(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)イソフタル酸エステル化合物、テレフタル酸エステル化合物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物(ただし、メチルエステル基を有する化合物を除く)、および(C)メチルエステル基を有する化合物を含み、
(A)成分の主鎖構造がポリオキシアルキレン重合体のみからなり、
(C)成分が、飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
(C)成分が、不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステルおよび/または脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体(より好ましくは、ポリオキシアルキレン系重合体)が有する反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。
【0015】
反応性ケイ素基は下記一般式(1)の基として示される。
−SiR
13-nX
n (1)
(R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20の置換および/または非置換のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアラルキル基である。また、Xは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基または加水分解性基である。nは1〜3の整数である)
一般式(1)のR
1の例としては、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、クロロメチル基などの置換および/または非置換のアルキル基、シクロヘキシル基などシクロアルキル基、フェニル基などアリール基、ベンジル基などのアラルキル基などをあげることができる。これらの中ではメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお前記置換アルキル基には、クロロメチル基などのハロゲン置換アルキル基、メトキシメチル基などのアルコキシ置換アルキル基などが含まれる。
【0016】
加水分解性基の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などをあげることができる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで、取扱い易いという点からアルコキシ基がより好ましい。
【0017】
加水分解性基やヒドロキシ基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができる。加水分解性基やヒドロキシ基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
一般式(1)のnは、硬化性の点から2または3が好ましい。速硬化性が求められる場合にはn=3であることがより好ましく、貯蔵中の安定性が求められる場合にはn=2であることがより好ましい。
【0019】
反応性ケイ素基の例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基等のトリC
1-3アルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基等のジC
1-3アルコキシモノC
1-2アルキルシリル基;(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基等のジC
1-3アルコキシ置換C
1-2アルキルシリル基などをあげることができる。活性が高く良好な硬化性を得たい場合、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。また、良好な貯蔵安定性を得たい場合、ジメトキシメチルシリル基、トリエトキシシリル基が特に好ましい。また、トリエトキシシリル基およびジエトキシメチルシリル基は、反応性ケイ素基の加水分解反応により生成するアルコールがエタノールであるため、より高い安全性を有することから特に好ましい。
【0020】
本発明に用いる反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができるが、得られる組成物の硬化性や接着性に優れることから、主鎖骨格を構成する樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体、オレフィン系重合体、ジエン系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体などのビニル系重合体、グラフト重合体、ポリサルファイド系重合体、ポリアミド系重合体、ジアリルフタレート系重合体及び飽和炭化水素系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の重合体であることが好ましい。
【0021】
具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体等のオレフィン系重合体;ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレンとの共重合体、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等のジエン系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のビニルモノマーをラジカル的に単独又は共重合して得られるビニル系重合体;前記重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ビスフェノールA等のビスフェノール類と塩化カルボニルとを縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体等が例示される。
【0022】
中でも比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから、本発明の(A)成分の主鎖構造は、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体(以下、(メタ)アクリル酸エステル系重合体という)からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であることが望ましい。
【0023】
(A)成分である有機重合体のガラス転移温度は、特に限定は無いが、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が20℃を上回ると、冬季または寒冷地での粘度が高くなり作業性が悪くなる場合があり、また、硬化物の柔軟性が低下し、伸びが低下する場合がある。前記ガラス転移温度はDSC測定による値を示す。
【0024】
また、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体は透湿性が高く、1液型組成物にした場合に深部硬化性に優れ、更に接着性にも優れることから特に好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体は最も好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の中でも、ポリオキシプロピレン系重合体が特に好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の使用量は、例えば、(A)成分の合計100重量%中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましく、90重量%以上が特に好ましく、上限は特に限定されないが、100重量%以下が好ましく、95重量%以下であってもよい。
【0025】
特に、本発明の(A)反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、一般式(5)で示される繰り返し単位が好ましい。
−R
4−O− (5)
(R
4は炭素原子数1〜14の直鎖状または分岐アルキレン基である)
一般式(5)の例としては、−CH
2O−、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(C
2H
5)O−、−CH
2C(CH
3)
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−などをあげることができる。
【0026】
(A)成分の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位でもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなっていてもよい。(A)成分がシーラントや接着剤用途に使用される場合には、プロピレンオキシド単位を80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有する重合体から成るものが非晶質であることや比較的低粘度である点から好ましい。
【0027】
(A)成分の主鎖骨格となるポリオキシアルキレン重合体の製造方法として、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、US3278457号、US3278458号、US3278459号、US3427256号、US3427334号、US3427335号などに示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法などをあげることができる。
【0028】
これらの中では、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを反応させる重合法が分子量分布の狭い重合体を得られることから好ましい。
【0029】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn
3[Co(CN)
6]
2(亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体)などをあげることができる。また、これらにアルコールおよび/またはエーテルが有機配位子として配位した触媒も使用できる。
【0030】
開始剤としては、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物が好ましい。活性水素含有化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、数平均分子量500〜20,000の直鎖および/または分岐ポリエーテル化合物などをあげることができる。
【0031】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシドなどをあげることができる。
【0032】
(A)成分の主鎖骨格へ反応性ケイ素基を導入する方法は公知の方法で行うことができる。例えば、以下の方法をあげることができる。
【0033】
(方法I):分子中にヒドロキシ基などの官能基を有する重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物を反応させ、不飽和基を有する重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基を有する重合体を得る。次いで得られた不飽和基を有する重合体の不飽和基に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0034】
(方法I)で用いる反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物の例としては、塩化アリル、塩化メタリルなどをあげることができる。
【0035】
(方法I)で用いるヒドロシラン化合物の例としては、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランのようなハロゲン化シラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなアルコキシシラン;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシランなどをあげることができる。
【0036】
これらの中では、ハロゲン化シラン、アルコキシシランがより好ましく、アルコキシシランは、得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱い易いためにもっとも好ましい。
【0037】
アルコキシシランの中では、メチルジメトキシシランが、入手し易く、得られる重合体を含む硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が良好なためにより好ましい。また、トリメトキシシランは、得られる硬化性組成物の硬化性および復元性の点からより好ましい。
【0038】
(方法II):ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下で、(方法I)と同様にして得られた不飽和基を含有する重合体の不飽和基に、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を作用させて導入する。
【0039】
メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0040】
(方法III):分子中にヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基などの官能基を有する重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0041】
(方法III)の中で、末端にヒドロキシ基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法としては、特開平3−47825号に示される方法などをあげることができる。
【0042】
イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシランなどをあげることができる。
【0043】
トリメトキシシランなどのひとつのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランのような不安定な化合物が生じ、取り扱いが困難となることがある。しかし、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランではこのような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基など3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(方法II)または(方法III)を用いることがより好ましい。
【0044】
以上の方法のなかで、(方法I)、または(方法III)の中で末端にヒドロキシ基を有する重合体と、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られることから好ましい。さらに、(方法I)で得られる重合体は、(方法III)で得られる重合体を用いた場合よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物を得ることができるためより好ましい。また、(方法II)で得られる重合体はメルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(方法I)がもっとも好ましい。
【0045】
(A)成分の製造方法は、特公昭45−36319号、特公昭46−12154号、特開昭50−156599号、特開昭54−6096号、特開昭55−13767号、特開昭55−13468号、特開昭57−164123号、特公平3−2450号、US3632557号、US4345053号、US4366307号、US4960844号などの各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号、特開平3−72527号、特開平3−47825号、特開平8−231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下の高分子量で分子量分布が狭い反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体などをあげることができる。このような反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(A)成分の数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、6,000〜50,000が好ましく、10,000〜40,000がより好ましく、10,000〜30,000がさらに好ましく、10,000〜25,000が特に好ましい。数平均分子量が6,000未満では得られる硬化物の破断伸び特性が不十分となる傾向がある。数平均分子量が50,000を超えると、硬化性組成物の硬化速度の低下や作業性が悪くなる傾向にある。
【0047】
なお、(A)成分の数平均分子量は、反応性ケイ素基導入前の重合体前駆体を、JIS K 1557の水酸基価の測定方法と、JIS K 0070に規定されたヨウ素価の測定方法に基づいた滴定分析により求めた数平均分子量に相当する分子量(末端基分子量)として求めることができる。また、(A)成分をGPC測定により求めたポリスチレン換算分子量(GPC換算分子量)として求めることも可能である。
【0048】
(A)成分の反応性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1〜6個が好ましく、平均して1.3〜4個がより好ましく、平均して1.4〜3個がさらに好ましく、平均して1.4〜2個がもっとも好ましい。平均して1個未満になると、組成物の硬化が不十分であったり、硬化物の破断強度が不十分になる傾向にある。一方、平均して6個を越えると硬化物の破断伸びが不十分となる傾向にある。
【0049】
(A)成分の反応性ケイ素基は一つの分子鎖末端部位に1個または複数個導入されていてもよい。得られる硬化物の伸び物性と強度物性の両立の点から、反応性ケイ素基は一つの分子鎖末端部位に1個または2個導入されていることがより好ましく、1個導入されていることがもっとも好ましい。
【0050】
(A)成分の反応性ケイ素基の平均個数は、反応性ケイ素基が直接結合した炭素上のプロトンを
1H−NMR測定法により定量する方法により求めた平均個数として求めることができる。本発明における重合体中の反応性ケイ素基の平均個数の計算においては、前駆重合体に反応性ケイ素基を導入した際に、反応性ケイ素基が導入されなかった前駆重合体および副反応によって得られた重合体も、同一の主鎖構造を有する(A)成分の一部とみなして、反応性ケイ素基の一分子中の平均個数を計算する際の母数(分子数)に含めて計算を行う。
【0051】
(A)成分の反応性ケイ素基は、分子鎖の内部に側鎖として存在してもよく、分子鎖の末端に存在してもよい。シーラント、接着剤用途などに使用する場合には、反応性ケイ素基は分子鎖の末端に存在することがより好ましい。
【0052】
(A)成分の分子量分布(Mw/Mn)は、得られる組成物の粘度を下げる点から狭いほうが好ましく、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下が特に好ましい。
【0053】
(A)成分の主鎖構造は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖を有していてもよい。伸び物性に優れる硬化物を得たい場合には直鎖状であることが好ましい。強度に優れる硬化物を得たい場合には分岐鎖を有することが好ましい。分岐鎖を有する場合、原料の入手性や硬化物の強度と伸び物性の点から、分岐鎖数は1〜4個が好ましく、1個がもっとも好ましい。
【0054】
(A)成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
なお、本願発明の硬化性組成物において、(A)成分として、前記一般式(1)で表される反応性ケイ素基、前記一般式(4)で表される繰り返し単位を有し、さらに主鎖骨格中および/または反応性ケイ素基と主鎖骨格との結合部位に、−N(R
0)−C(=O)−、−N(R
0)−C(=O)−N(R
0)−、および/または−N(R
0)−COO−(ここで、R
0は水素基または有機基)から選ばれる結合基の中から少なくとも1つの結合基を有する重合体を使用することも可能である。このような重合体の例として、一般にシリル化ポリウレタン、SPURなどと呼ばれているものをあげることができる。
【0056】
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物の粘度調整および作業性改善、ならびに、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の硬度、引張り強度、伸びなどの機械特性を調整する目的で可塑剤を使用することができる。このような可塑剤として、フタル酸エステル可塑剤と比較して環境への負荷を低減できるとともに、同等の機械物性を得られることから、(B)イソフタル酸エステル化合物、テレフタル酸エステル化合物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物(ただし、メチルエステル基を有する化合物を除く)を使用することが好ましい。特にイソフタル酸エステル化合物、テレフタル酸エステル化合物が好ましい。
【0057】
本願では、「フタル酸」とはオルト位にカルボキシル基を持つベンゼンジカルボン酸(狭義のフタル酸)を示し、「フタレート」とはオルト位にカルボキシル基を持つベンゼンジカルボン酸のエステル化合物の総称を示すものとする。
【0058】
(B)成分は下記一般式(3)で表すことができる。
【0059】
R
2OOC−P−COOR
3 (3)
ここで、R
2、R
3はそれぞれ独立に、直鎖、分岐、および/または脂環式であって、炭素数が2〜20の炭化水素基、または、置換および/または非置換の芳香族炭化水素基を示す。Pは1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基および/またはシクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。R
2およびR
3の例としては、それぞれ独立に、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、イソノニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などをあげることができる。好ましくは分岐の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数5〜20、さらに好ましくは炭素数6〜15の分岐の炭化水素基である。
【0060】
さらに、(B)成分は入手性の点から下記一般式(4)で表されるものがより好ましい。
【0061】
R
2OOC−P
1−COOR
2 (4)
ここで、R
2は炭素数が2〜20の直鎖および/または分岐の炭化水素基を示す。P
1は1,3−フェニレン基および/または1,4−フェニレン基を示す。
【0062】
式(4)で採用されるR
2の例としては、式(3)のR
2例示の中から直鎖および/または分岐の炭化水素基に該当するものが選択され、具体的には、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、イソデシル基などをあげることができる。好ましいR
2は、式(3)の場合と同様である。
【0063】
(B)成分の例として以下に示す化合物をあげることができる。
【0064】
イソフタル酸エステル化合物の例としては、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジ−n−ブチル、イソフタル酸ジイソブチル、イソフタル酸ジ−n−ヘキシル、イソフタル酸ジ−n−オクチル、イソフタル酸ジイソオクチル、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(シージーエスター(株)製、商品名:DOIPとして入手可能)、イソフタル酸ジ−n−ノニル、イソフタル酸ジイソノニル、イソフタル酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0065】
テレフタル酸エステル化合物の例としては、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジ−n−ヘキシル、テレフタル酸ジ−n−オクチル、テレフタル酸ジイソオクチル、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(EASTMAN製、商品名:EASTMAN168として入手可能)、テレフタル酸ジ−n−ノニル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0066】
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物の例としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−ブチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−オクチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソオクチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−ノニル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0067】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物の例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−ブチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−n−オクチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソオクチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジーn−ノニル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0068】
これらのうち、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)が入手性の点から特に好ましい。また深部硬化性の点からは、テレフタル酸エステル化合物が好ましい。
【0069】
(B)成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(B)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、15〜110重量部がさらに好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を超えると硬化物の機械強度が不足する。
【0071】
本発明において(A)成分と(B)成分とを含む硬化性組成物では深部硬化性が十分でない場合がある。また、硬化性組成物を貯蔵後に硬化させると硬化遅延を起こす場合がある。本発明者らが検討したところによると、この深部硬化性と貯蔵後の硬化遅延を改善するためには、(C)メチルエステル基を有する化合物を使用することが有効であることがわかった。また(A)成分と(C)成分とを含む硬化性化合物では、硬化物の十分な引張特性が発揮されないといった問題が生じていたが、本発明者らが検討したところ、これを(B)成分と組み合わせて使用することにより、上記の引張特性等の効果が改善されることがわかった。
【0072】
(C)成分としては、(C−1)重合体ではないメチルエステル基を有する化合物、または(C−2)メチルエステル基を有する重合体をあげることができる。メチルエステル基の数は、一分子中、例えば、1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個である。
【0073】
(C−1)成分の分子量は1,000以下が好ましく、60〜750がより好ましく、100〜500がさらに好ましく、100〜300がもっとも好ましい。
【0074】
(C−1)成分の例としては、飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族カルボン酸メチルエステル、芳香族ジカルボン酸のモノまたはジメチルエステルなどをあげることができる。
【0075】
飽和脂肪族カルボン酸メチルエステルの例としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロパン酸メチル、ブタン酸メチル、n−ペンタン酸メチル、イソペンタン酸メチル、ネオペンタン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ドデカン酸メチル、テトラデカン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル、オクタデカン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチルなどをあげることができる。
【0076】
不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステルの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リシノール酸メチル、O−アセチルリシノール酸メチル、オレイン酸メチル(分子量296.49)とリノール酸メチル(分子量294.47)との混合物(築野食品工業(株)製、商品名:TFE−MEDとして入手可能)などをあげることができ、好ましくは炭素数が4〜17程度、より好ましくは炭素数が10〜17程度の不飽和脂肪酸のメチルエステルが挙げられる。
【0077】
脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルの例としては、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチルなどをあげることができ、好ましくは炭素数が3〜10程度、より好ましくは炭素数が4〜8程度、最も好ましくは炭素数が5〜7程度の直鎖脂肪族−α,ω−ジカルボン酸のジメチルエステルが挙げられる。
【0078】
芳香族カルボン酸メチルエステルの例としては、安息香酸メチルなどをあげることができる。
【0079】
芳香族ジカルボン酸のモノまたはジメチルエステルの例としては、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2−メチルテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸(2−エチルヘキシル)メチルなどをあげることができる。
【0080】
(C−2)成分の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、メチルエステル置換スチレン、マレイン酸ジメチル、マレイン酸メチルエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸メチルエチルなどの単量体を重合体の構成単位として含む重合体および/または共重合体をあげることができる。
【0081】
(C−2)成分が(メタ)アクリル酸メチルを重合体の構成単位として含む共重合体である場合、(メタ)アクリル酸メチル以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0082】
(メタ)アクリル酸メチル以外の構成単位の例としては、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素原子数2以上)エステルおよび/またはビニル系モノマーなどの重合性モノマーをあげることができる。
【0083】
(メタ)アクリル酸アルキル(炭素原子数2以上)エステルの例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などをあげることができる。
【0084】
ビニル系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ネオペンタン酸ビニル、安息香酸ビニル、3−フェニルアクリル酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;エチレン、プロピレンなどのアルケン化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどをあげることができる。
【0085】
なお、上記において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0086】
(C−2)成分を得るための重合方法としては、一般的なフリーラジカル重合;メルカプト基を有する化合物などの連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合;特表昭57−502171号、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号、または特表平10−511992号などに記載の高温高圧下での連続重合;WO96/30421号、WO97/18247号、WO98/01480号、WO98/40415号、特開平9−208616号、特開平8−41117号などに記載の原子移動ラジカル重合のような各種の制御ラジカル重合などの公知の重合方法を使用することができる。
【0087】
(C−2)成分の数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)としては500〜50,0000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、1,000〜8,000が特に好ましい。
【0088】
(C)成分が低分子化合物である場合、一般的に粘度が低い。このため硬化性組成物の作業性の点から(C)成分の分子量は100〜300が好ましい。
【0089】
(C)成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
本発明の課題である深部硬化性、貯蔵後の硬化遅延の改善効果の点から、(C−1)成分の使用が好ましく、飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステル、および脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルから選ばれる少なくとも1種のメチルエステル基を有する化合物の使用がより好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステルおよび/または脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルの使用がもっとも好ましい。また、接着性の点から不飽和脂肪族カルボン酸メチルエステルがもっとも好ましい。
【0091】
(C)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、15〜110重量部がさらに好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。5重量部未満では深部硬化性、及び貯蔵後の硬化遅延の改善効果が発現しなくなり、150重量部を超えると硬化物の機械強度が不足する。
【0092】
なお、(C)成分は本発明の硬化性組成物において可塑剤としての役割をする場合もある。このため(B)成分と(C)成分との合計使用量は、(A)成分100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、15〜110重量部がさらに好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。
【0093】
(B)成分と(C)成分との割合(重量%)は、5/95〜95/5が好ましく、55/45〜90/10がより好ましく、65/35〜85/15がもっとも好ましい。
【0094】
アジピン酸ジメチルのような沸点の低い(C)成分を多量に使用すると硬化物が肉やせする場合がある。また、脂肪族カルボン酸メチルエステルや脂肪族ジカルボン酸ジメチルエステルは耐候性が劣る場合がある。このため、(B)成分と(C)成分との割合は(B)成分が多いほうがより好ましい。
【0095】
本発明の硬化性組成物には、(B)成分または(C)成分以外の可塑剤を使用することもできる。
【0096】
(B)成分または(C)成分以外の可塑剤の例としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(BASF製、商品名:Hexamoll DINCHとして入手可能)などの非フタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多価カルボン酸エステル;オレイン酸ブチルなどの不飽和脂肪酸エステル;アルキルスルホン酸フェニルエステル(LANXESS製、商品名:Mesamollとして入手可能);トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル;トリメリット酸エステル;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤などをあげることができる。
【0097】
また、高分子可塑剤を使用することもできる。高分子可塑剤を使用すると低分子の可塑剤を使用した場合と比較して、初期の物性を長期にわたり維持することができる。さらに得られる硬化物にアルキド塗料を塗付した場合の乾燥性(塗装性)を改良することができる。
【0098】
高分子可塑剤の例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上、さらには1,000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、あるいはこれらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル化合物;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのポリスチレン系可塑剤;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレンなどをあげることができる。
【0099】
高分子可塑剤の中では、(A)成分と相溶するものが好ましい。この点から、ポリエーテルやビニル系重合体が好ましい。また、ポリエーテルを可塑剤として配合すると、表面硬化性および深部硬化性が改善されることから好ましく、中でもポリプロピレングリコールがより好ましい。また、相溶性および耐候性、耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル重合体および/またはメタクリル重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体がより好ましい。この重合体の合成には、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がより好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温・高圧で連続塊状重合によって得るSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。
【0100】
高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15,000が好ましく、800〜10,000がより好ましく、1,000〜8,000がさらに好ましく、1,000〜5,000が特に好ましく、1,000〜3,000がもっとも好ましい。数平均分子量が500未満では熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できなくなる。また、数平均分子量が15,000を超えると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。
【0101】
高分子可塑剤の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.80未満が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下がもっとも好ましい。
【0102】
高分子可塑剤の数平均分子量は、ビニル系重合体の場合はGPC法で、ポリエーテル系重合体の場合は末端基分析法で測定される。また、分子量分布はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0103】
また、高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有していても、有していなくてもよい。反応性ケイ素基を有する場合、反応性可塑剤として作用し、硬化物からの可塑剤の移行を防止できる。反応性ケイ素基有する場合、1分子に対し平均して1個以下、さらには0.8個以下が好ましい。
【0104】
これら(B)成分または(C)成分以外の可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
(B)成分または(C)成分以外の可塑剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0〜4重量部、特に0重量部であってもよいが、5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、15〜110重量部がさらに好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。さらには、可塑剤全体の使用量((B)成分、(C)成分、(B)成分および(C)成分以外の可塑剤の合計)は、(A)成分100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、15〜110重量部がさらに好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。
【0106】
本発明の硬化性組成物には、(A)成分の硬化を促進する目的で硬化触媒を使用することができる。
【0107】
硬化触媒としては、4価の有機錫化合物、カルボン酸、カルボン酸金属塩、アミン化合物、錫以外の金属化合物などをあげることができる。
【0108】
4価の有機錫化合物としては、ジメチル錫化合物、ジブチル錫化合物、ジオクチル錫化合物などをあげることができる。
【0109】
ジメチル錫化合物の例としては、ジメチル錫ジアセテート、ジメチル錫ビス(アセチルアセトナート)などをあげることができる。
【0110】
ジブチル錫化合物の例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(n−オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫オキサイドとジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエートなどのエステル化合物との反応物などをあげることができる。
【0111】
ジオクチル錫化合物の例としては、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(n−オクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(イソオクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫オキサイドとジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエートなどのエステル化合物との反応物などをあげることができる。
【0112】
カルボン酸の例としては、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸などをあげることができる。
【0113】
カルボン酸金属塩の例としては、オクチル酸錫、2−エチルヘキサン酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、バーサチック酸錫、ネオデカン酸錫などの2価のカルボン酸錫;カルボン酸鉛、カルボン酸ビスマス、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸ハフニウム、カルボン酸バナジウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄などをあげることができる。また、2価のカルボン酸錫とラウリルアミンなどのアミン化合物との反応物および/または混合物などをあげることができる。
【0114】
アミン化合物の例としては、ラウリルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、1−(o−トリル)ビグアニド、グアニジン、1−フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などをあげることができる。
【0115】
錫以外の金属化合物の例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物などをあげることができる。
【0116】
硬化触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
硬化触媒としては、4価の有機錫化合物が好ましく、ジブチル錫化合物、ジオクチル錫化合物が強度が速く発現することからより好ましい。
【0118】
硬化触媒の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.05〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、1〜7重量部がさらに好ましく、1.5〜5重量部がもっとも好ましい。0.05重量部未満では硬化速度が遅くなる傾向にある。一方、20重量部を超えると硬化速度が速くなりすぎるために良好な硬化物を得ることができない。
【0119】
本発明の硬化性組成物には充填剤を使用することができる。充填剤としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックなどの補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスマイクロバルーン、フェノール樹脂および塩化ビニリデン樹脂などの有機マイクロバルーン、PVC粉末やPMMA粉末などの樹脂粉末などの充填剤;ガラス繊維およびフィラメントなどの繊維状充填剤などがあげられる。充填剤の使用量は(A)成分の重合体100重量部に対して1〜250重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましい。
【0120】
これら充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を、(A)成分100重量部に対し、1〜250重量部が好ましく、10〜200重量部使用することがより好ましい。
【0121】
また、低強度で破断伸びの大きい硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を、(A)成分100重量部に対して5〜200重量部使用することが好ましい。
【0122】
なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きくなる。もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を混合使用してもよい。炭酸カルシウムを使用する場合、表面処理炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムなどの粒径の大きい炭酸カルシウムとを併用することが好ましい。表面処理炭酸カルシウムの粒径は0.5μm以下が好ましく、表面処理は脂肪酸や脂肪酸塩で処理されていることが好ましい。また、粒径が大きい炭酸カルシウムの粒径は1μm以上が好ましく、表面処理されているものおよび/または表面処理されていないもののどちらでも使用することができる。
【0123】
本発明の硬化性組成物には、垂れを防止し、作業性を改善するためにチクソ性付与剤を使用することができる。
【0124】
チクソ性付与剤の例としては、ポリアミドワックス;水添ヒマシ油誘導体;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸などをあげることができる。また、特開平11−349916号公報に記載されているような粒子径10から500μmのゴム粉末や、特開2003−155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な硬化性組成物を得ることができる。
【0125】
チクソ性付与剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0126】
チクソ性付与剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。
【0127】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の表面耐候性を高める目的で紫外線吸収剤を使用することができる。
【0128】
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系および金属キレート系化合物などをあげることができ、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。
【0129】
ベンゾトリアゾール系の例としては、Tinuvin P、Tinuvin1130、Tinuvin99−2、Tinuvin928、Tinuvin326、Tinuvin329(いずれもBASF製)などの市販品として入手可能である。
【0130】
紫外線吸収剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0131】
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0132】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の光酸化劣化を防止する目的で光安定剤を使用することができる。
【0133】
光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などをあげることができ、特にヒンダードアミン系が好ましい。
【0134】
ヒンダードアミン系の例としては、Tinuvin770、Tinuvin770DF、Tinuvin292、Tinuvin5050、Tinuvin5151、Tinuvin5060(いずれもBASF製)などの市販品として入手可能である。
【0135】
光安定剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0136】
光安定剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部が特に好ましい。
【0137】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の耐候性を高める目的で酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。
【0138】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系などをあげることができ、特にヒンダードフェノール系が好ましい。
【0139】
ヒンダードフェノール系の例としては、IRGANOX1010、IRGANOX1035(いずれもBASF製)などの市販品として入手可能である。
【0140】
酸化防止剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0141】
酸化防止剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0142】
本発明の硬化性組成物には、ノンプライマー条件またはプライマー処理条件下で、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材;塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材などの各種被着体との接着性を改善する目的で、接着性付与剤を使用することができる。
【0143】
接着性付与剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、イソシアネートシラン、メルカプトシラン、ビニル型不飽和基含有シラン、ハロゲン含有シラン、イソシアヌレートシランなどをあげることができる。
【0144】
アミノシランの例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−(β−(β−アミノエチル)アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチルアミノ)−β−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(β−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのアミノ基含有シラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのケチミン型シラン化合物などをあげることができる。
【0145】
エポキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0146】
イソシアネートシランの例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシランなどをあげることができる。
【0147】
メルカプトシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0148】
カルボキシシランの例としては、β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0149】
ビニル型不飽和基含有シランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシランなどをあげることができる。
【0150】
ハロゲン含有シランの例としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0151】
イソシアヌレートシランの例としては、トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなどをあげることができる。
【0152】
これら接着性付与剤の中で、良好な接着性を確保するためには、アミノシランまたはエポキシシランが好ましく、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランがより好ましく、特に、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0153】
接着性付与剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
接着性付与剤の使用量は、(A)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、1〜7重量部が特に好ましい。接着性付与剤の使用量が0.01重量部を下回ると、接着性が十分に得られない場合がある。使用量が20重量部を超えると、硬化物がもろくなり十分な強度が得られなくなったり、また硬化速度が遅くなる場合がある。
【0155】
本発明の硬化性組成物の作業性向上や硬化物表面の艶を消すために、有機バルーン、無機バルーンを使用することができる。これらバルーンは表面処理されていてもよい。バルーンは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。作業性向上には、バルーンの粒径は0.1mm以下が好ましい。硬化物表面の艶を消すためには、5〜300μmが好ましい。
【0156】
バルーンは、球状体充填剤で内部が中空のものである。このバルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、および、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの有機系の材料があげられるが、これらのみに限定されるものではなく、無機系の材料と有機系の材料とを複合させたり、また、積層して複数層を形成させたりすることもできる。無機系の、あるいは有機系の、またはこれらを複合させるなどしたバルーンを使用することができる。また、使用するバルーンは、同一のバルーンを使用しても、あるいは異種の材料のバルーンを2種以上混合して使用することもできる。さらに、バルーンは、その表面を加工ないしコーティングしたものを使用することもできるし、またその表面を各種の表面処理剤で処理したものを使用することもできる。例えば、有機バルーンを炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどでコーティングしたり、無機バルーンを接着性付与剤で表面処理することなどがあげられる。
【0157】
バルーンの具体例は特開平2−129262号、特開平4−8788号、特開平4−173867号、特開平5−1225号、特開平7−113073号、特開平9−53063号、特開平10−251618号、特開2000−154368号、特開2001−164237号、WO97/05201号などの各公報に記載されている。
【0158】
本発明の硬化性組成物には、シリケートを用いることができる。シリケートは架橋剤として作用し、(A)成分の復元性、耐久性、および、耐クリープ性を改善する機能を有する。さらに、接着性および耐水接着性、高温高湿条件での接着耐久性を改善する効果も有する。
【0159】
シリケートとしてはテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物をあげることができる。
【0160】
シリケートの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物などをあげることができる。
【0161】
復元性、耐久性、および、耐クリープ性の改善効果の点からは、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物の使用がより好ましい。
【0162】
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、通常の方法でテトラアルコキシシランに水を添加し、部分加水分解させて縮合させたものをあげることができる。また、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物は、市販のものを用いることができる。このような縮合物の例として、メチルシリケート51、エチルシリケート40(いずれもコルコート(株)製)などの市販品をあげることができる。
【0163】
シリケートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
シリケートの使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0165】
本発明の硬化性組成物には、粘着付与剤を使用することができる。
【0166】
粘着付与樹脂の例としては、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものを使用することができる。
【0167】
粘着付与樹脂の例としては、スチレン系ブロック共重合体、その水素添加物、フェノール樹脂、カシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂、テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂など)、水素添加石油樹脂、ジクロペンタジエン系石油樹脂などをあげることができる。
【0168】
スチレン系ブロック共重合体およびその水素添加物の例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)などをあげることができる。
【0169】
粘着付与樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0170】
粘着付与樹脂の使用量は、(A)成分100重量部に対して、5〜1,000重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
【0171】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の引張特性や硬度を調整する目的で、物性調整剤を使用することができる。
【0172】
物性調整剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの反応性官能基を有するアルコキシシラン;シリコーンワニス;ポリシロキサンなどをあげることができる。
【0173】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。
【0174】
加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物の例としては、特開平5−117521号公報に記載の化合物;ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどのアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのトリアルキルシラノールを生成するシリコン化合物を生成する化合物;特開平11−241029号公報に記載のトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどのヒドロキシ基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのトリアルキルシラノールを生成するシリコン化合物を生成する化合物;特開平7−258534号公報に記載のオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのトリアルキルシラノールを生成するシリコン化合物を生成する化合物;特開平6−279693号公報に記載の架橋可能な反応性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体、などをあげることができる。
【0175】
物性調整剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0176】
物性調整剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0177】
本発明の硬化性組成物には1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用することができる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。
【0178】
エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル、脂環式エポキシ化合物、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物およびそれらの混合物などをあげることができる。
【0179】
エポキシ基を有する化合物の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカーボキシレート(新日本理化(株)製、商品名:サンソサイザーE−PS)、エポキシオクチルステアレ−ト、エポキシブチルステアレ−トなどがあげられる。これらのなかではサンソサイザーE−PSが特に好ましい。
【0180】
エポキシ基を有する化合物の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.5〜50重量部が好ましい。
【0181】
本発明の組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用により短時間で分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂またはそれらを含む組成物など多くのものが知られており、市販の任意のものを使用することができる。
【0182】
光硬化性物質としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル、アジド化樹脂などをあげることができる。
【0183】
不飽和アクリル系化合物の例としては、(メタ)アクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマーまたはそれらの混合物であって、プロピレン(またはブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの単量体または分子量10,000以下のオリゴエステルをあげることができる。
【0184】
ポリケイ皮酸ビニルとしては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したもののほか、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体をあげることがでる。
【0185】
アジド化樹脂としては、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液のほか、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁から、第106頁から、第117頁から)に詳細な例示がある。これらを単独または混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0186】
光硬化性物質の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。0.1重量部未満では耐候性を高める効果はなく、20重量部を超えると硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じる傾向がある。
【0187】
本発明の組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質は空気中の酸素と反応することが可能な不飽和化合物をあげることがでる。酸素硬化性物質は空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成することにより、硬化物表面のべたつき、硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。
【0188】
酸素硬化性物質の例としては、キリ油、アマニ油などの乾性油、該化合物を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5からC8ジエンの重合体などの液状重合体、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主成分となるように共重合させてえられるNBR、SBRなどの液状共重合体、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などをあげることができる。
【0189】
酸素硬化性物質は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの中ではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。また、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウムなどの金属塩や、アミン化合物などをあげることができる。
【0190】
酸素硬化性物質の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部を超えると硬化物の引張り物性などが損なわれる傾向がある。
【0191】
なお、特開平3−160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのが好ましい。
【0192】
本発明の硬化性組成物には、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛などの難燃剤を添加することができる。上記難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0193】
難燃剤は(A)成分100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
【0194】
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物または硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を使用してもよい。このような添加物の例としては、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などをあげることができる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに記載されている。
【0195】
硬化性組成物には、全ての配合剤を混合しておく1液型組成物と、主成分のポリマーと硬化触媒などを別の梱包により分けて保存しておき、使用直前に混合して使用する2液型組成物がある。本発明の硬化性組成物は、いずれのタイプにも使用することが可能である。しかし、使用が容易であることから1液型組成物として使用されることが適している。
【0196】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法または減圧脱水法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好適である。かかる脱水乾燥法に加えて、n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加し、水と反応させて脱水してもよい。また、3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。アルコキシシラン化合物やオキサゾリジン化合物、および、イソシアネート化合物の添加により、貯蔵安定性が向上する。
【0197】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1から20重量部、好ましくは0.5から10重量部の範囲が好ましい。
【0198】
本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法を用いることができる。
【0199】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
【0200】
本発明の硬化性組成物は、粘着剤、建造物・船舶・自動車・道路などのシーリング材、接着剤、型取り剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに使用できる。本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、柔軟性および接着性に優れることから、これらの中でも、シーリング材または接着剤として用いることがより好ましい。
【0201】
また、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、弾性接着剤、コンタクト型接着剤、スプレー型シール材、クラック補修材、タイル張り用接着剤、粉体塗料、注型材料、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材、食品包装材、サイジングボードなどの外装材の目地用シーリング材、コーティング材、プライマー、電磁波遮蔽用導電性材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、電気・電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、各種成形材料、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤などの様々な用途に利用可能である。
【0202】
さらに、単独あるいはプライマーの使用によりガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などのような広範囲の基材に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。また、本発明の硬化性組成物は、内装パネル用接着剤、外装パネル用接着剤、タイル張り用接着剤、石材張り用接着剤、天井仕上げ用接着剤、床仕上げ用接着剤、壁仕上げ用接着剤、車両パネル用接着剤、電気・電子・精密機器組立用接着剤、ダイレクトグレージング用シーリング材、複層ガラス用シーリング材、SSG工法用シーリング材、または、建築物のワーキングジョイント用シーリング材、アスファルトを併用した防水材としても使用可能である。
【0203】
なお本願は、2014年3月5日に出願された日本国特許出願第2014−042768号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年3月5日に出願された日本国特許出願第2014−042768号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0204】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0205】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールと分子量約3,000のポリオキシプロピレントリオールの1/1(重量比)混合物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約19,000の水酸基末端ポリプロピレンオキシドを得た(送液システム:東ソー製HLC−8120のGPC、カラム:東ソー製TSK−GEL Hタイプ、溶液:THFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)。この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加した後、メタノールを留去し、さらに水酸基に対して1.7倍当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
【0206】
得られた未精製のアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対して、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液にさらに水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。これら操作により数平均分子量約19,000のアリル基末端ポリプロピレンオキシドを得た。
【0207】
得られたアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部とメチルジメトキシシラン1.35重量部とを、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3重量%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として90℃で2時間反応させた。
【0208】
その結果、数平均分子量が19,000(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)であり、
1H−NMRによる分析から末端に1分子当たり平均1.7個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(A−1)を得た。
【0209】
(実施例1)
合成例1で得た重合体(A−1)100重量部に、可塑剤としてテレフタル酸エステル化合物であるテレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(EASTMAN製、商品名:EASTMAN168)35重量部、メチルエステル基を有する化合物としてアジピン酸ジメチル(大八化学工業(株)製、商品名:DMA)20重量部、表面処理炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:白艶華CCR)120重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR820)20重量部、チクソ性付与剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500)2重量部、紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部を計量し、スパチュラを用いて混合した後、3本ペイントロールに3回通して分散させた。この後120℃で2時間減圧乾燥を行い、50℃以下に冷却後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(Momentive製、商品名:A−171)2重量部、接着性付与剤としてN−(β−アミノメチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM603)3重量部を添加して混合した。さらに縮合触媒としてジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)(日東化成(株)製、商品名:ネオスタンU−220H)2重量部を添加し混合することにより硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物を防湿性の容器に充填し、密封することにより1液型硬化性組成物を得た。
【0210】
(実施例2)
実施例1のアジピン酸ジメチル20重量部の代わりに、主成分がオレイン酸メチルとリノール酸メチルの混合物(築野食品工業(株)製、商品名:TFE−MED)20重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0211】
(実施例3)
実施例1のテレフタル酸エステル化合物35重量部の代わりに、可塑剤としてイソフタル酸エステル化合物であるイソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(シージーエスター(株)製、商品名:DOIP)35重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0212】
(比較例1)
実施例1のテレフタル酸エステル化合物(EASTMAN168)35重量部およびアジピン酸ジメチル20重量部の代わりに、テレフタル酸エステル化合物(EASTMAN168)55重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0213】
(比較例2)
実施例3のイソフタル酸エステル化合物(DOIP)35重量部およびアジピン酸ジメチル20重量部の代わりに、イソフタル酸エステル化合物(DOIP)55重量部を使用したこと以外は実施例3と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0214】
(比較例3)
実施例1のテレフタル酸エステル化合物(EASTMAN168)35重量部およびアジピン酸ジメチル20重量部の代わりに、可塑剤としてフタル酸ジイソデシル((株)ジェイプラス製、商品名:DIDP)55重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0215】
(比較例4)
実施例2のテレフタル酸エステル化合物(EASTMAN168)35重量部およびメチルエステル基を有する化合物(TFE−MED)20重量部の代わりに、メチルエステル基を有する化合物(TFE−MED)55重量部を使用したこと以外は実施例2と同様にして1液型硬化性組成物を得た。
【0216】
【表1】
【0217】
上記で得られた硬化性組成物について、以下の方法で物性測定を行った。
【0218】
(深部硬化性)
硬化性組成物を直径12mmのポリエチレン製の円筒状容器に気泡が入らないように充填し、表面を平面状に整えて試験体を作製した。23℃、湿度50%RHで1日間、3日間、および7日間静置した後、硬化した部分を取り出し、付着している未硬化部分を取り除き、硬化した部分の厚さを、ノギスを用いて測定した。試験結果を表1に示した。
【0219】
(皮張り時間)
硬化性組成物を深さ約5mmの軟膏缶に充填し、表面を平面状に整えた。この時間を硬化開始時間とした。組成物表面をスパチュラで触り、スパチュラに組成物が付着しなくなった時間を皮張り時間として測定を行った。試験価条件は23℃、湿度50%RH。試験結果を表1に示した。
【0220】
また、硬化性組成物を密封状態で50℃4週間養生した後、皮張り時間の測定を行った。試験条件は23℃、湿度50%RH。試験結果を表1に示した。
【0221】
(引張物性)
23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、硬化性組成物を厚み3mmのポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように充填した。その後、23℃、相対湿度50%で3日間、さらに50℃で4日間養生することにより硬化物を得た。得られた硬化物から、JIS K6251に準拠して3号ダンベルを打ち抜き、引張試験(引張速度200mm/分、23℃、相対湿度50%)を行い、破断強度と、破断伸びを測定した。
【0222】
また、硬化性組成物を密封状態で50℃4週間養生した後、引張物性の測定を行った。試験結果を表1に示した。
【0223】
表1から明らかなように本発明の硬化性組成物は深部硬化性に優れていることがわかる。また、本発明の硬化性組成物は皮張り時間及び引張物性も改善されることがわかる。