(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
臼の中に充填された薬剤粉末の上にICチップを供給し、その後、前記ICチップの上から薬剤粉末を充填し、これらの薬剤粉末とICチップ部材を上杵と下杵にて上下から圧縮してICチップ入り錠剤を製造する製造方法であって、
前記ICチップは、ベース平面と、そのベース平面に対して一方側に他方側よりも突出した突部を有しており、
前記上杵は、外杵部と、その外杵部に相対的に昇降可能に配置した中杵部とを備え、
前記ICチップの供給前の前記臼内に供給した前記薬剤粉末に対し、前記中杵部を前記外杵部の下端から突出させて前記薬剤粉末の表面に窪み部を形成し、
前記窪み部に前記突部を嵌め込むようにして前記薬剤粉末の表面に前記ICチップを置き、
次いで、前記臼内に薬剤粉末を供給して前記ICチップを覆い、
前記中杵部の下端と前記外杵部の下端が連続した面を構成する姿勢の前記上杵と、前記下杵との間で前記臼内に充填された前記薬剤粉末を上下から圧縮することを特徴とする錠剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、錠剤の中に各種のICチップを埋め込んだICチップ入り錠剤が考えられている。このICチップは、センサチップとも称され、たとえば胃液に反応して電気を発生し、信号を送る機能を備える。この信号を受信することで、患者が錠剤を服用したか否かを検出し、飲み忘れや過剰服用をなくすことができる。また、ICチップに組み込む機能により、たとえば、心拍数、呼吸数、体位(身体の角度)その他の患者の重要データを自動的に収集し、患者の健康状態を追跡したり、投薬の効果をモニターしたりすることができる。
【0003】
係るICチップを錠剤の内部に埋め込むには、たとえば以下のような打錠行程を実施する。まず、円盤状の回転板の周縁に沿って複数設けた上下に貫通する孔部からなる臼と、その複数の臼の上下にそれぞれ昇降可能に配置した上杵と下杵を備えた打錠機を用いる。この打錠機は、回転板の回転に追従して、各臼の上下に配置した上杵と下杵も同期して回転移動する。そして、回転移動しながら以下に示す各工程を順次実行する。
【0004】
(1)下杵を臼に挿入し、薬剤粉末を臼に投入する。(2)臼の表面をすりきって余分な薬剤粉末を除去したのちに、下杵を少し下げて臼内に空間を作る。この少し下げる距離は、例えばICチップの厚みに応じた距離とする。(3)ICチップを臼内の空間内に供給して薬剤粉末の表面にICチップを載置し、その後、さらに下杵を下げる。これに伴い、臼内の薬剤粉末は全体的に下降移動し、それに追従してICチップも下降する。よって、臼の内部においてICチップの上面の上方に、所定の空間が形成される。(4)再び臼内に薬剤粉末を供給し、臼の表面をすりきって余分な薬剤粉末を除去する。 (5)上杵を下げて臼内に挿入し、薬剤粉末を上杵と下杵とで圧縮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した打錠機では、以下に示す問題を有する。すなわち、(3)の工程では、ICチップを臼内に落下供給するため、薬剤粉末の上に軽く乗った状態となる。そのため、下杵を下げたとき、薬剤粉末の下降に伴いICチップも下降するが、そのときICチップが横に移動し位置ずれを生じやすい。そして、ICチップに対して錠剤サイズが小さいと、ICチップの端が錠剤表面に露出してしまうおそれがある。
【0007】
係る課題を解決するため、たとえば(2)の行程で行う下杵の下降距離を大きくし、(3)の行程では下杵を下降移動しないようにすることが考えられる。しかし、この場合、臼の上端から薬剤粉末の上面までの距離が長くなり、ICチップを落下供給した際に、薬剤粉末上の適切な位置に、水平状態を保った姿勢で供給することができなくなるおそれがあり、安定供給ができないという新たな課題を生じる。
【0008】
また、(3)の下杵の下降移動に伴うICチップの位置ずれ対策として、たとえば特許文献1の段落[0076]に記載されているように、位置決めガイドの押し込み部で薬剤粉末の表面を凹状に窪ませ、その窪みにICチップをセットすることで位置ずれを防止することができる。しかしながら、上記の構造では、連続運転する打錠機には対応できない。すなわち、特許文献1に開示された技術は、ICチップの供給装置に当該位置決めガイドの押し込み部を設けている。そのため、回転板を回転移動させ、(3)の行程を行う対象の臼をICチップ供給装置の供給位置に至ると一時停止する。そして、その一時停止している際に、位置決めガイドの押し込み部を下降移動して臼内に進入させ、凹部を形成する必要がある。
さらに、凹部の内周寸法形状は、ICチップの外周寸法形状よりも大きいため、ICチップの位置ずれは凹部内で規制されるものの十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の打錠機は、(1)円周方向に沿って配置される貫通孔からなる複数の臼を備える回転板と、前記回転板の回転に同期して公転移動し、前記臼の下方から当該臼内に昇降可能に挿入配置される下杵と、前記回転板の回転に同期して公転移動し、前記臼の上側に配置される上杵と、前記臼内に薬剤粉末を充填供給する下層用薬剤粉末供給装置と、前記下層用薬剤粉末供給装置で供給された前記臼内の薬剤粉末の表面にICチップを供給するICチップ供給装置と、前記ICチップ供給装置で供給されたICチップの上方を覆うように前記臼内に薬剤粉末を充填供給する上層用薬剤粉末供給装置と、を備え、前記ICチップは、ベース平面と、そのベース平面に対して一方側に他方側よりも突出した突部を有しており、前記上杵は、外杵部と、その外杵部に相対的に昇降可能に配置した中杵部とを備え、前記中杵部の下端と前記外杵部の下端が連続した面を構成する第一姿勢と、その第一姿勢から前記中杵部が前記外杵部に対して相対的に下降移動し、前記中杵部の前記下端が前記外杵部の前記下端より下方に突出する第二姿勢をとり得るように構成し、前記第二姿勢の前記中杵部の下端は、前記下層用薬剤粉末供給装置で充填供給された薬剤粉末の表面よりも下方に位置するように構成し、前記ICチップ供給装置は、前記中杵部が前記薬剤粉末の表面よりも下方に位置することで設けられる前記薬剤粉末の前記表面の窪み部に、前記ICチップの前記突部を嵌め込むように前記供給を行うものであり、前記第一姿勢の前記上杵と、前記下杵との間で前記臼内の前記薬剤粉末を圧縮するように構成した。
【0010】
上杵を中杵部と外杵部の二重構造とし、中杵部を外杵部に対して相対的に昇降移動可能にしたため、中杵部を外杵部よりも下方に突出させた第二姿勢をとることで、中杵部の下端が臼内に充填されている薬剤粉末の表面を内方に押し込み、窪み部を形成する。上杵は回転板の回転に同期して公転移動するので、たとえば回転板ひいては臼が連続的に移動している状態でも、中杵部が昇降して臼の内部に進入して薬剤粉末の表面に窪み部を形成したり、形成後に臼から上方に離脱したりすることができる。そして、その窪み部の形成後にICチップを供給し、供給されたICチップの上からさらに薬剤粉末を充填し、その後圧縮するなどの通常の打錠処理を行うことでICチップ入りの錠剤を製造することができる。つまり、回転板を一時停止させることなく、連続運転しながらの錠剤の製造が可能となる。
【0011】
さらに、ICチップを供給するに際し、ICチップの突部を下にし、当該突部を中杵部により形成した窪み部に嵌め込む。ICチップを供給後は、ICチップの上方を薬剤粉末で覆うために、下杵を下降移動し臼内のICチップの上方に、薬剤粉末を供給する空間を確保する。この下杵の下降移動に伴い、薬剤粉末の表面位置並びにICチップも下降する。ICチップの突部が薬剤粉末の窪み部にはまっているため、この下降移動時に、ICチップが横方向に位置ずれすることもなく、薬剤粉末の表面に供給した位置をとどめることができる。よって、その後に行われる薬剤粉末の充填供給により、ICチップはきれいに薬剤粉末に埋め込まれる。
(2)前記窪み部は、前記ICチップの前記突部に対応する大きさとするとよい。(3)前記回転板は、連続回転するように構成すると良い。
【0012】
(4)本発明に係る錠剤の製造方法は、臼の中に充填された薬剤粉末の上にICチップを供給し、その後、前記ICチップの上から薬剤粉末を充填し、これらの薬剤粉末とICチップ部材を上杵と下杵にて上下から圧縮してICチップ入り錠剤を製造する製造方法であって、前記ICチップは、ベース平面と、そのベース平面に対して一方側に他方側よりも突出した突部を有しており、前記上杵は、外杵部と、その外杵部に相対的に昇降可能に配置した中杵部とを備え、前記ICチップの供給前の前記臼内に供給した前記薬剤粉末に対し、前記中杵部を前記外杵部の下端から突出させて前記薬剤粉末の表面に窪み部を形成し、前記窪み部に前記突部を嵌め込むようにして前記薬剤粉末の表面に前記ICチップを置き、次いで、前記臼内に薬剤粉末を供給して前記ICチップを覆い、前記中杵部の下端と前記外杵部の下端が連続した面を構成する姿勢の前記上杵と、前記下杵との間で前記臼内に充填された前記薬剤粉末を上下から圧縮するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ICチップの位置ずれが発生しにくく、連続打錠が行える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0016】
図1,
図2は、本発明に係る打錠機の好適な一実施形態を示している。本実施形態の打錠機は、ICチップを内蔵する錠剤を製造するためのものである。本実施形態で用いられICチップについて説明する。ICチップ30は、ベース平面と、そのベース平面に対して一方側に他方側よりも突出した突部を有している。具体的には、ICチップ30は、ベース平面となる円形のベースフィルム31の中心位置に、突部となるチップ本体32が装着され、さらにその表面が全体的にコーティングされた形態としている。ベースフィルム31は、例えば、直径3.5mmの円板状の外径からなり、例えば、チップ本体32を支持する機能や、外部と情報の送受を行うためのアンテナ機能などを備える。チップ本体32は、例えば1mm角の矩形状の外形をとり、内部に電子回路が組み込まれている。チップ本体32は、例えば、ICチップ30を埋め込む錠剤35を特定する情報を記憶する記憶部や、所定のタイミングでその記憶部に記憶された情報を送信する機能等を備える。そして、表面がコーティングされているため、突部の表面形状は、ベースフィルム31の平面部分から急峻に立ち上がるのではなく、チップ本体32の矩形状の外形寸法形状をベースに部分的になだらかな曲面を有する形態となる。
【0017】
上記のICチップ30を内蔵する錠剤を製造する本実施形態の打錠機は、複数の臼11を備える円盤状の回転板10と、各臼11の下側に配置される下杵12と、各臼11の上側に配置される上杵13と、回転板10の周縁の各位置に配置される各種の処理装置等を備える。
【0018】
回転板10は、図示省略する駆動モータに連携され、本実施形態では連続的に回転する。
臼11は、回転板10の周縁に沿って所定間隔・角度ごとに備え、
図2に示すように回転板10の上下に貫通する貫通孔である。下杵12は、臼11の下方から挿入され、上下方向に昇降移動可能に構成される。下杵12が臼11の貫通孔内に挿入されることで、臼11は有底となり、薬剤粉末15が充填可能となる。
【0019】
上杵13は、臼11の上方に昇降移動可能に配置される。上杵13が上方の待機位置にあるとき、その上杵13の下端は回転板10の上面よりも上方に位置し、臼11は上方解放し、薬剤粉末15が充填供給可能となる。また、上杵13が下降し、最下端の作動位置にあるとき、上杵13の下端は臼11内に進入する。これにより、臼11内に薬剤粉末15が充填されていると、当該薬剤粉末15が下杵12と上杵13で挟まれ、圧縮され、錠剤が製造される。
【0020】
下杵12と上杵13は、回転板10の回転と同期して公転移動し、対を構成するする臼11と対向した状態を維持しながら移動する。そして、下杵12と上杵13は、それぞれ公転移動しながら適宜位置で昇降する。この昇降のタイミングや、移動距離の制御は、たとえばカムなどを利用して行うと簡単かつ正確に行えるのでよい。
【0021】
ここで本実施形態では、
図2(d),(j),(k)等に示すように、上杵13は、円筒状の外杵部16と、その外杵部16の中心に設けた貫通孔に昇降可能に配置した中杵部17とを備えた二重構造で構成される。中杵部17は、その下端17aが外杵部16の下端16aと連続した湾曲面を構成する第一姿勢(
図2(j),(k)等参照)と、その第一姿勢から中杵部17が外杵部16に対して相対的に下降移動し、中杵部17の下端17aが外杵部16の下端16aより下方に突出する第二姿勢(
図2(d)等参照)をとる。この中杵部17の昇降移動の制御も、カムを利用して行うと良い。たとえば中杵部17の上端を外杵部16の上端よりも上方に突出させ、その突出させた中杵部17の上端をカムに連携させ、外杵部16の外周囲の適宜位置を別のカムに連携させることで、中杵部17と外杵部16を、公転移動させながら適宜のタイミングでそれぞれを昇降移動させ、適宜位置で第一姿勢と第二姿勢をとるようにする。また、たとえば中杵部17と外杵部16との間にコイルスプリング等の弾性体を配置し、中杵部17を外杵部16に対して相対的に上昇移動させる方向に付勢し、外部からの無負荷状態の時に第一姿勢をとるようにし、第二姿勢をとる区間だけ中杵部17を下方に付勢する機構・機能を設けるようにしても良い。
【0022】
第二姿勢にある中杵部17は、
図2(d)に示すように、臼11内に充填された薬剤粉末15の上面に窪み部15aを形成するためのものである。この窪み部15aは、ICチップ30のチップ本体32を挿入されるためのものであり、チップ本体32の外形状に対応した内形状となる。すなわち、本実施形態では、突部の表面形状は、チップ本体32は矩形状であるとともに、ICチップ30の表面がコーティングされてチップ本体32を覆った形状となるため、中杵部17の平断面がチップ本体32の平断面とほぼ等しい(コーティングの厚身を考慮して若干大きい)略矩形或いはそれを含む円形とする。後述するように、ICチップ30を臼11内に供給した際に、窪み部15a内にチップ本体32が嵌め込まれるようになる。
【0023】
また、第一姿勢にある中杵部17は、上述したように中杵部17の下端17aと外杵部16の下端16aとが連続した湾曲面を構成し、通常の上杵13として機能、すなわち、薬剤粉末15の上面・表面に接触し、下杵12との間で当該薬剤粉末15を圧縮する機能を有する。
【0024】
回転板10の周縁の各位置に配置される各種の処理装置等は、回転板10の回転方向に沿って順に、下層用薬剤粉末フィードシュー21、窪み部形成部22、ICチップ供給装置23、上層用薬剤粉末フィードシュー24、加圧ローラー25、排出シュート26を配置する。
【0025】
下層用薬剤粉末フィードシュー21は、臼11内に薬剤粉末15を充填供給する装置である。この下層用薬剤粉末フィードシュー21は、たとえば
図2(a)に示すように、臼11内の上方を覆うようなカバー21aを備え、図外の薬剤粉末15が貯留されているホッパーから排出されてきた薬剤粉末15を、臼11内に充填供給する機能を有する。たとえばこのカバー21aが固定設置されているとすると、回転板10の回転に伴い臼11も公転移動していき、カバーの設置領域から離脱する。図示するようにカバー21aの縦壁部分の下端が回転板10の上面に接触するようにするように構成することとで、当該縦壁部分の下端がスクレーパーの機能を発揮し、臼11の表面をすりきって余分な薬剤粉末15を除去した
図2(b)の状態となる。
【0026】
窪み部形成部22は、中杵部17を外杵部16から相対的に下降移動して上杵13を第二姿勢にする機構を備えている。この窪み部形成部22を通過中の下杵12と上杵13は、
図2(d)に示す状態となる。
【0027】
ICチップ供給装置23は、ICチップ30を臼11内に充填供給された薬剤粉末15の表面に載置する装置である。本実施形態では、ICチップ30の矩形状のチップ本体32を、薬剤粉末15の表面に設けた窪み部15aに嵌め込むように載置することから、たとえば、ICチップ30を吸着保持した状態で、供給するようにするとよい。このようにすることで、窪み部15aにチップ本体32を適切に嵌め込むとともに、ベースフィルム31を水平状態にした姿勢を保ち、薬剤粉末15の表面にきれいに載置することができる。なお、ICチップ供給装置23は、必ずしも吸着する必要はなく、クランパーで挟持したり、従来用いられている各種の機構等を用いることができる。
【0028】
上層用薬剤粉末フィードシュー24は、ICチップ30が載置された臼11内に薬剤粉末15を充填供給する装置である。この上層用薬剤粉末フィードシュー24は、たとえば
図2(h)に示すように、臼11内の上方を覆うようなカバー24aを備え、図外の薬剤粉末15が貯留されているホッパーから排出されてきた薬剤粉末15を、臼11内に充填供給する機能を有する。この上層用薬剤粉末フィードシュー24で充填供給された薬剤粉末15は、ICチップ30を埋めて錠剤の上層部分に相当する薬剤粉末15となる。
【0029】
下層用薬剤粉末フィードシュー21と同様に、カバー24aが固定設置されているとすると、回転板10の回転に伴い臼11も公転移動していき、カバー24aの設置領域から離脱すると、カバー24aの縦壁部分の下端がスクレーパーの機能を発揮し、臼11の表面をすりきって余分な薬剤粉末15を除去した
図2(i)の状態となる。
【0030】
加圧ローラー25は、下杵12と上杵13を互いに接近するように加圧するための装置で、予備圧ローラー27と本圧ローラー28を備える。予備圧ローラー27と本圧ローラー28は、それぞれ上下から一対の上杵13と下杵12を挟み込むとともに、所定の圧力をかける。これにより、例えば
図2(j)に示すように、臼11内に充填された薬剤粉末15は、第一姿勢にある上杵13と下杵12との間で、挟まれて圧縮される。予備圧ローラー27を経て本圧ローラー28と段階的に加圧され、ICチップ30入りの錠剤35が製造される。
【0031】
排出シュート26は、製造された錠剤35を排出する経路を構成する。この排出シュート26が設置された区域では、例えば
図2(k)に示すように、上杵13は回転板10の上面よりも上方に位置し、下杵12は臼11内で上昇し、その上端が回転板10の上面と面一になり、製造された錠剤35が臼11の外部に排出可能となる。そして臼11の外に排出された錠剤35は、排出シュート26を通って外部に排出される。
【0032】
次に、上述した打錠機の動作である本発明に係る錠剤の製造方法の好適な一実施形態を説明する。
図2は、回転板10の回転に伴いある一つの臼11が公転移動しながら各処理装置等の設置区間に至り、所定の処理を実施する態様を示している。また、各図において上杵13の記載を一部省略しているが、実際にはたとえば
図2(h)等に示すように、臼11の上方所定位置に待避した状態で存在している。
【0033】
まず、回転板10の回転に伴い、臼11は、下層用薬剤粉末フィードシュー21の設置区間を移動する(
図2(a)参照)。このとき、下杵12が臼11内に挿入配置され、その下杵12の上端が、回転板10の上面から一段下がった位置にある。この下がる距離は、錠剤35の下側半分の厚さに対応する距離である。そして、当該下層用薬剤粉末フィードシュー21の設置区間を移動中、下層用薬剤粉末フィードシュー21が臼11内に薬剤粉末15を充填供給する。
【0034】
そして、薬剤粉末15が充填された臼11が下層用薬剤粉末フィードシュー21の設置区間から離脱する際、下層用薬剤粉末フィードシュー21のカバー21aの縦壁部分の下端により回転板10の上面よりも上方に溢れている薬剤粉末15がすり切りされる(
図2(b)参照)。
【0035】
下層用薬剤粉末フィードシュー21の配置区間から出た臼11が、次の窪み部形成部22の配置区間に至るまでの間に、下杵12が所定量下降し、臼11内に充填された薬剤粉末15の表面が回転板10上面から少し低くなった状態となる(
図2(c)参照)。
【0036】
この状態で、臼11が窪み部形成部22に至り、この窪み部形成部22を通過中に中杵部17が下降移動し、その下端17aが薬剤粉末15の表面中央に接触して押し込み、窪み部15aを形成する(
図2(d)参照)。そして、臼11が窪み部形成部22から出ると、中杵部17は上昇して薬剤粉末15から離反する(
図2(e)参照)。上杵13ひいては中杵部17は、臼11とともに公転移動し、臼11の中心に一致した状態を維持する。よって、打錠機を連続運転させながら薬剤粉末15の表面中央に窪み部15aを形成することができる。また、窪み部15aの形成後に上昇移動した中杵部17は、その下端が外杵部16の下端16aと連続する第一姿勢に復帰する。
【0037】
次いで、臼11は、ICチップ供給装置23の配置区間に至る。そして臼11がICチップ供給装置23内を通過中に、当該ICチップ供給装置23により、下向き姿勢のICチップ30を薬剤粉末15上にセットする。このとき、ICチップ30の矩形状のチップ本体32を、薬剤粉末15の表面に設けた窪み部15aに嵌め込む(
図2(f)参照)。
【0038】
ICチップ供給装置23の配置区間から出た臼11が、次の上層用薬剤粉末フィードシュー24の配置区間に至るまでの間に、下杵12がさらに所定量下降し、臼11内に供給されたICチップ30が、回転板10の上面から一段下がった位置にある。この下がる距離は、錠剤35の上側半分の厚さに対応する距離である(
図2(g)参照)。そして、臼11が、上層用薬剤粉末フィードシュー24の設置区間を移動中、上層用薬剤粉末フィードシュー24が臼11内に薬剤粉末15を充填供給する。これにより、ICチップ30の上方に薬剤粉末15が充填されICチップ30が薬剤粉末15内に埋められる(
図2(h)参照)。
【0039】
そして、薬剤粉末15が充填された臼11が上層用薬剤粉末フィードシュー24の設置区間から離脱する際、上層用薬剤粉末フィードシュー24のカバー24aの縦壁部分の下端により回転板10の上面よりも上方に溢れている薬剤粉末15がすり切りされる(
図2(h)参照)。
【0040】
次いで、回転板10が回転して臼11が加圧ローラー25の配置区間を移動する。この移動中に、上杵13が下降移動し、上杵13と下杵12の間で薬剤粉末15を圧縮する(
図2(j)参照)。これにより、薬剤粉末15が固形化されてICチップ入りの錠剤35が製造される。その後、回転板10が回転して臼11が排出シュート26に至ると、さらに下杵12が上昇移動して、製造した錠剤35を排出する(
図2(k)参照)。