特許第6695908号(P6695908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695908
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ベンズアミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20200511BHJP
   C07C 235/48 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 215/50 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 213/02 20060101ALN20200511BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
   C07C231/02
   C07C235/48
   C07C215/50
   !C07C213/02
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-565960(P2017-565960)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-519288(P2018-519288A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】KR2016005914
(87)【国際公開番号】WO2017003107
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0092704
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0067409
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】チュ・ヨンヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】ペク・ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】シン・ホンジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジョンファン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−529583(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104370793(CN,A)
【文献】 特表2009−504726(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0046577(KR,A)
【文献】 BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,2012年,vol. 22,2110-2113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記反応式1で表され、
塩基触媒下で化学式2のベンジルアミン化合物と化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物のアミドカップリング反応を行う段階;を含む、化学式1で表されるベンズアミド誘導体の製造方法:
反応式1
【化1】
(上記反応式1において、
ないしRは互いに同一又は異なることがあり、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、C1ないしC5のアルコキシ基、C3ないしC6のシクロアルコキシ基、C6ないしC20のアリルオキシ基、またはC1ないしC5のハロアルコキシ基で、
はC1ないしC6のアルキル基である)
【請求項2】
上記R及びRはメトキシ基で、R及びRはヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項3】
上記塩基触媒は、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項4】
上記化学式2のベンジルアミン化合物は、固形の塩酸塩形態で使うことを特徴とする請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項5】
上記化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物は、混合無水物(mixed anhydride)形態であることを特徴とする請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項6】
上記アミドカップリング反応は、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、ロロベンゼン、及びこれらの混合溶媒からなる群より選択された1種の溶媒存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項7】
下記反応式2で表され、
T1)塩基性水溶液内で化学式4のベンズアルデヒド化合物とヒドロキシルアミンを反応させて化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を製造する段階;及び
T2)酸性水溶液内で上記化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を還元剤で処理する段階;をさらに含んで化学式2で表されるベンジルアミン化合物を製造することを特徴とする、請求項1に記載のベンズアミド誘導体の製造方法:
反応式2
【化2】
(上記反応式2において、R及びRは互いに同一又は異なることがあり、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、C1ないしC5のアルコキシ基、C3ないしC6のシクロアルコキシ基、C6ないしC20のアリルオキシ基、またはC1ないしC5のハロアルコキシ基である)
【請求項8】
上記T1)段階の塩基性水溶液は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及びこれらの混合物からなる群より選択された1種の塩基を含む水溶液であることを特徴とする請求項7に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項9】
上記T2)段階の還元剤は亜鉛であることを特徴とする請求項7に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項10】
上記T2)段階の酸性水溶液は、塩酸を含む水溶液であることを特徴とする請求項7に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量生産に適するベンズアミド化合物の製造方法に関する。
本出願は、2015年6月30日付韓国特許出願第10−2015−0092704号、及び2016年5月31日付韓国特許出願第10−2016−0067409号に基礎した優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0002】
アダマンタン(adamantane)基を置換体として有する化合物の一つである5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドは、人体の皮膚の表皮層に存在するメラニンを抑制することで優れた美白効果を持つため、化粧料組成物の有効成分として提示された。
【0003】
上記化合物の製造と係り、韓国公開特許第2013−0015954号では、下記反応式に基づいて製造している。
【化1】

具体的に、5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドは、(i)ジクロロメタン溶媒で、酢酸と硫酸触媒の存在下、2,4−ジヒドロキシ安息香酸と1−アダマンタノールを常温で反応させ、5−アダマンタニル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸を合成する段階;(ii)水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下、5−アダマンタニル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸と硫酸ジメチルを反応させて5−アダマンタニル−2,4−ジメトキシ安息香酸を合成する段階;及び(iii)上記5−アダマンタニル−2,4−ジメトキシ安息香酸をN−ヒドロキシスクシンイミド、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下でベンジルアミンと反応させて製造している。
【0004】
このような製造方法は、(i)の5−アダマンタニル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造時に使われる酢酸と溶媒が反応物対比それぞれ8倍及び2倍以上消耗され、反応時間も最低5時間以上要求されるし、その収率が80ないし85%の水準を有する。
【0005】
また、(iii)の段階は、高価の水/ジオキサンの溶媒下でN−ヒドロキシスクシンイミド/1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(HOSu/DCC)。ジクロロメタン内のSOClまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)。MeCN内のシアヌル酸クロリド、トルエン内のB(OH)などのカップリングのためのカップリング化剤が使われ、これによる溶媒も制限的に求められる。この時、得られた化合物の収率は30%の水準で非常に低く、最終生成物内の複合混合物(complex mixture)が残留して純度も低い問題が発生する。
【0006】
特に、上記(iii)の段階で反応物質として使用するジヒドロキシベンジルアミンは、下記の段階を経て製造する。
【化2】
【0007】
上記反応を見ると、出発物質としてジヒドロキシベンズアルデヒドをメタノールまたはエタノール内で炭酸ナトリウムを使って5時間反応させて活性化した後、メタノールまたはエタノール内の塩酸を添加してさらに反応を行い、オキシム化合物を製造する。
【0008】
次いで、炭素支持体内のPdが担持された触媒の存在下で高圧の水素気体を使用して還元反応を行い、ジヒドロキシベンジルアミンを製造する。この時、反応は5時間程度の長時間が必要となり、そうだとしても約50%水準の収率を示す。さらに、このような反応は高価のPdを使わなければならず、反応中50psi圧力の水素気体が使われるので、工程が複雑であり、工程費用が上昇する問題がある。
【0009】
同時に、工程規模が大きくなるにつれ、収率が落ちたり不規則な生産パターンが形成されて混合物の分離ができなくなるなど、大量生産に適しないいろいろな問題点が存在した。
したがって、ベンズアミド化合物は、美白と係わった優れた効能にもかかわらず、産業上の活用に多くの制約があり、生産効率が改善された新しい製造方法の開発が必要な実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2013−0015954号「新規ベンズアミド化合物」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ベンズアミド化合物の新しい製造方法を提示するために研究を行い、各工程における反応条件を特定することで、全体製造に必要な工程時間を減らすだけでなく、高価の物質及び触媒を使わないことによって経済的な利点を確保し、高収率でベンズアミド化合物の製造が可能となった。
【0012】
さらに、反応物質として使用するジヒドロキシベンジルアミンを有機溶媒を使わずに、水溶液内で短時間で90%以上の高収率で製造し、これを上記ベンズアミド化合物の製造に使用した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、大量生産工程に適用し易いベンズアミド化合物の製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の別の目的は、上記ベンズアミド化合物の製造に反応物質として使用できるベンジルアミン化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は下記反応式1で表され、塩基触媒下で化学式2のベンジルアミン化合物と化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物のアミドカップリング反応を行う段階;を経て化学式1のベンズアミド誘導体の製造方法を提供する:
反応式1
【化3】
(上記反応式1で、RないしRは明細書内で説明したものと同じである)
【0016】
この時、上記化学式2のベンジルアミン化合物は、下記反応式2で表されるように、
T1)塩基性水溶液内で化学式4のベンズアルデヒド化合物とヒドロキシルアミンを反応させ、化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を製造する段階;及び
T2)酸性水溶液内で上記化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を還元剤で処理する段階;を経て製造する:
反応式2
【化4】
(上記反応式2で、R及びRは明細書内で説明したものと同じである)
【発明の効果】
【0017】
本発明で示すベンズアミド化合物の製造方法は、全体反応時間を短縮して費用を低減するだけでなく高収率で製造が可能である。
【0018】
また、核心中間体であるベンジルアミン誘導体を有機溶媒を使用せずに、水溶液内で短時間内で90%以上の高収率で製造できる方法を示した。
したがって、本発明によって短時間内に高収率でベンズアミド化合物の大量生産を具現することができる。
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明では有機化学分野、化粧品分野など、特にメラニン抑制を通じて優れた美白効果を奏するベンズアミド誘導体の新たな製造方法を示す。
具体的に、ベンズアミド誘導体は、下記化学式1で表される:
【化5】
(上記化学式1において、
ないしRは、互いに同一又は異なることがあり、それぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、C1ないしC5のアルコキシ基、C3ないしC6のシクロアルコキシ基、C6ないしC20のアリルオキシ基、またはC1ないしC5のハロアルコキシ基である)
【0020】
本明細書で言うアルコキシ基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数が1ないし5であることが好ましい。具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、i−プロピルオキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、または1,2−ジメチルブトキシなどがあるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書で言うシクロアルコキシは環状鎖であって、炭素数が3ないし6であることが好ましい。具体的な例としては、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシまたはシクロヘトキシなどがあるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で言うアリルオキシ基は、炭素数が6ないし20であることが好ましい。具体的な例としては、フェノキシ、p−トリルオキシ、m−トリルオキシ、3,5−ジメチル−フェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシ、p−tert−ブチルフェノキシ、3−ビフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、4−メチル−1−ナフチルオキシ、5−メチル−2−ナフチルオキシ、1−アントリルオキシ、2−アントリルオキシ、9−アントリルオキシ、1−フェナントリルオキシ、3−フェナントリルオキシ、9−フェナントリルオキシなどがあるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で言うハロアルコキシ基は、ハロゲン(−F、−Cl、−Brまたは−I)基に置換されたアルコキシ基を意味する。
【0024】
本明細書で言うアルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数が1ないし6であることが好ましい。具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチル−ブチル、1−エチル−ブチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましくは、上記R、R及びRは、互いに同一又は異なることがあり、それぞれ水素、ヒドロキシ、及びC1ないしC3アルコキシからなるグループより選択された1種である。
より好ましくは、上記化学式1のベンズアミド誘導体は、下記で選択することができる:(1)5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジヒドロキシ−N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−ベンズアミド;(2)5−アダマンタン−1−イル−2−ヒドロキシ−N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−4−メトキシ−ベンズアミド;(3)5−アダマンタン−1−イル−N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−2,4−ジメトキシ−ベンズアミド;(4)5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジヒドロキシ−ベンズアミド;(5)5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンズアミド;(6)5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミド;(7)3−アダマンタン−1−イル−4−ヒドロキシ−N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−ベンズアミド;(8)3−アダマンタン−1−イル−N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−エチル]−4−メトキシ−ベンズアミド;(9)3−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−ベンズアミド;(10)3−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−メトキシ−ベンズアミド。
【0026】
その中でも、好ましくは、5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドである。
上記化学式1のベンズアミド誘導体は、アダマンタン基が持つ親油性増加による吸収力が向上し、優れたメラニン生成抑制効果及びチロシナーゼ活性阻害効果を奏する。他にも様々な効果があり得る。
【0027】
具体的に、化学式1のベンズアミド誘導体は、下記反応式1で示すように、塩基触媒下で化学式2のベンジルアミン化合物と化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物のアミドカップリング反応を行う段階;を含んで製造される:
反応式1
【化6】
(上記反応式1において、RないしRは、上記で言及したとおりであり、RはC1ないしC6のアルキル基である)
【0028】
上記反応式1によれば、アミドカップリング反応は、塩基触媒下、溶媒内で行う。
このとき使用する塩基触媒は、本発明で特に限定されないし、この分野で公知された塩基触媒であれば、いずれも使用可能である。具体的に、上記塩基触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか一つが使われてもよく、好ましくは、トリエチルアミンを使う。
【0029】
上記溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、ロロベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種が可能である。
【0030】
このような反応は、0ないし40度、より好ましくは、常温で行い、好ましくは、30分ないし4時間、より好ましくは、2ないし3時間反応させる。
既に言及したように、上記反応式3のアミドカップリング反応は、別途カップリング試薬を使用せずに行うことが可能である。従来韓国特許公開第2013−0015954号に記載した反応を見れば、特定のカップリング剤と溶媒を組み合わせたカップリング試薬を使用する。このような方法は、最終収率約30%と低いなだけでなく、最終的に得られた生成物を分離し難い。また、使用する試薬の価格が高いため、大量生産工程に適していない。
【0031】
しかし、本発明のカップリング反応は、離脱基を持つ化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物と、これと反応し易い化学式2のベンジルアミン化合物を反応させることで、カップリング剤及びこれによる特定溶媒を使用せずとも、従来の30%に止まった収率を安定的に75〜95%以上、好ましくは、75〜90%以上の高収率で化学式1のベンズアミド化合物を製造することができる。また、最終生成物内のベンズアミド化合物の分離も容易であり、安価の試薬を用いた工程が可能であるため、費用節減及び大量生産工程への実効性が大きいという利点がある。
【0032】
特に、上記反応式1で反応物質として使用する化学式2のベンジルアミン化合物は、製造することが難しく、原料自体の価格がたかい上、物質自体の安定性が顕著に落ちる。ここで、化合物の反応物質として適用するためには相当な注意が必要となる。特に、上記化学式2のように、R及びRの位置が2,4でなく、3,4または2,5の化合物は、相対的に安価で物質自体の安定性が2,4の化合物よりは高い。
【0033】
また、従来ベンジルアミン化合物の製造は、ベンズアルデヒド誘導体を有機溶媒、すなわちエタノール溶媒下で酢酸ナトリウムを添加し、5時間以上の長時間反応させてオキシム化合物を製造し、これを再び高価のPd触媒を使って製造するが、このような方法は、時間、費用及び収率の面で大量生産に適すると見がたい。
ここで、本発明では上記2,4の位置が置き換えられた化合物の問題点(すなわち、安定性、価格、時間及び収率)を解消できるように、化学式2のベンジルアミン化合物に対する新しい製造方法を示す。
【0034】
好ましくは、化学式2のベンジルアミン化合物は、下記反応式2に基づいて製造することができる:
反応式2
【化7】
(上記反応式2において、R及びRは上記で言及したとおりである)
【0035】
具体的に、上記反応式2によれば、化学式2のベンジルアミン化合物は、
T1)塩基性水溶液内で化学式4のベンズアルデヒド化合物とヒドロキシルアミンを反応させて化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を製造する段階;及び
T2)酸性水溶液内で上記化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を還元剤で処理する段階;を経て製造する。
【0036】
上記T1)段階で出発物質として使用する化学式4のベンズアルデヒド化合物は、R及びRを満たすものであれば、いずれも使用可能であり、一例として2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドが使われてもよい。このような化合物は、直接製造したり市販のものを購入して使用する。このようなベンズアルデヒド化合物は、水にはあまり溶けないが、塩基条件下で反応し易いように進めることができる。
【0037】
上記T1)段階は、塩基の存在下、水溶液内で反応を行う。
このときの塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムからなる群より選択された1種が可能であり、好ましくは、炭酸ナトリウムを使用する。上記塩基の含量は、出発物質である化学式8の含量対比1:0.01ないし1:1のモル比となるように使用する。
【0038】
上記反応は、0ないし40度、より好ましくは、常温で行い、好ましくは、30分ないし3時間、好ましくは、1ないし2時間反応させる。反応後、結晶が析出されると、濾過することで化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を得ることができる。
【0039】
ベンズアルデヒドオキシム化合物の製造は、従来有機溶媒であるエタノールと共に酢酸ナトリウムを使って5時間以上の長時間反応させることに比べて、時間が1ないし2時間と大きく短縮できるだけでなく、反応収率も95%以上の高収率で化学式5のベンズアルデヒドオキシム化合物を得ることができる。
【0040】
次に、上記T2)段階は、酸及び還元剤の存在下、水溶液内で反応を行う。
上記酸は、塩酸、硫酸、及びこれらの混合物からなる群より選択された1種が可能であり、好ましくは、塩酸を使用する。上記酸の含量は、出発物質である化学式5の含量対比1:1ないし1:10のモル比となるように使用する。
この時、T2)段階で使用する還元剤は、亜鉛、好ましくは、亜鉛粉末が使われてもよく、オキシムをアミンに切り替える。
【0041】
上記亜鉛粉末は、価格が安いだけでなく購入し易いし、ベンジルアミン化合物の大量生産時の経済的費用を節減することができる。このとき、亜鉛粉末は市販のものを購入し、化学式5の化合物対比1:1ないし1:10の含量で使用する。
上記反応は、−4ないし40度で行い、好ましくは、30分ないし4時間、より好ましくは、2ないし3時間反応を行い、高収率で化学式2のベンジルアミン化合物を製造することができる。
【0042】
上記T2)段階は、従来還元剤として貴金属触媒であるPdを使い、この場合、生産費用増加及び過多な反応時間のような問題と、収率が50ないし95%と一定しないため、再現性が落ちる問題がある。特に、大量生産工程時には副産物が多く生じて、収率が50%以下と減少したり、完全な塩酸塩または酢酸塩の形態へと分離されにくい問題があった。
【0043】
ここで本発明では、先に言及したように、還元剤として低価の亜鉛粉末を使うことにより費用を節減するだけでなく、反応時間も大きく短縮させるし、大量生産工程に適用する時も安定的に90ないし95%程度の収率を確保することができる。同時に、水溶液内で反応を行うことができて、従来有機溶媒を用いた方法に比べて作業環境が改善される。
【0044】
最終的に得られる化学式2のベンジルアミン化合物は、酸添加によって塩の状態で製造され、洗浄後に使用するか、別途精製せずに単にろ過した後で溶媒を除去して、アミン塩酸塩状態で反応式1の反応物質として適用されてもよい。
【0045】
また、上記反応式1で化学式2のベンジルアミン化合物と反応する化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物は、下記反応式3に基づいて製造することができる:
反応式3
【化8】
(上記反応式2において、R、R、R、R及びXは、上記で言及したとおりである)
上記反応式3によれば、化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物の製造は、
S1)酸の触媒下で化学式6の安息香酸化合物と化学式7の1−アダマンタノールをアダマンチル化反応を行って、化学式8のアダマンタニル安息香酸化合物を製造する段階;及び
S2)塩基触媒下で上記化学式8のアダマンタニル安息香酸化合物と化学式9のアルキルハロホルメートを反応させて製造する:
先ず、S1)段階は、化学式6の安息香酸化合物と化学式7の1−アダマンタノールを反応させる。
【0046】
出発物質として使用する化学式6の安息香酸化合物は、ベンゼン環にカルボン酸が置換された安息香酸誘導体で、具体的な化合物は、化学式1の化合物は上記で言及したR及びRを満たす化合物であれば、いずれも可能である。一例として、上記化学式6の安息香酸化合物は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、2,4−ジメトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−メトキシ安息香酸であってもよく、直接製造したり市販のものを購入して使用する。
【0047】
上記化学式7の1−アダマンタノールは、直接製造したり、市販のものを購入して使用することができる。
【0048】
化学式6の安息香酸化合物と化学式7の1−アダマンタノールは、化学量論的当量比を考慮して反応することができ、この時の反応は1:1ないし1:1.2のモル比で使う。もし、1−アダマンタノールのモル比が過量で使うと、望まない位置で反応されることがある。
このような反応は、酸触媒の存在下、溶媒内で行う。
【0049】
酸触媒は反応速度を高めるためのもので、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、及びこれらの混合物からなる群より選択された1種が可能であり、好ましくは、トリフルオロ酢酸と硫酸を混合して使う。
【0050】
この時、溶媒としてはジクロロメタンを使用する。
使用する溶媒の含量は、十分反応させられる程度であれば、その含量を限定しないが、溶媒の使用による費用低減などのために最適の範囲内で使用し、好ましくは、反応物:溶媒を1:1ないし1:50、好ましくは、1:1ないし1:30の体積比で使う。この時の反応物は、安息香酸化合物と1−アダマンタノールを合わせたことを意味する。
【0051】
上記反応温度及び反応時間は、十分反応が起きて高い収率で化合物を製造できるようにし、出発物質から最終ベンズアミド化合物を製造するまでかかる時間を縮めるように調節する。
具体的に、S1)段階の反応は溶媒の還流温度内で行い、好ましくは、30分ないし2時間、より好ましくは、1ないし1.5時間反応させる。この時、反応温度が低い場合は反応速度が遅くなり、高すぎる場合は分解するおそれがある。また、上記反応時間は、反応式2の反応が十分起きえる時間であって、上記時間を超える場合、全体的ベンズアミド化合物の製造にかかる総工程時間が延びるおそれがあるので、上記時間内で行う。
【0052】
特に、上記S1)段階の場合、従来方法では過量の有機溶媒と共に過量の硫酸及び酢酸の存在下で5時間以上の長時間反応し、このような長時間の反応にも収率が低いという問題がある。
【0053】
しかし、本発明では有機溶媒の含量を1/2以下と減らし、酸(例えば、酢酸)の含量を1/8以下に減らしても反応を進めることができるし、反応に要される時間は最大2時間で、既存時間に比べて大きく節減する利点がある。このような使用溶媒の含量及び工程時間の節減は、工程全体の生産性を高め、工程費用は下げる利点がある。特に、収率の面でも約90%以上を得ることができて、反応効率の面でも優れた利点を確保する。
【0054】
次に、S2)段階は、化学式8のアダマンタニル安息香酸化合物と化学式9のアルキルハロホルメートを反応して化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物を製造する。
【0055】
化学式9のアルキルハロホルメートは離脱基として使われ、化学式8のアダマンタニル安息香酸化合物と化学式2のベンジルアミン化合物の反応が直接起きないため、反応活性化のために化学式8のアダマンタニル安息香酸化合物を反応性が優れた無水物に切り替える。
上記無水物は混成無水物(mixed anhydride)の形態であって、上記化学式2のベンジルアミン化合物と容易に反応される利点がある。
【0056】
無水物製造のためのアルキルハロホルメートは、上記で言及したR及びXを満たす化合物であれば、いずれも可能であり、好ましくは、エチルクロロホルメート、イソブチルクロロホルメートであってもよく、これは直接製造したり市販のものを購入して使用する。
化学式8のアダマンタニル安息香酸誘導体とアルキルハロホルメートは、化学両論的当量比を考慮して製造することができ、1:1ないし1:1.2のモル比で使用する。もし、アルキルハロホルメートのモル比が過量で使われると、望まない位置で反応されることがある。
このような反応は、塩基触媒下、溶媒内で行う。
【0057】
使用可能な塩基触媒は、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか一つであってもよく、好ましくはトリエチルアミンを使用する。
この時の溶媒は、好ましくは、ジクロロメタンを使用する。
【0058】
上記反応は、低温、好ましくは、−4ないし0度で行い、好ましくは、10分ないし2時間反応させる。
前述の段階は、下記反応式6で示す。
反応式4
【化9】
(上記反応式4において、RないしR及びXは、上記で言及したとおりである)
【0059】
上記反応式4に基づいた本発明による化学式1のベンズアミドの製造方法は、化学式2のベンジルアミン化合物と化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物の反応に必要な工程条件と共に、上記化学式2で表される化合物の新しい製造条件を提示することで、大量生産に適する方法である。
【0060】
先ず、化学式2のベンジルアミン化合物の新しい製造工程による利点は、下記のようである。
まず、化学式4の化合物製造が水溶液内で進められ、反応時間も最大2時間以内で短いし、95%以上の高収率で製造可能である。このような方法は、従来有機溶媒内で5時間以上反応しても低い収率で生成される方法に比べて改善された方法であることが分かる。
【0061】
そして、化学式2の化合物を製造する時、安価の亜鉛粉末を使って、最大3時間以内の反応後、最大95%程度の高収率で製造が可能である。このような方法は、従来高価の還元剤であるPdを使用しても長時間の反応要求時間と共に50〜95%の不安定な収率問題を解消することができる。
【0062】
その結果、化学式2のベンジルアミン化合物の製造方法は、従来工程に比べて工程時間及び工程費用など、工程効率が相当改善されたことが分かる。
また、化学式3のアダマンタニル安息香酸無水物の製造と係って、出発物質である化学式6の化合物を利用した化学式8の化合物は、製造する際に必要な溶媒及び酸の含量を大きく減らし、工程時間を最大2時間に短縮しても90%程度の収率を確保することができる。
【0063】
同時に、化学式3の化合物の形態を経ることにより、化学式1の製造反応が容易に進められるし、75%以上の高収率で化学式1のベンズアミド化合物を製造することができ、反応後に目的化合物の分離も安い試薬で容易に分離することができる。このような方法は、高価の触媒及び試薬を使うことで、30%水準の低い収率で製造され、目的化合物を分離し難い問題を抱いている従来方法と比べると、とても改善された方法であることが分かる。
【0064】
結果的に、上記反応式4で示した本発明の化学式1のベンズアミド誘導体の製造は、短時間内に高収率で目的とする化合物の製造が可能であり、各段階で使用する試薬を安いものに取り替えることができるだけでなく、その使用量も節減することができる。同時に、高い再現性及び反応安定性によって、目的化合物の生産が可能であるという利点がある。
したがって、本発明による製造方法は、化学式1のベンズアミド誘導体の大量生産工程に好ましく適用可能である。
【0065】
このような方法で製造された化学式1のベンズアミド化合物は、美白効果があって化粧料組成物に利用可能であり、他の分野にも適用することができる。
一例として、皮膚美白効果を有するので、皮膚外用剤、特に、美白用化粧品の構成成分として有用である。上記皮膚外用剤に含まれる最終生成物は、化合物、この異性体、薬学的に許容可能な塩、これのプロドラッグ(pro−drug)、この水化物、及びこの溶媒化物のいずれか一つ以上の形態で活用されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の理解のために実施例を記載する。下記実施例は、本発明の効果に関する一実施例に該当するだけであって、本発明の権利範囲及び効果がこれに限定されることはない。
製造例1:2,4−ジヒドロキシベンジルアミンの製造
反応式5
【化10】
【0067】
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(50g)と水(600mL)を混合して撹拌しながらヒドロキシルアミン塩酸塩(32.7g)を滴加した。この混合物に0.23Mの炭酸ナトリウム水溶液(200mL)をゆっくり滴加しながら1時間常温で撹拌した。出発物質が全て無くなった後、反応溶液上に生成された固体を濾過し、水で洗って2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(54g、収率97%)を得た。
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6) 10.9(brs, 1H), 10.05(brs, 1H), 9.76(brs, 1H), 8.19(s, 1H), 7.23 (d, 1H), 6.30(s, 1H), 6.28(s, 1H)
【0068】
新しいフラスコに上記製造された2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(5.5g)を入れて、6M塩酸溶液(48ml)を加えた後、氷冷下で撹拌しながら亜鉛粉末(9.42g)を徐々に滴加した。初めは少量ずつ加えながら反応容器内部の温度が40度以下を維持するように撹拌した。亜鉛を全て加えた後、常温で2時間撹拌しながら出発物質が無くなることを確認した後、過量の亜鉛は濾過して除去し、ろ液を減圧濃縮して水を除去することで2,4−ジヒドロキシベンジルアミンを塩酸塩状態で得た。
【0069】
製造された2,4−ジヒドロキシベンジルアミン(5.5g、収率90%)は、固体状態の塩酸塩の形態で得られ、別途精製することなく後続反応に使用した。
【実施例1】
【0070】
5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドの製造
下記反応に基づいて標題の化合物を製造した。
反応式6
【化11】
【0071】
(1)5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジメトキシ安息香酸の製造
2,4−ジメトキシ安息香酸(10g)と1−アダマンタノール(9.2g)をジクロロメタン (120mL)に溶かして撹拌しながらトリフルオロ酢酸(4mL)と濃い硫酸(6.7mL)を滴加した後、2時間還流した。撹拌した混合溶液を減圧して蒸溜し、残り物をエタノール(100mL)と水(100mL)に溶かして撹拌し、50%水酸化カリウム溶液を利用して溶液のpHが6になるようにした。生成された固体を濾過してこの固体にエタノール(30mL)と1N塩酸溶液(120mL)を入れて、1時間撹拌して生成された固体を濾過して5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジメトキシ安息香酸(17g、収率97%)を得た。
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6) 12.07(brs, 1H), 7.57 (s, 1H), 6.63(s, 1H), 3.89(s, 3H), 3.84(s, 3H), 1.99(s, 9H), 1.71(s, 6H)
【0072】
(2)5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジメトキシ安息香酸無水塩の製造
上記(1)で製造した5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジメトキシ安息香酸(9.1g)を混成無水物の形態で工程するために、ジクロロメタン(50mL)に溶かし、氷冷下でトリエチルアミン(4.8ml)を加えた後エチルクロロホルメート(3.3mL)を滴加し、30分間撹拌した。後で使う時生成されたアミン塩酸塩は、濾過によって除去した後、溶液だけ使用した。
【0073】
(3)5−アダマンタン−1−イル−N(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドの製造
上記製造例1で製造した2,4−ジヒドロキシベンジルアミン塩酸塩をN,N'−ジメチルホルムアミド(50ml)に溶かした後、トリエチルアミン(4.8ml)を加えて5分間撹拌した。
この溶液を撹拌しながら上記(2)で得られた5−アダマンタン−1−イル−2,4−ジメトキシ安息香酸無水物溶液を滴加した。この時、反応容器の温度は25度以下と維持し、その後、常温で2時間撹拌した。
反応を完結した後、ジクロロメタン(50mL)を加えて希釈し、水(100ml)で抽出した。また、有機層は1Nの塩酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム溶液、そして過量の塩水で洗い、有機層を集めて活性白土及び無水黄酸マグネシウムで乾燥した。溶液混合物を濾過して減圧濃縮した後、ジクロロメタンとヘキサンを利用して再結晶することにより、白い固体相の目的化合物である5−アダマンタン−1−イル−N(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミド(9.45g、収率75%)を得た。
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6) 9.67(s, 1H), 9.13(s, 1H), 8.51(m,1H), 7.78 (m, 1H), 6.92(d, 1H, J=8.1Hz), 6.66(s, 1H), 6.27(s, 1H), 6.16(d, 1H, J=8.1Hz), 4.30(d, 2H, J=5.4Hz), 3.93(s,3H), 3.88(s,3H), 1.98(s, 9H), 1.71(s, 6H)
【0074】
比較例1:5−アダマンタン−1−イル−N(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジメトキシ−ベンズアミドの製造
韓国特許公開第2013−00159954号に記載された方法で、実施例1と同じ標題化合物を製造した。
【実施例2】
【0075】
5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2,4−ジヒドロキシ−ベンズアミドの製造
出発物質として2,4−ジメトキシ安息香酸の代わりに2,4−ジヒドロキシ安息香酸を使ったこと以外は、上記実施例1と同様に行って上記標題化合物を製造した。
反応式7
【化12】
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6) 12.41(s, 1H), 9.91(s,1H), 9.40(s,1H), 9.09(s,1H), 8.83 (m, 1H), 7.47 (s,1H), 6.89(d, 1H, J=8.1Hz), 6.26(s, 2H), 6.16(d, 1H, J=8.1Hz), 4.29(m, 2H), 2.02(s, 9H), 1.70(s, 6H)
【実施例3】
【0076】
5−アダマンタン−1−イル−N−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンズアミドの製造
出発物質として2,4−ジメトキシ安息香酸の代わりに2−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸を使ったこと以外は、上記実施例1と同様に行って上記標題化合物を製造した。
反応式8
【化13】

1H-NMR(300MHz, DMSO-d6) 12.73(s, 1H), 9.40(s,1H), 9.11(s,1H), 8.95 (m,1H), 7.52 (s,1H), 6.90(d, 1H,J=8.4Hz), 6.43(s, 1H), 6.28(s, 1H), 6.17(d, 1H, J=8.4Hz), 4.31(d, 2H, J=5.4Hz), 3.79(s,3H), 2.00(s,9H), 1.71(s, 6H)
【0077】
実験例1:反応時間及び収率比較
上記実施例1及び比較例1に化合物の製造に必要な反応時間及び収率を測定して下記表1に示す。この時、反応時間は、後処理などの時間を除いて、反応に必要な時間だけを計算した。
【表1】

【0078】
上記表1の比較例1と実施例1の結果を見ると、同一化合物の製造に要される時間が実施例1の場合大きく減少し、収率面でも大きく増加することが分かる。
このような結果によって、本発明で示すベンズアミドの製造方法は、全体工程時間を縮めると同時に、高収率の化合物製造ができるようにして、大量生産工程に好ましく適用できることが分かる。