 特開平02−271198(JP,A)
【文献】 特開平05−225490(JP,A)
【文献】 特開2002−074421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
G01B 21/20
G08G 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別方法であって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサの前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動する相対移動中に実施され、
前記複数の発信機を連続的にまたは時間離散的に作動させてそれら発信機から複数の信号を発信させる発信工程と、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信工程であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定工程と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別工程と
物体識別という本番動作に先立ち、前記ラインセンサの作動状態について故障診断を行う故障診断工程であって、発信機と受信機との間の対応関係を無視して、各受信機ごとに、その受信機が、前記複数の発信機からすべての信号を受信したか否かを判定し、すべての受信機が同じ発信機から信号を受信していない場合には、その発信機が故障していると判定することと、いずれかの受信機がいずれの発信機からも信号を受信していないか否かを判定し、いずれの発信機からも信号を受信していない場合には、そのいずれかの受信機が故障していると判定することとの少なくとも一方を行うものと
を含む物体識別方法。
【請求項2】
各発信機は、固有の発信機IDを表す信号を発信するように構成され、
前記標的受信工程は、各受信機が各発信機から受信した信号から発信機IDを抽出し、各受信機が複数の発信機から同時に受信した複数の信号によってそれぞれ表される複数の発信機IDのうち、前記対向発信機に割り当てられた正規発信機IDと一致するものを表す信号を前記有効信号として選択する工程を含む請求項1に記載の物体識別方法。
【請求項3】
各受信機は、各発信機からの信号を近距離無線通信方式で受信するように構成される請求項1または2に記載の物体識別方法。
【請求項4】
各発信機は、可視光または赤外光である光を固有の点滅パターンで発光する発光器であり、
各受信機は、各発光器から発光された光を受光する受光器であり、
前記標的受信工程は、各受光器が受光した光から点滅パターンを抽出し、その点滅パターンを発光器IDに変換する工程を含む請求項1または2に記載の物体識別方法。
【請求項5】
前記複数の基準シルエットは、前記物体が識別される複数の候補としての複数の物体カテゴリーにそれぞれ固有な形状を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の物体識別方法。
【請求項6】
さらに、
前記相対移動中に、前記物体が前記ラインセンサの前記中央空間を通過する際の移動速度を取得する速度取得工程を含み、
前記シルエット推定工程は、前記取得された移動速度を用いて、前記複数の1次元情報間の空間間隔を決定し、前記複数の1次元情報を、前記決定された空間間隔をあけて配列することにより、前記2次元情報に変換する請求項1ないし5のいずれかに記載の物体識別方法。
【請求項7】
前記複数の発信機のうち一端部に位置する端部発信機が発信した信号は、前記ラインセンサの長さ方向における前記物体の実際シルエット寸法が予め定められた上限寸法を超えない限り、前記物体によって遮断されることなく、前記複数の受信機のうち一端部に位置する端部受信機であって前記端部発信機に対向するものによって受信される請求項1ないし6のいずれかに記載の物体識別方法。
【請求項8】
さらに、前記端部受信機が前記端部発信機から信号を受信しなかった場合には、前記ラインセンサの作動状態に異常があると判定する第1異常判定部を含む請求項7に記載の物体識別方法。
【請求項9】
さらに、前記端部受信機が前記端部発信機から信号を受信しなかった場合には、前記ラインセンサの姿勢に異常があると判定する第2異常判定部を含む請求項7または8に記載の物体識別方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の物体識別方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
【請求項12】
物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別システムであって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサであって、前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動するものと、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信部であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定部と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別部と、
物体識別という本番動作に先立ち、前記ラインセンサの作動状態について故障診断を行う故障診断部であって、発信機と受信機との間の対応関係を無視して、各受信機ごとに、その受信機が、前記複数の発信機からすべての信号を受信したか否かを判定し、すべての受信機が同じ発信機から信号を受信していない場合には、その発信機が故障していると判定することと、いずれかの受信機がいずれの発信機からも信号を受信していないか否かを判定し、いずれの発信機からも信号を受信していない場合には、そのいずれかの受信機が故障していると判定することとの少なくとも一方を行うものと
を含む物体識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する技術が既に存在する。
【0003】
その一例が、特許文献1に開示されている。この技術においては、水平の支持面(例えば、路面)上を走行する車体の車種を判定することを目的として、垂直方向に1次元的に配列された複数の発光素子と、垂直方向に1次元的に配列された複数の受光素子とを、それぞれ互いに水平方向に対向するように配置することにより、シルエットセンサがラインセンサとして構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−296737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、前記シルエットセンサにより、識別すべき物体の形状を精度よく測定することができないという問題がある。
【0006】
具体的には、そのシルエットセンサにおいては、発光素子が光、電波または音波という電磁波を受光素子に向けて出射するが、その電磁波が通常のものである限り、発光素子も受光素子も、通常は、指向性を有する。
【0007】
その電磁波をレーザー光として選択すれば、発光素子も受光素子も指向性を有せずに済む。しかし、その場合には、システムが高価であること、素子の消費電力が増加すること、出射されたレーザー光が万一人間の眼に入射すると危険であることなどの問題がある。
【0008】
そのため、それらの問題がないように通常の電磁波を使用すると、1つの発光素子から出射した電磁波が、拡がり角をもって空間を進行し、そのため、1つの電磁波が、意に反して複数の受光素子によって同時に受光されてしまう可能性がある。
【0009】
その結果、通常の電磁波を使用すると、複数の受光素子のうち、識別すべき物体によって遮蔽されて電磁波を受光できないものにより表現される1次元模様が、識別すべき物体の実際シルエットを正確に反映しないおそれがある。
【0010】
よって、特許文献1に開示されている技術では、受光素子が、予定外の発光素子からの光を受光してしまうと、その光をノイズ光として除去できないため、識別すべき物体の形状を精度よく測定することができないという問題がある。
【0011】
なお、物体を識別するという機能(用途)は、特許文献1に開示されているように、有料道路において、走行する自動車の車種を判別するという機能として具体化され、また、例えば、駐車場において、その駐車場に対して入出庫する車両を識別して分類するという機能として具体化される。
【0012】
さらに、そのようにして識別された車両を、その車両の乗員としてのユーザに正確に紐付けしたいというニーズがある。
【0013】
このような事情を背景とし、本発明は、物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する技術であって、識別すべき物体の形状を精度よく測定することができるものを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別方法であって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサの前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動する相対移動中に実施され、
前記複数の発信機を連続的にまたは時間離散的に作動させてそれら発信機から複数の信号を発信させる発信工程と、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信工程であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定工程と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別工程と、
物体識別という本番動作に先立ち、前記ラインセンサの作動状態について故障診断を行う故障診断工程であって、発信機と受信機との間の対応関係を無視して、各受信機ごとに、その受信機が、前記複数の発信機からすべての信号を受信したか否かを判定し、すべての受信機が同じ発信機から信号を受信していない場合には、その発信機が故障していると判定することと、いずれかの受信機がいずれの発信機からも信号を受信していないか否かを判定し、いずれの発信機からも信号を受信していない場合には、そのいずれかの受信機が故障していると判定することとの少なくとも一方を行うものと
を含む物体識別方法が提供される。
また、本発明の別の側面によれば、物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別システムであって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサであって、前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動するものと、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信部であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定部と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別部と、
物体識別という本番動作に先立ち、前記ラインセンサの作動状態について故障診断を行う故障診断部であって、発信機と受信機との間の対応関係を無視して、各受信機ごとに、その受信機が、前記複数の発信機からすべての信号を受信したか否かを判定し、すべての受信機が同じ発信機から信号を受信していない場合には、その発信機が故障していると判定することと、いずれかの受信機がいずれの発信機からも信号を受信していないか否かを判定し、いずれの発信機からも信号を受信していない場合には、そのいずれかの受信機が故障していると判定することとの少なくとも一方を行うものと
を含む物体識別システムが提供される。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0015】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0016】
(1) 物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別方法であって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサの前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動する相対移動中に実施され、
前記複数の発信機を連続的にまたは時間離散的に作動させてそれら発信機から複数の信号を発信させる発信工程と、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信工程であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定工程と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別工程と
を含む物体識別方法。
【0017】
(2) 各発信機は、固有の発信機IDを表す信号を発信するように構成され、
前記標的受信工程は、各受信機が各発信機から受信した信号から発信機IDを抽出し、各受信機が複数の発信機から同時に受信した複数の信号によってそれぞれ表される複数の発信機IDのうち、前記対向発信機に割り当てられた正規発信機IDと一致するものを表す信号を前記有効信号として選択する工程を含む(1)項に記載の物体識別方法。
【0018】
(3) 各受信機(例えば、ビーコン受信機)は、各発信機(例えば、ビーコン発信機)からの信号を近距離無線通信方式で受信するように構成される(1)または(2)項に記載の物体識別方法。
【0019】
(4) 各発信機は、可視光または赤外光である光を固有の点滅パターンで発光する発光器(例えば、LED光源、レーザー光源など)であり、
各受信機は、各発光器から発光された光を受光する受光器(例えば、フォトダイオード、光センサなど)であり、
前記標的受信工程は、各受光器が受光した光から点滅パターンを抽出し、その点滅パターンを発光器IDに変換する工程を含む(1)または(2)項に記載の物体識別方法。
【0020】
(5) 前記複数の基準シルエットは、前記物体が識別される複数の候補としての複数の物体カテゴリーにそれぞれ固有な形状を有する(1)ないし(4)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0021】
(6) さらに、
前記相対移動中に、前記物体が前記ラインセンサの前記中央空間を通過する際の移動速度を取得する速度取得工程を含み、
前記シルエット推定工程は、前記取得された移動速度を用いて、前記複数の1次元情報間の空間間隔を決定し、前記複数の1次元情報を、前記決定された空間間隔をあけて配列することにより、前記2次元情報に変換する(1)ないし(5)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0022】
(7) 前記複数の発信機のうち一端部に位置する端部発信機が発信した信号は、前記ラインセンサの長さ方向における前記物体の実際シルエット寸法が予め定められた上限寸法を超えない限り、前記物体によって遮断されることなく、前記複数の受信機のうち一端部に位置する端部受信機であって前記端部発信機に対向するものによって受信される(1)ないし(6)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0023】
(8) さらに、前記端部受信機が前記端部発信機から信号を受信しなかった場合には、前記ラインセンサの作動状態に異常があると判定する第1異常判定部を含む(7)項に記載の物体識別方法。
【0024】
(9) さらに、前記端部受信機が前記端部発信機から信号を受信しなかった場合には、前記ラインセンサの姿勢に異常があると判定する第2異常判定部を含む(7)または(8)項に記載の物体識別方法。
【0025】
(10) さらに、物体識別という本番動作に先立ち、前記ラインセンサの作動状態について故障診断を行う故障診断工程を含み、
その故障診断工程は、発信機と受信機との間の対応関係を無視して、各受信機ごとに、その受信機が、前記複数の発信機からすべての信号を受信したか否かを判定し、すべての受信機が同じ発信機から信号を受信していない場合には、その発信機が故障していると判定し、一方、いずれかの受信機がいずれの発信機からも信号を受信していない場合には、そのいずれかの受信機が故障していると判定する(1)ないし(9)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0026】
(11) (1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【0027】
本明細書の全体を通じて、「プログラム」という用語は、例えば、それの機能を果たすためにコンピュータにより実行される指令の組合せを意味するように解釈したり、それら指令の組合せのみならず、各指令に従って処理されるファイルやデータをも含むように解釈することが可能であるが、それらに限定されない。
【0028】
また、このプログラムは、それ単独でコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとしたり、他のプログラムと共にコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとすることができるが、それらに限定されない。後者の場合、本項に係るプログラムは、データを主体とするものとすることができるが、それに限定されない。
【0029】
(12) (11)項に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
【0030】
本明細書の全体を通じて、「記録媒体」という用語は、種々な形式の記録媒体を意味するように解釈することが可能であり、そのような記録媒体は、例えば、フレキシブル・ディスク等の磁気記録媒体、CD、CD−ROM等の光記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、ROM等のアンリムーバブル・ストレージ等を含むが、それらに限定されない。
【0031】
(13) 前記発信機列と前記受信機列との間における前記中央空間の最低寸法は、30cm、50cm、1mまたは2mである(1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0032】
(14) 前記物体は、自転車、自動二輪車および自動車を含む車両を含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0033】
(15) 前記複数の基準シルエットは、車両、人間および動物のそれぞれについての複数の標準的なシルエットを含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0034】
(16) 前記ラインセンサは、前記物体の進行方向において互いに隔たった2か所にそれぞれ設置される第1ラインセンサおよび第2ラインセンサを含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0035】
(17) 前記物体は、所定の通路を進行し、
前記発信機列および前記受信機列は、前記通路を挟むように互いに対向する2か所にそれぞれ設置され、
前記物体は、その物体が前記通路を一方向に進行中に識別される(1)ないし(10)項のいずれかに記載の物体識別方法。
【0036】
(18) 前記通路は、開放空間と行き止まり空間とを互いに接続するように配置され、
前記物体は、前記通路を正逆双方向に進行し、
前記ラインセンサは、前記通路のうち、前記開放空間の側に設置された外側ラインセンサと、前記行き止まり空間の側に設置された内側ラインセンサとを含む(17)項に記載の物体識別方法。
【0037】
(19) 物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別システムであって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサであって、前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動するものと、
前記発信された複数の信号を前記複数の受信機によって時間離散的に複数回受信することを試行し、それにより、結果的に複数回の受信イベントを実行する標的受信部であって、各受信機が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機のうち、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機を標的発信機とし、その標的発信機から発信された信号を有効信号として選択するものと、
各回の受信イベントにおいて、前記複数の受信機のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、前記複数回の受信イベントにおいてそれぞれ生成された複数の1次元情報を配列することによって2次元情報に変換し、その2次元情報に基づいて前記物体の実際シルエットを推定するシルエット推定部と、
その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別部と
を含む物体識別システム。
【0038】
(20) 物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別する物体識別システムであって、
複数の発信機の列である発信機列と、複数の受信機の列である受信機列とが中央空間を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサであって、前記中央空間を通過するように前記物体が前記ラインセンサの長さ方向と交差する方向において前記ラインセンサに対して相対的に移動し、前記複数の発信機から発信された複数の信号は少なくとも部分的に前記物体によって遮断されて前記受信機列に到達しないものと、
そのラインセンサの受信結果に基づき、前記物体の実際シルエットを推定し、その推定された実際シルエットと予め定められた複数の基準シルエットとの間の形状的近似度に基づき、前記物体を識別する物体識別部と
を含み、
前記物体は、車両を含み、
前記通信端末は、前記車両の乗員であるユーザによって乗車中に携帯されるか、または前記車両に搭載されており、
各発信機は、固有の発信機IDを表す信号を発信し、
前記通信端末は、前記乗車中に、前記複数の発信機からの複数の信号のうち前記車両内に進入する部分を受信し、
当該物体識別システムは、さらに、
前記通信端末と通信可能な管理サーバと、
前記複数の受信機の受信状態および/または前記物体識別部の物体識別結果を表す信号を前記管理サーバに送信することが可能な通信部と
を含み、
前記通信端末は、前記複数の発信機のうちの少なくとも1つからの信号を受信すると、その信号から発信機IDを抽出し、その発信機IDをユーザ識別情報に関連付けて前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、前記ラインセンサが前記物体を検出し、かつ、その物体が車両であると識別された状態において、前記通信端末から前記発信機IDを受信すると、その発信機IDが前記ラインセンサに帰属する場合には、ユーザと前記車両とを紐付けするユーザ・車両紐付け部を含むを物体識別システム。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に従う物体識別システムであって出入り通路を有する駐車場に出入りする物体を識別するために実施されるもののうちのハードウエア構成を概略的に表す平面図である。
図2図2は、図1に示す物体識別システムのうちのハードウエア構成を概略的に示す斜視図と、その物体識別システムのうちのソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図とである。
図3図3は、図2に示す外側ラインセンサおよび内側ラインセンサに共通の正面図であって、同図に示す発信機ポストから発信された複数の信号が、物体によって遮断されずに空間を透過するものと、物体によって遮断されるものとに分類される様子を説明するためのものである。
図4図4は、図3に示す発信機ポスト(または受信機ポスト)の内側面を示す側面図である。
図5図5は、図2に示す外側ラインセンサおよび内側ラインセンサに共通の部分正面図であって、発信機ポストのうちの1つの発信機から無指向性で(例えば、放射状に)信号を発信し、その結果、その発信された信号が、その発信機に対向する対向発信機を含む複数の受信機によって同時に受信される可能性があることを説明するためのものである。
図6図6は、図2に示す外側ラインセンサおよび内側ラインセンサのそれぞれにつき、複数の受信機の番号と、それら受信機にそれぞれ1対1に対応する複数の発信機の番号と、発信機ごとの複数の発信機IDとの間の関係を表形式で表す図である。
図7図7は、物体が図1に示す駐車場の出入り通路を一方向に進行中にその物体が外側ラインセンサによって一方向にスキャンされてその物体が識別される様子を説明するための側面図である。
図8図8は、物体が図7に示すように外側ラインセンサによって一方向にスキャンされる結果、前記物体について複数の1次元情報が時間離散的に生成される様子と、それら1次元情報が2次元情報に合成され、それにより、前記物体の実際シルエットが推定される様子とを概念的に表す図である。
図9図9は、複数の物体カテゴリーと複数の基準シルエットとの間の例示的な関係を概念的に表形式で表す図である。
図10図10は、図2に示す物体識別部において実行される例示的な物体識別プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図11図11は、図2に示す入出庫判別部において実行される例示的な入出庫判別プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図12図12(a)は、物体が図1に示す出入り通路を経て駐車場に進入する入庫ステージにおいて、外側ラインセンサおよび内側ラインセンサのそれぞれの受信状態が時系列的に変化する様子の一例を説明するための図であり、同図(b)は、物体が図1に示す出入り通路を経て駐車場から退出する出庫ステージにおいて、外側ラインセンサおよび内側ラインセンサのそれぞれの受信状態が時系列的に変化する様子の一例を説明するための図である。
図13図13は、図1に示す信号処理ユニットを表す機能ブロック図の続きである。
図14図14は、図13に示す第1異常判定部において実行される例示的な第1異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図15図15は、図13に示す第2異常判定部において実行される例示的な第2異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図16図16は、図13に示す故障診断部において実行される例示的な故障診断プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図17図17は、図2に示す管理サーバにおいて実行される例示的な駐車場管理プログラムを、ユーザの通信端末において実行される駐車場利用プログラムと共に概念的に表すフローチャートである。
図18図18は、本発明の例示的な第2の実施形態に従う物体識別システムのうちの外側ラインセンサの正面図であって、同図に示す発信機ポストから発信された複数の信号が、車両のアウタパネルによって遮断されずに空間を透過して受信機ポストに到達するものと、車両のアウタパネルによって遮断されるものと、車両の窓ガラスを透過してその車室内に進入して乗員としてのユーザの通信端末によって受信されるものとに分類される様子を、上記物体識別システムのうちのソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図と共に示すものである。
図19図19は、図18に示すユーザ・車両紐付け部において実行される例示的なユーザ・車両紐付けプログラムを、ユーザの通信端末において実行されるユーザ特定支援プログラムと共に概念的に表すフローチャートである。
図20図20は、図18に示すユーザ・車両紐付け部によって作成される例示的なユーザ・車両紐付けリストを表形式で概念的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のさらに具体的な例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0041】
[第1の実施形態]
【0042】
図1には、本発明の例示的な第1の実施形態に従う物体識別システム10(以下、単に「システム10」という。)のうちのハードウエア構成が概略的に平面図で表されている。このシステム10は、本発明の例示的な一実施形態に従う物体識別方法を実施するように設計されたものである。
【0043】
このシステム10は、本実施形態においては、駐車場20を無人でかつ遠隔的に管理する駐車場管理システム1000の一部に組み込まれている。
【0044】
概略的に説明するに、このシステム10は、3次元の物体をラインセンサで一方向にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で前記物体を形状的に識別するように設計されている。
【0045】
このシステム10は、駐車場20に出入りする物体が車両30であるのか、人間であるのか、動物であるのかを識別するために実施される。駐車場20は、複数の車両を収容可能な複数の車室32を有する内側領域(行き止まり空間)34と、駐車場20に隣接する道路36である外側領域(開放空間)38とを互いに接続する出入り通路40を有する。
【0046】
車両30は、駐車場20への入庫時にも駐車場20からの出庫時にも、共通の出入り通路40に沿って進行する。具体的には、車両30は、入庫時には、出入り通路40を一方向に(外側から内側に向かう向き)に進行し、一方、出庫時には、出入り通路40を逆方向に(内側から外側に向かう向き)に進行する。
【0047】
図1に示すように、このシステム10は、出入り通路40のうち、外側領域38の側に設置された外側ラインセンサ50と、内側領域34の側に設置された内側ラインセンサ52とを備えている。外側ラインセンサ50も内側ラインセンサ52も、駐車場20の支持面(例えば、路面や地面など)54に、その支持面54から概して垂直に延びる正立姿勢で設置されている。
【0048】
図2および図3に示すように、外側ラインセンサ50についても内側ラインセンサ52についても、複数の発信機60の列である発信機列がハウジング74内に収容されて成る発信機ポスト62と、複数の受信機70の列である受信機列がハウジング76内に収容されて成る受信機ポスト72とが中央空間77を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて構成されている。発信機ポスト62も受信機ポスト72も、複数のセンサ素子(この用語は、発信機60および受信機70を総称するために使用される)が1次元的に(例えば、真っ直ぐかまたは曲がった中心線に沿って)配列されて構成されている。
【0049】
さらに、外側ラインセンサ50についても内側ラインセンサ52についても、複数の発信機60と複数の受信機70とのうち互いにペアを成す1つの発信機60と1つの受信機70とは、図3に示すように、水平方向において互いに対向するように配置されている。
【0050】
発信機ポスト62および受信機ポスト72は、それぞれ、支持面54から概して垂直に延びる柱状のハウジング74および76を有し、それらハウジング74および76内にそれぞれ、複数の発信機60および複数の受信機70が防水機能を有するように(雨水、水たまりの侵入によって故障しないように)収容されている。
【0051】
本実施形態においては、発信機60も受信機70も、非可視光(例えば、電波)を用いて通信を行うタイプのセンサ素子(例えば、ビーコン発信機およびビーコン受信機)であるが、それに代えて、可視光、赤外光、音波または超音波を用いるタイプのセンサ素子、例えば、LED光源および光センサの組合せ、赤外光源および赤外センサの組合せ、レーザー光源および光センサの組合せや、音波発生器および音波センサの組合せなどを用いてもよい。
【0052】
一例においては、各発信機60が、可視光または赤外光である光を固有の点滅パターンで発光する発光器60である。これに対し、各受信機70は、各発光器60から発光された光を受光する受光器70である。この場合、標的受信部108は、各受光器70が受光した光から点滅パターンを抽出し、その点滅パターンを発光器IDに変換し、それにより、その受光した光を発光した発光器60が、対向発光器(正規発信機の一例)すなわち正規発光器(正規発信機の一例)であるか否かを判定する。
【0053】
図3に正面図で示すように、複数の発信機60は、物体識別動作中、それぞれ複数の信号を一斉に発信する。それら信号のうち、車両30によって遮断される部分は、対向する受信機70に入射せず、一方、車両30によって遮断されない部分は、中央空間77内を透過して、対向する受信機70に入射する。
【0054】
図4に側面図で示すように、外側ラインセンサ50についても内側ラインセンサ52についても、また、発信機ポスト62も受信機ポスト72も、一列に並んだ複数のセンサ素子60,70のうちの最上端のもの(最上端発信機(前記「端部発信機」の一例)60および最上端受信機(前記「端部受信機」の一例)70)は、図2および図3に示すように、サイズ的に適合するすべての種類の車両30について、最上端発信機60が発信した信号が最上端受信機70によって受信されるように、最上端発信機60および最上端受信機70の高さ方向位置が選択されている。
【0055】
したがって、最上端発信機60が発信した信号は、各ラインセンサ50,52の長さ方向における物体30の実際シルエット寸法が予め定められた上限寸法を超えない限り、物体30によって遮断されることなく、最上端受信機70であって最上端発信機60に対向するものによって受信される。
【0056】
さらに、図4に側面図で示すように、外側ラインセンサ50についても内側ラインセンサ52についても、また、発信機ポスト62も受信機ポスト72も、一列に並んだ複数のセンサ素子60,70のうちの最下端のもの(最下端発信機60および最下端受信機70)は、すべての種類の車両30について、その車両30のタイヤ(車輪、ホイール)78がラインセンサ50,52を通過する際に、最下端発信機60から発信した信号がタイヤ78によって遮断されて最下端受信機70によって受信されないように、最下端発信機60および最下端受信機70の高さ方向位置が選択されている。これにより、車両30のうち、タイヤ78が各ラインセンサ50,52を通過したタイミングを検出することが可能である。
【0057】
図5に正面図で示すように、外側ラインセンサ50についても内側ラインセンサ60についても、発信機ポスト62のうちの各発信機60が無指向性で(例えば、放射状に)信号を発信する。そのため、1つの発信機60から発信された信号が、その発信機60に対向する対向受信機(例えば、1つの対向受信機)70のみならず、その周辺に位置する複数の受信機70によっても、同時に受信される可能性がある。
【0058】
その可能性を排除するために、本実施形態においては、各受信機70ごとに標的受信が行われる。具体的には、各受信機70が2以上の発信機60から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機60のうち、各受信機70に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機60から発信された信号を有効信号として選択し、それ以外の信号は無効信号として除外する信号処理が行われる。これは、フィリタリング処理とも称される。
【0059】
これに関連し、図6には、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のそれぞれにつき、複数の受信機70の番号と、それら受信機70にそれぞれ1対1に対応する複数の発信機(正規発信機)60の番号と、発信機60ごとの複数の発信機ID(正規発信機ID)との間の関係が表形式で表されている。
【0060】
具体的には、上述の標的受信においては、各受信機70ごとに、それに対応する1つの対向発信機60と、その対向発信機60に割り当てられた発信機IDすなわち正規発信機IDとを決定する。各受信機70が2以上の発信機60から2以上の信号を同時に受信すると、それら発信機60のうち、正規発信機IDを表す信号を有効信号として選択する一方、それ以外の信号を無視する。これを、ソフト的なフィルタリング処理とも称する。
【0061】
すなわち、上述の標的受信においては、各受信機70が2以上の発信機60から2以上の信号を同時に受信すると、1つの正規発信機IDを割り当てられた1つの対向発信機60を1つの標的発信機60に選択し、事実上、その標的発信機60のみから信号を受信することを試行するのである。
【0062】
これに対し、ランダム受信とは、各受信機70が、いずれの発信機60が前述の正規発信機であるか否かを無視して、ランダムに受信した少なくとも1つの信号をそれぞれ少なくとも1つの実発信機IDに変換して、各受信機70に、その少なくとも1つの実発信機IDを割り当てることを意味する。
【0063】
本実施形態においては、複数の受信機70に対し、上述の標的受信が、最上端受信機70から最下端受信機70に向かって(これとは逆向きでもよいし、別の向きでもよい)順次行われるが、これは、外側ラインセンサ50と物体30との間の相対移動が物理的なスキャン(x方向スキャン、前後方向スキャン)と称される場合には、外側ラインセンサ50すなわち複数の受信機70に対するソフト的なスキャン(y方向スキャン、垂直方向スキャン)と称される。
【0064】
なお、本実施形態においては、内側ラインセンサ52が、外側ラインセンサ50と共通の構成を有するように設計される。しかし、本実施形態においては、専ら外側ラインセンサ50を用いて物体識別が行われる。ただし、これに代えて、専ら内側ラインセンサ52を用いて物体識別が行われる態様で本発明を実施してもよいし、また、双方のラインセンサ50および52を用いて物体識別が行われる態様で本発明を実施してもよい。
【0065】
よって、内側ラインセンサ52は、後述のように、入出庫判別を外側ラインセンサ50と共同して行うために必要最低限の構成を有するように、外側ラインセンサ50より単純化して(例えば、互いに対向する発信機60および受信機70より成るセンサ素子対(透過型対向センサ素子)の数を1つとか複数とか、外側ラインセンサ50におけるセンサ素子対の数より減らす)設計してもよい。
【0066】
前述のように、このシステム10は、3次元の物体30を外側ラインセンサ50で一方向に物理的にスキャンすることにより、カメラを用いずに非接触式で物体30を形状的に識別するように設計されている。
【0067】
具体的には、図7に側面図で示すように、物体の一例としての車両30が駐車場20の出入り通路40を一方向に進行中にその車両30が外側ラインセンサ50によって一方向にスキャンされてその車両30が識別される。
【0068】
移動体としての車両30が、静止物体としての外側ラインセンサ50に対して相対的に、中央空間77を通過するように移動することにより、車両30が外側ラインセンサ50の長さ方向と交差する方向(スキャン方向)において外側ラインセンサ50に対して相対的に移動する相対移動が実現される。
【0069】
図8に、各受信機70ごとの受信の有無をドットパターン(受信機70ごとに、信号遮断による非受信状態、すなわち、受信機70のオフ(OFF)状態がドットで示される)で示すように、車両30が外側ラインセンサ50によって一方向にスキャンされる結果、車両30について複数の1次元情報が時間離散的に生成される。それら1次元情報は、所定のサンプリング周期Δtで順次生成される。
【0070】
図8に示す例において、時刻tは、図7に示す例における時刻tに関連付けられる。図7においては、物体30のうち、時刻tで示す部位が外側ラインセンサ50によって測定されたときに取得される1次元情報がドットパターンで図8に示されている。同様に、図8において時刻tは、図7において時刻tで示す部位に関連付けられる。他の時刻tおよびtについても同様である。
【0071】
さらに、図8に示すように、上述の一方向スキャンによって生成された複数の1次元情報(1本のドット列)が2次元情報(複数本のドット列)に合成され、それにより、物体30の実際シルエットが推定される。その実際シルエットの形状は、例えば、2次元情報を表す複数個のドットに外接する包絡線によって表現される。
【0072】
複数の1次元情報の合成は、それら1次元情報をそれらに共通の空間間隔で均等に配列することによって行ってもよい。そのときの空間間隔の長さは、固定値であっても、物体30の移動速度の測定値に応じて設定される可変値であってもよい。
【0073】
これに代えて、物体30の移動速度(例えば、車両走行速度、車速)を、1次元情報のサンプリング・タイミングと概して同じタイミングで取得し、取得された複数の実際速度に応じた複数の空間間隔で不均等に複数の1次元情報を配列してもよい。
【0074】
具体的には、前記取得された複数の移動速度を用いて、複数の1次元情報間の空間間隔を決定し、それら1次元情報を、前記決定された空間間隔をあけて配列することにより、2次元情報に変換してもよい。
【0075】
前述のように、このシステム10は、駐車場20に出入りする物体30が車両であるのか、人間であるのか、動物であるのかを識別するために実施される。一方、物品識別のため、複数の基準シルエットが用意され、上述のようにして推定された実際シルエットが、それら基準シルエットのうちのいずれに、最も形状が似ているか否かが判定され、最も近似している基準シルエットに対応する物体カテゴリーが、今回の物体30であると判別される。
【0076】
そのため、本実施形態においては、図9に例示するように、複数の基準シルエットが、車両、人間(例えば、縦に細長い単純な形状のシルエット)および動物(例えば、横に細長い単純な形状のシルエット)のそれぞれについての複数の標準的なシルエットを含む。
【0077】
実際シルエットと各基準シルエットとの間の形状に関する近似度(または類似度)は、例えば、各基準シルエットごとに、実際シルエットと各基準シルエットとの間の形状近似度を計算する。その形状近似度は、例えば、実際シルエットを表すビットマップデータと、各基準シルエットを表すビットマップデータとが互いにオーバーラップする領域を占有する複数個のビットの数として計算することが可能である。
【0078】
さらに、実際シルエットと各基準シルエットとの間の形状近似度を計算する際に、実際シルエットのベースライン(支持面54の位置を表す)と各基準シルエットのベースラインとが互いに一致するように、実際シルエットと各基準シルエットとがビットマップメモリ上で重ね合わせられる。その結果、実際シルエットと各基準シルエットとが、垂直方向(y方向)に関して相対的に位置決めされる。これに対し、水平方向(x方向)に関する相対的な位置決めは、実際シルエットと各基準シルエットとの重なり面積が最大化するように、計算により、行われる。
【0079】
さらに、各基準シルエットごとに、実際シルエットの倍率を変えながら各基準シルエットとの間の形状近似度を最大化し、その最大値を代表近似度とする。その基準シルエットの代表近似度を、残りの基準シルエットについて同様にして計算された代表近似度と比較し、すべての基準シルエットのうち、最大の代表近似度が取得されたものに対応する物体カテゴリーとして今回の物体30を識別する。
【0080】
図9には、複数の物体カテゴリーと複数の基準シルエットとの間の例示的な関係が概念的に表形式で表されている。同図に示すように、人間のための基準シルエットは、(例えば、縦に細長い単純な形状のシルエットである。また、動物のための基準シルエットは、例えば、横に細長い単純な形状のシルエットである。各基準シルエットは、支持面54を表す直線をベースラインとし、そのベースラインを基準に相対的に位置決めされる。
【0081】
図9に示す例においては、車両の複数の基準シルエットとして、複数の標準的なシルエット(車両をその形状から標準的に分類する際に使用される形状上の分類に従う)が選択されている。しかし、これに代えて、車種ごとの複数の個別シルエットを選択してもよい。そうすれば、物体30が車両として識別される場合に、さらに、その車両30がいずれの車種(例えば、さらに車両メーカー名も)であるかについても識別することが可能となる。
【0082】
図2の下側には、このシステム10のうちのソフトウエア構成が機能ブロック図で概念的に表されている。
【0083】
ユーザは、通信端末90を使用する。その通信端末90は、ユーザによって携帯されるとともに無線通信機能を有するデバイス、例えば、携帯電話機、スマートフォン、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、PDAなどでもよい。これに代えて、通信端末90は、ユーザによって携帯されないもの、例えば、車両30に搭載される車載通信端末、車載コンピュータであってもよい。
【0084】
このシステム10は、各ラインセンサ50,52のうちの発信機ポスト62,62および受信機ポスト72,72にそれぞれ接続された信号処理ユニット100を有する。この信号処理ユニット100は、各ラインセンサ50,52のうちの受信機ポスト72,72からの複数の信号に基づき、物体識別および入出庫判別を行うように構成されている。
【0085】
具体的には、信号処理ユニット100は、ハードウエア構成上、コンピュータ(プロセッサ)160と、メモリ162とを含むように構成される。メモリ162は、図6に例示的に示す関係を保存する第1保存部102と、図9に例示的に示す関係を保存する第2保存部104とを有する。
【0086】
信号処理ユニット100は、さらに、複数の発信機60を一斉にかつ連続的に(時間離散的にでも可)作動させる発信部106と、前述の標的受信を行うための標的受信部(フィルタリング部を含む)108とを有する。
【0087】
信号処理ユニット100は、さらに、標的受信部108による受信結果に基づいて車両30の実際シルエットを推定するためのシルエット推定部110と、その推定された実際シルエットに基づいて物体30の識別を行う物体識別部112とを有する。
【0088】
信号処理ユニット100は、さらに、2つのラインセンサ50および52を用いて車両30(物体30が車両であると識別された後に)が入庫ステージにあるのか出庫ステージにあるのかを判別する入出庫判別部114と、物体30の移動速度を取得するための速度取得部116とを有するように構成されている。その取得された移動速度は、例えば、シルエット推定部110により、前述のように、複数の1次元情報を合成して2次元情報に変換する際に用いられる。
【0089】
シルエット推定部110は、支持面54を表す直線をベースラインとし(図9参照)、2次元情報を、そのベースラインを基準に相対的に位置決めすることにより、物体30の実際シルエットを推定する。
【0090】
速度取得部116は、例えば、物体30から、その移動速度を表す信号を受信し、その信号から物体30の移動速度を取得するように構成してもよいし、ドップラ式の速度計として構成してもよい。
【0091】
これらに代えて、速度取得部116は、物体30が外側ラインセンサ50を通過したタイミング(外側ラインセンサ50におけるいずれかの受信機72または互いに連続した所定複数個の受信機72がいずれも最初にOFFになったタイミング)と、同じ物体30が内側ラインセンサ52を通過したタイミング(内側ラインセンサ52におけるいずれかの受信機72または互いに連続した所定複数個の受信機72がいずれも最初にOFFになったタイミング)との間の時間差で、外側ラインセンサ50の設置位置と内側ラインセンサ52の設置位置との間の距離を割り算することにより、物体30の平均的な移動速度を取得するように構成してもよい。
【0092】
信号処理ユニット100は、さらに、少なくとも物体識別部112の実行結果および入出庫判別部114の実行結果を管理サーバ130に送信するための通信機器300(図18参照)を有する。通信機器300は、例えば、遠距離無線通信機能を有する。
【0093】
このシステム10は、さらに、各ラインセンサ50,52のうちの発信機ポスト62,62および受信機ポスト72,72にそれぞれ接続された駆動ユニット120と、電源ユニット122とを有する。駆動ユニット120は、それぞれの発信機60および受信機70に電源ユニット(商用電源、太陽電池、バッテリなど)122から電力を供給する。それにより、駆動ユニット120は、発信機60にあっては、信号を発信する状態に移行させ、また、受信機70にあっては、いくつかの発信機60から信号を受信することを試行する状態に移行させる。
【0094】
ただし、発信機60および受信機70は、太陽電池および充電可能なバッテリ(充電池)の組合せにより、外部からの給電なしで作動可能な自立型タイプとしてもよい。
【0095】
このシステム10は、さらに、駐車場20からの遠隔地に設置された管理センタ124によって運営される管理サーバ130を有する。管理サーバ130は、信号処理ユニット100との間で遠距離無線通信が可能である。
【0096】
管理サーバ130は、信号処理ユニット(例えば、駐車場20に設置されているが、駐車場20の外部に設置されてもよい)100から受信した信号と、ユーザの通信端末90から受信した信号とに基づき、駐車場20を管理する駐車場管理部132を有する。
【0097】
管理サーバ130は、ユーザによる駐車料金の電子決済を行うために、決済サーバ140に接続されている。
【0098】
<物体識別>
【0099】
図10には、図2に示す信号処理ユニット100のうちの物体識別部112において実行される例示的な物体識別プログラムが概念的にフローチャートで表されている。本実施形態においては、物体識別のために外側ラインセンサ50のみが利用され、残りの内側ラインセンサ52は、外側ラインセンサ50と共に入出庫判別のときに利用される。
【0100】
この物体識別プログラムは、メモリ162に予め記憶されていて、適宜、コンピュータ(特にプロセッサ)160によって実行される。
【0101】
この物体識別プログラムが実行されると、まず、ステップS1001において、外側ラインセンサ50における複数の発信機60が一斉に駆動され、それにより、それら発信機60が、それぞれ固有の発信機IDを表す複数の信号を発信する。
【0102】
次に、ステップS1002において、物体30に対して(厳密には、常に外側ラインセンサ50の近傍に物体30が存在するとは限らない)今回のスキャンを開始し、現在時刻を今回のスキャン・タイミングt(今回は、n=1であり、図7に示す例においては、n=1,2,3,4,・・・)として計時してメモリ162に保存する。ここに、「スキャン」は、ソフト的なスキャン(受信機70ごとのシーケンシャルな標的受信)ではなく、物理的なスキャンであり、例えば、ある瞬間において、複数の発信機60と複数の受信機70とを用いて物体30を撮影することを試行するイベントに似ている。
【0103】
続いて、ステップS1003において、各受信機70ごとに順次、前述の標的受信を行うモードに移行する。
【0104】
その後、ステップS1004において、複数の1次元情報を2次元情報(物体30の実際シルエット)に変換する後述の合成処理(ステップS1016)に備えて、速度取得部116を用いて、車両30の現在の車両速度を取得し、今回のスキャン・タイミングtに関連付けてメモリ162に保存する。
【0105】
続いて、ステップS1005において、複数の受信機70のうちのいずれか(例えば、最上端受信機70または最下端受信機70)を今回の実施対象として選択し、その今回の1つの受信機70につき、対応する正規発信機ID、すなわち、図6に示すように、各受信機70に対向する1つの発信機(正規発信機)60に予め割り当てられている正規発信機IDをメモリ162から読み出す。
【0106】
その後、ステップS1006において、今回の受信機70が少なくとも1つの発信機60から受信した少なくとも1つの信号をそれぞれ実発信機IDに変換し、いずれかの実発信機IDが、前記読み出された正規発信機IDと一致するか否かを判定する。一致すれば、そのステップS1006の判定がYESとなり、ステップS1007において、今回の受信機70は有効信号を受信したと判定する。続いて、ステップS1008において、今回の受信機70はON状態にあると判定する。
【0107】
これに対し、今回の受信機70が受信した信号から変換された少なくとも1つの実発信機IDのうちのいずれも、前記読み出された正規発信機IDと一致しない場合(今回の受信機70がいずれの発信機60からも信号を受信しない場合も含まれる)には、ステップS1006の判定がNOとなり、続いて、ステップS1009において、今回の受信機70は有効信号を受信しなかったと判定する。続いて、ステップS1010において、今回の受信機70はOFF状態にあると判定する。
【0108】
いずれの場合にも、その後、ステップS1011において、すべての受信機70について標的受信が終了したか否か、すなわち、今回のスキャンに属する複数回の標的受信(1回分の受信イベント)が終了したか否かを判定する。終了しない場合には、そのステップS1011の判定がNOとなり、ステップS1005に戻り、次の受信機70について標的受信を行う。
【0109】
すべての受信機70について標的受信(1回分の受信イベント)が終了すると、ステップS1011の判定がYESとなり、続いて、S1012において、複数の受信機70が有効信号を受信したか否かについての上述の複数の判定結果が、例えば図8において左側に示すように、ビットマップ形式で、各受信機70の高さ位置に関連付けて、ON状態にあるかまたはOFF状態にあるかを区別して表すように、メモリ162に記憶する。これにより、今回の受信イベントについて1列分の1次元情報が生成される。すなわち、複数の受信機70のうち、それぞれの対向発信機60から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報が生成されるのである。
【0110】
その後、ステップS1013において、物体30のうち、前後方向に空間離散的に並んだ複数の箇所のすべてについてスキャン(時間離散的な所定複数回の物理的なスキャン)が終了したか否かを判定する。具体的には、例えば、スキャン回数nが、予め設定された上限値nmaxに達したか否かを判定する。
【0111】
今回は、スキャン回数nが上限値nmaxに達していないと仮定すると、ステップS1013の判定がNOとなり、ステップS1014において、今回のスキャン・タイミングtから、互いに隣接した複数回のスキャン間の所定の時間間隔、すなわち、1回分のサンプリング周期Δt(図8参照)が経過するのを待つ。そのサンプリング周期Δtは、すべてのスキャン間時間間隔(スキャン周期)の間で互いに共通である1つの固定値であるが、例えば、可変値としてもよい。
【0112】
1回分のサンプリング周期Δtが経過すると、ステップS1014の判定がYESとなり、ステップS1002に戻り、同じ物体30のうちの別の部位についての次回のスキャンが開始される。
【0113】
ステップS1002−S1012の実行が必要回数反復された結果、スキャン回数nが上限値nmaxに達すると、ステップS1013の判定がYESとなり、ステップS1015において、図11に例示するように、前述の複数列の1次元情報(ドット列)をそれぞれのx方向間隔Δxを空けてビットマップ180上に展開ないしは配列し、それにより、1つの2次元情報としてのビットマップデータを生成する。
【0114】
図8に例示するように、ビットマップ180上のビットマップデータは、2次元的に並んだ複数の黒ドットと複数の白ドットとを有する。
【0115】
ビットマップデータのうち、複数の黒ドットは、それぞれ対応する受信機70がOFF状態(発信機信号遮断状態)にあることを表す。これに対し、複数の白ドットは、それぞれ対応する受信機70がON状態(発信機信号透過状態)にあることを表す。
【0116】
ビットマップ180は、メモリ162上に形成される仮想の2次元マップであり、具体的には、横軸に物体30の進行方向寸法(x方向寸法)、縦軸に物体30の高さ方向寸法(y方向寸法)がそれぞれ割り当てられた2次元座標面である。物体30の各部位の高さ方向寸法は、支持面54の高さを表す前記ベースラインからの各部位、すなわち、各受信機70の高さ寸法位置に相当する。
【0117】
これに対し、物体30の進行方向寸法について説明すると、ビットマップ180上において、複数のドット列のうち、互いに隣接するものの間の間隔Δxは、複数のドット列について共通の固定値であってもよいが、本実施形態においては、複数のドット列について共通の可変値となっている。
【0118】
具体的には、Δxは、物体30の移動速度vと、サンプリング周期Δtとの積として計算され、その結果、移動速度vが大きいほど、Δxが長くなる。物体30の移動速度vは、物体30が出入り通路40を通過する際の平均移動速度として定義される。
【0119】
これに対し、物体30の移動速度vは、例えば、物体30が出入り通路40上の各スキャン位置をそれぞれ通過する際の個別移動速度として定義してもよく、この場合には、図8に例示するように、各スキャンごとに、すなわち、各ドット列ごとに個別にΔxの値が計算される。
【0120】
さらに、このステップS1015においては、ビットマップデータのうちの複数の黒ドットの集まりの外形線に外接する包絡線が、物体30の実際シルエットとして推定される。
【0121】
その後、ステップS1016において、前述のようにして、前記推定された実際シルエットと、複数の候補としての複数の基準シルエット(図9参照)のそれぞれのとの間の形状近似度を計算する。
【0122】
続いて、ステップS1017において、複数の基準シルエットのうち、それぞれ計算された複数の形状近似度のうち最大のものを有するものが、今回の物体30の実際シルエットを代表する1つの基準シルエットとして選択される。
【0123】
その後、ステップS1018において、選択された1つの基準シルエットから、図9に例示する関係に従い、今回の物体30が、車両であるのか、人間であるのか、人間以外の動物であるのかが識別される。今回の物体30は、図示の例については、車両として識別される。その識別結果は、メモリ142に保存され、絶えず、最新の識別結果は、信号処理ユニット100内の他のプログラム、通信端末90内のプログラムおよび管理サーバ130内のプログラムと共有される。
【0124】
なお、いずれの受信機70もON状態にある場合には、いずれの基準シルエットも選択されず、このとき、このプログラムは、ステップS1018において、いずれの物体も出入り通路40内に存在しないと判定する。
【0125】
このプログラムは、その後、ステップS1002に戻り、次回のスキャン処理を開始する。
【0126】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、各受信機70が、予定外の発信機60からの信号を受信しても、その信号をノイズ信号(各受信機70ごとの複数の受信信号のうち前記有効信号に該当しないもの)として除去できるため、識別すべき物体の形状を精度よく測定することができる。
【0127】
<入出庫判別>
【0128】
図11には、図2に示す信号処理ユニット100のうちの入出庫判別部114において実行される例示的な入出庫判別プログラムが概念的にフローチャートで表されている。本実施形態においては、入出庫判別のために外側ラインセンサ50と内側ラインセンサ52との双方が利用される。
【0129】
この入出庫判別プログラムは、メモリ162に予め記憶されていて、適宜、コンピュータ(特にプロセッサ)160によって実行される。
【0130】
<初期状態の検出>
【0131】
この入出庫判別プログラムが実行されると、まず、ステップS1101において、外側ラインセンサ50が完全にON状態(いずれの物体も外側ラインセンサ50の近傍位置に存在しないから、いずれの受信機70もON状態にある状態)にあるか否かを判定する。外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態(いずれかの物体が外側ラインセンサ50の近傍位置に存在するから、いずれかの受信機70がOFF状態にある状態)にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がNOとなり、ステップS1101に戻る。
【0132】
これに対し、外側ラインセンサ50が完全にON状態にあれば、ステップS1101の判定がYESとなり、続いて、ステップS1102において、今度は、内側ラインセンサ52が完全にON状態(いずれの物体も内側ラインセンサ52の近傍位置に存在しない状態)にあるか否かを判定する。内側ラインセンサ52が少なくとも部分的にOFF状態にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がNOとなり、ステップS1101に戻る。
【0133】
これに対し、外側ラインセンサ50も内側ラインセンサ52も完全にON状態にあれば、ステップS1101の判定もステップS1102の判定もYESとなり、入出庫判別のための初期状態、すなわち、出入り通路40内のいずれの箇所にもいずれの物体も存在しない状態が成立していることが確認される。この初期状態は、図12(a)および同図(b)に示すそれぞれの例において、「t」で示されている。
【0134】
<入庫ステージの検出>
【0135】
続いて、ステップS1103において、外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態(いずれかの物体が外側ラインセンサ50の近傍位置に存在する状態)にあるか否かを判定する。少なくとも部分的にOFF状態にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がYESとなり、ステップS1104に移行する。
【0136】
ステップS1104においては、内側ラインセンサ52が完全にON状態(いずれの物体も内側ラインセンサ52の近傍位置に存在しない状態)にあるか否かを判定する。完全にON状態にあれば、物体が存在しない可能性があるから、判定がYESとなる。この状態は、図12(a)に示す例において、「t」で示されている。
【0137】
続いて、ステップS1105において、外側ラインセンサ50が完全にON状態(いずれの物体も外側ラインセンサ50の近傍位置に存在しない状態)にあるか否かを判定する。完全にON状態にあれば、物体が存在しない可能性があるから、判定がYESとなり、ステップS1106に移行する。
【0138】
そのステップS1106においては、内側ラインセンサ52が少なくとも部分的にOFF状態(いずれかの物体が内側ラインセンサ52の近傍位置に存在する状態)にあるか否かを判定する。少なくとも部分的にOFF状態にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がYESとなる。この状態は、図12(a)に示す例において、「t」で示されている。
【0139】
その後、ステップS1107において、今回の物体は入庫ステージにあると判定する。その判定結果は、メモリ142に保存され、絶えず、最新の判定結果は、信号処理ユニット100内の他のプログラム、通信端末90内のプログラムおよび管理サーバ130内のプログラムと共有される。
【0140】
続いて、このプログラムはステージS1101に戻る。
【0141】
<出庫ステージの検出>
【0142】
ステップS1103または1104の判定がNOであると、ステップS1108において、外側ラインセンサ50が完全にON状態にあるか否かを判定する。完全にON状態にあれば、物体が存在しない可能性があるから、判定がYESとなり、ステップS1109に移行する。
【0143】
そのステップS1109においては、内側ラインセンサ52が少なくとも部分的にOFF状態にあるか否かを判定する。少なくとも部分的にOFF状態にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がYESとなる。この状態は、図12(b)に示す例において、「t」で示されている。
【0144】
続いて、ステップS1110において、外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態にあるか否かを判定する。少なくとも部分的にOFF状態にあれば、物体が存在する可能性があるから、判定がYESとなり、ステップS1111に移行する。
【0145】
そのステップS1111においては、内側ラインセンサ52が完全にON状態にあるか否かを判定する。完全にON状態にあれば、物体が存在しない可能性があるから、判定がYESとなる。この状態は、図12(b)に示す例において、「t」で示されている。
【0146】
その後、ステップS1112において、今回の物体は出庫ステージにあると判定する。その判定結果は、メモリ142に保存され、絶えず、最新の判定結果は、信号処理ユニット100内の他のプログラム、通信端末90内のプログラムおよび管理サーバ130内のプログラムと共有される。
【0147】
続いて、このプログラムはステージS1101に戻る。
【0148】
<第1異常判定>
【0149】
図14には、図13に示すように、信号処理ユニット100のうちの第1異常判定部200において実行される例示的な第1異常判定プログラムが概念的にフローチャートで表されている。この第1異常判定プログラムは、各ラインセンサ50,52ごとに、最上端発信機60および最上端受信機70の作動状態が正常か異常かを判定するために実行される。
【0150】
この第1異常判定プログラムが実行されると、まず、ステップS1401において、外側ラインセンサ50を今回の判定対象ラインセンサに選択する。
【0151】
次に、ステップS1402において、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端受信機70が最上端発信機60から信号を有効に受信しているか否かを判定する。有効に受信していれば、ステップS1402の判定がYESとなり、ステップS1403において、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端発信機60および最上端受信機70の作動状態がいずれも正常であると判定する。
【0152】
これに対し、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端受信機70が最上端発信機60から信号を有効に受信していない場合には、ステップS1402の判定がNOとなり、ステップS1404において、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端発信機60および最上端受信機70のうちの少なくとも一方の作動状態が異常であると判定する。
【0153】
その後、ステップS1405において、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端発信機60および最上端受信機70のうちの少なくとも一方の作動状態が異常である旨の異常判定結果を管理サーバ130に送信する。
【0154】
その異常判定結果を受けて、管理サーバ130は、作業者を、該当する駐車場20に派遣し、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端発信機60および最上端受信機70の点検、修理および交換を行わせる。
【0155】
いずれの場合にも、その後、ステップS1406において、今回の判定対象ラインセンサとは反対側のラインセンサを次回の判定対象ラインセンサに選択する。続いて、このプログラムはステップS1402に移行し、ステップS1402−S1405が、今度は、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち、前回とは異なるものについて実行される。
【0156】
<第2異常判定>
【0157】
図15には、図13に示すように、信号処理ユニット100のうちの第2異常判定部202において実行される例示的な第2異常判定プログラムが概念的にフローチャートで表されている。この第2異常判定プログラムは、各ラインセンサ50,52の設置状態での姿勢が正常か異常かを判定するために実行される。
【0158】
この第1異常判定プログラムが実行されると、まず、ステップS1501において、外側ラインセンサ50を今回の判定対象ラインセンサに選択する。
【0159】
次に、ステップS1502において、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端受信機70が最上端発信機60から信号を有効に受信しているか否かを判定する。有効に受信していれば、ステップS1502の判定がYESとなり、ステップS1503において、今回の判定対象ラインセンサにつき、発信機ポスト62および受信機ポスト72のいずれも正立していると判定する。
【0160】
なぜなら、今回の判定対象ラインセンサの作動状態が正常である限りにおいて、発信機ポスト62および受信機ポスト72のいずれも正立していれば、最上端受信機70および最上端発信機60は互いに対向し、かつ、両者間に障害物は存在しないからである。
【0161】
これに対し、今回の判定対象ラインセンサにつき、最上端受信機70が最上端発信機60から信号を有効に受信していない場合には、ステップS1502の判定がNOとなり、ステップS1504において、今回の判定対象ラインセンサにつき、発信機ポスト62および受信機ポスト72のうちの少なくとも一方が傾倒している可能性があると判定する。
【0162】
なぜなら、今回の判定対象ラインセンサの作動状態が正常である限りにおいて、発信機ポスト62および受信機ポスト72のうちの少なくとも一方が傾倒していれば、最上端受信機70および最上端発信機60は互いに対向しないか、または、両者間に障害物が存在してしまう可能性があるからである。
【0163】
その後、ステップS1505において、今回の判定対象ラインセンサにつき、発信機ポスト62および受信機ポスト72のうちの少なくとも一方が傾倒している可能性がある旨の異常判定結果を管理サーバ130に送信する。
【0164】
その異常判定結果を受けて、管理サーバ130は、作業者を、該当する駐車場20に派遣し、今回の判定対象ラインセンサにつき、発信機ポスト62および受信機ポスト72の点検、修理および交換を行わせる。
【0165】
いずれの場合にも、その後、ステップS1506において、今回の判定対象ラインセンサとは反対側のラインセンサを次回の判定対象ラインセンサに選択する。続いて、このプログラムはステップS1502に移行し、ステップS1502−S1505が、今度は、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち、前回とは異なるものについて実行される。
【0166】
なお付言するに、本実施形態においては、第1異常判定部200が端部発信機および端部受信機の作動状態の異常の有無を判定するために存在し、また、第2異常判定部202がラインセンサ50,52の姿勢の異常の有無を判定するために存在する。
【0167】
しかし、それら第1異常判定部200および第2異常判定部202は、端部発信機と端部受信機との間での通信の有無という同じ現象に着目するため、厳密には、それら端部発信機および端部受信機の作動状態の異常という現象と、ラインセンサ50,52の姿勢の異常という現象とを切り離して検知することができない。
【0168】
よって、それら第1異常判定部200および第2異常判定部202を合体させ、端部発信機と端部受信機との間での通信がないと、端部発信機および端部受信機側のデバイス異常と、ラインセンサ50,52側の姿勢異常とのうちの少なくとも一方が存在すると判定する態様で本発明を実施してもよい。
【0169】
この態様であっても、真の異常の種類は遠隔的に正確に判明しないかもしれないが、作業者を駐車場20に派遣する必要性の有無を遠隔的に正確に判定することが可能となるから、無駄があることを覚悟して作業者を定期的に駐車場20に派遣する場合より、作業者にかかる人件費を削減することが容易となる。
【0170】
<故障診断>
【0171】
図16には、図13に示すように、信号処理ユニット100のうちの故障診断部204において実行される例示的な故障診断プログラムが概念的にフローチャートで表されている。
【0172】
この故障診断プログラムが実行されると、まず、ステップS1601において、別の起動タイミング・コントロール・プログラム(図示しない)の実行によって割込み信号が発生したか否かを判定する。その割込み信号は、この故障診断プログラムの起動タイミングをコントロールするための信号である。
【0173】
その割込み信号が存在しないと、ステップS1601の判定がNOとなり、同じステップの実行が反復されるが、その割込み信号が存在すると、ステップS1601の判定がYESとなり、ステップS1602において、図10に示す物体識別プログラム、図11に示す入出庫判別プログラム、図12に示す第1異常判定プログラムおよび図13に示す第2異常判定プログラムの実行、すなわち、当該物体識別システム10の本番動作(ラインセンサ50および52を用いた処理)が一時的に禁止される。
【0174】
続いて、ステップS1603において、外側ラインセンサ50における複数の発信機60および内側ラインセンサ52における複数の発信機60が一斉に駆動され、それにより、それら発信機60が、それぞれ固有の発信機IDを表す複数の信号を発信する。
【0175】
その後、ステップS1604において、外側ラインセンサ50における複数の受信機70および内側ラインセンサ52における複数の受信機70について順次、すなわち、シーケンシャに、前述のランダム受信を行う。その結果、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のそれぞれにつき、各受信機70に少なくとも1つの実発信機IDが割り当てられることが本来であれば期待される。
【0176】
続いて、ステップS1605において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のそれぞれにつき、上述のようにして各受信機70ごとに割り当てられた複数の実発信機IDを参照することにより、すべての受信機70が同じ発信機60から信号を受信しないか否かを判定する。
【0177】
外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52の双方またはいずれかにつき、すべての受信機70が同じ発信機60から信号を受信しない場合には、ステップS1605の判定がYESとなり、ステップS1606において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち該当するものにつき、その発信機60が故障していると判定する。すなわち、その発信機60が故障発信機であると判定するのである。
【0178】
続いて、ステップS1607において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち該当するもの(故障発信機60が存在するもの)につき、その発信機60が故障している旨の故障診断結果を、その発信機60を識別するための発信機IDに関連付けて管理サーバ130に送信する。その後、このプログラムはステップS1601に戻る。
【0179】
その故障診断結果を受けて、管理サーバ130は、作業者を、該当する駐車場20に派遣し、故障発信機60の点検、修理および交換を行わせる。
【0180】
これに対し、ステップS1605の判定がNOである場合には、ステップS1608において、前記複数の実発信機IDを参照することにより、いずれかの受信機70がいずれの発信機60からも信号を受信していないか否かを判定する。
【0181】
外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52の双方またはいずれかにつき、いずれかの受信機70がいずれの発信機60からも信号を受信していない場合には、ステップS1608の判定がYESとなり、ステップS1609において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち該当するもの(故障受信機70が存在するもの)につき、その受信機70が故障していると判定する。すなわち、その受信機70が故障受信機であると判定するのである。
【0182】
続いて、ステップS1610において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち該当するもの(故障受信機70が存在するもの)につき、その受信機70が故障している旨の故障診断結果を、その受信機70を識別するための発信機IDに関連付けて管理サーバ130に送信する。その後、このプログラムはステップS1601に戻る。
【0183】
その故障診断結果を受けて、管理サーバ130は、作業者を、該当する駐車場20に派遣し、故障受信機70の点検、修理および交換を行わせる。
【0184】
これに対し、ステップS1605の判定もステップS1708の判定もNOである場合には、ステップS1611において、外側ラインセンサ50および内側ラインセンサ52のうち該当するもの(故障受信機70も故障発信機60も存在しないもの)につき、すべての発信機60およびすべての受信機70が正常であると判定する。
【0185】
その後、ステップS1612において、前記本番動作の再開を許可する。続いて、このプログラムはステップS1601に戻る。
【0186】
<駐車場管理>
【0187】
図17には、図13に示す管理サーバ130のうちの駐車場管理部132において実行される例示的な駐車場管理プログラムが概念的にフローチャートで表されている。
【0188】
この駐車場管理プログラムが実行されると、まず、ユーザの通信端末90が、ステップS1701において、管理サーバ130にログインするためのリクエスト信号をユーザIDなどの必要な個人情報と共にその管理サーバ130に送信する。これに対し、そのリクエスト信号を受信すると、管理サーバ130は、通信端末90を認識し、その通信端末90との間で通信を確立する。
【0189】
管理サーバ130は、ステップS1711において、信号処理ユニット100と通信し、メモリ162から前記物体識別結果を受信し、それを参照することにより、駐車場20の出入り通路40を通過する物体30が車両であるか否かを判定する。その物体30が車両でなければ、判定がNOとなり、ステップS1711に戻るが、その物体30が車両であれば、判定がYESとなり、ステップS1712に進む。
【0190】
そのステップS1712においては、管理サーバ130が信号処理ユニット100と通信し、メモリ162から前記入出庫判別結果を受信し、それを参照することにより、車両30が駐車場20に入庫したか否かを判定する。車両30が駐車場20に入庫したと判定されると、ステップS1712の判定がYESとなり、ステップS1713に進む。
【0191】
そのステップS1713においては、管理サーバ130が、駐車場20における複数の空室のうちのいずれかを、今回のユーザの車室として選択する。ユーザIDと、使用中の車室の番号との間の関係は、管理サーバ130のメモリに保存されている。
【0192】
今回のユーザの車室が選択されると、ステップS1714において、管理サーバ130が、その選択した車室を今回のユーザの通信端末90に送信する。
【0193】
これに対し、通信端末90は、ステップS1702において、その車室に関する情報を管理サーバ130から受信し、続いて、ステップS1703において、入庫リクエストを管理サーバ130に送信する。
【0194】
その入庫リクエストを受信すると、管理サーバ130は、ステップS1715において、現在時刻を計測し、その現在時刻として入庫時刻を前記メモリに保存する。続いて、ステップS1716において、入庫手続が完了したことを表す入庫完了信号を今回のユーザの通信端末90に送信する。
【0195】
これに対し、通信端末90は、ステップS1704において、その入庫完了信号を管理サーバ130から受信する。
【0196】
以上、ステップS1712において、管理サーバ130が、車両30が駐車場20に入庫したと判定した場合を説明したが、出庫したと判定した場合には、ステップS1712の判定がNOとなり、続いて、ステップS1717において、管理サーバ130が、車両30が駐車場20から出庫したか否かを判定すれば、その判定はYESとなる。なお、このステップS1717の判定がNOとなった場合には、ステップS1711に戻る。
【0197】
その後、ステップS1718において、管理サーバ130が、現在時刻を計測し、その現在時刻として出庫時刻を前記メモリに保存する。続いて、ステップS1719において、前記メモリから、今回のユーザについての入庫時刻を読み出し、その入庫時刻から今回の出庫時刻までの経過時間として駐車時間を計算する。
【0198】
その後、ステップS1720において、管理サーバ130が、その計算された駐車時間の長さに見合う額の駐車料金を計算し、その駐車料金を表すデータを、今回のユーザの通信端末90に送信する。
【0199】
これに対し、通信端末90は、ステップS1705において、その駐車料金を表すデータを管理サーバ130から受信し、続いて、ステップS1706において、出庫リクエストを管理サーバ130に送信する。
【0200】
その出庫リクエストを受信すると、管理サーバ130は、ステップS1721において、決済サーバ140と通信することにより、前記駐車料金を電子決済する。続いて、ステップS1722において、出庫手続が完了したことを表す出庫完了信号を今回のユーザの通信端末90に送信する。
【0201】
これに対し、通信端末90は、ステップS1707において、その出庫完了信号を管理サーバ130から受信する。
【0202】
ところで、車両30が駐車場20に入庫するステージにおいては、通常、最初に、車両30が、駐車場20の外部からその駐車場20の出入り通路40に接近し、やがて、車両30は、その車両30にユーザが乗車している状態で、外側ラインセンサ50を内向きに通過する。
【0203】
その後、ユーザが車両30を所定の車室まで運転してそこに進入して駐車すると、その車両30からユーザが降車する。続いて、ユーザは単独で、駐車場20内を歩行して出入り通路40まで移動し、やがて外側ラインセンサ50をさきほどとは逆向きに、すなわち、外向きに通過する。
【0204】
このとき、ユーザの通信端末90は、外側ラインセンサ50を外向きに通過し、そのときにそれの少なくとも1つの発信機60からの信号を受信するから、前記少なくとも1つの発信機60の実発信機IDを取得できる。
【0205】
よって、通信端末90は、図17に示す前述のステップS1701(ただし、入庫時)において、前記取得できた実発信機IDをユーザID(ユーザ識別情報の一例)と共に管理サーバ130に送信してもよい。
【0206】
この場合、管理サーバ130は、通信端末90から受信した実発信機IDが、駐車場20の外側ラインセンサ50に帰属するものであるか否かを判定してもよい。
【0207】
その実発信機IDが駐車場20の外側ラインセンサ50に帰属すると判定される場合には、管理サーバ130は、受信したユーザIDと、図9に示す複数の車両カテゴリーのうち前記物体識別プログラムの実行によって識別されたもの(例えば、図2に示す例においては、物体カテゴリーNo.1)とを紐付けし、それらユーザと車両30とのペアを前記メモリに保存してもよい。
【0208】
同様に、車両30が駐車場20から出庫するステージにおいては、通常、最初に、ユーザが単独で、駐車場20の外部から歩行して出入り通路40に接近し、やがて外側ラインセンサ50を内向きに通過する。
【0209】
その後、ユーザは、駐車場20内を自分の車室まで歩行し、そこに駐車してある車両30に乗車する。続いて、ユーザは、車両30を発車させて、駐車場20内を走行させて出入り通路40に接近する。その後、車両30は、外側ラインセンサ50を外向きに通過する。
【0210】
このとき、ユーザの通信端末90は、外側ラインセンサ50を内向きに通過し、そのときにそれの少なくとも1つの発信機60からの信号を受信するから、前記少なくとも1つの発信機60の実発信機IDを取得できる。
【0211】
よって、通信端末90は、前述のステップS1701(ただし、出庫時)において、その取得できた実発信機IDをユーザIDと共に管理サーバ130に送信してもよい。
【0212】
この場合、管理サーバ130は、通信端末90から受信した実発信機IDが、駐車場20の外側ラインセンサ50に帰属するものであるか否かを判定してもよい。
【0213】
その実発信機IDが駐車場20の外側ラインセンサ50に帰属すると判定される場合には、管理サーバ130は、受信したユーザIDと、図9に示す複数の車両カテゴリーのうち前記物体識別プログラムの実行によって識別されたもの(例えば、図2に示す例においては、物体カテゴリーNo.1)とを紐付けし、それらユーザと車両30とのペアを前記メモリに保存してもよい。
【0214】
入庫時に前記メモリに保存されたペアと、出庫時に前記メモリに保存されたペアとが互いに一致する場合には、今回のユーザが、同じ車両カテゴリーに分類されたと判定できる。これは、物体識別の精度が高かったこと、ひいては、ユーザと車両30との紐付けの精度が高かったことを意味すると解釈してもよい。
【0215】
その結果、例えば、ユーザが駐車場20を反復的に利用する場合に、管理センタ124は、個別のユーザに関する個人情報として、使用する車両30の種類という貴重な情報を取得することが可能となる。管理センタ124は、この個人情報を今後の駐車場マーケティングに活用することも可能である。
【0216】
また、前記複数の基準シルエットが、図9に例示する複数の標準的シルエットより多数の車種シルエット(例えば、日本で販売されているすべての車種についてのシルエット)である場合には、同じ車両が駐車場20に複数回駐車した場合に、本来であれば、その車両は、同じ車種シルエットとして分類されるところ、外側ラインセンサ50の測定誤差に起因し、複数の車種シルエットに分散して分類される可能性がある。
【0217】
しかし、同じ車両が駐車場20に駐車するごとに、ユーザと車種カテゴリーとの紐付けを行い、その結果、同じユーザが、複数の車種カテゴリーに関連付けられる場合に、最も頻繁に同じユーザに関連付けられる1つの車種カテゴリーを真の車種カテゴリーとして識別することが可能である。この場合、前記紐付けの数、すなわち、サンプルデータの数が増加するほど、車両の識別精度が向上する。
【0218】
[第2の実施形態]
【0219】
次に、本発明の例示的な第2の実施形態に従う物体識別システム10を説明するが、第1の実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0220】
第1の実施形態においては、外側ラインセンサ50が、物体識別という機能(用途)と、入出庫判別という機能(用途)とを実現するために利用されるが、本実施形態においては、さらに、ユーザの識別およびユーザと車両との紐付けという機能(用途)をも実現するために利用される。
【0221】
本実施形態に従うシステム10のうち、物体識別という機能(用途)と、入出庫判別という機能(用途)とを実現するための部分は、第1の実施形態と共通するため、重複した説明を省略するが、ユーザの識別およびユーザと車両との紐付けという機能(用途)を実現するための部分を詳細に説明する。
【0222】
図18には、本実施形態に従う物体識別システム10のうちの外側ラインセンサ50が正面図で示されている。同図に示す発信機ポスト62から発信された複数の信号は、車両30のアウタパネルによって遮断されずに空間を透過して受信機ポスト72に到達するものと、車両30のアウタパネルによって遮断されるものと、車両30の窓ガラスを透過してその車室内に進入して乗員としてのユーザの通信端末90によって受信されるものとに分類される。
【0223】
同図に示すように、信号処理ユニット100は、通信機器300を有し、また、管理サーバ130は、ユーザ・車両紐付け部310を有する。信号処理ユニット100は、必要な情報を、通信機器300を介して、管理サーバ130に送信し、前記必要な情報に基づき、ユーザ・車両紐付け部310が起動する。管理サーバ130は、ユーザの通信端末90とも通信する。
【0224】
図19には、ユーザ・車両紐付け部310において実行される例示的なユーザ・車両紐付けプログラムが、ユーザの通信端末90において実行されるユーザ特定支援プログラムと共に概念的にフローチャートで表されている。
【0225】
ユーザ・車両紐付けプログラムが起動すると、管理サーバ130は、まず、ステップS1931において、外側ラインセンサ50の受信機ポスト72の受信結果を表す信号を信号処理ユニット100から受信する。さらに、その信号に基づき、外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態であるか否か、すなわち、外側ラインセンサ50が何らかの物体を検出している(現在、駐車場20の出入り通路40上に物体が存在する)か否かを判定する。
【0226】
外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態であるわけではない場合には、判定がNOとなり、ステップS1931に戻るが、外側ラインセンサ50が少なくとも部分的にOFF状態であるわけではない場合には、ステップS1931の判定がYESとなり、ステップS1932に移行する。
【0227】
このステップS1932においては、前記ユーザIDを参照することにより、ユーザの通信端末90に、受信リクエストを送信する。
【0228】
これに対し、通信端末90は、ステップS1901において、複数の発信機60から信号を受信することを試行する。続いて、ステップS1902において、受信した各信号を実発信機IDに変換する。その後、ステップS1903において、その実発信機IDをユーザIDに関連付けて管理サーバ130に送信する。
【0229】
これに対し、管理サーバ130は、ステップS1933において、その実発信機IDをユーザIDに関連付けて通信端末90から受信する。続いて、ステップS1934において、物体識別部112の実行結果である物体識別結果を信号処理ユニット100から受信する。その後、ステップS1935において、物体識別部112により、物体が車両30として識別されたか否かを判定する。
【0230】
物体識別部112により、物体が車両30として識別されていない場合には、その判定がNOとなり、ステップS1931に戻るが、物体が車両30として識別された場合には、ステップS1935の判定がYESとなり、ステップS1936において、通信端末90から受信した実発信機IDが外側ラインセンサ50に帰属するか否か、すなわち、外側ラインセンサ50の発信機ポスト62に属する複数の発信機60の複数の実発信機IDのうちのいずれかと一致するか否かを判定する。
【0231】
通信端末90から受信した実発信機IDが外側ラインセンサ50に帰属しない場合には、判定がNOとなり、ステップS1931に戻るが、帰属する場合には、その判定がYESとなり、ステップS1937において、今回の車両30に割り当てられた車両基準シルエット番号(ないしは車種)を信号処理ユニット100から受信する。
【0232】
続いて、管理サーバ130は、ステップS1938において、今回のユーザ(例えば、ユーザID)と今回の車両30(例えば、今回の車両基準シルエット番号(ないしは車種))とを紐付けする。その後、ステップS1939において、その紐付け結果を、図20に例示するように、ユーザ・車両紐付けリストにリスト化して保存する。
【0233】
以上、本発明の例示的な複数の実施形態を、駐車場20において、所定の通路としての出入り通路40を通過する3次元物体としての車両30を簡易的に一方向のみから識別して形状的に分類するという用途に使用するシナリオについて説明したが、同様な実施形態は他の用途に使用することが可能である。
【0234】
そのような他の用途の一例としては、物流センタにおいて、所定の通路(例えば、コンベヤ)に沿って流れるシート状もしくは板状または3次元形状の物品を識別して形状的に分類する(例えば、サイズごとの分類(最大寸法ごとの分類)、正方形に近いか縦長または横長であるか(アスペクト比ごとの分類)などの複数の分類)という用途がある。
【0235】
別の例としては、商業施設(例えば、デパート、飲食店、フードコート、書店)または大衆が利用する公共施設(例えば、道路、地下道、美術館、学校、市役所、駅、空港、バス停、バス、図書館)において、所定の通路に沿って流れる人間(3次元物体)を識別して形状的に分類する(例えば、独立歩行の人間、車いすに乗って歩行している人間、介助者または介助犬を伴う人間、大人、子供などの複数の分類)という用途がある。
【0236】
以上、本発明の複数の例示的な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【要約】      (修正有)
【課題】物体をラインセンサで一方向にスキャンすることによって前記物体を識別する技術であって、識別すべき物体の形状を精度よく測定することができる物体識別システムを提供する。
【解決手段】複数の発信機よりなる発信機列62と複数の受信機70より成る受信機列72とが中央空間77を隔てて互いに対向するように空間上に配置されて成るラインセンサを用いる。各受信機70が2以上の発信機から2以上の信号を同時に受信すると、各受信機に1対1に対応するように予め割り当てられた対向発信機から発信された信号を有効信号として選択する。複数の受信機70のうち、それぞれの対向発信機から有効信号を受信したものと受信しなかったものとを互いに区別し、その結果から1次元情報を生成し、複数の1次元情報を2次元情報に変換して物体30の実際シルエットを推定し、その実際シルエットから物体30を識別して分類する。
【選択図】図2
図1
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