(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6695991
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ポット形状の組み込みボディを有するプラスチックタンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/077 20060101AFI20200511BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20200511BHJP
F02M 37/10 20060101ALI20200511BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20200511BHJP
B29C 49/54 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
B60K15/077
F02M37/00 301L
F02M37/00 301J
F02M37/10 G
B29C49/42
B29C49/54
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-541505(P2018-541505)
(86)(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公表番号】特表2019-502600(P2019-502600A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2016075742
(87)【国際公開番号】WO2017076707
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】102015221377.3
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518148098
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】アレックス エーラー
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ヨット.ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック クミュント
(72)【発明者】
【氏名】ペーター グラウアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット ミヒャエリス
(72)【発明者】
【氏名】マーティアス ベー.オルブリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アフマド チェハデ
(72)【発明者】
【氏名】メツ ハオウアラ
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0000252(US,A1)
【文献】
特開2014−141246(JP,A)
【文献】
米国特許第5931353(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0284872(US,A1)
【文献】
特表2012−501265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/077,
F02M 37/00,37/10,
B29C 49/42,49/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内部に配置された、ポット形状の組み込みボディ(24)を有するプラスチック燃料タンクにおいて、
リングボディ(26)が設けられており、該リングボディ(26)が組み込みボディ(24)の終端部分に配置されており、前記リングボディ(26)がタンク壁(10)内のアンダーカット部分内に係止され、そして前記組み込みボディ(24)が前記リングボディ(26)内に係止されており、かつ、前記組み込みボディ(24)が、燃料ポンプを収容するためのタンクモジュールとして形成されており、
前記アンダーカット部分が、少なくとも2つの分離されたセクションからなり、
前記リングボディ(26)が、前記タンク壁側の、外側を向いた保持リブ(28)を有し、前記保持リブ(28)の自由端部は、前記組み込みボディ(24)を前記リングボディ(26)内へ係止する前に、円上に位置し、前記円の直径dが、前記アンダーカット部分の自由な内径を定める円の直径Dよりも小さい、ことを特徴とするプラスチック燃料タンク。
【請求項2】
前記タンク壁(10)内の前記アンダーカット部分が、ブロー型(12)内へ挿入された型部分(16)によって形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のプラスチック燃料タンク。
【請求項3】
前記アンダーカット部分が、実質的に円形に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック燃料タンク。
【請求項4】
前記リングボディ(26)が、切り欠き(32)を備えた円筒状の壁部分を有し、前記切り欠き(32)内へ、前記組み込みボディ(24)の外壁部分に設けられた係止突出部(30)が係止可能である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチック燃料タンク。
【請求項5】
前記組み込みボディ(24)の、前記係止突出部(30)を有する外壁部分が、実質的に円筒状に形成されて、最大で、前記リングボディ(26)の前記切り欠き(32)を有する壁部分の厚みを引いた前記アンダーカット部分の自由な内径の直径Dとなる直径を有している、ことを特徴とする請求項4に記載のプラスチック燃料タンク。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプラスチック燃料タンク内へタンクモジュールを、組み込む方法であって、以下のステップ:
−タンク内側のタンク壁(10)にアンダーカット部分を形成するステップと、
−リングボディ(26)と前記組み込みボディ(24)を前もって取り付けるステップと、
−前記アンダーカット部分内に前記リングボディ(26)の保持リブ(28)を位置決めするステップと、
−前記リングボディ(26)内へ前記組み込みボディ(24)を圧入するステップであって、一方で前記組み込みボディ(24)が前記リングボディ(26)内へ、他方では前記リングボディ(26)が前記アンダーカット部分内へ係止される、ステップと、
を有する方法。
【請求項7】
前記リングボディ(26)を前記アンダーカット部分内へ係止する場合に、前記リングボディ(26)の前記保持リブ(28)を支持する部分が広げられて、前記保持リブ(28)が前記アンダーカット部分のアンダーカット内へ圧入される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組み込みボディ(24)を前記リングボディ(26)内へ係止する場合に、前記リングボディ(26)内へ導入される、前記組み込みボディ(24)の円筒状の壁部分に設けられた係止突出部(30)が、前記リングボディ(26)の相補的な壁部分内の切り欠き(32)内へ係止される、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ブロー型(12)内でタンクを成形する過程において、前記タンク壁(10)内の前記アンダーカット部分が外側から形成される、ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンダーカット部分が、前記ブロー型(12)内に配置されたスライダ(14、14')によって形成される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アンダーカット部分が、前記ブロー型(12)内へ挿入された型部分(16)によって形成される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内部に配置された、ポット形状の組み込みボディを有するプラスチックタンク、特にプラスチック燃料タンク及びプラスチックタンク内へ組み込みボディを、好ましくはプラスチック燃料タンク内へタンクモジュールを、組み込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクにおいては、いわゆるタンクモジュール、組み込みボディをタンク底に固定して配置する、要望が増えてきており、その組み込みボディは所定の燃料体積を収容し、かつ燃料ポンプはその中に配置されているので、タンク内の燃料充填状態が低い場合でも燃料ポンプが空のまま運転することがなく、あるいはポンプギャップが生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、組み込みボディをより確実なやり方で、かつ大きな組み立ての手間あるいは多大な付加コンポーネントなしで、タンク底に固定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、特許請求項1と10に記載された特徴の組み合わせが提案される。本発明の好ましい形態と展開が、従属請求項から明らかにされる。
【0005】
たとえば、タンク内に組み込みボディを配置する場合にプラスチック溶接プロセスを回避するために、本発明によれば、リングボディが設けられており、そのリングボディが組み込みボディの終端部分に配置されており、その場合にリングボディがタンク壁内のアンダーカット部分内へ、そして組み込みボディがリングボディ内へ係止されている。組み込みボディは、好ましくは、燃料ポンプを収容し、かつ燃料容積を貯蔵するためのタンクモジュールとして形成されている。
【0006】
タンク壁内にアンダーカット部分を形成することは、ブロー型内で、タンク壁へ外側から作用する、ブロー型内に移動可能に配置されたスライダによって行うことができる。代替的に、タンク壁内のアンダーカット部分は、ブロー型内へ挿入された型部分によって形成することができる。
【0007】
アンダーカット部分は、好ましくは実質的に円形に形成されており、かつ少なくとも2つの、好ましくは3つの別々のセクションからなることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態において、リングボディはタンク壁側の、外側へ向かう複数の保持リブを有しており、それらの保持リブの自由端部は、組み込みボディをリングボディ内へ係止する前は、アンダーカット部分の自由な内径を定める直径Dよりも小さい直径dを有する円上に位置している。さらに、リングボディは、切り欠きを備えた円筒状の壁部分を有することができ、その切り欠き内へ、組み込みボディの外壁部分に設けられた係止突出部が係止可能である。
【0009】
好ましくは、組み込みボディの係止突出部を有する外壁部分は、実質的に円筒状に形成されており、最大で、リングボディの切り欠きを有する壁部分の厚みを引いた、アンダーカット部分の自由な内径の直径Dとなる、直径を有している。上述した寸法が、互いに正確に調整されている場合に、組み込みボディをタンク壁にあそびなしで固定することが保証されている。
【0010】
組み込みボディをプラスチックタンク内へ、好ましくはタンクモジュールをプラスチック燃料タンク内へ、組み込むための本発明に係る方法は、以下のステップを有している:
−タンク内側のタンク壁(10)にアンダーカットを形成するステップと、
−リングボディ(26)と組み込みボディ(24)を前もって取り付けるステップと、
−アンダーカット部分内にリングボディ(26)の保持リブ(28)を位置決めするステップと、
−リングボディ(26)内へ組み込みボディ(24)を圧入するステップであって、一方で前記組み込みボディ(24)がリングボディ(26)内へ、他方ではリングボディ(26)がアンダーカット部分内へ係止される、ステップ。
【0011】
アンダーカット部分内へリングボディを係止する場合に、リングボディの保持リブを有する部分を押し広げて、保持リブをアンダーカット部分のアンダーカット内へ圧入することができる。さらに、組み込みボディをリングボディ内へ係止する場合に、組み込みボディの、リングボディ内へ導入される円筒状の壁部分に設けられた係止突出部が、リングボディの相補形状の壁部分に形成された切り欠き内へ係止される。
【0012】
好ましくは、タンク壁内のアンダーカット部分は、ブロー型内でタンクを成形する経過において外側から形成される。これは、一方で、ブロー型内に配置されたスライダによって、あるいは代替的にブロー型内へ挿入された型部分によって行うことができ、ブロー成形する際にその型部分の回りにタンク壁がアンダーカット部分を形成しながら成形される。スライダは、成形型内で新たな成形プロセス毎に新たに使用することができ、各新しいタンクのために新しい型部分が準備され、その型部分はタンク壁内に残留するが、もちろん型タンク内のスライダは、その後、取り除くことができるので、その構造は余り複雑ではない。
【0013】
以下、図面に図式的に示す実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】ブロー型内でスライダを用いてアンダーカット部分を形成することを図式的に示している。
【
図1b】ブロー型内でスライダを用いてアンダーカット部分を形成することを図式的に示している。
【
図2】ブロー型内でアンダーカット部分を形成するための型部分を示す斜視図であって、その場合に型部分がブロー型内へ挿入されて、外側からタンク壁へ作用する。
【
図3】タンク壁の内側に設けられたアンダーカット部分を図式的に示している。
【
図4】前もって組み立てられた状態において、組み込みボディとリングボディを図式的に示している。
【
図5】最終組立前にアンダーカット部分内に、
図4に示す組み込みボディとリングボディを位置決めすることを示している。
【
図6】アンダーカット部分内に取り付けた後の、
図4の組み込みボディとリングボディの最終位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ブロー型12内で、そのほかにおいては詳しく図示されないプラスチックタンクのタンク壁10内にアンダーカット部分を形成することを、簡単に示している。タンク壁10は、ブロー型12のかるくくぼんだ、ほぼ円形の領域内で成形されるので(
図1a)、くぼんだ底に対して側方に配置されたスライダ14、14’を互いに近づくように移動させることができ(
図1b)、かつその場合にくぼんだ領域の底から所定の間隔で、タンク壁10の流動するように加熱された材料が変形して、それによってアンダーカット部分を形成する。2つより多いスライダを使用することもまったく可能であって、それらは円の上に同一又は異なる周間隔で配置されており、かつアンダーカット部分のそれぞれ部分円形状の領域を成形する。
【0016】
代替的に、アンダーカット部分を形成するために、
図2に示す型部分16を使用することができる。この型部分は、中央の打ち抜き18を有するリング形状であって、その打ち抜きがアンダーカット部分の直径を定める。型部分16は、ブロー成形プロセスの開始前にブロー型内のアンダーカットを形成すべき箇所へ挿入される。タンク壁を成形する場合に、型部分16はブロー型とタンク壁の外側との間に配置されている。型部分16は、仮想のベース平面から距離をおいて、内側を向いた3つの部分円形状のリブ20、20’、20”を有しており、それらの回りをタンク壁の材料が流れ、タンク壁の内側にそれに応じた3つのアンダーカットが形成される(
図3を参照)。型部分は、ブロー整形後にほぼタンク壁内へ挿入されており、したがってタンクに残留する。したがってそれは再使用できない損失部分である。
【0017】
図3は、3つのアンダーカットセクション22、22’、22”によって形成されたアンダーカット部分を有するタンクの内壁を示しており、そのアンダーカット部分は、上述した2つの方法のいずれかによって形成することができる。
【0018】
図4は、タンクモジュールとして形成された組み込みボディ24とリングボディ26を示している。組み込みボディ24とリングボディ26は、あらかじめ取り付けられた状態又は部分的に取り付けられた状態にあって、その状態において組み込みボディ24の底側の部分が、リング内部に形成された空間内へ部分的に差し込まれており、かつ2つの部分は最大で摩擦結合でまとめられる。リングボディ26はその自由端部又は底側の端部の領域内に、外側を向いた多数のセグメント化された保持リブ28を有しており、その外接円は、図から明らかなように直径dを有しており、その直径はアンダーカットセクション22、22’、22”の内接円の直径Dよりも小さく、すなわち保持リブ28を有するリングボディ26の領域は、
図5に示すように、タンク壁のアンダーカットセクション22、22’、22”を通過してアンダーカット部分内へ導入される。もちろん、リングボディ26と組み込みボディ24は、別々にでも、この順序で次々とアンダーカット部分内へ取り付けられる。
【0019】
図5は、アンダーカット部分内へ導入された、組み込みボディ26とリングボディ26の組み合わせを示している。組み込みボディは、この中間位置からタンク壁10の方向へスライドされる。その場合にリングボディ26の保持リブ28の領域が広げられて、保持リブ28がアンダーカット内へ進入する。同時に組み込みボディ24の底側の部分の外側に設けられた係止突出部30が、リングボディ26の円筒状の壁内の相補形状の切り欠き32内へ係止されるので、
図6が示すように、リングボディ26がアンダーカット部分内に、そして組み込みボディ2がリングボディ内へ固定されている。アンダーカット部分、リングボディ26及び組み込みボディ24のそれぞれの寸法は、組み込みボディがタンク壁10に実質的にあそびなしで取り付けられるように、選択されている。
【0020】
要約すると、以下のことが確認される:本発明は、タンク内部に配置された、ポット形状の組み込みボディ24を有するプラスチックタンク、特にプラスチック燃料タンクと、それを形成する方法に関する。本発明によれば、リングボディ26が設けられており、そのリングボディは組み込みボディ24の終端部分に配置されており、その場合にリングボディ26がタンク壁10内のアンダーカット部分内に係止され、そして組み込みボディ24がリングボディ26内に係止されている。