特許第6695809号(P6695809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695809
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】毛乳頭細胞活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20200511BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20200511BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 36/51 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20200511BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61Q7/00
   A61K31/702
   A61K31/7024
   A61K31/7032
   A61P17/14
   A61P43/00 107
   A61K31/506
   A61K36/51
   A61K31/16
   A61K31/355
   A61K31/19
   A61K31/7076
   A61K8/49
   A61K8/9789
   A61K8/42
   A61K8/67
   A61K8/63
【請求項の数】17
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-559790(P2016-559790)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2015004439
(87)【国際公開番号】WO2016079912
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-235352(P2014-235352)
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆嗣
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−77044(JP,A)
【文献】 特開平11−158197(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/086327(WO,A1)
【文献】 特開2000−198719(JP,A)
【文献】 特許第3719207(JP,B2)
【文献】 特開平9−188607(JP,A)
【文献】 特開平10−203930(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61K 31/702,31/7024,31/7032
A61Q 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(6)のいずれかに示す成分を含む、毛乳頭細胞の増殖活性化剤。
(1)リン酸化オリゴ糖のアルカリ土類金属塩。
(2)リン酸化オリゴ糖及び/又はそのアルカリ金属塩と、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムとの組み合わせ。
(3)グルコース−1−リン酸のアルカリ土類金属塩。
(4)グルコース−1−リン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムとの組み合わせ。
(5)ラクトビオン酸のアルカリ土類金属塩。
(6)ラクトビオン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムとの組み合わせ。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属は、カルシウムまたはマグネシウムである、請求項1に記載の増殖活性化剤。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属は、カルシウムである、請求項1に記載の増殖活性化剤。
【請求項4】
前記成分が、ラクトビオン酸カルシウム塩、グルコース−1−リン酸カルシウム塩(G1P−Ca)、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))、又はリン酸化オリゴ糖マグネシウム塩(POs−Mg)である、請求項1に記載の増殖活性化剤。
【請求項5】
前記成分は、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))である、請求項1に記載の増殖活性化剤。
【請求項6】
さらに毛母細胞も増殖促進させるためのものである、請求項1〜5のいずれかに記載の増殖活性化剤。
【請求項7】
さらに毛包も増殖促進させるためのものである、請求項1〜5のいずれかに記載の増殖活性化剤。
【請求項8】
さらに毛母細胞および毛包も増殖促進させるためのものである、請求項1〜5のいずれかに記載の増殖活性化剤。
【請求項9】
さらに、他の有効成分を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の増殖活性化剤
【請求項10】
前記有効成分はミノキシジル、センブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、グリチルリチン酸二カリウムおよびアデノシンからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項9に記載の増殖活性化剤
【請求項11】
(1)リン酸化オリゴ糖のアルカリ土類金属塩、或は、(2)リン酸化オリゴ糖及び/又はそのアルカリ金属塩と、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムとの組み合わせと、
アデノシンと
を含む、育毛剤。
【請求項12】
前記育毛剤は、薄毛の治療、脱毛の予防、毛生促進および発毛促進からなる群より選択される少なくとも1つのためのものである、請求項11に記載の育毛剤。
【請求項13】
さらに、他の有効成分を含む、請求項11又は12に記載の育毛剤。
【請求項14】
前記有効成分はミノキシジル、センブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、およびグリチルリチン酸二カリウムからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項13に記載の育毛剤。
【請求項15】
(1)リン酸化オリゴ糖のアルカリ土類金属塩、或は、(2)リン酸化オリゴ糖及び/又はそのアルカリ金属塩と、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムとの組み合わせと、
アデノシンと
を含む、発毛剤。
【請求項16】
さらに、他の有効成分を含む、請求項15に記載の発毛剤。
【請求項17】
前記有効成分はミノキシジル、センブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、およびグリチルリチン酸二カリウムからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項16に記載の発毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪分野に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の成長においては毛根の毛母細胞が分裂し、そこから生じた細胞が毛髪を構成していく。一方、毛髪の成長には毛周期と呼ばれる周期があり、成長期→退行期→休止期を繰り返す。毛乳頭細胞は増殖因子の産生と放出を通じて、毛包上皮幹細胞の増殖・分化に影響を及ぼし、毛周期を制御している。毛乳頭細胞や毛母細胞の活性化が毛成長のメカニズムに寄与すると言われている。
【0003】
また、毛周期に応じて毛包では活発に血管のリモデリングが行われるが、このときの血管新生に問題があると、毛髪形成のための栄養や酸素の供給が不十分となる。毛包血管網からの血流の不足は男性型脱毛症(AGA) の病態に関与すると言われている。
【0004】
毛乳頭細胞の遺伝子と発毛・毛成長については、以下のようなことが知られている。すなわち、乳頭細胞が毛母細胞に対して分泌する増殖因子にはFGF-7やIGF-1などが知られている。これら遺伝子には毛包成長を維持する作用がある。血管内皮成長因子(VEGF)は毛乳頭細胞より分泌されて毛包血管の増生に関わり、またオートクラインに毛乳頭細胞を増殖させる効果があるが、成長期から退行期へ移行するにしたがい、発現量は減少する。VEGF遺伝子はAGA(男性型脱毛症)の毛組織で発現が低下している。VEGFBはVEGFが作用する受容体であるVEGFR-1に競合して結合する。VEGFBは血管内皮細胞の増殖や透過性亢進活性を持つが、毛包での効果は不明である。
【0005】
Wntファミリーは毛包発生に関与することが知られている。そのうち、Wnt5aは毛乳頭細胞のほか、外毛根鞘細胞、内毛根鞘細胞でも発現し、毛包の発生に関与し、毛乳頭細胞の細胞死を防ぐ効果がある。毛乳頭細胞においては成長期に発現量が最大となることが知られている(非特許文献1=PLoS One 4, e5354 (2009), 非特許文献2=Acta Histochemica 113,608-612 (2011))。
【0006】
アルカリホスファターゼ (ALP、ALPL) は発毛誘導能を含む毛乳頭細胞の活性の指標となる。
【0007】
Versican(バーシカン)はコンドロイチン硫酸プロテオグリカンで、成長期の毛包で増加し、休止期に向けて減少する(非特許文献3=J. Dermatol. Sci.39,147-154(2005))ことが知られており、発現量は発毛誘導活性と相関がある。
【0008】
育毛効果のある薬剤としては種々知られており、日本皮膚科学会による「脱毛症治療のガイドライン」で5段階に有効性をランク付けした中で、ミノキシジル、フィナステリド(男性のみ)は「強く勧められる」に該当し、アデノシンは「考慮してもよいが、十分な根拠が無い」に分類される。その他に塩化カルプロニウム、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン(サイトプリン)、ペンタデカン、ケトコナゾール、セファランチンが前記ガイドラインで取り上げられている。
【0009】
ミノキシジルはSUR(sulfonylurea receptor)の活性化と、それに基づくミトコンドリアATP感受性Kチャネル開放による毛母細胞アポトーシスの抑制と、血管平滑筋ATP感受性Kチャネル開放による毛組織血流改善、毛乳頭細胞からのVEGFなどの細胞成長因子産生促進効果が報告されている。
【0010】
フィナステリドはテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素である5α-還元酵素を阻害することで、ジヒドロテストステロンによって引き起こされる男性の脱毛症であるAGAに対し効果がある。一方で、AGA以外の脱毛症である円形脱毛症などには効果がない。
【0011】
t−フラバノンは毛母細胞の増殖を抑制するTGF−βの発現を抑制することで、毛成長を促進すると考えられている。
【0012】
6-ベンジルアミノプリンは毛母細胞のアポトーシスに関与するNT-4遺伝子の毛乳頭細胞での発現を抑制し、発毛とともに抜け毛を減らす。
【0013】
アデノシンは、毛乳頭に直接作用し、発毛促進因子であるFGF-7の産生量を高めて発毛を促進することで毛周期の成長期を長くさせ、細く弱い毛から太くて強い毛に育てる作用がある。
【0014】
加えて、特公平5−38726号公報(特許文献1)にはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びヘパラン硫酸である低分子酸性ムコ多糖類が、特開平9−188607号公報(特許文献2)には硫酸化多糖及び/又はその塩が、特開平10−203930号公報(特許文献3)にはアルギン酸オリゴ糖またはその塩が、特許第2555389号(特許文献4)にはシアル酸及びシアル酸誘導体が、特開2004−238286号公報(特許文献5)にはβ-1,3-グルカン誘導体の一つとしてβ-1,3-グルカンの硫酸エステル及びリン酸エステルが、特許3831252号公報(特許文献6)にはフコイダンが、特許3719207号公報(特許文献7)には酸性キシロオリゴ糖が育毛効果をもつことが示されているが、毛乳頭細胞に作用することは明示も示唆もされていない。さらにそれらのナトリウム塩で効果が得られている。
【0015】
また、特許2583812号公報(特許文献8)にはアルギン酸、カラギーナン、ペクチン及びデキストラン硫酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸性多糖体のカチオンを水素イオンに交換することで養毛効果が増進することが示されている。
【0016】
特許第3240102号公報(特許文献9)にはリン酸化糖カルシウム塩がカルシウムを可溶化させて、口腔内組成物や肥料などの用途が開示されている。特開2006−249077号公報(特許文献10)にはリン酸化糖カルシウム塩の皮膚外用剤用途が示されており、ミネラル供給、表皮のコラーゲン産生促進及び皮膚の保水効果の改善についての効果が開示されている。WO2007/040027号公報(特許文献11)にはリン酸化糖カルシウム塩とアスコルビン酸等を組み合わせることにより、皮膚の保湿効果や老化予防、細胞賦活効果もしくは美白効果を著しく向上することが開示されている。特開2012−77044号公報(特許文献12)にはリン酸化糖カルシウム塩が表皮のターンオーバー促進、ケラチノサイト分化促進、タイトジャンクション形成促進作用を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特公平5−38726号公報
【特許文献2】特開平9−188607号公報
【特許文献3】特開平10−203930号公報
【特許文献4】特許第2555389号
【特許文献5】特開2004−238286号公報
【特許文献6】特許3831252号公報
【特許文献7】特許3719207号公報
【特許文献8】特許2583812号公報
【特許文献9】特許第3240102号公報
【特許文献10】特開2006−249077号公報
【特許文献11】特WO2007/040027号公報
【特許文献12】特開2012−77044号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】PLoS One 4, e5354 (2009),
【非特許文献2】Acta Histochemica 113, 608-612 (2011)
【非特許文献3】J. Dermatol. Sci. 39, 147-154 (2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは鋭意開発した結果、歯の再石灰化促進効果や皮膚のバリア機能向上効果などが知られていたリン酸化糖カルシウム等の酸性糖アルカリ土類金属塩について研究を進め、毛髪に対する効果を見出した。本発明では、毛周期と毛成長を制御する毛乳頭細胞に対して、リン酸化オリゴ糖カルシウム及び、その類似体が毛髪の成長に重要な働きを有する遺伝子を活性化する機能を有することを新たに見出した。また、本発明者らは毛乳頭細胞の増殖を促進する効果も見出した。これにより、リン酸化オリゴ糖カルシウムを含む酸性糖アルカリ土類金属塩の毛乳頭細胞の増殖・活性化による育毛用途への応用が可能と考えられる。他方、酸性糖ナトリウム塩では効果を有しないことも判明しており、アルカリ土類金属を用いることが有利であることが判明した。上記背景技術で説明したいずれの文献にもリン酸化糖カルシウム塩が毛乳頭細胞に与える効果は明示も示唆もされていない。
【0020】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(項目1)アルカリ土類金属を含む酸性糖を含む、毛乳頭細胞の増殖活性化剤。
(項目2)前記酸性糖はリン酸化糖およびラクトビオン酸からなる群より選択される、項目1に記載の増殖活性化剤。
(項目3)前記酸性糖はリン酸化糖である、項目1または項目2に記載の増殖活性化剤。
(項目4)前記アルカリ土類金属は、カルシウムまたはマグネシウムである、項目1〜3のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目5)前記アルカリ土類金属は、カルシウムである、項目1〜4のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目6)前記アルカリ土類金属を含む酸性糖は、ラクトビオン酸カルシウム塩、グルコース−1−リン酸カルシウム塩(G1P−Ca)、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標)ともいう)、リン酸化オリゴ糖マグネシウム塩(POs−Mg)である、項目1〜5のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目7)前記アルカリ土類金属を含む酸性糖は、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))である、項目1〜6のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目8)アルカリ土類金属を含む酸性糖は、酸性糖アルカリ土類金属塩、または酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩もしくは酸性糖と酸性糖アルカリ土類金属塩以外のアルカリ土類金属塩との組み合わせによって提供される、項目1〜7のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目9)前記酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩は酸性糖アルカリ金属塩である、項目8に記載の増殖活性化剤。
(項目10)前記酸性糖アルカリ土類金属塩以外のアルカリ土類金属塩は、水溶性アルカリ土類金属塩である、項目8または9に記載の増殖活性化剤。
(項目11)さらに毛母細胞も増殖促進させるためのものである、項目1〜10のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目12)さらに毛包も増殖促進させるためのものである、項目1〜11のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目13)さらに毛母細胞および毛包も増殖促進させるためのものである、項目1〜12のいずれか1項に記載の増殖活性化剤。
(項目14)アルカリ土類金属を含む酸性糖を含む、育毛剤。
(項目15)前記育毛剤は、薄毛の治療、脱毛の予防、毛生促進および発毛促進からなる群より選択される少なくとも1つのためのものである、項目14に記載の育毛剤。
(項目15A)項目2〜14のいずれか1項に記載の特徴をさらに有する、項目14または15に記載の育毛剤。
(項目16)アルカリ土類金属を含む酸性糖を含む、発毛剤。
(項目16A)項目2〜14のいずれか1項に記載の特徴をさらに有する、項目14または16に記載の発毛剤。
(項目17)さらに、他の有効成分を含む、項目1〜13のいずれか1項に記載の毛乳頭細胞増殖剤、項目14、15または15Aに記載の育毛剤、または項目16もしくは16Aに記載の発毛剤。
(項目18)前記有効成分はミノキシジルを含む、項目17に記載の剤。
(項目19)毛乳頭細胞の増殖活性化のためのアルカリ土類金属を含む酸性糖。
(項目20)毛乳頭細胞の増殖活性化のための方法であって、該方法は、該増殖活性化を必要とする被験体に対して有効量のアルカリ土類金属を含む酸性糖および薬学的に許容し得るキャリアを含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【0021】
本発明は以下をも提供する。
(A1)アルカリ土類金属および酸性糖の組合せを含む、毛乳頭細胞の増殖活性化剤。
(A2)前記酸性糖はリン酸化糖およびラクトビオン酸からなる群より選択される、項目A1に記載の増殖活性化剤。
(A3)前記酸性糖はリン酸化糖である、項目A1またはA2に記載の増殖活性化剤。
(A4)前記アルカリ土類金属は、カルシウムまたはマグネシウムである、項目A1〜A3のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A5)前記アルカリ土類金属は、カルシウムである、項目A1〜A4のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A6)前記アルカリ土類金属および酸性糖の組合せは、ラクトビオン酸カルシウム塩、グルコース−1−リン酸カルシウム塩(G1P−Ca)、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))、リン酸化オリゴ糖マグネシウム塩(POs−Mg)である、項目A1〜A5のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A7)前記アルカリ土類金属および酸性糖の組合せは、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))であるかまたは混合するとリン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))となる成分である、項目A1〜A6のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A8)前記アルカリ土類金属および酸性糖の組合せは、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))である、項目A1〜A7のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A9)前記アルカリ土類金属および酸性糖の組合せは、混合するとリン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))となる成分であり、塩化カルシウムとリン酸ナトリウムとを含む、項目A1〜A8のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A10)アルカリ土類金属および酸性糖の組合せは、酸性糖アルカリ土類金属塩、または酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩もしくは酸性糖と酸性糖アルカリ土類金属塩以外のアルカリ土類金属塩との組み合わせによって提供される、項目A1〜A9のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A11)前記酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩は酸性糖アルカリ金属塩である、項目A10に記載の増殖活性化剤。
(A12)前記酸性糖アルカリ土類金属塩以外のアルカリ土類金属塩は、水溶性アルカリ土類金属塩である、項目A10または11に記載の増殖活性化剤。
(A13)さらに毛母細胞も増殖促進させるためのものである、項目A1〜A12のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A14)さらに毛包も増殖促進させるためのものである、項目A1〜A13のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A15)さらに毛母細胞および毛包も増殖促進させるためのものである、項目A1〜A14のいずれか1項記載の増殖活性化剤。
(A16)アルカリ土類金属および酸性糖の組合せを含む、育毛剤。
(A17)前記育毛剤は、薄毛の治療、脱毛の予防、毛生促進および発毛促進からなる群より選択される少なくとも1つのためのものである、項目A16に記載の育毛剤。
(A18)アルカリ土類金属および酸性糖の組合せを含む、発毛剤。
(A19)さらに、他の有効成分を含む、項目A1〜A15のいずれか1項に記載の毛乳頭細胞増殖剤、項目A16またはA17に記載の育毛剤、または項目A18に記載の発毛剤。
(A20)前記有効成分はミノキシジルまたはアデノシンを含む、項目A19に記載の剤。
(A21)前記有効成分はミノキシジル、センブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、グリチルリチン酸二カリウムおよびアデノシンからなる群より選択される少なくとも一つを含む、項目A19に記載の剤。
(A22)前記有効成分はアデノシンを含む、項目A19に記載の剤。
(A23)毛乳頭細胞の増殖活性化のためのアルカリ土類金属を含む酸性糖。
(A24)毛乳頭細胞の増殖活性化のための方法であって、該方法は、該増殖活性化を必要とする被験体に対して有効量のアルカリ土類金属および酸性糖の組合せならびに薬学的に許容し得るキャリアを含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【0022】
本発明において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0023】
通常のカルシウム剤に比べて毛乳頭細胞の増殖を促進させる。通常のカルシウム剤では活性化されないCSPG4、Wnt5a、ALPL、Tenascin C、Versican、Fibronectin、VEGFを活性化する。また、FGF−7の発現も促進する。Wnt5aの促進により毛乳頭細胞アポトーシス抑制が示される。VEGFの発現により毛包血管新生が示される。FGF−7の発現により毛母細胞増殖促進が示される。ALPLおよびVersicanの促進により毛乳頭細胞の活性が促進されていることが示される。Versicanは毛乳頭細胞特異的細胞外基質である。Tenascin Cの発現により成長期毛包の促進が示される。CSPG4の増加により成長期毛包の促進が示される。Fibronectinは広く存在する細胞外基質であり毛乳頭細胞等の促進が期待される。これらの遺伝子の発現上昇により、毛乳頭細胞が毛成長期の機能を発揮して、毛成長を促進する。通常のカルシウム剤を与えた時に発現が上昇するVEGFBについて、発現抑制する効果がある。ミノキシジルとの併用では相加的(補完的)に効果をもたらす。つまり、ミノキシジルとの併用により、別のメカニズムの組み合わせでさらに毛成長促進を達成することができると考えられる。本発明は、比較的安価に調製することができるものであり、また、医薬品としての使用のほか、化粧品や医薬部外品としても使用が可能である点、従来の医薬用途に開発されている育毛剤とは異なるといえる。
【0024】
これまで、POs−Ca(登録商標)等の酸性糖アルカリ土類金属塩については、保湿、バリア機能強化などの皮膚外用剤としての効果は明らかにされていたが、毛髪に対する効果は不明であり、特に毛乳頭細胞に与える効果は示唆もされていなかった。育毛効果のある素材はこれまでに医薬品主剤としてミノキシジル、フィナステリド、塩化カルプロニウムなどが、医薬部外品の有効成分としてt-フラバノン、サイトプリン、ペンタデカン、アデノシン、ニンジンエキス、センブリエキスなどの植物エキスが報告されている。しかし、それぞれ作用機序は一様ではなく、また作用機序不明のものも多い。そのため、育毛・発毛において重要な遺伝子群を総じて活性化するには、遺伝子発現への影響の異なる多くの素材の組み合わせが効果的であり、本発明は、新規な発毛素材を提供するという点で有用である。
【0025】
また、医薬品として登録された薬剤はかえって化粧品や食品としての用途が制限されるという問題もあるが、本発明の酸性糖アルカリ土類金属塩は、食品や化粧品として広く利用されており、安全性も確認されていることから、従来の医薬品として開発された育毛剤または発毛剤に比較して患者に対する副作用が低いであろうことが期待される。
【0026】
よって、本発明は、カルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属イオンを適度にキレートする酸性糖カルシウム塩又はマグネシウム塩を毛乳頭細胞に作用させることで、毛成長関連遺伝子の発現にこれまでに報告されている薬剤とは異なる効果を与え、毛髪成長を促すという作用効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1Aは、カルシウム種の異なる物質の細胞増殖率の比較を示す。コントロールを1とした、増殖率を示す。左はPOs−Ca(登録商標)であり、右は塩化カルシウムの相当量を示す。
図1B図1Bは、別のロットで行ったPOs−Ca(登録商標)での毛乳頭細胞増殖試験の結果を示す。POs−Ca(登録商標)の作用濃度として、0.2%を超える濃度で毛乳頭細胞増殖効果があることを示した。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05は黒丸同士を結んだ線で示す。
図1C図1Cは、別のロットで行ったグルコース−1−リン酸カルシウムでの毛乳頭細胞増殖試験の結果を示す。グルコース−1−リン酸カルシウムの作用濃度として、0.3%を超える濃度で毛乳頭細胞増殖効果があることを示した。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05は黒丸同士を結んだ線で示す。
図1D図1Dは、POs−Naと塩化カルシウムとを混合して最終的にPOs−Ca(登録商標)となるようにした場合の毛乳頭細胞増殖試験の結果を示す。POs−Naと塩化カルシウムとを混合して最終的にPOs−Ca(登録商標)とした場合の作用濃度として、試した濃度全てで毛乳頭細胞増殖効果があることを示し、0.1%未満でも効果があることが示唆された。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05は黒丸同士を結んだ線で示す。
図1E図1Eは、図1Dで示した各々の単独成分(POs−Naおよび塩化カルシウム)の場合の毛乳頭細胞増殖試験の結果を示す。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05で検定したところ有意差を示すペアはなかった。いずれも、毛乳頭細胞の増殖は見られなかったことから、両者が必要であることが示された。
図2図2は、育毛効果および発毛効果に関連する種々の遺伝子の発現を示す。各グラフは左からコントロール、CaCl、POs−Ca(登録商標)を示す。コントロールを1とした。グラフは、上欄左からCSPG4、Wnt5a、ALPLを示し、中欄左からTenascin C、Versican、Fibronectinを示し、下欄左からVEGF、VEGFB、FGF7を示す。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05は*で示す。
図3図3は、種々の遺伝子の発現についてミノキシジルとの比較実験を示す。各グラフは左からコントロール、ミノキシジル、POs−Ca(登録商標)を示す。コントロールを1とした。上欄左からFGF−7、VEGF、Wnt5aを示し、中欄左からALPL、Versican、VEGFBを示し、下欄左からFibronectin、Tenascin C、CSPG4を示す。平均±標準偏差を示し、Dunnett検定でp<0.05は*で示す。
図4A図4Aは、POs−Ca(登録商標)とアデノシンと組み合わせた場合の遺伝子発現の変動の観察結果である。上パネルにはFGF7、下パネルでは左からVEGF、VCANおよびWNT5Aを示す。実験は、DMEM(無血清)中でPOs−Ca(登録商標)0.25%およびアデノシン50μMの組合せで行い、37℃で5時間インキュベートして行った。Dunnett検定でp<0.05で検定したところアデノシン、POs−Ca(登録商標)およびPOs−Ca(登録商標)+アデノシンのすべてにおいて有意差があった(n=8)。さらにFGF7の場合、POs−Ca(登録商標)とアデノシンとを混合すると相乗的に作用することも示された。VEGF、VCANおよびWNT5Aの場合は、POs−Ca(登録商標)とアデノシンとの組み合わせは相加的に寄与していた。
図4B図4B図4Aの続きで、同様の実験を別の遺伝子(CSPG4,FN1およびTNC)で行った結果を示す。Dunnett検定でp<0.05で検定したところ、POs−Ca(登録商標)およびPOs−Ca(登録商標)とアデノシンとの組み合わせで有意差があることが分かった(n=8)。他方、POs−Ca(登録商標)とアデノシンとは相加的に寄与していた。
図5図5は、マグネシウムとの組み合わせの場合の遺伝子発現変動の観察結果である。実験は、DMEM(無血清)中でPOs−Ca(登録商標)0.25%および塩化マグネシウム0.052%(最終)の組合せで行い、37℃で5時間インキュベートして行った。Dunnett検定でp<0.05で検定したところ(p<0.05は黒丸同士を結んだ線で示す。)、FGF7、VEGF、WNT5A(グラフ左から)のうち、FGFおよびWNT5Aでは、POs−Mgが有意に発現を亢進していた。リン酸化糖が金属イオンのキャリアとなって効果を奏したことが考えられる。
図6図6は、POs−Caと一般的育毛成分とを組み合わせた場合の遺伝子発現変動を観察した結果である。実験は、DMEM(血清マイナス)中でPOs−Ca0.25%、および追加の成分としては、グリチルリチン酸二カリウム(0.25%)、トコフェロール酢酸エステル(1%)、パントテニルエチルエーテル(0.125%)およびセンブリ(1%)との組み合わせによる効果を観察した。グラフでは、上パネルでFGF7に対する効果を、下パネルでVEGFに対する効果を示す。左から組合せ無し、グリチルリチン酸二カリウム(0.25%)、トコフェロール酢酸エステル(1%)、パントテニルエチルエーテル(0.125%)およびセンブリ(1%)との組み合わせを示す。各々の棒の左側はPOs−Ca(登録商標)なし、右側がPOs−Ca(登録商標)を組み合わせた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0029】
(酸性糖アルカリ土類金属塩を含む、毛乳頭細胞の増殖活性化剤、育毛剤・発毛剤)
1つの局面において、本発明は、酸性糖アルカリ土類金属塩を含む、毛乳頭細胞の増殖活性化剤、育毛剤または発毛剤を提供する。本発明は、酸性糖アルカリ土類金属塩を用いることで、従来予想されていなかった毛乳頭細胞の増殖活性化効果を実証した。また、本発明では、種々の毛髪関連遺伝子において、正の効果があることが示された。例えば、Wnt5aが促進されており毛乳頭細胞アポトーシス抑制が示される。VEGFの発現が亢進しており毛包血管新生が示される。FGF−7の発現が亢進しており毛母細胞増殖促進が示される。ALPLおよびVersicanの発現が促進しており毛乳頭細胞の活性が促進されていることが示される。Versicanは毛乳頭細胞特異的細胞外基質であり、発現上昇により毛乳頭細胞が活性化していることが示される。Tenascin Cの発現が促進されており、成長期毛包の促進が示される。CSPG4の発現が促進されており、成長期毛包の促進が示される。Fibronectinは広く存在する細胞外基質でありこの細胞外基質も促進していることから、毛乳頭細胞等の促進が示される。これらの遺伝子の発現上昇により、毛乳頭細胞が毛成長期の機能を発揮して、毛成長を促進する。通常のカルシウム剤を与えた時に発現が上昇するVEGFBについて、発現抑制する効果がある。本発明では、このような効果を実証することにより、薄毛の治療、脱毛の予防、毛生促進および発毛促進等の育毛効果および発毛効果が達成され得ることが示された。本発明の毛乳頭細胞増殖剤、育毛剤、または発毛剤は、さらに、他の有効成分を含む、そのような有効成分としては、ミノキシジル等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0030】
本明細書において、「酸性糖アルカリ土類金属塩」とは、当該分野で通常使用されるのと同じ意味で使用され、酸性糖とアルカリ土類金属との塩をいい、水溶液で存在する場合は、そのイオン形態等も含むことが理解される。
【0031】
本明細書において「酸性糖」とは、酸性基を含む任意の糖をいう。使用され得る酸性基としては、リン酸基、硫酸基等の無機酸基、カルボキシ基等の有機酸基等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0032】
本明細書において「アルカリ土類金属」としては、周期律表IIa族に属する任意の金属をいい、例えば、本明細書において、通常、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、バリウムなどが含まれる。本発明において使用されるアルカリ土類金属としては、カルシウムまたはマグネシウムが好ましいがこれらに限定されない。本発明においてアルカリ土類金属が酸性糖との組合せ(アルカリ土類金属を含む酸性糖)で提供される場合、酸性糖アルカリ土類金属塩、または酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩もしくは酸性糖と水溶性アルカリ土類金属塩との組み合わせとして提供され得る。1つの好ましい実施形態では、酸性糖アルカリ土類金属塩は、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))であり得る。
【0033】
本発明の一実施形態において「塩」は、例えば、任意の酸性基(例えばリン酸基)で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性基または塩基性実体(例えばアルカリ土類金属)で形成されるカチオン塩を含む。本発明において「塩」は、目的とする酸性基を有する酸性糖と、目的とする塩基性基または塩基性実体(アルカリ土類金属)を有する塩とを提供して適時に合わせることによって提供されることができる。
【0034】
本明細書において「毛乳頭細胞」とは、毛球の先端部に毛乳頭を構成する細胞をいう。毛は表皮から上の部分を「毛幹」、表皮より下の部分を「毛根」と呼び、毛根部の一番下のふくらんだ部分は「毛球」を構成する。毛乳頭が毛細血管から栄養を取り込んで、毛を成長させるとされている。
【0035】
本明細書において「毛包」とは、毛嚢ともいい、毛根を包む組織である。毛根を保護し,毛の伸長の通路を構成する。
【0036】
本明細書において「増殖活性化」とは、毛乳頭細胞についていうとき、何も処置しない状態に比べて増殖速度が増加することをいう。毛乳頭細胞の増殖活性化が起こると、毛髪の再生のサイクルが促進され、既に存在している毛髪の増毛硬化につながるとされることから、育毛効果が実証されたといえることになる。毛乳頭細胞と育毛効果の関係については、例えば、日本薬理学雑誌133,73−77(2009)のp.75において、抗男性型脱毛症(AGA)薬の創出を目指した評価系として、毛乳頭細胞増殖試験の評価系と、毛乳頭細胞の増殖促進が太くしっかりとした毛を形成させるのに重要である旨記載されており、また、日本薬理学雑誌119,167−174(2002)のp.170 6.ミノキシジルの発毛メカニズムにおいて、ミノキシジルの発毛効果の考察として、具体的作用に毛乳頭細胞の増殖作用が示されており、さらに「化粧品の有用性評価技術の進歩と将来展望」(編集企画:日本化粧品技術者会)では、育毛剤のin vitro評価系として毛乳頭細胞培養と増殖率や増殖因子の定量などが一次スクリーニングとして紹介されていることから、毛乳頭細胞培養と増殖率や増殖因子の定量により、育毛効果が一定程度実証されたといえることが当該分野でも認知されているといえる。
【0037】
本明細書において「発毛」とは、新たに毛を生やすことをいい、脱毛した毛穴から発毛させる作用効果が含まれる。
【0038】
本明細書において「育毛」とは、すでにある毛の脱落防止および成長促進を包含する概念をいい、産毛を含め,今生えている髪の毛を太く丈夫に育てる作用効果も含まれる。
【0039】
1つの実施形態では、育毛作用は、毛伸長速度を指標として評価することができる。育毛作用とは、毛の伸長の促進、太さの増大、毛周期の休止期から成長期への移行促進、および/または成長期から退行期への移行阻害を行なうことにより結果として毛の量が増加していることを意味する。従って、育毛には、発毛、養毛及び脱毛予防の概念が包含されるものとする。育毛作用を測定する方法としては、特に限定されないが、例えば単離毛包を器官培養し、培養期間中の毛の伸長量を測定する方法が挙げられる。
【0040】
本明細書では、「毛乳頭細胞増殖促進剤」とは、毛乳頭細胞の増殖を促進する薬剤をいい、毛乳頭細胞増殖促進剤を加えた場合に、それを加えないときと比較して毛乳頭細胞の増殖が増大すること、好ましくは統計学的に有意に増大することをいう。
【0041】
本明細書において「発毛剤」とは、発毛作用効果のある任意の薬剤をいう。
【0042】
本明細書において「育毛剤」とは、育毛作用効果のある任意の薬剤をいう。
【0043】
本明細書において使用される用語「医薬品」とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用することが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないもの;または人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないものをいう。医薬品の定義には、医薬部外品および化粧品は含まれない。
【0044】
毛髪関係の医薬品の効能範囲としては、円形脱毛症、脂漏性脱毛症、びまん性脱毛症、老人性脱毛症、AGAなど薄毛の改善や、発毛促進などに関する項目で、厚生労働省が認めたものを挙げることができる。
【0045】
本明細書において使用される用語「医薬部外品」とは、(1)吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止;あせも、ただれ等の防止;脱毛の防止、育毛又は除毛;或いは人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止が目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないもの、もしくは(2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用することが目的とされている物、または人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物、のうち、厚生労働大臣が指定するものをいう。なお、日本国以外の国では「医薬品」および「医薬部外品」の定義は、その国の法律が優先する。
【0046】
毛髪関係での、医薬部外品の効能範囲としては、育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、病後・産後の脱毛、養毛を挙げることができる。
【0047】
本明細書において「薬学的に許容しうる」は、動物、そしてより詳細にはヒトにおける使用のため、政府の監督官庁に認可されたか、あるいは薬局方または他の一般的に認められる薬局方に列挙されていることを意味する。
【0048】
本明細書において「被験体(者)」とは、本発明の薬剤を用いた予防または治療等の対象をいい、好ましくはヒトをいう。
【0049】
本明細書において使用される「キャリア」は、治療剤を一緒に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。
【0050】
(本発明で使用される材料)
本発明で用いられるアルカリ土類金属を含む酸性糖としては任意の酸性糖と任意のアルカリ土類金属との組み合わせが用いられる。そのようなアルカリ土類金属を含む酸性糖は、酸性糖アルカリ土類金属塩の形態で、または酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩もしくは酸性糖と水溶性アルカリ土類金属塩との組み合わせによって提供されることができる。
【0051】
本発明で用いられる酸性糖は、任意の酸性糖を使用することができ、例えば、リン酸化糖、硫酸化糖、ウロン酸、ラクトビオン酸、マルトビオン酸、アルギン酸、フコイダン等を含む酸性多糖類、もしくはその還元糖、又はアルダル酸もしくはアルドン酸等を挙げることができるがそれらに限定されない。好ましくは、リン酸化糖またはラクトビオン酸が挙げられ、より好ましくは、リン酸化糖が挙げられる。
【0052】
1つの好ましい実施形態では、本発明で用いられる酸性糖は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールを含み、このリン酸化オリゴ糖は、ジャガイモデンプンから調製されることができ、通常α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして1個のリン酸基が結合しているグルカン、および/または、α−1,4結合した2〜8個のグルコースからなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンである。
【0053】
1つの実施形態では、本発明で用いられるアルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、バリウム等を挙げることができ、好ましくはカルシウムまたはマグネシウムであり、さらに好ましくはカルシウムである。
【0054】
1つのさらに好ましい実施形態では、本発明は、リン酸オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca(登録商標))を用いることができる。
【0055】
(リン酸化オリゴ糖)
上記リン酸化オリゴ糖は、ジャガイモの粗製デンプンのような、リン酸基が多く結合したデンプンから調製され得る。ジャガイモデンプン中では、これを構成するグルコースの3位および6位にリン酸基が比較的多くエステル結合している。リン酸基は主にアミロペクチンに存在する。
【0056】
デンプンなどの酵素的分解には、デンプン分解酵素であるα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)、イソアミラーゼ(EC3.2.1.68)、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)、およびネオプルラナーゼ(Kurikiら、Journalof Bacteriology、170巻、1554頁−1559頁、1988年)、ならびに糖転移酵素であるシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.19;以下CGTaseと略する)をそれらのうち1種以上作用させ、または、それら1種以上とα−グルコシダーゼ(EC3.2.1.20)を併用する。
【0057】
イソアミラーゼあるいはプルラナーゼで分解することにより、デンプン中のα−1,6分枝構造を切ることによって、分枝構造を有しないリン酸化糖を得ることができるし、これらの酵素を用いなければ、α−1,6分枝構造を有するリン酸化糖を得ることもできる。また、グルコアミラーゼで分解することにより、非還元末端に結合したリン酸化されていないグルコースを順次遊離させることができる。このような酵素処理を行うことで、精製後のリン酸化糖の分子量あたりのリン酸基数を増減させることが可能となる。
【0058】
酵素による分解は複数種の酵素を同時に反応させることにより、同時に進行させ得る。簡単に言えば、原料となるデンプンを、水、または酵素が作用できるpHに調整した緩衝液に溶解する。この反応液に、液化型α−アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼなどを同時に加えて、加熱を行うことにより反応させる。この方法を用いると、デンプンを糊化させながら、中性糖を遊離すること、リン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸化されていないグルコースを遊離させること、あるいはリン酸化糖構造中の原料に由来するα−1,6分枝構造を切断することができる。この方法により、2段階の反応ではなく、1段階の反応でリン酸含量を高めたリン酸化糖が得られる。
【0059】
複数種の酵素を個別の工程で作用させることにより2段階以上の酵素反応をさせる場合においては、作用させる酵素の順序は特定されない。しかし、デンプンの濃度が高い場合、最初に液化型アミラーゼを含めた酵素を作用させるのが好ましい。最初にイソアミラーゼあるいはプルラナーゼを作用させるとアミロース含量が増える。アミロースはアミロペクチンに比べて老化および沈澱しやすいため、原料が老化、沈澱してしまう。そして他の酵素による作用を受けなくなる。
【0060】
使用するデンプン分解酵素、糖転移酵素、およびα−グルコシダーゼの由来は特に問わない。例えば、α−アミラーゼの由来としては、バチルス(Bacillus)属菌やアスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のデンプン分解酵素製剤が好適に使用され得る。また、酵素の反応条件は、酵素が作用し得る温度およびpHであればよい。例えば、温度25℃〜70℃、pH4〜8が好適に用いられる。
【0061】
まず原料となるデンプンを、水、または酵素の作用できるpHに調整した緩衝液に溶解する。この溶液に、液化型α−アミラーゼを加え、加熱して反応させることにより、デンプンを糊化させつつ液化する。その後、温度20〜80℃にて適当な時間保持する。作用させる液化型α−アミラーゼ量は、デンプンを液化できる量であれば、少量でも過剰でも良い。好適な量としては、20〜50,000Uである。また、この時の保持時間は、デンプンがその後の工程中において老化を起こさない程度まで液化されるならば、その長さは問わない。好ましくは、20〜80℃で30分間保持される。
【0062】
液化終了後、特に酵素を失活させる必要はないが、100℃で10分保持するなど常法により酵素を失活させてもよい。さらに、遠心分離あるいは膜濾過などの常法により不溶物を分離除去してもよい。その後、リン酸化糖を分画してもよいが、リン酸含量を高めたリン酸化糖を得るには、さらに以下の操作を行う。
【0063】
簡単に言えば、原料を液化させた後、これに、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびα−グルコシダーゼをそれぞれ同時にあるいは適当な順序で添加して糖化させ、例えば温度40〜60℃で30分〜40時間作用させて、原料から、中性糖およびリン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸化されていないグルコースを遊離させ得、そしてリン酸化糖構造中の原料に由来するα−1,6分枝構造を切断し得る。このグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼを組み合わせて使用する場合、その組み合わせおよび添加順序は問わない。また、酵素の添加量および保持時間は、リン酸化オリゴ糖に求められるリン酸含量などに応じて決定され得る。好ましくは、グルコアミラーゼは50〜700U、イソアミラーゼおよびプルラナーゼはそれぞれ2〜100U、α−グルコシダーゼは50〜700U添加され得る。酵素は固定化しても好適に用いられ得る。
【0064】
各酵素の反応終了後においては、特に酵素を失活させる必要はないが、100℃で10分保持するなど常法により酵素を失活させてもよい。さらに、遠心分離あるいは膜濾過などの常法により不溶物を分離除去してもよい。
【0065】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するために、リン酸化オリゴ糖が中性糖とは異なりイオン性の物質であることから、陰イオン交換樹脂が用いられ得る。樹脂の種類は、特に限定するものではないが、キトパールBCW2500タイプ(富士紡績製)、アンバーライトIRAタイプ(オルガノ製)、DEAE−セルロース(ワットマン製)、DEAE−セファデックス、QAE−セファデックス(ファルマシア製)、QAE−セルロース(バイオラッド製)などが好適に用いられ得る。適当なpHに調整した緩衝液を用いて、樹脂を平衡化する。例えば10〜50mM程度の酢酸緩衝液(pH4〜5)などの条件が好適に用いられ得る。平衡化した樹脂をカラムに詰め、リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物をチャージする。中性糖を洗浄除去した後、吸着したリン酸化オリゴ糖をアルカリ性の溶液または塩溶液を用いて溶出する。
【0066】
リン酸化オリゴ糖の溶出を溶出液のイオン強度を上昇させることによって行う場合、用いる塩の種類は特に問わない。例えば、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムのような塩が好適に用いられ得る。
【0067】
リン酸化オリゴ糖の溶出を溶出液のpHをアルカリに変化させることによって行う場合、用いるアルカリ試薬の種類は特に問わない。例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、または水酸化ナトリウムが用いられ得る。しかし、強アルカリ条件下では、リン酸基が糖から離脱し、あるいは糖の還元末端が酸化される。従って、好ましくは、リン酸化オリゴ糖の溶出は、弱酸性から弱アルカリ性の範囲のpHで行い、さらに好ましくはpH3〜pH8の範囲で行う。
【0068】
この場合、徐々に溶出液の塩濃度またはpHを高くしたり、あるいは段階的に塩濃度またはpHを上昇させてリン酸化オリゴ糖を溶出することにより、リン酸化糖1分子当たりに結合しているリン酸基の個数に応じてリン酸化オリゴ糖の成分を分画することが可能となる。
【0069】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するには、陰イオン交換樹脂の代わりに活性炭もまた用いられ得る。用いる活性炭の種類は特に問わないが、好ましくは、カラムに充填可能な粒状活性炭が用いられる。グルコースを除く中性糖の吸着能が生じる条件となるように、緩衝液、酸、アルカリ、塩溶液、および蒸留水を用いて、活性炭を調製する。例えば粒径が均一で、脱気を施した活性炭を、カラムに充填し、蒸留水で洗浄したものなどが好適に用いられ得る。カラムに試料を供して中性糖を吸着させることにより、リン酸化オリゴ糖を素通り画分に得ることができる。
【0070】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するには、炭素数1〜3のアルコールを添加してリン酸化オリゴ糖を沈澱させる方法もまた、用いられ得る。簡単に言えば、試料溶液にアルコールを添加することにより、リン酸化オリゴ糖のみが沈澱として得られ得る。10%以上の糖濃度であれば容積比で3倍量以上のアルコールを添加することが望ましい。
【0071】
アルコールに加えて、アルカリ土類金属塩、好ましくはカルシウム塩の存在下で、このリン酸化オリゴ糖はリン酸化オリゴ糖アルカリ土類金属塩を形成し、沈澱が生じやすくなる。このため、アルカリ土類金属塩の存在下では、先に示したアルコールのみによる沈澱化に比べ、少量のアルコールでもリン酸化オリゴ糖の回収が容易となり、本発明の成分が直接製造し得る。好ましくはアルカリ条件下で実施する。用いるアルカリ土類金属塩の種類は特に限定するものではないが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが、溶解性もよく、好適に用いられ得る。アルコールを添加することで生じた沈澱の採取は、一般に使用される方法、例えば、デカンテーション、濾過、遠心分離などにより行われる。
【0072】
アルカリ土類金属塩を添加し、沈殿物として分離されるリン酸化オリゴ糖アルカリ土類金属塩を含む画分から、アルカリ土類金属塩を除去してリン酸化オリゴ糖アルカリ土類金属塩を製造してもよいし、本発明の成分として直接使用してもよい。金属体の除去(脱塩)は定法により行われ得る。脱塩は、例えば卓上脱塩装置マイクロアシライザーG3(旭化成(株)製)を用いると容易に行われ得る。
【0073】
このようなアルカリ土類金属塩はリン酸化オリゴ糖とアルカリ土類金属塩との化合物であるリン酸化オリゴ糖アルカリ土類金属塩の沈澱として、上述のようなアルコール沈澱を回収することで製造することができる。必要ならば、回収した沈澱を水あるいは適当な溶液に再溶解し、アルコールを再度添加する操作を繰返し行ってもよい。この操作により、中性糖および過剰の塩などの不純物が除去され得る。塩など不純物の除去には限外濾過膜もまた用いられ得る。
【0074】
(酸性糖アルカリ土類金属塩の提供)
1つの実施形態では、本発明においては、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)含有する酸性糖成分を提供する目的で、(i)酸性糖カルシウム塩等の酸性糖アルカリ土類金属塩;または(ii)酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)以外の酸性糖の塩(例えば、酸性糖アルカリ金属塩等)もしくは酸性糖と、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩)との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物が使用される。必要に応じて他の材料(例えば、他の育毛剤、発毛剤、栄養成分、清涼剤など)もまた使用され得る。好ましくは(ii)で使用される酸性糖アルカリ土類金属塩以外のアルカリ土類金属塩は、水溶性のアルカリ土類金属塩である。(ii)の酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)以外の酸性糖の塩(例えば、酸性糖アルカリ金属塩)もしくは酸性糖と、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)以外の塩(例えば、アルカリ金属塩)とは、水溶液中で酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)を形成することができ、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)と同様に作用し得る。そのため、本明細書中での言及する酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、酸性糖カルシウム塩)についての効果は、(ii)の組み合わせについても同様に得られると考えられる。本発明で使用され得る酸性糖アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等が使用され得、好ましくはカリウムまたはナトリウムが用いられる。
【0075】
1つの特定の実施形態では、本発明においては、リン酸化糖のカルシウム含有成分を提供する目的で、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物が使用される。必要に応じて他の材料(例えば、他の育毛剤、発毛剤など)もまた使用され得る。(ii)のリン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩とは、水溶液中でリン酸化糖カルシウム塩を形成することができ、リン酸化糖カルシウム塩と同様に作用し得る。そのため、本明細書中での言及するリン酸化糖カルシウム塩についての効果は、(ii)の組み合わせについても同様に得られると考えられる。
【0076】
本発明において使用されるリン酸化糖は、糖部分とリン酸基とからなっている。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖」とは、分子内に少なくとも1個のリン酸基を有する糖をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖の塩」とは、リン酸化糖の塩をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖無機塩」とは、リン酸化糖の無機塩をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖のカルシウム塩」とは、リン酸化糖のカルシウム塩をいう。
【0077】
リン酸化糖等の酸性糖中の酸性基(リン酸化等の場合リン酸基)の数は特に限定されないが、リン酸化糖等の酸性糖1分子あたり10個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。さらに好ましくは、リン酸化糖等の酸性糖中の酸性基(例えば、リン酸基)の数は、リン酸化糖等の酸性糖1分子あたり1個、2個または3個であり、特に好ましくは1個または2個である。
【0078】
リン酸化糖等の酸性糖中の糖部分の重合度は、好ましくは、2以上であり、より好ましくは3以上である。リン酸化糖中の糖の重合度は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約90以下であり、より好ましくは約80以下であり、より好ましくは約70以下であり、より好ましくは約60以下であり、より好ましくは約50以下であり、より好ましくは約40以下であり、より好ましくは約30以下であり、より好ましくは約20以下であり、より好ましくは約10以下であり、より好ましくは約9以下であり、より好ましくは約8以下であり、さらに好ましくは約7以下であり、より好ましくは約6以下であり、特に好ましくは約5以下である。なお、本明細書中では、リン酸化糖等の酸性糖中の糖部分の重合度が10以下のものを、酸性オリゴ糖(リン酸化糖の場合、リン酸化オリゴ糖)ともいう。本明細書中では、「重合度」とは、構造単位の数、すなわち、単糖残基の数をいう。例えば、3つのグルコース単位からなる糖の重合度は3である。場合によっては平均的な重合体分子の構造単位の数を指す。
【0079】
リン酸化糖等の酸性糖の分子量は、好ましくは約400以上であり、より好ましくは約500以上であり、さらに好ましくは約600以上であり、特に好ましくは約700以上である。リン酸化糖の分子量は、好ましくは約100万以下であり、より好ましくは約10万以下であり、さらに好ましくは約1万以下であり、例えば、約9000以下、約8000以下、約7000以下、約6000以下、約5000以下、約4000以下、約3000以下であり、特に好ましくは2000以下であり、1つの実施形態では1000以下である。
【0080】
リン酸化糖等の酸性糖は、酸の形態(すなわち、リン酸化糖の場合リン酸基に水素が結合している)である。本発明においては、リン酸化糖等の酸性糖の電離形態(すなわち、リン酸化糖の場合リン酸基の水素が解離して離れてリン酸イオンになっている)を用いてもよく、塩の形態(すなわち、リン酸化糖の場合リン酸イオンと塩基の陽イオンが結合している)を用いてもよい。特定の実施形態では、好ましくは、リン酸化糖等の酸性糖の無機塩が使用される。リン酸化糖等の酸性糖の無機塩は、アルカリ土類金属塩であり、好ましくはカルシウム塩またはマグネシウム塩である。カルシウム塩の形態のリン酸化糖をリン酸化糖カルシウムともいう。リン酸化糖のマグネシウム塩をリン酸化糖マグネシウムともいう。他の無機塩についても同様である。好ましくは、本発明で用いられるリン酸化糖およびその塩は、特開平8−104696号公報に記載されるリン酸化糖およびその塩である。
【0081】
リン酸化糖等の酸性糖の糖部分は、任意の糖残基であり得る。糖部分は、好ましくは、グルカン、還元グルカン、マンナン、デキストラン、寒天、シクロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびキサンタンガムからなる群より選択される糖の残基である。グルカン残基または還元グルカン残基が好ましい。ここで、還元グルカンとは、グルカンの還元末端のアルデヒドがアルコールに還元されたものをいう。還元グルカンは、例えば、グルカンに水素添加してアルデヒドをアルコールに還元することによって得られる。
【0082】
グルカン残基または還元グルカン残基中の重合度、すなわち、グルコース残基の数は、好ましくは、2以上であり、より好ましくは3以上である。グルコース残基の数は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約90以下であり、より好ましくは約80以下であり、より好ましくは約70以下であり、より好ましくは約60以下であり、より好ましくは約50以下であり、より好ましくは約40以下であり、より好ましくは約30以下であり、より好ましくは約20以下であり、より好ましくは約10以下であり、より好ましくは約9以下であり、より好ましくは約8以下であり、さらに好ましくは約7以下であり、より好ましくは約6以下であり、特に好ましくは約5以下である。
【0083】
酸性糖カルシウム(例えば、リン酸化糖カルシウム)中のカルシウムイオンの数は特に限定されず、酸性糖(例えば、リン酸化糖)中に存在する酸性基(例えば、リン酸基)のすべてにカルシウムイオンが結合してもよいし、一部のみにカルシウムイオンが結合してもよい。リン酸化糖1分子に対して1個のみのカルシウムイオンが結合してもよいし、2個結合してもよく、または3個以上結合してもよい。リン酸化糖1分子当たりのカルシウムイオン結合数は、好ましくは約20個以下であり、より好ましくは約10個以下であり、さらに好ましくは約5個以下である。
【0084】
リン酸化糖カルシウムには歯の再石灰化効果、カルシウム吸収促進効果、さらに味質改善効果があることが知られているが、毛髪に対する効果は知られていない。
【0085】
好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に少なくとも1個のリン酸基が結合しているリン酸化糖またはその無機塩が使用される。さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基等の酸性基が結合しており、これらのリン酸基等の酸性基のそれぞれに無機イオンが結合している酸性糖無機塩(例えば、リン酸化糖無機塩)が使用される。
【0086】
さらに好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に少なくとも1個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基の少なくとも1個にカルシウムが結合しているリン酸化糖カルシウムが使用される。さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基等の酸性基が結合しており、これらのリン酸等の酸性基のそれぞれにカルシウムが結合している酸性糖カルシウム(例えば、リン酸化糖カルシウム)が使用される。
【0087】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基が、α−1,4結合した3〜5個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個のリン酸基等の酸性基が結合しており、このリン酸基等の酸性基に無機イオンが結合している酸性糖無機塩(例えば、リン酸化糖無機塩)が使用される。
【0088】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基が、α−1,4結合した3〜5個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個のリン酸基等の酸性基が結合しており、このリン酸基等の酸性基にカルシウムが結合している酸性糖カルシウム(例えば、リン酸化糖カルシウム)が使用される。
【0089】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合した2〜8個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基等の酸性基が結合しており、これらのリン酸基等の酸性基のうちの少なくとも1個、好ましくは全てに無機イオンが結合している酸性糖の無機塩(例えば、リン酸化糖の無機塩)が使用される。
【0090】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合した2〜8個のグルコースからなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基等の酸性基が結合しており、これらのリン酸基等の酸性基のうちの少なくとも1個、好ましくは全てにカルシウムが結合している酸性糖カルシウム(例えば、リン酸化糖カルシウム)が使用される。
【0091】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合したグルコースを主鎖とし、α−1,6結合またはα−1,4結合したグルコースを側鎖とする酸性糖(例えば、リン酸化糖)が使用される。
【0092】
本発明で用いられ得るリン酸化糖等の酸性糖およびその塩は、純粋な1種類の化合物として用いられてもよく、複数種の混合物として用いられてもよい。本発明で用いられるリン酸化糖等の酸性糖およびその塩は、好ましくは、特開平8−104696号公報に記載されるリン酸化糖およびその塩である。特開平8−104696号公報に記載される方法に従って製造すると複数種類のリン酸化糖等の酸性糖またはその塩の混合物が得られる。その混合物をそのまま用いてもよく、純粋な化合物に分離した後に、1種類の化合物のみを選択して用いてもよい。リン酸化糖等の酸性糖およびその塩は、1種類で用いた場合も、混合物として用いた場合も、優れた性能を発揮する。
【0093】
リン酸化糖等の酸性糖は、例えば、公知の糖類をリン酸化することにより製造され得る。リン酸化糖無機塩等の酸性糖無機塩は、例えば、公知の糖類をリン酸化等の酸性糖付与の処理をして酸の形態のリン酸化糖等の酸性糖を得て、その後、酸の形態のリン酸化糖等の酸性糖を無機塩とすることにより製造され得る。リン酸化糖カルシウム等の酸性糖カルシウム塩は、例えば、公知の糖類をリン酸化等の酸性か処理をして酸の形態のリン酸化糖等の酸性糖を得て、その後、酸の形態のリン酸化糖等の酸性糖をカルシウム塩とすることにより製造され得る。代表的な例として、リン酸化糖およびその塩の製造方法は、特開平8−104696号公報に記載される。リン酸化糖カルシウムはまた、江崎グリコ株式会社からリン酸化オリゴ糖カルシウムとして販売されている。
【0094】
リン酸化糖等の酸性糖およびその塩の製造原料である糖としては、グルカン、マンナン、デキストラン、寒天、シクロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびキサンタンガムが挙げられる。以下、グルカンの場合について説明する。一般の粗製植物澱粉、好ましくは馬鈴薯の粗製澱粉などのリン酸基が多く結合した澱粉が適しているが、精製品でもよい。化工澱粉もまた、好適に用いられ得る。さらに、リン酸基等の酸性基を化学的に結合させた各種糖質を用いることもまた可能である。馬鈴薯澱粉中では、これを構成するグルコースの3位および6位にリン酸基が比較的多くエステル結合している。リン酸基等の酸性基は主にアミロペクチンに存在する。
【0095】
好ましい実施態様では、糖がグルカンの場合には、リン酸基等の酸性基を有する澱粉または化工澱粉を分解して得られ得る。
【0096】
好適な実施態様では、リン酸基等の酸性基を有する澱粉または化工澱粉に、澱粉分解酵素、糖転移酵素、またはα−グルコシダーゼ、あるいはそれらの1種以上の組み合わせ(但し、α−グルコシダーゼ1種のみを除く)を作用させる。
【0097】
好ましい実施態様では、上記澱粉分解酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、またはネオプルラナーゼの1種以上の組み合わせからなるものである。好ましい実施態様では、上記糖転移酵素は、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0098】
好ましい実施態様では、上記製造方法は、リン酸基等の酸性基を有する糖に糖転移酵素を作用させる。上記糖転移酵素がシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0099】
リン酸化糖アルカリ土類金属塩等の酸性糖アルカリ土類金属塩は、例えば、酸の形態のリン酸化糖にアルカリ土類金属の塩を作用させて製造される。リン酸化糖カルシウム等の酸性糖カルシウムは、例えば、酸の形態のリン酸化糖等の酸性糖にカルシウム塩を作用させて製造される。
【0100】
リン酸化糖等の酸性糖およびその塩としては、高純度のものを用いてもよく、低純度のものを用いてもよい。例えば、リン酸化糖等の酸性糖およびその塩は、他の糖との混合物として用いられてもよい。なお、本明細書中でリン酸化糖等の酸性糖およびその塩の濃度および含有量について言及する場合、この濃度および含有量は、純粋なリン酸化糖等の酸性糖およびその塩の量に基づいて計算される。それゆえ、リン酸化糖等の酸性糖およびその塩以外の物を含む混合物を用いた場合、濃度および含有量は、混合物全体の量ではなく、混合物中のリン酸化糖等の酸性糖およびその塩の量に基づいて計算される。
【0101】
(アルカリ土類金属)
本発明で用いられるアルカリ土類金属はどのような形態のアルカリ土類金属を用いてもよい。例えば、塩の形で提供されてもよく、酸性糖のアルカリ土類金属以外の塩もしくは酸性糖と水溶性アルカリ土類金属塩との組み合わせとして、提供されてもよい。例示として、アルカリ土類金属塩に使用されるアルカリ土類金属の例示としては、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、バリウムなどを挙げることができる。好ましくは、生理的に受容可能なアルカリ土類金属が使用される。別の好ましい実施形態において、アルカリ土類金属としてカルシウムまたはマグネシウムが使用される。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、アルカリ土類金属としてはカルシウムが用いられる。カルシウムは塩形態で用いられる場合、水溶性、水不溶性、水難溶性のいずれであってもよい。水溶性カルシウム塩が好ましい。本明細書中では、「水不溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が0.1g/100ml HO未満であるカルシウム塩をいう。水不溶性カルシウム塩の例としては、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、リン酸一水素カルシウム、酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムおよびリン酸カルシウムが挙げられる。本明細書中では、「水難溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が1g/100ml HO以上5g/100ml HO以下であるカルシウム塩をいう。水難溶性カルシウム塩の例としては、水酸化カルシウム、リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウムおよび安息香酸カルシウムが挙げられる。本明細書中では、「水溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が5g/100ml HOより高いカルシウム塩をいう。本発明で用いられる水溶性カルシウム塩の20℃の水中での溶解度は、好ましくは約2重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約4重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上である。水溶性カルシウム塩の定義には、リン酸化糖カルシウム塩も含む。このような水溶性カルシウム塩の他の例としては、塩化カルシウム、水溶性有機酸カルシウム塩(例えば、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなど)、ポリオールリン酸カルシウム、硝酸カルシウム、カゼインホスホペプチドカルシウムなどが挙げられる。水溶性カルシウム塩は、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ポリオールリン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、カゼインホスホペプチドカルシウム、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムからなる群より選択されることが好ましい。
【0103】
本発明の特定の実施形態では、アルカリ土類金属としてはマグネシウムが用いられる。マグネシウムは塩形態で用いられる場合、水溶性、水不溶性、水難溶性のいずれであってもよい。水溶性マグネシウム塩が好ましい。本明細書中では、「水不溶性マグネシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が0.1g/100ml HO未満であるマグネシウム塩をいう。水不溶性マグネシウム塩の例としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。本明細書中では、「水難溶性マグネシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が1g/100ml HO以上5g/100ml HO以下であるマグネシウム塩をいう。水難溶性マグネシウム塩の例としては、シュウ酸マグネシウムが挙げられる。本明細書中では、「水溶性マグネシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が5g/100ml HOより高いマグネシウム塩をいう。本発明で用いられる水溶性マグネシウム塩の20℃の水中での溶解度は、好ましくは約2重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約4重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上である。水溶性マグネシウム塩の定義には、リン酸化糖マグネシウム塩も含む。このような水溶性マグネシウム塩の他の例としては、安息香酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、リン酸L−アスコルビルマグネシウムからなる群より選択されることが好ましい。
【0104】
(本発明の製造方法)
本発明の組成物または剤は、アルカリ土類金属を含む酸性糖成分として:(i)リン酸化糖カルシウム塩等の酸性糖アルカリ土類金属塩;または(ii)酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外の酸性糖(例えば、リン酸化糖)の塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)もしくは酸性糖(例えば、リン酸化糖)と、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、塩化カルシウム)との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物を含むように、当該分野で公知の任意の方法によって製造され得る。
【0105】
上記(ii)の場合、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外の酸性糖(例えば、リン酸化糖)の塩(例えば、アルカリ金属塩)もしくは酸性糖(例えば、リン酸化糖)と、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、塩化カルシウム等のカルシウム塩)との組み合わせを本発明の組成物または剤に実質的に均一に含むことが好ましい。これらを均一に含む組成物または剤は、製造が容易であるという利点がある。
【0106】
上記(ii)の場合、酸性糖(例えば、リン酸化糖)の塩もしくは酸性糖(例えば、リン酸化糖)を含む部分と、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩)を含む部分とを分けてもよい。この場合には、本発明の組成物または剤においては、酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外の酸性糖(例えば、リン酸化糖)の塩(例えば、アルカリ金属塩)もしくは酸性糖(例えば、リン酸化糖)が放出されるのと同時またはそれよりも後に酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩)が組成物または剤から放出されるように設計されるべきである。酸性糖アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸化糖カルシウム塩)以外のアルカリ土類金属塩(例えば、塩化カルシウム等のカルシウム塩)の方が酸性糖(例えば、リン酸化糖)またはその塩よりも早く放出されると、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウムイオン)が頭皮に無秩序に沈着してしまい、好ましくないからである。
【0107】
これらのことは、本発明の全ての組成物または剤について適用される。
【0108】
(剤型および他の成分および有効成分)
本発明の組成物または剤は、常法に従って、均一溶液、ローション、ジェルなどの形態で、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス、などに用いられる。また、育毛効果を有する外用剤として使用することができる。
【0109】
本発明の組成物または剤は、エアゾール組成物の形態をとることができ、その場合には、上記の成分以外に、n−プロピルアルコール又はイソプロピルアルコール等の低級アルコール;ブタン、プロパン、イソブタン、液化石油ガス、ジメチルエーテル等の可燃性ガス;窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等の圧縮ガスを含有することができる。また、本発明に係る外用剤及び育毛剤は、例えば皮膚用の医薬部外品として使用するものであり、使用形態に適した剤形として提供される。具体的に剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、軟膏、水剤、エキス剤、ローション剤、トニック剤、スプレー剤及び乳剤等が挙げられる。当該医薬部外品には、植物の抽出物の他に、助剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、吸収促進剤及び界面活性剤等の薬学的に許容される担体を任意に組合せて配合することができる。
【0110】
本発明は、特に、毛乳頭細胞の増殖促進を通じて、毛周期において成長期から休止期への移行を抑制し、成長期を更に延長することにより、更に強い育毛効果と共に、および/または優れた抜け毛予防効果を発揮することを含むものである。このような相乗効果を更に高めるために、必要に応じて又は使用目的に応じて、本発明の組成物または剤には、酸性糖アルカリ土類金属塩以外の任意の成分および/または他の有効成分を本発明の目的及び効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0111】
このような任意の成分および/または他の有効成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤又はその他の界面活性剤、セルロース類、植物油、エステル油、角質溶解剤、高分子樹脂、紫外線吸収剤、ビタミン類、アミノ酸類、色剤、香料、他の有効成分が挙げられる。
【0112】
水としては、例えば精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、海洋深層水、などが挙げられる。
【0113】
セルロース類としては、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、などが挙げられる。
【0114】
非イオン性界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノ又はイソステアレート、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノミリスチン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン)、などが挙げられる。
【0115】
エステル類としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステル(トリ−2エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン酸等の多価アルコール脂肪酸エステル、などが挙げられる。
【0116】
植物油としては、例えばユーカリ油、サフラワー油、月見草油、ホホバ油、などが挙げられる。
【0117】
エステル油としては、例えば不飽和脂肪酸アルキルエステル(オレイン酸エチル、リノール酸イソプロピル等)、リノレイン酸エステル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、などが挙げられる。
【0118】
高分子樹脂としては、例えば両性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、などが挙げられる。
【0119】
紫外線吸収剤としては、例えばメトキシケイ皮酸オクチル(ネオヘリオパンAV)、オキシベンゾン、ウロカニン酸、などが挙げられる。
【0120】
ビタミン類としては、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、酢酸トコフェロール等のトコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸エステル、コハク酸トコフェロール、トコフェロールニコチン酸、トコフェロールニコチン酸エステル、イノシトールヘキサニコチン酸エステル、トコフェロールリノレイン酸エステル、などが挙げられる。アミノ酸類としては、例えばグルタミン酸、メチオニン、セリン、グリシン、シスチン、スレオニン、などが挙げられる。
【0121】
また、育毛剤または発毛剤においては、本発明の有効成分の他に、他の有効成分、例えば、通常用いられる養毛薬効剤、例えば、角質溶解剤、毛包賦活剤、細胞賦活剤、血行促進剤(血管拡張剤)、抗菌剤、抗炎症剤、保湿剤、抗脂漏剤、局所刺激剤、皮膚機能亢進剤、抗男性ホルモン剤、カリウムチャンネルオープナー、抗酸化剤等を必要に応じて適宜配合し、育毛または発毛効果の向上を図ることができる。角質溶解剤としては、例えばサリチル酸、レゾルシン、などが挙げられる。毛包賦活剤としては、フラバノノール類、N−アセチル−L−メチオニン、パントテン酸及びその誘導体、アデノシン及びその誘導体、アスパラギン酸カリウム、ペンタデカン酸グリセリド、6−ベンジアルアミノプリン、モノニトログアヤコールナトリウム、感光素301、ビオチン、タマサキツヅラフジエキス、ニンジンエキス(チクセツニンジンエキス、オタネニンジンエキス等)、ブドウエキス、リンゴエキス、酵母エキス、ニンニク成分、真珠蛋白抽出液、プラセンタエキス、ローヤルゼリー、アセチルコリン、センブリエキス、ヨウ化ニンニクエキス、イチョウエキス、塩化カルプロニウム、スピロノラクトン、ビタミンB6塩酸塩、γ−オリザノール、サークレチン、クロマカリム、セファランチン、ニコランジル、ビタミンE類(DL−α−トコフェロール、D−α−トコフェロール、酢酸DL−α−トコフェロール、酢酸D−α−トコフェロール等)、ニコチン酸類(ニコチン酸、DL−α−トコフェロールニコチン酸エステル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等)、ピナシジル、ミノキシジル、フタリド類、キナエキス、ショウブ根エキス、ソフォラ抽出液、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、トウヒエキス、当薬エキス、トウガラシチンキ、ユズ抽出液、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ等が挙げられる。細胞賦活剤としては、例えばペンタデカン酸グリセリド、コレウスエキス、ジンセンエキス、アデノシン、などが挙げられる。血行促進剤(血管拡張剤)としては、二酸化炭素、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、センブリエキス、ニンジンエキス、塩化カルプロニウム、ミノキシジル、セファランチン、ノナン酸バニリルアミド、ビタミンE、及びその誘導体等が挙げられる。抗菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、オクトピロックス、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等が挙げられる。抗炎症剤としては、甘草エキス、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アズレン、グアイアズレン、オウゴンエキス、カミツレエキス、クマザサエキス、ローズマリーエキス、シソエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、桃葉エキス、セイヨウノコギリソウエキス等が挙げられる。保湿剤としては、オトギリソウエキス、オーツ麦エキス、グリセリン、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、延命草エキス、オオムギエキス、ブドウエキス、プロピレングリコール、桔梗エキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。抗脂漏剤としては、イオウ、レシチン、カシュウエキス、チオキソロン等が挙げられる。局所刺激剤としては、カンファー、トウガラシチンキ等が挙げられる。皮膚機能亢進剤としては、例えばD−パンテノール、パントテニルエチルエーテル等パンテノール誘導体、などが挙げられる。抗男性ホルモン剤としては、サイプロテロンアセテート、11α−ハイドロキシプロゲステロン、フルタマイド、3−デオキシアデノシン、酢酸クロルマジノン、エチニルエストラジオール、スピロノラクトン、エピテステロン、フィナステライド、アロエ、サンショウ、チョウジエキス、クアチャララーテエキス、オタネニンジン等が挙げられる。カリウムチャンネルオープナーとしては、ミノキシジル、クロマカリム、ジアゾキシド及びその誘導体、ピナシジル等が挙げられる。抗酸化剤としては、紅茶エキス、茶エキス、エイジツエキス、黄杞エキス、ビタミンC及びその誘導体、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。他の有用成分としては、オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウム、アセチルコリン、センブリエキス、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、オタネニンジン、チクセツニンジン、セファランチン、サークレチン、ニコランジル、ピナシジル、ニンニクエキス、トウキエキス、ゲンチアナエキス、ヨウ化ニンニクエキス、カンゾウ、ミノキシジル、センキュウ、チクセツニンジン、ショウガ、ジオウ、アロエ、スピロノラクトン、ヒノキチオール、ヒノキオール、朝鮮にんじん、桃仁、白薬子、防巳、補骨脂、黄耆、紅花、加水分解糖参エキス(加水分解ヒカゲノツルニンジンエキス)、加水分解黒豆エキス、ビャッキュウ(白及)抽出物、バウダルコ樹皮エキス(タベブイアインペチギノサ樹皮エキス)、豆乳発酵液、ハイビスカス花発酵液、アッケシソウエキス、デイリリー花発酵液(ヘメロカリス属の花の発酵液)、ムラサキシキブ抽出物、カミツレ抽出物、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海産顕花植物等の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩(グリチルリチン酸二カリウム)等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米抽出物又はその加水分解物、有色素米(黒米、赤米、紫米、緑米等)の抽出物又はその加水分解物、米糠抽出物又はその加水分解物、米発酵エキス、アナアオサ抽出物、ソウハクヒエキス、ジョアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物などを挙げることができる。
【0122】
製剤の成分としては本発明の成分以外にも、本発明の効果を損なわない限り、ミノキシジル、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソペンジル等の抗ヒスタミン剤、グリチルレチン酸、グアイアズレン等の抗炎症剤、尿素、サリチル酸等の角質溶解剤、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ヒノキチオール、ピロクトンオラミン等の殺菌剤、ヒアルロン酸ナトリム、グリセリン、コンドロイチン硫酸等の保湿剤、イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトリギソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシン、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタ等の動植物の抽出物、酢酸レチノール、塩酸ピリドキシン、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、酢酸トコフェロール等のビタミン類、スクワラン、流動パラフィン、レシチン等の油分、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、メントール、カンフル等の精油成分、ジブチルヒドロキシトルエン、イソプロピルガレート等の抗酸化剤、エチレンジアミンテトラアセテートまたはその塩等の金属イオン封鎖剤、色素、香料等を配合することができる。
【0123】
血流促進成分は、毛乳頭細胞や毛母細胞に繋がる血液の流れを改善する成分であり、毛髪の成長に必要な酸素や栄養素を効率的に供給して細胞の代謝を活性化する。したがって、本発明の成分と組み合わせて使用することができる。このような血流促進成分としては、ビタミンE、酢酸トコフェロール等のビタミンE誘導体、ニコチン酸及びニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸誘導体、セファランチン、塩化カルプロニウム、アセチルコリン、γ−オリザノール、サークレチン、クロマカリム、ニコランジル、ピナシジル、フタリド類、ジアルキルモノアミン誘導体、イチョウエキス、カミツレエキス、トウキエキス、センキュウエキス、ローズマリーエキス、オランダカラシエキス、ベニバナエキス、トウガラシチンキ、チンピエキス、ショウキョウチンキ、人参エキス、ショウブ根エキス、シナノキエキス、延命草エキス、当薬エキス、フユボダイジュ花エキス、ブドウ種子エキス、センブリエキス、ユズエキス等が挙げられる。
【0124】
一方、上述した有効成分は化粧品として使用することもできる。この場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、油中水型又は水中油型の乳化化粧品、クリーム、ローション、ジェル、フォーム、エッセンス、ファンデーション、パック、スティック及びパウダー等が挙げられる。当該化粧品には、植物の抽出物の他に、化粧品成分として一般に使用されている油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料及び各種皮膚栄養剤等を任意に組合せて配合することができる。具体的には、皮膚化粧品に配合される薬効成分、例えば微粒子酸化亜鉛、酸化チタン、パーソールMCX、パーソール1789等の紫外線吸収剤、アスコルビン酸等のビタミン類、ヒアルロン酸ナトリウム、ワセリン、グリセリン、尿素等の保湿剤、ホルモン剤、及びコウジ酸、アルブチン、プラセンタエキス、ルシノール等の他の美白成分、ステロイド剤、アラキドン酸代謝物やヒスタミン等に代表される化学伝達物質産生・放出抑制剤(インドメタシン、イブプロフェン)、レセプター拮抗剤等の抗炎症剤、抗男性ホルモン剤、ビタミンA酸、ローヤルゼリーエキス、ローヤルゼリー酸等の皮脂分泌抑制剤、ニコチン酸トコフェロール、アルプロスタジル、塩酸イソクスプリン、塩酸トラゾリン等の抹消血管拡張剤及び末梢血管拡張作用のある炭酸ガス等、ミノキシジル、塩化カルプロニウム、トウガラシチンキ、ビタミンE誘導体、イチョウエキス、センブリエキス等の血行促進剤、ペンタデカン酸グリセリド、ニコチン酸アミド等の細胞賦活化剤、ヒノキチオール、L−メントール、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、セラミド及びセラミド類似化合物等を添加配合することができる。
【0125】
本発明の酸性糖アルカリ土類金属塩を医薬、医薬部外品又は化粧品として使用する場合、酸性糖アルカリ土類金属塩の配合量は、乾燥物として計算して、通常、医薬、医薬部外品又は化粧品の全組成の0.00001〜5重量%、特に0.01〜2重量%、好ましくは、0.1〜1重量%、さらに好ましくは、0.2〜0.5重量%あるいは0.2〜0.4重量%であることが好ましいがこれらに限定されず、育毛効果または発毛効果がみられる限り当業者は適宜の濃度を決定することができる。特にPOs−Ca(登録商標)では、0.0625〜1.0重量%で効果がみられており、特に0.01〜2重量%、好ましくは、0.1〜1重量%、さらに好ましくは、0.2〜0.5重量%あるいは0.2〜0.4重量%が好ましく、別の実施形態では、0.2重量%以上あるいは0.2重量%より多く、あるいは0.2重量%〜1.0重量%、0.2重量%超過〜1.0重量%、0.3重量%以上、あるいは0.3重量%〜1.0重量%が好ましいことが理解される。あるいは、POs−Ca(登録商標)がPOs−Naと塩化カルシウムとの組み合わせで提供される場合は、より低濃度で育毛効果または発毛効果が発揮され得ることが理解される。例えば、0.1重量%以上、あるいは0.1重量%から0.8重量%であり得、或いは0.8重量%以下であってもよい。あるいは、1.0重量%未満、あるいは0.1重量%以上1.0重量%未満であってもよい。他方、グルコース−1−リン酸カルシウムの場合は、育毛効果または発毛効果が発揮され得る濃度として好ましい範囲は、0.3重量%より多く1.0重量%未満であり得、例えば、0.3重量%より多く0.8重量%以下、あるいは0.6重量%以上1.0重量%未満、あるいは0.6〜0.8重量%等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0126】
また、上述した有効成分を化粧品、医薬又は医薬部外品として使用する場合、例えばチョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム、コロイドシリカナトリウムポリアクリレート等の粉体;例えば鉱油、植物油、シリコーン油等の油又は油状物質;例えばソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノオレエート、高分子シリコーン界面活性剤等の乳化剤;パラ−ヒドロキシベンゾエートエステル等の防腐剤;ブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤;グリセロール、ソルビトール、2−ピロリドン−5−カルボキシレート、ジブチルフタレート、ゼラチン、ポリエチレングリコール等の湿潤剤;トリエタノールアミン又は水酸化ナトリウムのような塩基を伴う乳酸等の緩衝剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の界面活性剤;密ろう、オゾケライトワックス、パラフィンワックス等のワックス類;増粘剤;活性増強剤;着色料;香料等、を必要に応じ適宜組合せて用いることができる。
【0127】
追加の成分として、酸性糖アルカリ土類金属塩に加えて含まれ得る育毛、発毛、養毛、増毛効果を有する種々の成分であれば、上述した各成分に限定されるものではない。つまり、上述したものは可能性のある有効成分の一例を列挙したに過ぎない。従って、生体への安全性などを損なわない限りにおいて、殺菌剤、抗男性ホルモン剤、脂分泌抑制剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、局所刺激剤、角質軟化剤、抗アポトーシス剤など、育毛、発毛、養毛、増毛効果を有するあらゆる種類の薬剤も有効成分として配合することができる。
【0128】
また、本発明に係る育毛剤の実際の使用場面においては、毛髪や頭皮に塗布または散布するに可なる剤型(液剤、乳液剤、クリーム剤、ジェル剤、チック剤、シャンプー剤、スプレー剤、ムース剤、パック剤など)がとられる。従って、本発明の効果を損なわない限りにおいて、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、イソプレングリコール)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィンなど)、エーテル類(エチルエーテル、プロピルエーテルなど)、香料、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、香料等を適宜配合してもよい。
【0129】
本発明で使用される他の有効成分としては、すでに当該分野において育毛効果および/または発毛効果がみられている任意の成分を用いてもよい。このような他の育毛効果または発毛効果を有する成分としては、上述したものも含め、例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(Versican(バーシカン)として知られる)、ミノキシジル、フィナステリド、アデノシン、塩化カルプロニウム、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン(サイトプリン)、ペンタデカン、ケトコナゾール、セファランチン等の日本皮膚科学会による「脱毛症治療のガイドライン」に掲載されているものを使用してもよい。本発明は実施例でも示されるように、ミノキシジルとは少なくとも相加効果を示すものと考えられる。したがって、本発明の効果は、他の成分に追加するような作用を一般に有し得ると考えられる。
【0130】
(投与)
本発明を被験体に投与する場合、種々の送達(デリバリー)系が知られ、そしてこのような系を用いて、本発明の剤を適切な部位(例えば、頭皮)に直接投与することも可能であり、このような系には、例えば、水性または非水性媒体への溶解または懸濁、リポソーム、微小粒子、および微小カプセル中の被包、受容体が仲介するエンドサイトーシスの使用などがある。投与法には、限定されるわけではないが、経皮、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が含まれる。好適な経路いずれによって、例えば注入によって、ボーラス(bolus)注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(例えば口腔、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって、医薬を投与することも可能であるし、必要に応じてエアロゾル化剤を用いて吸入器または噴霧器を使用しうるし、そして他の生物学的活性剤と一緒に投与することも可能である。投与は全身性または局所であることも可能である。
【0131】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0132】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0133】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0134】
以下に、本発明の実施例を記載する。該当する場合生物試料等の取り扱いは、厚生労働省、文部科学省等において規定される基準を遵守して行った。
【0135】
(製造例:使用したリン酸化糖カルシウム塩)
以下の実験に用いたリン酸化糖カルシウム(POs−Ca(登録商標))は、特開平8−104696号の実施例1の手順で、塩化ナトリウムの代わりに塩化カルシウムを用いて、馬鈴薯澱粉より調製することができる。つまり、α−1,4結合した2から8個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内に1個から2個のリン酸基が結合し、これらのリン酸化糖にそれぞれカルシウムが結合したリン酸化糖カルシウムの混合物である。このリン酸化糖カルシウムは、3、4または5個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内で1個のリン酸基が結合し、このリン酸基にカルシウムが結合しているものと5、6、7または8個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内で2個のリン酸基が結合し、このリン酸基にカルシウムが結合しているものとの混合物である。ここで、1個のリン酸基が結合しているものと2個のリン酸基が結合しているものとのモル比は約8:2である。以下の実験では、このようにして調製した塩を用いた。イオン交換樹脂を用いる本方法以外にも、一般的な電気透析によって、脱塩後、各金属塩を添加することで容易に各種金属塩のリン酸化糖が調製できる。なお、リン酸化糖のカルシウム塩については、江崎グリコ株式会社からリン酸化オリゴ糖カルシウムとして販売されているものも好適に用いることができる。
【0136】
(一般手法)
以下、本発明の毛髪関連の実験についての説明を行う。
【0137】
(材料および方法)
まず、本発明において使用した試薬類および方法を説明する。
【0138】
(1)一般試薬
水酸化ナトリウム、塩化カルシウム二水和物及び塩化マグネシウム六水和物は和光純薬工業(株)製の特級品を用いた。
【0139】
(2)水
水はいずれもMilliQ(Merck Millipore, US)を用いて製造された脱イオン水を用いた。
【0140】
(3)10% (w/v) POs−Ca(登録商標)水溶液
1.0g POs−Ca(登録商標)(王子コーンスターチ株式会社製、5.0%(w/w)カルシウム含有)を水8mlに溶かし、ハンディタイプのpHメーター(LAQUAtwin B−711,堀場製作所)を用いて1M NaOHでpH7.2に調整した。それを、10mlにメスアップしてから、10mlシリンジ(テルモ(株))で0.20μm フィルター(Minisart, Surfactant−free cellulose acetate、Sartorius Stedim Biotech, US)に通して滅菌状態とする。
【0141】
(4)1.84%(w/v)CaCl・2HO水溶液
10%POs−Ca(登録商標)と同量のカルシウム含有の水溶液。カルシウムの影響を比較するために使用。0.184gのCaCl・2HOを水に溶かし、10mlとしてから、シリンジで0.22μmフィルターに通して滅菌状態とする。
【0142】
(5)10% (w/v) POs−Na水溶液
1.0g POs−Na(王子コーンスターチ株式会社製)を水8mlに溶かし、ハンディタイプのpHメーター(LAQUAtwin B−711,堀場製作所)を用いて1M NaOHでpH7.2に調整した。それを、10mlにメスアップしてから、10mlシリンジ(テルモ(株))で0.20μm フィルター(Minisart, Surfactant−free cellulose acetate、Sartorius Stedim Biotech, US)に通して滅菌状態とする。
【0143】
(6)10% (w/v) POs−Mg水溶液
1.0g POs−Mg(王子コーンスターチ株式会社製、5.6%(w/w)マグネシウム含有)を水8mlに溶かし、ハンディタイプのpHメーター(LAQUAtwin B−711,堀場製作所)を用いて1M NaOHでpH7.2に調整した。それを、10mlにメスアップしてから、10mlシリンジ(テルモ(株))で0.20μm フィルター(Minisart, Surfactant−free cellulose acetate、Sartorius Stedim Biotech, US)に通して滅菌状態とする。
【0144】
(7)4.45%(w/v)MgCl・6HO水溶液
10%POs−Mgと同量のマグネシウム含有の水溶液。マグネシウムの影響を比較するために使用。0.445gのMgCl・6HOを水に溶かし、10mlとしてから、シリンジで0.22μmフィルターに通して滅菌状態とする。
【0145】
(8)12.9%(w/v) G1P−Ca水溶液
グルコース−1−リン酸水溶液に水酸化カルシウムを加えて中和・乾燥させ、カルシウム含量が3.8%(w/w)の塩を作製した。それを0.129g定量し、9mlの水に溶かした。その水溶液についてハンディタイプのpHメーターを用いて1M NaOHでpH7.2に調整した。それを、10mlにメスアップしてから、10mlシリンジ(テルモ(株))で0.20μmフィルター(Minisart, Surfactant−free cellulose acetate、Sartorius Stedim Biotech, US)に通して滅菌状態とする。
【0146】
(9)ヒト毛乳頭細胞
ヒト毛乳頭細胞はPromoCell社(Germany)の販売する株(Lot. 3092504.12)を使用した。特記した場合を除き、毛乳頭細胞専用培地(PromoCell)を用いてCOインキュベーターにおいて、37℃で培養した。細胞の継代は5000〜10000 cells/cmでコート無しのディッシュに播いて、サブコンフルエントになったらトリプシン−EDTA(0.03%)で処理をして剥離と再播種をおこなった。トリプシン−EDTA処理は37℃で10分弱インキュベートすると完全に剥がれ、生着率は高い。培地交換はおよそ3日に1回行った。
【0147】
(実施例1:カルシウム種の異なる物質の細胞増殖率の比較)
本実施例では、カルシウム種の異なる物質の細胞増殖率の比較を行った。具体的な手順を以下に示す。
【0148】
(1)96ウェルコラーゲンIコートプレート(BD Biocoat Collagen I 96−well clear plate)に1.6×10cells/wellとなるようにヒト毛乳頭細胞をまき、37℃で24時間培養した。プレート上の2ウェルはブランク用に細胞をまかなかった。
【0149】
(2)表の組成の溶液を10%(w/v)POs−Ca(登録商標),1.84%(w/v)CaCl・2HO水溶液、又は12.9%(w/v)G1P−Ca水溶液から作製した。
【0150】
(3)上記水溶液と専用培地を1:9に混合することにより、それぞれ、表1の1/10の濃度を終濃度とする各カルシウム種について5通りの濃度の培地を作製した。表1の各列は同じカルシウム濃度となる。
【0151】
(4)(2)のプレートから培地を除いた後で(3)の培地に置き換えた。各濃度の各培地について、5ウェル(5サンプル)試験区を設けた。また、対照として、水と専用培地を1:9で混合して作製した培地で5ウェルを置き換えた。
【0152】
(5)上記プレートを37℃で3日間培養した。
【0153】
(6)各ウェルにPremix WST−1 cell proliferation assay system(Takara)を同量の専用培地で希釈して作製した溶液を20μlずつ加え、30分呈色反応させた。
【0154】
(7)蛍光マイクロプレートリーダー(Varioskan Flash 2.4,Thermo Fisher Scientific, US)で、各ウェルの440 nmの吸光度を測定した。
【0155】
(8)サンプルのウェルの吸光度からブランクウェルの吸光度を差し引いた値を各ウェルのサンプルの相対細胞量の値とした。対照培地の相対細胞量の平均値で各ウェルの相対細胞量の値を割ることで、対照に対する細胞増殖度を算出した。
【0156】
【表1】
【0157】
(×は倍数を示す)
(結果)
図1Aに結果を示す。グラフで示すように0.25%を添加した時に最大の増殖率を示し、塩化カルシウムおよびコントロールと比較して毛乳頭細胞が有意により多く増殖していた(POs−Ca(登録商標)はコントロールに対して66.0%の増加に対して塩化カルシウムはコントロールに対して5.6%の増加)。また、実施した濃度範囲である、0.0625%、0.12%、0.25%、0.5%、1.0%のいずれにおいても、POs−Ca(登録商標)では塩化カルシウム(それぞれ、0.0115%、0.023%、0.046%、0.092%および0.184%(これらは、それぞれがカルシウム量としては同一になる計算である。))に比べていずれの濃度でも高い増殖率を示した。特に、0.0115%および0.023%では、塩化カルシウムは減少傾向を示すのに対して、POs−Ca(登録商標)では、対応する0.0625%および0.12%でも増加傾向がみられた。塩化カルシウムでも増加傾向が見られた0.092%および0.184%についても、対応する濃度のPOs−Ca(登録商標)(0.5%および1.0%)では、50%増から2倍以上の増加の程度を示した。
【0158】
(実施例2:カルシウム種の異なる物質の細胞増殖率の比較実験(2))
1.実施例1の(1)、(3)〜(5)は上記と同様に実施した。下表の組成の溶液を10%(w/v)POs−Ca(登録商標),12.9%(w/v)G1P−Ca、1.84%(w/v)CaCl・2HO水溶液、10%(w/v)POs−Na又は水溶液から作製した。
【0159】
【表1A】
【0160】
2.実施例1の条件((6)、(7)および(8))の代わりに各ウェルにCellCounting Kit−F(同仁化学研究所)をマニュアルに従って用い、細胞数を計測した。
【0161】
3.(結果) POs−Ca(登録商標)は図1B〜1Dのように、0.2倍を超える濃度で有意に毛乳頭細胞数を増加させた。G1P−Caも同様の傾向を示し、0.6〜0.8倍で有意に細胞数が増加した。POs−NaとCaClを組み合わせた場合も同様の傾向を示し、0.1〜0.8倍まで有意に細胞数が増加した。また、いずれも、全ての濃度で何も加えなかった場合より細胞数は増加していた。よって、望ましくは0.6〜0.8倍の濃度を含むことで、毛乳頭細胞の増殖を促進させる効果が期待できる。
【0162】
一方、図1Eに示すように、CaCl単独又はPOs−Na単独では、何も加えない場合と比べて細胞数の増加は見られなかった。よって、酸性糖成分とカルシウム成分の両方が、毛乳頭細胞の増殖に必須の構成であることが示された。
【0163】
(実施例3:育毛効果および発毛効果に関連する種々の遺伝子の発現)
次に、本実施例では、種々の遺伝子の発現が本発明の成分によってどのように変化するかを調べた。
【0164】
使用したものは、CSPG4、Wnt5a、ALPL、Tenascin C、Versican、Fibronectin、VEGF、FGF−7およびネガティブコントロールとしてのVEGFBである。
【0165】
なお、各遺伝子については、Wnt5aの促進により毛乳頭細胞アポトーシス抑制が示される。VEGFの発現により毛包血管新生が示される。FGF−7の発現により毛母細胞増殖促進が示される。ALPLおよびVersicanの促進により毛乳頭細胞の活性が促進されていることが示される。Versicanは毛乳頭細胞特異的細胞外基質である。Tenascin Cの発現により成長期毛包の促進が示される。CSPG4の増加により成長期毛包の促進が示される。Fibronectinは広く存在する細胞外基質であり毛乳頭細胞等の促進が期待される。これらの遺伝子の発現上昇により、毛乳頭細胞が毛成長期の機能を発揮して、毛成長を促進する。通常のカルシウム剤を与えた時に発現が上昇するVEGFBは、発現抑制される場合に育毛または発毛効果が示されることになる。
【0166】
(材料および方法)
(1)4×10cells/mlの毛乳頭細胞を懸濁した500μlの専用培地をType Iコラーゲンコート24ウェル細胞培養プレート(Corning)に分注し、1.0×10cells/cmの細胞密度から37℃で42時間培養した。
(2)(a)水(control)、および(b)2.5%(w/v)POs−Ca(登録商標)、(c)0.457% CaCl((b)と同じカルシウム量)、の水溶液を作製した。(a)〜(c)の溶液とDMEM high glucose(Sigma,USA)を1:9で混合した。
(3)(1)の各ウェルから培地を吸引除去し、1×PBS(137mM NaCl,8.1mM NaHPO,2.68mM KCl,1.47mM KHPO(pH7.4),和光純薬)1mlを加えて吸引除去することでウェルを洗浄し、DMEM high glucoseを500μl加え、COインキュベーター内で37℃、5時間インキュベートした。コントロール、POs−Ca(登録商標)、CaClそれぞれについて6ウェル(6サンプル)を実験サンプルとした。
(4)各ウェルから培地を除いた後、CellAmp Direct RNA prep kit for RT−PCR(Takara)でmRNA抽出を行った。方法は該キットのマニュアルに従った。
(5)抽出されたmRNA溶液 (各ウェル200μl)のうち、8μlを用いてPrimeScript RT Master Mix (Takara)で40μlスケールで逆転写反応し、cDNAを得た。反応条件は該キットのマニュアルに従った。
(6)各cDNA溶液を水で2倍に希釈し、そのうち0.5μlと、表2に示す各遺伝子のプライマー1およびプライマー2を各々4μM含む溶液を1μl、SYBR Premix Ex Taq II(Takara)を5μl、水を3.5μl加え、各遺伝子について定量PCRを行った。装置はCFX96 Touch(BIO−RAD, USA)を用い、95℃で30秒の変性処理の後、95℃5秒、62℃20秒の2ステップサイクルを65サイクル行なわせ、各サイクル後の蛍光強度を測定した。
(7)リファレンス遺伝子としてPGK1とGAPDHを使用し、CFX96Touchに付属の解析ソフト(Bio−Rad CFX Manager 3.0)で発現量比較解析を行った。相対的な発現量の算出はソフトウェアのデフォルトの条件で行った。
(8)得られた発現量を各条件で処理した細胞由来の6サンプルについて平均値を求め、コントロールに対する発現量とした。
【0167】
【表2】
【0168】
(結果)
結果を図2に示す。POs−Ca(登録商標)処理をした場合には、CSPG4、Wnt5a、ALPL、Tenascin C、Versican、Fibronectin、VEGF、FGF−7遺伝子でコントロール及びCaCl処理よりも遺伝子発現が促進していた。特にCSPG4、Wnt5a、ALPL、Tenascin C、Versican、Fibronectin、VEGF遺伝子については、Dunnettの方法による多重比較検定(n=6)でコントロールに比べて有意に遺伝子発現が上昇していた。塩化カルシウムではこのような有意な発現の上昇は見られず、VersicanおよびFibronectin遺伝子についてはコントロールよりも有意に発現量が低下するというPOs−Ca(登録商標)とは逆の効果が見られた。
【0169】
一方、VEGFBについては、塩化カルシウムでコントロールと比較して有意に発現が上昇するのに対し、POs−Ca(登録商標)では逆に有意に発現が抑えられていた。
【0170】
Wnt5aの促進によりPOs−Ca(登録商標)の毛乳頭細胞アポトーシス抑制が示される。VEGFの発現により毛包血管新生が示される。FGF−7の発現によりPOs−Ca(登録商標)の毛母細胞増殖促進が示される。ALPLおよびVersicanの促進によりPOs−Ca(登録商標)の毛乳頭細胞の活性の促進が示される。Versicanは毛乳頭細胞特異的細胞外基質である。Tenascin Cの発現によりPOs−Ca(登録商標)の成長期毛包の促進が示される。CSPG4の増加によりPOs−Ca(登録商標)の成長期毛包の促進が示される。Fibronectinは広く存在する細胞外基質でありPOs−Ca(登録商標)による毛乳頭細胞等の促進が期待される。これらの遺伝子の発現上昇により、POs−Ca(登録商標)が毛乳頭細胞に対して毛成長期の機能を発揮させ、毛成長を促進する効果があることが理解される。POs−Ca(登録商標)のは、通常のカルシウム剤を与えた時に発現が上昇するVEGFBについて、発現抑制する効果があることから、この点でも毛成長を促進する効果があることが理解される。
【0171】
(実施例4:ミノキシジルとの比較実験)
次に、本実施例では、実施例3と同様の実験を、POs−Ca(登録商標)と既存の発毛剤であるミノキシジルとの比較実験を行った。
【0172】
(材料および方法)
実施例3の(2)を以下のように変更した以外は実施例3と同様の実験を行った。
(2)(a)水(control)、および(b)2.5%(w/v)POs−Ca(登録商標)の水溶液、(d)500μM ミノキシジルの水溶液(終濃度50μM)および(e)2.5%(w/v) POs−Ca(登録商標),500μM ミノキシジル(POs−Ca(登録商標)終濃度0.25%、ミノキシジル終濃度50μM)の水溶液を作製した。(a)、(b)、(d)および(e)の溶液とDMEM high glucose(Sigma,USA)を1:9で混合した。ミノキシジル濃度はJournal of Investigative Dermatology117,1594−1600 (2001)の結果を参考に、毛乳頭細胞に影響を与えることが確認された濃度として選択した。
【0173】
(結果)
結果を図3に示す。POs−Ca(登録商標)処理をした場合には、Wnt5a、ALPL、Versican、Fibronectin、VEGF、VEGFB、FGF−7遺伝子について、Tukeyの方法による多重比較検定(n=6)でミノキシジル処理に比べて有意に発現が向上した。ミノキシジルはその作用機序が不明な点があるが、これと比べて、以下の点で本発明のPOs−Ca(登録商標)の効果が異なることが理解され、ミノキシジルの効果を補完し得ることが理解される。
・Wnt5aについて、Tukeyの方法による多重比較検定(n=6)でコントロールに比べて有意差の有無で検討すると、POs−Ca(登録商標)では顕著に効果があるのに対してミノキシジルではほとんど効果がないという顕著な相違があることから、本発明はミノキシジルにない毛乳頭細胞アポトーシス抑制効果を有すること、および併用により補完し得ることが理解される。
・VEGF、TenascinおよびCSPG4は、Tukeyの方法による多重比較検定(n=6)でコントロールに比べて有意差の有無で検討すると、POs−Ca(登録商標)では顕著に効果があるのに対してミノキシジルではほとんど効果がないという顕著な相違があることから、本発明はミノキシジルにない毛包促進の効果があることが期待されること、および併用により補完し得ることが理解される。
・FGF−7については、POs−Ca(登録商標)の効果がミノキシジルよりも優れていることから、POs−Ca(登録商標)が毛母細胞増殖促進に優れていることが理解され、本発明はミノキシジルにない毛母細胞増殖促進の効果があることが期待されること、および併用により補完し得ることが理解される。
・FibronectinおよびVEGFBについても、Tukeyの方法による多重比較検定(n=6)でコントロールに比べて有意差の有無で検討すると、POs−Ca(登録商標)では統計学的有意な効果がみられるのに対してミノキシジルでは見られないことから、ミノキシジルにない育毛または発毛効果がPOs−Ca(登録商標)によって提供されることが期待されること、および併用により補完し得ることが理解される。
【0174】
(実施例5:アデノシンとの組み合わせ試験)
次に、本実施例では、実施例3と同様の実験を、POs−Ca(登録商標)と既存の育毛成分であるアデノシンとの比較実験を行った。
【0175】
(材料および方法)
実施例3の(2)を以下のように変更した以外は実施例3と同様の実験を行った。
(2)(a)水(control)、および(b)2.5%(w/v)POs−Ca(登録商標)の水溶液、(d)500μM アデノシンの水溶液(終濃度50μM)および(e)2.5%(w/v) POs−Ca(登録商標),500μM アデノシン(POs−Ca(登録商標)終濃度0.25%、アデノシン終濃度50μM)の水溶液を作製した。(a)、(b)、(d)および(e)の溶液とDMEM high glucose(Sigma,USA)を1:9で混合した。アデノシン濃度はJournal of Investigative Dermatology117, 1594−1600 (2001)、Journal of Investigative Dermatology 127, 1318-1325(2007)の結果を参考に、毛乳頭細胞に影響を与えることが確認された濃度として選択した。
【0176】
(結果)
結果を図4Aおよび図4Bに示す。POs−Ca(登録商標)とアデノシンを組み合わせて処理をした場合には、FGF−7およびCSPG4でPOs−Ca(登録商標)単独やアデノシン単独で処理をした場合に比べて相乗的に発現量が増大した。Wnt5a、ALPL、Versican、Fibronectin、CSPG4、Tennascin遺伝子について、Dunnettの方法による多重比較検定(n=8)で無処理に比べて有意に発現が向上した。いずれもPOs−Ca(登録商標)単独又はミノキシジル単独の処理と比較して、それぞれの効果を合わせたような発現量となっていた。アデノシンは細胞膜上のアデノシン受容体であるA1RやA2Rに結合し、細胞内のカルシウム濃度とcAMPを増加させることで、毛成長関連因子の発現に影響を与えることが示唆されている (Journal of Investigative Dermatology117, 1594−1600 (2001)、Journal of Investigative Dermatology 127, 1318-1325(2007))。本発明のPOs−Ca(登録商標)が細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇に寄与している可能性も考えられる。
【0177】
(実施例6:他の酸性化糖アルカリ土類金属塩)
次に、POs−Ca(登録商標)に加えそれ以外の酸性化等アルカリ土類金属塩について、VEGFおよびFGF−7の発現率比較を行い、POs−Ca(登録商標)以外のアルカリ土類金属塩でも同様の毛乳頭細胞増殖活性化効果、育毛および発毛効果が期待されることを実証した。
【0178】
(材料および方法)
(1) 2×10cells/mlの毛乳頭細胞を懸濁した500μlの専用培地をType Iコラーゲンコート24ウェル細胞培養プレート(Corning)に分注し、5×10cells/cmの細胞密度から37℃で72時間培養した。
(2)(a)水(control)、(b)2.5%(w/v)POs−Ca(登録商標)、(c)0.457%(w/v)CaCl、(d)3.23%(w/v)G1P−Ca、(e)2.5%リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩(POs−Na、王子コーンスターチ株式会社)、(f)2.5%(w/v)リン酸化オリゴ糖マグネシウム塩(POs−Mg、王子コーンスターチ株式会社)、(g)0.457%(w/v)CaCl・2.5%(w/v)マルトトリオース(林原)、(h)1.19%(w/v)ラクトビオン酸ナトリウム塩・0.457%(w/v)CaClの水溶液を作製した。なお(b)〜(h)のカルシウム濃度は等しい。
(3)(a)〜(c)の溶液とDMEM high glucose(Sigma,USA)を1:9で混合した。
(4)実施例2の(4)〜(6)と同様にして細胞からmRNAを抽出し、cDNAを調製してからVEGF、FGF−7、GAPDH遺伝子について定量PCRで発現量を定量した。
(7)リファレンス遺伝子としてGAPDHを使用し、CFX96Touchに付属の解析ソフト(Bio−Rad CFX Manager3.0)で発現量比較解析を行った。発現量の算出はソフトウェアのデフォルトの条件で行った。
(8)定量PCR測定を4回繰り返して平均値を求め、コントロールの発現量で割った値を発現率とした。
【0179】
(結果)
VEGFおよびFGF−7の発現率比較を表に示す。(c)塩化カルシウム及び(g)塩化カルシウムにリン酸基を含まないオリゴ糖であるマルトトリオースを混合したもの、及びリン酸化オリゴ糖のアルカリ金属塩であるPOs−Naについては、VEGF及びFGF−7の遺伝子発現量はコントロールと同等か下回る値を示すのに対し、POs−Ca(登録商標)と同様に糖リン酸化物のカルシウム塩である(d)G1P−Ca、酸性糖誘導体のカルシウム塩である(h)ラクトビオン酸カルシウムはPOs−Ca(登録商標)と同様にVEGFおよびFGF−7の発現量を上昇させた。また、POs−Ca(登録商標)と同様にリン酸化オリゴ糖のアルカリ土類金属の塩であるPOs−Mgも両遺伝子に対して発現上昇効果をもっていた。
【0180】
【表3】
【0181】
以上の結果から、POs−Ca(登録商標)以外の酸性糖アルカリ土類金属塩一般で、毛乳頭細胞増殖促進効果、育毛効果および発毛効果があることが理解される。特に、POs−MgはPOs−Ca(登録商標)に準じる効果があることが期待され、ラクトビオン酸カルシウムもまた、POs−Ca(登録商標)に準じる効果があることが期待される。しかしながら、予備的実験ながら、対比実験を行ったところ、POs−Ca(登録商標)がPOs−Mgやラクトビオン酸カルシウムよりも高い毛乳頭細胞増殖促進効果、育毛効果および発毛効果があることが分かり、好ましい実施形態では、POs−Ca(登録商標)が有利であることが分かった。
【0182】
(実施例7:マグネシウムとの組み合わせの場合の遺伝子発現変動)
次に、本実施例では、マグネシウムとの組み合わせの場合の遺伝子発現変動を確認した。以下に詳細を示す。
【0183】
(材料および方法)
実施例3の(1)(2)を以下のように変更した以外は実施例3と同様の実験を行った。
【0184】
POs−MgとMgCl・6HOについて、マグネシウムイオンの量を揃えた場合の毛乳頭細胞におけるVEGF、FGF7およびWnt5aの発現率比較を行い、酸性糖とマグネシウムの組み合わせによる効果を実証した。
【0185】
(材料および方法)
(1) 4×10cells/mlの毛乳頭細胞を懸濁した500μlの専用培地をType Iコラーゲンコート24ウェル細胞培養プレート(Corning)に分注し、1×10 cells/cmの細胞密度から37℃で48時間培養した。
(2)(a)水(control)、および(b)2.5%(w/v)POs−Mgの水溶液、(c)1.11%(w/v)MgCl・6HOの水溶液を作製した。(a)、(b)、(および(c)の溶液とDMEM high glucose(Sigma,USA)を1:9で混合した。
【0186】
(結果)
リン酸化オリゴ糖マグネシウム塩(POs−Mg)についてはFGF7、WNT5Aで通常のマグネシウムでは見られなかった有意差のある発現増加がみられた。ただし、VEGFはPOs−Ca(登録商標)ほどの活性化が見られなかったが(図5)、依然として増加の傾向を示した。したがって、マグネシウム塩もまた、本発明において利用可能であると理解される。
【0187】
(実施例8:POs−Ca(登録商標)と一般的育毛成分とを組み合わせた場合の遺伝子発現変動)
般的に化粧品や医薬部外品の育毛剤で用いられるセンブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、グリチルリチン酸二カリウムをPOs−Ca(登録商標)とともに添加したときの効果を、それぞれの成分のみを添加した時と比較検証した。
【0188】
(材料)
(1)グリチルリチン酸二カリウムは和光純薬(生化学用)を水で希釈して20%(w/v)とし、10mlシリンジ(テルモ(株))で0.20μm フィルター(Minisart, Surfactant−free cellulose acetate、Sartorius Stedim Biotech, US)に通して滅菌状態としたものを適宜滅菌水で希釈して用いた。
(2)トコフェロール酢酸エステルは、和光純薬の酢酸(±)α−トコフェロール(一級)を、パントテニルエチルエーテルはSanta Cruz Biotechnology社のDL-pantothenyl ethyl etherを、それぞれエタノールで5倍希釈して20%(v/v)とし、それを適宜滅菌水で希釈して用いた。
(3)センブリエキスとして有限会社センケン社製の水-エタノール溶液を100%(v/v)のエキスとして、適宜滅菌水で希釈して用いた。
【0189】
(方法)
(1) 2×10cells/mlの毛乳頭細胞を懸濁した500μlの専用培地をType Iコラーゲンコート24ウェル細胞培養プレート(Corning)に分注し、5×10 cells/cmの細胞密度から37℃で96時間培養し、サブコンフルエントとした。
(2)以下の表の組成の溶液を作製し、それぞれをDMEM high glucose(Sigma,USA)と1:9で混合した。
【0190】
【表4】
【0191】
(3)(a)〜(i)を含む各DMEM溶液について培養するウェルの数は2とし、FGF7、VEGFについて実施例3の(3)〜(8)と同様に発現量を解析し、2ウェルの平均値を比較した。
【0192】
(結果)
化粧品や医薬部外品の育毛剤で用いられることの多いセンブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステル、グリチルリチン酸二カリウムについては、POs−Ca(登録商標)との相乗的な効果を発揮するものはなかった(図6)。
【0193】
(実施例9:製剤)
本発明の実施例として、育毛剤の例を示す。
(1)製剤例1
POs−Ca(登録商標) 1.0 g
(他の成分)
ポリビニルアルコール 0.5g
グリチルリチン酸二カリウム 0.1g
蒸留水 加えて100mlにする
合計 100ml
以上の材料は、POs−Ca(登録商標)については、王子コーンスターチ株式会社から入手可能であり、ポリビニルアルコールは大阪有機化学工業株式会社、BASF社から、グリチルリチン酸二カリウムは丸善製薬株式会社から入手可能である。
(2)製剤例2
POs−Ca(登録商標) 1.0 g
(他の成分)
エタノール 5%
ポリビニルアルコール 0.5g
グリチルリチン酸二カリウム 0.1g
l−メントール 0.3%
センブリエキス (センブリ抽出リキッドET) 1.0%
パントテニルエチルエーテル 1%
人参エキス (ニンジン抽出液) 1.0%
酢酸トコフェロール 100mg
蒸留水 加えて100mlにする
合計 100ml
以上の材料は、POs−Ca(登録商標)については、王子コーンスターチ株式会社から入手可能であり、パントテニルエチルエーテルはDSMニュートリションジャパン株式会社から、酢酸トコフェロールは岩瀬コスファ株式会社から、他は丸善製薬株式会社から入手可能である。
【0194】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、特願2014-235352に対して優先権主張をするものであり、その内容はあたかもすべてが本願の一部を構成するようにその全体が参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0195】
化粧品(育毛剤、シャンプー、整髪料)、医薬品、ペット用育毛剤、リン酸化糖カルシウムそのものの育毛用途での供給が可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0196】
配列番号1:Fibronectin プライマー1(フォワード):CCCATCAGCAGGAACACCTT
配列番号2:Fibronectin プライマー2(リバース) :GGCTCACTGCAAAGACTTTGAA
配列番号3:CSPG4 プライマー1(フォワード) :AGCTAGCCAGGACTGATGGA
配列番号4:CSPG4 プライマー2(リバース) :CAGCCTAACCTGCTCCAAAG
配列番号5:Tenascin Cプライマー1(フォワード):AGGGACCACTGGGTGAGAGA
配列番号6:Tenascin Cプライマー2(リバース):GGGCTGGTTGTATTGATGCTTT
配列番号7:Versicanプライマー1(フォワード):CAAGCATCCTGTCTCACGAA
配列番号8:Versicanプライマー2(リバース) :CAACGGAAGTCATGCTCAAA
配列番号9:ALPL プライマー1(フォワード) :GACCCTTGACCCCCACAAT
配列番号10:ALPL プライマー2(リバース) :GCTCGACTGCATGTCCCCT
配列番号11:Wnt5aプライマー1(フォワード) :AGGGCTCCTACGAGAGTGCT
配列番号12:Wnt5aプライマー2(リバース) :GACACCCCATGGCACTTG
配列番号13:VEGF プライマー1(フォワード) :CTACCTCCACCATGCCAAGT
配列番号14:VEGF プライマー2(リバース) :AGCTGCGCTGATAGACATCC
配列番号15:VEGFB プライマー1(フォワード):GCAGATCCTCATGATCCGGT
配列番号16:VEGFB プライマー2(リバース) :GGCTTCACAGCACTGTCCTT
配列番号17:FGF-7プライマー1(フォワード):TGTCGAACACAGTGGTACCTG
配列番号18:FGF-7プライマー2(リバース) :CCCTTTGATTGCCACAATTC
配列番号19:PGK1プライマー1(フォワード) :AGGGAAAAGATGCTTCTGGG
配列番号20:PGK1プライマー2(リバース) : AAGTGAAGCTCGGAAAGCTTCTAT
配列番号21:GAPDHプライマー1(フォワード):ACAGTCAGCCGCATCTTCTT
配列番号22:GAPDHプライマー2(リバース) :ACGACCAAATCCGTTGACTC
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]