(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では風下側通路の内部に冷媒通路と蓄冷材収容空間とを区画形成しているので、蓄冷材収容空間を隣り合うフィンの間に収めることができるという利点がある。
【0006】
ところが、風下側通路の内部に仕切プレートを配設しており、この仕切プレートの周縁部が、扁平中空体の外壁を形成する2枚のプレートの間に挟まれた状態で両プレートにろう付けされている。そして、仕切プレートの風上側の縁部は、扁平中空体の風上側通路の内部に臨むように配置されている。
【0007】
ここで、特許文献1のようなエバポレータを製造する際には炉内に搬入して各部を一度にろう付けするのが一般的であるが、このとき、一部にろう付け不良が起こる可能性が考えられる。このろう付け不良が発生したエバポレータが使用されると、蓄冷材収容空間に収容された蓄冷材が冷媒回路内に漏出してしまい、そのまま使用されて冷凍サイクル装置の故障の原因となる恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部材をろう付けすることによって蓄冷材収容空間を形成する場合に、万が一、ろう付け不良が発生しても蓄冷材が冷媒回路内に漏出することのない構造を持ったエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、蓄冷材収容空間を形成する部材を、冷媒通路の外部に設け、該冷媒通路を形成する部材に対してろう付けするようにした。
【0010】
第1の発明は、
複数の冷媒管と、複数のフィンとが外部空気の流れ方向と交差する方向に積層されて互いに接触するように配置され、
上記冷媒管は、外部空気の流れ方向と交差する方向に重なるように配置され、互いにろう付けされる第1プレートと第2プレートとを備え、上記外部空気の流れ方向に並ぶ風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路が上記第1プレートと上記第2プレートとの間に形成され、
上記冷媒管における上記風上側冷媒通路及び上記風下側冷媒通路の少なくとも一方の外面には、蓄冷材が収容される蓄冷材収容空間を形成するための蓄冷プレートがろう付けされ
、上記蓄冷材収容空間は、上記冷媒管における上記風上側冷媒通路及び上記風下側冷媒通路の一方の外面にのみ形成され、上記第1プレートにおける上記蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路を構成する部分の周囲は、平坦に形成された平坦板部とされ、上記平坦板部に上記蓄冷プレートがろう付けされ、上記第1プレートにおける上記蓄冷材収容空間が形成されない側の冷媒通路を構成する部分は、上記冷媒管の外側へ向けて膨出するように形成された第1プレート側膨出部とされ、上記蓄冷プレートは、上記第1プレート側膨出部と同方向に膨出する蓄冷プレート側膨出部を備え、上記第1プレート側膨出部の膨出方向先端面と、上記蓄冷プレート側膨出部の膨出方向先端面とは同一面上に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、蓄冷プレートが冷媒管における風上側冷媒通路や風下側冷媒通路の外面にろう付けされるので、蓄冷材収容空間が風上側冷媒通路や風下側冷媒通路に接近した状態で形成される。このため、風上側冷媒通路や風下側冷媒通路を流通する冷媒の冷熱が蓄冷材に伝達し易くなり、蓄冷効率が向上する。
【0012】
そして、蓄冷プレートが冷媒管の外面にろう付けされていることで、蓄冷材収容空間は風上側冷媒通路や風下側冷媒通路の外部に形成されることになる。従って、万が一、蓄冷プレートにろう付け不良が発生した場合、蓄冷材収容空間に収容されている蓄冷材は風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の外部へ漏出するだけであり、冷媒回路内に漏出することはない。
【0013】
また、蓄冷プレートの大きさが風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の一方の外面にろう付け可能な大きさであればよいので、蓄冷プレートの小型化が可能になる。
【0014】
また、第1プレートにおける平坦板部は膨出形成された部分に比べて寸法精度が良好であり、この寸法精度が良好な平坦板部に蓄冷プレートをろう付けすることで、蓄冷プレートと平坦板部との隙間を小さく管理することが可能になる。よってろう付けが安定して行える。
【0015】
また、外部空気の流れ方向と交差する方向に並ぶ冷媒管の間に配設されるフィンの同方向の寸法を、外部空気の流れ方向上流側から下流側まで同じにすることが可能になる。従って、外部空気の流れ方向上流側と下流側とで同じフィンを使用して部品の共通化を図ることや、外部空気の流れ方向上流側から下流側までフィンを一体成形して部品点数を削減することが可能になる。
【0016】
第
2の発明は、第
1の発明において、
上記蓄冷材収容空間は、上記蓄冷プレートと上記第1プレートとで形成され、
上記蓄冷プレート及び上記第1プレートには、上記蓄冷材収容空間に連通する蓄冷材容器部が外部空気の流れ方向に突出するように設けられ、
外部空気の流れ方向と交差する方向に隣合う上記蓄冷材容器部が接続されて蓄冷材タンクが形成され、
上記蓄冷材タンクには、閉塞部材で閉塞された蓄冷材流入孔が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、蓄冷材タンクの蓄冷材流入孔から蓄冷材を充填することで、各蓄冷材収容空間に蓄冷材が収容される。つまり、蓄冷材流入孔を蓄冷材タンクに例えば1か所設けておくだけで、複数の蓄冷材収容空間に蓄冷材を容易に収容することが可能になる。また、蓄冷材タンクが蓄冷材の熱膨張による内圧の異常な上昇を防止するバッファとなる。尚、蓄冷材流入孔は蓄冷材タンクに複数形成してもよい。
【0018】
第
3の発明は、第
2の発明において、
上記蓄冷材容器部は、上記冷媒管の上側に設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、蓄冷材容器部が上側に位置していることで、蓄冷材を蓄冷材タンクに充填した際に、各蓄冷材収容空間の蓄冷材の収容量のばらつきが抑制される。
【0020】
第
4の発明は、第
1の発明において、
上記蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路における外部空気流れ方向の通路幅は、他方の冷媒通路における外部空気流れ方向の通路幅よりも広く設定されるとともに、上記蓄冷材収容空間における外部空気流れ方向の幅と略同一幅に設定されることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路の通路幅が他方の冷媒通路の通路幅よりも広くなるので、蓄冷材収容空間の形成によって冷媒通路の断面が扁平化した場合であっても断面積が広く確保されて管内側圧力損失が低減され、冷房性能が向上する。また、蓄冷材収容空間の幅が広くなるので、蓄冷材の収容量が増加して蓄冷効果が増加する。
【0022】
第
5の発明は、第
1の発明において、
上記蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路における外部空気流れ方向の通路幅は、他方の冷媒通路における外部空気流れ方向の通路幅よりも広く設定され、
上記冷媒管を外部空気の流れ方向と交差する方向から見たとき、上記蓄冷材収容空間が上記風上側冷媒通路及び上記風下側冷媒通路の両方と重複することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路の通路幅が他方の冷媒通路の通路幅よりも広くなるので、蓄冷材収容空間の形成によって冷媒通路の断面が扁平化した場合であっても断面積が広く確保されて管内側圧力損失が低減されて冷房性能が向上する。また、蓄冷材収容空間が風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の両方と重複しているので、冷媒の冷熱が蓄冷材に伝達し易くなり、蓄冷効率が向上する。
【0024】
第
6の発明は、第
1の発明において、
上記第2プレートにおける上記蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路を構成する部分には、該冷媒通路内に向けて突出する第2プレート側凸部が形成され、
上記冷媒管を外部空気の流れ方向と交差する方向から見たとき、上記蓄冷プレートにおける上記第2プレート側凸部と重複する部分には、上記蓄冷材収容空間内に向けて突出する蓄冷プレート側凸部が形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、エバポレータの製造時に冷媒管とフィンとを積層してその積層方向に結束した際、第2プレート側凸部と蓄冷プレートの蓄冷プレート側凸部の先端面が共に第1プレートに確実に接触した状態になる。この状態で第2プレート側凸部と蓄冷プレート側凸部とが第1プレートにろう付けされるので、確実なろう付けが可能になる。
【0026】
第
7の発明は、第1から
6のいずれか1つの発明において、
上記冷媒管における上記風上側冷媒通路及び上記風下側冷媒通路の少なくとも一方には、インナーフィンが配設されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、冷媒通路にインナーフィンが配設されることで冷媒の冷熱が外部に伝達し易くなり、冷房性能が向上する。
【0028】
第
8の発明は、第
7の発明において、
上記インナーフィンは上記冷媒通路の内面にろう付けされていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、冷媒管の耐圧性が向上する。
【0030】
第
9の発明は、第1から
8のいずれか1つの発明において、
上記第1プレートと上記第2プレートとには、上記積層方向に隣り合う上記冷媒管の上記冷媒通路同士を連通させるための冷媒タンクの周壁部が一体成形されていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、冷媒タンクの周壁部が第1プレートと第2プレートとに一体成形されているので、部品点数が削減され、組み立てが容易になる。
【0032】
第1
0の発明は、第
2または
3の発明において、
上記蓄冷材容器部は、外部空気の流れ方向下流側へ突出するように設けられていることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、蓄冷材容器部が外部空気の流れ方向下流側へ突出しているので、蓄冷材容器部が低温の外部空気と接触することになる。これにより、蓄冷材容器部内の蓄冷材に冷熱が蓄積されやすくなるので、圧縮機の作動時間が短くても、圧縮機の停止後の冷風供給時間が長くなる。
【発明の効果】
【0034】
第1の発明によれば、冷媒管における風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の少なくとも一方の外面に蓄冷プレートをろう付けして蓄冷材収容空間を形成したので、蓄冷効率を向上させることができ、しかも、万が一、蓄冷プレートにろう付け不良が発生しても蓄冷材が冷媒回路内に漏出するのを回避することができる。
【0035】
また、蓄冷材収容空間を風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の一方の外面にのみ形成するようにしたので、蓄冷プレートを小型化することができ、その結果、蓄冷エバポレータを安価で軽量にすることができる。
【0036】
また、第1プレートにおける平坦板部に蓄冷プレートをろう付けすることができるので、第1プレートと蓄冷プレートとを安定してろう付けできる。
【0037】
また、第1プレート側膨出部の膨出方向先端面と、蓄冷プレート側膨出部の膨出方向先端面とが同一面上に位置するように形成したので、外部空気の流れ方向上流側と下流側とで同じフィンを使用して部品の共通化を図ることや、外部空気の流れ方向上流側から下流側までフィンを一体成形して部品点数を削減することができる。
【0038】
第
2の発明によれば、各冷媒管の蓄冷プレート及び第1プレートに、蓄冷材収容空間に連通する蓄冷材容器部を設け、外部空気の流れ方向と交差する方向に隣合う蓄冷材容器部を接続して蓄冷材タンクを形成し、蓄冷材タンクに、閉塞部材で閉塞された蓄冷材流入孔を形成したので、複数の蓄冷材容器部に蓄冷材を容易に収容できるとともに、蓄冷材の熱膨張による内圧の異常な上昇を防止することができる。
【0039】
第
3の発明によれば、蓄冷材容器部を冷媒管の上側に設けたので、各蓄冷材収容空間の蓄冷材の収容量のばらつきを抑制できる。
【0040】
第
4の発明によれば、蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路の通路幅を他方の冷媒通路の通路幅よりも広く設定し、蓄冷材収容空間の幅と略同一幅に設定したので、冷媒の管内側圧力損失を低減して冷房性能を向上できるとともに、蓄冷材の収容量を増加させて蓄冷効果を増加させることができる。
【0041】
第
5の発明によれば、蓄冷材収容空間が形成される側の冷媒通路の通路幅を他方の冷媒通路の通路幅よりも広く設定したので、冷媒の管内側圧力損失を低減して冷房性能を向上できる。また、蓄冷材収容空間が風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の両方と重複しているので、蓄冷効率を向上できる。
【0042】
第
6の発明によれば、第1プレートと蓄冷プレート、第1プレートと第2プレートをそれぞれ確実にろう付けすることができ、冷媒管の耐圧性を向上できる。
【0043】
第
7の発明によれば、風上側冷媒通路及び風下側冷媒通路の少なくとも一方にインナーフィンを配設したので、冷房性能を向上させることができる。
【0044】
第
8の発明によれば、インナーフィンを冷媒通路の内面にろう付けすることで冷媒管の耐圧性を向上できる。
【0045】
第
9に発明によれば、第1プレートと第2プレートとに冷媒タンクの周壁部を一体成形したので、部品点数を削減することができ、組み立てを容易にすることができる。
【0046】
第1
0の発明によれば、蓄冷材容器部が外部空気の流れ方向下流側へ突出しているので、蓄冷材容器部内の蓄冷材に冷熱が蓄積されやすくなる。これにより、圧縮機の作動時間が短くても、圧縮機の停止後の冷風供給時間を長くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0049】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る蓄冷エバポレータ1を外部空気の流れ方向上流側から見た斜視図である。各図における白抜きの矢印は外部空気の流れ方向を示している。この蓄冷エバポレータ1は、自動車に搭載される車両用空調装置(図示せず)が有する冷凍サイクル装置の蒸発器を構成するものである。冷凍サイクル装置は、蓄冷エバポレータ1の他、図示しないが、車両に搭載されているエンジンによって駆動される圧縮機と、凝縮器と、膨張弁とを備えており、これらが冷媒配管によって接続されてなるものである。圧縮機から吐出された冷媒は、凝縮器に流入して凝縮された後、膨張弁を経て膨張してから蓄冷エバポレータ1に流入し、外部空気と熱交換した後、蓄冷エバポレータ1から流出して圧縮機に吸入されるようになっている。図示している外部空気の流れ方向は一例であり、反対側から流すようにしてもよい。
【0050】
この蓄冷エバポレータ1が搭載される車両は、アイドリングストップ機能を有している。アイドリングストップ機能は、従来から周知の構成のものであり、所定のアイドリングストップ条件を満たす場合、例えば、車速が0、かつ、ブレーキペダル踏み込み状態が検出された場合にはエンジンのアイドリングを自動停止し、所定のアイドリングストップ条件を満たさない場合、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれていない場合にはエンジンのアイドリングを自動停止させないように構成されている。また、車両側のアイドリングストップ条件(車速、ブレーキペダル踏み込み状態)を満たしていても、空調装置側のアイドリングストップ条件が優先されるように構成されており、空調装置側のアイドリングストップ条件を満たさない場合には、エンジンのアイドリングを自動停止させない。空調装置側のアイドリングストップ条件としては、例えば、冷房時で吹出空気温度が冷房性能を維持できる場合には空調装置側のアイドリングストップ条件を満たすと判定する一方、吹出空気温度が冷房性能を維持できない場合には空調装置側のアイドリングストップ条件を満たさないと判定する等を挙げることができる。
【0051】
蓄冷エバポレータ1は、図示しない空調ケーシングに収容される。空調ケーシングには、車室外の空気と車室内の空気の一方が選択されて導入される。この導入空気が蓄冷エバポレータ1に向けて送風機によって送風される。また、空調ケーシングの内部には、ヒータコア等からなる加熱用熱交換器及びエアミックスダンパも収容されており、蓄冷エバポレータ1を通過した空気のうち、加熱用熱交換器を通過する空気量をエアミックスダンパで調整することによって所望温度の空調風を得るようにしている。得られた空調風は、車室の各部、例えばフロントウインド内面、乗員の上半身、足下等に供給される。
【0052】
蓄冷エバポレータ1は、複数の冷媒管2とフィン3とからなるコア4を備えている。複数の冷媒管2と複数のフィン3とは、外部空気の流れ方向と交差する方向に交互に積層されて互いに接触するように配置されており、これら冷媒管2及びフィン3の積層方向外端部にはエンドプレート5が配設されている。
図1及び
図2では、一部のフィン3のみ図示しているが、フィン3は、積層方向に隣合う冷媒管2、2の間に全て設けられており、上下方向に連続している。外部空気はフィン3を通過するようになっている。また、フィン3は、例えばアルミニウム合金製の薄板材を成型してなるものであり、いわゆるコルゲートフィンである。
【0053】
尚、この実施形態の説明では、冷媒管2及びフィン3の積層方向を各図に示すように蓄冷エバポレータ1の左右方向と定義する。そして、冷媒管2の厚み方向は該冷媒管2の左右方向であり、この左右方向は車両の左右方向と必ずしも一致していなくてもよい。また、冷媒管2の長手方向は上下方向であり、冷媒管2の幅方向は外部空気の流れ方向である。また、フィン3の高さ方向は蓄冷エバポレータ1の左右方向である。
【0054】
図5及び
図6に示すように、冷媒管2は、外部空気の流れ方向と交差する方向に重なるように配置された第1プレート21及び第2プレート22と、インナーフィン23とを備えている。第1プレート21、第2プレート22及びインナーフィン23は、全てアルミニウム合金製の板材で構成されている。第1プレート21と第2プレート22との間に、風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2が外部空気の流れ方向に並ぶように形成されている。風上側冷媒通路R1は、冷媒管2における外部空気の流れ方向上流側に形成され、風下側冷媒通路R2は、冷媒管2における外部空気の流れ方向下流側に形成されている。風上側冷媒通路R1と風下側冷媒通路R2とは、外部空気の流れ方向に間隔をあけて配置されている。
【0055】
そして、冷媒管2における風下側冷媒通路R2の外面には、蓄冷材が収容される蓄冷材収容空間R3が、蓄冷プレート40を第1プレート21に接合することによって形成されている。この蓄冷プレート40は、冷媒管2における風下側冷媒通路R2の外面にろう付けされており、冷媒管2を構成する部材である。この実施形態1では、蓄冷材収容空間R3は、冷媒管2における風下側冷媒通路R2の外面にのみ形成されている。
【0056】
図1に示すように、蓄冷エバポレータ1の上部には、外部空気の流れ方向上流側に、風上側冷媒通路R1の上端部が連通する上側風上冷媒タンク6が設けられている。蓄冷エバポレータ1の上部には、外部空気の流れ方向下流側に、風下側冷媒通路R2の上端部が連通する上側風下冷媒タンク7が設けられている。上側風上冷媒タンク6及び上側風下冷媒タンク7には冷媒を給排するための配管100、101が接続されている。
【0057】
蓄冷エバポレータ1の下部には、外部空気の流れ方向上流側に、風上側冷媒通路R1の下端部が連通する下側風上冷媒タンク(図示せず)が設けられている。蓄冷エバポレータ1の下部には、外部空気の流れ方向下流側に、風下側冷媒通路R2の下端部が連通する下側風下冷媒タンク9が設けられている。上側風上冷媒タンク6、上側風下冷媒タンク7、下側風上冷媒タンク及び下側風下冷媒タンク9は、蓄冷エバポレータ1の左右方向両端部に亘って延びている。
【0058】
図3等に示すように、第1プレート21及び第2プレート22は、上下方向に長い矩形に近い形状をしており、全体がプレス成型されたものである。第1プレート21は、冷媒管2の左側を構成する部材であり、第2プレート22は、冷媒管2の右側を構成する部材である。第1プレート21の外部空気流れ方向上流側には、左側へ膨出する第1プレート側膨出部24が形成されている。すなわち、蓄冷材収容空間R3が風下側冷媒通路R2の外面にのみ形成されているので、第1プレート21の外部空気流れ方向上流側は、第1プレート21における蓄冷材収容空間R3が形成されない側である。そして、第1プレート21の外部空気流れ方向上流側が、冷媒管2の外側(この実施形態では左側)へ向けて膨出するように形成された第1プレート側膨出部24とされる。
【0059】
第1プレート側膨出部24は、第1プレート21の上部近傍から下部近傍まで連続している。第1プレート側膨出部24の外部空気流れ方向の寸法W1(
図6に示す)は、第1プレート側膨出部24の上部から下部に亘って略同一寸法に設定されている。寸法W1は、第1プレート21の外部空気流れ方向の寸法W2の1/2よりも短くなっており、具体的には、寸法W2の1/3以下とすることができる。また、第1プレート側膨出部24の膨出方向先端面(左端面)は上下方向に延びる平坦面で構成されている。
【0060】
図3に示すように、第1プレート21の上部には、外部空気流れ方向上流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風上側冷媒通路R1の上端部同士を連通させるための上側風上冷媒タンク6の周壁部6aが一体成形されている。第1プレート21の周壁部6aは、第1プレート21の上部から左側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部6bが形成されている。
【0061】
第1プレート21の上部には、外部空気流れ方向下流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風下側冷媒通路R2の上端部同士を連通させるための上側風下冷媒タンク7の周壁部7aが一体成形されている。第1プレート21の周壁部7aは、第1プレート21の上部から左側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部7bが形成されている。
【0062】
第1プレート21の下部には、外部空気流れ方向上流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風上側冷媒通路R1の下端部同士を連通させるための下側風上冷媒タンク(図示せず)の周壁部8aが一体成形されている。第1プレート21の周壁部8aは、第1プレート21の下部から左側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部8bが形成されている。
【0063】
第1プレート21の下部には、外部空気流れ方向下流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風下側冷媒通路R2の下端部同士を連通させるための下側風下冷媒タンク9の周壁部9aが一体成形されている。第1プレート21の周壁部9aは、第1プレート21の下部から左側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部9bが形成されている。
【0064】
第1プレート21の周壁部7aと周壁部9aとの間の部分は平坦に延びており、風下側冷媒通路R2の左側壁部25となっている。この左側壁部25は、第1プレート21における蓄冷材収容空間R3が形成される側の冷媒通路、即ち風下側冷媒通路R2を構成する部分であり、この左側壁部25の周囲は平坦に形成された平坦板部25aとされている。この平坦板部25aに蓄冷プレート40がろう付けされている。
【0065】
第1プレート21の上側、即ち、冷媒管2の上側には、蓄冷材収容空間R3に連通する第1プレート側蓄冷材容器部21aが外部空気の流れ方向下流側へ突出するように一体に設けられている。第1プレート側蓄冷材容器部21aは、右側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面には開口部21bが形成されている。また、第1プレート側蓄冷材容器部21aの周縁部は平坦に形成された接合板部21cとされている。
【0066】
第2プレート22の外部空気流れ方向上流側には、右側へ膨出する第2プレート側上流部膨出部28が形成されている。蓄冷材収容空間R3が風下側冷媒通路R2の外面にのみ形成されているので、第2プレート22の外部空気流れ方向上流側は、第2プレート22における蓄冷材収容空間R3が形成されない側である。そして、第2プレート22の外部空気流れ方向上流側が、冷媒管2の外側(この実施形態では右側)へ向けて膨出するように形成された第2プレート側上流部膨出部28とされる。
【0067】
第2プレート側上流部膨出部28は、第2プレート22の上部近傍から下部近傍まで連続している。第2プレート側上流部膨出部28の外部空気流れ方向の寸法W3(
図6に示す)は、第2プレート側上流部膨出部28の上部から下部に亘って略同一寸法に設定されている。寸法W3は、第1プレート側膨出部24の同方向の寸法W1と同じである。また、第2プレート側上流部膨出部28の膨出方向先端面(右端面)は上下方向に延びる平坦面で構成されている。
【0068】
第1プレート側膨出部24及び第2プレート側上流部膨出部28によって風上側冷媒通路R1が形成される。この風上側冷媒通路R1の内部にはインナーフィン23が配設されている。インナーフィン23は、風上側冷媒通路R1の延びる方向に沿って上下方向に延びている。インナーフィン23は、アルミニウム合金製の板材からなり、水平方向の断面が波形をなすように成型されている。第1プレート側膨出部24及び第2プレート側上流部膨出部28の内面にインナーフィン23がろう付けされ、これにより、インナーフィン23を介して第1プレート側膨出部24及び第2プレート側上流部膨出部28の内面が結合されるので、冷媒管2の耐圧性を向上させることができる。
【0069】
図3にも示すように、第2プレート22の外部空気流れ方向下流側には、右側へ膨出する第2プレート側下流部膨出部29が形成されている。蓄冷材収容空間R3が風下側冷媒通路R2の外面にのみ形成されているので、第2プレート22の外部空気流れ方向下流側は、第2プレート22における蓄冷材収容空間R3が形成される側である。そして、第2プレート22の外部空気流れ方向下流側が、冷媒管2の外側(この実施形態では右側)へ向けて膨出するように形成された第2プレート側下流部膨出部29とされる。
【0070】
第2プレート側下流部膨出部29は、第2プレート22の上部近傍から下部近傍まで連続している。第2プレート側下流部膨出部29の外部空気流れ方向の寸法W4(
図6に示す)は、第2プレート側下流部膨出部29の上部から下部に亘って略同一寸法に設定されている。寸法W4は、第1プレート側膨出部24の同方向の寸法W1よりも長く設定されている。また、第2プレート側下流部膨出部29の膨出方向先端面(右端面)は上下方向に延びる平坦面で構成されている。
【0071】
第2プレート22における風下側冷媒通路R2を構成する部分、即ち第2プレート側下流部膨出部29の膨出方向先端面には、該風下側冷媒通路R2内に向けて突出する第2プレート側凸部29aが複数形成されている。第2プレート側凸部29aは、上下方向に並び、かつ、外部空気の流れ方向にも並ぶように形成されており、突出方向先端側へ行くほど外径が小さくなっている。第2プレート側凸部29aの突出方向先端面は、第1プレート21の左側壁部25に接触してろう付けされるようになっている。第2プレート側凸部29aが風下側冷媒通路R2内に突出しているので、冷媒と第2プレート22との接触面積が広く確保されるとともに、風下側冷媒通路R2内において冷媒の流れを適度に乱すことができ、冷房性能を向上させることができる。
【0072】
図3に示すように、第2プレート22の上部には、外部空気流れ方向上流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風上側冷媒通路R1の上端部同士を連通させるための上側風上冷媒タンク6の周壁部6aが一体成形されている。第2プレート22の周壁部6aは、第2プレート22の上部から右側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部6bが形成されている。
図4に示すように、第2プレート22の周壁部6aと第1プレート21の周壁部6aとが互いに接合されて両周壁部6aに形成されている開口部6b同士が連通することによって上側風上冷媒タンク6が構成される。
【0073】
図3に示すように、第2プレート22の上部には、外部空気流れ方向下流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風下側冷媒通路R2の上端部同士を連通させるための上側風下冷媒タンク7の周壁部7aが一体成形されている。第2プレート22の周壁部7aは、第2プレート22の上部から右側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部7bが形成されている。
図4に示すように、第2プレート22の周壁部7aと第1プレート21の周壁部7aとが互いに接合されて両周壁部7aに形成されている開口部7b同士が連通することによって上側風下冷媒タンク7が構成される。
【0074】
図3に示すように、第2プレート22の下部には、外部空気流れ方向上流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風上側冷媒通路R1の下端部同士を連通させるための下側風上冷媒タンク(図示せず)の周壁部8aが一体成形されている。第2プレート22の周壁部8aは、第2プレート22の下部から右側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部8bが形成されている。第2プレート22の周壁部8aと第1プレート21の周壁部8aとが互いに接合されて両周壁部8aに形成されている開口部8b同士が連通することによって下側風上冷媒タンクが構成される。
【0075】
第2プレート22の下部には、外部空気流れ方向下流側に、積層方向に隣り合う冷媒管2の風下側冷媒通路R2の下端部同士を連通させるための下側風下冷媒タンク9の周壁部9aが一体成形されている。第2プレート22の周壁部9aは、第2プレート22の下部から右側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面に開口部9bが形成されている。第2プレート22の周壁部9aと第1プレート21の周壁部9aとが互いに接合されて両周壁部9aに形成されている開口部9b同士が連通することによって下側風下冷媒タンク9が構成される。
【0076】
第1プレート21の左側壁部25及び第2プレート側下流部膨出部29によって風下側冷媒通路R2が形成される。
図6に示すように、第2プレート側下流部膨出部29の寸法W4の方が第2プレート側上流部膨出部28の寸法W3に比べて長いので、蓄冷材収容空間R3が形成される側の冷媒通路、即ち、風下側冷媒通路R2における外部空気流れ方向の通路幅が風上側冷媒通路R1における外部空気流れ方向の通路幅よりも広く設定されることになる。
【0077】
蓄冷プレート40は、アルミニウム合金製の板材からなり、第1プレート21及び第2プレート22よりも小さく形成され、上下方向に長い矩形に近い形状となっている。蓄冷プレート40は、第1プレート21における第1プレート側膨出部24の形成部分よりも外部空気流れ方向下流側にろう付けされている。蓄冷プレート40は、第1プレート側膨出部24と同方向(左方向)に膨出する蓄冷プレート側膨出部41を備えている。第1プレート側膨出部24の膨出方向先端面と、蓄冷プレート側膨出部41の膨出方向先端面とは同一面上に位置するように形成されている。
【0078】
蓄冷プレート側膨出部41は、蓄冷プレート40の上部近傍から下部近傍まで連続している。蓄冷プレート側膨出部41の外部空気流れ方向の寸法W5(
図6に示す)は、蓄冷プレート側膨出部41の上部から下部に亘って略同一寸法に設定されている。寸法W5は、第1プレート側膨出部24の外部空気流れ方向の寸法W1、及び第2プレート側上流部膨出部28の外部空気流れ方向の寸法W3よりも短く設定されている。寸法W5と寸法W4とは略同じに設定してもよいし、寸法W5の方を長くしてもよいし、寸法W5の方を短くしてもよい。従って、寸法W5と寸法W4とは略同じに設定することで、風下側冷媒通路R2における外部空気流れ方向の通路幅と、蓄冷材収容空間R3における外部空気流れ方向の幅とは略同一幅に設定される。
【0079】
蓄冷プレート側膨出部41の膨出方向先端面には、蓄冷材収容空間R3内に向けて突出する蓄冷プレート側凸部41aが複数形成されている。冷媒管2を外部空気の流れ方向と交差する方向(左右方向)から見たとき、蓄冷プレート40における第2プレート側凸部29aと重複する部分に、上記蓄冷プレート側凸部41aが形成されている。従って、蓄冷プレート側凸部41aも上下方向に並び、かつ、外部空気の流れ方向にも並ぶように配置される。また、蓄冷プレート側凸部41aは、突出方向先端側へ行くほど外径が小さくなっており、突出方向先端面は、第1プレート21の左側壁部25に対して外面から接触してろう付けされるようになっている。蓄冷プレート側凸部41aが蓄冷材収容空間R3内に突出しているので、蓄冷材と蓄冷プレート40との接触面積が広く確保される。
【0080】
図3に示すように、蓄冷プレート40の上側、即ち、冷媒管2の上側には、蓄冷材収容空間R3に連通する蓄冷プレート側蓄冷材容器部40aが外部空気の流れ方向下流側へ突出するように一体に設けられている。蓄冷プレート側蓄冷材容器部40aは、左側へ膨出するように形成されており、膨出方向先端面には開口部40bが形成されている。また、蓄冷プレート側蓄冷材容器部40aの周縁部は平坦に形成された接合板部40cとされている。
【0081】
図5に示すように、蓄冷プレート側蓄冷材容器部40aの内部と、蓄冷材収容空間R3の上部とは連通している。そして、外部空気の流れ方向と交差する方向に隣合う蓄冷プレート側蓄冷材容器部40aの接合板部40cと第1プレート側蓄冷材容器部21aの接合板部21cとが接合される。これにより、蓄冷材タンク10が形成される。蓄冷材タンク10は、左右方向に長く延びている。蓄冷材タンク10には、全ての冷媒管2の蓄冷材収容空間R3が連通している。
【0082】
図1に破線で示すように、蓄冷材タンク10には、蓄冷材を蓄冷材タンク10に充填するための蓄冷材流入孔10aが形成されている。この実施形態では、蓄冷材タンク10の端壁部に蓄冷材流入孔10aを形成しているが、蓄冷材流入孔10aの形成位置は特に限定されない。蓄冷材流入孔10aは、蓄冷材の充填後に別部材からなる閉塞部材10bで閉塞されている。閉塞部材10bは、例えばゴム等の弾性材からなるキャップのようなものとすることができ、蓄冷材タンク10にかしめ固定することができる。また、閉塞部材10bをねじ込み式のキャップとすることもでき、その構造は特に限定されない。蓄冷材流入孔10aは複数形成してもよい。
【0083】
上記のように構成された蓄冷エバポレータ1は、各部材を組み合わせて図示しない結束材等によって冷媒管2及びフィン3の積層方向に結束した後、ろう付け用の炉内に搬入して各部のろう付けを同時に行う。炉外へ搬出して冷却することでろう材が固化して各部材が接合される。このとき、第1プレート21の左側壁部25の周囲が平坦板部25aであることから、平坦板部25aの成型精度は十分に高くなっており、この寸法精度が良好な平坦板部25aに蓄冷プレート40をろう付けすることで、蓄冷プレート40と平坦板部25aとの隙間を小さく管理することが可能になる。よって、ろう付けが安定して行える。
【0084】
また、冷媒管2とフィン3とを積層してその積層方向に結束した際、左右方向に見て、第2プレート側凸部29aと蓄冷プレート40の蓄冷プレート側凸部41aとが重複しているので、第2プレート側凸部29aと蓄冷プレート側凸部41aの先端面が共に第1プレート21に確実に接触した状態になる。この状態で第2プレート側凸部29aと蓄冷プレート側凸部41aとが第1プレート21にろう付けされるので、確実なろう付けが可能になる。
【0085】
ろう付け後、蓄冷材を蓄冷材流入孔10aから蓄冷材タンク10に充填する。蓄冷材タンク10に充填された蓄冷材は、各冷媒管2の蓄冷材収容空間R3に流入して該蓄冷材収容空間R3に収容される。このとき、蓄冷材タンク10が冷媒管2の上側に設けられているので、蓄冷材を自重によって蓄冷材収容空間R3の下部から上部に亘って収容することが可能になる。このように、蓄冷材流入孔10aを蓄冷材タンク10に例えば1か所設けておくだけで、複数の蓄冷材収容空間R3に蓄冷材を容易に収容することが可能になる。また、蓄冷材タンク10が蓄冷材の熱膨張による内圧の異常な上昇を防止するバッファとなる。蓄冷材の充填後、蓄冷材流入孔10aを閉塞部材10bで閉塞する。
【0086】
次に、蓄冷エバポレータ1の作用について説明する。エンジンの運転中には冷凍サイクル装置の圧縮機が作動しているので、蓄冷エバポレータ1には冷媒が流入して冷媒管2の風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2を流通する。風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2を流通する冷媒は、主にフィン3を介して外部空気と熱交換して外部空気を冷却する。このとき、蓄冷材収容空間R3が形成される側の冷媒通路R2の通路幅が、風上側冷媒通路R1の通路幅よりも広くなっているので、蓄冷材収容空間R3の形成によって風下側冷媒通路R2の断面が扁平化した場合であっても風下側冷媒通路R2の断面積が広く確保されて管内側圧力損失が低減されて冷房性能が向上する。
【0087】
また、冷媒の冷熱は、蓄冷材収容空間R3に収容されている蓄冷材に伝達して蓄冷材に冷熱が蓄えられる。このとき、風下側冷媒通路R2と蓄冷材収容空間S1及び蓄冷材収容空間S2とが隣り合っているので、冷媒の冷熱を蓄冷材に伝達するための伝熱面積が十分に広く確保されている。よって、冷媒の冷熱が効率よく蓄冷材に伝達する。
【0088】
一方、エンジンのアイドリングが停止すると圧縮機も停止するので、蓄冷エバポレータ1には冷媒が流入しなくなる。この状態で冷房を行う必要がある場合には、蓄冷エバポレータ1に外部空気が送風され、この外部空気は蓄冷材の冷熱によって冷却される。このとき、蓄冷材収容空間R3の断面が外部空気の流れ方向に長く、かつ、その外面にはフィン3が接触しているので、蓄冷材収容空間R3に収容されている蓄冷材の冷熱がフィン3に伝達し易い。これにより、蓄冷材に蓄えられている冷熱が効率よく外部空気に伝達する。
【0089】
以上説明したように、この実施形態によれば、蓄冷プレート40が冷媒管2における風下側冷媒通路R2の外面にろう付けされるので、蓄冷材収容空間R3が風下側冷媒通路R2に接近した状態で形成される。このため、風下側冷媒通路R2を流通する冷媒の冷熱が蓄冷材に伝達し易くなり、蓄冷効率が向上する。
【0090】
尚、外部空気を
図1等に示す方向とは反対側から流すようにしてもよい。この場合、風下側冷媒通路R2が風上側冷媒通路となり、この風上側冷媒通路の外面に蓄冷プレート40が接合されて蓄冷材収容空間R3が形成されることになる。
【0091】
蓄冷プレート40が冷媒管2の外面にろう付けされていることで、蓄冷材収容空間R3は風下側冷媒通路R2の外部に形成されることになる。従って、万が一、蓄冷プレート40にろう付け不良が発生した場合、蓄冷材収容空間R3に収容されている蓄冷材は風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2の外部へ漏出するだけであり、冷媒回路内に漏出することはない。
【0092】
また、蓄冷材収容空間R3を風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2の一方の外面にのみ形成するようにしたので、蓄冷プレート40を小型化することができ、その結果、蓄冷エバポレータ1を安価で軽量にすることができる。
【0093】
また、
図5や
図6に示すように、第1プレート側膨出部24の膨出方向先端面と、蓄冷プレート側膨出部41の膨出方向先端面とが同一面上に位置するように形成されている。これにより、外部空気の流れ方向上流側と下流側とで同じフィン3を使用して部品の共通化を図ることや、外部空気の流れ方向上流側から下流側までフィン3を一体成形して部品点数を削減することができる。
【0094】
(実施形態2)
図7〜
図9は、本発明の実施形態2に係るものであり、この実施形態2では、実施形態1のものに対し、インナーフィンを省略した点と、第1プレート側膨出部24及び第2プレート側上流部膨出部28にそれぞれ凸部24a、28aを形成した点とで異なっており、他の部分は実施形態1と同じであることから、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0095】
すなわち、
図7に示すように、第1プレート側膨出部24の膨出方向先端面には、風上側冷媒通路R1内に向けて突出する凸部24aが複数形成されている。凸部24aは、上下方向に並ぶように形成されており、突出方向先端側へ行くほど外径が小さくなっている。また、第2プレート側上流部膨出部28の膨出方向先端面には、風上側冷媒通路R1内に向けて突出する凸部28aが複数形成されている。凸部28aは、上下方向に並ぶように形成されており、突出方向先端側へ行くほど外径が小さくなっている。冷媒管2を左右方向から見たとき、第1プレート側膨出部24の凸部24aと、第2プレート側上流部膨出部28の凸部28aとが重複するように配置されており、凸部24a、28aの先端面同士が接触してろう付けされる。
【0096】
第1プレート側膨出部24及び第2プレート側上流部膨出部28にそれぞれ凸部24a、28aを形成したことで、風上側冷媒通路R1内を流れる冷媒の流れを乱すことができる。また、凸部24a、28aの先端面同士をろう付けすることで冷媒管2の耐圧性を向上させることができる。
【0097】
実施形態2の場合も実施形態1と同様に、蓄冷プレート40が冷媒管2の外面にろう付けされていることで、万が一、蓄冷プレート40にろう付け不良が発生した場合、蓄冷材収容空間R3に収容されている蓄冷材が冷媒回路内に漏出することはない。
【0098】
また、
図10に示す実施形態2の変形例のように、冷媒管2を外部空気の流れ方向と交差する方向から見たとき、蓄冷材収容空間R3が風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2の両方と重複するように形成してもよい。この変形例では、蓄冷プレート側膨出部41の外部空気流れ方向の寸法W5を、第2プレート側上流部膨出部28の外部空気流れ方向の寸法W3よりも長く設定している。これにより、風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2の冷媒の冷熱が蓄冷材に伝達し易くなり、蓄冷効率が向上する。
【0099】
尚、実施形態1において実施形態2の変形例のように蓄冷材収容空間R3が風上側冷媒通路R1及び風下側冷媒通路R2の両方と重複するように形成してもよい。
【0100】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。