特許第6695778号(P6695778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695778
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20200511BHJP
   H02K 5/08 20060101ALI20200511BHJP
   F04D 5/00 20060101ALI20200511BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20200511BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H02K7/14 B
   H02K5/08 A
   F04D5/00 L
   F04D29/00 B
   F02M37/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-211393(P2016-211393)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-74732(P2018-74732A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河西 晃士
(72)【発明者】
【氏名】泉原 遼
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−002859(JP,A)
【文献】 特開2006−141113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
F02M 37/10
F04D 5/00
F04D 29/00
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料消費部に燃料を供給するためのウエスコポンプ(5)と、その駆動源として前記ウエスコポンプ(5)のインペラ(9)に連結されるブラシレスモータ(6)と、前記ウエスコポンプ(5)および前記ブラシレスモータ(6)を収容するハウジング(7)とを備え、前記ブラシレスモータ(6)におけるロータ(19)およびそれを囲繞するステータ(18)間に前記ウエスコポンプ(5)から吐出される燃料を流通させる燃料通路(32)が形成される燃料供給装置であって、
前記ロータ(19)が、前記ウエスコポンプ(5)の前記インペラ(9)に相対回転不能に連結される回転軸(25)に磁極部材(24)が同軸に結合されて構成されると共に、そのロータ(19)と協働して前記ブラシレスモータ(6)を構成する前記ステータ(18)が、環状ヨーク部(15a)の内周の周方向に等間隔をあけた複数箇所に半径方向内方に突出する歯部(15b)が設けられて成るステータコア(15)と、当該ステータコア(15)に装着されるボビン(17)と、前記歯部(15b)に対応した巻線部(16a)を有しつつ前記ボビン(17)を介して前記ステータコア(15)に巻装されるコイル(16)とで構成されて、前記ステータ(18)の一部が、前記巻線部(16a)および前記ボビン(17)の前記ウエスコポンプ(5)とは反対側の端部を被覆する第1の端部被覆部(42a)、並びに前記ウエスコポンプ(5)側の端部を被覆する第2の端部被覆部(42b)と、前記ステータコア(15)の周方向で隣接する前記巻線部(16a)間に充填されて前記第1および第2の端部被覆部(42a,42b) 間を連結する複数の連結部(42c)と、前記第1の端部被覆部(42a)から前記ハウジング(7)の外方へと延設されて前記燃料通路(32)から燃料を吐出する円筒状の吐出管(42aa)と、を有する樹脂製の被覆部材(42)で被覆され
記第1の端部被覆部(42a)に、前記歯部(15b)の内周に対応した内周を有する横断面円形の通路室(45)が、当該通路室(45)の一端部を前記吐出管(42aa)内に通じさせ、且つ他端部に有する開口部(45a)を前記燃料通路(32)に通じさせ形成されるとともに、その第1の端部被覆部(42a)に、前記ステータコア(15)の周方向で隣接する前記巻線部(16a)間に対応する位置で前記通路室(45)の内周から半径方向内方に突出しつつ前記回転軸(25)の軸方向に延びる複数の突条(46)が一体に形成され、
前記突条(46)の前記磁極部材(24)側の端部(46a)は、前記ボビン(17)の前記ウエスコポンプ(5)とは反対側の端部内に配置され、前記回転軸(25)の前記ウエスコポンプ(5)とは反対側の端部が、前記複数の前記突条(46)に軸受部材(28)を介して回転自在に支持され、前記軸受部材(28)の外周および前記通路室(45)の内周間で前記複数の突条(46)間には前記燃料通路(32)を前記吐出管(42aa)内に連通させる通路(47)がそれぞれ形成されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記突条(46)が、前記軸受部材(28)の外周に当接して支持する当接支持面(46b)と、前記回転軸(25)の軸線と直交する平坦面である前記端部(46a)および前記当接支持面(46b)間を結ぶ湾曲面(46c)とを有するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記吐出管(42aa)からの射出成形で形成される前記被覆部材(42)の前記複数の突条(46)が、前記吐出管(42aa)の壁部に連なって形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記吐出管(42aa)および前記通路室(45)が同軸に配置されることを特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
滑り軸受である前記軸受部(28)の軸方向長さ(L1)が、前記通路室(45)の軸線方向に沿う前記複数の前記突条(46)の長さ(L2)よりも短く設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料消費部に燃料を供給するためのウエスコポンプと、その駆動源として前記ウエスコポンプのインペラに連結されるブラシレスモータと、前記ウエスコポンプおよび前記ブラシレスモータを収容するハウジングとを備え、前記ブラシレスモータにおけるロータおよびそれを囲繞するステータ間に前記ウエスコポンプから吐出される燃料を流通させる燃料通路が形成される燃料供給装置であって、前記ロータが、前記ウエスコポンプの前記インペラに相対回転不能に連結される回転軸に磁極部材が同軸に結合されて構成されると共に、そのロータと協働して前記ブラシレスモータを構成する前記ステータが、環状ヨーク部の内周の周方向に等間隔をあけた複数箇所に半径方向内方に突出する歯部が設けられて成るステータコアと、当該ステータコアに装着されるボビンと、前記歯部に対応した巻線部を有しつつ前記ボビンを介して前記ステータコア巻装されるコイルとで構成されて、前記ステータの一部が、前記巻線部および前記ボビンの前記ウエスコポンプとは反対側の端部を被覆する第1の端部被覆部、並びに前記ウエスコポンプ側の端部を被覆する第2の端部被覆部と、前記ステータコアの周方向で隣接する前記巻線部間に充填されて前記第1および第2の端部被覆部間を連結する複数の連結部と、前記第1の端部被覆部から前記ハウジングの外方へと延設されて前記燃料通路から燃料を吐出する円筒状の吐出管とを有する樹脂製の被覆部材で被覆される燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような燃料供給装置は、特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5142463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示された燃料供給装置では、ステータの一部を被覆する樹脂製の被覆部材のうちウエスコポンプとは反対側でコイルの巻線部およびボビンを覆う端部被覆部に、ロータの回転軸のうちウエスコポンプとは反対側の端部が軸受部材を介して回転自在に支持されるとともに、回転軸の軸線とはオフセットした位置に軸線を有する吐出管が一体に形成されており、回転軸の軸線に直交する平面への投影図上で前記ボビンおよび前記吐出管の一部が重なるように配置されている。したがって被覆部材の型成形時に吐出管側に溶融樹脂の射出口がある場合には、ボビンのうち前記吐出管側の端部では、ステータコアの歯部にボビンを介して巻装されている巻線部の一部に、前記回転軸の軸線に沿う方向で射出される溶融樹脂による打撃力がステータコアの半径方向内方に向けて作用することに起因する不良品が生じてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、樹脂製の被覆部材を型成形する際に、ボビンのうちウエスコポンプとは反対側の端部で、射出される溶融樹脂の打撃力が巻線部に作用することによる不良品の発生を防止し得るようにした燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料消費部に燃料を供給するためのウエスコポンプと、その駆動源として前記ウエスコポンプのインペラに連結されるブラシレスモータと、前記ウエスコポンプおよび前記ブラシレスモータを収容するハウジングとを備え、前記ブラシレスモータにおけるロータおよびそれを囲繞するステータ間に前記ウエスコポンプから吐出される燃料を流通させる燃料通路が形成される燃料供給装置であって、前記ロータが、前記ウエスコポンプの前記インペラに相対回転不能に連結される回転軸に磁極部材が同軸に結合されて構成されると共に、そのロータと協働して前記ブラシレスモータを構成する前記ステータが、環状ヨーク部の内周の周方向に等間隔をあけた複数箇所に半径方向内方に突出する歯部が設けられて成るステータコア(と、当該ステータコアに装着されるボビンと、前記歯部に対応した巻線部を有しつつ前記ボビンを介して前記ステータコアに巻装されるコイルとで構成されて、前記ステータの一部が、前記巻線部および前記ボビンの前記ウエスコポンプとは反対側の端部を被覆する第1の端部被覆部、並びに前記ウエスコポンプ側の端部を被覆する第2の端部被覆部と、前記ステータコアの周方向で隣接する前記巻線部間に充填されて前記第1および第2の端部被覆部 間を連結する複数の連結部と、前記第1の端部被覆部から前記ハウジングの外方へと延設されて前記燃料通路から燃料を吐出する円筒状の吐出管と、を有する樹脂製の被覆部材で被覆され、前記第1の端部被覆部に、前記歯部の内周に対応した内周を有する横断面円形の通路室が、当該通路室の一端部を前記吐出管内に通じさせ、且つ他端部に有する開口部を前記燃料通路に通じさせ形成されるとともに、その第1の端部被覆部に、前記ステータコアの周方向で隣接する前記巻線部間に対応する位置で前記通路室の内周から半径方向内方に突出しつつ前記回転軸の軸方向に延びる複数の突条が一体に形成され、前記突条の前記磁極部材側の端部は、前記ボビンの前記ウエスコポンプとは反対側の端部内に配置され、前記回転軸の前記ウエスコポンプとは反対側の端部が、前記複数の前記突条に軸受部材を介して回転自在に支持され、前記軸受部材の外周および前記通路室の内周間で前記複数の突条間には前記燃料通路を前記吐出管内に連通させる通路がそれぞれ形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記突条が、前記軸受部材の外周に当接して支持する当接支持面と、前記回転軸の軸線と直交する平坦面である前記端部および前記当接支持面間を結ぶ湾曲面とを有するように形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記吐出管からの射出成形で形成される前記被覆部材の前記複数の突条が、前記吐出管の壁部に連なって形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記吐出管および前記通路室が同軸に配置されることを第4の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、滑り軸受である前記軸受部の軸方向長さが、前記通路室の軸線方向に沿う前記複数の前記突条の長さよりも短く設定されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、ステータコアの歯部相互間に対応する位置に配置されてステータコアの軸方向に延びる複数の突条が、被覆部材において吐出管が一体に突設される第1の端部被覆部に、第1の端部被覆部が有する通路室の内周から半径方向内方に突出して形成され、それらの突条の磁極部材側の端部がウエスコポンプとは反対側でボビンの端部内に配置されるので、吐出管側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材の型成形時に、前記ボビンのうち吐出管側の端部ではコイルの巻線部の一部に、ステータコアの半径方向外方に向けて溶融樹脂による打撃力が作用することになり、巻線部の一部がステータコアの歯部先端との間で短絡する状態が生じることを防止して成形不良品が生じることを抑制し、製品の歩留りが良くなることで燃料供給装置を廉価に製作することができる。しかも複数の突条間に通路がそれぞれ形成され、それらの通路でハウジング内の燃料通路が吐出管内に連通するので、燃料通路から吐出管内に燃料を円滑に流すことができる。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば、突条の磁極部材側の端部が回転軸の軸線と直交する平坦面であり、軸受部材の外周に当接して支持する当接支持面および前記端部間が湾曲面で結ばれるので、被覆部材の型成形時に、射出された溶融樹脂をステータコアの半径方向外方に向けてスムーズに方向変化させることができ、射出成形時における溶融樹脂へのエアの巻き込みを減少させて被覆部材の成形品質を良好なものとすることができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば、吐出管の壁部に連なって複数の突条が形成されるので、吐出管側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材の型成形時に、射出口から射出された溶融樹脂が前記突条46の前記端部46a側に向けて直進するようにして、コイルの巻線部の一部に溶融樹脂の打撃力をステータコアの半径方向外方に向けてより確実に作用させることができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば、吐出管および通路室が同軸に配置されるので、吐出管側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材の型成形時に、複数の突条に吐出管側から溶融樹脂を均等に流すことができ、突条にショートショットや焼けが生じることがない。
【0015】
さらに本発明の第5の特徴によれば、複数の突条および回転軸間に介装される滑り軸受の軸方向長さが、複数の突条の長さよりも短いので、滑り軸受から外れた部分では通路室内に複数の前記通路の流通面積の総和よりも大きな流通面積を確保するようにして、吐出管側に向けての燃料の流通をより円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】燃料供給装置の縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3】ボビン構成部材の斜視図である。
図4図1の4矢示部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付の図面を参照しながら説明すると、先ず図1において、たとえば燃料消費部である車載エンジンに燃料を供給するための燃料供給装置は、ウエスコポンプ5と、該ウエスコポンプ5を駆動するブラシレスモータ6とが、中空の円筒状である共通のハウジング7に内蔵、結合されて成る。
【0018】
前記ウエスコポンプ5は、放射状の多数の溝8を外周に有するインペラ9と、そのインペラ9の外周を臨ませるようにして円弧状に延びるポンプ室10を有して前記インペラ9を回転可能に収納するポンプケース11とを備える。前記ポンプケース11は、外側ケース半体12と、内側ケース半体13とで分割構成されており、外側ケース半体12および内側ケース半体13間に前記インペラ9が介装されるとともに前記ポンプ室10が画成される。
【0019】
前記ポンプケース11は、軸方向外方に臨んで前記ハウジング7の内面に形成される環状段部7aと、前記ハウジング7の前記ウエスコポンプ5側の端部に形成される第1のかしめ加工部7bとで挟持されるようにして、前記ハウジング7内に収容される。
【0020】
図2を併せて参照して、前記ブラシレスモータ6は、ステータコア15と、そのステータコア15に装着されるボビン17と、そのボビン17を介して前記ステータコア15に巻装されるコイル16とで構成されるステータ18と、そのステータ18内に配置されるロータ19とを備える。
【0021】
前記ステータコア15は、環状ヨーク部15aの内周の周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば6箇所に半径方向内方に突出する歯部15bが設けられて成り、このステータコア15には、3相(U相、V相、W相)に分かれた少なくとも一組の前記コイル16がボビン17を介して巻装されるものであり、前記コイル16は、前記歯部15bに対応した巻線部16aを有し、複数たとえば6つの巻線部16aの巻付け回数は同一に設定される。
【0022】
前記ボビン17は、前記ステータコア15および前記コイル16間に介装される絶縁部材であり、前記ステータコア15の軸線方向に分割することを可能として対をなす第1および第2のボビン構成部材38,39から成り、第1および第2のボビン構成部材38,39は樹脂製である。
【0023】
図3において、第1のボビン構成部材38は、前記ステータコア15の軸方向に沿う一端部(この実施の形態では前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部)に当接する端板部38aと、前記ステータコア15の前記歯部15bの周方向に沿う両側の側面ならびに周方向に隣接する前記歯部15b間で前記ステータコア15の前記環状ヨーク部15aの内周に当接しつつ前記ステータコア15の軸線方向に長く延びて前記端板部38aに基端部が連設される複数の胴部38bとを有するように形成される。
【0024】
前記胴部38bは、前記ステータコア15における前記歯部15bの周方向に沿う両側の側面に当接する一対の側板部分38baと、周方向に隣接する前記歯部15b間で前記環状ヨーク部15aの内周に当接して周方向に隣接する前記側板部分38ba間を連結する連結板部分38bbとを有しつつ、樹脂成形可能かつ所望の強度を有する範囲で比較的薄肉であるように設定された所定の厚みで形成されており、この実施の形態では略T字状に形成されている前記歯部15bの前記環状ヨーク部15a側の面にも当接するように前記側板部分38baが形成される。また前記端板部38aには、複数の前記胴部38bに対応した形状を有する開口部40が、前記コイル16の前記巻線部16aを挿通させるようにして形成される。
【0025】
図1に注目して、第2のボビン構成部材39は、前記ステータコア15の軸方向に沿う他端部(この実施の形態では前記ウエスコポンプ5側の端部)に当接するとともに前記開口部40に対応した形状の開口部41を有する端板部39aと、前記歯部15bの周方向に沿う両側の側面ならびに周方向に隣接する前記歯部15b間で前記環状ヨーク部15aの内周に当接しつつ前記ステータコア15の軸線方向に長く延びて前記端板部39aに基端部が連設される複数の胴部39bとを有するように形成され、この第2のボビン構成部材39の前記胴部39bは、第1のボビン構成部材38の前記胴部38bに対応した形状を有する。
【0026】
前記ステータ18の一部は樹脂製の被覆部材42で被覆される。この被覆部材42は、前記ステータ18の軸方向両端部をそれぞれ被覆する第1および第2の端部被覆部42a,42bならびに前記ステータ18の周方向で隣接する前記巻線部16a間に充填されて前記第1および第2の端部被覆部42a,42b間を連結する複数の連結部42cを有し、第1の端部被覆部42aは、前記ウエスコポンプ5とは反対側で前記ステータ18の端部を被覆するように形成され、第2の端部被覆部42bは、前記ウエスコポンプ5側で前記ステータ18の端部を被覆するように形成される。
【0027】
前記ブラシレスモータ6は、前記ウエスコポンプ5の前記ポンプケース11と、前記被覆部材42のうち第2の端部被覆部42bとの間に円板状のスペーサ23を介在させて前記ハウジング7に挿入され、前記ハウジング7の前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部に形成される第2のかしめ加工部7cを前記ウエスコポンプ5とは反対側で前記被覆部材42における第1の端部被覆部42aに係合することで、前記ブラシレスモータ6が前記ハウジング7に内蔵される。
【0028】
前記ロータ19は、周方向に複数の磁極に着磁される円筒状の磁極部材24が、該磁極部材24を同軸に貫通する回転軸25に結合されて成り、前記回転軸25の前記ポンプケース11側の端部は、前記スペーサ23を貫通し、前記ポンプケース11との間に第1の滑り軸受26を介在させて前記ポンプケース11内に突入される。前記ポンプケース11内で前記回転軸25にインペラ9が相対回転不能に取付けられるものであり、この実施の形態では、前記インペラ9の中央部には非円形の取付け孔27が設けられ、前記インペラ9に対応する部分で前記回転軸25の端部には、前記取付け孔27の断面形状に対応した断面形状の非円形部25aが設けられる。前記非円形部25aが前記取付け孔27に挿入されることで、前記インペラ9が前記回転軸25の多少の傾きを許す程度の遊びを持って前記回転軸25に相対回転不能に取付けられ、前記ポンプケース11の前記外側ケース半体12および前記内側ケース半体13で、前記インペラ9の軸方向に沿う移動が阻止される。
【0029】
前記ポンプケース11の前記内側ケース半体13には、前記回転軸25を同軸に囲繞する円筒状の軸受ハウジング13aが一体に設けられており、その軸受ハウジング13aおよび前記回転軸25間に、第1の滑り軸受26が介装される。
【0030】
前記ポンプケース11における前記外側ケース半体12には、前記ポンプ室10の周方向一端部に通じる吸込ポート29が形成され、前記内側ケース半体13には、前記ポンプ室10の周方向他端部に通じる吐出ポート30が形成される。しかも外側ケース半体12には、前記吸込ポート29に直接連通する円筒状の吸込管12aが外向きに一体に突設されるととともに、ポンプケース11内でのポンプ作用に伴って生じた気泡を排出するための脱気孔31が形成される。
【0031】
前記ブラシレスモータ6における前記ロータ19および前記ステータ18間には、前記吐出ポート30に通じる燃料通路32が形成され、前記被覆部材42のうち前記ウエスコポンプ5とは反対側で前記ステータ18の一端部を覆う第1の端部被覆部42aには、前記回転軸25の前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部が軸受部材である第2の滑り軸受28を介して回転自在に支持される。しかも前記第1の端部被覆部42aには、ポンプ作動時に高圧燃料を吐出するための円筒状の吐出管42aaが一体に突設され、この実施の形態で前記吐出管42aa内には、当該吐出管42aaの先端の燃料吐出口34側へのみ燃料の流動を許容する逆流防止用のチェック弁35が収納される。この場合、吐出管42aaは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の摩耗や割れを生じ難い樹脂素材によって形成されることが望ましく、このような吐出管42aa内には前記チェック弁35が着座可能な弁座面も一体に形成される。
【0032】
ところで前記被覆部材42は、前記ウエスコポンプ5とは反対側からの射出成形で形成されるものであり、前記吐出管42aaの中間部に形成されて外方に臨む環状段部43に、前記被覆部材42を成形する金型の射出口が配置されるものであり、前記被覆部材42の型成形時には矢印44で示すように溶融樹脂が前記金型のキャビティ内に射出されることになる。
【0033】
また前記被覆部材42のうち前記第1の端部被覆部42aには、前記ステータ18の内周に対応した内周を有する横断面円形の通路室45が当該通路室45の一端部を前記吐出管42aa内に通じさせるとともに前記ロータ19の前記磁極部材24側に臨む開口部45aを他端部に有するようにして形成される。
【0034】
しかも前記第1の端部被覆部42aには、前記ステータコア15の周方向で複数の前記歯部15b相互間に対応する位置で前記通路室45の内周から半径方向内方に突出しつつ前記ステータコア15の軸方向に延びる複数の突条46が前記通路室45の全長にわたって一体に形成され、それらの突条46の前記磁極部材24側の端部46aは、前記ボビン17の前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部内に配置される。すなわちこの実施の形態では、前記ボビン17における第1ボビン構成部材38において前記胴部38bを除く部分の半径方向内側に前記突条46の前記端部46aが配置される。
【0035】
前記ロータ19における前記回転軸25の前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部は、前記複数の前記突条46に第2の滑り軸受28を介して回転自在に支持され、前記第2の滑り軸受28の外周および前記通路室45の内周間で前記複数の突条46間には前記燃料通路32を前記吐出管42aa内に連通させる通路47がそれぞれ形成される。
【0036】
図4を併せて参照して、前記突条46は、前記第2の滑り軸受28の外周に当接して支持する当接支持面46bと、前記回転軸25の軸線と直交する平坦面である前記端部46aおよび前記当接支持面46b間を結ぶ湾曲面46cとを有するように形成される。
【0037】
また前記吐出管42aaからの射出成形で形成される前記被覆部材42の前記複数の突条46は、前記吐出管42aaの壁部に連なって形成されるものであり、前記吐出管42aaおよび前記通路室45は同軸に配置される。
【0038】
さらに第2の滑り軸受28の軸方向長さL1は、前記通路室45の軸線方向に沿う前記複数の前記突条46の長さL2よりも短く設定されており、前記吐出管42aa側で前記第2の滑り軸受28から外れた部分で前記通路室45内には、複数の前記通路47に共通に通じる共通通路室48が形成され、この共通通路室48は、前記チェック弁35の弁孔49に同軸に連通される。
【0039】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ウエスコポンプ5とは反対側からの射出成形で形成される被覆部材42のうちウエスコポンプ15と反対側の第1の端部被覆部42aに、ステータ18の内周に対応した内周を有する横断面円形の通路室45が当該通路室45の一端部を吐出管42aa内に通じさせ、且つ他端部に有する開口部45aを燃料通路32に通じさせて形成されるとともに、その第1の端部被覆部42aに、ステータコア15の周方向で隣接する前記巻線部16a間に対応する位置で前記通路室45の内周から半径方向内方に突出しつつ前記回転軸25の軸方向に延びる複数の突条46が一体に形成され、前記突条46の前記磁極部材24側の端部46aは、ボビン17のウエスコポンプ5とは反対側の端部内に配置され、回転軸25の前記ウエスコポンプ5とは反対側の端部が、前記複数の前記突条46に第2の滑り軸受28を介して回転自在に支持され、前記第2の滑り軸受28の外周および前記通路室45の内周間で前記複数の突条46間には燃料通路32を前記吐出管42aa内に連通させる通路47がそれぞれ形成されるので、吐出管42aa側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材42の型成形時に、ボビン17のうち吐出管42aa側の端部ではコイル16の巻線部16aの一部に、図1図2および図4の矢印50で示すように、前記突条46の磁極部材24側の端部46aの部分で向きが変わるようにしてステータコア15の半径方向外方に向けて溶融樹脂の打撃力が作用することになり、巻線部16aの一部が、ステータコア15の歯部15bのうちボビン17で覆われていない先端部との間で短絡する状態が生じることを防止して成形不良品が生じることを抑制し、製品の歩留りが良くなることで燃料供給装置を廉価に製作することができる。
【0040】
しかも複数の突条46間に形成される通路47でハウジング7内の燃料通路32が吐出管42aa内に連通するので、燃料通路32から吐出管42aa内への燃料の流通を円滑化することができる。また前記通路47が、前記通路室45の周方向に分散して配置されることで、ロータ19の磁極部材24を、前記被覆部材42の第1の端部被覆部42aにより近接させても燃料通路32から前記通路47への燃料の円滑な流通を確保することができ、燃料供給装置を軸方向でより小型化することができる。
【0041】
また前記突条46が、前記第2の滑り軸受28の外周に当接して支持する当接支持面46bと、前記回転軸25の軸線と直交する平坦面である前記端部46aおよび前記当接支持面46b間を結ぶ湾曲面46cとを有するように形成されるので、被覆部材42の型成形時に、射出された溶融樹脂をステータコア15の半径方向外方に向けてスムーズに方向変化させることができ、射出成形時における溶融樹脂へのエアの巻き込みを減少させて被覆部材42の成形品質をより良好なものとすることができる。
【0042】
また吐出管42aaからの射出成形で形成される前記被覆部材42の複数の前記突条46が、前記吐出管42aaの壁部に連なって形成されるので、吐出管42aa側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材42の型成形時に、射出口から射出された溶融樹脂が前記突条46の前記端部46a側に向けて直進するようにして、コイル16の巻線部16aの一部に溶融樹脂の打撃力をステータコア15の半径方向外方に向けてより確実に作用させることができる。
【0043】
また前記吐出管42aaおよび前記通路室45が同軸に配置されるので、吐出管42aa側に溶融樹脂の射出口がある被覆部材42の型成形時に、複数の突条46に吐出管42aa側から溶融樹脂を均等に流すことができ、突条46にショートショットや焼けが生じることがない。しかも前記突条46には、第2の滑り軸受28の外周から平坦な端部46aに向かって湾曲した湾曲面46cを有しているので、突条46に進入した溶融樹脂をステータコア15の半径方向外方に向けてスムーズに方向変化させることができ、溶融樹脂へのエアの巻き込みを減少させて被覆部材42の成形品質をより高めることができる。
【0044】
さらに第2の滑り軸受28の軸方向長さL1が、前記通路室45の軸線方向に沿う前記突条46の長さL2よりも短く設定されるので、第2の滑り軸受28から外れた部分では通路室45内に、複数の前記通路47に共通に通じる共通通路室48が形成されることになり、第2の滑り軸受28から外れた部分では通路室45内に複数の通路47の流通面積の総和よりも大きな流通面積を確保するようにして、吐出管42aa側に向けての燃料の流通をより円滑化することができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0046】
5・・・ウエスコポンプ
6・・・ブラシレスモータ
7・・・ハウジング
9・・・インペラ
15・・・ステータコア
15a・・・環状ヨーク部
15b・・・歯部
16・・・コイル
16a・・・巻線部
17・・・ボビン
18・・・ステータ
19・・・ロータ
24・・・磁極部材
25・・・回転軸
28・・・軸受部材である第2の滑り軸受
32・・・燃料通路
42・・・被覆部材
42a・・・第1の端部被覆部
42aa・・・吐出管
42b・・・第2の端部被覆部
42c・・・連結部
45・・・通路室
45a・・・開口部
46・・・突条
46a・・・端面
46b・・・当接支持面
46c・・・湾曲面
47・・・通路
L1・・・第2の滑り軸受の軸方向長さ
L2・・・突条の長さ
図1
図2
図3
図4