(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザ端末が第1のビームと第2のビームとの間で通信を切り替えるときに前記ユーザ端末における信号対雑音比を維持するための方法であって、前記第1および第2のビームが非静止衛星から送信され、前記方法が、
前記ユーザ端末が前記第1のビームと前記第2のビームとの間を切り替えるための基準切り替え時間を設定するステップと、
前記ユーザ端末で受信した電力を時間の関数として測定するステップと、
入力としての前記衛星のピッチオフセット、ロールオフセット、およびヨーオフセットのうちの少なくとも1つと、出力としての前記オフセットから生じるタイミングの不一致との間の数学的関係を定義するステップであって、ピッチオフセット、ロールオフセット、およびヨーオフセットのうちの前記少なくとも1つは、時間の関数として前記ユーザ端末において測定された前記電力に基づいて決定され、前記タイミングの不一致が、前記第1のビームと前記第2のビームとの間の通信を切り替えるための前記基準時間と、前記信号対雑音比が一定のままであるように前記第1のビームと前記第2のビームとの間の通信を切り替えるための前記時間との間の差である、ステップと、
前記数学的関係から出力された前記タイミングの不一致に基づいて、前記ユーザ端末が前記第1のビームと前記第2のビームとの間で通信を切り替える時間を調整するステップと
を備える、方法。
前記ユーザ端末において、前記第1のビームおよび前記第2のビームのうちの少なくとも1つにおいて受信された電力を時間の関数として測定することによって、前記ピッチオフセット、前記ロールオフセット、および前記ヨーオフセットのうちの少なくとも1つを決定するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
前記ピッチオフセット、前記ロールオフセット、および前記ヨーオフセットのうちの少なくとも1つを決定するステップが、前記ユーザ端末によって取得された時間の関数として受信された電力の前記測定値の曲線適合を生成するステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
ユーザ端末が第1のビームと第2のビームとの間で通信を切り替えるときに前記ユーザ端末における信号対雑音比を維持するための方法であって、前記第1および第2のビームが非静止衛星から送信され、前記方法が、
前記ユーザ端末が前記第1のビームと前記第2のビームとの間を切り替えるための基準切り替え時間を設定するステップと、
前記ユーザ端末で受信した電力を時間の関数として測定するステップと、
入力としての前記衛星のピッチオフセット、ロールオフセット、およびヨーオフセットのうちの少なくとも1つと、出力としての前記オフセットから生じるタイミングの不一致との間の数学的関係を定義することによって、前記第1のビームおよび前記第2のビームの照準誤差を決定するステップであって、ピッチオフセット、ロールオフセット、およびヨーオフセットのうちの前記少なくとも1つは、時間の関数として前記ユーザ端末において測定された前記電力に基づいて決定され、前記タイミングの不一致が、前記第1のビームと前記第2のビームとの間の通信を切り替えるための前記基準時間と、前記信号対雑音比が一定のままであるように前記第1のビームと前記第2のビームとの間の通信を切り替えるための前記時間との間の差である、ステップと、
前記第1のビームおよび前記第2のビームの前記照準誤差に関する情報を前記衛星に送信するステップと、
前記数学的関係から出力された前記タイミングの不一致に基づいて、前記第1のビームおよび前記第2のビームの前記照準誤差を補正するために前記衛星の姿勢を調整するステップと
を備える、方法。
前記ユーザ端末において、前記第1のビームおよび前記第2のビームのうちの少なくとも1つにおいて受信された電力を時間の関数として測定することによって、前記ピッチオフセット、前記ロールオフセット、および前記ヨーオフセットのうちの少なくとも1つを決定するステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
前記ピッチオフセット、前記ロールオフセット、および前記ヨーオフセットのうちの少なくとも1つを決定するステップが、前記ユーザ端末によって取得された時間の関数として受信された電力の前記測定値の曲線適合を生成するステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
非静止衛星システムは、静止軌道(地球表面から約36000キロメートル上)以外の高度において地球を周回する衛星のグループまたはコンステレーションを備える。低地球軌道(LEO:low earth orbit)にある非静止衛星システムは、非静止衛星のより低い軌道により、地球同期衛星システムよりも少ない伝搬損失と少ない伝搬遅延とを有する。結果として、そのような衛星は、インターネットサービスなどの対話型通信に関して、静止衛星よりも適している。
【0004】
静止衛星システムは、地球の回転周期に等しい軌道周期を有し、したがって、地球からは、空の固定位置にあるように見える。非静止衛星は、比較的より高速で移動し、したがって、地上の観察者には、地平線から地平線へ頭上を通り過ぎるように見える。非静止衛星と地球との間のこの相対的な動きのため、そのような衛星は、地上のユーザ端末の範囲の内外に移動する。そのような端末は、したがって、連続通信を達成するために、ある衛星から次の衛星へそれらの通信リンクを切り替えなければならない(すなわち、ハンドオフ)。
【0005】
いくつかのシステムでは、衛星からユーザ端末への無線送信は、異なる方向に向けられた複数の独立したビームの形態である。したがって、衛星間のハンドオフと競合する地上ユーザ端末に加えて、衛星のカバレッジエリアが特定のユーザ端末を通過するにつれて、個々の衛星の個々のビーム間にハンドオフが存在する。
【0006】
最適な状況では、各衛星は、そこから放射されるビームが指定された方向において「指し示している」ように、宇宙空間内で適切に配向される。しかしながら、現実は、ビームがシステム設計に従って正確に指し示していないように、個々のビームに関する任意の他の誤差に加えて、衛星の姿勢において誤差が存在する可能性がある。ビーム照準におけるそのような不正確さは、ユーザ端末における信号対雑音比(SNR)の低下をもたらす。
【0007】
ビーム照準は、2つの方法においてSNRに影響を及ぼす。1つの方法は、コンステレーション内の2つの隣接する衛星が互いにわずかに離れて指し示す場合、これらの衛星間の地上にカバレッジにおけるギャップが生じる場合があることである。SNRが影響を受ける可能性がある第2の方法は、単一の衛星がわずかに間違った方向を指し示し、その衛星からの2つのユーザビーム間の分割線が地球の表面上の位置をシフトした(たとえば、前方または後方など)ときである。この分割線は、両方のビームからの信号強度が等しい場所であると定義される。ユーザ端末が、(天体暦および端末の位置の知識から演繹的に計算されるような)時間に基づいてあるビームから次のビームにその電気通信接続を切り替えるシステムにおいて、分割線がその予想される位置からシフトしている場合、端末は、シフトの前後で不均等な信号強度を経験することになる。
【0008】
現在、この問題に対処するいくつかの方法が存在する。1つの方法は、モバイル電話通信において一般的な技法を使用することであり、ユーザ端末は、現在受信されている信号の電力と、他のチャネルにおいて受信される他のビームの電力とを比較する。別のビームの受信電力が現在受信されている信号の受信電力を超えるとすぐに、ユーザ端末は、切り替えを実行する。そのとき、2つのビームの受信信号強度は、互いに非常に近くなり、SNRの変化をほとんど生じない。しかしながら、この手法は、かなりの量のオーバヘッドトラフィックを生じる。問題に対処する第2の方法は、ビーム照準において非常に厳しい公差(最大0.2度まで)で各衛星を設計することである。しかし、これは、厳しい製造公差に加えて、衛星において比較的より高価なハードウェアを必要とする。安価な衛星制御システムがこの公差を満たす可能性は低い。第3の手法は、比較的貧弱なサービスの品質がユーザに提供されることを受け入れることである。
【0009】
この第1の手法は、過剰な量の電気通信トラフィックをもたらし、第2の手法は、問題を回避することを試み、第3の手法は、問題を無視する。これらの手法のいずれも、特に満足のいくものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】家庭にインターネットサービスを配信するための衛星システム100を示す図である。
【
図2】システム100の衛星から送信されるビームを示す図である。
【
図3A】衛星から送信されるビームにおけるロール誤差の影響を示す図である。
【
図3B】衛星から送信されるビームにおけるピッチ誤差の影響を示す図である。
【
図3C】衛星から送信されるビームにおけるヨー誤差の影響を示す図である。
【
図4】16のビームを有する衛星に関する、衛星の下のカバレッジエリア内のユーザ端末の位置の関数としてユーザ端末によって受信される電力を示す図である。
【
図5A】例示的な実施形態によるピッチ誤差を決定するための方法を示す図である。
【
図5B】例示的な実施形態によるピッチ誤差を決定するための方法を示す図である。
【
図6A】例示的な実施形態によるヨー誤差とピッチ誤差とを決定するための方法を示す図である。
【
図6B】例示的な実施形態によるヨー誤差とピッチ誤差とを決定するための方法を示す図である。
【
図6C】例示的な実施形態によるヨー誤差とピッチ誤差とを決定するための方法を示す図である。
【
図8A】例示的な実施形態によるロール誤差を決定するための方法を示す図である。
【
図8B】例示的な実施形態によるロール誤差を決定するための方法を示す図である。
【
図8C】例示的な実施形態によるロール誤差を決定するための方法を示す図である。
【
図9A】例示的な実施形態による、ロール誤差と、ピッチ誤差と、ヨー誤差とを一緒に決定するための方法を示す図である。
【
図9B】例示的な実施形態による、ロール誤差と、ピッチ誤差と、ヨー誤差とを一緒に決定するための方法を示す図である。
【
図10】本発明の例示的な実施形態による方法の第1の実施形態を示す図である。
【
図11a】個々のビーム照準オフセットと、ビーム形状における変動と、ビーム強度における変動とを含む追加のビーム誤差のシミュレーションマップを示す図である。
【
図11b】
図11aのシミュレーションマップにおいて使用されるパラメータからの地上のビーム割り当て領域のマップを示す図である。
【
図12】本発明の例示的な実施形態による方法の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の例示的な実施形態は、地球上の任意の場所に低コストのブロードバンドインターネットサービスをもたらすための衛星システム100に関係する。本発明の実施形態は、一般に、任意の数の衛星(すなわち、1つまたは複数)を用いて、地上で測定可能な放射線のビーム(たとえば、光学、RF、またはそれ以外のもの)を生成する非静止衛星に適用可能である。
【0018】
図1は、衛星システム100およびその動作環境の例示的な実施形態を示す。システム100は、コアネットワーク102と、ゲートウェイアンテナ104と、LEO衛星106と、ユーザ端末108とを含む。システム100は、インターネット50からユーザデバイス70(たとえば、テレビ、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、または、データを受信および/もしくは送信することができる他のデバイス)に、およびその逆にデータを送信する。
【0019】
コアネットワーク102は、インターネット50から/にデータを受信/送信する。数ある機能の中でも、コアネットワーク102は、複数のLEO衛星106への送信のためにデータパケットを複数のゲートウェイアンテナ104にルート転送する。同様に、コアネットワーク102は、複数のゲートウェイアンテナを介して複数のLEO衛星からデータパケットを受信する。インターネットコンテンツなどを含むことに加えて、データパケットは、以下でさらに議論するように、システム関連情報を含む。
【0020】
単純化のために、
図1は、単一のLEO衛星106を示すが、システム100は、「コンステレーション」と呼ばれる複数のそのようなLEO衛星を含むことが理解されるべきである。たとえば、いくつかの実施形態では、コンステレーションは、720の衛星などの、非常に多数の衛星を含む。いくつかの実施形態では、衛星のコンステレーションは、複数の軌道「平面」に編成され、各軌道平面は、異なる高度にある。典型的には、必ずしもそうではないが、各軌道平面内に等しい数の衛星が存在する。
【0021】
図1に示す実施形態では、ユーザデバイス70は、ユーザ端末108を介して、衛星106からデータを受信し、および/または衛星106にデータを送信する。ユーザデバイス70は、構造物60内に位置するものとして示されている。いくつかの他の実施形態では、ユーザデバイス70は、ユーザ端末108とユーザデバイスとの間の適切な拡張電気通信接続によってサポートされるように、屋外で使用される。
【0022】
例示的な実施形態では、ユーザ端末108は、住宅である構造物60に取り付けられるものとして示されている。いくつかの他の実施形態では、構造物60は、会社(たとえば、オフィスビル、レストラン、倉庫など)、小屋、または、クルーズ船などのゆっくり動く船舶などの、住宅以外の建物である。典型的には、1つのユーザ端末108は、インターネット接続を提供するために、各場所(たとえば、住宅、会社など)に設置される。ユーザ端末108の一実施形態は、2015年2月20日に出願された、「User Terminal Having A Linear Array Antenna With Electronic And Mechanical Actuation System」と題する、米国出願第14/627577号において提供される。
【0023】
図2に示すように、LEO衛星106は、少なくとも2つの異なるタイプのアンテナの複数のバージョンを備える。アンテナ205は、ゲートウェイアンテナ104との通信のためのものであり、アンテナ207は、ユーザ端末108との通信のためのものである。例示的な実施形態では、アンテナ207は、無線信号を地球の表面に向けて送信するための無線アンテナである。そのような送信は、ビーム210として示され、その各々は、地球の表面上にフットプリント212を提供する。ユーザ端末108がビーム210のうちの1つのフットプリント212内にあるとき、そのユーザ端末は、その無線送信からそのようなデータを受信する。
【0024】
ユーザ端末108の最初の試運転時に、ユーザ端末は、衛星106のうちの1つを取得して追跡するまで(すなわち、衛星コンステレーション内のすべての衛星が送信するパイロット信号をリッスンすることによって)空の高速走査を実行する。ユーザ端末108がサインインを完了し、(その正確な位置をシステムに転送することを含んで)認証されると、ユーザ端末108は、制御チャネルを介して「衛星およびビーム」ルックアップテーブルを受信する。このテーブルは、ユーザ端末108が、所与の時間において、どの特定の衛星106および衛星のどのビーム210と通信すべきであるかを示す。ルックアップテーブルは、天体暦に関する情報が更新されると定期的に更新される(たとえば、毎日など)。
【0025】
ルックアップテーブル内に含まれる情報の使用は、暗黙の仮定に基づき、すなわち、衛星から送信されたビームが予想される場所を正確に指し示しており、指定された電力量において送信していることに基づく。この仮定は、ほとんどの場合正確ではない可能性が高いので、テーブルにおいて指定される切り替え時間は、誤りになる。
【0026】
たとえば、衛星のロール、ピッチ、またはヨーのうちの1つまたは複数におけるオフセットは、そのビームの照準方向を変化させることになる。
図3A〜
図3Cは、前述の誤差に関するビーム照準方向への影響を示す。これらの図において、矢印314は、その軌道における衛星106の飛行方向を表す。
【0027】
図3Aは、ビーム照準方向に対する衛星のロールの影響を示す。時計回り方向においてロールして示されているが、衛星は、時計回り方向または反時計回り方向において回転することができることが理解されよう。「ロール」は、回転軸が飛行方向と平行である場合である。矢印316は、ビーム210(およびそれらのそれぞれのフットプリント212)がロールの結果としてシフトする方向を示す。シフトは、衛星の飛行方向に直交する、図における「左」または「右」である。
【0028】
図3Bは、ビーム照準方向に対する衛星のピッチの影響を示す。反時計回り方向においてピッチして示されているが、衛星は、時計回り方向または反時計回り方向において回転することができることが理解されよう。「ピッチ」は、回転軸が飛行方向に対して直交する場合である。矢印316は、ビーム210(およびそれらのそれぞれのフットプリント212)がピッチの結果としてシフトする方向を示す。シフトは、衛星の飛行方向に平行な、図における「前方」または「後方」である。
【0029】
図3Cは、ビーム照準方向に対する衛星のヨーの影響を示す。時計回り方向においてヨーイングして示されているが、衛星は、時計回り方向または反時計回り方向において回転することができることが理解されよう。「ヨー」は、回転軸が飛行方向に対して直交する(かつ平面外にある)場合である。矢印316は、ビーム210(およびそれらのそれぞれのフットプリント212)がヨーの結果としてシフトする方向を示す。シフトは、上から見たときの「時計回り」または「反時計回り」である。
【0030】
図4は、衛星106のうちの1つの下でユーザ端末108によって受信される電力のコンピュータ予測を示す。この図において、衛星は、16のビームを送信する。各ビームについて、受信電力は、ピーク418を有する特徴的な「こぶ(hump)」形状を示す。ユーザ端末が衛星に対して地上のどこにあるかに応じて、そのユーザ端末は、ピーク418における電力、または傾斜上にあるときはより少ない電力420を見る可能性ある。こぶの間の「谷」は、隣接するビームから受信された電力が等しい場所である。ユーザ端末において受信された電力がそのような谷と一致するときは、ユーザ端末が受信電力におけるどのようなステップ変化も見ないようにビーム切り替えが生じるべきときである。
【0031】
図4が、ビームが公称方向を指し示しているときに複数のユーザ端末において受信される電力を示すと仮定する。任意の特定のユーザ端末がビーム間で切り替えるべき時間は、その特定のユーザ端末について、受信電力が「谷」にあるときに基づく。ビームの照準方向が、たとえば、衛星のロール、ピッチ、またはヨーのために公称値からオフセットされた場合、なにが起こるのかを検討する。ユーザ端末において受信された電力が谷における電力レベルに対応する時間は、変更される。その結果、ユーザ端末108がルックアップテーブル内で指定された時間において異なるビームに切り替わることになっていた場合、ユーザ端末において受信された電力は、谷における電力レベルに対応しないであろう。結果は、切り替えにおける受信電力のステップ変化(および、典型的には減少)である。
【0032】
本明細書の残りの部分は、衛星の姿勢のオフセットまたは他の問題の結果として、予想される場所を正確に指し示していないビームを補正する方法を開示する。すなわち、任意のオフセットとタイミングの不一致との間の幾何学的および三角法的考察に基づく数学的関係が開発され、ユーザ端末における信号対雑音比を維持するために使用される。
【0033】
角度オフセットが小さい場合、タイミングの不一致も小さくなり、数学的関係は、線形関係によって近似され得る。結果として、タイミングの不一致は、3つの角度オフセットの線形関数として近似的に表され得る。3つの未知数、この場合には3つの角度オフセットについて解くために、少なくとも3つの方程式が必要とされる。すでに示したように、タイミングの不一致の1つの推定値は、3つの角度オフセットの線形関数として表され得る。これは1つの線形方程式を提供する。さらに2つのタイミングの不一致の推定値は、3つの未知の角度オフセットに関する値を導出するために必要な2つの追加の方程式を提供する。
【0034】
追加のタイミングの不一致の推定値は、3つの未知数に対する解の「最適な」セットを決定するために使用され得る。すなわち、未知数よりも多くの方程式を用いる線形方程式のシステムは、一般に「過剰決定系」と呼ばれる。以下で議論する共分散行列は、次いで、3つの未知の角度オフセットに対する解の「最適な」セットを見つけるために、線形方程式と共に使用され得る。
【0035】
図5Aおよび
図5Bは、ピッチを測定するための方法を示す。衛星106の経路内の単一のユーザ端末108は、時間の関数として予想受信電力のプロファイル522を(たとえば、
図1の衛星システムコアネットワーク102などから)受信する。ユーザ端末108は、受信電力を測定する。受信電力値は、
図5Bに示すように、曲線適合され、プロファイル522と比較される。ピーク電力523(予想値)とピーク電力525(測定値)との間の到着時間の差Xが得られる。この誤差時間量は、以下でさらに議論するように、ピッチ誤差の尺度である。
【0036】
図6A〜
図6Cは、ピッチとヨーとを一緒に測定するための方法を示す。この技法は、2つ以上のユーザ端末を必要とする。「ピーク」到着時間の同じ原理が使用される。したがって、衛星106の経路内の2つのユーザ端末108
1および108
2は、時間の関数として予想受信電力のそれぞれのプロファイル522
1および522
2を(たとえば、
図1の衛星システムコアネットワーク102などから)受信する。ユーザ端末は、受信電力を測定する。受信電力値は、
図6Bおよび
図6Cに示すように、曲線適合され、それぞれのプロファイル522と比較される。
図6Bは、ユーザ端末108
1に関するピーク電力523
1(予想値)とピーク電力525
1(測定値)との間の到着時間の差Aを示す。
図6Cは、ユーザ端末108
2に関するピーク電力523
1(予想値)とピーク電力525
1(測定値)との間の到着時間の差Bを示す。
【0037】
図7A〜
図7Dは、ピッチ誤差およびヨー誤差の決定についてのさらなる詳細を提供する。
図7Aは、4つのビームのフットプリントを示し、ピーク受信電力がユーザ端末において測定された時間がピーク受信電力に関する予測時間と一致するシナリオを示す。言い換えれば、姿勢の(または他の)誤差は、存在しない。
図7Bは、ヨー誤差を示す。到着時間誤差は、
図7BにおいてT_yawとして示される。
図7Cは、ヨー誤差とピッチ誤差の両方を示す。ピッチに関する到着時間誤差は、T_pitchとして示される。
図7Cからわかるように、2つのユーザ端末に関する到着時間誤差の平均は、ピッチを示し、2つのユーザ端末に関する到着時間誤差の差は、ヨーを示す。
【0038】
ここで
図7Dを参照すると、ピッチに関する時間誤差量(t_pitch)およびヨーに関する時間誤差量(t_yaw)からピッチ角θとヨー角Φとを決定するために、衛星およびユーザ端末の3D座標は、常に既知でなければならない。衛星上のGPSにより、衛星の高度(alt)および速度(v)は、知られる。ユーザ端末間の間隔「L」は、それらのGPSレシーバから知られる。小さいピッチ角およびヨー角について、以下のように、
図7Dに示すように、ピッチとヨーとを決定するために三角法が使用される。
ピッチ角θ=t_pitch*v/alt [1]
ヨー角Φ=t_yaw*v/L [2]
【0039】
図8A〜
図8Cは、ロール角βを測定するための方法を示す。この技法は、実用的な最小値として、nが6に等しいような、ユーザ端末108
i、i=1,nの小さいグループを必要とする。ユーザ端末は、衛星106の飛行方向に対して本質的に垂直な列に配置される。ある瞬間において、すべてのユーザ端末が電力測定値を報告する。
図7Bに示すように、電力測定値は、プロットされ得る。これらの点が接続された場合、それらは、特徴的なこぶ形状を有する曲線を定義する。次いで、曲線のピークが推定され得る。このプロットは、測定時の各ユーザ端末に関する予測電力のプロットと比較される。実際の電力数対予測電力数のシフト(左<->右)は、ロール角に相関する。小さいロール角について、以下のように、
図8Cに示すように、ロールを決定するために三角法が使用される。
ロール角β=距離/高度 [3]
【0041】
図9Aおよび
図9Bは、ロールと、ピッチと、ヨーとを同時に決定するための代替的な方法を示す。
図9Aに示すように、複数のユーザ端末108
i、i=1,nが、衛星106の経路を横切って一列に配置される。ユーザ端末は、代替的には、衛星106からすべてのビーム210を観測するのに十分な数のユーザ端末が存在する限り、ランダムに配置され得る。
図9Bに示すように、各ユーザ端末108
iは、ある時間期間の間、受信電力を測定する。
【0042】
再び
図4を参照すると、ビームパターンのコンピュータモデルは、すべての時点においてどのような電力が任意の特定のユーザ端末において受信されるのかを予測することができる。結果として、総電力誤差が、式[4]よって、すべての時間にわたり、すべてのユーザ端末にわたり、測定電力と予測電力との間の差の二乗の和として計算され得る。
電力誤差=Σ
all terminals and all times(power
meas-power
predicted)
2 [4]
コンピュータモデルは、その予測においてロール誤差、ピッチ誤差、およびヨー誤差の任意のおよびすべての値を含むように操作され得る。この問題を解決するための「力ずくの(brute force)」手法は、たとえば、0.1度の粒度で、ロール誤差、ピッチ誤差、およびヨー誤差のすべての組合せについて総電力誤差を計算し、次いで、最も小さい総電力誤差を有する場合を選択することである。測定ノイズがない場合、この方法は、約±0.05度の誤差を有することになる。
【0043】
測定ノイズの影響を軽減するために、当業者に知られている任意の数の推定方法が用いられ得る。1つの方法は、各ケースについてすべての隣接するケースの平均を計算し、次いで、式[5]により、結果として生じる演算から最も小さい電力誤差を選択することによって、総電力誤差データを「平滑化」することである。
【0045】
ここで、i、j、kは、それぞれ、ロール、ピッチ、およびヨーの特定の事例のインデックスである。
【0046】
得られた任意の測定値は、測定誤差を受けやすく、(たとえば、不適切な衛星の姿勢などによる)タイミングの不一致の各推定値は、そのような測定誤差によって損なわれる。誤差は、確率変数であり、当然、その値は、未知である。しかし、誤差の分散は、レシーバノイズの知識、および、受信信号から不一致推定値を導出するために使用された方法の分析から推定され得る。異なる不一致推定値は、一般に、統計的に独立ではない。実際は、なぜ特定の不一致推定値が相関し得るのか、多くの理由が存在する。不一致推定値の分散を計算するために使用される方法は、推定値間の相互相関を推定するためにも使用され得る。分散の推定値および相関の推定値は、まとめて「共分散行列」と呼ばれる。
【0047】
図10は、ビーム間を切り替えるときにユーザ端末における信号対雑音比(SNR)を維持するための方法1000を示す。方法1000は、照準誤差(すなわち、ロール、ピッチ、およびヨー)を決定するための上記で説明した技法を使用する。
【0048】
タスク1001に従って、ユーザ端末は、衛星ビームからの受信電力を測定する。タスク1002により、ユーザ端末は、測定結果をその位置(たとえば、GPS座標など)と共に、典型的には、必ずしもそうでないが、衛星システムコアネットワーク(たとえば、
図1参照)の一部であるデータ処理システムに送信する。参照された情報は、ユーザ端末から衛星に、衛星からゲートウェイアンテナに、ゲートウェイアンテナからデータ処理システムに送信される。ユーザ端末から受信された情報をゲートウェイアンテナに送信することに加えて、衛星はまた、タスク1003により、それ自体の位置データ(たとえば、GPS座標など)を取得し、データ処理システムに送信する。衛星に関するGPS座標は、ユーザ端末が受信電力を測定している時間期間の間、取得される。
【0049】
タスク1004によって、データ処理システムは、受信された電力測定値と、GPSデータのすべてとを取り込み、衛星のビーム照準推定値を計算する。タスク1005に従って、データ処理システムは、衛星照準誤差の最良推定値を決定する。
【0050】
この方法におけるこの時点で、処理は、2つの方法のうちのいずれか1つにおいて進むことができる。タスク1006aに従って、照準情報は、ゲートウェイアンテナを介して衛星に送信される。最後に、タスク1007aにおいて、衛星は、転送された情報に基づいてその姿勢を修正する。
【0051】
代替的には、処理は、タスク1006bで継続することができ、照準情報は、ユーザ端末に送信され、ユーザ端末は、そのビーム切り替えスケジュールを調整する。
【0052】
電力レベルが測定されるユーザ端末は、実際の顧客のもの(システムによって提供されるサービスに関するもの)であり得、または、それらは、システムのオペレータに属する端末であり得る。いくつかの代替実施形態では、ユーザ端末を使用するのではなく、電力レベルを測定し、記録する目的のために作成された特殊なレシーバ機器である。
【0053】
衛星の姿勢の偏差に加えて、タイミングの不一致の他の可能性のある原因が存在する。たとえば、個々のビームが機械的に位置ずれされ得る、ビーム形状の変動、ビーム強度の変動、衛星がその軌道上の規定位置に正確に位置しない場合がある、など。各々のそのような原因は、なんらかのパラメータ(たとえば、衛星軌道位置、ビーム方位角など)によって特徴付けられる。これらのパラメータのそれぞれについて、すべてのパラメータ(ヨー、ピッチ、およびロールを含む)と、特定の測定値に関するタイミングの不一致の値との間の数学的関係を導くために、ヨー、ピッチ、およびロールについては、同等のステップが実行され得る。次いで、その関係の線形近似が生成され、それは、すべての未知のパラメータにおいて1つの線形方程式をもたらす。少なくとも未知数と同数の線形方程式が存在するまで、追加の測定値が得られる。その方程式系は、次いで、すべての未知のパラメータに対する解を見つけるために解かれる。未知数よりも多くの方程式が存在する場合、「最適な」解を見つけるために、最小二乗法が使用され得る。このより複雑な分析について、ここでさらに詳細に説明する。
【0054】
図11aは、これらの効果のすべてのシミュレーションを、誇張したバージョンで示す。
図11bは、
図11aを生成するために使用されたのと同じパラメータからの、地上のビーム割り当て領域のマップを示す。ビーム間の境界は、隣接するビームからの受信された電力が等しい場所であり、したがって、ビーム切り替えが生じるべき場所である。
【0055】
ビーム割り当てマップが測定されたユーザ端末データに基づいて再計算され得る場合、ビーム切り替えスケジュールは、SNRを改善するために適切に修正され得る。このマップを計算するための1つの技法を以下に開示する。
【0056】
単一のビームの下で電力データを測定し記憶するユーザ端末のセットからのデータを考察する。各データ点は、電力zと、ユーザ端末位置と、収集時間tとを有する。誤差は、時間測定間隔(たとえば、分など)にわたって一定であり、衛星およびユーザ端末からのGPS座標を使用すると仮定すると、すべてのデータは、単一の時点に変換され得るが、異なる地点において収集され得る。類似は、各々が強度の時間履歴を有するピクセルの1次元アレイがスキャンされた物体の2次元画像を生成することができるオフィススキャナのそれである。したがって、各データ点は、ここでは、空間内の等価な[x,y,z]点であり、xおよびyは、もはやどのユーザ端末位置にも関連しない緯度座標および経度座標である。ビーム電力は、一般化された放物面の方程式によって密接に近似されると仮定する。
z=a1*x
2+a2*x+a3*y
2+a4*y+a5*x*y+a6 [6]
十分な[x,y,z]点(すなわち、最小6)を用いて、すべて式n[6]に基づく式のセットは、未知のa1、a2、a3、a4、a5、a6について最小二乗法によって解くために利用可能である。
状態=疑似逆(H)*z [7]
ここで、「状態」は、[a1 a2 a3 a4 a5 a6]の解であり、Hは、式[6]に基づく式のセットからのx
2、x、y
2、y、およびx*yデータのすべてを含む配列であり、zは、x、yデータに関連する電力データである。この解析は、一度に1つずつ、すべての衛星ビームに対して実行される。解析関数がすべてのビームについて再構成されると、ビーム割り当てマップは、計算され得る。ビーム割り当てマップは、衛星からの、地上の各位置に関するすべてのビーム電力を取り込み、次いで、最も高い受信電力を有するビームを選択することによって計算された。
【0057】
図12は、ビーム間の切り替え時にユーザ端末における信号対雑音比(SNR)を維持するための方法1200を示す。方法1200は、
図11Aおよび
図11Bに関連して上記で議論した技法を使用する。
【0058】
方法1200の最初の3つのタスク(1201〜1203)は、
図10に示す方法1000と同じである。
【0059】
タスク1204において、典型的には、必ずしもそうでないが、衛星システムコアネットワーク(たとえば、
図1参照)の一部であるデータ処理システムは、ユーザ端末から受信されたデータ(電力/時間/位置)を変換し、GPSデータを使用してそれを純粋な位置のフォーマットに変換する(すなわち、式[6]に付随する上記の議論を参照)。タスク1205において、データ処理システムは、各ビームに関する解析関数を得るために、最小二乗法などの回帰分析を使用する(すなわち、式[7]に付随する上記の議論を参照)。各衛星ビームについて解析関数が得られる。
【0060】
タスク1206に従って、解析関数からビーム割り当てマップが生成され、マップは、単に、地上の各位置におけるすべての関数の最大値である。タスク1207により、ビーム割り当てマップは、すべてのユーザ端末に送信される。最後に、各ユーザ端末は、マップに基づいてそのビーム切り替えスケジュールを調整する。
【0061】
方法1200は、ビーム照準誤差を補償するようにビーム切り替えスケジュールを調整することに向けられる。当業者は、本明細書で開示される技法が、各ビームに関する解析関数のピークの位置を見つけることによって、衛星がその姿勢誤差を補正することを可能にすることに適合され得ることを理解するであろう。地上のすべてのビームのピーク位置にわたる平均値は、衛星に供給され得るロール誤差、ピッチ誤差、およびヨー誤差を計算するために使用され得る。
【0062】
本開示は、少数の実施形態を説明すること、および、本開示を読んだ後で本発明の多くの変形例が当業者によって容易に考案され得ること、および、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定されるべきであることが理解されるべきである。