(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の嗅覚検査装置であって、前記におい質発生機構は、前記におい質ボンベに入っているにおい質を注射器に吸引し前記注射器のシリンジの下降速度を調節することで、におい質の強度を対数的に変化させるようその濃度を調製することを特徴とする嗅覚検査装置。
請求項1または請求項2記載の嗅覚検査装置であって、前記におい提示機構に、前記におい質気体または無臭気体を鼻孔の左右いずれか一方または左右両方に選択的に供給する 手段を備えたことを特徴とする嗅覚検査装置。
請求項1から請求項3のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、前記におい発生部は、無臭空気が一定量流れているところに、前記におい質発生機構からのにおい質気体の流量を段階的に加減して変化させることにより、その濃度または強度を変化させることを特徴とする嗅覚検査装置。
それぞれ異なる濃度または強度のにおい質を収容する複数のにおい質カートリッジを切り替えることによって、濃度または強度が規定されたにおい質気体を発生するにおい質発生機構と無臭気体発生機構を有するにおい発生部と、被験者の鼻孔部にあてられるにおい提示機構を介して、におい質発生機構と無臭気体発生機構からのにおい質気体または無臭気体を被験者に交互に供給する気体供給部と、被験者がにおい質を嗅いだときに意思表示できる回答手段とを備え、前記におい発生部は間欠的に駆動されるカートリッジハウジングを有し、前記複数のにおい質カートリッジと無臭気体のブランクカートリッジがカートリッジハウジングに配置され、前記気体供給部がカートリッジハウジングの移動軌跡上の所定位置に配置されたことを特徴とする嗅覚検査装置。
請求項5に記載の嗅覚検査装置であって、前記におい質カートリッジは、中空筒状の両端にチェックバルブが設けられ、その中間部ににおい質を含有した粒子を詰め込んだことを特徴とする嗅覚検査装置。
請求項1から請求項6のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、前記回答手段は音声認識機能を有し、被験者がにおい質を嗅いだときに音声にて意思表示できることを特徴とする嗅覚検査装置。
請求項1から請求項8のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、前記気体供給部ににおいセンサを備え、におい発生部からにおい質気体が発生していることを確認できることを特徴とする嗅覚検査装置。
【背景技術】
【0002】
嗅覚機能の検査は、視覚、聴覚または触覚などに比較して基準臭がまだ発見されていないので五感のなかでも難しく、適切かつ簡便な検査機器がないのが現状である。
ところで、近年、アルツハイマー病やパーキンソン病などの初期段階においては嗅覚機能が減退することが知られており、嗅覚機能の検査は嗅覚脱失や味覚障害など通常の嗅覚障害の診断のみならず、アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳疾患に関わる早期診断を可能にするものとして注目されている。
【0003】
例えば、ピーナッツバターのにおいの感じ方の違いで、初期のアルツハイマー型認知症を識別することが試みられている(非特許文献1)。
非特許文献1のピーナッツバターテストでは、アルツハイマー型認知症の可能性が高い患者18名と、軽度の認知機能障害の患者24名、アルツハイマー型以外の認知症と診断された患者26名、認知機能低下のないコントロール26名を対象者として、被験者に目を閉じてもらい、鼻の孔の位置に縦に定規をあてて、下方30cmの位置に、ピーナッツバターが小さじ1杯(16g)入った密閉容器を置き、密閉容器のふたを取って、何かのにおいがするかを尋ねる。分からなければ、密閉容器を1cm上方(鼻孔)に近付けて再度同じことを繰り返し、においを感じた位置を記録する。
【0004】
アルツハイマー型認知症が疑われる患者群では、左の鼻でにおいを感じたのが、鼻下平均5.1cmであったのに対して、右の鼻では平均17.4cmで、明瞭な左右差があり、左の嗅覚機能が低下している。左右の数値の差(左−右)で評価した場合、コントロール26名の平均が0.0であったのに対して、アルツハイマー群では−12.4、軽度認知機能低下群では−1.9、アルツハイマー以外の認知症群では4.8であり、明確にアルツハイマー病とそれ以外との間で差が現れた。
このようにアルツハイマー型認知症の初期において、左半球に強い嗅覚皮質の異常がおこり、仮にアルツハイマー型認知症の初期に一致して出現する現象とするならば、においの左右差を検査することで、アルツハイマー型認知症のリスクを判定もしくは示唆することが可能となる。
【0005】
特に、アルツハイマー病の治療は、羅患すると進行は遅延させることはできるが、全治する薬はまだ開発されていない。初期に発見されれば、正常に近い状態に回復することが期待でき、進行度をかなり抑えられることもアリセプト(登録商標)の例で証明されていることから、アルツハイマー病は、早期発見が重要で自覚した時には進行が始まっており、健康診断的にいかに予防的に脳(嗅覚)機能の変化を捉えることができるかが大きな課題である。また、最近の研究において、初期にアルツハイマー病の兆候が見られたとき、運動や言語による脳への刺激やにおいによる脳刺激によって症状が改善されることも報告されていることから、予防的早期診断は適切な症状改善への対処としても重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、ピーナッツバターテストでは、ピーナッツバター固形物を鼻に遠いところから徐々に近づけることで、強度を調整し、鼻からの距離を物差しで計測することにより嗅覚機能を検査する方法がとられている。また、一般的に嗅覚機能テストとして異なったにおい質を鼻のそばに置き、臭うか、臭わないかの識別検査が行われている。
【0008】
しかし、これら手法は非常に簡便ではあるが、においの強さを鼻からの距離で規定しており、また手動であり、におい質が揮発し気流により運ばれることを考えると、再現性のあるにおいの強さを供給できないため、検査にばらつきが生じ、検査の信頼性を著しく損なうものであった。また、嗅覚機能は、同じにおいを長時間嗅いでいると嗅覚感度が低くなるといういわゆる順応現象が生じ、また、直前に嗅いだにおいとの比較は正確に行えるが、少し前に嗅いだにおいとの比較は苦手であり、これらに考慮した検査機器はなく、再現性のある嗅覚機能を検査することができなかった。
【0009】
さらに、従来の方法では、におい質が認知できたかどうかについて検査していたが、この場合に定量評価をすることが難しく、におい強度、異なったにおい質、混合におい質など嗅覚に関係する機能を総合的に判定することもできなかった。
要するに、従来の嗅覚機能の検査においては、定量性や総合的な嗅覚機能の検査というにはほど遠く、視覚や聴覚のように健康診断の一項目として適切かつ簡便に検査する機器が見当たらないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するもので、定量性や総合的な嗅覚機能の検査を視覚や聴覚のように健康診断の一項目として適切かつ簡便に検査することができる嗅覚検査装置を提供することを目的としている。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の
第1の態様の嗅覚検査装置は、におい質を収容しその濃度または強度が規定されたにおい質を発生するにおい質発生機構と無臭気体発生機構を有するにおい発生部と、被験者の鼻孔部にあてられるにおい提示機構を介して、におい質発生機構と無臭気体発生機構からのにおい質気体または無臭気体を被験者に供給する気体供給部と、被験者がにおい質を嗅いだときに意思表示できる回答手段とを備え、気体供給部からにおい質気体と無臭気体とを交互に被験者に供給するものである。
【0012】
本発明の
第2の態様の嗅覚検査装置は、請求項1記載の本発明の嗅覚検査装置であって、におい質発生機構は、におい質の強度を対数的に変化させるようその濃度を調製するものである。これは、人の鼻は濃度の対数に比例した感度を持つためである。
【0013】
本発明の
第1の態様および第2の態様の嗅覚検査装置におけるにおい質発生機構は、独立流路を構成することによりにおい質のクロストークを防ぐとともに、時間が経過しても濃度が一定である機構であり、具体的な機構としては、小型ボンベ、ディフュージョンチューブ、パーミュエータ、におい質カートリッジなどが含まれる。また、無臭気体発生機構は、無臭気体を提供するもので、例えば高純度の清浄空気(99.9999%相当)や活性炭が入ったチューブでもよい。ただし、におい質発生機構と同様に、常に無臭が保証されている必要がある。
【0014】
さらに、本発明の
第1の態様および第2の態様の嗅覚検査装置におけるにおい質発生機構には、1種類のにおい質を収容しそのにおい質の強度を段階的に変化させた複数のにおい質発生機構、異なるにおい質を収容した複数のにおい質発生機構、または2種類以上のにおい質を混合したにおい質発生機構も含まれる。 他方、無臭気体発生機構は、におい質を収容していないにおい質カートリッジを転用することができるが、少なくとも無臭の清浄空気が通過できる中空の管状体もしくは通路であればよい。
【0015】
また、におい質発生機構と無臭気体発生機構から交互ににおい質気体または無臭気体を鼻孔に供給する場合、好ましくは、被験者の呼吸にあわせて交互ににおい質気体または無臭気体を嗅げるようにする。この場合、呼気、吸気のタイミングをコンピュータ画面上に表示させ、無理のないタイミングで強制的ににおいを嗅がせるようにすることもできる。これは、通常、におい質や強さの印象は直ぐになくなってしまうので、できるだけ短時間に比較する2つのにおいを嗅ぐためである。さらに、におい質によっては、必ずしもにおい質気体と無臭気体の鼻孔への供給が1回交替である必要はなく、つぎのにおい質気体の供給までの間に2回以上連続して無臭気体の供給がなされてもよく、このような態様も交互の範疇に包含される。
【0016】
また、本発明の
第3の態様の嗅覚検査装置は、
本発明の第1の態様または第2の態様の嗅覚検査装置であって、におい提示機構ににおい質気体または無臭気体を鼻孔の左右いずれか一方または左右両方に選択的に供給する手段を備えたものである。 におい質気体または無臭気体を選択的に供給する手段としては、片側の鼻孔にのみにおい質気体が提供されるような配管がほどこされるか、片側の鼻孔を閉塞する機構の場合には適宜のものが適用可能であり、外方より押圧する手段または鼻孔に栓をする手段をとってもよい。鼻孔を選択する機構は検査プロトコルに従って左右のいずれか一方または左右両方ににおい質気体または無臭気体が供給されるよう選択的に制御される。なお、鼻孔へのにおい質気体の供給にあたっては、極力被験者自身の呼気が混在しないように鼻孔に直接入れるようにするのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の
第4の態様の嗅覚検査装置は、
本発明の第1の態様から第3の態様のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、におい発生部は間欠的に駆動されるカートリッジハウジングを有し、におい質カートリッジと無臭気体のブランクカートリッジがカートリッジハウジングに配置され、気体供給部をカートリッジハウジングの移動軌跡上の所定位置に配置したものである。 カートリッジハウジングは、複数のにおい質カートリッジおよび少なくとも1つの無臭気体のブランクカートリッジが挿入される複数の挿入孔が形成されており、これらにおい質カートリッジおよび無臭気体のブランクカートリッジがその移動軌跡上の所定位置に配置される気体供給部の位置まで移動するよう間欠的に駆動され、好ましくは,におい質の発生を一定にするためにカートリッジハウジング(におい質カートリッジ)が温度制御される。
【0018】
さらにまた、本発明の
第5の態様の嗅覚検査装置は、
本発明の第4の態様の嗅覚検査装置であって、におい質カートリッジは、中空筒状の両端にチェックバルブが設けられ、その中間部ににおい質を含有した粒子を詰め込んだものである。 におい質を含有した粒子は、テナックス(登録商標)などの粒子表面ににおい種を吸着させたものが好適である。このような粒子の場合、カートリッジに詰め込む粒子数により容易ににおい強度を調整し変更することができる。
【0019】
また、本発明の
第6の態様の嗅覚検査装置は、
本発明の第1の態様から第3の態様のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、におい発生部は、無臭空気が一定量流れているところに、におい質発生機構からのにおい質気体の流量を段階的に加減して混合するにより、その濃度または強度を変化させるものである。
【0020】
また、本発明の第7の態様の嗅覚検査装置は、
本発明の第1の態様から第6の態様のいずれかに記載の嗅覚検査装置であって、回答手段は音声認識機能を有し、被験者がにおい質を嗅いだときに音声にて意思表示できるものである。 音声認識機能は、すでに販売され実用化されている音声認識ソフトウェアを用いることができる。
【0021】
さらに、本発明の
第8の態様の嗅覚検査装置は、回答手段の回答内容を表示する表示手段を備えたものである。 回答内容を表示する表示手段には、回答手段によるにおい質を嗅いだときの回答のみならず、当該回答の内容を踏まえて総合的に評価した結果の表示をするため、例えば液晶等のパネルディスプレイを用いることができる。
【0022】
さらにまた、本発明の
第9の態様の嗅覚検査装置は、気体供給部ににおいセンサを備え、におい発生部からにおい質気体が発生していることを確認できるようにしたものである。 においセンサとしては周知のセンサを用いることができる。
【0023】
また、本発明の
第10の態様の嗅覚検査装置は、被験者のにおいに対する脳機能の反応を確認する手段を備えたものである。 においに対する脳機能の反応を確認する手段としては、被験者に取り付ける脳波計や血流計等のセンサを適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の嗅覚検査装置によれば、におい発生機構と無臭気体発生機構から交互ににおい質気体および無臭気体を被験者に供給するので、順応を回避でき、また直前に無臭が確認できるので無臭かどうかの判定が容易になる。また、被験者がにおい質を嗅いだときに、回答手段により意思表示(回答)する構成であるので、におい質の調製されたにおい質発生機構を用いることにより再現性のあるにおいの強さを供給することができ、検査にばらつきが生じることもなく、検査の信頼性を高め、再現性のある嗅覚機能を検査することができる。
また、におい質の濃度を対数的に変化させることにより、嗅覚の強度感度を定量的に把握できる。
【0025】
また、本発明の嗅覚検査装置によれば、におい発生機構と無臭発生機構が、間欠的に駆動されるカートリッジハウジングに配置され、カートリッジハウジングの移動軌跡上の所定位置に配置された気体供給部の位置まで移動される方式もあるので、複雑な移動機構を最小限にして検査装置をコンパクトに組み立てることができ、におい質の発生を一定にするためにカートリッジハウジング(におい質カートリッジ)を温度制御する場合にも効果的に構成することができる。
なお、無臭空気を一定に流しているところに、におい質発生機構からのにおい質気体の流量を段階的に加減して混合することにより、その濃度または強度を素早く変化させることができる。
【0026】
さらに、本発明の嗅覚検査装置一実施例によれば、におい質カートリッジは、中空筒状の両端にチェックバルブが設けられ、その中間部ににおい質を含有した粒子を詰め込んで構成したもので、個々のにおい質カートリッジのにおい強度のみならず、異なったにおい質、混合におい質なども容易に調製することができ、嗅覚に関係する機能を総合的に判定することができる。
【0027】
また、本発明の嗅覚検査装置によれば、回答手段は音声認識機能を有し、被験者がにおい質を嗅いだときに音声にて意思表示できるので、例えば、アルツハイマー型認知症の初期診断に使用する場合、通常、この種疾病の被験者には比較的高齢者が多く、ステックやボタンなど手動操作することに不慣れであり、また上手く操作できず、誤回答するおそれも想定されるが、本発明の嗅覚検査装置では、音声により間違いなく意思表示(回答)でき、アルツハイマー型認知症のリスクを判定もしくは示唆する場合にも嗅覚を正しく検査できる。
【0028】
さらにまた、本発明の嗅覚検査装置によれば、回答手段の内容を表示する表示手段を備えているので、表示方法を適宜工夫することにより、例えばアルツハイマー型認知症の進行状況を効率的かつ簡便に知る一つの指標ともなり、また被験者自らチェックすることもできる。
【0029】
さらに、本発明の嗅覚検査装置によれば、気体供給部ににおいセンサを備え、におい発生部からにおい質気体が発生していることを確認できるので、におい質気体が供給されないことによる検査ミスを未然に防止することが可能である。
【0030】
また、本発明の嗅覚検査装置によれば、被験者のにおいに対する脳機能の反応を確認する手段を備え、被験者がにおい質を嗅いだときの回答内容と脳機能の変化を関連づけることができるので、回答内容の信頼性を高め、より正しい嗅覚検査を実施することができる。
【0031】
本発明の嗅覚検査装置によれば、以上のとおり、例えばアルツハイマー型認知症などの初期診断やその進行状況の判定に効果的に使用することができるが、さらに副次的な効果として、健常者にあっては予防として嗅覚刺激に用いることができるほか、アルツハイマー型認知症患者などにおいてはにおい刺激による脳機能の強化を助ける機器としても期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて、本発明の嗅覚検査装置の実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明の嗅覚検査装置の一実施形態における主たる構成を示す全体概略構成図である。
図1において、本発明の嗅覚検査装置の一実施例では、後述するにおい質を収容したにおい質カートリッジと無臭気体のブランクカートリッジを有するにおい発生部1と、被験者2の鼻孔部にあてられるにおい提示機構3を介して、におい質カートリッジと無臭気体のブランクカートリッジからにおい質気体または無臭気体を被験者2に供給する気体供給部4と、被験者2がにおい質を嗅いだときに意思表示できる回答手段5と、回答手段5の内容を表示する表示手段6とを主たる構成要素として構成される。
【0034】
におい発生部1および気体供給部4の構成について
図2、
図3および
図4を参照しながら説明する。
におい発生部1は、
図2に示すように、駆動機構7により間欠回転駆動されるカートリッジハウジング8を有し、カートリッジハウジング8にはにおい質カートリッジ9と無臭気体のブランクカートリッジが挿置される挿入孔10、11を有する。なお、
図2の実施例では、挿入孔11が無臭気体のブランクカートリッジに相当する。また、カートリッジハウジング8は、カートリッジハウジング8と駆動機構7を連結する連結部(図示省略)によって固定支持される。また、カートリッジハウジング8内を適宜の手段により温度制御することによりにおい質の発生を一定にすることができる。
【0035】
また、におい質カートリッジ9と無臭のブランクカートリッジ11をカートリッジハウジング8に配置するにあたっては、必ずしも1本おきに交互に挿置する必要はなく、カートリッジハウジング8にニュートラル位置を設けて無臭気体のブランクカートリッジ(挿入孔)11をそのニュートラル位置の一箇所にのみ挿置しておくこともできる。
【0036】
におい質カートリッジ9の具体的構成を
図3に示す。
図3において、におい質カートリッジ9は両端にチェックバルブ13、14が設けられた中空筒状ハウジング12からなり、チェックバルブ13、14の機能は常態において中空内部の気体が外方へ漏洩するのを防止する。
中空筒状ハウジング12の中間部には、チェックバルブ13、14とフィルタ15、16で隔離してにおい質を含有した粒子17が詰め込まれている。におい質を含有した粒子17は、例えば、テナックス(登録商標)などの粒子表面ににおい種をコーティングまたは吸着させたものが好適である。このような粒子の場合、粒子17に吸着させるにおい質の量を調整する中空筒状ハウジング12に詰め込むにおい質を含有した粒子17の数により容易ににおい強度を調整し変更することができる。
なお、無臭のブランクカートリッジ11として、
図2の実施例ではカートリッジハウジング8の挿入孔11が相当するが、におい質を含有した粒子が詰め込まれていないにおい質カートリッジや単なる中空筒状の管を用いることもできる。
【0037】
図3において、(a)は単一のにおい質を含有した粒子17のみを詰め込んだにおい質カートリッジ9であり、(b)は単一のにおい質を含有した粒子17と、粒子表面ににおい種をコーティングまたは吸着させていない無臭の粒子17aを適宜の割合で混合した、におい強度の違うにおい質カートリッジ9であり、(c)はあるにおい質を含有した粒子17と、異なるにおい質を含有した粒子17bを適宜の割合で混合した混合におい質カートリッジ9の一例である。
なお、におい質の種類としては、嗅覚検査にとってどのようなにおい質が効果的であるかを決めることは困難であるが、本発明の嗅覚検査装置の実施例においては、におい質の種類は特定せず、通常、健常者がにおいを識別できるにおい質であれば、本来的にどのようなにおい質でも構わないが、例えば、具体的なにおい質を例示すると、健常者とアルツハイマー症患者との間でにおい質の嗅ぎ分けに感度差が出ている墨汁、木、オレンジ、バラ、ヒノキ、ガーリック、レモン等が挙げられる(Daiki JINBO et al. Specific feature of olfactory dysfunction with Alzheimer’s disease inspected by the Odor Stick Identification Test, PSYCHOGERIATRICS 2011; 11: 196-204 )。
【0038】
におい質気体または無臭気体を被験者2に供給する気体供給部4は、
図2に示すように、所定位置においてカートリッジハウジング8を挟んで配置された一対のアダプタ18、19と、アダプタ18、19をカートリッジハウジング8に挿置されたにおい質カートリッジ9および無臭気体のブランクカートリッジ11の両端に向かって移動させるアダプタ駆動機構20と、一方のアダプタ18をにおい提示機構3に接続する管路21と、他方のアダプタ19を清浄空気供給機構23に接続する管路22とからなり、カートリッジハウジング8の駆動機構7、アダプタ駆動機構20および清浄空気供給機構23の作動は、制御部24によりそのタイミングが制御される。すなわち、制御部24はカートリッジハウジング8に挿置されたにおい質カートリッジ9または無臭気体のブランクカートリッジ11がアダプタ18、19の位置に到来したときに、アダプタ駆動機構20を駆動し、次いで清浄空気供給機構23を駆動するように制御する。
【0039】
アダプタ18、19の具体的構成を
図4に示す。
図4において、アダプタ18、19はにおい質カートリッジ9の両端に設けられたチェックバルブ13、14を押して開放する突部18a、19aを有し、チェックバルブ13、14の解放時ににおい質気体が外部に漏れないようにシール部18b、19bが設けられている。なお、18c、19cは、アダプタ18、19と、におい提示機構3および清浄空気供給機構23とが接続される管路21、22の自由度を保つための伸縮管である。
【0040】
におい質気体は、におい質カートリッジ9の両端にアダプタ18、19を圧接してチェックバルブ13、14を開放し、清浄空気供給機構23から供給される清浄空気がにおい質を含有した粒子が詰め込まれたにおい質カートリッジ9の中間部を通過することによりにおい提示機構3を介して被験者2へ供給される。また、無臭気体は清浄空気供給機構23からの清浄空気が無臭のブランクカートリッジ11を素通りすることにより、におい提示機構3を介して被験者2へ供給される。
【0041】
また、気体供給部4の適宜の箇所、
図2の実施例ではにおい質気体または無臭気体を被験者2に供給する管路21の途中ににおいセンサ25を備えている。においセンサ25としては周知のものを用いることができる。例えば、金属酸化物半導体の表面ににおい分子が吸着すると、電気伝導度が良くなり抵抗値が低下するので、その抵抗値変化を利用してにおい質の発生を検知するセンサが知られている。
においセンサ25からの出力信号により後述する検査プロトコルに従ってにおい質が供給されていないことを検知したときは、適宜の警報手段(図示せず)により故障を報知し、これによりにおい質カートリッジ9からにおい質気体が被験者2へ供給されないことによる検査ミスを未然に防止することができる。
【0042】
図5ににおい提示機構3の構成を示す。
図5において、におい提示機構3は、鼻孔部を包み込むコーン状のもので、図示していないが、バンド等の手段により被験者2の頭部に保持される。におい提示機構3には一端がアダプタ18に接続された管路21の他端が接続されており、管路21を通じてにおい質気体または無臭気体が被験者2に供給される。
また、におい提示機構3には、鼻孔の左右いずれか一方を閉塞する鼻孔閉塞機構26を備えている。鼻孔閉塞機構26としては、適宜のものが適用可能であるが、例えば鼻孔を外方より押圧して閉塞する手段が好適である。さらに、それぞれの鼻孔に対して独立した流路を有し、その一方にのみにおい質気体が供給され、他方には無臭気体が供給されるように構成すればより好ましい。
鼻孔閉塞機構26は、後述する検査プロトコルに従って前述した制御部24により左右のいずれか一方または左右両方ににおい質気体または無臭気体が供給されるよう選択的に制御される。
【0043】
なお、被験者2には、被験者2のにおいに対する脳機能の反応を確認する手段、例えば、脳波計27を取り付けて嗅覚検査を行うのが好ましい。脳波計27としては、頭部にセンサーバンドを装着する簡易型の脳波計がすでに販売されている。脳波計27からの出力信号(脳波データ)は前述した制御部24に取り込まれ、被験者2がにおい質を嗅いだときの回答内容と脳機能の変化を関連づけられる。これにより回答内容の信頼性を高め、より正しい検査を実施することができる。
【0044】
図6、
図7ににおい質カートリッジ9の変形例を示す。
図6において、この実施例のにおい質カートリッジ9にはにおい質を含有した粒子17は詰め込まれていない。清浄空気供給機構23から管路22、アダプタ19(
図4参照)を経由して清浄空気が供給されるにおい質カートリッジ9の入口側のチェックバルブ13の後段の中間部に突設した噴霧機構29により、におい質液体容器28に貯留されたにおい質液体が噴霧気体としてにおい質カートリッジ9に導入され、清浄空気と混合されたにおい質気体としてアダプタ18、管路21(
図4参照)を経由して被験者2へ供給される。
【0045】
図7ににおい質カートリッジ9の他の変形例を示す。
図7において、この実施例においても
図6の実施例と同様に、におい質カートリッジ9にはにおい質を含有した粒子17は詰め込まれていない。清浄空気供給機構23から管路22、アダプタ19(
図4参照)を経由して清浄空気が供給されるにおい質カートリッジ9の入口側のチェックバルブ13の後段の中間部に突設した噴霧機構31により、におい質ガスボンベ30に封入されたにおい質ガスが噴霧気体としてにおい質カートリッジ9に導入され、清浄空気と混合されたにおい質気体としてアダプタ18、管路21(
図4参照)を経由して被験者2へ供給される。なお、32は噴霧制御弁である。
【0046】
図6、
図7の実施例において、複数種のにおい質液体またはにおい質ガスを用いて嗅覚検査を行う場合には、図示していないが、複数種のにおい質液体を貯留した複数のにおい質液体容器または複数種のにおい質ガスを封入した複数のにおい質ガスボンベとの連結流路を多連流路切替機構により、順次、切り替えることにより容易に実現できる。
【0047】
例えば、それぞれのにおい質ごとの嗅覚感度を求めるためには、におい質を多段に無臭気体を挟んで連続的に濃度を変化される装置として
図8の実施例が提案される。この装置は、無臭気体を一定流量(例えば、200ml/分)流しながら、におい質バッグ33またはにおい質ボンベ34に入っているにおい質を、流路切替機構35、36を介して一旦希釈混合装置37の注射器(図示せず)に吸引し、その注射器のシリンジを間欠的に駆動(下降)して、注射器から吐出されたにおい質気体を流れている無臭気体と混合させる。このときの注射器のシリンジの降下速度を調節することにより、無臭気体側の流量は一定のため、希釈率が変化する。
【0048】
図9のように無臭気体の一定流量(例えば、200ml/分)に対するにおい質気体の流量を少なくしていけば、希釈率が徐々に減少し濃度(強度)は対数的に上昇する(強くなる)ことになる。また、逆に無臭気体の一定流量(例えば、200ml/分)に対するにおい質気体の流量を多くしていけば、濃度は対数的に下降する。なお、38はストップ弁、39は流量計である。
【0049】
図10に検査のプロトコルの一例を示す。
図10において、(a)はにおい質の強度を弱から強(徐々ににおいが濃くなっていく上昇法)へ、強から弱(徐々ににおいが薄くなっていく下降法)へと段階的に変化させて、におい質の強さへの反応を検査する例である。例えば、図示の実施例では、におい質の強弱の段階的変化の例として、(1)臭気指数12、(2)臭気指数10、(3)臭気指数8、(4)臭気指数6、(5)臭気指数4、(4)臭気指数6、(3)臭気指数8、(2)臭気指数10、(1)臭気指数12とする。この場合、においの強度が変わるごとに無臭気体が供給され確認できるので、検知がより容易となる。
【0050】
ここで、におい質の強さの指標として科学的な意味を持たせるために、臭気指数の表現が利用される。臭気指数とは、「環境大臣が定める方法により、試料とする気体又は水の臭気を人間の嗅覚で感知することができなくなるまで気体又は水の希釈をした場合におけるその希釈の倍数(臭気濃度)を求め、当該臭気濃度の値の対数に十を乗じた値を求めることにより行うものとする。」(悪臭防止法施行規則第1条)と定義されている。
【0051】
すなわち、嗅覚がそのにおいを嗅げる最低の濃度が閾値濃度であり、実際にそのにおいが存在する濃度がx(ppm)で閾値濃度をy(ppm)とすれば、x/y=臭気濃度といわれ、臭気指数は臭気濃度から、臭気指数=10×log(臭気濃度)となる。正常な嗅覚であれば、そのにおいを臭気指数倍希釈して初めて無臭になる。しかし、嗅覚の感度低下が生じると、臭気指数が4もしくは6のにおいも嗅げなくなる。
【0052】
したがって、臭気指数が小さいほどにおい質強度は弱く、一般に、健常者でも少し感度のばらつきがあるが、通常、臭気指数3程度といわれている。
また、この場合、上昇法または下降法だけでもよく、におい質は複数のにおい質や複数の混合におい質について検査することも効果的である。また、におい質の強度を段階的に変化させる場合、嗅覚感度は濃度の対数で感じるので、濃度を対数的に上下させるのが好ましい。なお、上昇法と下降法を適用する場合、その結果が所定範囲に入ったときの検査が有効であるとすることにより検査の信頼性をより高めることができる。
【0053】
(b)は異なるにおい質への反応を検査する一例である。におい質の種類としては、具体的には前述した墨汁、木、オレンジ、バラ、ヒノキ、ガーリック、レモン等が挙げられ、におい質の数(におい質カートリッジ9)としては、図示の実施例は5個(5種類)の例である。
(c)は混合におい質への反応を検査する一例である。いわゆる嗅ぎ分けの検査である。この場合も、図示の実施例では、5個の混合におい質カートリッジ9(
図3(c)参照)の例を示している。
【0054】
いずれのプロトコル(a)、(b)、(c)においても無臭気体(ブランク)を1回ごとに供給するようにしているが、におい質によっては無臭気体を2回連続して供給するようにしても構わない。この場合には、被験者2に対する前回のにおい質の影響を排除して嗅覚検査の精度を高めることができる。また、検査にあたっては、鼻孔の右側、左側、両方について反応の違いを検査するが、(a)から(c)のプロトコルをランダムに実施することもできる。これら一連の動作は上述した制御部24で行われる。
【0055】
図12に
図10に示した検査プロトコル(a)、(b)、(c)に対応する回答画面と表示手段の一例を示す。
図9の実施例においては、回答はできるだけシンプルに、かつ誤正解を防ぐため、例えば液晶表示画面からなる表示手段6の回答画面を見ながら行う態様である。
(a)はにおい質の強さへの反応を検査するプロトコル(
図10(a))に対応する回答画面であり、回答手段5のステック5aを左右に傾けて意思表示「はい」、「いいえ」を選択し回答する。
(b)は異なるにおい質への反応を検査するプロトコル(
図10(b))に対応する回答画面であり、回答手段5のステック5aを上下左右に傾けて選択画面の中からわかったにおい質名を回答する。
(c)は混合におい質への反応を検査するプロトコル(
図10(c))に対応する回答画面であり、回答手段5のステック5aを上下左右に傾けて、表示手段6に表示されたにおい質の異なった組み合わせ(2種類)からわかった混合におい質名を回答する。
なお、回答はステック5aの操作に代え、回答画面を見ながら口頭で意思表示することも可能である。図示しないが、すでに多種多様の音声認識機能をもった機器が知られており、これを回答手段5として用いることができる。
【0056】
図12(d)は表示手段6における検査結果の表示態様の一例である。におい質強度検査結果(検査プロトコル(
図10(a)に対応)、におい質検査結果(検査プロトコル
図10(b)に対応)、混合におい質(分別)検査結果(検査プロトコル
図10(c)に対応)、嗅覚総合判定結果がそれぞれの態様で表示される。
【0057】
次に、本発明の一実施例の嗅覚検査装置の動作について図面を参照しながら説明する。
検査プロトコル(
図10参照)にしたがって、におい質カートリッジ9および無臭気体のブランクカートリッジ11をにおい発生部1のカートリッジハウジング8(挿入孔10、11)に挿置し、被験者2が鼻孔部を包み込むコーン状のにおい提示機構3をバンド等の手段により頭部に保持して嗅覚検査の準備が完了する。
被験者2は、まず清浄空気供給部23よりカートリッジハウジング8の所定位置にある無臭気体のブランクカートリッジ11に空気が供給され、におい提示機構3を通じて被験者2に無臭気体が供給されて無臭を確認する。ついで、におい発生部1のカートリッジハウジング8が検査プロトコルにしたがって駆動機構7により間欠回転駆動され、所定位置に到来すると、制御部24からの信号により気体供給部4のアダプタ18、19が動き、におい質カートリッジ9の両端に押圧接合し、清浄空気供給装置23から空気が供給され、におい質カートリッジ9内のにおい質を含有した粒子17に接触し、混合され、におい質気体がにおい提示機構3から被験者2に供給される。
【0058】
におい質気体と無臭気体が交互に供給されるが、この場合、呼気、吸気のタイミングをパーソナルコンピュータ画面上に表示させ、無理のないタイミングで強制的ににおいを嗅がせるようにすることもできる。
図11に呼気、吸気のタイミングの一例を示している。図示の例では、無臭気体とにおい質気体は10秒間隔で供給されるが、それぞれの間隔において最初の7秒間は呼気、つぎの3秒間を吸気に割り当てている。これは直前の気体の影響をできるだけ排除するためである。
【0059】
強度の違うにおい質の検査は、
図10(a)の検査プロトコルにしたがい、におい質が被験者2に供給され、被験者2は
図10(a)の検査プロトコルに対応する回答画面(
図12(a)参照)が表示手段6に示され、「はい」、「いいえ」を回答手段5のステック5aで選択して回答する。
例えば、におい質をバラとして(1)臭気指数4、(2)臭気指数6、(3)臭気指数8、(4)臭気指数10、(5)臭気指数12のにおい質カートリッジ9を用意し、
図10(a)の検査プロトコルにしたがってにおいを嗅ぎながら、ステック5aを操作して「はい」、「いいえ」を回答し、まったくにおい質が分からなかったときを0点 、(1)臭気指数4のにおい質が分かったときを5点となるように点数配分しておき、これを数字、グラフ等で表示手段6の画面に表示する。
【0060】
同様に、異なるにおい質気体がにおい発生部1から、
図10(b)の検査プロトコルにしたがって被験者2に供給され、
図10(b)の検査プロトコルに対応する回答画面(
図12(b)参照)が表示手段6に示され、選択画面の中から、分かったにおい質名を回答手段のステック5aで選択して回答する。
例えば、におい質として臭気指数6程度の強度の(1)バラ、(2)ヒノキ、(3)ガーリック、(4)墨汁、(5)レモンのにおい質カートリッジ9を用意し、
図10(b)の検査プロトコルにしたがってにおいを嗅ぎながら、ステック5aを操作して回答画面(
図12(b)参照)の選択肢の中から、正解を選択する。選択が正しければ1点、選択が間違っているか、分からなければ0点とし、すべて正常であれば5点で、これを数字、グラフ等で表示手段6の画面に表示する。
【0061】
図10(c)の検査プロトコルでは、回答の表示画面には、におい質の異なった組み合わせが表示され、その中から回答を選択する。例えば、におい質として臭気指数6程度の強度の(1)レモン、(2)バラ、(3)ヒノキ、(4)ガーリック、(5)墨汁の各におい質を、例えば、(1)レモンをベースにおい質として各におい質と各々混合したにおい質カートリッジ9を用意し、
図10(c)の検査プロトコルにしたがってにおいを嗅ぎながら、ステック5aを操作して回答画面(
図12(c)参照)の選択肢の中から、正解を選択する。選択が正しければ1点、選択が間違っているか、分からなければ0点とし、すべて正常であれば5点で、これを数字、グラフ等で表示手段6の画面に表示する。
【0062】
これら一連の動作を鼻孔閉塞機構26により、両鼻孔、右側鼻孔、左側鼻孔と順に行い検査する。3つの検査プロトコル(
図10(a)、(b)、(c)参照)を実施した後、嗅覚の各機能の状態を表示手段6に表示する。
【0063】
本発明の嗅覚検査装置は、MCI(軽度認知障害)発症の判定をするのではなく、嗅覚機能の検査を利用して、その可能性を示唆するものである。したがって、健常者であれば、どの検査値も、基本100%正解となり、いずれの検査プロトコルによる検査でも点数が低ければ、MCI発症のリスクが示唆される。
例えば、
図10(a)の検査プロトコルにおいて、通常、健常者でも少し感度のばらつきがあるが、正常な嗅覚では臭気指数3程度といわれており、臭気指数4(点数5点)が嗅げないと要注意、臭気指数6(点数4点)が嗅げないとかなり怪しく、臭気指数8以上(点数3点以下)は異常として、MCI発症のリスクを示唆することができる。
また、本発明の嗅覚検査装置は、嗅覚検査の目的のみならず、嗅覚検査時にあわせて健常者にあっては予防として嗅覚刺激に用いることができるほか、アルツハイマー型認知症患者などにおいてはにおい刺激による脳機能の強化を助ける機器としても有効である。