特許第6695961号(P6695961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

特許6695961拡張可能バルーンマッピング及びアブレーションデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695961
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】拡張可能バルーンマッピング及びアブレーションデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20200511BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20200511BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20200511BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20200511BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61M25/10
   A61B5/04 300J
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-500450(P2018-500450)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公表番号】特表2018-527051(P2018-527051A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】US2016045396
(87)【国際公開番号】WO2017024057
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】62/201,519
(32)【優先日】2015年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】ナゲール サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ボーデン マーク
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ショーム シバジ
(72)【発明者】
【氏名】キアヴェッタ アメデオ
【審査官】 菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−510126(JP,A)
【文献】 特開2015−112114(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0378967(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0231658(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/086492(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0265617(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/018569(WO,A1)
【文献】 特表2000−511787(JP,A)
【文献】 特開2008−006306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14−18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、
前記バルーンの外面の周りに担持された複数の電極と、
前記バルーンの前記面と前記複数の電極の一つとの間に各々配置された複数のスペーサであって、各々の前記スペーサは圧力が電極に対して加えられたときフィードバックを与えるように構成された圧力センサを含む前記スペーサと、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記バルーンは、非柔軟バルーンであることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記バルーンは、PEBAX、PET、PEN、PBT、PEEK、Hytrel、ポリウレタン、及びナイロンから構成される群から選択されたポリマーを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記電極は、感知電極、マッピング電極、刺激電極、アブレーション電極のうちの1又は2以上として作用するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記複数の電極の各々が、前記バルーンの前記外面から外向きに延びることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記複数の電極の各々が、アブレーションエネルギ源に電気的に結合されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記複数の電極の各々が、電気活動処理システムに電気的に結合されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記複数の電極は、前記バルーンの前記外面の周りに等距離に配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、
前記バルーンの外面の周りに配置された複数の可撓性スプライン及び複数の支柱を備える拡張可能−折畳可能骨組であって、前記拡張可能−折畳可能骨組は、前記バルーンの前記外面の周りを自由に動いている、前記拡張可能−折畳可能骨組と、
前記骨組の外面の周りに担持された複数の電極であって、複数の電極の各々は、前記複数の可撓性スプライン及び前記複数の支柱のうちの可撓性スプラインと支柱との交差点に配置される、前記複数の電極と、
を含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項10】
前記複数の電極は、感知電極、マッピング電極、刺激電極、アブレーション電極のうちの1又は2以上として作用するように構成されることを特徴とする請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記複数の電極の各々が、前記骨組の前記面から外向きに延びることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記骨組の前記外面と前記複数の電極の一つとの間に配置された複数のスペーサを更に含むことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記複数の電極の各々が、アブレーションエネルギ源に電気的に結合されることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記複数の電極の各々が、電気活動処理システムに電気的に結合されることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、本明細書に引用によってその開示全体が組み込まれる2015年8月5日出願の米国仮特許出願第62/201,519号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明の開示は、組織マッピング及びアブレーションの分野に関する。具体的には、本発明の開示は、膀胱を含む身体内腔内の局所解剖学的異常を識別して処置するための拡張可能医療デバイスに関する。より具体的には、本発明の開示は、過活動膀胱に対する局所処置のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
過活動膀胱は、米国において5千万を超える人々に影響を与える病態である。過活動膀胱を有する個人は、典型的には、排尿の切迫及び頻度の増加及び時に失禁を体験する。過活動膀胱は、正常な膀胱制御に関わる感覚経路のトリガの増加から生じる場合がある。異常な膀胱活動は、円蓋、内括約筋、又は三角部を含む膀胱の1又は2以上の異なる解剖学的区域の形態学的変化から生じる場合があることが示唆されている。例えば、細胞及び多細胞レベルでの欠陥から生じる排尿筋の形態の局所変化は、病理学的変化、例えば、巨視的レベルで異常な筋肉機能に寄与する場合がある筋束間の結合組織の量の増加による不完全除神経と相関する傾向がある。これらの局所欠陥は、多くの場合に、膀胱壁の特定の組織領域内の電気活動の上昇として現れる。これらの局所欠陥の識別及び処置は、過活動膀胱の症状を防止するか又は排除することができる。薬剤の全身投与、神経刺激、又はボトックス注射のような過活動膀胱に対する現行の処置は、局所解剖学的異常を具体的にターゲットにするのではなく、膀胱全体に適用される。治療効果は最終的に徐々に消えていくので、これらの処置は、多くの場合に複数回繰り返す必要がある。残念ながら、過剰処置は、膀胱を空にするのに自己カテーテル挿入を必要とする尿閉に至る場合がある。
【0004】
これらの全身処置の過渡的性質は、局所膀胱異常が起こる場所を識別するために膀胱壁の組織をマッピングし、次に、治療処置をこれらの区域に具体的にターゲットにすることによって対処することができる。現在利用可能な膀胱マッピングデバイスは、膀胱の形状に一致せず、かつ電極の各々と膀胱壁の間に接触を確実に確立すること及び/又は維持することができない。電極の適正な位置決めは、Drake他(BJU International 2005,vol.095,pp,1002−1005)によって説明されているように、バルーンの面に電極を取り付けることによって達成することができる。しかし、バルーンの外面と膀胱壁の間の界面は、人為的電気測定値を生じる傾向がある膀胱の刺激をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第10/263,225号明細書
【特許文献2】米国特許第6,120,364号明細書
【特許文献3】米国特許第5,714,110号明細書
【特許文献4】米国特許第4,963,313号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2005/0043679号明細書
【特許文献6】米国特許公開第2008/0249518号明細書
【特許文献7】米国特許公開第2002/0177765号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Drake他(BJU International 2005,vol.095,pp,1002−1005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
局所膀胱異常を識別し、かつ具体的に低侵襲性方式でこれらの区域を治療処置の対象にするためのシステム及び方法に対する必要性が依然として存在する。そのような処置は、医療手順の持続時間を増大することなく恒久的治療効果を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示の特定の実施形態は、以下の「発明の概要」及び「発明を実施するための形態」に説明されている。本発明の開示は、具体的実施形態に関連して説明するが、特許請求するような本発明の開示は、そのような具体的実施形態に過度に限定すべきではないことを理解しなければならない。
【0009】
本発明の開示は、一般的に、膀胱壁との電気接続の強化を提供し、同時に組織の刺激から生じる人為的電気測定値を低減又は排除する電極担持マッピング及びアブレーションシステムに関する。
【0010】
一態様では、本発明の開示は、折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、バルーンの外面の周りに担持された複数の電極と、バルーンの面と複数の電極の各々との間に配置されたスペーサとを含む医療デバイスに関する。電極は、感知電極、マッピング電極、刺激電極、及び/又はアブレーション電極を含むことができる。これに代えて又はこれに加えて、各スペーサは、電極が膀胱壁と接触する時に圧力フィードバックを与えるように構成された圧力センサを含むことができる。個々の圧力センサは、圧力フィードバック情報が各電極に対して得られるように各個々のスペーサに対して使用することができる。バルーンは、予め決められた最大容積まで拡張するが、最大容積を超えて拡張(すなわち、拡張過多)しない非柔軟バルーンである場合がある。バルーンは、PEBAX、PET、PEN、PBT、PEEK、Hytrel、ポリウレタン、及びナイロンから構成される群から選択されたポリマーを含むことができる。スペーサは、バルーンの外面に結合することができる。複数の電極の各々は、バルーンの外面から外向きに延びることができる。複数の電極の各々は、バルーンの外面の周りに等距離に配置することができる。複数の電極の各々は、アブレーションエネルギ源に電気的に結合することができる。複数の電極の各々は、電気活動処理システムに電気的に結合することができる。電気活動処理システムは、固有電気活動を測定するように構成することができる。バルーンの少なくとも一部分は、流体透過性とすることができる。バルーンは、拡張構成にある時に身体内腔の形状に一致することができる。複数の電極の各電極は、バルーンが拡張構成にある時に身体内腔の壁と接触することができる。バルーンの外面は、拡張構成にある時に身体内腔の壁と実質的に接触しない場合がある。バルーンの内腔は、流体源からバルーンの内腔内に流体を流すことによってバルーンを折畳構成から拡張構成まで移動するように流体源と流体連通することができる。
【0011】
別の態様では、本発明の開示は、折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、バルーンの外面の周りに配置された拡張可能−折畳可能骨組と、骨組の外面の周りに担持された複数の電極とを含む医療デバイスに関する。骨組は、バルーンの面の周りを自由に動くことができる。骨組の遠位端は、バルーンの遠位端に取り付けることができる。複数の電極は、感知電極、マッピング電極、刺激電極、及び/又はアブレーション電極として機能することができる。複数の電極の各々は、骨組の面から外向きに延びることができる。複数の電極は、骨組の面の周りに等距離に配置される。スペーサは、骨組の外面と複数の電極の各々との間に配置することができる。バルーンは、シリコーンゴム、ポリウレタン、ブチルゴム、ラテックス、スチレン−イソブチレン−スチレンブロックコポリマー、及びEPDMから構成される群から選択された柔軟ポリマーを含むことができる。バルーンは、非導電材料で形成することができる。複数の電極の各々は、アブレーションエネルギ源に電気的に結合することができる。複数の電極の各々は、例えば、筋電図を含む電気活動処理システムに電気的に結合することができる。電気活動処理システムは、固有電気活動を測定するように構成することができる。バルーンの内腔は、流体源からバルーンの内腔内に流体を流すことによってバルーンを折畳構成から拡張構成まで移動するように流体源と流体連通することができる。バルーンの少なくとも一部分は、流体透過性とすることができる。骨組は、バルーンが拡張構成にある時に身体内腔の形状に一致することができる。骨組の面上の複数の電極の各々は、バルーンが拡張構成にある時に身体内腔の壁と接触することができる。バルーンの外面は、バルーンが拡張構成にある時に身体内腔の壁と実質的に接触しない場合がある。
【0012】
別の態様では、本発明の開示は、折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、バルーンの外面の周りに配置された拡張可能−折畳可能骨組と、骨組の外面の周りに担持された複数の電極とを含む医療デバイスを身体内腔内に導入し、バルーンの面の周りに担持された電極が身体内腔の組織と接触するように折畳構成から拡張構成までバルーンを移動し、電極の各々に接触した身体内腔の組織内の電気活動を測定し、身体内腔の組織内の電気活動の上昇を検出した各電極を識別し、かつ電気活動の上昇を識別した各電極に電気エネルギを印加する方法を提供する。身体内腔は、膀胱の内腔である場合がある。電気エネルギを印加することは、身体内腔の組織による電気活動の上昇を低減し、それによって過活動膀胱の少なくとも1つの症状を軽減することができる。
【0013】
別の態様では、本発明の開示は、折畳構成と拡張構成の間を移動するように構成されたバルーンと、バルーンの外面の周りに配置された拡張可能−折畳可能骨組と、骨組の外面の周りに担持された複数の電極とを含む医療デバイスを身体内腔内に導入し、骨組の面の周りに担持された電極が身体内腔の組織と接触するように折畳構成から拡張構成までバルーンを移動し、電極の各々に接触した身体内腔の組織内の電気活動を測定し、身体内腔の組織内の電気活動の上昇を検出した各電極を識別し、かつ電気活動の上昇を識別した各電極に電気エネルギを印加する方法を提供する。身体内腔は、膀胱の内腔である場合がある。電気エネルギを印加することは、身体内腔の組織による電気活動の上昇を低減し、それによって過活動膀胱の少なくとも1つの症状を軽減することができる。
【0014】
本発明の開示の非限定的実施形態は、概略図であって縮尺通りに示すように意図していない添付図面を参照して一例として説明される。図では、図示の各同一又はほぼ同一の構成要素は、典型的に1つの数値で表される。明確化の目的で、全ての構成要素が全ての図でラベル付けされているとは限らず、図が必ずしも当業者に本発明の開示を理解させるとは限らない図示の本発明の開示の各実施形態の全ての構成要素もそうである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の開示の実施形態により取り付けられた電極を有するバルーンの側面図である。
図2図1のバルーンに取り付けられた電極の拡大断面図である。
図3A図1のバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、膀胱内へのバルーンの導入を示す断面図である。
図3B図1のバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、膀胱内へのバルーンの導入(図3A)に続いて電極が膀胱壁と接触して置かれるようにバルーンが拡張され、膀胱が生理食塩水で洗い流されるのを示す断面図である。
図3C図1のバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、各電極のマッピング機能を使用して膀胱壁内の局所解剖学的異常(例えば、電気活動の上昇)を識別するのを示す断面図である。
図3D図1のバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、局所解剖学的異常を検出する電極が次に特定の組織領域を切除するように励起されるのを示す断面図である。
図4A】本発明の開示の別の実施形態により折畳構成でバルーンの面にわたって自由に動く取り付けられた電極を有する拡張可能骨組の側面図である。
図4B】バルーン及び拡張可能骨組が拡張構成にある図4Aの拡張可能骨組及びバルーンの側面図である。
図5A図4A〜Bの拡張可能骨組及びバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、膀胱内への拡張可能骨組及びバルーンの導入を示す断面図である。
図5B図4A〜Bの拡張可能骨組及びバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、膀胱内への拡張可能骨組及びバルーンの導入(図5A)に続いてバルーンがバルーンの面の周りを自由に動く拡張可能骨組も拡張し、それによって電極を膀胱壁と接触して置くように拡張されるのを示す断面図である。
図5C図4A〜Bの拡張可能骨組及びバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、膀胱が生理食塩水で洗い流された後で各電極のマッピング機能を使用して膀胱壁内の局所解剖学的異常(例えば、電気活動の上昇)を識別するのを示す断面図である。
図5D図4A〜Bの拡張可能骨組及びバルーンを使用する膀胱のマッピング及び切除に関わる段階を示し、局所解剖学的異常を検出する電極が次に特定の組織領域を切除するように励起されるのを示す断面図である。
【0016】
図面は、本発明の開示の典型的又は例示的実施形態のみを示すように意図していることに注意されたい。従って、図面は、本発明の開示の範囲を限定するように考えるべきではない。ここで添付図面を参照して本発明の開示をより詳細に以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の開示をより詳細に説明する前に、本発明の開示は、説明する特定の実施形態に限定されず、従って、異なる場合があることは理解されるものとする。本明細書に使用する専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、特許請求の範囲を超えて限定するように意図していないことも理解されるものとする。別に定めない限り、本明細書に使用する全ての技術的用語は、本発明の開示が属する当業者による一般的な理解と同じ意味を有する。最後に、本発明の開示の実施形態は、膀胱内の過活動組織をマッピング及び切除するために特にシステム及び方法に関連して説明するが、本発明の開示は、例えば、胃腸(GI)管、胃(例えば、過敏性腸疾患、癌、肥満など)、子宮(例えば、筋腫、子宮出血など)、食道、及び血管系を含む様々な臓器をマッピング及び切除するのに適用可能である場合があることを認めなければならない。
【0018】
本明細書に使用される場合に、用語「遠位」は、デバイスを患者の中に導入する時に医療専門家から最も離れた端部を指し、一方、用語「近位」は、デバイスを患者の中に導入する時に医療専門家に最も近い端部を指す。
【0019】
本明細書に使用される場合に、「拡張可能」又は「拡張された」は、「折畳可能」又は「折り畳まれた」構成の直径と比較する時に直径の増大を指す。本明細書に使用される場合に、「直径」は、2点間を延びる直線の距離を指し、必ずしも特定の形状を示すものではない。
【0020】
本明細書に開示して特許請求するデバイス及び/又は方法の全ては、本発明の開示に照らして過度の実験なしに製造かつ実施することができる。本発明の開示のデバイス及び方法は、好ましい実施形態に関して説明するが、本発明の開示の概念、精神、及び範囲から逸脱することなくデバイス及び/又は方法にかつ本明細書に説明する本方法の段階又は段階のシーケンスに変形を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定められるような本発明の開示の精神、範囲、及び概念内であると見なされる。
【0021】
図1は、膀胱壁の組織をマッピング及び切除するために取り付けられた電極30を有する膨張可能バルーン20を含む医療デバイスの概略図を与えている。バルーン20は、折り畳んだ(すなわち、収縮又は非拡張)構成で尿道を通じて患者の膀胱の中に挿入されるように構成される。膀胱内に適正に位置決めされた状態で、バルーンは、バルーン20の外面24の周りに配置された電極30が膀胱壁の組織と接触して置かれるように拡張(すなわち、膨張)構成に移動する。一実施形態では、各電極は、膀胱壁との接触を改善して維持する粗い(すなわち、凸凹)面を含む。あらゆる数の電極30をバルーン20の外面24の周りに配置して膀胱壁の組織を電気的にマップすることができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24、又は25以上の電極がある場合がある。電極はまた、異なる形状及びサイズのものとすることができる。膀胱全体が均一方式でマップされることを保証するために、電極は、バルーンの外面の周りに等距離に配置することができる。電極はまた、例えば、膀胱頸部のような区域でより高密度でかつ受容体の密度がより低い膀胱円蓋でより低密度で不均一に離間される場合がある。
【0022】
図2を参照すると、スペーサ40が、バルーン20の外面24と各電極30の間に置かれ、電極30がバルーン20の外面24の上方に隆起してそこから外向きに延びることを保証することができる。一実施形態では、各スペーサ40は、電極30が膀胱壁と接触する時に圧力フィードバックを与えるように構成された圧力センサを含むことができる。個々の圧力センサは、圧力フィードバック情報が各電極30に対して得られるように各個々のスペーサ40に対して使用することができる。有益なスペーサ材料は、例えば、取りわけ、合成ポリマー及びゴム、金属及び金属合金、形状記憶ポリマーを含む。スペーサ厚みは、0.1mm〜100mm、より典型的には0.5mm〜10mmに及ぶ場合がある。一般的に、スペーサは、各電極をバルーンの外面の上方に約0.5mmから約1.00cm隆起させるに十分な幅を含む。各スペーサ40は、非限定的例として、糊付け、溶接、UV硬化性アクリレート樹脂、又は他の適切な接着剤を使用してバルーン20の外面24に取り付けることができる。これに代えて、スペーサは、バルーンを形成するのに使用するものと同じ材料を使用してポリマー硬化処理中にバルーン面の一体化部分として組み込むことができる。例えば、バルーンの厚みは、電極がその上に取り付けられる/糊付けされる肉厚区域を与えるように等距離スポットでバルーン面の外向きに増大させることができる。スペーサはまた、電極がその上に取り付けられ/糊付けされ、拡張構成にある時にバルーンの本体から外向きに延びる指状の突起を与えることによってバルーンの一体化部分として組み込むことができる。バルーン面との直接接触は、炎症及び誤電気活動に至る場合がある膀胱壁14の組織の刺激を引き起こす傾向がある場合がある。以下で考察するように、スペーサ40は、それに取り付けたそれぞれの電極をバルーン20の外面24よりも高くすることによって膀胱壁のより確実で正確なマッピングを提供し、拡張バルーンの外面24と膀胱壁14の組織の間の接触を最小にするか又は防止することができる。バルーン20の外面24と膀胱壁14の間の空間42はまた、生理食塩水又は他の適切な導電性流体がバルーンの外面24の周りに注がれることを可能にし、膀胱壁14と各電極30の間に堅実な界面を提供する。これは、膀胱壁が水和されたままになることを可能にし、固有電気活動のより確実な検出のために膀胱壁14の組織と各電極30の間に改善した導電性を提供する。電気活動の上昇の1又は2以上の領域が膀胱壁の組織内で検出された状態で、導電性流体は、周囲の正常組織の最小アブレーションと共にターゲット組織への電気エネルギ(すなわち、アブレーションエネルギ)の正確な局所送出を更に可能にする。
【0023】
図1〜2に示すバルーンは、それが膀胱10の形状に一致して各電極30を膀胱壁14に押圧するように可撓性材料で形成することができる。バルーンの非柔軟的性質は、バルーンが過度に拡張しないことを保証し、それによって注入生理食塩水が満たされる空間42を維持する。当業者によって理解されるように、バルーンは、取りわけ、ブロー成形、フィルム成形、射出成形、浸漬被覆、及び/又は押出のようなあらゆる適切な技術を使用して形成することができる。例えば、ポリマーチューブを押し出すことができ、その後に引き伸ばして吹きつけてバルーンを形成することができる。ポリマーチューブからバルーンを形成する方法は、例えば、全てが引用によってその全体が本明細書に組み込まれている本出願人に譲渡された2002年10月2日出願の「医療バルーン」という名称の米国特許出願第10/263,225号明細書、Andersonの米国特許第6,120,364号明細書、Wangの米国特許第5,714,110号明細書、及びNoddinの米国特許第4,963,313号明細書に説明されている。
【0024】
バルーンは、エラストマー性かつ非柔軟性材料の組合せを含むことができる。例えば、バルーンは、1又は2以上の熱可塑性プラスチック及び/又は熱硬化性樹脂を含むことができる。熱可塑性プラスチックの例は、ポリオレフィン、ポリアミド(例えば、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6/12、ナイロン6、ナイロン66のようなナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT))、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアクリル、フッ素ポリマー、ポリエーテル及びポリアミドのブロックコポリマー(例えば、PBAX(登録商標))のようなコポリマー及びそのブロックコポリマー、及びこの混合物を含む。熱硬化性樹脂の例は、エラストマー(例えば、EPDM)、エピクロヒドリン、ポリ尿素、ニトリルブタジエンエラストマー及びシリコーンを含む。熱硬化性樹脂の他の例は、エポキシ及びイソシアネートを含む。生体適合性熱硬化性樹脂も使用することができる。生体適合性熱硬化性樹脂は、例えば、生分解性ポリカーボネート、ポリウレタン及び尿素を含有するポリ(ジメチルシロキサン)及びポリシロキサンを含む。ポリイミド及びアクリル又はメタクリルポリマー及びコポリマーのような紫外線硬化性ポリマーも使用することができる。バルーンに使用することができるポリマーの他の例は、ポリエチレン、ポリエチレンアイオノマー、ポリエチレンコポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性プラスチックポリエステルエラストマー(例えば、Hytrel(登録商標))、及びこれらの組合せを含む。バルーンは、例えば、共押出によって提供される複数の層を含むことができる。他のポリマーは、例えば、引用によって本明細書に組み込まれている「医療バルーン」という名称の2003年8月21日出願の米国特許公開第2005/0043679号明細書に説明されている。
【0025】
膀胱の内腔は、典型的には、例えば、個々の患者の年齢及び/又はサイズに応じて広範囲の形状及びサイズを有して非対称である。一実施形態では、非対称形状の膀胱の壁との堅実な電極接触は、個々の患者の膀胱の形状に一致するように具体的に設計されたバルーンを使用して達成される。完全拡張膀胱の内部寸法は、取りわけ、超音波、磁気共鳴撮像装置(MRI)、コンピュータX線撮影法(CR)、又はコンピュータ断層撮影法(CT)のような公知の医用撮像技術を使用して最初に決定される。拡張膀胱の3次元(3−D)モールドは、次に、当業技術で公知のように、ワックスから又は3次元プリンタを使用して形成される。次に、バルーンは3−Dモールドを使用して形成される。例えば、モールドは、シリコーン溶液に浸漬されて自然に硬化させられる(例えば、12時間にわたって室温で)。次に、被覆されたモールドは、ある温度まで及びシリコーンを硬化するのに十分な時間にわたって加熱される(例えば、400〜450℃で2時間にわたって焼成され、4時間にわたって室温で冷却される)。次に、モールドは分解されて取り外され、硬化シリコーン又は形状記憶ポリマー本体(すなわち、バルーン)が残る。バルーンは、水洗いされ、加熱(例えば、150℃で30分間)されて室温で冷却される。次に、スペーサ及び電極は、必要に応じて上述のようにバルーンの外面に接着することができる。
【0026】
各電極は、マッピング及びアブレーション機能を実行するためにバルーンの内面又は外面に沿って延びる個別の導電ワイヤ(図示せず)に結合することができる。医療アブレーションシステムと共に使用するためのマッピングカテーテルの例は、両方ともぞの全体が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許公開第2008/0249518号明細書及び第2002/0177765号明細書に見出すことができる。マッピング電極として、各ワイヤは、例えば、筋電図のような電気活動処理システム(図示せず)の入力に電気的に結合することができる。各電極には、電気活動処理システム内の電極位置及び電極チャネルを割り当てることができる。電気活動処理システムは、電極の各々が接触する組織領域を含む細胞の固有電気活動を検出するように構成することができる。電気活動処理システムは、次に、電極の各々から検出された固有電気活動を使用して、与えられた組織領域又は臓器を通じた電気活動のマップを提供することができる。このマップに基づいて、周囲組織と比較して異常電気活動を示す特定の組織領域を識別することができる。例えば、異常電気活動は、周囲(正常)組織と比較して電気活動の上昇の領域として現れる場合がある。
【0027】
アブレーション電極として使用するために、各ワイヤはまた、アブレーションエネルギをそのそれぞれの電極に選択的に送出するように構成されたエネルギ源(図示せず)に電気的に結合することができる。例えば、電気活動の上昇を示す組織領域が識別された状態で、電気活動の上昇を検出した電極は、その組織領域を局所的に切除するように選択的に励起することができる。例えば、取りわけ、無線周波数(RF)エネルギ、不可逆的電気穿孔法(IREエネルギ)、マイクロ波電磁エネルギ、レーザエネルギ、及び/又は音響エネルギを含む様々なエネルギ源を使用してターゲット組織に熱エネルギを送出することができる。例えば、エネルギ源は、従来の正弦波又は非正弦波形態を有する200kHZ〜1.25MHzの範囲の周波数で作動する従来のRF電源を含むことができる。好ましい電源は、一般的に50V〜100Vである典型的に150V(ピーク間)よりも低い比較的低電圧でアブレーション電流を供給することができる。64電極へのアブレーションエネルギの同時送出は、約640Wを送出することができる発生器を必要とすることになる。このワット数は、20Wの容量を有する複数の発生器、例えば、64発生器を直列に接続することによって達成することができる。これらの範囲で作動することができる電源は、米国カリフォルニア州のサンノゼのRadio Therapeuticsのような納入業者から入手可能である。バルーンは、バルーン面全体にわたって膀胱壁との完全な接触を達成する点までアブレーション中にバルーンを膨らませ過ぎる場合があり、バルーンは、冷却要素としてこの段階中に別の目的に使用することができる(例えば、冷たい生理食塩水を使用してアブレーション中に膀胱を冷却することができる)。バルーンのこの冷却機能は、膀胱壁の「焦げ」を回避しながらエネルギ送出中により大きい及び/又はより深い損傷を生成させるのに有用である場合がある。
【0028】
図3A〜3Dは、図1のような膨張可能バルーンを使用する膀胱壁14のマッピング及び切除に関わる段階を示している。バルーン20は、患者の尿道16を通じて膀胱10の中に挿入されるように構成されたカテーテル5の内腔7内に摺動可能に配置することができる。カテーテルが膀胱10内に適正に位置決めされた状態で、折り畳まれたバルーンは、カテーテル5(図3A)の遠位端6を超えて進むことができる。様々な実施形態では、折畳構成にある時に、バルーンは、3.7mm未満、好ましくは2.8mm未満、より好ましくは2.5mm未満又はそれに等しいプロファイル(すなわち、直径)を有することができる。一連の膀胱サイズを処置するために、バルーンは、様々な異なる折畳及び拡張寸法で提供することができることは認められるであろう。一部の実施形態では、カテーテルは、例えば、患者の尿道を通じて導入するための膀胱鏡を含む導入要素の内腔内に配置することができる。膀胱内に適正に位置決めされた状態で、バルーンは、流体源(図示せず)からバルーン本体の内部領域の中に加圧液体又は気体を導入することによって膨張する。流体又は気体は、バルーン本体内で圧力を及ぼしてバルーンを折畳構成から拡張構成まで駆動する。バルーンは、それが膀胱の内部寸法に一致し、それによってバルーン20の外面上の電極30の各々を膀胱壁14(図3B)の組織と接触して置くように拡張される。流体又は気体から連続的に圧力が加わることで、電極が膀胱壁の組織と接触したままになるようにバルーン本体を拡張構成に維持する。一実施形態では、流体又は気体は、バルーン本体を通って連続的又は断続的に循環してバルーン本体をその拡張構成に維持することができる。スペーサ40は、バルーン20の外面24が膀胱壁14の組織と接触しないことを保証する。生理食塩水のような導電性流体が、次に、バルーンの外面と膀胱壁の間の空間42の中に注入される。一実施形態では、導電性流体は、バルーンカテーテルの外側に沿って流体源に達する個別のチューブ(図示せず)から導入される。別の実施形態では、バルーン本体の一部分は、バルーンを拡張するのに使用する流体がバルーンの内部領域から連続的に流れてバルーンの外面と膀胱壁の間の空間を占めるように流体透過性とすることができる。
【0029】
バルーンが膀胱内で適正に拡張されると、各電極のマッピング機能は、それらが接触した組織領域の固有電気活動を感知/検出するように起動することができる。電気活動14aの上昇を示す膀胱壁の組織領域が識別された状態で(図3C)、アブレーションエネルギは、エネルギ源から電気活動の上昇(図3D)を感知した電極30aに選択的に送出される。アブレーションエネルギのこの局所送出は、識別された組織領域の電気過活動細胞を細胞死14bの点まで加熱させ、それによって電気インパルスを伝導することができない瘢痕組織を生成する。
【0030】
アブレーションエネルギの持続時間及び/又は強度は、必要に応じて電気活動の上昇の満足のいく低下を達成するように変えることができる。例えば、アブレーションエネルギは、RFエネルギのパルス又は一連のパルスとして提供することができる。次に、電極30のマッピング機能は、識別された組織領域が電気活動の上昇を示し続けるかを決定するように再確立することができる。そのような部位内の電気活動が上昇したままの場合に、選択された組織領域は、アブレーションエネルギで再励起することができる。この処理は、組織領域が電気活動の望ましいレベルを示すまで必要に応じて繰り返すことができる。膀胱壁の領域を繰返しモニタして切除する膨張可能バルーン及び取り付けられた電極の機能は、局所エネルギがターゲット領域だけにかつエネルギの持続時間又は強度を引き延ばすことなく送出されることを保証する。このターゲットを絞った手法は、アブレーションを必要とする選択された領域にエネルギを集束させるだけでなく、周囲の健康/正常組織の不要かつ潜在的に有害なアブレーションを最小にするか又は排除する。
【0031】
識別されて(図3C)切除された(図3D)組織領域は、電極のうちの1つと直接に接触しているが、ターゲット組織は、バルーンの外面の周りに配置された電極のうちの1又は2以上の隣に又はその間にある場合があることを認めなければならない。この状況下では、ターゲット組織の近くの電極のうちの1又は2以上は、アブレーションエネルギのゾーンがターゲット組織に達する(すなわち、これと重なる)ように励起することができる。
【0032】
アブレーション組織領域がもはや電気活動の上昇を示さないことを電極のマッピング機能が検証した状態で、バルーンは、バルーン本体の内部領域から液体又は気体拡張媒体を除去することによって折畳構成に戻る。次に、バルーンは、カテーテルの内腔内に後退して尿道を通じて引き出すことができる。
【0033】
個人の膀胱の間にサイズ及び形状の有意な変動があるので、柔軟バルーン材料が、様々な面と接触するために一部の実施形態では望ましい。非柔軟バルーンとは異なり、柔軟バルーンは、単一の予め決められた容積まで拡張するが、好ましくは、類似の非膨張容積を有する非柔軟バルーンと比較して10%〜800%又はそれよりも大きい範囲、より好ましくは50%〜200%の範囲の容積まで拡張する材料から構成することができる。柔軟バルーン材料の例は、取りわけ、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、ブチルゴム、スチレン−イソブチレン−スチレンコポリマー、ウレタン、及びラテックスのようなエラストマーを含む。しかし、印刷回路技術が使用される場合に、そのような材料は、バルーンへの電極の接着の問題を引き起こす場合がある。この問題に対処する1つの方法は、下に重なるバルーンが折畳構成(図4A)から拡張構成(図4B)に移動する時に骨組50が拡張するように膨張可能バルーン20の外面の周りを自由に動く拡張可能−折畳可能骨組50(すなわち、グリッド又はメッシュ状構造)を含む医療デバイスの実施形態の概略図が示されている図4A〜Bに示されている。骨組50とバルーン20の間の取付点のみが、それらのそれぞれの遠位端52、22にあり、骨組50がバルーン20の周りを自由に動くままであることを保証する。バルーン20が拡張構成内に移動すると、バルーン20の外面は、骨組50の内面と接触し、それによって骨組50を同様に拡張するように押圧する。バルーン20が拡張構成から折畳構成に移動すると、骨組50は、バルーン及び骨組の取り付けられた遠位端22、52から離れる方向に骨組の近位端54に張力を印加する(すなわち、引く)ことによって折り畳むことができる。複数の電極30は、骨組50の外面の周りに担持される。スペーサ(図示せず)は、骨組50の外面と各電極30の間に置かれ、電極が上方に隆起して骨組50及び下に重なるバルーン50の外面から外向きに延びることを保証することができる。スペーサは、非限定的例として、糊付け、溶接、UV硬化性アクリレート樹脂、又は他の適切な接着剤を使用して骨組の外面に取り付けることができる。スペーサを使用して電極を骨組の外面よりも高くし、バルーン及び骨組が拡張構成にある時に各電極と膀胱壁の組織の間の接触を改善することができる。一実施形態では、各スペーサは、電極が膀胱壁と接触する時に圧力フィードバックを与えるように構成された圧力センサを含むことができる。個々の圧力センサは、各電極に対して圧力フィードバック情報が得られるように各個々のスペーサに対して使用することができる。スペーサはまた、生理食塩水又は他の適切な導電性流体をバルーン及び骨組の外面の周りに注ぐことを可能にし、膀胱壁と各電極30の間に堅実な界面を提供する。これは、より確実なマッピング及びアブレーションのために膀胱壁の組織と各電極の間の改善された導電性を可能にする。
【0034】
上で考察したように、バルーンは、マッピング/アブレーション手順を実施する前に個々の患者の膀胱の特定の形状に一致するように設計することができる。同様に、バルーンは、それが拡張して骨組を膀胱内腔に一致させるが過度に拡張しないように可撓性及び非柔軟材料で形成することができ、それによって注入生理食塩水が満たされるようにバルーンの外面と膀胱壁の間の空間を残す。
【0035】
バルーンは、特定の特性を高めるために様々な材料を使用して被覆することができる。これらのコーティングは、一般的にバルーン面のみを覆って電極は覆わないと考えられるが、仮にコーティングが導電性であった場合に、それは電極を覆うことができるであろう。コーティング使用の例は、潤滑コーティング、耐アブレーション及び穿刺コーティング、又は粘着性コーティングを含む。潤滑コーティングは、一般的に当業者に公知のポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸コポリマー、ヒアルロン酸、ポリウレタン、以上の組合せのような一般的に医療デバイスに使用するものを含む。これらの被覆はまた、下塗層を有してバルーンに対する接着を改善することができる。
【0036】
図4Bに最もよく示すように、一実施形態では、骨組は、近位端54及び遠位端52を含み、その間を可撓性スプライン56が周方向に離間した関係で延びる。骨組は、拡張構成にある時に内部空間を定めるバスケットの形態をとることができる。スプラインは、ニチノール、アクリレートベースのポリマー、ポリウレタンベースのポリマー、ポリノルボルネンベースのポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、PEEK、ポリラクチドベースのポリマー、プラチナ、タングステン、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、及びそのいずれかの組合せのような弾性不活性物質から作ることができる。スプライン56は、曲がるようにプレテンション条件下で近位端と遠位端の間に接続され、下に重なるバルーン20の形状に一致することができる。図4A〜4Bに示す実施形態は、3−D構造を形成する5つのスプライン56を含む。各スプラインは、一連の4つの支柱58によって隣接スプラインに接続される。追加の又はより少ない支柱によって接続された追加の又はより少ないスプラインは、他の実施形態において使用することができる。電極30は、合計20電極が図示の実施形態では骨組の外面の周りに等距離に位置決めされるように各スプライン56及び支柱58の交差点に取り付けられる。20マッピング電極の配列が骨組上に配置されて示されているが、マッピング電極は、これに代えて異なる数で、異なる構造で、及び/又は異なる位置に配置することができる。各電極は、典型的には、上で考察したように、マッピング及びアブレーション機能を実行するために骨組の内面又は外面に沿って延びる個別の導電ワイヤ(図示せず)に結合される。
【0037】
図5A〜5Dは、図4A〜4Bのような膨張可能バルーン及び骨組を使用して膀胱壁をマッピング及び切除することに関わる段階を概説している。バルーン20及び骨組50は、患者の膀胱10の中に尿道16を通じて挿入されるように構成されたカテーテル5の内腔7内に摺動可能に配置することができる。カテーテルが膀胱内に適正に位置決めされた状態で、未拡張バルーン20及び骨組50は、カテーテル5(図5A)の遠位端6を超えて遠位に進むことができる。様々な実施形態では、折畳構成にある時に、バルーン20は、3.7mm未満、好ましくは2.8mm未満、より好ましくは2.5mm未満又はそれに等しいプロファイル(すなわち、直径)を有することができる。バルーンは、一連の膀胱サイズを処置するために様々な異なる折畳及び拡張寸法で提供することができることは認められるであろう。一部の実施形態では、カテーテルは、例えば、膀胱鏡を含む様々な導入要素を含むことができる。膀胱10内に適正に位置決めされた状態で、バルーン20は、流体源(図示せず)からバルーン本体の内部領域の中に加圧液体又は気体を導入することによって膨張する。流体又は気体は、バルーン本体内に圧力を印加してバルーンを折畳構成から拡張構成まで駆動する。バルーンが拡張すると、相応にバルーンの外面の周りを自由に動く骨組50が拡張し、骨組50の電極30を膀胱壁14(図5B)の組織と接触して置く。流体又は気体から連続的に圧力が加わることで、電極が膀胱壁の組織と接触したままになるようにバルーン本体を拡張構成に維持する。一実施形態では、流体又は気体は、バルーン本体を通って連続的又は断続的に循環してバルーン本体をその拡張構成に維持することができる。生理食塩水のような導電性流体が、次に、バルーンの外面と膀胱壁の間の空間の中に注入される。一実施形態では、生理食塩溶液は、バルーンカテーテルの外側に沿って流体源に達する個別のチューブ(図示せず)から導入される。別の実施形態では、バルーンの一部分は、バルーンを拡張するのに使用する流体の一部分がバルーン内から連続的に流れてバルーンの外面と膀胱壁の間の空間を満たすように流体透過性とすることができる。バルーンは、冷却要素としてこの段階中に別の目的に使用することができる(例えば、冷たい生理食塩水を使用してアブレーション中に膀胱を冷却することができる)。バルーンのこの冷却機能は、膀胱壁の「焦げ」を回避しながらより大きい及び/又はより深い損傷を生成させるのにエネルギ送出中に有用である場合がある。
【0038】
バルーン20が膀胱10内で適正に拡張すると、各電極30のマッピング機能は、それらが接触した組織領域の固有電気活動を感知/検出するように起動される。電気活動の上昇を示す膀胱壁の組織領域が識別された状態で14a(図5C)、アブレーションエネルギは、エネルギ源から電気活動の上昇を感知した電極30aに選択的に送出される(図5D)。アブレーションエネルギのこの局所送出は、識別された組織領域の電気過活動細胞を細胞死の点まで加熱させ、それによって電気インパルスを伝導することができない瘢痕組織を生成する。
【0039】
本発明の開示は、一般的にマッピング電極によって識別されたターゲット組織への熱アブレーションエネルギの印加に関するが、電気刺激エネルギのような非致死的エネルギ又は電気穿孔法を通した治療薬の送出を投与して正常な電気活動をターゲット組織の細胞に対して回復させることができることも認めなければならない。
【符号の説明】
【0040】
5 カテーテル
10 膀胱
14 膀胱壁
20 バルーン
30 電極
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D