(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材は、前記第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材と前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間にある、請求項1に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記第4の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材は、前記第4の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材の層によって前記第3の電気エネルギー蓄電セルバリアから分離している、請求項3に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記弾性材は、フルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、パーフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムおよびスチレンブタジエンゴムから選択される、請求項9に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内部圧力未満である場合に原形を保ちつつ、前記携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が前記最大内部圧力を超過した場合に破裂する破裂構造をさらに備えた、請求項7に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内部圧力未満である場合に原形を保ちつつ、前記携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が前記最大内部圧力を超過した場合に破裂する破裂構造をさらに備えた、請求項1に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層は、前記第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの前記電気エネルギー蓄電セル接触保護層に接触する、請求項19に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層は、前記第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材の前記電気エネルギー蓄電セル接触保護層に接触する、請求項19に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接すると共に、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと前記ハウジングの側壁の間に配置された電気エネルギー蓄電セルモジュール側壁をさらに備え、
前記電気エネルギー蓄電セルモジュール側壁は、
前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールの複数の電気エネルギー蓄電セルに面する内側と、
前記ハウジングの側壁に面した外側と、
前記電気エネルギー蓄電セルモジュール側壁の内側から前記電気エネルギー蓄電セルモジュール側壁の外側へと通じる開口と、を含む、
請求項19に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
前記第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層内の前記少なくとも1つのバイアス排気口と、前記第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の燃焼バリア層内の前記少なくとも1つのバイアス排気口に加えて、前記第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを貫通する少なくとも1つの開口をさらに備えた、請求項19に記載の携帯式電気エネルギー蓄電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの取り組みにも拘らず、電気エネルギー蓄電セルの故障と、そのような故障の結果として多数セル配備で起こるガスの燃焼、ならびに故障の伝播が故障したセル付近の電池セルへの熱エネルギーを誘起して、そのような万が一の場合のユーザへの危険のリスクを効果的に管理する携帯式電気エネルギー蓄電装置への必要が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願に記述される実施形態は、熱エネルギーを誘起するセル故障の伝播に対する熱アイソレータおよび熱バリアとして機能する電気エネルギー蓄電セルバリアを含む携帯式電気エネルギー蓄電装置に関する。電気エネルギー蓄電セルバリアはさらに、電気エネルギー蓄電セルの端子を損傷から保護し、電気アイソレータとして機能して、電気エネルギー蓄電セルを衝撃またはその他の力による損傷から保護する衝撃吸収体として働く弾性材を含む。
【0010】
1つの記述される態様の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、第1の電気エネルギー蓄電セルと、第2の電気エネルギー蓄電セルと、断熱材と弾性材を備えた電気エネルギー蓄電セルバリアを含み、電気エネルギー蓄電セルバリアは第1の電気エネルギー蓄電セルと第2の電気エネルギー蓄電セルの間に配置されている。
【0011】
もう1つの記述される態様の実施形態において、第1の電気エネルギー蓄電セルは複数の第1の電気エネルギー蓄電セルを備えている。
【0012】
別の実施形態において、第2の電気エネルギー蓄電セルは複数の第2の電気エネルギー蓄電セルを備えている。
【0013】
さらにもう1つの実施形態において、第2の電気エネルギー蓄電セルは第1の電気エネルギー蓄電セルに隣接している。
【0014】
以下の化学に限定されないが、第1の電気エネルギー蓄電セルはニッケル水素化学またはリチウムイオン化学を含んでもよく、第2の電気エネルギー蓄電セルは第1の電気エネルギー蓄電セルと同じ化学を含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、電気エネルギー蓄電セルバリアは断熱材の層と弾性材の層および/または2層の弾性材の間に1層の断熱材を備えていてもよい。特定の実施形態において、断熱材は、故障したセルの発火が発生する温度で約0.5BTU/ft
2/hr/インチ未満、また好ましくは0.5BTU/ft
2/hr/インチの熱伝導率を有する。断熱材はセラミック材料、バーミキュライト系材料または、断熱特性を提供することが知られているその他の材料を含みうる。セラミック材料用のキャリアは、紙ベース、セラミック含浸クロス、繊維ガラスまたは断熱材含有薄膜シートに形成できるその他の材料であってよい。断熱材の特定の例は、セラミック繊維紙等のセラミック繊維を含むものである。適切なセラミック繊維の例は、アルミナ、ムライト、シリコンカーバイド、ジルコニアまたは炭素を含む。
【0016】
弾性材の例はゴムを含み、より具体的には、フルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、パーフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含む。
【0017】
もう1つの記述される態様の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含み、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールは第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置されている。この携帯式電気エネルギー蓄電装置はさらに、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの間に配置された断熱材と弾性材を備えた第1の電気エネルギー蓄電セルバリアと、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置された断熱材と弾性材を備えた第2の電気エネルギー蓄電セルバリアと、弾性材を備えた第3の電気エネルギー蓄電セルバリアをも含み、第3の電気エネルギー蓄電セルバリアは第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置されている。
【0018】
この記述される態様のいくつかの実施形態において、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材は第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材の2つの層の間にある。さらに別の実施形態において、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材は第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材と第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの間にある。
【0019】
この態様の付加的な実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接した第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、断熱材と第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置された弾性材を備えた第4の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む。これらの付加的な実施形態において、第4の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材は、第4の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材の層によって第3の電気エネルギー蓄電セルバリアから隔離される。
【0020】
この態様のさらに別の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルモジュールの少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルに接触する負荷吸収部材を含む。別の実施形態において、少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルモジュールの各電気エネルギー蓄電セルに1つの負荷吸収部材が接続されている。
【0021】
本出願に記述されるさらなる態様の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、カバーとベースを含むハウジングを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルモジュールがハウジング内に収容され、断熱材と弾性材を含む電気エネルギー蓄電セルバリアがカバーに隣接して配置され、断熱材はカバーと断熱材料の間に配置されている。ベースに隣接して弾性材が配置され、電気エネルギー蓄電セルモジュールとベースの間の配置となっている。
【0022】
本出願に記述される種々の実施形態によれば、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内部圧力未満である場合に原形を保ち、携帯式電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内部圧力を超過した場合に破裂する破裂構造を含む。
【0023】
もう1つの記述される態様の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、カバーとベースを含むハウジングを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールがハウジング内に収容され、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールは第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置されている。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールがハウジング内に含まれ、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと反対側の第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの側に、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置されている。弾性材の間に挟設された断熱材を含む第1の電気エネルギー蓄電セルバリアが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの間に配置されている。弾性材の間に挟設された断熱材を含む第2の電気エネルギー蓄電セルバリアが第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第3の電気エネルギー蓄電モジュールの間に配置されている。弾性材を含む第3の電気エネルギー蓄電セルバリアが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールとベースの間に配置され、断熱材と弾性材を含む第4の電気エネルギー蓄電セルバリアが第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールとカバーの間に配置されている。
【0024】
もう1つの記述される実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は、側壁を含むハウジングと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含みハウジング内に配置された第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールも、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接してハウジング内に配置されている。携帯式電気エネルギー蓄電装置は、弾性材の電気エネルギー蓄電セル接触保護層と不燃材の燃焼バリア層の間に挟設された誘電材の電気絶縁層を備えた第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアは第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの間に配置されている。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層は少なくとも1つのバイアス排気口を含み、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の燃焼バリア層は少なくとも1つのバイアス排気口を含む。携帯式電気エネルギー蓄電装置はさらに、弾性材の電気エネルギー蓄電セル接触保護層と不燃材の燃焼バリア層の間に挟設された誘電材の電気絶縁層を備えた第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層は少なくとも1つのバイアス排気口を含み、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の燃焼バリア層は少なくとも1つのバイアス排気口を含む。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアは第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの間に配置されている。この記述される実施形態によれば、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口と、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の燃焼バリア層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口は、閉位置にバイアスされて閉位置から開位置に可動であり、閉位置は第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを妨げ、開位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを閉位置よりも少ない度合いに妨げる。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の電気絶縁層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口と、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の燃焼バリア層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口は、閉位置にバイアスされて閉位置から開位置に可動であり、閉位置は第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを妨げ、開位置は、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを閉位置よりも少ない度合いに妨げる。
【0025】
本明細書に記載される携帯式電気エネルギー蓄電セル装置のさらなる態様の実施形態において、携帯式電気エネルギー蓄電装置は側壁を含むハウジングを含み、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールがそのハウジング内に配置されている。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールも、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接してハウジング内に配置されている。弾性材の層と不燃材の層の間に挟設された誘電材の層を備えた第1の電気エネルギー蓄電セルバリアが、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの間に配置されている。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の層は少なくとも1つのバイアス排気口を含み、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の層は少なくとも1つのバイアス排気口を含む。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材の層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口と、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃材の層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気口は、閉位置にバイアスされて閉位置から開位置に可動であり、閉位置は第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを妨げ、開位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを介したガスの流れを閉位置よりも少ない度合いに妨げる。
【0026】
図面において、同一の参照番号は類似した要素または動作を示す。図面において要素のサイズと相対位置は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。例えば、種々の要素の形状と角度は縮尺通りに描かれておらず、これらの要素のうちいくつかは図面の見易さを改善するために任意に拡大されて配置されている。さらに、描かれている要素の特定の形状はその特定の要素の実際の形状に関する情報を伝えるためのものではなく、図面における認識し易さのために選択されたに過ぎない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例証のために本明細書において本出願の主題の特定の実施形態が記述されてきたが、開示された主題の趣旨と範囲から逸脱せずに種々の変更がなされてもよいことが理解される。従って、本出願の主題は添付の特許請求の範囲よる以外には限定されない。
【0029】
以下の記述において、種々の開示される実施形態の完全な理解を提供するために、いくつかの特定の詳細が規定されている。しかし、当業者ならば、実施形態がこれらの特定の詳細のうち1以上がなくても、またはその他の方法、構成要素、材料等を用いても実施されうることを認識するであろう。別の例では、携帯式電気エネルギー蓄電セル、例えば電池に関連する周知の構造は、実施形態の記述を不要に不明確にすることを避けるために詳細に図示も説明もされていない。
【0030】
文脈上別異の解釈を必要としない限り、明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通して「備えた」という語および、「備える」「備えている」等の変形は、「含むがそれに限定されない」という開放的な包含的意味に解釈されるものとする。
【0031】
文脈上別異の解釈を必要としない限り、本明細書を通して「一実施形態」または「1つの実施形態」の言及は、その実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。したがって、本明細書中の種々の場所での「一実施形態において」「1つの実施形態において」というフレーズの出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指していなくてもよい。
【0032】
第1の、第2のおよび第3の等の序数の使用は、必ずしも序列を付けた意味での順序を意味するものではなく、寧ろ動作または構造の多数の例の間での区別するのみでありうる。
【0033】
携帯式電力蓄電装置または電気エネルギー蓄電装置の言及は、電池、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタ、およびそれら複数で構成されるモジュールを含むがそれらに限定されない、電力を蓄積して、蓄積した電力を放出可能な任意の装置を意味する。携帯式電気エネルギー蓄電セル(複数)の言及は、例えば、ニッケル−カドミウム合金電池セルまたはリチウムイオン電池セルを含むがそれらに限定されない再充電可能または二次電池セル等の化学的蓄電セルまたは複数のセルを意味する。携帯式電気エネルギー蓄電セルの非限定的な例が、図面において、例えば従来型の単4サイズ電池とサイズおよび形状が同じである形状が円筒形のものとして図示されているが、本開示は、この図示されたフォームファクタに限定されない。
【0034】
本明細書に提供される見出しと開示の要約は便宜上設けられているに過ぎず、実施形態の範囲や意味を説明するものではない。
【0035】
概括的に述べると、本開示は、1つの電気エネルギー蓄電セルまたはモジュールから別の電気エネルギー蓄電セルまたはモジュールへの熱エネルギーを不安定化する、電気エネルギー蓄電セルの移動と伝播を防止するように働く1つ以上の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む、例えばオートバイ、スクーターおよび電動自転車等の電動またはハイブリッドタイプの自動車、電動工具、芝生・庭園用電動機器等の電気装置に給電するのに適した携帯式電気エネルギー蓄電装置の諸例を対象とする。本明細書に記述される実施形態による携帯式電気エネルギー蓄電装置のさらなる記述は、電気スクーターで使用される携帯式電気エネルギー蓄電装置の文脈で提供されるが、本明細書に記述される実施形態による携帯式電気エネルギー蓄電装置は、電気スクーターへの適用に限定されないことを理解すべきである。加えて、携帯式電気エネルギー蓄電装置は以下に、複数の電気エネルギー蓄電セルを収容している単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、それぞれが複数の電気エネルギー蓄電セルを収容している一対の電気エネルギー蓄電セルモジュールに言及して記述される。本明細書は、単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールのみ、または一対の電気エネルギー蓄電セルモジュールのみを含む電気エネルギー蓄電装置に限定されず、一対より多い電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む携帯式電気エネルギー蓄電装置を包含する。
【0036】
本出願に記述される実施形態による携帯式電気エネルギー蓄電装置が電気スクーター等の電動自動車に利用される特定の適用において、1つ以上の携帯式電気エネルギー蓄電装置は、ユーザの下に配置されたコンパートメント、例えば、スクーターの座面の下に受け入れられる。典型的に、携帯式電気エネルギー蓄電装置はハンドルを含み、そのハンドルによってユーザは携帯式電気エネルギー蓄電装置を持って装置をコンパートメントに出し入れする。
【0037】
図1を参照すると、携帯式電気エネルギー蓄電装置10は複数の個別の電気エネルギー蓄電セル14を含む電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含んでいる。電気エネルギー蓄電セルモジュール12は、外殻18、カバー20およびベース22を含むハウジング16内に収容されている。外殻18、カバー20およびベース22は、金属またはプラスチック等の非金属等の同一または異なる剛性不燃材から形成される。金属の代表的な非限定的な例はアルミニウムである。図示されていないが、カバー20は電気エネルギー蓄電装置の担持を促進するためのハンドルを含んでもよい。また、図示されていないが、ベース22は、外殻18を貫通し、外殻18内の導電性要素と協働して、エネルギー蓄電装置10の外部の位置からエネルギー蓄電セルモジュール12への電気接続を提供する導電性要素を含む。加えて、導電性要素は、各電気エネルギー蓄電セルモジュールと関連付けられており、個別の電気エネルギー蓄電セルを電気的に接続し、また、電気エネルギー蓄電セルモジュールを電気的に接続する。外殻18はカバー20とベース22にガス密に密封されてガス密ハウジングを形成する。ベース22を貫通する導電性要素もベース22にガス密に密封される。こうして外殻18、カバー20およびベース22は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12を収容するガス密エンクロージャを形成する。外殻18、カバー20およびベース22がガス密エンクロージャを形成するため、エンクロージャは、支燃性酸素を除去するために排出させられうる。支燃性酸素を除去することは、密封されたエンクロージャ内に発生する可能性がある燃焼の量を低減する。または、酸素を、窒素等の支燃性でないガスと交換することによってエンクロージャから支燃性酸素を一掃できる。外殻18は、嵌合する雌雄部材等の従来型材料を単体でまたは接着材料と組み合わせて使用することによりカバー20とベース22に密封されうる。代替的にまたは付加的に、外殻18をカバー20とベース22に密封するためにガスケットが配設されてもよい。同様に、ベース22を貫通する導電性要素は、接着材料および/またはガスケット等の従来型材料を使用してベース22に密封されうる。
【0038】
電気エネルギー蓄電セルモジュール12を形成する隣接する電気エネルギー蓄電セル14の間の隙間と、電気エネルギー蓄電セル14とハウジング16の間の空所は、潜熱蓄熱が可能な熱エネルギー吸収材によって占有される。適切な熱エネルギー吸収材は材料の温度を実質的に変化させずに、例えば相変化によって熱エネルギーを吸収または放出する。熱エネルギー吸収材の例は、大量のエネルギーを相変化によって吸収または備蓄できる材料を含む。そのような材料は一般に相変化材料と呼ばれる。相変化材料は一般に、相変化が固体と液体の間である材料に限定されると理解されているが、相変化材料は固体と液体状態間で変化する材料に限定されない。相変化材料はパラフィンや脂肪酸等の有機材料であってもよい。相変化材料は水和塩等の無機物であってもよい。相変化材料は共晶材料または吸湿性材料であってもよい。
【0039】
「背景技術」に記載のように、稀ではあるが、リチウムイオン電気エネルギー蓄電セルの内部または外部短絡が、カソードが電解質溶液と反応して電解質溶液を分解する可能性があるレベルまで個別の電気エネルギー蓄電セルの温度を上昇させることがある。これが発生すると、付加的な熱エネルギーが生じ、電解質溶液の分解から生じたガスがカソードと反応してさらに多くの熱エネルギーを解放する可能性がある。電気エネルギー蓄電セル内でのガスの発生は、密封されたセル内の圧力を上昇させる。セル内の圧力が設計上のセル破裂圧力を超えて上昇すると、セルは破裂してガスが逸出する。これらの反応中に、さらに支燃する可能性がある限定された量の酸素が生じる。これらの逸出ガスが、ガスの発火温度を超える温度に曝されると、ガスが発火して燃焼する可能性がある。加えて、1つの短絡したセルから放出された熱エネルギーと、破裂セルから逸出したガスの燃焼が、他の電気エネルギー蓄電セルの温度を、そのようなセルの通常安定温度よりも上に上昇させた場合、これらの他の電気エネルギー蓄電セルのカソードが次に電解質溶液と反応して、これらのセルを破裂させ燃焼させるガスを発生する可能性がある。そのような短絡が引き起こす燃焼は稀ではあるが、良い設計とユーザの安全への関心は、万が一電気エネルギー蓄電セルが故障した場合にユーザを保護するための措置を講じることを要求する。
【0040】
図1を続けて参照し、付加的に
図2を参照すると、本明細書に記述される携帯式電気エネルギー蓄電装置の1つの態様の1つの非限定的な実施形態は、複数の電気エネルギー蓄電セル14を含む単一の電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含んでいる。
図1に示される実施形態において、単一の電気エネルギー蓄電セルモジュール12は多数の個別の電気エネルギー蓄電セル14を含む。
図1に示された個数と比べてより多いまたはより少ない個数の個別の電気エネルギー蓄電セルが利用されうることを理解すべきである。
【0041】
開示される主題図の他の特徴を不明確にすることを避けるために具体的に示されてはいないが、電気エネルギー蓄電セル14間の隙間は相変化材料で占有されている。利用される具体的な相変化材料は、相変化材料がその相変化を完了してその温度が上昇し始める前に吸収できる熱エネルギーの大きさを含むいくつかの因子を考慮して選択される。一般に、より少ない熱エネルギーを吸収すると状態の変化を完了する相変化材料よりも、状態変化の前により多くのエネルギーを吸収できる相変化材料が好ましい。典型的な相変化材料はパラフィンや脂肪酸等の有機材料を含む。相変化材料は水和塩等の無機物であってもよい。相変化材料は共晶材料または吸湿性材料であってもよい。
図1および2に示された実施形態において、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上に電気エネルギー蓄電セルバリア24が配置されている。電気エネルギー蓄電セルバリア24は断熱材の層26と弾性材の層28を含む。断熱材の層26と弾性材の層28は両方とも、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上面全体に重なるサイズである。断熱材の層26の周囲と弾性材の層28の周囲は、外殻18内部に密着嵌合する形状およびサイズである。弾性材の層28と断熱材の層26の間の密着嵌合は、これらの層と外殻18の内面の間にガス密密封が提供されるほどの精密な公差を持たなくてもよいが、外殻18の内面と、断熱材の層26および弾性材の層28のうち少なくとも一方との嵌合が密着していればいるほど、電気エネルギー蓄電セルバリア24は、燃焼による熱エネルギーと炎が、外殻18の内面と断熱材26および/または弾性材28の外周の間を通過することをより有効に遮断できる。断熱材の層26および/または弾性材の層28と外殻18の内面の間の協働が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セル14の燃焼による熱エネルギーおよび炎が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12に隣接した側と反対の電気エネルギー蓄電セルバリア24の側にある場所に移動することを妨げ、より好ましくは防止する。
【0042】
断熱材26は断熱層として働き、また、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セルの燃焼によって生じた熱エネルギーの、電気エネルギー蓄電セルモジュール12とは反対側の断熱材の層26の側への移動に対するバリアとして働く。電気エネルギー蓄電セルバリア24の一方の側から他方の側への熱エネルギーの移動に対するバリアを配設することにより、温度上昇によって引き起こされた電気エネルギー蓄電セルの故障の伝播が低減または回避される。断熱材26は、断熱材を介した熱エネルギーの伝導を断熱材が妨げるような熱伝導率を持つ材料から選択される。さらに別の非限定的な例において、断熱材26は、非導電性の材料から形成される。断熱材26の非導電性の特性は、電気エネルギー蓄電セル14に電気的に接続された導電性フィーチャに断熱材が悪影響を与える、例えば短絡させることを防止する。断熱材26の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルの排気と着火が発生する温度に対応する温度で約0.5BTU/ft
2/hr/インチ未満である。加えて、断熱材は約130℃を超える温度において耐火性がある。断熱材はセラミック材料、バーミキュライト系材料または、断熱特性を提供することが知られているその他の材料を含みうる。セラミック材料用のキャリアは、紙ベース、セラミック含浸クロス、繊維ガラスまたは断熱材含有薄膜シートに形成できるその他の材料であってよい。断熱材の非限定的な例は、セラミック繊維を含む材料を含む。そのようなセラミック繊維は、アルミナ、ムライト、シリコンカーバイド、ジルコニアまたは炭素から形成されうる。特定の実施形態において、断熱材の層26は紙様の形状のセラミック繊維を含む。限定する意図はないが、いくつかのセラミック紙材料は1260℃以上の耐火性がある。
図1および2に示される実施形態によれば、断熱材の層26は約0.5mmから2mmまでの厚さを有するが、断熱材は望まれる量または断熱にとりわけ依存して、より厚くてもより薄くてもよい。
【0043】
弾性材28は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セル14の燃焼が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12とは反対の電気エネルギー蓄電セルバリア24の側に移動することに対する物理的に不燃性のバリアを提供することにより、燃焼バリアとして働く。弾性材の層28の材料の非限定的な例は、約130℃以上の温度で不燃である弾性材を含む。非限定的な実施形態において、弾性材28は、電気エネルギー蓄電セル端子が形成される材料よりも軟質の材料から形成されることにより、電気エネルギー蓄電セル14の端子の保護を提供する。さらに別の非限定的な例において、弾性材28は、非導電性の材料から形成される。弾性材28の非導電性特性は、電気エネルギー蓄電セル14に電気的に接続された導電性フィーチャに弾性材が悪影響を与える、例えば短絡させることを防止する。弾性材28の非限定的な例は、ショアスケールで約50から100未満の硬度を持ち、約10オーム超から約20オーム以上の電気抵抗を持つ材料を含む。特定の実施形態において、弾性材はフルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、パーフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムおよびスチレンブタジエンゴムである。
図1および2に示された実施形態によれば、弾性材の層28は約0.5mmから2.0mmの厚さであるが、弾性材は、望まれる燃焼移動抑制および/または振動吸収の量にとりわけ依存して、より厚くてもより薄くてもよい。
【0044】
「背景技術」に記述されるように、単一の電気エネルギー蓄電セルのみが利用されている適用において、セルの燃焼は望ましくない状況を作り出す。この状況の重度は、電池バンクまたはモジュールの形式の複数の電気エネルギー蓄電セルが配備されている場合に増加する。例えば、電気エネルギー蓄電セルがリチウムイオン化学を含む場合、そのリチウムイオンセルの燃焼は、リチウムイオンセルが不安定になって破裂し燃焼する温度より上の局所温度をもたらす可能性がある。こうして、リチウムイオンセルのバンク内の単一のリチウムイオンセルの燃焼が、バンク内の他のセルを破裂、発火および燃焼させる可能性がある。幸い、リチウムイオンセルは非常に安定していることが実証されており、リチウムイオン電池の破裂と燃焼は非常に稀である。それでも、ユーザの安全を図り、また、電気エネルギー蓄電セルを、スクーター等の電動自動車用の電源として受け入れるために、リチウムイオン電気エネルギー蓄電セルの破裂と燃焼の既に低い可能性を低減し、セルが発火するという万が一の場合に燃焼を管理するための措置を講じることが重要である。
【0045】
本明細書に記述される実施形態によれば、電気エネルギー蓄電セルの燃焼または複数の電気エネルギー蓄電セルの燃焼は、本明細書に記述される以下の特徴の組み合わせによって管理される。第1に、破裂セルからのガスの発火を始動し、発火したセルの燃焼を維持するためには酸素が必要であることが利用される。第2に、燃焼が発生した場合に、故障して潜在的に燃焼するセルからの他のセルへの熱エネルギーの移動が制限される。第3に、セル故障の結果形成されたガスと、そのようなガスの燃焼から形成されたガスが、一定の閾値圧まで、気密密封された電気エネルギー蓄電装置内に収容される。第4に、予測不能で潜在的に危険な方向での制御されない破裂を避けるために、電気エネルギー蓄電装置の破裂が制御される。
【0046】
第1のレベルにおいて、リチウムイオン電気エネルギー蓄電セルを、酸素のない気密ハウジングに収容することは、破裂した故障セルを退出する可能性がある可燃性ガスを発火させ燃焼を維持するために必要な酸素からセルを隔離する。こうして、万が一単一のセル故障が、セルの破裂と、セルから排気されるガスの発火を招く場合、燃焼を維持するために使用できる酸素は、故障したセル内の反応物質間で発生する反応によって生成した酸素に限られる。支燃のために使用できる酸素を、その場で生成する酸素に限定することは、電気エネルギー蓄電装置内で燃焼が発生する時間の長さを極減し、それにより、他のセルからの故障とそれに続く破裂およびガスの燃焼が発生するレベルまで装置内の温度が上昇する可能性を低減する。加えて、電気エネルギー蓄電装置内の酸素の欠如が熱エネルギー吸収材の燃焼を妨げる。例えば、熱エネルギー吸収材として使用される相変化材料は、液体状態に変化すると可燃性になる。電気エネルギー蓄電装置内の酸素容量を制限することにより、相変化材料の燃焼が回避される。
【0047】
典型的に、個別の電気エネルギー蓄電セルからのガスの排気と燃焼は数秒間続くのみである。この時間中、局所温度は隣接する電気エネルギー蓄電セルが不安定になる温度に近づく可能性がある。別段には安定している電気エネルギー蓄電セルを、故障したセルから発散する熱エネルギーから隔離するために、隣接する電気エネルギー蓄電セル間の隙間は、上述の熱エネルギー吸収材で占有される。熱エネルギー吸収材は、セルの故障と、故障したセルから発散するガスの燃焼から生じる熱エネルギーを、熱エネルギー吸収材の温度を上昇させずに吸収する。電気エネルギー蓄電装置内に存在する熱エネルギー吸収材が、温度が上昇し始める前に吸収できる熱エネルギーの量は、熱エネルギー吸収材の組成と、存在する材料の量に依存する。例えば、一定数のセルの故障と燃焼によって生じた熱エネルギーの全量を吸収するためには一定量の熱エネルギー吸収材で十分であるが、付加的なセルが故障して燃焼すると、熱エネルギー吸収材は、温度を上昇させずに付加的な熱エネルギーを吸収することは不能である。
【0048】
万が一、故障した電気エネルギー蓄電セルが、熱エネルギー吸収材が吸収できる熱エネルギーの量を超える熱エネルギーを生成した場合、付加的な電気エネルギー蓄電セルが故障して燃焼する可能性が増加し、付加的なセルの自己伝播的故障および燃焼の可能性につながる。そのような自己伝播的故障および燃焼は、本明細書に記述される実施形態に含まれる特徴がなければ、電気エネルギー蓄電装置内の圧力を、装置の制御不能な破裂につながりうるレベルまで上昇させることになりかねない。本明細書に記述されるタイプの電気エネルギー蓄電セル装置は、装置内の圧力が閾値量を超過した場合に所定位置および所定方向に破裂するように設計された破裂構造を含む。そのような破裂構造は、以下により詳細に記述される。そのような圧力閾値は、破裂が望ましくない位置で装置が破裂するような圧力より少なければ任意のレベルに設定されうる。電気エネルギー蓄電装置が破裂する圧力は、X個より多い個別セルの故障および燃焼から生じる圧力上昇をも考慮してよく、その場合Xは、そのようなセルの個数が、破裂が望ましくない位置で装置を破裂させるために必要な圧力を超える装置内の圧力をもたらすセルの個数である。本明細書に記述される破裂構造を含む実施形態によれば、装置のハウジングは破裂して、ハウジング近辺の人々への危害の危険を低減する方向に高温ガスと炎を方向付ける。
【0049】
図5を参照すると、
図1および2に示された実施形態において、ベース22には破裂構造30が配設されている。
図5の破裂構造30は、ベース22の底部に「切込み線を付けた」特徴を含む。ベース22の底部に切込み線を付けることは、ベース22の切込み線を付けていない部分よりも薄い切込み線を付けた部分を作り出す。切込み線付けは、ベースに切込み線を成形することによって配設されるか、または、ベースに切込み線を打ち抜くことによって配設される。切込み線はその他の周知の技法で配設されてもよい。
図5において破裂構造30は切込み線を付けた部分として図示されているが、切込み線を付けた特徴以外の特徴が破裂構造として提供されてもよいことを理解すべきである。例えば、破裂構造は、圧力リリーフ弁か、ハウジング内の圧力が所定レベルを超過した場合にハウジング16を排気するその他の構造またはハードウェアの形態をとってよい。
【0050】
破裂構造30は、ハウジング16内の圧力が所定圧力に達すると破砕または破壊して開くように設計されている。破裂構造が破砕する所定圧力は任意の圧力であってよく、例えば、ハウジング16内の個別の電気エネルギー蓄電セル14の所定の個数の発火と燃焼によりハウジング内で上昇する圧力より上の圧力である。発火し燃焼する電気エネルギー蓄電セルの個数が所定の個数より少なければ、ハウジング16内の圧力の増加は、ハウジング16の制御不能な破裂の重大な危険をもたらすようなものとはならない。他方、発火し燃焼する電気エネルギー蓄電セルの個数が所定の個数より多ければ、ハウジング内の圧力の増加は、ハウジングが制御不能に破裂するリスクを増加させる。破裂構造30は、ハウジング16内の圧力が所定の圧力に達すると破砕または破壊して開くように設計されている。
図5に示された実施形態において、破裂構造30はベース22の底部に配置されている。そのため、破裂構造30が破裂すると、高温の燃焼ガスと炎は携帯式電気エネルギー蓄電装置10の底部から出て下方に方向付けられうる。破裂構造30はベース22の底部に配置されたものとして図示されているが、他所に配置されてもよい。例えば、破裂構造30はベース22の側部または外殻18の側部またはカバー20の頂部または側部に配置されてもよい。破裂構造の具体的な位置は一般に、燃焼ガスと炎が、ハウジング16を出て、安全な方向、例えば通常使用においてハウジング16付近にいる人々から離れた方向に方向付けられるように選択される。電気エネルギー蓄電装置が電動スクーターの座面より下に配置される実施形態において、破裂構造30は好ましくは、高温のガスと炎がユーザから離れる方向にハウジング16を退出するようにベース22の底部に配置される。
【0051】
図2に戻ると、ベース22に隣接した電気エネルギー蓄電セルモジュール12の側部で、弾性材の層32が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の電気エネルギー蓄電セル14を、破裂構造30を含むベース22から分離している。この図示された実施形態において、セルモジュール12の下に付加的な電気エネルギー蓄電セルが存在せず、ベース22がユーザから最も遠くに配置されている故に熱エネルギーと燃焼の伝播の懸念が少ないため、この位置において断熱材の層は省略されている。
【0052】
図3を参照すると、電気エネルギー蓄電セル装置の別の実施形態が示されており、1より多い電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含んでいる。
図3に示される実施形態において、複数の個別の電気エネルギー蓄電セル46を含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34が複数の電気エネルギー蓄電セル14を含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上方に配置されている。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34の上方に、
図1を参照して記述された電気エネルギー蓄電セルバリア24と同等の第2の電気エネルギー蓄電セルバリア36が配置されている。
図3の実施形態は、弾性材の層42と弾性材の層44の間に挟設された第1の電気エネルギー蓄電セルバリア38を含むことでも、
図1に示された実施形態と異なっている。弾性材42および44および断熱材40は、
図1および2を参照して上述した弾性材32および断熱材26と本質的に同等である。第1の電気エネルギー蓄電セルバリア38の第2の弾性材の層42は電気エネルギー蓄電セルモジュール34内の電気エネルギー蓄電セル46の電気端子を保護する。
【0053】
図1および2を参照して図示し記述した実施形態と異なって、
図3に図示された電気エネルギー蓄電装置の実施形態は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上方に第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34を含む。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34の配設は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12内に起こりうる燃焼から電気エネルギー蓄電セルモジュール34を保護し、また逆に電気エネルギー蓄電セルモジュール34内に起こりうる燃焼から第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12を保護することを望ましくする。この保護は三層電気エネルギー蓄電セルバリア38によって提供される。
【0054】
単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールと2つの電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む実施形態が
図1−3を参照して上記に記述されてきたが、本明細書に記述される主題により、2より多い電気エネルギー蓄電セルモジュールが配設されてもよいことを理解すべきである。2より多い電気エネルギー蓄電セルモジュールが配設される場合、本明細書に記述される実施形態によれば、
図3の電気エネルギー蓄電セルバリア38と同様の三層電気エネルギー蓄電セルバリアが電気エネルギー蓄電セルモジュールの間に配設される。
【0055】
さらに、電気エネルギー蓄電セルバリア24、36および38の具体的な実施形態が記述されてきたが、付加的な断熱が望まれる場合、付加的な断熱材の層が配設されうることを理解すべきである。同様に、電気端子のさらなる保護が望まれる場合、付加的な弾性材の層が配設されてもよい。
【0056】
図4を参照すると、2つの個別の携帯式電気エネルギー蓄電セル50が示されている。これらの電気エネルギー蓄電セルは、
図1−3を参照して記述された電気エネルギー蓄電セル14および46と同様であってよい。「背景技術」に記述されたように、万が一の場合、リチウムイオンセル等の電気エネルギー蓄電セルの内部または外部の短絡が起こりうる。そのような短絡は、セルが深刻な衝撃または振動を経験するときに発生する可能性がある。セル内のポリマーセパレータの薄い性質が、マイクロメートルサイズの金属粒子がアノードとカソードの間に入った場合にそれらを短絡しやすくする。本明細書に記述される実施形態によれば、それがなければ内部ポリマーセパレータを損傷するか、または、電気エネルギー蓄電セルに入った場合に短絡を引き起こしうる金属小粒子を生成する衝撃と振動を吸収できる負荷吸収部材52が個別の携帯式電気エネルギー蓄電セル50上に配設されている。
図4に示された実施形態において、負荷吸収部材52は携帯式電気エネルギー蓄電セル50の各端部に配設されている。本開示は、負荷吸収部材52を携帯式電気エネルギー蓄電セル50の両端に含むことに限定されず、負荷吸収部材52は携帯式電気エネルギー蓄電セル50の一端のみに配設されてもよいことを理解すべきである。
【0057】
負荷部材52は、弧状の片持ち梁状アーム58によって環状負荷部材本体56から浮遊する中央タブ54を含む。
図4に示された実施形態において、中央タブ54は負荷部材本体56によって占有される面とは異なる面、例えば負荷部材本体56によって占有される面の下にある。片持ち梁状アーム58は環状負荷部材本体56から中央タブ54に延出する。中央タブ54と環状負荷部材本体56が別々の面にあるため、片持ち梁状アーム58は両方の面の間に延在する。したがって、片持ち梁状アーム58は中央タブ54と環状負荷部材本体56の間のばね様部材として働く。
図4の電気エネルギー蓄電セル50の頂部に配置された負荷部材52を参照すると、中央タブ54は蓄電セル50の頂部に取り付けられている。環状負荷部材本体56はこうして中央タブ54がある面の上方に浮遊している。負荷が環状負荷部材本体56上に配置されると、片持ち梁状アーム58は負荷のうち一部または全部を吸収し、それにより電気エネルギー蓄電セル50をそのような負荷から隔離する。
図4に示された実施形態において、片持ち梁状アーム58は弧状の部材として図示され、中央タブ54は円形部材として図示されている。
図4は、これらの特徴の非限定的な実施形態を図示しており、中央タブ54は、正方形または三角形のような異なる形状をしていてもよく、片持ち梁状アーム58は弧状である必要はなく直線状であってもよいことを理解すべきである。
【0058】
図6は、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発散するガスおよび熱エネルギーがとりうるいくつかの異なる経路を模式的に示す。破線102で模式的に表した第1の例において、電気エネルギー蓄電セル100の一部を形成する電気エネルギー蓄電セル(図示せず)の上端から発散して、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100の頂部カバー104の内面に突き当たるガスおよび熱エネルギーは、頂部カバー104の内面によって反射されて第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内に収容される。これらのガスおよび熱エネルギーの第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの内部への偏向は、ガスおよび熱エネルギーが、別段には損傷を受けない電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の電気エネルギー蓄電セルに損傷を引き起こしうるという理由に少なくとも基づいているため望ましくない。例えば、ガスの燃焼による熱エネルギーは、別段には損傷を受けない電気エネルギー蓄電セルを自己発火させることがあり、それは電気エネルギー蓄電セルモジュール100の熱暴走を伝播する可能性がある。加えて、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内のガスの燃焼は、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の圧力を上昇させることにつながる。そのような圧力上昇が第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100の破裂圧力を超過した場合、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100はおそらくは爆発力を伴って破裂する可能性がある。
【0059】
別の例において、破線106で模式的に表されているが、ガスおよび熱エネルギーはカバー104を通過して第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100を脱出する。ガスおよび熱エネルギーは第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の周りを流れる。この例では、ガスおよび熱エネルギーが第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の電気エネルギー蓄電セルを故障、破裂、または発火させる可能性はより少なく、または、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100が破裂する可能性はより少ないが、破線106に沿って移動するガスおよび熱エネルギーが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の電気エネルギー蓄電セルを故障、破裂、または発火させうるという危険が増加し、それが携帯式電気エネルギー蓄電装置120が破裂するという危険の増加を招きうる。第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の電気エネルギー蓄電セルの発火は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール内の局所温度が、個別の携帯式電気エネルギー蓄電セルの故障および/または発火が発生する温度より上に上昇したときに起こりうる。例えば、蓄電セルモジュール100から発散するガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の下側に突き当たって第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の局所温度を、電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の個別の電気エネルギー蓄電セルが発火および/または破裂する温度より上に上昇させる可能性がある。第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の下側に突き当たるガスおよび熱エネルギーは消散して第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の周囲に移動し、そこで、図示された携帯式電気エネルギー蓄電装置120の電気エネルギー蓄電セルモジュール108と外殻110の間を通る。この位置に存在するガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の局所温度が、電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の個別の電気エネルギー蓄電セルが故障、破裂および/または発火する温度を超過することを招く可能性がある。
【0060】
図7を参照すると、本明細書に記述される非限定的な実施形態による電気エネルギー蓄電装置の分解図は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200を含んでいる。電気エネルギー蓄電セルモジュール200は模式的に図示されているが、モジュール200は、
図2および3に示されるものと同様な複数の個別の電気エネルギー蓄電セルを含むことが理解される。加えて、電気エネルギー蓄電セルモジュール200は模式的に長方形モジュールとして示されている。しかし、電気エネルギー蓄電セルモジュール200は長方形形状に限定されず、円筒形または隅を丸めた長方形形状等の他の形状をとってもよい。図示されていないが、モジュール200はモジュール200内の個別の電気エネルギー蓄電セルを電気的に接続するための電気接続と、モジュール200を、モジュール200によって給電される装置に電気的に接続する接続を含む。モジュール200は、モジュール200の周囲を画定する外壁202を含む。
【0061】
外壁202の4辺に隣接して一対のモジュール側壁204が配設されている。各モジュール側壁204は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200に対面する内面と、内面205の反対のモジュール側壁204の側部にある外面208を含む。図示の実施形態において、外面208は電気エネルギー蓄電セルモジュール200と違う方向に向いている。
図7の非限定的な実施形態において、モジュール側壁204は互いの鏡面像である2つの部分として図示されている。モジュール側壁204は、モジュール200にスライドする単一の部分から構成されても、または、2より多い部分から構成されてもよいことを理解すべきである。モジュール側壁204は、モジュール側壁204をその内面205からその外面208に貫通する複数の排気口206を含む。図示された実施形態において、排気口206は円形であり複数の垂直列状に整列して示されている。排気口206は円形に限定されず、楕円形または長方形等の他の形状であってもよい。加えて、排気口206は複数の垂直列状に配設される必要はなく、垂直列以外の別の構成に配置されてもよい。排気口206は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の空所に対応する場所においてモジュール側壁204内に配置されている。そのような空所は、セルモジュール200内の個別の電気エネルギー蓄電セルの間にある。排気口206をそのような空所に整列させることにより、個別の電気エネルギー蓄電セルと流体の間の、またはモジュール側壁204の一方の側とモジュール側壁204の他方の側との間の、対流またはその他のタイプの熱伝導を促進する流体の流れが、例えば通常動作中に、より容易に発生しうる。図示されていないが、いくつかの実施形態において、モジュール側壁204は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の周囲への個別の電気エネルギー蓄電セルの配置から生じる電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外側の輪郭に適合するような形状であってよい。側壁204に使用される材料は、電気エネルギー蓄電セルの故障時に生じるガスおよび熱エネルギーに関連する高温に耐えうるタイプのものである。そのような温度は1000℃以上程度でありうる。側壁204の典型的な材料は、金属またはプラスチック、重度に燃焼または変形することなくそのような高温に耐えることが可能な他の材料を含む。
【0062】
電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方には電気エネルギー蓄電セルバリア210が配置されている。電気エネルギー蓄電セルバリア210は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から別の電気エネルギー蓄電セルモジュールへの燃焼の拡散に対するバリアとして働くことと、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セルの電極を蓄電セルバリア210の導電性構成要素から電気的に絶縁するように働くことと、電気エネルギー蓄電セルモジュール200との間の熱伝導へのバリアを提供し、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セルの電極を、電気エネルギー蓄電セルバリア210の剛性または研磨性材料との接触によって引き起こされる損傷から保護することを含むいくつかの機能を果たす。
図7の非限定的な実施形態において、電気エネルギー蓄電セルバリア210は弾性材の電気エネルギー蓄電セル接触保護層214と不燃材の燃焼バリア層216の間に挟設された誘電材の電気絶縁層212を含む。
【0063】
電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は弾性材であり、その非限定的な例は、約130℃以上の温度で不燃性である弾性材を含む。「弾性材」という言い方は、可撓性、弾性であって変形後にその元来の形状に実質的に戻ることが可能な材料を指す。本明細書に記述されるタイプの弾性材は、変形後にその元来の形状に完全に戻る可撓性で弾性の材料に限定されない。本明細書に記述される非限定的な例による弾性材は、変形後にその元来の形状に完全には戻らない可撓性で弾性の材料を含む。非限定的な実施形態において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、エネルギー蓄電セル端子を形成する材料よりも軟質の材料から形成されることによって、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の一部を形成する電気エネルギー蓄電セルの端子への物理的な保護を提供する。さらに別の非限定的な例において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の弾性材は非導電性である。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の非導電性特性は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214が、電気エネルギー蓄電セルに電気的に接続する端子または導電性フィーチャに悪影響を与える、例えば短絡させることを防止する。電気エネルギー蓄電セル保護層214が形成される材料の非限定的な例は、ショアスケールで約50から100未満の硬度を持ち、約10オーム超から約20オーム以上の電気抵抗を持つ材料を含む。特定の実施形態において、弾性材はフルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、パーフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムおよびスチレンブタジエンゴムである。別の具体的な実施形態において、弾性材は、熱硬化性独立気泡ポリウレタンフォームまたはその他の独立気泡熱硬化性ポリマー等の低弾性コンフォーマブルフォームである。
【0064】
電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の一方の側から電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の対向する側への燃焼の伝播のバリアまたは妨害としても働く。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発散するガスの燃焼から生じる炎に対する不燃性妨害または火災遮蔽として働く。さらに別の実施形態において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気絶縁層212の間の断熱を提供する。そのような断熱は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から電気絶縁層212への熱エネルギーの伝達を妨げる、および/またはバリアとして働く。電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気絶縁層212の間の熱伝達を妨げることは、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方に配置された隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール(図示せず)の隣接する電気エネルギー蓄電セル(図示せず)を、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルの故障につながりうる熱エネルギーから遮蔽する。例えば、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の1つの電気エネルギー蓄電セルが故障するという万が一の場合において、蓄電セルは、燃焼すると大量の熱エネルギーを生成するガスを放出する。この熱エネルギーは、他の電気エネルギー蓄電セルを故障させ、潜在的に可燃ガスを放出することがある。これらのガスが発火した場合、電気エネルギー蓄電セルの熱暴走が起こりうる。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214に使用される材料の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルが可燃ガスを放出してこれらのガスの発火が発生する温度に対応する温度で、約0.5BTU/ft
2/hr/インチ未満である熱伝導率値を有する。
図7および8に示された実施形態において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は約0.1mmから3.0mmの厚さである。別の実施形態において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は約0.5mmから2.0mmの厚さであり、さらに別の実施形態において、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は約0.75mmから1.25mmの厚さである。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、望まれる燃焼移動抑制、断熱、電気エネルギー蓄電セルの熱保護および/または振動吸収の量にとりわけ依存して、より厚くてもより薄くてもよい。
【0065】
電気絶縁層212は非導電性材料から形成され、その非限定定的な例は、約130℃以上の温度で不燃性であり、電気絶縁体となるような誘電率を示す材料を含む。非限定的な実施形態において、電気絶縁層212の非導電性材料は、電気エネルギー蓄電セルに電気的に接続された導電性フィーチャに電気絶縁層212が悪影響を与える、例えば短絡させることを防止する。電気絶縁層212の非導電性材料はさらに、電気エネルギー蓄電セルモジュール200を構成する電気エネルギー蓄電セルの端子と電気回路を燃焼バリア層216から電気的に絶縁する。さらに別の非限定的な実施形態において、電気絶縁層212を構成する非導電性材料は不燃性または難燃性であり、したがって、電気絶縁層212が、電気絶縁層212の一方の側からのからの燃焼の電気絶縁層212の反対側への伝播を妨げること、または防止することを可能にする。他の非限定的な実施形態において、電気絶縁層212を構成する非導電性材料は電気エネルギー蓄電セル接触保護層214と燃焼バリア層216の間の断熱を提供する。そのような断熱は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から電気エネルギー蓄電セル接触保護層214を介した電気絶縁層212への熱エネルギーの伝導を妨げる、および/またはバリアとして働く。電気エネルギー蓄電セルモジュール200と燃焼バリア層216の間の熱伝導を妨げることは、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルの故障につながりうる熱エネルギーから、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール(図示せず)を保護することを補助する。例えば、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の1つの電気エネルギー蓄電セルが故障して、燃焼すると大量の熱エネルギーを生成するガスを放出するという万が一の場合において、この熱エネルギーは、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の他の電気エネルギー蓄電セルを故障、破裂および自己発火させる可能性がある。電気エネルギー蓄電セル接触保護層212に使用される材料の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルが破裂して、発火する可能性のある可燃ガスを放出する温度に対応する温度で、約3BTU/ft
2/hr/インチ未満、約2BTU/ft
2/hr/インチ未満、および約1BTU/ft
2/hr/インチ未満である。いくつかの実施形態において、電気絶縁層212の非導電性材料は自己消火性である。
【0066】
非導電性材料はセラミック材料、バーミキュライト系材料または、非導電性または電気伝導性が低く断熱性が高いその他の材料を含みうる。セラミック材料用のキャリアは、紙ベース、セラミック含浸クロス、繊維ガラスまたは薄膜シートに形成できるその他の材料であってよい。非導電性材料の非限定的な例は、不燃性有機バインダーと共に支持されたシリカおよび酸化カルシウム繊維の織物から作製された圧縮可能な繊維シート等のセラミック繊維を含む材料を含む。そのようなセラミック繊維は、アルミナ、ムライト、シリコンカーバイド、ジルコニアまたは炭素から形成されうる。特定の実施形態において、非導電性材料はシリカ/シリカ繊維、アルミニウム、Kevlar(登録商標)、Nomex(登録商標)およびカルシウムマグネシウム珪酸塩繊維を含む。限定するわけではないが、電気絶縁層212に使用されるいくつかの非導電性材料は、1260℃以上まで耐火性がある。
図7および8に示される非限定的な実施形態によれば、電気絶縁層212を構成する非導電性材料の層は約0.1mmから3mmの厚さを持つ。別の実施形態において、電気絶縁層212は約0.25mmから2.0mmの厚さであり、さらに別の実施形態において、電気絶縁層212は約0.35mmから1.25mmの厚さである。電気絶縁層212は、望まれる電気絶縁量、燃焼移動抑制および/または断熱にとりわけ依存して、記述された非限定的な範囲よりもより厚くてもより薄くてもよい。
【0067】
燃焼バリア層216は不燃性で、高強度材料であり、その非限定的な例は、約130℃を超える温度において不燃性であり、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の故障した電気エネルギー蓄電セルからのガス発散から課せられるタイプの力および生じる状況に耐えうる材料を含む。例えば構造的損傷および/または短絡による電気エネルギー蓄電セルの故障は、セル内の圧力上昇の結果として故障した電気エネルギー蓄電セルの破裂を招きうる。破裂すると、電気エネルギー蓄電セル内のガスが高速度で逸出して燃焼する可能性がある。燃焼バリア層216の不燃性で高強度の材料は、携帯式電気エネルギー蓄電装置内から高速度で逸出してくるこれらのガスによって引き起こされた力に耐えることが可能で、そのようなガスに関連する高温に耐えることが可能な材料から選択される。燃焼バリア層216は、故障した電気エネルギー蓄電セルから発散する高温ガスおよび/またはそのような高温ガスから生じる炎が、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方にある隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに突き当たることを妨げ、また、理想的には防止する。ガスおよび/または炎が、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに突き当たることを妨げる、および/または防止することは、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルが、故障した電気エネルギー蓄電セルが燃焼するときに生じる温度に曝されることにより故障する可能性を低減する。非限定的な実施形態において、燃焼バリア層216の不燃性で高強度材料は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールへの燃焼の伝播の妨害またはバリアとして働く。燃焼バリア層216として使用される材料の非限定的な例は、溶融せずに約130℃以上の温度に耐えうる金属または金属合金を含む。別の非限定的な例において、燃焼バリア層216として使用される材料の非限定的な例は、約500℃以上、750℃以上、さらには1000℃を超える温度で溶解しない金属を含む。別の実施形態において、燃焼バリア層216を構成する金属は約1000℃を超える温度に少なくとも10秒曝された後でも溶解しない。さらに別の実施形態において、燃焼バリア層216として使用される材料は約1400℃の温度に少なくとも1秒間曝された後でも溶解しない金属を含む。特定の非限定的な実施形態において、燃焼バリア層216は、銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金から形成される。燃焼バリア層216が形成されうる典型的な金属として銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金を記述しているが、燃焼バリア層216は、ガスおよび/またはガスの燃焼からの炎が、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに突き当たることを妨げるか防止することが可能な他の金属または非金属材料から形成されうる。
【0068】
電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下方には、第2の電気エネルギー蓄電セルバリア218がある。電気エネルギー蓄電セルバリア218は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層220と、電気絶縁層222と燃焼バリア層224を含む。電気エネルギー蓄電セルバリア210およびその電気エネルギー蓄電セル接触保護層214、12への電気絶縁層および燃焼バリア層216に関する記述は、電気エネルギー蓄電セルバリア218の電気エネルギー蓄電セル接触保護層220、電気絶縁層222および燃焼バリア層224に同様に適用される。その記述は簡潔さのため繰り返されない。第2の電気エネルギー蓄電セルバリア218は、その電気エネルギー蓄電セル接触保護層220、電気絶縁層222および燃焼バリア層224の配向において異なっている。電気エネルギー蓄電セルバリア218のこれらの3層は、電気エネルギー蓄電セルバリア210の同じ3層の鏡像である。言い換えると、
図7において電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離れる方向に移動するにつれ電気エネルギー蓄電セル接触保護層220が電気エネルギー蓄電セルモジュール200に最も接近して配置されることになる。電気エネルギー蓄電セル接触保護層220の下方には電気絶縁層222が配置され、電気絶縁層222の下方には燃焼バリア層216が配置される。
【0069】
図7には示されていないが、
図8にさらに示されるように電気エネルギー蓄電装置120はさらに、
図7に示される電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下方に配置された少なくとも1つの付加的な電気エネルギー蓄電セルモジュール226を含む。電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気エネルギー蓄電セルモジュール226は両方とも複数の電気エネルギー蓄電セル232を含む。別の実施形態において、電気エネルギー蓄電装置120は2より多い電気エネルギー蓄電セルモジュールを含んでいてもよい。例えば、電気エネルギー蓄電装置120は3以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含んでいてもよい。
図8において、電気エネルギー蓄電セルモジュール226は電気エネルギー蓄電セルバリア228と電気エネルギー蓄電セルバリア230の間に挟設されている。電気エネルギー蓄電セルバリア228は電気エネルギー蓄電セルバリア210と同一であり、電気エネルギー蓄電セルバリア230は電気エネルギー蓄電セルバリア218と同一である。したがって、電気エネルギー蓄電セルバリア228と電気エネルギー蓄電セルバリア230に関する記述は簡潔さのために省略する。
【0070】
図8を参照すると、電気エネルギー蓄電セルモジュール200は電気エネルギー蓄電セルモジュール226から距離Dだけ離間している。非限定的な実施形態において、距離Dは約5mmから約20mmであり、別の非限定的な実施形態において、距離Dは約7mmから約15mmであり、さらに別の非限定的な実施形態において、距離Dは約8mmから約11mmである。
図7および8に示された実施形態において、電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気エネルギー蓄電セルモジュール226の間に4つのスペーサ234が配置されている。スペーサ234は円筒形状であり、それぞれが中心穴を含む。各スペーサ234の中心穴は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214および220、電気絶縁層212および222、および燃焼バリア層216および224を貫通する各開口236と流体連通している。スペーサ234の中心穴と各開口236の組み合わせが、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の内部を電気エネルギー蓄電セルモジュール226の内部と流体連通させる。この流体連通が、電気エネルギー蓄電セルモジュール200および226内の圧力を均衡させる。
【0071】
本明細書に記述される主題の特定の実施形態において、モジュール側壁204の内面205は、発泡性防炎塗料等の防火性または耐火性材料を担持する。別法として、そのような防火性または耐火性材料は、そのようなモジュールの外面とモジュール側壁204の内面の間の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外側の外壁202によって担持されてもよい。そのような防火性/耐火性材料を提供することは、モジュール側壁204の外部の炎が電気エネルギー蓄電セルモジュール200の内部に移ることを妨げる。
【0072】
図7を参照すると、電気絶縁層212は複数のバイアス排気口238を含んでいる。燃焼バリア層216は複数のバイアス排気口240を含んでいる。電気絶縁層222は複数のバイアス排気口242を含み、燃焼バリア層224は複数のバイアス排気口244を含む。バイアス排気口238、240、242および244は本質的に同一である。
図7を参照して記述される実施形態において、バイアス排気口238および240が上向きに開口しているのに対し、バイアス排気口242および244は下向きに開口している。バイアス排気口238、240、242および244は本質的に、電気エネルギー蓄電セルモジュール200を構成する個々の電気エネルギー蓄電セル232に整列している。
【0073】
バイアス排気口240に関する以下の記述は同様にバイアス排気口238に適用される。
図9および10を参照すると、バイアス排気口240は、燃焼バリア層216に形成された少なくとも1つのフラップ248を含む。
図9および10の典型的な実施形態において、フラップ248は正方形の形状をしている。フラップ248は、燃焼バリア層216を貫通する複数の切込み線を付けた部分250、252および254によって画定される。切込み線を付けた部分250、252および254は、ブレード、スタンプ、レーザ等の金属切断用に適した切断装置を使用して形成されうる。切込み線を付けた部分250、252および254は正方形フラップ248の3辺を画定する。残りの辺はヒンジ部分256によって画定される。ヒンジ部分256は燃焼バリア層216を完全には貫通せずにヒンジ状の構造として働き、その構造に沿ってフラップ248は、
図9に示される閉位置から
図10に示される開位置までフラップ248が移動できるように曲がる。ヒンジ部分256は、燃焼バリア層216をヒンジ部分256の位置で圧迫することが可能な装置を使用して形成されうる。ヒンジ部分256は圧着された構造として示され説明されているが、本明細書に記述される実施形態は圧着されたヒンジ部分256に限定されず、フラップ248のヒンジとして機能する他の構造を含む。例えば、ヒンジ部分256は、ヒンジ部分256に沿った燃焼バリア層216の折り込みまたは曲げを促進する穿孔またはその他の構造によって提供されてもよい。フラップ248のヒンジ部分256は、所定の閾値圧がフラップ248にかかったときに、バイアス排気口238がそのヒンジ部分に沿って曲がって、
図10に示すような方式に開くように設計されうる。
【0074】
燃焼バリア層216に配設されたバイアス排気口240に加えて、同様のバイアス排気口238が電気絶縁層212に配設される。
図7、9、10に示される典型的な実施形態において、バイアス排気口240とバイアス排気口238は実質的に同じであるが、本明細書に記述される実施形態は、実質的に同じであるバイアス排気口240とバイアス排気口238を含む携帯式電気エネルギー蓄電装置に限定されない。
図10を参照すると、電気絶縁層212に配設されたバイアス排気口238は、3つの切込み線を付けた部分とヒンジ部分によって形成されている。図示された実施形態において、バイアス排気口238の3つの切込み線を付けた部分はバイアス排気口240の切込み線を付けた部分250、252および254の下になり、バイアス排気口238のヒンジ部分はバイアス排気口240のヒンジ部分256の下になり、バイアス排気口238のフラップ239はフラップ248の下になる。別の実施形態において、バイアス排気口238の切込み線を付けた部分はバイアス排気口240のヒンジ部分256の下になる。いくつかの実施形態において、フラップ239の周囲寸法はフラップ248の周囲寸法よりも僅かに小さくてもよい。フラップ239とフラップ248の周囲寸法のこの差により、フラップ248が開いたときにフラップ239が燃焼バリア層216内の開口部を通ることが可能になる。逆に、フラップ248と比べてフラップ239の周囲寸法が小さいことにより、フラップ248がバイアス排気口238の開口部を通ることを妨げる。加えて、バイアス排気口238のヒンジ部分は、燃焼バリア層216の開口部を通ったバイアス排気口238のより自在な開口を促進するために、バイアス排気口240のヒンジ部分256から側方に少し偏位していてもよい。
【0075】
バイアス排気口238の下側258は電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の上面に接触する。この接触が、
図9および10における下向き方向へのフラップ238の移動を妨げ、それは次にフラップ248の下向き方向への移動を妨げる。対照的に、フラップ239とフラップ248は
図10に示されるように上向き方向に移動可能である。このように、バイアス排気口238とバイアス排気口240は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離れる方向に開くことができるが、電気エネルギー蓄電セルモジュール200に向かう方向に開くことができない「一方向」排気口である。バイアス排気口238および240は、
図9に示される閉位置にバイアスされるが、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の圧力の上昇、または故障した電気エネルギー蓄電セルから発せられるガスの力は、フラップ239および248をそれらの対応するヒンジ部分に沿って曲げて上向き方向に開かせる駆動力を提供できる。バイアス排気口の一方向の特性は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内のガスを逸出させることに加えて、バイアス排気口に突き当たる可能性があるガスが、そのガスが突き当たる側と反対のバイアス排気口の側にある、電気エネルギー蓄電セルモジュールを構成する電気エネルギー蓄電セルに直接接触することを妨げる、または防止することもする。バイアス排気口は電気エネルギー蓄電セルモジュールから外向きに開いて内向きには開かないため、バイアス排気口は、電気エネルギー蓄電セルモジュール内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発散するガスおよび熱エネルギーの排気を可能にして、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールのバイアス排気口に突き当たるガスおよび熱エネルギーが、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールの電気エネルギー蓄電セルに直接接触することを防止する。
【0076】
電気絶縁層222は複数のバイアス排気口242を含み、燃焼バリア層224は複数のバイアス排気口244を含む。バイアス排気口238およびバイアス排気口240、ならびにバイアス排気口238および240を構成する特徴に関する上記の記述は、バイアス排気口242および244それぞれが、
図7に示される非限定的な実施形態に対して下向きの方向に開くという点を除いて、バイアス排気口242およびバイアス排気口244にも同様に適用される。
【0077】
図11および12を参照すると、バイアス排気口238、240、242および244の形状の別の実施形態が示されている。
図11および12のバイアス排気口は三角形の形状の周囲を持つ。燃焼バリア層216内のバイアス排気口は、2つの切込み線を付けた部分262および264と1つのヒンジ部分266によって画定されるフラップ260を含む。電気絶縁層212は燃焼バリア層216内のバイアス排気口のフラップ260と同様のフラップ261を含むバイアス排気口を含む。バイアス排気口238、240、242および244、フラップ239および248、切込み線を付けた部分250、252および254およびヒンジ部分256に関する上記の記述は、
図11および12に示された燃焼バリア層16および電気絶縁層212内のバイアス排気口のフラップ260および261、切込み線を付けた部分262および264およびヒンジ部分266に同様に適用される。
【0078】
図13および14を参照すると、バイアス排気口238、240、242および244の形状の別の実施形態が示されている。
図13および14の各バイアス排気口はそれぞれが三角形の形状の周囲を持つ4つのフラップ268、270、272および274を備えている。各フラップ268、270、272および274は、一対の直角に交差する切込み線を付けた部分276および278と1つのヒンジ部分280によって画定される。バイアス排気口238および240、フラップ239および248、切込み線を付けた部分250、252および254およびヒンジ部分256に関する上記の記述は、
図13および14の燃焼層216および電気絶縁層212ならびにそれらの対応するフラップ、切込み線を付けた部分およびヒンジ部分に同様に適用される。
【0079】
図8を参照すると、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の圧力が、バイアス排気口238および240(
図7の)が開く圧力を超過した場合、バイアス排気口238および240が開いて、バイアス排気口からガスを逸出させる。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226からガスを逸出させることは、モジュール226が破裂する危険を低減する。逸出するガスは、
図6での破線106と同様の経路を辿る。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226から逸出するガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下側に突き当たり、そこで第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下側に沿って消散し、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の周囲と、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200と外殻282の間の空間を通る。ガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200と外殻282の間の空間を通るにつれて、ガスまたは燃焼ガスの熱エネルギーを消散する。
図8において、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226は第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200から距離Dだけ離間している。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226を第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200から距離Dだけ離間させることは、ガスおよび熱エネルギーがより広い表面領域にわたり横方向に拡散することを可能にすることによって、ガスおよび熱エネルギーが第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226から消散することを促進する。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールから発散するガスの熱エネルギーの消散を促進することは、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の狭い領域に集中する熱エネルギーの大きさを低減し、それにより、そのような集中した熱エネルギーが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セル232の故障または爆発を引き起こす可能性を低減する。 バイアス排気口238および240が開くことは、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の故障した電気エネルギー蓄電セル232から発散したガスおよび熱エネルギーが、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内に、例えば
図6の破線102に沿って内側に方向付けられる可能性を低減する。
【0080】
ガスおよび熱エネルギーが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200と外殻282の間の空間を流れるにつれて、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200は、モジュール側壁204によってガスおよび熱エネルギーから少なくとも完全にまたは部分的に隔離される。モジュール側壁204をはさんだ圧力差分は、モジュール側壁204内の排気口206によって緩和される。排気口206は、モジュール側壁204の一方の側の圧力を、モジュール側壁204の他方の側の圧力と均衡化させることによって携帯式電気エネルギー蓄電装置120内の圧力の均衡化を促進することもする。携帯式電気エネルギー蓄電装置120内の圧力の均衡化は、電気エネルギー蓄電セルバリア210と電気エネルギー蓄電セルバリア218内の開口236によっても促進される。開口236は、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール200内のガスが電気エネルギー蓄電セルバリア210または電気エネルギー蓄電セルバリア218を貫通して携帯式電気エネルギー蓄電装置120の内部空間または隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール226に至ることを可能にする。ガスを電気エネルギー蓄電セルバリア210および電気エネルギー蓄電セルバリア218内に貫通させることは、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の圧力と、外殻282内の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外側の圧力、または電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の圧力を均衡化するのに役立つ。いくつかの実施形態において、エネルギー蓄電セルモジュールの上方に配置された開口236と、電気エネルギー蓄電セルモジュールの下方に配置された開口236の間に、管またはパイプが延在してもよい。
【0081】
本明細書に記述される非限定的な実施形態によるバイアス排気口の動作および利点が、電気エネルギー蓄電セルバリア210内のバイアス排気口を参照して記述されてきたが、バイアス排気口242および244および電気エネルギー蓄電セルバリア218によっても同じ動作および利点が提供される。
図6および8の非限定的な実施形態では2つの電気エネルギー蓄電セルモジュール200および226のみが示されているが、本明細書に記述される実施形態による携帯式電気エネルギー蓄電装置は、本明細書に記述されるタイプの電気エネルギー蓄電セルモジュールを2より多く収容する携帯式電気エネルギー蓄電装置を含む。
【0082】
上記の詳細な記述は、装置の種々の実施形態を模式図および例を使用して示された。そのような模式図および例が1つ以上の機能および/または動作を含む限り、そのような構造および例における各機能および/または動作は、個別に、および/または広範なハードウェアおよびそれらの組み合わせによって集合的に実行されうることが当業者には理解されよう。上記に記述された種々の実施形態を組み合わせてさらなる実施形態をもたらすことも可能である。本明細書で言及された、および/または添付の出願データシートに羅列された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許または外国特許出願および非特許文献は、その全体を参照により本出願に組み込む。実施形態の態様は、必要ならば種々の特許、出願および公報の概念を採用してさらに別の実施形態を提供するために修正されてもよい。
【0083】
完全電動スクーターおよび/またはバイク等の個人輸送自動車での使用向けの発電システムの環境および文脈で一般的に論じてきたが、本明細書の教示は、他の自動車ならびに非自動車環境を含む広範な他の環境に適用されうる。さらに、特定の形状および/または配向に関して示してきたが、図示と記述は網羅的であることを意図しておらず、実施形態を図示された厳密な形式に限定する意図もない。例えば、電気エネルギー蓄電セルは円柱である必要はなく、正方形柱、正方形箱状または長方形箱状等の別の形状をしていてもよい。同様に、相互に上下してスタックされたモジュールを参照して、多数の電気エネルギー蓄電セルモジュールを利用した実施形態が図示され記述されてきたが、そのような記述は網羅的であることを意図しておらず、本明細書に記述される実施形態をそのような厳密な構成に限定する意図はない。例えば、電気エネルギー蓄電セルモジュールは、横並びに配置されて、断熱材の層と弾性材の層を含む電気エネルギー蓄電セルバリアによって隔離されてもよい。さらに、電気エネルギー蓄電セルバリアは、弾性材の層と断熱材の層の組み合わせ、ならびに弾性材の2つの層の間に挟設された断熱材の層として図示され記述されてきた。繰り返すが、これらの図示および記述は網羅的であることを意図しておらず、実施形態を図示された厳密な形式に限定する意図はない。例えば、電気エネルギー蓄電セルバリアは、図示され特定的に記述された断熱材の層および弾性材の層より多くの数の層を含んでいてもよい。
【0084】
要約での記述を含む、図示された実施形態の上記の記述は、網羅的であることを意図しておらず、実施形態を開示された厳密な形式に限定する意図はない。例証のため特定の実施形態および例が本明細書に記述されているが、関連技術の当業者によって認識されうるように、本開示の趣旨および範囲から逸脱せずに種々の同等な修正が行われうる。
【0085】
上記の詳細な記述に鑑み、実施形態に対してこれらおよびその他の変更が行われうる。一般に、以下の特許請求の範囲、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書に開示された特定の実施形態に限定すると理解されるべきではなく、全ての可能な実施形態を、そのような特許請求の範囲が権利を持つ同等物の全範囲を伴って包含すると理解されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。