【文献】
窪田 新之助,自動走行する水田農業機械たち,農業ビジネスマガジン,イカロス出版,2016年 2月25日,第12巻,p.50-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願にかかる監視制御装置、監視制御方法および監視制御プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態により本願にかかる監視制御装置、監視制御方法および監視制御プログラムが限定されるものではない。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0011】
〔1.監視制御処理〕
まず、
図1を用いて、実施形態にかかる監視制御処理の一例について説明する。
図1は、実施形態にかかる監視制御処理の一例を示す図である。実施形態にかかる監視制御処理は、
図1に示す監視制御装置100によって行われる。
【0012】
また、実施形態にかかる監視制御システム1は、
図1に示すように、監視者端末10と、監視制御装置100とを含む。監視者端末10、監視制御装置100は、ネットワークを介して有線または無線により通信可能に接続される。なお、
図1に示す監視制御システム1には、複数台の監視者端末10や、複数台の監視制御装置100が含まれてもよい。また、後述するが、監視制御システム1には、検査機関サーバ30や管理サーバ60も含まれる。
【0013】
監視者端末10は、自動運転車の自動走行を監視する監視者が、監視作業に用いる情報処理装置である。監視者端末10は、例えば、ノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップPC等である。各監視者は、監視者端末10を用いて、自身が監視を担当する自動運転車の自動走行を監視する。例えば、監視者は、自動運転車による危険走行を見抜いた場合には、監視者端末10を用いて、自動運転車を遠隔操作することにより、危険走行を回避する。
【0014】
ここで、自動運転車について説明する。自動運転車は、人間が運転操作を行わなくとも自動走行が可能な自動車である。自動運転車には、レーダー、GPS(Global Positioning System)、カメラ等が搭載されている。自動運転車は、レーダー、GPS、カメラ等で検出した運転態様や周辺環境を監視者端末10に送信する。これにより、監視者は、監視者端末10を用いて、自動運転車の監視が可能となる。なお、実施形態にかかる自動運転車の車両種類(普通自動車、軽自動車、大型自動車等)は限定されない。
【0015】
また、自動運転車には、自動化のレベルが定められている。具体的には、自動化のレベルに応じてレベル0〜4が定められている。レベル値が大きくなるほど、より自動化が進んでいることを示す。例えば、最も低いレベル0は、運転に関する全ての操作(加速・操舵・制動)がドライバーに委ねられていることを示す。一方、レベル4は、完全自動運転(ドライバーが運転に関与しない)を示す。ところで、実施形態にかかる自動運転車は、レベル4(完全自動運転)に対応し、安全に関わる運転操作と周辺監視の全てがシステムや外部に委ねられている。
【0016】
次に、本実施形態の前提について説明する。監視者の監視能力の良し悪しは、監視者の体質特徴に依存する場合がある。一例を示すと、空間認識能力が高い監視者は、監視能力が高い傾向にある、といったものである。また、このように、監視能力に関連する体質特徴の中には、監視者の遺伝子の寄与率が高いものがある。空間認識能力もその一つである。
【0017】
これまでの遺伝子研究により、空間認識能力は、特定の遺伝子のタイプに応じて決まることが判明している。例えば、かかる遺伝子を説明の便宜上、概念記号を用いて「GINE1」とする。遺伝子「GINE1」は人によって、複数のタイプが存在する。例えば、遺伝子「GINE1」のうち、「α型」の遺伝子「GINE1」を有する人は、空間認識能力が予め定められた基準値よりも高く、「β型」の遺伝子「GINE1」を有する人は、空間認識能力が予め定められた基準値よりも低い、といったように、遺伝子タイプに応じて形成される先天的な体質(遺伝子の寄与率が高い体質)が存在する。
【0018】
例えば、空間認識能力が低い、といった体質特徴の監視者は、物体が三次元空間に占めている状態や関係をすばやく認識することができない傾向にあるといえる。このような監視者が、自動運転車を監視する場合に、監視に見落としが発生するリスク(監視リスク)が高くなることが考えられる。そこで、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視者の遺伝子情報に基づいて、監視リスクを検出し、例えば、監視リスクが高い場合には、監視作業において見落とし等が発生しないよう制御する。
【0019】
具体的には、実施形態にかかる監視制御装置100は、自動運転車の自動走行を監視する監視者の遺伝子情報を取得する。そして、監視制御装置100は、監視者の遺伝子情報から予測される当該監視者の体質であって監視能力に関連する体質の特徴である体質特徴に基づいて、当該監視者の監視作業に関する制御を行う。以下では、実施形態にかかる監視制御処理について、一例を用いて説明する。
【0020】
まず、監視制御装置100は、各監視者による自動運転車の監視作業のログを含む監視履歴と、各監視者の遺伝子情報とを取得する(ステップS1)。遺伝子情報とは、遺伝子検査によって得られた検査結果であり、例えば、監視者が有する遺伝子の一覧である。また、遺伝子情報とは、特定の体質(性格)の形成や、特定の病気の発症と関わりのある遺伝子が、どのようなタイプ(遺伝子型)であるか、といったことを示す情報である。上記例を用いると、「GINE1」のタイプが「β」型である人は、空間認識能力が低いことが知られているとすると、監視者は、遺伝子検査により、このことを知ることができる。
【0021】
監視制御装置100は、このような遺伝子情報を、遺伝子検査を行った検査機関から取得する。例えば、監視制御装置100は、かかる検査機関に属するサーバ装置(検査機関サーバ30)にアクセスすることで、遺伝子情報を取得する。なお、監視制御装置100を管理する事業主(以下、「事業主T」とする)と、かかる検査機関との間で所定の契約が交わされ、さらに遺伝子検査を受診した監視者に承諾が得られている場合に、このような遺伝子情報の取得は可能となる。ただし、監視制御装置100は、遺伝子検査を受診した監視者から直接、遺伝子情報の提供を受けてもよい。つまり、監視制御装置100がどの様な形で遺伝子情報を取得するかは限定されない。
【0022】
また、監視制御装置100は、取得した遺伝子情報を自装置内の記憶部である遺伝子情報記憶部122に格納する。遺伝子情報記憶部122は、遺伝子検査によって得られた遺伝子情報を記憶する記憶部であり、
図1に示すように、遺伝子検査を受けた各監視者を識別する識別情報(監視者ID)と、その監視者の遺伝子情報とを対応付けて記憶する。
【0023】
つまり、遺伝子情報記憶部122は、遺伝子情報として、各監視者がどのようなタイプの遺伝子を有するかを記憶する。例えば、遺伝子情報記憶部122は、遺伝子情報として、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)を有することにより複数のタイプを有する遺伝子のうち、各監視者がどのようなタイプの遺伝子を有するかを記憶する。
【0024】
例えば、
図1に示す遺伝子情報記憶部122では、監視者M1の遺伝子情報は、監視者U1が、遺伝子「G1a」、「G2c」、「G3a」、「G4a」・・・を有することを示す。ここで、本実施形態において遺伝子標記に付与する小文字のアルファベットは、遺伝子のタイプを示すものとする。例えば、遺伝子「G1a」であれば、「a」型の遺伝子「G1」を示す。つまり、監視者M1が、SNPにより複数のタイプが存在する遺伝子「G1」において、「a」型の遺伝子「G1」を有することを示す。
【0025】
次に、監視履歴とは、各監視者がどのような監視作業を行ったかを示すログが蓄積されることによる履歴情報である。監視作業とは、監視者端末10を用いた遠隔操作によるブレーキ制御、ハンドル制御等である。また、監視履歴には、これら制御が行われたタイミング(例えば、自動運転車の運転態様に対してどのようなタイミングで制御が行われたか)等も含まれる。また、監視履歴は、例えば、監視作業を管理する管理サーバ60(不図示)によって管理される。したがって、監視制御装置100は、例えば、監視履歴を管理サーバ60から取得し、取得した運転履歴を監視履歴記憶部124に格納する。
【0026】
図1に示す監視履歴記憶部124は、監視者M1が、「2017年5月31日」において操作ログ「DA1−1」によって示される監視作業を行った例を示す。監視者M2およびM3も同様であるため省略する。
【0027】
次に、監視制御装置100は、各監視者の体質特徴を特定(予測)する(ステップS2)。
図1の例では、監視制御装置100は、監視者M1、M2、M3(監視者M1〜M3)の体質特徴を特定するものとする。例えば、監視制御装置100は、どの遺伝子のどのタイプが、どのような性格形成に寄与しているかが遺伝子タイプごとに蓄積されるデータベース(後述する体質情報記憶部121)内の情報と、監視者M1〜M3それぞれの遺伝子情報とを照らし合わせて、監視者M1〜M3それぞれがどのような体質であるかといった体質特徴を特定する。
【0028】
図1の例で対象とする体質は、空間認識能力であるものとする。なぜなら、この体質は、これまでの遺伝子研究により、特定のタイプの遺伝子が寄与する先天的な体質であることが判明しているため、体質特徴が不明であっても監視者から遺伝子情報さえ得られれば、その遺伝子情報から予測されることができるためである。また、この体質は、監視者の監視能力に影響を及ぼす可能性が高いと考えられるためである。
【0029】
なお、空間認識能力は、物体が三次元空間に占めている状態や関係(物体の位置、方向、姿勢、大きさ、形状、間隔等)を、すばやく正確に認識する能力を示す。また、
図1では、説明を簡単にするために空間認識能力のみを用いるが、監視者の監視能力に関連する体質には、空間認識能力以外にも空間的知性、課題対応力、集中力等がある。
【0030】
図1の例では、監視制御装置100が、監視者M1は遺伝子「G2c」(c型遺伝子G2)を有することにより、体質「空間認識能力」が「低い」といった体質特徴である、ことを特定した例を示す。より簡単に言うと、監視制御装置100が、監視者M1は遺伝子「G2c」(c型遺伝子G2)を有することにより、「空間認識能力」が「低い」体質であると特定した例を示す。また、監視制御装置100が、監視者M2は遺伝子「G2a」を有することにより、「空間認識能力」が「高い」といった体質特徴である、ことを特定した例を示す。また、監視制御装置100が、監視者M3は遺伝子「G2a」を有することにより、「空間認識能力」が「高い」といった体質特徴である、ことを特定した例を示す。
【0031】
また、監視制御装置100は、監視履歴に基づいて、監視者の監視能力を示す指標値である監視能力スコアを算出する(ステップS3)。例えば、監視制御装置100は、監視履歴から、反応時間および反応率を算出し、算出した反応時間および反応率に基づいて、監視能力スコアを算出する。反応時間とは、例えば、自動運転車に対して何らかの制御操作を行わなければならない状況になってから、監視者が実際に制御操作を行うまでに要した時間である。例えば、反応時間とは、自動運転車に対してブレーキ操作をしなければならない状況になってから、監視者が実際に遠隔によるブレーク操作を行うまでに要した時間である。反応率は、上記のような制御操作を行った確率である。
【0032】
例えば、監視制御装置100は、反応時間がより短く、かつ、反応率が高いほど、監視能力スコアがより高くなるように監視能力スコアを算出する。監視能力スコアがより高いほど、監視能力が高い(例えば、監視に見落としが少ない)ことを示す。
図1の例では、監視制御装置100が、監視者M1の反応時間「TM1」、および、反応率「RT1」を算出し、さらにこれらから監視能力スコア「SC1」を算出した例を示す。監視者M2およびM3についても
図1に示す通りである。
【0033】
次に、監視制御装置100は、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、総合的なスコア「総合スコア」を算出する(ステップS4)。
図1の例では、監視制御装置100が、監視者M1について、総合スコア「aSC1」を算出した例を示す。監視者M2およびM3についても
図1に示す通りである。
【0034】
実施形態にかかる体質特徴は、監視能力に関連すると考えられるものである。このため、監視制御装置100は、ステップS2で特定した体質特徴だけでも監視リスクを検出することが可能である。例えば、監視制御装置100は、監視者M1について「空間認識能力が低い」ことにより監視能力が低いと予測することで、監視者M1に対して監視リスクを検出することができる。しかし、監視制御装置100は、実際に監視能力はどうであるかといった情報(監視履歴に基づく監視能力スコア)を体質特徴に考慮することで、監視リスクをより高精度に検出することができる。
【0035】
このため、監視制御装置100は、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、総合的なスコア「総合スコア」を算出する。そして、監視制御装置100は、総合スコアに基づいて監視リスクを検出する(ステップS5)。例えば、監視制御装置100は、総合スコアが所定値より低い場合に、監視リスクを検出する。言い換えれば、監視制御装置100は、総合スコアが所定値より低い監視者は、監視作業をするうえでミスをしてしまう恐れがあるとの評価を下す。
図1では、監視制御装置100は、監視者M1に対して監視リスクを検出したものとする。
【0036】
仮に、監視しているにも拘わらず自動運転車が事故を起こしてしまった場合、その責任は監視者が負わなければならないことになっている。したがって、監視制御装置100は、監視作業をするうえでミスをしてしまう恐れがあるとの評価を下した監視者の監視下に置いて、実際に事故が起こることを防止するために、この監視者の監視作業に関する制御を行う(ステップS6)。
【0037】
例えば、監視制御装置100は、監視作業に関する制御として、監視リスクを検出した監視者M1がより注意深く監視作業を行うよう、監視者M1の監視者端末20に注意喚起を表示させる。また、監視制御装置100は、監視リスクを検出した監視者M1がより注意深く監視作業を行うよう、監視者M1の監視者端末20にアラートを出力させてもよい。また、監視制御装置100は、監視者M1がより監視作業を行い易いよう、操作性の高い監視画面、あるいは、より簡略化し見やすくした監視画面を提供してもよい。
【0038】
さて、これまで説明してきたように、実施形態にかかる監視制御装置100は、自動運転車の自動走行を監視する監視者の遺伝子情報を取得する。そして、監視制御装置100は、監視者の遺伝子情報から予測される当該監視者の体質であって監視能力に関連する体質の特徴である体質特徴に基づいて、当該監視者の監視作業に関する制御を行う。
【0039】
このように、監視制御装置100は、遺伝子情報から予測される監視者の体質特徴に、さらに当該監視者の監視履歴を組み合わせることで、監視作業をするうえで事故につながるようなミス(見落とし等)をしてしまうリスクを高精度に検出することができる。また、監視制御装置100は、監視リスクを検出した監視者に対して、監視作業に関する制御を行うことにより、監視作業を効果的に制御することができる。
【0040】
〔2.監視制御システムの構成〕
次に、
図2を用いて、実施形態にかかる監視制御システムの構成について説明する。
図2は、実施形態にかかる監視制御システム1の構成例を示す図である。
図2に示すように、監視制御システム1は、監視者端末10と、検査機関サーバ30と、管理サーバ60と、監視制御装置100とを含む。監視者端末10と、検査機関サーバ30と、管理サーバ60と、監視制御装置100とは、ネットワークNを介して有線または無線により通信可能に接続される。
【0041】
図1では省略したが、実施形態にかかる監視制御システム1は、
図2に示すように、さらに検査機関サーバ30および管理サーバ60を含む。検査機関サーバ30は、遺伝子検査を行う所定の検査機関に属するサーバ装置であり、検査結果である遺伝子情報を蓄積している。例えば、検査機関サーバ30は、監視制御装置100からの要求に応じて、監視制御装置100に遺伝子情報を送信する。
【0042】
管理サーバ60は、各監視者の監視作業ログを含む監視ログを蓄積し、運転履歴として管理する。また、管理サーバ60は、監視制御装置100がアクセスしてきた場合に、かかる監視履歴を監視制御装置100に提供する。なお、管理サーバ60と、監視制御装置100は、1つのサーバ装置として構成されてもよい。
【0043】
〔3.監視制御装置の構成〕
次に、
図3を用いて、実施形態にかかる監視制御装置100について説明する。
図3は、実施形態にかかる監視制御装置100の構成例を示す図である。
図3に示すように、監視制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。
【0044】
(通信部110について)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、ネットワークNと有線または無線で接続され、例えば、監視者端末10、検査機関サーバ30、管理サーバ60との間で情報の送受信を行う。
【0045】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、体質情報記憶部121と、遺伝子情報記憶部122と、監視者体質記憶部123と、監視履歴記憶部124と、スコア記憶部125とを有する。
【0046】
(体質情報記憶部121について)
体質情報記憶部121は、遺伝子のうちどのタイプの遺伝子がどのような体質に寄与しているかといった遺伝子情報と、体質特徴との関係性を示す情報を記憶する記憶部である。なお、どのタイプの遺伝子がどの体質特徴に寄与しているかはこれまでの遺伝子研究によって明らかにされたものである。ここで、
図4に実施形態にかかる体質情報記憶部121の一例を示す。
図4の例では、体質情報記憶部121は、「遺伝子情報」、「体質」、「体質特徴」といった項目を有する。
【0047】
「遺伝子情報」は、SNPを有することにより複数のタイプを有する遺伝子であって、対応する「体質」が人によってどのような特徴を先天的に発現するかに寄与する遺伝子を示す情報である。「体質」は、対応する「遺伝子情報」が要因となっている先天的な体質を示す。また、「体質」は、監視能力に関連する体質を示す。「体質特徴」は、「体質」が、対応する「遺伝子情報」が要因となり、実際に、どのような特徴を形成されるかを示す。
【0048】
すなわち、
図4の例では、体質「空間認識能力」が「高い」(例えば、所定の基準値より高い)といった体質特徴が先天的に形成されることには、遺伝子「G2a」(a型遺伝子G2)が寄与している、例を示す。同様に、体質「空間認識能力」が「低い」(例えば、所定の基準値より低い)といった体質特徴が先天的に形成されることには、遺伝子「G2c」(c型遺伝子G2)が寄与している、例を示す。
【0049】
なお、「空間認識能力」は、物体が三次元空間に占めている状態や関係(物体の位置、方向、姿勢、大きさ、形状、間隔等)を、すばやく正確に認識する能力(体質)を示す。「空間的知性」は、映像や空間のイメージの用いる能力を示す。具体的には、空間的知性は、物体がどのような位置に、どのような速度や関係で存在しているのかを知覚し記憶する能力を示す。また、「空間的知性」は、物事の判断能力とも関わりがある。「課題解決力」は、与えられた課題を解決する能力を示す。「集中力」は、集中する能力を示す。
【0050】
(遺伝子情報記憶部122について)
遺伝子情報記憶部122は、遺伝子検査によって得られた遺伝子情報を記憶する記憶部である。また、遺伝子情報記憶部122に記憶される遺伝子情報は、取得部131により取得されたものである。ここで、
図5に実施形態にかかる遺伝子情報記憶部122の一例を示す。
図5の例では、遺伝子情報記憶部122は、「監視者ID」、「遺伝子情報」、「氏名」、「住所」、「生年月日」といった項目を有する。
【0051】
「監視者ID」は、監視者を識別するための識別情報を示す。
図1でも説明したが、「遺伝子情報」は、遺伝子検査により監視者の遺伝子を解析して得られた解析結果に基づく遺伝子情報を示す。遺伝子情報とは、具体的には、SNPを有することにより複数のタイプを有する遺伝子のうち、各監視者がどのようなタイプの遺伝子を有するか、といった情報である。
【0052】
「氏名」は、監視者の氏名を示す。「住所」は、監視者の住所を示す。「生年月日」は、監視者の生年月日を示す。「氏名」、「住所」、「生年月日」は、例えば、遺伝子検査の申込みの際に監視者によって入力されたものである。
【0053】
すなわち、
図5の例では、監視者M1が、SNPにより複数のタイプが存在する遺伝子「G1」のうち、「a」型の遺伝子「G1」である遺伝子「G1a」を有することを示す。同様に、
図5の例では、監視者M2は、複数のタイプが存在する遺伝子「G1」のうち、「b」型の遺伝子「G1」である遺伝子「G1b」を有することを示す。
【0054】
(監視者体質記憶部123について)
監視者体質記憶部123は、後述する特定部132により特定(予測)された各監視者の体質に関する情報を記憶する。ここで、
図6に実施形態にかかる監視者体質記憶部123の一例を示す。
図6の例では、監視者体質記憶部123は、「監視者ID」、「体質」、「体質特徴」といった項目を有する。
【0055】
「監視者ID」は、監視者を識別するための識別情報を示す。かかる「監視者ID」は、遺伝子情報記憶部122に用いられるものと同一である。「体質特徴」は、対応する監視者に対して予測された「体質」の特徴を示す。
【0056】
すなわち、
図6の例では、監視者M1が体質「空間認識能力」が「低い」といった体質特徴であること、言い換えれば監視者M1は「空間認識能力」が「低い」体質であることが予測された例を示す。
【0057】
(監視履歴記憶部124について)
監視履歴記憶部124は、監視者がどのような監視作業を行ったかを示すログが蓄積されることによる履歴情報を記憶する記憶部である。監視作業とは、監視者端末10を用いた遠隔操作によるブレーキ操作、ハンドル操作等である。また、監視履歴には、これら制御が行われたタイミング(例えば、自動運転車の運転態様に対してどのようなタイミングで制御が行われたか)等も含まれる。また、監視履歴には、監視作業中の監視者の視線情報(アイトラッキング)や音声(会話)情報も含まれてよい。ここで、
図7に実施形態にかかる監視履歴記憶部124の一例を示す。
図7の例では、監視履歴記憶部124は、「監視者ID」、「日付」、「操作ログ」といった項目を有する。
【0058】
「監視者ID」は、監視者を識別するための識別情報を示す。かかる「監視者ID」は、遺伝子情報記憶部122に用いられるものと同一である。「日付」は、監視者によって監視および監視作業が行われた日時を示す。「操作ログ」は、どのような監視作業が行われたかを示す。
【0059】
すなわち、
図7の例では、監視者M1が「2017年5月31日」において操作ログ「DA1−1」によって示される監視作業を行った例を示す。なお、
図7の例では、「操作ログ」として概念的な記号を用いているが、実際には、上記のような監視作業を特定可能な情報が記憶される。
【0060】
(スコア記憶部125について)
スコア記憶部125は、監視能力スコアに関する情報を記憶する記憶部である。監視能力スコアは、後述する算出部133によって算出される。ここで、
図8に実施形態にかかるスコア記憶部125の一例を示す。
図8の例では、スコア記憶部125は、「監視者ID」、「反応時間」、「反応率」、「監視能力スコア」といった項目を有する。
【0061】
「監視者ID」は、監視者を識別するための識別情報を示す。かかる「監視者ID」は、遺伝子情報記憶部122に用いられるものと同一である。「反応時間」は、自動運転車に対して何らかの制御操作を行わなければならない状況になってから、監視者が実際に制御操作を行うまでに要した時間である。例えば、反応時間とは、自動運転車に対してブレーキ操作をしなければならない状況になってから、監視者が実際に遠隔によるブレーク操作を行うまでに要した時間である。反応率は、上記のような制御操作を行った確率である。「監視能力スコア」は、「反応時間」と「反応率」とに基づき算出されるスコアであって、監視者の監視能力を示すスコアである。
【0062】
すなわち、
図8の例では、監視者M1の監視履歴から、監視者M1について反応時間「TM1」、反応率「RT1」、監視能力スコア「SC1」が算出された例を示す。なお、
図8の例では、「反応時間」、「反応率」、「監視能力スコア」として概念的な記号を用いているが、実際にはこれらの情報を示す数値が記憶される。
【0063】
(制御部130について)
図3に戻り、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、監視制御装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0064】
図3に示すように、制御部130は、取得部131と、特定部132と、算出部133と、監視制御部134とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、
図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部130が有する各処理部の接続関係は、
図3に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0065】
(取得部131について)
取得部131は、監視者の遺伝子情報を取得する。例えば、取得部131は、遺伝子検査を行った検査機関から遺伝子情報を取得する。例えば、取得部131は、かかる検査機関に属するサーバ装置である検査機関サーバ30にアクセスすることで、遺伝子情報を取得する。例えば、取得部131は、検査機関サーバ30に定期的にアクセスし、遺伝子情報を取得する。また、取得部131は、取得した遺伝子情報を遺伝子情報記憶部122に格納する。
【0066】
また、取得部131は、監視者の監視履歴をさらに取得する。具体的には、取得部131は、各監視者の監視作業を示す情報を含む監視履歴を取得する。例えば、取得部131は、管理サーバ60にアクセスすることで、監視履歴を取得する。例えば、取得部131は、管理サーバ60に定期的にアクセスし、監視履歴を取得する。また、取得部131は、取得した監視履歴を監視履歴記憶部124に格納する。
【0067】
特定部132は、監視者の体質特徴を特定(予測)する。具体的には、特定部132は、取得部131により遺伝子情報が取得された監視者毎に、当該監視者の遺伝子情報に基づいて、当該監視者の体質特徴を特定する。例えば、特定部132は、体質特徴として、空間認識能力、空間的知性、課題対応力、集中力がどのような特徴(度合い)であるかを監視者毎に特定する。
【0068】
例えば、取得部131により、監視者M1、M2、M3の遺伝子情報が取得されたとする。かかる場合、特定部132は、体質情報記憶部121内の情報と、遺伝子情報記憶部122に記憶される監視者M1〜M3それぞれの遺伝子情報とを照らし合わせて、監視者M1〜M3それぞれがどのような体質特徴であるかを特定する。
【0069】
図4の例では、体質「空間認識能力」に関与する遺伝子は遺伝子「G2」である。そして、監視者M1は、
図5の例では、「c型」の遺伝子「G2」、すなわち遺伝子「G2c」を有する。したがって、特定部132は、
図6に示すように、監視者M1は「空間認識能力」が「低い」体質(体質特徴)であると予測する。同様にして、特定部132は、各監視者毎に空間認識能力、空間的知性、課題対応力、集中力といった体質がどのような特徴を示すかを予測することで、
図6に示す予測結果を得る。
【0070】
(算出部133について)
算出部133は、体質特徴と監視履歴とに基づく指標であって、監視能力を示す指標(総合スコア)を算出する。例えば、算出部133は、監視履歴に基づいて、監視能力スコアを算出する。そして、算出部133は、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、最終的な監視能力を示す総合スコアを算出する。算出部133は、任意の手法を用いて総合スコアを算出することができる。以下では、この一例について説明する。
【0071】
例えば、算出部133は、監視履歴から、反応時間および反応率を算出し、算出した反応時間および反応率に基づいて、監視能力スコアを算出する。例えば、算出部133は、反応時間がより短く、かつ、反応率がより高いほど、監視能力スコアがより高くなるように監視能力スコアを算出する。一例を示すと、算出部133は、反応時間に応じたスコアを算出するとともに、反応率に応じたスコアを算出する。そして、算出部133は、これら2つのスコアを加算(乗算でもよい)することにより監視能力スコアを算出する。
図8の例では、算出部133が、監視者M1の反応時間「TM1」、および、反応率「RT1」を算出し、さらにこれらから監視能力スコア「SC1」を算出した例を示す。
【0072】
次に、算出部133は、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、単純に監視履歴から算出した監視能力スコアに体質特徴を加味した総合的なスコアである総合スコアを算出する。例えば、算出部133は、体質特徴毎に当該体質特徴に応じた重み係数を算出し、算出した体質特徴毎の重み係数を合計した重み係数の合計値を総合スコアに乗じることにより、総合スコアを算出する。
【0073】
例えば、算出部133は、空間認識能力が「高い」場合には、最も高い重み係数「1.8」、空間認識能力が「中」の場合には、中間の重み係数「1.4」、空間認識能力が「低い」場合には、最も低い重み係数「1.0」を用いることができる。また、算出部133は、空間的知性が「高い」場合には、最も高い重み係数「1.8」、空間的知性が「中」の場合には、中間の重み係数「1.4」、空間的知性が「低い」場合には、最も低い重み係数「1.0」を用いることができる。
【0074】
また、算出部133は、課題対応力が「高い」場合には、最も高い重み係数「1.8」、課題対応力が「中」の場合には、中間の重み係数「1.4」、課題対応力が「低い」場合には、最も低い重み係数「1.0」を用いることができる。また、算出部133は、集中力が「高い」場合には、最も高い重み係数「1.8」、集中力が「中」の場合には、中間の重み係数「1.4」、集中力が「低い」場合には、最も低い重み係数「1.0」を用いることができる。
【0075】
図6の例では、監視者M1は、空間認識能力が「低い」、空間的知性が「高い」、課題対応力が「高い」、集中力が「低い」といった4つの体質特徴を示している。かかる場合、算出部133は、各体質特徴に応じた重み係数を合計して、重み係数の合計値「5.6」を算出する。そして、算出部133は、重み係数「5.6」を、監視者M1の監視能力スコア「SC1」に乗じることにより、監視者M1に対応する総合スコアを算出する。同様にして、算出部133は、監視者M2およびM3についても総合スコアを算出する。
【0076】
(監視制御部134について)
監視制御部134は、監視者の遺伝子情報から予測される当該監視者の体質であって監視能力に関連する体質の特徴である体質特徴に基づいて、当該監視者の監視作業に関する制御を行う。具体的には、監視制御部134は、体質特徴と監視履歴とに基づいて、監視作業に関する制御を行う。例えば、監視制御部134は、体質特徴と監視履歴とに基づく指標であって、監視能力を示す指標に基づいて、監視作業に関する制御を行う。
【0077】
まず、監視制御部134は、監視作業に関する制御を行うにあたって、監視者の監視リスクを評価する。例えば、監視制御部134は、算出部133により算出された総合スコアに基づいて、監視リスクを評価する。例えば、監視制御部134は、総合スコアが所定値より低い監視者に対して、監視リスクを検出する。言い換えれば、監視制御部134は、総合スコアが所定値より低い監視者は、監視作業をするうえでミスをしてしまうリスクがあるとの評価判定を下す。
【0078】
このような状態において、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じた作業画面を提供する。例えば、監視制御部134は、総合スコアが所定値より低いと判定した監視者に対して、当該監視者の監視能力に応じた作業画面を提供する。総合スコアが所定値より低い監視者は、監視リスクが高い、すなわち監視作業をするうえでミスする可能性が高いといえる。例えば、総合スコアが所定値より低い監視者が監視者M1であったとすると、監視制御部134は、監視者M1のミス(見落とし等)を抑えるために、より監視作業をし易い簡略化された作業画面を提供する。
【0079】
監視作業をし易い作業画面とは、例えば、監視作業をするうえで必要最小限に情報量を抑えた作業画面である。例えば、予め監視能力に応じた作業画面が用意されていることにより、監視制御部134は、簡略化された作業画面を抽出し、監視者M1の監視者端末10にこの作業画面を表示させる。
【0080】
なお、作業画面は、監視作業に用いられる専用のアプリケーションと言い換えることができる。例えば、かかるアプリケーションは、監視能力に応じて複数のバージョンが用意されているとすると、監視制御部134は、より扱いやすいバージョンがインストールされている監視者端末10を用いて監視作業を行うよう監視者M1に指示する。
【0081】
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じてアラートを出力してもよい。例えば、監視制御部134は、所定の監視作業に対して監視能力が所定値より低いと判定された監視者が監視作業を行う際に、当該監視者に対してアラートを出力する。例えば、監視制御部134は、監視者M1がより注意深く監視作業を行う意識付けを忘れないよう注意喚起するアラートを監視者M1の監視者端末20に出力させる。監視制御部134は、アラートを音声出力させてもよいし、監視者端末20の画面に表示させてもよい。
【0082】
〔4.処理手順〕
次に、
図9を用いて、実施形態にかかる監視制御装置100が実行する監視制御処理の手順について説明する。
図9は、実施形態にかかる監視制御装置100による監視制御処理手順を示すフローチャートである。
【0083】
まず、監視制御装置100は、監視者の監視履歴と、当該監視者の遺伝子情報とを取得する(ステップS101)。例えば、監視制御装置100は、管理サーバ60から監視履歴を取得する。また、例えば、監視制御装置100は、検査機関サーバ30から遺伝子情報を取得する。
【0084】
次に、監視制御装置100は、遺伝子情報が取得された監視者毎に、当該監視者の遺伝子情報に基づいて、当該監視者の体質特徴を特定する(ステップS102)。例えば、監視制御装置100は、空間認識能力、空間的知性、課題対応力、集中力がどのような度合いであるかを示す体質特徴を特定する。
【0085】
次に、監視制御装置100は、監視能力スコアを算出する(ステップS103)。例えば、監視制御装置100は、監視履歴に基づいて、反応時間および反応率を算出し、反応時間および反応率に基づいて、監視能力スコアを算出する。
【0086】
次に、監視制御装置100は、監視リスクを評価する(ステップS104)。例えば、監視制御装置100は、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、監視能力を示す指標値である総合スコアを算出する。そして、監視制御装置100は、総合スコアに基づいて、監視リスクを評価する。
【0087】
最後に、監視制御装置100は、総合スコアが所定値より低いことにより監視リスクを検出した監視者に対して、監視作業に関する制御を行う(ステップS105)。
【0088】
〔5.変形例〕
上記実施形態にかかる監視制御装置100は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、監視制御装置100の他の実施形態について説明する。
【0089】
〔5−1.監視制御(1)〕
上記実施形態では、監視制御部134が、監視作業に関する制御として、アラート出力する例や、作業画面を提供する例を示した。しかし、監視制御部134が、これら以外にも種々の制御を行ってよい。例えば、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じたルートを走行する自動運転車に対する監視作業を割り当ててもよい。具体的には、監視制御部134は、監視能力が所定値より低いと判定した監視者に対して、当該監視者の監視能力に応じたルートを走行する自動運転車に対する監視作業を割り当てる。
【0090】
例えば、複雑なルート(例えば、集落や市街地エリア内のルート等)を走行する自動運転車の監視は、国道等、比較的直線が多く、見渡しもよく、かつ道幅が広いルートを走行する自動運転車の監視と比べ、監視の難易度が高いといえる。このような監視の難易度が高い複雑なルートを走行する自動運転車を、監視リスクの高い監視者M1が監視した場合、より監視ミスが発生する可能性が高くなる。したがって、このような監視ミスを防止するために、監視制御部134は、監視者M1に対して、監視能力に応じたルート、すなわち監視の難易度が低いルートを走行する自動運転車を監視するよう監視作業を割り当てる。
【0091】
例えば、自動運転車が走行予定のルートに、予めそれぞれに監視の難易度を示す数値が付されているものとする。かかる場合、監視制御部134は、監視者M1の総合スコアに応じたより数値の低いルートを選択し、選択したルートの監視を行うよう監視者端末10に提示する。
【0092】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視者の監視能力に適した監視作業を行わすことができるため、例えば、監視能力の低い監視者に負担の大きい監視作業を行わすことが無いため、監視リスクを抑えることができる。したがって、監視制御装置100は、自動運転車の自動走行を監視する監視作業を効果的に制御することができる。
【0093】
〔5−2.監視制御(2)〕
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力が所定値より低いと判定された監視者による監視作業を複数の監視者で行うよう制御する。監視制御部134は、監視能力の低い監視者M1の監視作業を、監視者M1を含めて複数の監視者で行いよう制御する。例えば、監視制御部134は、監視者M1の監視作業に対して、監視者M1の他にも監視者を割り当てて、複数人で監視作業を行うよう指示する。
【0094】
これにより、監視制御部134は、1つの監視作業を複数人でサポートし合いながら行わすことができるため、監視リスクを抑えることができる。
【0095】
〔5−3.監視制御(3)〕
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力が所定値より低いと判定された監視者に監視させる自動運転車の数を制御してもよい。実施形態にかかる監視作業では、1人の監視者が複数台の自動運転車を監視する場合がある。ここで、監視能力の低い監視者M1が複数台の自動運転車を監視する場合、監視リスクがより高くなる。したがって、監視制御部134は、監視能力に応じて、監視させる自動運転車の数を減らす。例えば、監視者1人につき、平均3台の自動運転者を監視させているところを、監視制御部134は、監視者M1に対しては、2台の自動運転者を監視するよう監視作業を割り当てる。
【0096】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視リスクを抑えることができるため、自動運転車の自動走行を監視する監視作業を効果的に制御することができる。
【0097】
〔5−4.体質特徴のみを利用〕
上記実施例では、監視制御部134が、監視者の体質特徴と監視履歴とに基づいて、監視作業に関する制御を行う例を示した。しかし、監視制御部134は、体質特徴のみを用いて、監視作業に関する制御を行ってもよい。これまで説明してきたように、実施形態にかかる体質特徴は、監視能力に関連するものである。一例を示すと、空間認識能力の低い監視者は、それだけで監視能力が低いと予測することができる。このようなことから、監視制御部134は、体質特徴のみを用いて、例えば、監視能力が高いか低いかを予測し、低いと予測した監視者に対して、上記監視作業に関する制御を行う。
【0098】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、より少ない情報で監視作業に関する制御を行うことができるため、例えば、処理速度を速めることができる。
【0099】
〔5−5.監視能力スコアについて〕
上記実施形態では、算出部133が、体質特徴と監視履歴とに基づく指標であって、監視能力を示す指標(総合スコア)を算出する例を示した。具体的には、算出部133が、監視履歴から、反応時間および反応率を算出し、算出した反応時間および反応率に基づいて、監視能力スコアを算出し、体質特徴と監視能力スコアとに基づいて、総合スコアを算出する例を示した。ここで、算出部133は、以下のようにして総合スコアを算出してもよい。
【0100】
具体的には、算出部133は、監視作業毎に監視能力を示す指標(総合スコア)を算出してもよい。かかる場合、監視制御部134は、監視作業作業毎に算出された総合スコアのうち、所定の監視作業に対応する総合スコアに基づいて、監視作業に関する制御を行う。例えば、監視作業として、自動運転車のスピード制御に関する監視作業(「作業A」とする)、自動運転車と周辺環境との関係性の制御に関する監視作業(「作業B」とする)があるものとする。また、スコア算出対象として監視者M1を例に用いる。
【0101】
なお、作業Aの一例を示すと、自動運転車が法定速度以上の速度で走行している場合、遠隔操作により、自動運転車の速度を法定速度未満にまで減速させる、といったものである。また、作業Bの一例を示すと、自動運転車と前方車両との車間距離がある決められた車間距離より短くなった場合に、遠隔操作により、自動運転車と前方車両との車間距離を広げる、といったものである。
【0102】
かかる場合、監視履歴記憶部124は、例えば、各監視者について、「作業A」および「作業B」毎に操作ログを記憶する。したがって、算出部133は、このような監視履歴記憶部124を参照し、監視者M1の「作業A」における反応時間、および、反応率を算出する。また、算出部133は、「作業B」における反応時間、および、反応率を算出する。
【0103】
次に、算出部133は、「作業A」について算出した反応時間、および、反応率に基づいて、監視能力スコアを算出する。例えば、算出部133は、「作業A」について、監視能力スコア「SC1A」を算出したものとする。
【0104】
また、算出部133は、「作業B」について算出した反応時間、および、反応率に基づいて、監視能力スコアを算出する。例えば、算出部133は、「作業B」について、監視能力スコア「SC1B」を算出したものとする。
【0105】
次に、算出部133は、体質特徴と監視能力スコア「SC1A」とに基づいて、「作業A」における監視者M1の監視能力を示す総合スコアを算出する。また、算出部133は、体質特徴と監視能力スコア「SC1B」とに基づいて、「作業B」における監視者M1の監視能力を示す総合スコアを算出する。
【0106】
かかる場合、監視制御部134は、「作業A」および「作業B」それぞれについて算出された総合スコアのうち、所定の監視作業に対応する総合スコアに基づいて、監視作業に関する制御を行う。例えば、監視制御部134は、「作業A」および「作業B」それぞれについて算出された総合スコアの双方に基づいて、監視作業に関する制御を行ってもよい。例えば、監視制御部134は、「作業A」および「作業B」それぞれについて算出された総合スコアの合計値が所定値より低い場合、監視者M1に対してアラートを出力する。なお、「作業A」および「作業B」のうち、「作業A」の方が重要性の高い作業であるとすると、算出部133は、「作業A」に対応する総合スコアに所定の重み付けを行ってもよい。
【0107】
また、例えば、監視制御部134は、「作業A」および「作業B」それぞれについて算出された総合スコアのうち、「作業A」または「作業B」のいずれか一方の総合スコアに基づいて、監視作業に関する制御を行ってもよい。例えば、「作業A」の総合スコアを用いることが予め決められているとすると、監視制御部134は、「作業A」について算出された総合スコアが所定値より低い場合、監視者M1に対してアラートを出力する。また、監視制御部134は、「作業A」または「作業B」の総合スコアのうち、スコアとしての値の小さい方が所定値より低い場合、監視者M1に対してアラートを出力してもよい。
【0108】
このように、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視作業毎に当該監視作業の能力を示す指標を算出することができるため、監視リスクをより高精度に検出することができる。
【0109】
〔6.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態にかかる監視制御装置100は、例えば
図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図10は、監視制御装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0110】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0111】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、通信網50を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信網50を介して他の機器へ送信する。
【0112】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを、入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0113】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0114】
例えば、コンピュータ1000が実施形態にかかる監視制御装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部120内のデータが格納される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを、記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、通信網50を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0115】
〔7.その他〕
上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0116】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0117】
また、上述してきた各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0118】
〔8.効果〕
実施形態にかかる監視制御装置100は、取得部131と、監視制御部134とを有する。取得部131は、自動運転車の自動走行を監視する監視者の遺伝子情報を取得する。監視制御部134は、監視者の遺伝子情報から予測される当該監視者の体質であって監視能力に関連する体質の特徴である体質特徴に基づいて、当該監視者の監視作業に関する制御を行う。
【0119】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、自動運転車の自動走行を監視する監視作業を効果的に制御することができる。
【0120】
また、取得部131は、監視者の監視履歴をさらに取得し、監視制御部134は、記監視能力に関連する体質特徴と監視履歴とに基づいて、監視作業に関する制御を行う。
【0121】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視リスク(見落としミス等)を高精度に検出することができる。
【0122】
また、監視制御部134は、体質特徴と監視履歴とに基づく指標であって、監視能力を示す指標に基づいて、監視作業に関する制御を行う。
【0123】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視リスク(見落としミス等)を高精度に検出することができる。
【0124】
また、監視制御部134は、監視作業毎の指標のうち、所定の監視作業に対応する指標に基づいて、監視作業に関する制御を行う。
【0125】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視リスクをより高精度に検出することができる。
【0126】
また、監視制御部134は、体質特徴として、空間認識能力、空間的知性、課題対応力、または、集中力に基づいて、監視作業に関する制御を行う。
【0127】
このように、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力の良し悪しに関わる体質特徴を用いることにより、監視作業を効果的に制御することができる。
【0128】
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じてアラートを出力する。
【0129】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者の監視リスクを抑制することができる。
【0130】
また、監視制御部134は、監視能力が所定値より低いと判定された監視者が監視作業を行う際に、当該監視者に対してアラートを出力する。
【0131】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者が監視ミスをしてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0132】
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じた作業画面を提供する。
【0133】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者の監視リスクを抑制することができる。
【0134】
また、監視制御部134は、監視能力が所定値より低いと判定された監視者に対して、当該監視者の監視能力に応じた作業画面を提供する。
【0135】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者が監視ミスをしてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0136】
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力に応じたルートを走行する自動運転車に対する監視作業を割り当てる。
【0137】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者の監視リスクを抑制することができる。
【0138】
また、監視制御部134は、監視能力が所定値より低いと判定された監視者に対して、当該監視者の監視能力に応じたルートを走行する自動運転車に対する監視作業を割り当てる。
【0139】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視能力が低い監視者が監視ミスをしてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0140】
また、監視制御部134は、監視作業に関する制御として、監視能力が所定値より低いと判定された監視者による監視作業を複数の監視者で行うよう制御する。
【0141】
これにより、実施形態にかかる監視制御装置100は、監視ミスを効果的に抑制することができる。
【0142】
以上、本願の実施形態をいくつかの図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0143】
また、上述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、取得部は、取得手段や取得回路に読み替えることができる。