(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボデイ(1)と、このボデイに支持され第1方向に延びるとともにこの第1方向と直交する第2方向に互いに離間する複数のクローラ装置(2;2’)とを備えた走行体であって、
上記複数のクローラ装置(2;2’)の各々は、上記第1方向に延びる第1回転軸線(L1)を中心に回転可能にして上記ボデイに支持されたクローラユニット(5;5’)と、クローラアクチュエータ(40)と、ローリングアクチュエータ(60;60’)とを備え、
各クローラユニット(5;5’)は、上記第1回転軸線(L1)に沿って延びるサポ―ト(10)と、上記サポ―トに設けられるとともに上記第1回転軸線を挟んで互いに離間して配置された一対のクローラ部(20A,20B)とを有し、
上記クローラアクチュエータ(40)が上記一対のクローラ部(20A,20B)を駆動することにより、上記走行体が上記第1方向に沿ってクローラ走行し、上記ローリングアクチュエータ(60,60’)が上記クローラユニット(5,5’)を上記第1回転軸線(L1)を中心にローリングさせることにより、上記走行体が上記第2方向に沿ってローリング走行し、
上記クローラユニット(5;5’)は、上記一対のクローラ部(20A,20B)のうち少なくとも一方が接地し上記クローラ部の駆動により上記クローラ走行が可能な走行可能ゾーンと、上記クローラ部の駆動による上記クローラ走行が不可能なデッドゾーンを有し、
さらに、上記クローラユニット(5;5’)の姿勢を検出する姿勢検出センサ(72)と、上記クローラアクチュエータ(40)と上記ローリングアクチュエータ(60;60’)を制御するコントロール装置(70)とを備え、
上記コントロール装置(70)は、上記クローラ走行の準備のために、上記姿勢検出センサ(72)からの上記クローラユニット(5;5’)の姿勢情報に基づき上記ローリングアクチュエータ(60;60’)を駆動させることにより、上記クローラユニットが上記走行可能ゾーンで接地する走行可能姿勢になるように、上記クローラユニットの姿勢制御を実行することを特徴とする走行体。
上記コントロール装置(70)は、上記ローリング走行中に停止指令信号を受けた時に、上記姿勢検出センサ(72)からの姿勢情報に基づき、上記クローラユニット(5;5’)が走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時には走行を即座に停止させ、否定判断の時には上記クローラユニットが走行可能姿勢になるまで、ローリング走行中と同方向に上記クローラユニットをローリングさせることを特徴とする請求項1に記載の走行体。
上記コントロール装置(70)は、上記ローリング走行と上記クローラ走行を同時に行うことにより斜め走行を実行することができ、上記斜め走行中に停止指令信号を受けた時には、上記クローラ走行を即座に停止させるとともに、上記姿勢検出センサ(72)からの姿勢情報に基づき上記クローラユニット(5;5’)が上記走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時にはローリング走行を即座に停止させ、否定判断の時には上記クローラユニットが上記走行可能姿勢になるまで、上記斜め走行中と同方向に上記クローラユニットをローリングさせることを特徴とする請求項1に記載の走行体。
上記コントロール装置(70)は、走行体の停止状態で上記クローラ走行の開始指令信号を受けた時に、上記姿勢検出センサ(72)からの姿勢情報に基づき上記クローラユニット(5;5’)が上記走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時にはクローラ走行を即座に開始させ、否定判断の時には上記クローラユニットが走行可能姿勢になるまで上記クローラユニットをローリングさせた後で、上記クローラ走行を開始させることを特徴とする請求項1に記載の走行体。
上記コントロール装置(70)は、上記否定判断の時に、複数のクローラユニット(5;5’)を同方向にローリングさせることにより、これらクローラユニットの姿勢制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の走行体。
上記クローラユニット(5;5’)の上記走行可能姿勢が、上記一対のクローラ部(20A,20B)が接地している基準姿勢であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の走行体。
上記クローラユニット(5;5’)の各クローラ部(20A、20B)は、上記第1回転軸線(L1)方向に離れて配置された一対のホイール(21,22)と、これらホイールに架け渡された無端条体(23)と、この無端条体に取り付けられた多数の接地ラグ(24)とを有し、上記一対のホイールは、上記第1回転軸線と直交するとともに互いに平行をなす第2回転軸線(L2,L2’)を中心として、上記サポ―トに回転可能に支持されており、
上記クローラユニットの上記サポ―ト(10)には、上記一対のクローラ部(20A,20B)に対して第2回転軸線(L2,L2’)方向の外側に隣接する一対の接地構造(30A,30B)が取り付けられており、これら接地構造が、上記デッドゾーンを提供することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の走行体。
ボデイ(1)と、このボデイに支持され第1方向に延びるとともにこの第1方向と直交する第2方向に互いに離間する複数のクローラ装置(2;2’)とを備えた走行体であって、
上記複数のクローラ装置(2;2’)の各々は、上記第1方向に延びる第1回転軸線(L1)を中心に回転可能にして上記ボデイに支持されたクローラユニット(5;5’)と、クローラアクチュエータ(40)と、ローリングアクチュエータ(60;60’)とを備え、
各クローラユニット(5;5’)は、上記第1回転軸線(L1)に沿って延びるサポ―ト(10)と、上記サポ―トに設けられるとともに上記第1回転軸線を挟んで互いに離間して配置された一対のクローラ部(20A,20B)とを有し、
上記クローラアクチュエータ(40)が上記一対のクローラ部(20A,20B)を駆動させることにより、上記走行体が上記第1方向に沿ってクローラ走行し、上記ローリングアクチュエータ(60,60’)が上記クローラユニット(5,5’)を上記第1回転軸線(L1)を中心にローリングさせることにより、上記走行体が上記第2方向に沿ってローリング走行し、
上記クローラユニット(5;5’)は、上記一対のクローラ部(20A,20B)のうち少なくとも一方が接地し上記クローラ部の駆動により上記クローラ走行が可能な走行可能ゾーンと、上記クローラ部の駆動による上記クローラ走行が不可能なデッドゾーンを有する走行体において、
上記クローラ走行の準備のために、姿勢検出センサ(72)からの上記クローラユニット(5;5’)の姿勢情報に基づき上記ローリングアクチュエータ(60;60’)を駆動させることにより、上記クローラユニットが上記走行可能ゾーンで接地する走行可能姿勢になるように、上記クローラユニットの姿勢制御を実行することを特徴とする走行体の制御方法。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているロボット(走行体)は、ボデイの左右に、ボデイの前後方向に延びる一対のクローラ装置を装備している。各クローラ装置は、前後のホイールと、これらホイールに架け渡されたベルト(無端条体)を備えている。
【0003】
上記構成のロボットは、左右のクローラ装置を同方向に同速度で回転駆動することにより、前進または後退することができる。また、左右のクローラ装置の速度を違えることにより、曲線を描くようにして左右に旋回することもできる。さらに、左右のクローラ装置を異なる方向に回転駆動することにより、超信地旋回(移動せずにその場で旋回)することもできる。
【0004】
上記ロボットは、狭い通路での直角をなす曲がり角では、超信地旋回によってロボットの方向を転換することができない。また、地面の凹凸の大きい場所でも、地面の抵抗によりクローラ装置の回転駆動が妨げられ、超信地旋回による方向転換ができない。
さらに上記ロボットは、目的地が斜め方向にある場合、目的地まで直線的に移動できず、そのために正確に目的地に到達できないことがある。
【0005】
特許文献2は、上記課題を解決できる二方向に走行可能なロボットを開示している。このロボットは、第1方向に延びるとともに第1方向と直交する第2方向に離間した一対のクローラ装置を備えている。各クローラ装置は、上記第1方向に延びる回転軸線を中心にして回転可能なクローラユニットを有している。このクローラユニットは、第1方向に延びるサポートと、このサポートに設けられ、上記回転軸線を挟んで対峙する一対のクローラ部とを備えている。
【0006】
特許文献2のロボットは、上記一対のクローラユニットのクローラ部の駆動により第1方向に走行することができる。以下、この走行モードを「クローラ走行」と言う。
さらに、上記一対のクローラユニットが上記回転軸線を中心に回転し、第2方向に転がる(ローリングする)ことにより、ロボットは第2方向に走行することができる。以下、この走行モードを「ローリング走行」と言う。
【0007】
特許文献2のロボットは超信地旋回せずに、クローラ走行とローリング走行を選択することにより、第1方向から第2方向へ、第2方向から第1方向へと進行方向を転換することができる。また、クローラ走行とローリング走行を同時に実行することにより、任意の斜め方向に直線的に走行することができる。以下、この走行モードを「斜め走行」と言う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のロボットのクローラユニットは、上記一対のクローラ部の駆動により走行可能な走行可能ゾーンと、クローラ走行が不可能なデッドゾーンがある。例えば、クローラユニットの一対のクローラ部が略水平をなしている場合には、クローラユニットがデッドゾーンで接地しており、クローラ走行を開始することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、ボデイと、このボデイに支持され第1方向に延びるとともにこの第1方向と直交する第2方向に互いに離間する複数のクローラ装置とを備えた走行体であって、
上記複数のクローラ装置の各々は、上記第1方向に延びる第1回転軸線を中心に回転可能にして上記ボデイに支持されたクローラユニットと、クローラアクチュエータと、ローリングアクチュエータとを備え、
各クローラユニットは、上記第1回転軸線に沿って延びるサポ―トと、上記サポ―トに設けられるとともに上記第1回転軸線を挟んで互いに離間して配置された一対のクローラ部とを有し、
上記クローラアクチュエータが上記一対のクローラ部を駆動することにより、上記走行体が上記第1方向に沿ってクローラ走行し、上記ローリングアクチュエータが上記クローラユニットを上記第1回転軸線を中心にローリングさせることにより、上記走行体が上記第2方向に沿ってローリング走行し、
上記クローラユニットは、上記一対のクローラ部のうち少なくとも一方が接地し上記クローラ部の駆動により上記クローラ走行が可能な走行可能ゾーンと、上記クローラ部の駆動による上記クローラ走行が不可能なデッドゾーンを有し、
さらに、上記クローラユニットの姿勢を検出する姿勢検出センサと、上記クローラアクチュエータと上記ローリングアクチュエータを制御するコントロール装置とを備え、
上記コントロール装置は、上記クローラ走行の準備のために、上記姿勢検出センサからの上記クローラユニットの姿勢情報に基づき上記ローリングアクチュエータを駆動させることにより、上記クローラユニットが上記走行可能ゾーンで接地する走行可能姿勢になるように、上記クローラユニットの姿勢制御を実行することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、クローラユニットを走行可能姿勢にすることにより、確実にクローラ走行することができる。
【0012】
一態様では、上記コントロール装置は、上記ローリング走行中に停止指令信号を受けた時に、上記姿勢検出センサからの姿勢情報に基づき、上記クローラユニットが走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時には走行を即座に停止させ、否定判断の時には上記クローラユニットが走行可能姿勢になるまで、ローリング走行中と同方向に上記クローラユニットをローリングさせる。
上記構成によれば、ローリング走行の最後にクローラユニットの姿勢制御を行うので、その後のクローラ走行を円滑に開始することができる。
【0013】
上記コントロール装置は、上記ローリング走行と上記クローラ走行を同時に行うことにより斜め走行を実行することができ、上記斜め走行中に停止指令信号を受けた時には、上記クローラ走行を即座に停止させるとともに、上記姿勢検出センサからの姿勢情報に基づき上記クローラユニットが上記走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時にはローリング走行を即座に停止させ、否定判断の時には上記クローラユニットが上記走行可能姿勢になるまで、上記斜め走行中と同方向に上記クローラユニットをローリングさせる。
上記構成によれば、斜め走行の最後にクローラユニットの姿勢制御を行うので、その後のクローラ走行を円滑に開始することができる。
【0014】
他の態様では、上記コントロール装置は、走行体の停止状態で上記クローラ走行の開始指令信号を受けた時に、上記姿勢検出センサからの姿勢情報に基づき上記クローラユニットが上記走行可能姿勢にあるか否かを判断し、肯定判断の時にはクローラ走行を即座に開始させ、否定判断の時には上記クローラユニットが走行可能姿勢になるまで上記クローラユニットをローリングさせた後で、上記クローラ走行を開始させる。
【0015】
上記コントロール装置は、上記否定判断の時に、複数のクローラユニットを同方向にローリングさせることにより、これらクローラユニットの姿勢制御を行うことができる。
【0016】
複数のクローラユニットは対をなすクローラユニットを含んでおり、上記コントロール装置は、上記否定判断の時に、一方のクローラユニットを停止させたまま他方のクローラユニットをローリングさせ、上記他方のクローラユニットの姿勢制御が終了した後、上記他方のクローラユニットを停止させたまま上記一方のクローラユニットの姿勢制御を行う。これによれば、ローリングを伴うクローラユニットの姿勢制御を行っても、走行体の移動を抑えることができる。
【0017】
複数のクローラユニットは対をなすクローラユニットを含んでおり、上記コントロール装置は、上記否定判断の時に、対をなすクローラユニットを同時に逆方向へローリングさせることにより、上記クローラユニットの姿勢制御を行う。これによれば、ローリングを伴うクローラユニットの姿勢制御を行っても、走行体の移動を最小限にすることができる。
【0018】
好ましくは、上記クローラユニットの上記走行可能姿勢が、上記一対のクローラ部が接地している基準姿勢である。これによれば、安定したクローラ走行を開始できる。
【0019】
上記クローラユニットの各クローラ部は、上記第1回転軸線方向に離れて配置された一対のホイールと、これらホイールに架け渡された無端条体と、この無端条体に取り付けられた多数の接地ラグとを有し、上記一対のホイールは、上記第1回転軸線と直交するとともに互いに平行をなす第2回転軸線を中心として、上記サポ―トに回転可能に支持されており、上記クローラユニットの上記サポ―トには、上記一対のクローラ部に対して第2回転軸線方向の外側に隣接する一対の接地構造が取り付けられており、これら接地構造が、上記デッドゾーンを提供する。
【0020】
本発明方法は、ボデイと、このボデイに支持され第1方向に延びるとともにこの第1方向と直交する第2方向に互いに離間する複数のクローラ装置とを備えた走行体であって、
上記複数のクローラ装置の各々は、上記第1方向に延びる第1回転軸線を中心に回転可能にして上記ボデイに支持されたクローラユニットと、クローラアクチュエータと、ローリングアクチュエータとを備え、
各クローラユニットは、上記第1回転軸線に沿って延びるサポ―トと、上記サポ―トに設けられるとともに上記第1回転軸線を挟んで互いに離間して配置された一対のクローラ部とを有し、
上記クローラアクチュエータが上記一対のクローラ部を駆動させることにより、上記走行体が上記第1方向に沿ってクローラ走行し、上記ローリングアクチュエータ(60,60’)が上記クローラユニットを上記第1回転軸線を中心にローリングさせることにより、上記走行体が上記第2方向に沿ってローリング走行し、
上記クローラユニットは、上記一対のクローラ部のうち少なくとも一方が接地し上記クローラ部の駆動により上記クローラ走行が可能な走行可能ゾーンと、上記クローラ部の駆動による上記クローラ走行が不可能なデッドゾーンを有する走行体において、
上記クローラ走行の準備のために、姿勢検出センサからの上記クローラユニットの姿勢情報に基づき上記ローリングアクチュエータを駆動させることにより、上記クローラユニットが上記走行可能ゾーンで接地する走行可能姿勢になるように、上記クローラユニットの姿勢制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走行体は地面を擦らずに直角に方向転換したり、斜め方向に直進することができる。しかも、クローラユニットの姿勢制御により、クローラ走行を確実に開始する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態をなすロボット(走行体)について図面を参照しながら説明する。
図1、
図2において互いに直交するX方向(第1方向)とY方向(第2方向)を定める。
【0024】
図1〜
図3に示すように、ロボットは平板形状のボデイ1を有している。このボデイ1には、ビデオカメラ等の観測器材や必要に応じて種々の作業が可能な作業アーム等が搭載されるとともに、送受信器、バッテリも搭載されている。リモートコントローラ71(
図7にのみ示す)からの操作信号により、後述の走行制御が実行される。
【0025】
上記ボデイ1の下面には、一対のクローラ装置2,2が設けられている。これらクローラ装置2,2は互いにY方向に離間している。
各クローラ装置2は、X方向に延びる細長い形状のクローラユニット5を備えている。このクローラユニット5は、後述するようにX方向に延びる第1回転軸線L1を中心としてローリング可能である。
【0026】
図6に示すように、クローラユニット5は、サポ―ト10と、サポ―ト10に設けられた一対のクローラ部20A,20Bと、サポ―ト10に設けられた一対の接地構造30A,30Bを有している。
【0027】
上記サポ―ト10は、互いに平行をなしX方向(第1回転軸線L1方向)に延びるとともに第1回転軸線L1を挟んで対峙する一対の細長い側板11,11と、これら側板11,11の一端部に回転可能に連結された原動側シャフト12と、側板11、11の他端部に連結された従動側シャフト13と、側板11、11の中間部に固定された固定板14とを有している。
【0028】
原動側シャフト12と従動側シャフト13の中心軸線L2,L2’は、上記第1回転軸線L1と直交し互いに平行をなして延びており、それぞれ後述するスプロケットホイール21,22の回転軸線(第2回転軸線)として提供される。
【0029】
上記一対のクローラ部20A,20Bは、第1回転軸線L1を挟んで対向配置され、互いに離間している。これらクローラ部20A,20Bの各々は、第1回転軸線L1方向に離れた一対の原動スプロケットホイール21(ホイール)および従動スプロケットホイール22(ホイール)と、これらスプロケットホイール21,22に掛け渡されたチェーン23(無端条体)と、このチェーン23に等間隔をなして固定された例えばゴムからなる多数の接地ラグ24とを有している。
【0030】
一方のクローラ部20Aの原動スプロケットホイール21は原動側シャフト12に直接固定されており、他方のクローラ部20Bの原動スプロケットホイール21は、後述の傘歯車42bを介して原動側シャフト12に固定されている。
一対のクローラ部20A,20Bの従動スプロケットホイール22、22は、従動側シャフト13に回転可能に支持されている。
【0031】
上記一対の接地構造30A,30Bは、一対のクローラ部20A,20Bに隣接し、第2回転軸線L2方向の外側に配置されている。クローラ部20A,20Bの各々は、第1回転軸線L1方向に間隔をおいて配置された複数(本実施形態では5個)の接地板31(接地部材)を有している。これら接地板31は、例えばゴムからなり、側板11の外面に固定され、側板11と直角をなして第2回転軸線L2,L2’方向に突出している。
【0032】
図3に示すように、上記一対のクローラ部20A,20Bと上記一対の接地構造30A,30Bは、協働してクローラユニット5に円筒形状を付与している。具体的には、クローラ部20A,20Bの接地ラグ24の外面および接地構造30A,30Bの接地板31の外面は、円弧形状をなし、上記スプロケットホイール21,22間において、上記第1回転軸線L1を中心とする仮想円筒面に沿って配置されている。接地板31の外面には、切欠31aが形成されている。
【0033】
本実施形態では
図6に示すように、上記一対のクローラ部20A,20Bを回転駆動させるためのクローラアクチュエータ40が、クローラユニット5に内蔵されている。
クローラアクチュエータ40は、サポ―ト10の固定板14に固定されたモータ41と、このモータ41の回転トルクをクローラ部20A,20Bの原動スプロケットホイール21,21に伝達するトルク伝達機構42とを有している。このトルク伝達機構42は、モータ41の出力軸に固定された傘歯車42aと、この傘歯車42aと噛み合う傘歯車42bとを有している。モータ41の回転トルクは、傘歯車42a,42bを介してクローラ部20Bの原動スプロケットホイール21に伝達され、さらに原動側シャフト12を介してクローラ部20Aの原動スプロケットホイール21にも伝達される。これにより、一対のクローラ部20A,20Bが同時に同方向に同速度で駆動される。モータ41は正逆回転可能である。
【0034】
図2,
図6に示すように、クローラユニット5の両端部は、第1回転軸線L1を中心にボデイ1に回転可能に支持されている。以下、詳述する。
ボデイ1の下面には、クローラユニット5を挟んで第1回転軸線L1方向に離れた一対のブラケット51,52が固定されている。
【0035】
ブラケット51には、第1回転軸線L1上に配置されたトルク伝達シャフト53(トルク伝達部材)が回転可能に支持されている。トルク伝達シャフト53は、一対のクローラ部20A,20Bの一端部間の間隙を通ってクローラユニット5の内部まで延びており、その先端部がサポート10の原動側シャフト12に連結されている。なお、この連結状態において、原動側シャフト12の回転軸線L2を中心とする回転は許容されている。
ブラケット52には、第1回転軸線L1上に配置された支持シャフト54(支持部材)が回転可能に支持されている。支持シャフト54は一対のクローラ部20A,20Bの他端部間の間隙を通ってクローラユニット5の内部まで延びており、その先端部がサポート10の従動側シャフト13に固定されている。支持シャフト54は、ブラケット52に固定され、従動側シャフト13に回転可能に連結されていてもよい。
【0036】
図2に示すように、上記クローラユニット5は、ローリングアクチュエータ60により、第1回転軸線L1を中心に回転(ローリング)される。ローリングアクチュエータ60は、上記ブラケット51に固定されたモータ61と、このモータ61の回転トルクを上記トルク伝達シャフト53に伝達するトルク伝達機構62とを有している。モータ61は正逆回転可能である。
【0037】
上記トルク伝達機構62は、モータ61の出力軸に固定されたタイミングプーリ62aと、上記トルク伝達シャフト53に固定されたタイミングプーリ62bと、これらタイミングプーリ62a,62bに架け渡されたタイミングベルト62cとを有している。
【0038】
図3、
図4に示すように、クローラユニット5はローリングにより姿勢が変化する。クローラユニット5の外周において、クローラ部20A,20Bが占める角度範囲Θ1は走行可能ゾーンであり、接地構造30A,30Bが占める角度範囲Θ2はデッドゾーンである。走行可能ゾーンが接地されている状況では、クローラ部20A,20Bの少なくとも一方が接地されており、クローラ部20A,20Bの駆動によりクローラ走行が可能である。デッドゾーンが接地されている状況では、クローラ部20A,20Bは接地されておらず、クローラアクチュエータ40を駆動してもクローラ部20A,20Bは空回りし、クローラ走行が不可能である。
【0039】
上記構成をなすロボットの走行制御のためのシステムは、
図7に示すように、コントロール装置70と、リモートコントローラ71と、ロータリーエンコーダ72とを備えている。コントロール装置70はボデイ1に設けられている。ロータリーエンコーダ72は、
図6に示すように、ブラケット51に設けられ、トルク伝達シャフト53の回転角度を検出し、ひいてはクローラユニット5の姿勢を検出する。なお、ロータリーエンコーダ72は、支持シャフト54の回転角度を検出してもよい。
【0040】
上記一対のクローラ装置2,2によるロボットの走行について説明する。各クローラ装置2において、
図3に示すように一対のクローラ部20A,20Bが接地された状態またはいずれか一方のクローラ部が接地された状態で、クローラアクチュエータ40のモータ41を駆動させると、クローラ部20A,20Bの原動スプロケットホイール21,21が同方向に同時に回転駆動し、これにより、クローラ装置2はX方向に走行することができる(クローラ走行)。一対のクローラ装置2、2のモータ41,41を同一方向に同一速度で回転することにより、ロボットはX方向に直進することができる。
【0041】
一対のクローラ装置2のローリングアクチュエータ60のモータ61を駆動させると、クローラユニット5が第1回転軸線L1を中心に回転(ローリング)する。一対のクローラ装置2が同時に同方向にローリングすることにより、ロボットはY方向に直進することができる(ローリング走行)。
【0042】
なお、上記クローラユニット5がローリングする際に、クローラ部20A,20Bの接地ラグ24と、接地構造30A,30Bの接地板31が交互に地面に接し、荷重を負担する。
【0043】
上記モータ41,61の一方の駆動から他方の駆動への切り替えにより、ボデイ1をその場で旋回することなく、進行方向を直角に転換することもできる。
【0044】
両モータ41,61を同時に駆動し、その回転速度、回転方向を制御することにより、ロボットは斜め方向へも直線的に走行することもできる(斜め走行)。この斜め走行では、クローラユニット5のローリングによってクローラ部20A,20Bの上下部が頻繁に逆転するが、クローラユニット5のデッドゾーンが接地している間(接地構造30の接地板31が接地している間)に、モータ41の回転方向の切り替えを行なうことにより、ロボットは確実に斜め方向に走行することができる。
【0045】
前述したように、クローラユニット5が走行可能ゾーンで接地している時のみ、クローラ走行が可能である。このクローラユニット5の走行可能姿勢において、特に
図3に示すように一対のクローラ部20A,20Bが接地しているときに、良好なクローラ走行ができる。この
図3のクローラユニット5の姿勢を基準姿勢という。
【0046】
以下、クローラ走行を確実に開始できるようにクローラユニット5を走行可能姿勢にする(本実施形態では基準姿勢にする)ための制御について詳述する。
図8は、ロボット走行中に、コントロール装置70がリモートコントローラ71から走行停止指令信号を受けた時に実行される制御である。
【0047】
ステップ101で、現在実行している制御モードを判断する。ここでクローラ走行であると判断した時には、ステップ102に進みモータ41を停止させてクローラ走行を停止させる。
ステップ101でローリング走行であると判断した時には、ステップ103で、一対のクローラユニット5が基準姿勢か否かを判断する。ここで否定判断した時には、ローリング走行を継続させる。すなわち、走行停止信号を受ける前のローリング走行と同じ方向でローリングを継続させる。ステップ103で肯定判断した時には、モータ61を停止し、ローリング走行を停止させる。
【0048】
ステップ101で斜め走行であると判断した時には、ステップ105でクローラ走行を停止させてステップ106に進み、ここで一対のクローラユニット5が基準姿勢か否かを判断する。ここで否定判断した時には、ローリング走行を継続させる。すなわち、走行停止信号を受ける前と同じ方向でローリングを継続させる。ステップ106で肯定判断した時には、ステップ107に進み、ローリング走行を停止させる。
【0049】
上述のように、走行停止指令信号を受けた後に走行の最終段階としてクローラユニット5の姿勢制御を行ない、クローラユニット5を基準姿勢にするので、次回のクローラ走行、斜め走行に支障をきたさない。
【0050】
上記制御では、走行停止指令信号を受けてクローラユニット5の姿勢制御を行うが、
図9に示すように、ロボット停止状態でクローラ走行開始の指令信号を受けた時に、クローラ走行を開始する直前に一対のクローラユニット5の姿勢制御を行ってもよい。具体的に述べると、ステップ111でクローラユニット5が基準姿勢にあるか否かを判断する。ここで否定判断した時には、ステップ112に進み、一対のクローラ5を同方向にローリングさせる。このローリング方向は予め決められた方向でもよいし、クローラユニット5の現在の姿勢から基準位置に到達し易い方向を選択してもよい。そして、ステップ111で肯定判断した時には、ステップ113でローリングを停止させ、ステップ114でクローラ走行を開始させる。
【0051】
図9の制御では、クローラ走行の出発点がクローラユニット5の姿勢制御のためのローリングの分だけ、ロボットはY方向に移動し、走行開始点がずれる。
図10の制御は、このずれを抑えることができる。
ロボット停止状態でクローラ走行開始の指令信号を受けた時に、ステップ121で一対のクローラユニット5が基準姿勢にあるか否かを判断する。ここで肯定判断した時にはステップ128に進み、即座にクローラ走行を開始させる。
【0052】
ステップ121で否定判断した時には、ステップ122に進み一方のクローラユニット5のローリングを実行させる。この時、他方のクローラユニット5は停止状態にあるので、ローリングによるロボットの移動を抑えることができる。
【0053】
ステップ123で、上記一方のクローラユニット5が基準姿勢に達したと判断した時には、ステップ124に進み、一方のクローラユニット5のローリングを停止させる。
次に、ステップ125で他方のクローラユニット5のローリングを実行させる。この時上記一方のクローラユニット5は停止しているので、ローリングによるロボットの移動を抑えることができる。
【0054】
次にステップ126で上記他方のクローラユニット5が基準姿勢に達したと判断した時には、ステップ127で上記他方のクローラユニット5のローリングを停止させ、ステップ128でクローラ走行を開始させる。
【0055】
図11の制御は、一対のクローラユニット5の姿勢制御による走行開始点のずれをより一層少なくすることができる。詳述すると、ロボット停止状態でクローラ走行開始の指令信号を受けた時に、ステップ131でクローラユニット5が基準姿勢にあるか否かを判断する。ここで肯定判断した時にはステップ137に進み、即座にクローラ走行を開始させる。
【0056】
ステップ131で否定判断した時には、ステップ132に進み両方のクローラユニット5を互いに逆方向にローリングさせる。そのため、ロボットは殆ど動かない。
次に、ステップ133でいずれか一方のクローラユニット5が基準姿勢になったか否かを判断する。肯定判断した時には、ステップ134に進み、当該一方のクローラユニット5のローリングを停止させる。次に、ステップ135で他方のクローラユニット5が基準姿勢になったか否かを判断し、ここで否定判断した時には他方のクローラユニット5のローリングを継続させ、肯定判断した時には、ステップ136に進み当該他方のクローラユニット5のローリングを停止させ、ステップ137でクローラ走行を開始させる。
図11の制御において、一対のクローラユニット5が
図4に示す姿勢でクローラ走行開始の指令を受けた時には、一対のクローラユニット5は同時に基準姿勢に達し、一対のクローラユニット5のローリングを同時に停止させる。
【0057】
次に、本発明の第2実施形態について、
図12、
図13を参照しながら説明する。本実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には同番号または類似番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
ロボットは、二対のフリッパ式クローラ装置2’を備えている。
本実施形態のクローラ装置2’では、クローラユニット5’の一端部がボックス形状のサポート80により、片持ちで第1回転軸線L1を中心に回転可能に支持され、他端部は自由端となっている。
上記サポート80には、ローリングアクチュエータ60’が設けられている。詳述すると、サポート80の上面にはローリングアクチュエータ60’のモータ61’が固定され、サポート80の内部にはトルク伝達機構62’が収容されている。モータ61’の回転トルクはトルク伝達機構62’およびトルク伝達シャフト53を介してクローラユニット5’に伝達され、クローラユニット5’がローリングする。
【0059】
上記サポート80は、ボデイ1に設けられたフリッパアクチュエータ90により、第3回転軸線L3を中心に回転可能に支持されている。第3回転軸線L3は、Y方向に延びている。Y方向に対をなすクローラ装置2’の第3回転軸線L3は、同一直線上にある。
【0060】
サポート80は、フリッパアクチュエータ90のモータ91により第3回転軸線L3を中心として正逆方向に回転され、その結果、
図13に矢印で示すように、クローラユニット5’が上下方向に180度回転される。ロボットが前進して障害物に遭遇した時に、クローラユニット5’が上下方向に回動することにより、障害物を容易に乗り越えることができる。
上記第2実施形態でも、
図8〜
図11に示す制御を実行することができる。その場合、Y方向の一方側に位置する2つのクローラ装置2’を、第1実施形態の一方のクローラ装置2に見立て、Y方向の他方側に位置する2つのクローラ装置2’を第1実施形態の他方のクローラ装置2に見立てて制御を実行する。
【0061】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。
上記実施形態では、走行可能姿勢として
図3の基準姿勢になるようにクローラユニットの姿勢を制御したが、走行可能姿勢としては角度範囲Θ1の走行可能ゾーンが接地する姿勢であればよい。この場合、
図8〜
図11の制御において、クローラユニットが基準姿勢か否かの判断ステップでは、「クローラユニット5が走行可能ゾーンで接地しているか否か」を判断してもよい。
【0062】
クローラユニットの姿勢制御のためのフィードバック信号として、ロータリーエンコーダの代わりにサポ―ト10に設けた傾斜センサからの信号を用いてもよい。
クローラ部は、一対のホイールと、このホイールに架け渡されてホイールの外周に摩擦係合またはピン係合されるベルトにより構成してもよい。
第1実施形態においてクローラユニット5をその一端において片持ち式で回転可能に支持してもよい。
【0063】
ロボットの走行制御において、「斜め走行」を省き、「クローラ走行」と「ローリング走行」だけを行なってもよい。
リモートコントローラは省略してもよい。この場合、ロボットのコントロール装置が種々のセンサからの情報に基づき、自動的に走行制御モードの選択、走行開始、走行停止を実行し、クローラユニットの姿勢制御を実行する。
【0064】
クローラアクチュエータおよびローリングアクチュエータの配置は、上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えばクローラアクチュエータのモータは、ローリングアクチュエータと同様にクローラユニットの外に配置してもよい。この配置を例えば第1実施形態に適用すると、モータ41がクローラユニット5の外においてブラケット52に固定され、支持シャフト54がクローラユニット5内を長く延びてその内端が傘歯車42aに固定され、支持シャフト54の外端がモータ41に接続される。