特許第6695846号(P6695846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6695846動物を追い払うための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695846
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】動物を追い払うための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/10 20110101AFI20200511BHJP
【FI】
   A01M29/10
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-232197(P2017-232197)
(22)【出願日】2017年12月1日
(62)【分割の表示】特願2013-519620(P2013-519620)の分割
【原出願日】2011年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-50635(P2018-50635A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】586797
(32)【優先日】2010年7月14日
(33)【優先権主張国】NZ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313009280
【氏名又は名称】エンビジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、クロフォード レンフルー
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−220542(JP,A)
【文献】 特開2009−153427(JP,A)
【文献】 特開平11−332448(JP,A)
【文献】 特開2005−295893(JP,A)
【文献】 米国特許第04252409(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光によって動物を追い払う装置であって、
対象動物が検知可能な波長範囲の光を供給する光源と、
前記光源からの光を偏光させる偏光子とを備え、
前記偏光子によって偏光された光を動物が追い払われるべき領域全体にわたって連続的に投射するように構成され、
前記偏光子が、前記投射される偏向された光の偏光を経時的に変化させるように構成された可変偏光素子であることを特徴とする装置。
前記可変偏光素子が回転する偏光フィルタであり、当該偏光フィルタの回転の速度が経時的に変化するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項2】
前記偏光フィルタの回転の速度が、ランダムに変化することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記偏光フィルタが、平面偏光フィルタであることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記偏光フィルタが、1〜500サイクル/分の範囲内の速度で回転することを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記偏光フィルタが、1〜75サイクル/分の範囲内の速度で回転することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記対象動物が鳥であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記領域は、畑、果実園、都市、空港又は船舶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置を2つ以上含む動物追い払いシステム。
【請求項9】
対象動物が検知可能な波長範囲の偏光された光を、動物が追い払われるべき領域全体にわたって投射するステップを含み、
回転する偏光フィルタを用いて、前記偏光フィルタの回転の速度を経時的に変化させることで前記光の偏光を経時的に変化させることを特徴とする、動物を追い払うための方法。
【請求項10】
前記偏光フィルタの回転の速度をランダムに変化させるステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記偏光フィルタが、平面偏光フィルタであることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
1〜500サイクル/分の範囲内の速度で、前記偏光フィルタを回転させるステップを含むことを特徴とする請求項9、10又は11に記載の方法。
【請求項13】
1〜75サイクル/分の範囲内の速度で、前記偏光フィルタを回転させるステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象動物が鳥であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記領域は、畑、果実園、都市、空港又は船舶であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物を追い払うためのシステムおよび方法、特に、鳥を追い払うためのシステムおよび方法に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
園芸作物および何らかの他の農作物への鳥害が、世界の食料生産に極めて大きな経済的影響を与え、その結果、年間数百億ドルに及ぶ損失を生み出していることが知られている。この費用の大部分は、実際の作物の損失で占められているが、かなりの割合が、このような鳥害の抑制に関連する費用で占められている。このことは、特に、例えばサクランボおよびワイン用ブドウなどの、一般に集中的に栽培される高価な作物の栽培者に当てはまる。サクランボおよびブドウの双方が栽培されている、ニュージーランドのセントラルオタゴ(Central Otago)では、栽培者は、自分の作物を鳥害から守ることに、1ヘクタール当たりに年間で数千ドルを使う場合がある。
【0003】
鳥制御の最高に有効な形態は、防鳥ネットによる作物の完全な包囲である。これは、ネットの費用、ならびに、ネットの設置およびその後の撤去に必要とされる労働の費用の双方の点で、費用の増加につながる。これは、利幅の低下および/または消費者にとっての費用の増加をもたらす。言い換えれば、物的障壁は少なくともある程度は機能するものの、多大な費用が掛かるのである。さらに、ネットなどの物的障壁は、見た目が悪く、目障りであることがしばしばである。
【0004】
他の形態の鳥制御も存在するが、いずれもネットによる完全な包囲ほどに有効ではない。これらの他の形態の制御として、「ガス銃」またはショットガンなどによって発生させる大きなノイズ、拡声器のネットワークを用いて再生される、記録された鳥の遭難声(distress call)、様々なデザインのかかし、係留凧(tethered kite)、および「飼い馴らされた」タカ(falcon)が挙げられる。これらのすべてが、それぞれの欠点を有する。なかでも、鳥がノイズおよびかかしにすぐに慣れてしまうという順応を要因とする欠点が、よく知られている。
【0005】
さらに、鳥は、空港などの他の環境においても、望ましくない被害をもたらす。いわゆる「バードストライク」は、飛行機、とりわけ、離着陸中の飛行機を著しく損傷させる。航空機に生じた物理的損傷の修理には、費用が掛かり、また、このような物理的損傷によって、飛行機が、長期間にわたって飛べなくなる場合がある。
【0006】
さらに、鳥は、夜に照明を灯したクルーズ船に引き付けられる。このことを、乗客が不愉快に感じる場合があり、また、これによって、広範囲の清掃作業の必要性が毎朝生じる場合がある。
【0007】
都市では、鳥(とりわけハト)は、公共空間を汚し、このような空間を享受する人々を困らせるため、望ましくない場合がある。
【0008】
多くの環境(空港および都市を含む)では、ネットなどの物的障壁による全体の包囲を行うことは、明らかに不可能である。他の環境で使用され得るとしても、物的障壁は費用が高く、見た目が悪い場合がある。
【0009】
昆虫、特に、ミツバチおよびスズメバチも同様に、ブドウ園および果樹園に多大な被害をもたらす。ミツバチおよびスズメバチなどの昆虫は、言うまでもなく、防鳥ネットなどの多くの物的障壁の影響をまったく受けない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、動物を追い払うための改善されたシステムおよび方法を提供すること、または、公共に対して有用な選択肢をせめて提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、対象動物が検知可能な波長範囲の光を供給する光源と、偏光子とを含む、動物を追い払う装置であって、システムは、動物が追い払われるべき領域の全体にわたって偏光された光を投射するように構成された装置を提供する。
【0012】
偏光子は、投射される光の偏光を経時的に変化させるように構成された可変部品であることが好ましい。
【0013】
可変部品は、回転する偏光フィルタであることが好ましい。
【0014】
フィルタは、平面偏光フィルタであることが好ましい。
【0015】
フィルタは、1〜500サイクル/分の範囲内の速度で回転することが好ましい。フィルタは、1〜75サイクル/分の範囲内の速度で回転することが好ましい。
【0016】
フィルタの回転の速度は、経時的に変化することが好ましい。回転の速度は、ランダムに変化することが好ましい。
【0017】
対象動物は、鳥であることが好ましい。
【0018】
さらに、この第1の態様は、2つ以上の上記の装置を含む、動物を追い払うシステムを包含する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、対象動物が検知可能な波長範囲の偏光された光を投射することを含む、動物を追い払うための方法を提供する。
【0020】
投射される光の偏光を、経時的に変化させることが好ましい。
【0021】
偏光を、回転する偏光フィルタを用いて、変化させることが好ましい。
【0022】
フィルタは、平面偏光フィルタであることが好ましい。
【0023】
フィルタは、1〜500サイクル/分の範囲内の速度で回転されることが好ましい。フィルタは、1〜75サイクル/分の範囲内の速度で回転されることが好ましい。
【0024】
本方法は、フィルタの回転の速度を経時的に変化させることを含むことが好ましい。回転の速度を、ランダムに変化させることが好ましい。
【0025】
対象動物は、鳥であることが好ましい。
【0026】
以下、本発明について、添付図面を参照しながら、例を挙げて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係る動物追い払いシステムの概略図である。
【0028】
図2】さらなる実施形態に係るシステムを示している。
【0029】
図3図2のシステムにおける可変偏光子の構成を示している。
【0030】
図4図3の構成におけるローラを示している。
【0031】
図5】さらなる実施形態に係るシステムを示している。
【0032】
図6】本出願人のシステムの試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
多くの種類の鳥が、光の様々な光学特性を検知することができることが知られている。鳥は、ナビゲーション中にこの能力を使用している、と考えられる。
【0034】
さらに、いくつかの糖が、光の偏光に影響し得ることが知られている。例えば、右旋性の様々な糖(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース)もあれば、それ以外に、左旋性の糖(例えば、ラクトース)もあることが知られている。これらの糖は、光を右回転(右旋糖の場合)または左回転(左旋糖の場合)させる。
【0035】
特定の理論に縛られることなく、本出願人は、鳥が、熟れた果実中の糖が光の偏光に与える効果によって、熟れた果実に引き付けられ得る、と考えている。例えば、鳥は、熟れた液果の周囲の後光効果、スパイク効果、または他の視覚効果を見ている可能性がある。この理論は、例えば、まだ完全に熟していない隣のブドウを手付かずに残す一方で、熟れたブドウを検知して摂食する鳥の能力と一致する。同様に、ミツバチおよびスズメバチも、ブドウ園および果樹園に多大な被害をもたらすが、この際に、熟れた果実中の糖を同様に探し出している。同様に特定の理論に縛られることなく、本出願人は、ミツバチおよびスズメバチも同様に、熟れた果実中の糖の偏光効果によって、熟れた果実に引き付けられる、と考えている。
【0036】
本出願人は、鳥および/または他の動物が、偏光された光に対して感受性を有することに基づいて、鳥および/または他の動物を追い払うための方法およびシステムを発明した。
【0037】
本出願人の発明は、鳥および/または他の動物を混乱させ、これを妨害し、これを不愉快にさせ、または、そうでなければ、これを追い払うために、動物が追い払われるべき領域の全体にわたって、偏光された光を投射することに依拠している。好ましい実施形態では、さらに本発明は、鳥および/または他の動物を混乱させ、妨害し、不愉快にさせ、あるいは、そうでなければ、これを追い払うために、光の偏光を変化させることを含む。
【0038】
図1は、一実施形態に係る追い払いシステムを示している。システム1は、光源3に電力を供給する電源2を含んでいる。電源2は、幹線電力接続(mains power connection)、バッテリー、光起電システムなどを含む任意の適切な電源であってもよい。光センサスイッチが、暗い時間帯にシステムをオフにするために、組み込まれてもよい。光源3も同様に、例えば投光照明器を含む、任意の適切な従来の光源であってもよい。さらに、天候が適切な場合には、反射器を用いて太陽光を利用することが可能であってもよい。
【0039】
光源については、光の波長が、追い払われるべき動物によって検知され得るようなものであるべきである。広波長域が使用されてもよい。一般に、鳥は人間が可視スペクトルと呼んでいるものに感受性がある、と本出願人は考えている。本出願人は、感受性には相違がある(特に可視スペクトルの赤外線側の端と紫外線側の端とでは)ことを理解している。しかしながら、可視スペクトル領域の広波長域の光を供給する光源が、一般に、適切である。
【0040】
システム1は、一実施形態では回転するよう配置された平面偏光フィルタである可変光学素子4をさらに含んでいる。使用の際、光源は、破線6によって示されている光のビームを生成する。光のこのビームは、回転する平面偏光子4を通過して、鳥が追い払われるべき領域の全体にわたって投射される。図1では、ビームは、複数列のブドウの木9を含むブドウ園8の全体にわたって投射される。したがって、ブドウ園の全体にわたって投射される光のビームは、回転する偏光平面によって、平面偏光される。
【0041】
回転フィルタは、1〜500サイクル/分、好ましくは、1〜75サイクル/分の範囲内の速度で回転させてもよい。適切な速度は、対象動物が異なるごとに、異なる可能性がある。さらに、動物が、偏光の変化に慣れる危険性を減らすために、回転の速度を、可能ならばランダムに、変化させてもよい。
【0042】
回転フィルタは、変速モータと接続されたベルト駆動装置または同様の装置によって、駆動されてもよい。あるいは、可変ギアを有するモータ駆動装置が、使用されてもよい。用途によっては、DC12Vまたは24Vのブラシレスモータが、適切な場合がある。フィルタは、4つのローラを有するフレームに取り付けられてもよい。この場合、これらの4つのローラの1つが、適切な直径を有する摩擦駆動ローラによって駆動される。あるいは、回転フィルタは、車軸に回転可能に取り付けられてもよい。用途によっては、風により回転が駆動されるように、1つ以上のベーンが、回転フィルタに備え付けられてもよい。
【0043】
図2図4は、さらなる実施形態を示している。この装置は、所望の用途に適した支持体10を含むことができる。例えば、支持体10は、恒久的に固定された支柱であってもよいし、または、その下端が可動ベース(図示せず)に固定された管状の金属支柱であってもよい。あるいは、この装置は、建造物または他の構造物の側面に固定されてもよい。
【0044】
先に述べた電源のなかの任意の電源であり得る電源2は、接続12を介して、電力および制御ユニット13に電力を供給する。供給される電力は、幹線電力(ニュージーランドでは50Hzの230V ACであるが、他の国では他の電圧および周波数である)であることが好ましい。
【0045】
電力および制御ユニット13は、接続14を介して、安定器15に電力(好ましくは幹線電圧の)を供給する。安定器15は、接続16を介して、光源3と接続されている。光源3は、支持体10のプラットフォーム18に取り付けられた光源支持体17によって支持されていてもよい。光源3を支持体10に載せて支持するための任意の適切な構成が、使用されてもよい。図示されている実施形態では、安定器14は、光源支持体15によって支持されているが、安定器が必要とされる、任意の適切な支持体の構成が、同様に使用されてもよい。光源3は、適切な電力定格(例えば、120ワット)を有するコンパクトな、一般に白光を発する蛍光灯であってもよい。本出願人は、このような光源は、100メートル超の範囲にわたって有効であると考えている。他の用途には、他の電力定格が適している可能性がある。例えば、小さな家庭用ユニットは、小さな回転する偏光子と共に低電力の光源(LED光源など)を組み込むことによって、作製されている場合がある。このような小型の装置は、小さなイチゴ畑または果樹などを保護するために、使用され得る。
【0046】
光源は、光を前方に投射するために、投光照明器ハウジングまたは同様の物に取り付けられてもよい。
【0047】
さらに、電力および制御ユニットは、接続21を介して、駆動機構20に電力を供給してもよい。駆動モータに適した電圧の電力が、供給される。図示されている実施形態では、駆動機構は、24DCのモータを含むことが好ましい。この場合、電力および制御ユニットは、幹線電力を24V DCに変換する適切な回路を含む。このような回路は、当業者によって十分に理解されているものであるため、これについては、これ以上述べる必要がない。
【0048】
光源の前には、駆動機構20によって駆動される可変偏光素子4が配置されている。可変偏光素子4については、図3の正面図に詳細に示されている。フレームワーク30は、プラットフォーム18に取り付けられていてもよく、また、正方形または菱形を形成するように配置された4つの側方部材31を含んでいてもよい。
【0049】
フレームワーク30の各コーナには、ローラ33、34が、前方および後方のコーナプレート35(これらのうち、図3では、前方のコーナプレートしか見ることができない)を用いて、取り付けられている。ローラ33、34のそれぞれは、ボルト36または車軸となる他の構成要素によって、取り付けられる。これらのローラ33、34は、一般的にディスクとして形成される偏光フィルタ38を支持している。図4に示されているように、ローラは、直径のより大きな2つの外側領域40間に凹んだ中央領域39を実現する3つの部分から形成され得る。偏光フィルタ38のエッジは、これらの中央の凹部内にしっかりと載せられており、これによって、偏光フィルタ38は、フレームワーク30内に適切に位置合わせされたまま維持される。
【0050】
上記コーナのうちの3つのコーナのコーナプレート35には、スロット42が形成されている。これにより、偏光フィルタ38の挿入、取り外し、または調節のために、ボルト36の位置を調節することが可能になっている。
【0051】
上記ローラのうちの1つ以上のローラが、偏光フィルタ38を回転させるために駆動されてもよい。図示されている実施形態では、ローラ33が駆動される。このローラは、モータ20のシャフトに取り付けられている。このローラが駆動されて回転することによって、偏光フィルタ38が回転させられる。この場合、偏光フィルタ38は、他のローラ34に拘束されずに載せられている。
【0052】
ローラ33、34は、ローラの取り付けおよび摩擦の低減を行うためのベアリング、スペーサなどを用いる任意の適切な方法で、取り付けられてもよい。ローラは、プラスチック材料を含む任意の適切な材料から作製されてもよい。用途によっては、ナイロンが適切な場合がある。
【0053】
制御および電力ユニット13は、特定の用途に適した任意の所望の方法で、システムへの電力の供給、および、偏光フィルタ38の回転を制御してもよい。偏光フィルタ38の回転は、単純に一定の速度で、または、不規則もしくはランダムに駆動されてもよい。制御および電力ユニットは、使用者およびセンサからの入力を受信してもよい。このように、使用者は、システムのオン/オフを行うために、または、システムの動作に関するスケジュールを設定するために、使用者用入力装置48と相互作用することができる。センサ49は、ユニットを日没後にオフにし、夜明けと共にオンにするために、光センサを含んでもよい。さらに、センサ49は、システムが、可動部品の損傷を防止するために、凍結条件下では停止され得るように、例えば、温度センサを含んでもよい。一般に、用途に適した任意のセンサが使用されてよい。
【0054】
別個の制御ユニットを形成するために、制御機能が、電力供給機能から分離されてもよい。
【0055】
図5は、多数の照明ユニット50が電力供給され、制御される、より広範囲の実施形態を示している。このようなシステムは、例えば、大規模なブドウ園もしくは果樹園、または空港において採用され得る。
【0056】
各照明ユニットは、光源および可変偏光素子を含み、また、これらは、図2図4を参照しながら実質的に先に説明したように配置されてもよい。
【0057】
電力スイッチングユニット51は、電源2(好ましくは、幹線電源)からの電力を受け取り、電力線52のネットワークを介して、照明ユニット50に電力を分配する。
【0058】
制御ユニット54は、制御線55を介して、各光源と接続されている。制御線の任意の適切なネットワークが使用されてもよい。制御ユニットは、変化の速度(例えば、回転の速度)などの、偏光変化のパラメータを制御する。さらに、制御ユニットは、制御線57によって、電力スイッチングユニット51と接続されてもよい。制御ユニットは、スイッチングユニットを制御して、システムへの電力供給のオン/オフを行う。制御ユニットは、スイッチングユニット51とは独立に、電力供給2とのそれ自体の接続58を有することが好ましい。
【0059】
制御ユニットは、多数の発信元からの入力を受信してもよい。使用者は、使用者用入力装置60に、制御パラメータを入力してもよい。制御ユニットは、センサ61、62からのセンサデータを受信してもよい。
【0060】
図示されている実施形態は、システム全体への電力供給のオン/オフを切り替える単一のスイッチングユニットを有しているが、実施形態によっては、各照明ユニットのオン/オフ、または、可能ならば小グループの照明ユニットのオン/オフを切り替えることのできる、より複雑なシステムが採用されてもよい。
【0061】
図6は、ニュージーランドのセントラルオタゴ地方におけるブドウ園での試験の結果を示すグラフである。垂直軸は、各ブドウ園から採取したサンプルのなかで被害を受けていたブドウの数に関するパーセントの値を示している。試験は、以下の表に提示されているように、6つの地区(地区1、2、3、4、5、および6)で行った。
【0062】
【表1】
【0063】
地区1および地区2は、互いに隣接しており、同様に、地区3および地区4、ならびに、地区5および地区6も、互いに隣接している。照明については、各地区とも、1ヘクタール当たりに約1つの照明を配置した。使用される照明の密度は、一般に、照明の強度、照明のビームの幅、および実際の適用に特有の要因(障害物、地形など)に依存する。
【0064】
本出願人のシステムを使用したことによって、地区3(地区4と比較)および地区5(地区6と比較)の双方において、被害が劇的に減少したことを、この結果は示している。
【0065】
地区1における被害の減少は、地区2と比べてわずかであり、それほど顕著ではなかった。このようになったのは、地区1の一部に、実際のところ、使用された光源の光が当たらなかったことと合わせて、地区2では、様々な種類の他の追い払い手段が使用されていたからである、と考えられる。
【0066】
本出願人の試験は、鳥害の著しい減少、または、鳥追い払い手段の費用の著しい減少が可能であることを示している。
【0067】
先に述べた実施形態では、回転フィルタが使用されているが、偏光を変化させる他の適切な方法が用いられてもよい。例えば、異なる偏光を行うフィルタをそれぞれに有する多数の光源が使用されてもよい。この場合、様々な偏光の光を投射するために、これらの光源のオン/オフが順番に切り替えられ得る。
【0068】
同様に、好ましい実施形態では、偏光の変化(例えば、偏光平面の回転)が必要とされていたが、用途によっては、変化しない偏光された光の投射が用いられてもよいし、または、変化しない偏光された光のオン/オフが、可能ならば不規則に切り替えられてもよい。しかしながら、光学特性の変化は、動物が順応することにより、追い払いシステムの有効性が低下することが起こりにくくなるため、好ましい。
【0069】
本出願人の発明は、鳥害を防止するために鳥を追い払う際に有用であり得る。本発明は、ブドウ園、果樹園などを保護するために使用されてもよく、また、鳥によって被害を蒙るか、または、他の点に関して鳥が望ましくない空港、都市、船舶、もしくは任意の他の環境において使用されてもよい。本出願人の発明は、光の偏光に感受性のある他の動物、特に、ミツバチおよびスズメバチなどの、被害をもたらす昆虫を追い払うことにも適用され得る。偏光された光に対する動物の感受性に関する説明は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、ホルバート(Horvath)およびヴァルジュ(Varju)による「動物の視覚における偏光された光(Polarized Light in Animal Vision)」(Springer−Verlag2003,ISBN:3540404570)に見出すことができる。
【0070】
本出願人の発明は、先行する方法に対して、費用の面で大きな優位性を有する。これは、特に、ネットなどの物的障壁の設置および撤去に関する多額の人件費が削減されるからである。さらに、本出願人の発明は、その多くが突然の爆発音または見苦しい物的障壁を必要とする先行するシステムと対照的に、環境に与える影響を最小限に抑えるものであり、また、目障りではないものである。
【0071】
本発明について、その実施形態を説明することによって例証し、また、この実施形態について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に制限または何らかの形で限定することは、本出願人の意図するところではない。さらなる利点および変形例が、当業者にとっては明白であろう。したがって、本発明は、より広範囲なその態様に関して、図示され、説明された特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに例示的な例に限定されるものではない。したがって、このような詳細からの逸脱は、本出願人の包括的な発明概念の精神または範囲から逸脱することなくなされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6