特許第6695623号(P6695623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695623
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】釣用ウキ
(51)【国際特許分類】
   A01K 93/00 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   A01K93/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-26837(P2016-26837)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-143765(P2017-143765A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
(72)【発明者】
【氏名】東山 貴一
(72)【発明者】
【氏名】生野 智也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−134681(JP,A)
【文献】 特開2000−197434(JP,A)
【文献】 実開平05−034873(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−0639600(KR,B1)
【文献】 特開平10−276643(JP,A)
【文献】 特開2005−027581(JP,A)
【文献】 特開平11−056186(JP,A)
【文献】 実開平06−055370(JP,U)
【文献】 米国特許第02519427(US,A)
【文献】 特開平09−084504(JP,A)
【文献】 特開平06−205630(JP,A)
【文献】 特開平09−271308(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3002092(JP,U)
【文献】 特開2000−014294(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3154598(JP,U)
【文献】 特開2000−350540(JP,A)
【文献】 実開昭58−021272(JP,U)
【文献】 実開昭55−113076(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 93/00 − 93/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面を有し、中心を貫いて軸方向に沿って形成された貫通孔及び当該軸方向に延び且つ上記外周面から径方向に沿って上記貫通孔に連通するスリットが設けられたウキ本体と、
当該ウキ本体の外周面に対する突出量が調整されるように当該外周面に液密的に設けられたピストンと
上記中心を貫いて上記軸方向に沿って形成された釣糸挿通孔を有し、上記ウキ本体の貫通孔に抜脱可能に挿入された筒状嵌合軸とを備えた釣用ウキ。
【請求項2】
上記ピストンは、
ピストン本体と、
上記ウキ本体に埋設され、上記外周面に開口し且つ当該開口に連続するピストン本体収容室が形成されたシリンダとを有し、
上記ピストン本体は、上記開口から上記ピストン本体収容室に気密的に出入可能な状態で嵌め込まれている請求項1に記載の釣用ウキ。
【請求項3】
上記ウキ本体は中空構造を有し、上記シリンダを兼ねている請求項2に記載の釣用ウキ。
【請求項4】
上記ピストン本体は、所定外径の円柱部材からなると共に当該ピストンを周方向に囲繞するOリングを有し、当該Oリングは上記ピストン本体収容室の内壁面に圧接されている請求項2または3に記載の釣用ウキ。
【請求項5】
上記ピストン本体は、上記シリンダに螺合されている請求項2から4のいずれかに記載の釣用ウキ。
【請求項6】
上記ピストン本体の頭頂部に工具係合溝が形成されている請求項5に記載の釣用ウキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆるフカセ釣りに供されるウキの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣りのジャンルに「フカセ釣り」というものがある。フカセ釣りの明確な定義は存在しないが、一般には、釣糸の先端に結びつけられた釣針にエサが装着され、これらエサ、釣針及び釣糸の重量(きわめて軽量)のみで当該エサを水中に自然な状態で潜行させることにより、ターゲット(釣りの対象となる魚)のバイトを誘う釣法であるとされている。この釣法は、前述のような簡単且つ軽量な仕掛けが採用されることから、風などの釣場の環境によって大きな影響を受ける繊細なものである。その影響を緩和するため、実釣において釣人は、釣糸にガン玉と呼ばれる錘を装着することがあり、これにより仕掛けの重量を意図的に増大させると共に、仕掛けの潜行(すなわち、釣針に装着されたエサの潜行)を規制ないし制御するために所定の浮力を備えたウキを当該釣糸に装着する場合もある。このようなウキを使ったフカセ釣りは、ウキフカセ釣りとも称される。
【0003】
釣人は、釣場の環境に応じて適宜ガン玉の大きさを調整し、仕掛けの重量を調整するが、これに対応してウキの浮力も調整する必要がある。通常、ウキの浮力は、当該ウキの物性であって固有のものであるため、釣人は、実釣において当該仕掛けの重量に対応させてウキを適宜交換する必要がある。
【0004】
ところが、いわゆる中通しタイプのウキが使用される場合、ウキの交換作業の際に一旦釣糸が切断されなければならず、実釣におけるウキの交換作業は、釣人にとって非常に煩わしいものであった。この問題が解決されるため、従来では、浮力を変化させることができるウキが提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。この従来の浮力調整ウキは、1.5g重程度の浮力調整が可能であり、錘負荷表示として0〜4Bの範囲で調整され得るようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ヒロミ産業株式会社 製品情報ウェブサイト http://www.hiromisangyo.co.jp/product/airzone/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、つまるところウキフカセ釣りは、釣人が釣場の状況(風、波、水流等々)を勘案しつつロッドやリールを介して釣糸を操作し、エサが装着された釣針を所望する水中のポイント(一般に「タナ」と称され、ターゲットが摂餌する特定の水深の特定の箇所)に届ける動作を行うことである。この動作を正確に行うために、近年では「沈め釣り」という釣法が有効であると考えられている。この沈め釣りとは、ウキの浮力が中性浮力程度となるように調整された状態で、釣人が意図的にウキを潜行させつつ仕掛け全体を上記ポイントに運ぶものである。
【0007】
この釣法では、ウキは、釣針に装着されたエサの潜行を規制ないし制御するための道具としてきわめて重要である。しかも、前述のように、フカセ釣りの仕掛けがきわめて軽量であることから、釣人が釣針に装着されたエサの潜行を正確に制御するためには、ウキの浮力は0.01g単位の精度が要請される。つまり、ウキの発揮する浮力がきわめて高い精度で設定されるか否かが、道具としてのウキの良し悪しを分ける。
【0008】
しかしながら、ウキが工業製品として提供される場合は、製造における加工精度に起因して浮力設定の精度に限界がある。しかも、釣りのフィールドが海である場合、海水の塩分濃度は常に一定ではなく季節や天候により変動する。これらの諸事情によって、実釣時のウキの浮力変動は、たとえウキの加工精度が十分に向上したとしても避けられない問題である。
【0009】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、浮力の正確な微調整が可能な釣用ウキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本願発明者は、できるだけ外形が小さな部品にて釣用ウキの体積が微調整されることにより、上記目的が達成されると考えた。そこで、本発明に係る釣用ウキは、外周面を有し、中心を貫いて軸方向に沿って形成された貫通孔及び当該軸方向に延び且つ上記外周面から径方向に沿って上記貫通孔に連通するスリットが設けられたウキ本体と、当該ウキ本体の外周面に対する突出量が調整されるように当該外周面に液密的に設けられたピストンと、上記中心を貫いて上記軸方向に沿って形成された釣糸挿通孔を有し、上記ウキ本体の貫通孔に抜脱可能に挿入された筒状嵌合軸とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ウキ本体の外周面を基準とするピストンの突出量が調整されることにより、ウキ本体の体積が変化する。実釣において、このウキ本体はピストンと共に水中に投入されるが、当該ピストンが上記外周面に液密的に設けられているから、上記突出量が変化してもウキ本体内への浸水は防止される。すなわち、上記ピストンの突出量が変化しても、釣用ウキの重量は不変であり、体積が変化する。しかも、このピストンの外形形状は特に限定されるものではなく、コンパクトに設計され得る。つまり、釣用ウキの体積が微調整される。また、筒状嵌合軸の釣糸挿通孔に釣糸が挿通された状態で、当該釣糸が上記スリットからウキ本体の貫通孔に移動されと共に上記筒状嵌合軸がウキ本体の貫通孔に挿入される。この筒状嵌合軸が上記貫通孔から引き抜かれると、上記釣糸も上記スリットを通じてウキ本体から離脱することができる。すなわち、釣糸が切断されることなく、ウキ本体が容易に交換される。
【0012】
(2) 上記ピストンは、ピストン本体と、上記ウキ本体に埋設され、上記外周面に開口し且つ当該開口に連続するピストン本体収容室が形成されたシリンダとを有するのが好ましい。上記ピストン本体は、上記開口から上記ピストン本体収容室に気密的に出入可能な状態で嵌め込まれているのが好ましい。
【0013】
この構成では、ピストン本体がシリンダに対して気密的にスライドし、ピストン本体収容室から出入りする。したがって、ピストンの上記突出量がより高精度に調整される。
【0014】
(3) 上記ウキ本体は中空構造を有し、上記シリンダを兼ねているのが好ましい。
【0015】
この構成では、ウキ本体の軽量化が図られる。また、釣用ウキを構成する部品点数が削減される。
【0016】
(4) 上記ピストン本体は、所定外径の円柱部材からなると共に当該ピストン本体を周方向に囲繞するOリングを有し、当該Oリングは上記ピストン本体収容室の内壁面に圧接されているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ピストン本体のコンパクト設計が可能となるうえ、簡単な構造で確実にウキ本体への浸水が防止される。
【0018】
(5) 上記ピストン本体は、上記シリンダに螺合されているのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ピストン本体が回転することにより、上記ウキ本体の外周面に対するピストンの突出量がきわめて正確に微調整される。
【0020】
(6) 上記ピストン本体の頭頂部に工具係合溝が形成されているのが好ましい。
【0021】
この構成によれば、工具を用いて上記ピストン本体が簡単に且つ正確に回転される。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、コンパクト設計がなされたピストンがウキ本体に対して設けられ、当該ウキ本体の外周面からの突出量が調整されることにより、ウキ本体の重量が一定のままその体積が正確に微調整される。したがって、釣用ウキの浮力が正確に微調整される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る釣用ウキ14が用いられた釣用仕掛けの模式図である。
図2図2は、釣用ウキ14の断面図である。
図3図3は、図2の要部拡大図である。
図4図4は、釣用ウキ14に採用された嵌合軸21の正面図である。
図5図5は、嵌合軸21の右側面図である。
図6図6は、嵌合軸21の縦断面図である。
図7図7は、図4におけるVII−VII 断面図である。
図8図8は、図4におけるVIII−VIII 断面図である。
図9図9は、釣用ウキ14のウキ本体20の平面図である。
図10図10は、図9におけるX−X断面図である。
図11図11は、図9におけるXI−XI断面図である。
図12図12は、図10におけるXII−XII 断面図である。
図13図13は、図10におけるXIII−XIII断面図である。
図14図14は、ウキ本体20に嵌合軸21が挿入された状態での釣用ウキ14の要部拡大断面図である。
図15図15は、ウキ本体20に嵌合軸21が挿入された状態での釣用ウキ14の要部拡大断面図である。
図16図16は、本発明の第2の実施形態に係るウキ本体60の平面図である。
図17図17は、図16におけるXVII−XVII断面図 である。及びXVIII−XVIII断面図である。
図18図18は、図16におけるXVIII−XVIII断面図である。
図19図19は、本発明の各実施形態の変形例に係るピストン85の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ詳細に説明される。なお、本実施形態は、本発明に係る釣用ウキの一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0025】
1.第1の実施形態
【0026】
<概略構成及び特徴点>
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る釣用ウキが用いられた釣用仕掛けの模式図である。
【0028】
この釣用仕掛け10は、いわゆるウキフカセ釣りに適用されるものである。この釣用仕掛け10は、釣竿11の釣糸ガイド12に挿通され支持されたライン13と、ライン13に装着された釣用ウキ14と、ライン13の先端にサルカン15を介して連結されたハリス16と、ハリス16に結びつけられた釣針17とを有する。釣用ウキ14は、いわゆる中通しタイプであり、ライン13に沿ってスライドすることができる。ライン13の所定位置に浮止部材18が装着されており、当該位置で釣用ウキ14のスライドが規制されるようになっている。浮止部材18の位置が調整されることにより、水面に浮かべられた釣用ウキ14から釣針17までの距離が設定される。
【0029】
釣用ウキ14は、ピストン19を備えたウキ本体20と、これに挿脱される嵌合軸21(特許請求の範囲に記載された「筒状嵌合軸」に相当)とを備えている。本実施形態に係る釣用ウキ14の特徴とするところは、(1)上記ピストン19が後述のようにウキ本体20に設けられることによってウキ本体20の体積が変化する(つまり、釣用ウキ14が水中に投入された場合の浮力が調整される)ようになっている点、及び(2)同図が示すように嵌合軸21がウキ本体20に下方から挿入あるいは抜脱されることによってライン13が切断されることなくウキ本体20がライン13に着脱される(すなわち、嵌合軸21がウキ本体20に挿入されることによりウキ本体20がライン13に装着され、また、後述されるように嵌合軸21がウキ本体20から抜脱されることによってウキ本体20がライン13から取り外される)ようになっている点である。
【0030】
<ピストン>
【0031】
図2は釣用ウキ14の断面図である。また、図3図2の要部拡大図であり、ピストン19の取付構造を示している。
【0032】
図3が示すように、上記ピストン19は、ピストン本体71とシリンダ72とを備えている。シリンダ72の下端は閉塞され、且つ上端は開放されている。シリンダ72は、樹脂のほか金属から構成される。図2が示すように、シリンダ72は、ウキ本体20に埋設されている。シリンダ72の上端面76はウキ本体20の外周面73に滑らかに連続しており、このため、当該外周面73に開口74が形成されている。この開口74に連続して、シリンダ72の内部に収容室75(特許請求の範囲に記載された「ピストン本体収容室」に相当)が区画されている。本実施形態では、シリンダ72は円筒形状をなし、収容室75の内壁面形状は円形である。
【0033】
ピストン本体71は、円柱部材からなる。ピストン本体71は、樹脂又は金属から構成される。ピストン本体71の外径は、シリンダ72の内径に対応している。なお、構造の理解を助けるために、図2ではピストン本体71とシリンダ72との間に隙間が明確に形成されているが、実際には両者は所定のはめあい公差にて嵌合しており、ピストン本体71はシリンダ72に対して液密的にスライドすることができる。
【0034】
ピストン本体71の外形はシリンダ72の内壁面形状に対応されている。ただし、両者が対応している限り、ピストン本体71の外形形状及びシリンダ72の内壁面形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、ピストン本体71は、Oリング77を備えている。このOリング77は、ピストン本体71の略中央部に配置されており、ピストン本体71の外周面78を囲繞している。Oリング77は、ピストン本体71の外周面78から径方向に突出しており、Oリング77の外径は、シリンダ72の内径よりも大きくなっている。なお、ピストン本体71の外周面78に周溝が形成され、この周溝にOリング77が嵌め込まれてもよい。この場合、Oリング77がピストン本体71に位置決めされ、一定の保持力で保持される。
【0035】
ピストン本体71が矢印79の向きに沿ってシリンダ72内に嵌め込まれる。ピストン本体71の外径はシリンダ72の内径に対応しており、前述のはめあい公差が設定されているから、両者間の隙間はきわめて小さい。Oリング77は弾性変形しつつシリンダ72内に嵌め込まれ、シリンダ72の内壁面に圧接される。これにより、ピストン本体71は、液密的に且つ気密的にシリンダ72内に嵌め込まれ、図2が示すように、上記収容室75はピストン本体71により気密及び液密が保たれる。
【0036】
ピストン本体71は、シリンダ72の長手方向に沿ってスライドすることができる。この場合、ピストン本体71の外径とシリンダ72の内径との間に上記はめあい公差が設定されているので、ピストン本体71とシリンダ72との間に所定の摩擦力が生じる。このため、ピストン本体71がスライドすることにより、あるいはウキ本体20が水中に潜行した場合の深度によって、上記収容室75内の圧力は変化するが、シリンダ72に対するピストン本体71の上記摩擦力が十分に大きくなるように設定されることにより、意図せずにピストン本体71がシリンダ72に対してスライドすることが防止される。つまり、ピストン本体71がシリンダ72に対して位置決めされる。なお、本実施形態では、Oリング77がピストン本体71に設けられているが、Oリング77に代えて他の弾性部材がピストン本体71に設けれてもよい。また、ピストン本体71及びシリンダ72のうち少なくともいずれか一方が弾性体から構成されてもよい。
【0037】
<嵌合軸>
【0038】
図4は嵌合軸21の正面図、図5は嵌合軸21の右側面図、図6は嵌合軸21の縦断面図である。さらに、図7は、図4におけるVII−VII 断面図、図8は、図4におけるVIII−VIII 断面図である。
【0039】
図2が示すように、嵌合軸21は、ウキ本体20に設けられた貫通孔22に嵌め込まれている。この貫通孔22は、後述されるように、ウキ本体20の中心を通り、ウキ本体20を軸方向(同図において上下方向:矢印69の方向)に沿って貫通している。嵌合軸21は、矢印69の方向、すなわち嵌合軸21の軸方向に沿って上記貫通孔22に対して挿脱されるようになっている。
【0040】
図4及び図6が示すように、嵌合軸21は、円筒状の部材である。本実施形態では、この嵌合軸21は、樹脂(典型的にはアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM))から構成される。もっとも、嵌合軸21を構成する材料は、樹脂のほか金属も採用され得る。嵌合軸21は、釣糸挿通孔23を備えている。この釣糸挿通孔23は、嵌合軸21の中心を貫いており、嵌合軸21の軸方向に沿って形成されている。上記ライン13(図1参照)が、この釣糸挿通孔23に挿通されるようになっている。釣糸挿通孔23の内径寸法は、1.0mm〜3.0mmの範囲で設定され得る。これにより、さまざまな線径のラインが釣糸挿通孔23に挿通され得る。
【0041】
嵌合軸21は、主円筒部24と、摘み部25と、係止リブ26と、案内円筒部27とを備えており、本実施形態では、これらが一体的に形成されている。
【0042】
主円筒部24は、所定の外径寸法d1(図6参照)に設定されている。この寸法d1は、上記ウキ本体20に設けられた貫通孔22(図2参照)の内径に対応されており、両者間に所定のはめあい公差が設定されている。本実施形態では、上記貫通孔22の内径は5.0mmに設定され、一方、主円筒部24の外径寸法d1は、5.0mmに設定されている。すなわち、主円筒部24はウキ本体20の貫通孔22に押し込まれ、主円筒部24とウキ本体20との間に一定の摩擦力が発生する。したがって、常時において嵌合軸21は、一定の保持力でウキ本体20に保持される。釣人が意図的に嵌合軸21をウキ本体20に対して挿入し、あるいは抜き取るときは、釣人は、上記摩擦力を超える力で嵌合軸21を操作することにより、嵌合軸21を挿脱することができる。
【0043】
図4が示すように、摘み部25は、主円筒部24の下端に設けられている。この摘み部25は、嵌合軸21が貫通孔22に挿入された状態でウキ本体20から突出する(図1及び図2参照)。すなわち、上記主円筒部24が上記貫通孔22に完全に嵌め込まれた状態で、摘み部25は、ウキ本体20の下端から下方に突出する。この摘み部25の外形形状は、図2の状態において釣人が親指と人差し指で容易且つ確実に摘むことができるように成形されている。具体的には、この摘み部25は、主円筒部24の下端部が平板状に扁平され、団扇状に成形されている。すなわち、この摘み部25は、両側に平面部28、29(図5参照)を備えており、釣人は、この平面部28、29を指で挟むことにより、嵌合軸21を簡単に操作することができるようになっている。
【0044】
図6が示すように、係止リブ26は、主円筒部24に突設されている。図5ないし図8が示すように、係止リブ26は、主円筒部24の外周面の上端に設けられており、主円筒部24の径方向に突出している。係止リブ26は、平板からなる。係止リブ26の肉厚t(図5参照)は、所定寸法に設定されている。本実施形態では、この肉厚tは、1.2mm〜1.8mmの範囲で設定され得る。ただし、この肉厚tは、ウキ本体20に設けられたスリット32の幅寸法d2(図1及び図9参照)に対応されている。本実施形態では、このスリット32の幅寸法d2は、1.2mm〜2.0mmであり、上記肉厚寸法tよりも若干大きく設定される。主円筒部24が上記貫通孔22に嵌め込まれたときは、係止リブ26は、上記スリット32に挿入される。そして、スリット32の幅寸法d2が係止リブ26の肉厚寸法tよりも若干大きく設定されているから、嵌合軸21がウキ本体20に対して相対的に移動すると、係止リブ26もスリット32内をスライドする。
【0045】
図4ないし図6が示すように、係止リブ26の上端側の角部30は面取加工が施されている。また、係止リブ26の下端側の角部31も面取加工が施されている。つまり、両者はいわゆるC面加工が施されている。もっとも、これらは、湾曲面に形成されていてもよい。上記角部30、31に面取加工が施されることによる作用効果については後述される。
【0046】
案内円筒部27は、上記主円筒部24の上端に延設され、当該主円筒部24と一体的に形成されている。この案内円筒部27は上記主円筒部24と同様に樹脂から構成されるので、容易に弾性変形することができる。この案内円筒部27の中心を貫くように軸方向に貫通孔が設けられている。この貫通孔は、上記主円筒部24を貫通する釣糸挿通孔23と連通している。案内円筒部27は、所定の外径d3(図6参照)に設定されている。案内円筒部27の外径d3は、上記ウキ本体20に設けられた貫通孔22(後述の上側部分36:図2参照)の内径寸法に対応されており、両者間に所定のはめあい公差が設定されている。
【0047】
本実施形態では、上記案内円筒部27の外径d3は、4.0mmに設定されている(図6参照)。このため、主円筒部24と案内円筒部27との境界に段部34が形成されている。これに対応して、図2が示すように上記貫通孔22の中間部位35が縮径されている。すなわち、貫通孔22のうち上記中間部位35よりも上側部分36(案内円筒部27が挿入される部分)の内径寸法は4.0mmに設定されている。したがって、案内円筒部27が上記貫通孔22の上側部分36に挿入された状態で両者間に一定の摩擦力が発生し、常時において、案内円筒部27は、一定の保持力でウキ本体20に保持される。前述のように、上記主円筒部24も上記貫通孔22に嵌め込まれることにより、主円筒部24とウキ本体20との間に一定の摩擦力が発生するから、釣人が意図的に嵌合軸21をウキ本体20に対して挿入し、あるいは抜き取るときは、釣人は、これら摩擦力を超える力で嵌合軸21を操作することにより、嵌合軸21を挿脱することができる。
【0048】
図4ないし図6及び図8が示すように、この案内円筒部27は、突片33を備えている。この突片33は、案内円筒部27と一体的に形成されている。この突片33は薄肉の板状に形成され、案内円筒部27の径方向に突出している。すなわち、この突片33は、その肉厚a(図6参照)だけ案内円筒部27の径方向に突出しており、当該肉厚aは、0.5mm〜1.5mmに設定され得る。
【0049】
案内円筒部27は、切込溝37を備えている。この切込溝37は、案内円筒部27の軸方向に延び且つ案内円筒部27の径方向に貫通している。特に、この切込溝37は、上記突片33が突出する方向に対して直交する方向に上記案内円筒部27を貫通している。この切込溝37が設けられることによる作用効果については後述される。なお、この切込溝37が省略されていてもよいことは勿論である。
【0050】
<ウキ本体>
【0051】
図9は、ウキ本体20の平面図である。図10図9におけるX−X断面図、図11図9におけるXI−XI断面図である。図12は、図10におけるXII−XII 断面図、図13は、図10におけるXIII−XIII断面図である。図14及び図15は、ウキ本体20に嵌合軸21が挿入された状態での釣用ウキ14の要部拡大断面図であり、ウキ本体20に対する嵌合軸21の回動の様子が示されている。図14(a)及び図15(a)は案内円筒部27の動きを、図14(b)及び図15(b)は主円筒部24の動きを示している。
【0052】
図10及び図11が示すように、ウキ本体20の外形は、略紡錘形に形成されている。ウキ本体20を構成する材料は、木材のほか樹脂(典型的にはアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM))が採用される。ウキ本体20は、上記貫通孔22を備えている。この貫通孔22は、ウキ本体20の上端38から下端39に通ずるようにウキ本体20の軸方向に延びており、ウキ本体20の中心を貫いている。この貫通孔22に連続して、ウキ本体20の内部に凹部42及び係合凹部43が形成されている。これら凹部42及び係合凹部43については後に詳述される。
【0053】
ウキ本体20は、上部本体40と下部本体41とを有しており、これらが上下方向に嵌め合わせられることにより組み立てられている。このようにウキ本体20が分割されているのは、ウキ本体20の製造を容易にするためである。すなわち、前述のように、ウキ本体20は、貫通孔22のみならず当該貫通孔22に連続する凹部42及び係合凹部43を備えているので、ウキ本体20が予め分割されることにより、凹部42及び係合凹部43の加工が容易になり、ウキ本体20の製造が簡単になる。
【0054】
上部本体40と下部本体41とは、分割線44にて分割されている。本実施形態に係るウキ本体20では、同図が示すように、分割線44が屈曲されている。このため、上部本体40の下面48の外縁部に上方へ窪んだ凹条45が形成され、一方、下部本体41の上面49の外縁部に上方へ突出する凸条46が形成される。そして、凹条45と凸条46とが嵌め合わされることによって、上部本体40の下面48と下部本体41の上面49とが合致され、上記分割線44で接合されたウキ本体20が組み立てられる。
【0055】
なお、本実施形態では、図11が示すように、下部本体41の上面49に位置決めピン50が立設されている。また、上部本体42の下面48に係合孔51が設けられている。そして、位置決めピン50は、係合孔51に嵌合するようになっており、両者が嵌合した状態で上部本体40と下部本体41とが合致するようになっている。つまり、位置決めピン50と係合孔51とが嵌め合わされることによって上部本体40と下部本体41とが位置あわせされ、ウキ本体20が正確に組み立てられるようになっている。もっとも、位置決めピン50及び係合孔51は省略されていてもよい。
【0056】
ウキ本体20は、上記スリット32を備えている(図9及び図10参照)。このスリット32は、ウキ本体20の軸方向に延び、ウキ本体20の上端38から下端39に達している。また、このスリット32は、ウキ本体20の外周面73から径方向に切り込まれており、上記貫通孔22に連通している。前述のように、スリット32の幅寸法d2は、1.2mm〜2.0mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0057】
図10及び図11が示すように、貫通孔22は、ウキ本体20を上下に貫通し、ウキ本体20の中間部位35において縮径されている。貫通孔22の中間部位35よりも下方、すなわち貫通孔22の下側部分52の内径は、上記上側部分36の内径よりも大きく設定されている。
【0058】
図10及び図12が示すように、上記凹部42は、貫通孔22に連続し且つ上記中間部位35から下方に延びている。この凹部42は、ウキ本体20の内部に設けられており、貫通孔22を中心として周方向にも延びており、図12が示すような扇形に形成されている。すなわち、凹部42は、上記スリット32及び貫通孔22に連続しており、径方向に延びると共に当該貫通孔22を中心として円弧状に延びている。本実施形態では、この凹部42が形成する扇形の中心角は90°(degree)に設定されている。もっとも、この中心角は、90°に限定されるものではなく、45°〜180°の範囲で設定される。ただし、この中心角は、略90°程度に設定されるのが好ましい。
【0059】
図10が示すように、この凹部42を構成する壁面53は、傾斜面54及び傾斜面55を備えている。この傾斜面54は、上記嵌合軸21の上端側の角部30(図4参照)の傾斜角度に対応されている。また、上記傾斜面55は、上記嵌合軸21の下端側の角部31(図4参照)の傾斜角度に対応されている。したがって、凹部42は、上記係止リブ26(図4参照)が嵌め合わされることができる形状に形成されている。
【0060】
図10及び図13が示すように、上記中間部位35から上方に貫通孔22に連続して上記係合凹部43が形成されている。この係合凹部43は、上記凹部42(図12参照)に連続して、当該凹部42の上方に設けられている。この係合凹部43もウキ本体20の内部に設けられており、貫通孔22を中心とした扇形に形成されている。すなわち、この係合凹部43は、上記貫通孔22の上側部分36に連続して形成され、径方向に延びると共に当該上側部分36を中心として円弧状に延びている。本実施形態では、この係合凹部43が形成する扇形の中心角は、上記凹部42と同様に90°に設定されている。もっとも、この中心角は、90°に限定されるものではなく、45°〜180°の範囲で設定される。ただし、この中心角は、略90°程度に設定されるのが好ましい。
【0061】
図13が示すように、係合凹部43を区画する壁面56に爪部57が突設されている。この爪部57は、貫通孔22の長手方向(ウキ本体20の軸方向)に延びる突条からなり、貫通孔22の上側部分36の中心に向かって突出している。上記嵌合軸21の案内円筒部27(図4参照)は、上記上側部分36に嵌め込まれるから、その状態で嵌合軸21が回転されると、上記案内円筒部27に設けられた突片33は、上記爪部57と衝突することになる。突片33と爪部57とが衝突することによる作用効果については、後述される。
【0062】
<釣用ウキの使用方法と作用効果>
【0063】
本実施形態に係る釣用ウキ14は、実釣において次の要領にてライン13に装着され、使用される。
【0064】
図1及び図2が示すように、釣人は、ライン13を嵌合軸21の釣糸挿通孔23に挿通する。これにより、嵌合軸21は、常時ライン13と係合し、当該ライン13に沿って自由にスライドすることができる。釣人は、嵌合軸21よりも上方に位置するライン13をウキ本体21に挿入する。具体的には、釣人は、ライン13を手に持ち、これをウキ本体21のスリット32(図2参照)を通じてウキ本体20の外周面73から貫通孔22までスライドさせる。つまり、ライン13は、上記スリット32を通って貫通孔22内に配置される。
【0065】
釣人は、この嵌合軸21をウキ本体20の下方から貫通孔22に挿入する。つまり、嵌合軸21は、案内円筒部27からウキ本体20に押し込まれる。このとき、主円筒部24に設けられた係止リブ26は、上記スリット32に嵌り込み、当該スリット32に沿ってスライドする。これにより、嵌合軸21の案内円筒部27が貫通孔22の上側部分36(図10参照)と嵌合し、嵌合軸21の主円筒部24が貫通孔22の下側部分52に嵌め合わせられる。この状態で、嵌合軸21に設けられた係止リブ26の位置とウキ本体20に設けられた凹部42の位置とが合致すると共に、主円筒部24の下端に設けられた摘み部25がウキ本体20の下端39から突出する(図2参照)。
【0066】
図14は、嵌合軸21がウキ本体20に挿入された状態における係止リブ26と凹部42との相対的位置関係及び突片33と係合凹部43との相対的位置関係を示す図である。また、図15は、嵌合軸21が回動された状態における係止リブ26と凹部42との相対的位置関係及び突片33と係合凹部43との相対的位置関係を示す図である。
【0067】
上記摘み部25は扁平されており(図2参照)、平面部28、29(図5参照)を備えていることから、釣人は、摘み部25を指で容易に把持することができる。嵌合軸21が単にウキ本体20に挿入された状態では、図14(a)及び(b)が示すように、突片33及び係止リブ26は、共にスリット32内に配置されている。
【0068】
釣人は、上記摘み部25を把持して右方向に90°だけ回動させることができる。図15(b)が示すように、係止リブ26が凹部42内に進入し、両者が嵌合する。嵌合軸21が軸方向へスライドしようとした場合には、係止リブ26の上端側の角部30及び下端側の角部31(図4参照)が凹部42の傾斜面54及び傾斜面55(図10参照)と当接するので、係止リブ26は軸方向へスライドすることが規制される(図2参照)。すなわち、上記凹部42は、係止リブ26を支持するシート部として機能する。このため、嵌合軸21は、ウキ本体20の貫通孔22内に位置決めされ、ウキ本体20から外れなくなる。この嵌合軸21に上記ライン13が挿通されているから、ウキ本体20は、嵌合軸21と共にライン13に装着され且つ当該ライン13に沿って自由にスライドすることができる。
【0069】
釣用仕掛け10が水中に投入されると、釣針17、ハリス16、サルカン15が潜行し、相対的に釣用ウキ14が浮止部材18に当接する。この状態で、釣用ウキ14が発揮する浮力に応じて釣用ウキ14が水面に浮かび、あるいは潜行する。
【0070】
図2が示すように、ウキ本体20にピストン19が設けられており、釣人は、ピストン本体71を操作することにより、その突出量(すなわち、ウキ本体20の外周面73を基準とするピストン本体71の突出量)を調整することができる。しかも、ピストン本体71は、ウキ本体20に対して液密的に嵌め込まれている。したがって、ウキ本体20の重量は一定に維持されたまま、ウキ本体20の体積が調整され、その結果、釣用ウキ14が発揮する浮力が調整される。本実施形態では、ピストン19はコンパクトに設計される。ピストン19の外径は特に限定されないが、ウキ本体20の外形形状との関係において数mm程度に設定され得る。したがって、釣用ウキ14の浮力は正確に微調整される。
【0071】
本実施形態では、ピストン本体71がシリンダ72に対して液密的且つ気密的にスライドし、収容室75から出入りする。したがって、ピストン本体19の上記突出量がより高精度に調整される。しかも、ピストン本体71の外形形状が前述のように小さな円柱状を呈することから、釣用ウキ14が発揮する浮力が微調整され得る。その結果、釣人にとっては、釣場の状況(たとえば、海水濃度の変化)に応じて釣用ウキ14の浮力を正確に微調整することができ、快適なウキフカセ釣りが可能となる。加えて、釣用ウキ14の製造においては、ウキ本体20等の製造誤差に基づく浮力の誤差が、ピストン本体19の上記突出量によって相殺される。したがって、設計者が意図した浮力が実現される。
【0072】
もっとも、上記シリンダ72は省略されてもよく、その場合、ウキ本体20に直接に上記収容室75が形成されてもよい。
【0073】
図2及び図3が示すように、ピストン本体71が円柱状に形成されているから、ピストン本体71がきわめて簡単な構造となり、ピストン19がきわめてコンパクトに設計される。その結果、釣用ウキ14が小型であっても、正確な浮力調整が可能となる。また、このピストン本体71にOリング77が嵌め込まれており、このOリング77が収容室75の内壁面に圧接される。これにより、確実にウキ本体20への浸水が確実に防止され、釣用ウキ14の使用中における浮力変化が抑えられる。
【0074】
また、釣用ウキ14がライン13に装着されている状態から、釣人は、上記摘み部25を指で把持し、左方向に回動させることができる。これにより、図14が示すように、上記係止リブ26と上記凹部42との係合が解除され、上記係止リブ26及び突片33が上記スリット32内に配置される。釣人は、摘み部25を把持したまま嵌合軸21を下方へ引っ張ることができ、これにより、嵌合軸21はウキ本体20から抜き取られる。この嵌合軸21よりも上方に位置するライン13は、上記スリットを通ってウキ本体20から簡単に引き出される。すなわち、ライン13が切断されることなくウキ本体20が当該ライン13から取り外され、釣人は、所望の他のウキ本体と交換することができる。
【0075】
このように、本実施形態に係る釣用ウキ14によれば、釣人は、嵌合軸21をウキ本体20に挿入し抜脱することにより、ライン13を切断することなくウキ本体を交換することができる。しかも、釣人が意図的に嵌合軸21を操作しない限り、嵌合軸21はウキ本体20に嵌め込まれた状態で確実にロックされるので、実釣においてウキ本体20がライン13から容易に外れることはない。加えて、嵌合軸21は釣人にとって操作し易い形状であるから、釣人は、実釣においてウキの交換を短時間で簡単に行うことができる。
【0076】
本実施形態では、上記凹部42は、嵌合軸21の主円筒部24が軸方向を回転中心として90°回動されるように形成されている(図14(b)、図15(b)参照)。すなわち、釣人は、嵌合軸21を操作する際に、当該嵌合軸21を貫通孔22を回転中心として90°回転させればよいから、釣人にとって上記摘み部25の操作がきわめて容易である。仮に、嵌合軸21が90°より大幅に大きく(例えば180°よりも大きく)回動しなければならないとすれば、釣人は手首を大きく捻らせなければならず、不便である。また、仮に、嵌合軸21が90°より大幅に小さく(例えば45°よりも小さく)回動するように設定されれば、釣人は、上記係止リブ26と上記凹部42との係合を確認することが困難となる。これに対し、本実施形態では、嵌合軸21が90°回転されるので、釣人にとっては、上記係止リブ26が上記スリット32に対して直交するまで嵌合軸21を回転させればよい。すなわち、嵌合軸21の回転角度が90°程度に設定されるのがもっとも操作性に優れる。
【0077】
また、上記摘み部25は、嵌合軸21の主円筒部24の下端部が平板状に扁平されることにより構成されているから、当該摘み部25が主円筒部24と一体的に簡単に形成され得る。これにより、摘み部25が安価に構成される、ひいては釣用ウキ14の製造コストが低減される。
【0078】
さらに、上記係止リブ26の上端側の角部30に面取加工が施されているから(図2参照)、釣人が嵌合軸21をウキ本体20に嵌め込んだ際に、係止リブ26の上端側の角部30が上記凹部42の内壁面と強く接触することが防止される。なぜなら、嵌合軸21の自重により、上端側の角部30と上記凹部42の傾斜面54(図9参照)とは互いに離反する傾向にあるからである。このため、釣人は、嵌合軸21を円滑に回動させることができるという利点がある。なお、上記係止リブ26の上端側の角部30と上記凹部42を構成する傾斜面54との間に若干の隙間が形成されるように、当該傾斜面54又は上端側の角部30が成形されてもよい。
【0079】
また、上記係止リブ26の下端側の角部31にも面取加工が施されることにより(図2参照)、釣人が嵌合軸21をウキ本体20に嵌め込んだ際に、係止リブ26の下端側の角部31が凹部42の内壁面と面接触することが防止され得る。換言すれば、係止リブ26の下端側の角部31は、凹部42の傾斜面55と線接触ないし点接触するように 面取加工され得る。これにより、係止リブ26は、がたつくことなく確実に凹部42と係合し、しかも凹部42に対して円滑にスライドすることができる。その結果、釣人は、嵌合軸21をより円滑に操作することができる。
【0080】
加えて、本実施形態では、嵌合軸21がウキ本体20に挿入される際に、案内円筒部27が案内部材として機能する。したがって、釣人は、一層容易に嵌合軸21をウキ本体20の貫通孔22に嵌め込むことができる。嵌合軸21の主円筒部24が貫通孔22に嵌め合わせられると、上記突片33の位置と上記係合凹部43の位置とが一致する。そして、釣人が前述のように上記摘み部25を操作することによって、図15(a)が示すように、上記突片33が上記係合凹部43に設けられた爪部57と衝突する。ここで、嵌合軸21は樹脂からなり、案内円筒部27は弾性変形することができるので、上記突片33と上記爪部57とが衝突することにより、この爪部57が弾性的に変形して上記突片33が当該爪部57を乗り越える。すなわち、釣人は、上記摘み部25を操作する際にいわゆるクリック感が得られ、嵌合軸21とウキ本体20とが嵌め合わされたことを確認することができるという利点がある。
【0081】
また、本実施形態では、図2が示すように、嵌合軸21に上記段部34が形成され、これに対応して上記貫通孔22の中間部位35が縮径されている。このため、嵌合軸21がウキ本体20に嵌め込まれた際に、上記段部34が上記貫通孔22の中間部位35に当接する。したがって、釣人は、当該中間部位35に嵌合軸21が当接することを確認するだけで、嵌合軸21とウキ本体20との位置決めを正確に行うことができ、両者の当接を確認するだけで、嵌合軸21を簡単に回動させることができる。
【0082】
さらに、上記案内筒状部27は、上記切込溝37を備えている。前述のように、この切込溝37は、上記突片33の突出方向に直交する方向に貫通しているから、上記突片33が上記爪部57を乗り越える際に(図15(a)参照)上記案内円筒部27がより容易に弾性変形する。つまり、爪部57と突片33とが衝突したときに、その衝撃を緩和するように案内円筒部27が変形し、上記突片33が上記爪部57を乗り越えた直後に、当該弾性変形が直ちに復帰される。したがって、釣人は、より円滑に嵌合軸21を回動させることができるし、クリック感を確実に得られるという利点がある。
【0083】
本実施形態では、ウキ本体20の製造上の便宜のため、ウキ本体20が上部本体40と下部本体41とから構成され、両者が嵌め合わされることによりウキ本体20が組み立てられるようになっている。しかし、ウキ本体20が樹脂により一体的に形成されていてもよいことは勿論である。
【0084】
2.第2の実施形態
【0085】
次に、本発明の第2の実施形態について説明される。
【0086】
図16は、本発明の第2の実施形態に係るウキ本体60の平面図であり、図17及び図18は、それぞれ、図16におけるXVII−XVII断面図 及びXVIII−XVIII断面図である。
【0087】
このウキ本体60は、上記第1の実施形態に係るウキ本体20と同様の外形形状を有し、貫通孔22及びスリット32を備えている。これら貫通孔22及びスリット32は、第1の実施形態に係るウキ本体20に設けられたものと同様の構成である。また、ウキ本体60は、上記ウキ本体20と同様に、上部本体61及び下部本体62を備えており、これらが嵌め合わされることによってウキ本体60が組み立てられている。
【0088】
本実施形態に係るウキ本体60が第1の実施形態に係るウキ本体20と異なるところは、上記ウキ本体20では、上部本体40及び下部本体41が無垢材から構成されているのに対し(図10及び図11参照)、このウキ本体60を構成する上部本体61及び下部本体62が中空の器状に形成されている点である。このように上部本体61及び下部本体62が中空構造を備えるので、これら上部本体61及び下部本体62は、樹脂による射出成形により簡単に構成され得る。その結果、ウキ本体60の大量生産が可能であり、釣用ウキ10が安価に提供されるという利点がある。
【0089】
具体的には、上部本体61は外殻部63と内軸部64とを備え、下部本体62も外殻部66と内軸部67とを備えている。外殻部63と内軸部64とが一体的に形成され、外殻部66と内軸部67とが一体的に形成されている。外殻部63の外周面及び外殻部66の外周面がウキ本体60の外周面73を形成している。本実施形態では、上部本体61の外周面73の一部が陥没してシリンダ部80(特許請求の範囲に記載された「シリンダ」に相当)を形成している。このシリンダ部80は、円筒状に形成され、その内径は、上記第1の実施形態に係るシリンダ72の内径と一致している。上記ピストン本体71は、上記シリンダ部80に嵌め込まれるようになっている。このシリンダ部80の下端は開放されており、ウキ本体60の内部空間と連通している。すなわち、ウキ本体60の内部空間が上記収容室75を兼ねている。もっとも、シリンダ部80の底面が閉塞されていてもよい。
【0090】
上記シリンダ部80にピストン本体71が嵌め込まれると、上記第1の実施形態に係るウキ本体20と同様に、ピストン本体71がシリンダ部80の内壁面に対して気密的にスライドする。釣人は、ピストン本体71を操作することによって、その突出量(すなわち、ウキ本体60の外周面73を基準とするピストン本体71の突出量)を調整することができる。したがって、ウキ本体60の重量は一定に維持されたまま、ウキ本体60の体積が調整される。
【0091】
本実施形態においても、釣用ウキ14が発揮する浮力が正確に微調整される。その結果、釣人にとっては、釣場の状況(たとえば、海水濃度の変化)に応じて釣用ウキ14の浮力を正確に微調整することができ、快適なウキフカセ釣りが可能となる。また、釣用ウキ14の製造において製造誤差に基づく浮力誤差が相殺され、設計者が意図した浮力が実現される。もっとも、上記シリンダ部80に代えて上記第1の実施形態に係るシリンダ72が外殻部63に嵌め込まれてもよい。また、シリンダ部80の内部に上記第1の実施形態に係るシリンダ72が嵌め込まれてもよい。
【0092】
上部本体61の肉厚寸法は、これを構成する樹脂の強度によって異なるが、1mm〜3mm程度に設定され得る。外殻部63は略半球殻状に形成されており、外殻部63の外形形状は、上記第1の実施形態に係るウキ本体20の上部本体40の外形形状と同様である。内軸部64は、円筒状に形成されており、図17及び図18が示すように、外殻部63の内側の中心に設けられ、下方に(下部本体62側に)突出している。この内軸部64の内壁面によって上記貫通孔22の上側部分36が構成されている。そして、上記第1の実施形態に係るウキ本体20と同様に、上記上側部分36に連続して係合凹部43が設けられ、当該係合凹部43の壁面56に爪部57が形成されている。また、上部本体61は、外周面73から径方向に切り込まれた溝65を有し、この溝65が上記スリット32の一部を構成している。
【0093】
下部本体62は外殻部66と内軸部67とを備えており、前述のように、これらは、上部本体61と同様に一体的に形成されている。下部本体62の肉厚寸法は、上部本体61と同様に1mm〜3mm程度に設定され得る。外殻部66は略漏斗状に形成されており、外殻部66の外形形状は、上記第1の実施形態に係るウキ本体20の下部本体41の外形形状と同様である。内軸部67は、円筒状に形成されており、図17及び図18が示すように、外殻部66の内側の中心に設けられ、上方に(上部本体61側に)突出している。この内軸部67の内壁面によって上記貫通孔22の下側部分52が構成されている。そして、上記第1の実施形態に係るウキ本体20と同様に、上記下側部分52に連続して凹部42が設けられている。また、下部本体62は、外周面73から径方向に切り込まれた溝68を有し、この溝68が上記スリット32の一部を構成している。
【0094】
上部本体61は、下部本体62と上下方向に(軸方向に)沿って嵌め合わされる。これにより、上部本体61の外周面73と下部本体62の外周面73が滑らかに連続し、略紡錘形のウキ本体60が形成される。また、本実施形態では、上記外殻部63及び外殻部66の互いに対向する面にいわゆるあいじゃくり構造が設けられている。これにより、上部本体61と下部本体62とが位置決めされた状態で嵌め合わされる。さらに、同図が示すように、外殻部63と外殻部66とが嵌合された状態で、内軸部64も内軸部67と嵌め合わされるようになっている。なお、内軸部64及び内軸部67の互いに対向する面にもあいじゃくり構造が設けられており、これにより、内軸部64と内軸部67とが位置決め状態で確実に接合される。
【0095】
このように、上部本体61と下部本体62とが嵌め合わされることにより、上記溝65及び溝68が軸方向に連続して上記スリット32が構成されると共に、内軸部64と内軸部67とが接合されて上記貫通孔32が構成される。このウキ本体60に上記第1の実施形態に係る嵌合軸21(図2参照)が挿脱されることにより、釣人は、ウキ本体60をライン13に容易に着脱することができる。
【0096】
3.実施形態の変形例
【0097】
次に、上記各実施形態の変形例について説明される。
【0098】
図19は、上記各実施形態の変形例に係るピストン85の斜視図である。
【0099】
この変形例に係るピストン85が上記各実施形態に係るピストン19と異なるところは、このピストン85の構造であり、具体的には、ピストン85がシリンダ部86(特許請求の範囲に記載された「シリンダ」に相当)及びネジ軸87(特許請求の範囲に記載された「ピストン本体」に相当)を備えている点である。
【0100】
シリンダ部86は、いわゆる段付きの円筒状に形成され、大径部88及び小径部89を備えている。大径部88の内径は、上記第1の実施形態に係るシリンダ72(図2参照)の内径と一致している。小径部89の内径は、上記ネジ軸87の軸部90の外径に対応しており、小径部89の内壁面に雌ねじ91が形成されている。
【0101】
ネジ軸87は、樹脂又は金属から構成され、上記軸部90及び頭部92を備えている。これらは一体的に形成されるのが好ましい。頭部92は、円柱状の真直部93及び円錐台状の頂部94を有し、真直部93の外径は、上記各実施形態に係るピストン本体71(図2及び図17参照)の外径と一致している。この真直部93に上記各実施形態に係るOリング77(図2及び図17参照)が装着されている。頂部94の天面96に溝97(特許請求の範囲に記載された「工具係合溝」に相当)が形成されている。図19が示すように、この溝97は天面96に開口しており、その内壁面形状は矩形である。溝97は、紙面に垂直な方向に延びており、頂部94を貫通している。ネジ軸87を回転操作する工具(典型的にはマイナスドライバ)が、この溝97に係合するようになっている。
【0102】
上記軸部90は円柱状に形成され、その外径は、上記真直部93の外径よりも小さい。この軸部90に雄ねじ95が形成されており、上記シリンダ部86の雌ねじ91と螺合することができる。すなわち、軸部90がシリンダ部86の大径部88に挿入されると、頭部92の真直部93が上記大径部88に嵌め込まれる。このとき、上記軸部90は、シリンダ部86の小径部89と螺合し、当該ネジ軸87がねじ込まれることにより、上記頭部92がシリンダ部86内を液密的且つ気密的にスライドする。上記第2の実施形態と同様に、このシリンダ部86の下端は開放されているが、当該下端が閉塞されていてもよい。
【0103】
この変形例では、ネジ軸87が回転されることにより、ネジ軸87の頭部92の突出量(すなわち、ウキ本体60の外周面73を基準とする頭部92の突出量)が、きわめて正確に微調整される。つまり、釣用ウキ14の浮力が正確に調整される。
【0104】
特に、上記頭部92に溝97が設けられているから、仮にネジ軸87のサイズが小さくても、釣人は、工具を用いてネジ軸87を簡単に且つ正確に回転させることができる。
【符号の説明】
【0105】
14・・・釣用ウキ
19・・・ピストン
20・・・ウキ本体
60・・・ウキ本体
61・・・上部本体
62・・・下部本体
63・・・外殻部
64・・・内軸部
65・・・溝
66・・・外殻部
67・・・内軸部
68・・・溝
71・・・ピストン本体
72・・・シリンダ
73・・・外周面
74・・・開口
75・・・収容室
76・・・上端面
77・・・Oリング
78・・・外周面
80・・・シリンダ部
85・・・ピストン
86・・・シリンダ部
87・・・ネジ軸
88・・・大径部
89・・・小径部
90・・・軸部
91・・・雌ねじ
92・・・頭部
93・・・真直部
94・・・頂部
95・・・雄ねじ
96・・・天面
97・・・溝


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19