特許第6696051号(P6696051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696051
(24)【登録日】2020年4月24日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】導波路構造体
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/06 20060101AFI20200511BHJP
   H01S 5/323 20060101ALI20200511BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20200511BHJP
   H01S 5/125 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01S5/06
   H01S5/323
   H01S5/22
   H01S5/125
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-517031(P2019-517031)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-530978(P2019-530978A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】GB2017052931
(87)【国際公開番号】WO2018060729
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】1616562.3
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505318606
【氏名又は名称】ルメンタム・テクノロジー・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・カーリー
(72)【発明者】
【氏名】セリーナ・ファーウェル
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−206476(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047634(WO,A1)
【文献】 特開2015−170750(JP,A)
【文献】 特開2014−182185(JP,A)
【文献】 特開2006−245344(JP,A)
【文献】 特開2004−037524(JP,A)
【文献】 特開平09−211240(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0321488(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0240818(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0286552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
G02B 6/12−6/14
G02F 1/00−1/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱的に制御可能な部分を有する導波路を含む導波路構造体であって、前記導波路構造体が、複数の層及び接地接点を含み、
前記層が、順に、
基板、
犠牲層、
下部クラッド層、
導波路コア層、及び、
導波路リッジを含む上部クラッド層、
を含み、
前記下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層が、前記導波路を形成し、前記導波路が、導波路コアを有し、
前記導波路構造体が、前記上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層を貫通し、前記熱的に制御可能な部分のほぼ全長に沿って前記導波路コアと平行に延びる連続的なビアを前記導波路リッジの一側のみに有し、
前記犠牲層が、前記熱的に制御可能な部分の全長に沿って前記導波路コアを超えて少なくとも前記ビアから延びる断熱領域を含み、前記犠牲層が、前記断熱領域の外側の犠牲材料と、前記断熱領域の内側の前記下部クラッド層及び基板を分離する断熱ギャップ又は断熱材料を含み、
前記接地接点が、前記導波路リッジの前記ビアとは反対側で前記上部クラッド層と電気的に接触しており、又は、
前記接地接点が、前記導波路リッジと電気的に接触している、導波路構造体。
【請求項2】
前記断熱領域が、前記ビアから前記導波路リッジを越えて少なくとも10ミクロンまで延びる、請求項1に記載の導波路構造体。
【請求項3】
前記導波路コア層の露出面に付けられたパッシベーション誘電体を備える、請求項1又は2に記載の導波路構造体。
【請求項4】
前記導波路リッジと熱的に接触しているヒータを備える、請求項1から3の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項5】
前記導波路コアの両側に配置された2つのヒータを備える、請求項1から4の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項6】
前記上部クラッド層と前記ヒータとの間に設けられたパッシベーション誘電体を含み、
前記パッシベーション誘電体が、前記導波路リッジを前記ヒータから電気的に絶縁するように構成される、請求項4又は5に記載の導波路構造体。
【請求項7】
前記ヒータが、ヒータ抵抗器である、請求項4から6の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項8】
前記犠牲層の厚さが、0.25ミクロンから2ミクロンの間である、請求項1から7の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項9】
前記断熱領域の幅が、20ミクロンから40ミクロンであり、前記幅が、前記導波路コアに垂直な方向及び前記犠牲層の平面において測定される、請求項1から8の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項10】
前記犠牲材料が、以下のうちの何れか1つ又は複数を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の導波路構造体:
ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、
ヒ化アルミニウムインジウム(AlInAs)、及び、
ヒ化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)。
【請求項11】
前記犠牲材料が、下層のAlInAs及び上層のInGaAsを含む、請求項1から10の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項12】
前記上部クラッド層が、前記導波路コアに隣接して配置された前記導波路リッジを含む、請求項1から11の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項13】
前記導波路リッジと前記ビアとの間に配置され、前記熱的に制御可能な部分のほぼ全長に沿って前記導波路リッジと平行に延びる支持リッジを含む、請求項12に記載の導波路構造体。
【請求項14】
前記上部クラッド及び導波路コア層が、導波路を含み、
前記導波路構造体が、前記導波路を前記上部クラッド及び導波路コア層の他の部分から絶縁する絶縁領域を前記導波路の両側にさらに備える、請求項1から11の何れか一項に記載の導波路構造体。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載の導波路構造体を備える波長可変レーザー。
【請求項16】
前記導波路の前記熱的に制御可能な部分が、分布ブラッグ反射器の一部を形成する、請求項15に記載のレーザー。
【請求項17】
前記導波路の前記熱的に制御可能な部分が、レーザーキャビティ内の位相制御器の一部を形成する、請求項15に記載のレーザー。
【請求項18】
熱制御導波路の製造方法であって、
前記方法が、
導波路構造体を提供する段階であって、前記導波路構造体が、複数の層及び接地接点を含み、前記層が、順に、
基板、
犠牲層、
下部クラッド層、
導波路コア層、及び、
導波路リッジを含む上部クラッド層、
を含み、
前記下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層が、前記導波路を形成し、前記導波路が、導波路コアを有し、
前記導波路構造体が、前記上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層を貫通し、前記熱的に制御可能な部分の全長に沿って前記導波路リッジと平行に延びる連続的なビアを前記導波路リッジの一側のみに有し、
前記接地接点が、前記導波路リッジの前記ビアとは反対側で前記上部クラッド層と電気的に接触し、又は、前記接地接点が、前記導波路リッジと電気的に接触するように、前記導波路構造体が配置されている、段階と、
前記熱的に制御可能な部分の全長に沿って前記導波路リッジを超えて少なくとも前記ビアから延びる前記犠牲層の少なくとも断熱領域から材料を除去するために、前記ビアを通して前記犠牲層に湿式エッチングを施し、前記断熱領域の前記下部クラッド層及び基板を分離するギャップを生成する段階であって、前記湿式エッチングが、前記犠牲層の材料をエッチングし、前記基板及び下部クラッド層の材料をエッチングしない段階と、
を含む、熱制御導波路の製造方法。
【請求項19】
前記導波路構造体が、前記導波路コア層の露出面に付けられたパッシベーション誘電体をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エッチング液が、以下の何れか1つである、請求項18又は19に記載の方法:
PO−H
SO−H
クエン酸−H
HNO
酒石酸−HNO
酒石酸−H、及び、
HF−H
【請求項21】
前記犠牲層が、以下のうちの何れか1つ又は複数を含む、請求項18から20の何れか一項に記載の方法:
ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、
ヒ化アルミニウムインジウム(AlInAs)、及び、
ヒ化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)。
【請求項22】
前記犠牲層が、AlInAsの層及びInGaAsの層を含む、請求項18から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記導波路構造体を提供する段階が、
前記導波路リッジを形成するために前記上部クラッド層をエッチングする段階と、
前記ビアを形成するために、前記上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層をエッチングする段階と、
を含む、請求項18から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記上部クラッド層をエッチングする段階と、前記上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層をエッチングする段階とが、乾式エッチング又は乾式エッチングと湿式エッチングとの組合せを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記上部クラッド層をエッチングする段階、及び、前記上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層をエッチングする段階の前に、
前記基板、
前記犠牲層、
前記下部クラッド層、
前記導波路コア層、及び、
前記上部クラッド層、
を順に含む層状構造体を製造する段階を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路構造体に関する。特に、本発明は、熱的に制御可能な部分を有する導波路を含む改良された導波路構造体、及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「光」が使用される場合、これは、一般に電磁放射線を指し、特に可視光を指すのではない。用語「レーザー」が使用される場合、これは、他に特定されない限り、半導体レーザーをいう。
【0003】
既知の電子的に同調されたレーザーと比較して、線幅性能を改善するために熱的に同調された半導体レーザー(例えば分布ブラッグ反射器(DBR)レーザー)が開発されている。各種の同調は、反射器などのレーザーの1つ又は複数の構成要素の屈折率を変更し、その構成要素に異なる波長を選択させることによって作用する。
【0004】
電子的に同調されたレーザーは、高レベルの光損失をもたらし、それは、レーザー閾値電流を増加させ、線幅を低下させる。さらに、電子的な同調は、非常に速い応答(ナノ秒のオーダー)を有するので、電子的な雑音は、レーザー出力に容易に結び付けられる。
【0005】
対照的に、熱的な同調は、光損失をそれほど増加させないので、線幅の低下は、ごく僅かである。さらに、熱的な同調の応答は、遥かに遅い(数十マイクロ秒のオーダー)ので、レーザー出力は、高周波ノイズ源から切り離される。熱は、導波路リッジの上を通るか又は導波路リッジとほぼ平行に延びる抵抗ヒータストライプを介して導波路光学コアに加えられる。ストライプは、パッシベーション誘電体によってリッジから電気的に絶縁される。
【0006】
典型的な電気的に同調されたレーザーは、図1Aに示されるような断面を有する。レーザーは、pクラッド101、導波路コア層102、nクラッド層103及び基板104を含む。pクラッド101は、屈折率を変化させるための電気的手段が取り付けられた導波路リッジ105を形成するためにエッチングされる(図示せず)。導波路リッジの下の導波路コア層の領域は、導波路コアを形成する。
【0007】
図1Bは、「埋め込みヘテロ構造」レーザーを示す。このレーザーは、pクラッド111、導波路コア層112、nクラッド層113及び基板114を含む。導波路リッジ115の代わりに、この導波路は、上部クラッド層及び導波路コア層内の構造体115によって形成され、それは、絶縁領域116によって分離される。埋め込みヘテロ構造レーザーの導波路コアは、構造体115内の導波路コア層の部分によって形成される。
【0008】
各レーザーは、ダイオードによって発生した熱を抽出するように設計された、十分に吸熱された材料の平面構造体である。しかしながら、これは、そのようなレーザー設計を熱的な同調に適応させるとき、必要な温度シフトを引き起こすのに必要とされる電力が非常に大きいことを意味する(例えば、50から70℃の温度変化に対して1W)。熱的な同調の効率を改善するために、導波路を支持構造体から熱的に分離することが望ましい。しかしながら、熱的に同調されていないレーザーの部分は、支持構造体と熱的に接触し、それらの温度を一定に保つことができるようにすべきである。
【0009】
これを達成するための既知の構造の例が図2A及び図2Bのリッジ導波路レーザーについて示されており、ここで、図2Aは、図2Bの線IIA−IIAに沿った構造体の断面図であり、図2Bは、平面図である。このレーザーは、上部pクラッド層201、導波路コア202及び下部nクラッド層203を有する。上部pクラッド層は、導波路リッジ204を形成するようにエッチングされる。犠牲材料の層205は、下部クラッド層と基板206との間に配置され、導波路リッジを含む部分の下に空隙208を残すために、この犠牲材料は、湿式エッチングプロセスによってエッチング除去される。湿式エッチングが犠牲材料に達することを可能にするために、ビア207は、上部クラッド層、導波路コア及び下部クラッド層に設けられる。明らかに、ビアが導波路を完全に取り囲むならば、それはもはや支持されないだろうから、導波路を基板の残りの部分に接続するためにビアに支持構造209が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの支持構造体は、導波路に不均一な熱特性を持たせ、すなわち、支持構造体の近くの導波路の部分は、支持構造体から離れた部分よりも容易に冷却するであろう。この不均一な加熱は、構成要素に沿った屈折率の均一な制御に影響を及ぼし、レーザーの性能を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、熱的に制御可能な部分を有する導波路を含む導波路構造体が提供される。導波路構造体は、複数の層及び接地接点を含む。これらの層は、順に、基板、犠牲層、下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層を含む。下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層は、導波路を形成し、導波路は、導波路コアを有する。導波路構造体は、上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層を貫通し、熱的に制御可能な部分のほぼ全長に沿って導波路リッジと平行に延びる連続的なビアを導波路リッジの一側のみに有する。導波路構造体はまた、熱的に制御可能な部分の全長に沿って導波路リッジを超えて少なくともビアから延びる犠牲層に断熱領域を有する。犠牲層は、断熱領域の外側の犠牲材料と、断熱領域の内側で下部クラッド層と基板とを分離する断熱ギャップ又は断熱材料とを含む。接地接点は、導波路コアのビアとは反対側で上部クラッド層と電気的に接触し、又は、導波路コアに隣接する上部クラッド層と電気的に接触している
【0012】
さらなる態様によれば、第1の態様の導波路構造体を備える波長可変レーザーが提供される。
【0013】
また更なる態様によれば、熱的に制御可能な導波路を製造する方法が提供される。複数の層及び接地接点を含む導波路構造体が提供される。これらの層は、基板、犠牲層、下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層をこの順に備える。下部クラッド層、導波路コア層及び上部クラッド層は、導波路を形成し、導波路は、導波路コアを有する。導波路構造体は、上部クラッド層、導波路コア層及び下部クラッド層を貫通し、熱的に制御可能な部分の全長に沿って導波路リッジと平行に延びる連続的なビアを導波路コアの一側のみに有する。接地接点が、導波路コアのビアとは反対側で上部クラッド層と電気的に接触し、又は、導波路コアに隣接する上部クラッド層と電気的に接触するように、導波路構造体が配置されている。熱的に制御可能な部分の全長に沿って導波路リッジを超えて少なくともビアから延びる犠牲層の少なくとも断熱領域から材料を除去するために、ビアを通して犠牲層に湿式エッチングが施され、断熱領域の下部クラッド層及び基板を分離するギャップを生成する。湿式エッチングは、犠牲層の材料をエッチングし、基板及び下部クラッド層の材料をエッチングしない。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、請求項2以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】典型的な電気的に同調されたレーザーの導波路構造体の断面図を示す。
図1B】典型的な電気的に同調されたレーザーの導波路構造体の断面図を示す。
図2A】熱的に同調されたレーザー用の既知の導波路構造体の断面図である。
図2B】熱的に同調されたレーザー用の既知の導波路構造体の平面図である。
図3A】熱的に同調されたレーザー用の例示的な導波路構造体の断面図である。
図3B】熱的に同調されたレーザー用の例示的な導波路構造体の平面図である。
図4図3の構造体の製造の段階を示す図である。
図5】加熱中の例示的な導波路構造体の典型的な温度プロファイルを示す図である。
図6】例示的な熱的に同調されたレーザーの断面図を示す。
図7】代替的で例示的な熱的に同調されたレーザーの断面図を示す。
図8】例示的な埋め込みヘテロ構造レーザーの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
別のアンダーカット構造体を以下に示す。この構造体は、より均一な加熱プロファイルを提供するので、従来技術の制限を克服する。さらに、この構造体は、製造プロセスの変動に対して非常に寛容であり、特定の実施形態では、従来のアンダーカットで可能であったよりも効果的な導波路構造体の接地を可能にする。
【0017】
例示的な構造体が図3A及び図3Bに示されており、図3Aは、図3Bの線IIIA−IIIAに沿った構造体の断面図であり、図3Bは、平面図である。図2の従来技術の構造体と同様に、この構造体は、導波路コア302を挟む上部pクラッド301と下部nクラッド303を有する。上部pクラッドは、導波路リッジ304を提供するためにエッチングされる。犠牲層305は、下部nクラッド303と基板306との間に設けられる。既知の構造体のように導波路の両側に一連のビアを設けるのではなく、単一のビア307が導波路の一方の側に設けられる。このビアは、それを横切る支持構造体を有さず、犠牲層305まで上部クラッド層301、導波路コア層302及び下部クラッド層303を貫通して延びる。ビアは、熱的に制御可能な部分の全長に沿って導波路リッジと平行に延在する。犠牲層をエッチングするためにエッチング液がビア内に供給され、その結果、導波路リッジを含む部分が片持ち式の配置で空隙308から張り出している。犠牲材料が少なくとも導波路を超えてエッチングされている限り、導波路が基板から断熱されることになるので、適切な熱特性を得ることができる。小さなオーバーエッチングは、ビアの長さに沿って均一になり、構造体の熱特性には殆ど影響しない。
【0018】
図4は、図3の構造体を製造するための製造プロセスを示す。層状構造体400は、基板層406、犠牲層405、下部クラッド層403、導波路コア層402及び導波路コア層401を順に備える。上部クラッド層は、例えばpクラッド材料である上部クラッド材料を含む。導波路コア層は、導波路コア材料を含む。下部クラッド層は、例えばnクラッド材料である下部クラッド材料を含む。犠牲層は、犠牲材料を含む。基板は、基板材料を含む。
【0019】
次に、層状構造体400をエッチング(4000、4001)して(例えば、乾式エッチング又は乾式エッチングと湿式エッチングとの組合せを用いて)中間構造体410を形成する。第1のエッチング4000は、上部クラッド層401をエッチングし、導波路リッジ404及びエッチングされた上部クラッド層411を形成する。中間構造体はまた、導波路コア層402を貫通してエッチングされたビア407と、エッチングされた導波路コア層412を残すための下部クラッド層403と、エッチングされた下部クラッド層413とを有する。ビアは、犠牲層まで、上部クラッド層、導波路コア層層及び下部クラッド層を貫通する。上部クラッド層401は、エッチング段階4000の間にビアの位置からエッチングされてもよく(図示されるように)、又は、エッチング段階4001の間に導波路コア層402及び下部クラッド層403と共にエッチングされてもよい。上部クラッド層が段階4000の間にエッチングされるだけである場合、エッチングされた上部クラッド層411の側部は、ビアの端部にはないかもしれない(図に示されるように)。
【0020】
次に、ビア407に導入された化学的選択湿式エッチングを用いて中間構造体をエッチングし(4002)、導波路構造体420を形成する。導波路リッジ404を越えて少なくともビア407から延びる領域から犠牲材料が除去され、その領域において下部クラッド層413と基板406との間に空隙408を残すように、湿式エッチングによって優先的に犠牲材料がエッチングされ、エッチングされた犠牲層415が形成される。空隙は、その領域を断熱性にする。導波路構造体420が、図3に示される導波路構造体と等価であることに留意されたい。
【0021】
エッチングプロセス4001及び4002は、別々に実行されてもよく、又は、中間構造体410は、他の手段によって作成され、湿式エッチングプロセス4002に提供されてもよい。
【0022】
図5は、図3に示す構造体の熱モデルを示す。熱が導波路リッジ304に加えられ、基板306は、一定の温度に保たれる。図3では、高密度のドットは、高温を表し、低密度のドットは、低温を表す。残りの犠牲層を介した熱の流れがはっきりと見て取れる。熱特性は、オーバーハングの幅及び厚さ、犠牲材料の選択、並びに犠牲材料の厚さによって異なる。
【0023】
典型的なオーバーハング幅は、20から50ミクロンである。典型的な犠牲材料の厚さは、0.25から2ミクロンである。上部クラッド層、下部クラッド層及び導波路コア層のそれぞれの典型的な厚さは、1から3ミクロンである。犠牲材料は、典型的には光学コアの下で1から2ミクロンである。断熱領域は、典型的には導波路リッジを超えて10から40ミクロン、例えば、導波路リッジを超えて30ミクロン延びる。オーバーハングの端部での熱的影響を回避するために、オーバーハングは、格子のようなレーザーの重要な特徴部から少なくとも20ミクロン、そのような特徴部から少なくとも50ミクロン、又は、そのような特徴から少なくとも100ミクロンほど導波路の軸の方向に延びることができる。
【0024】
犠牲層、エッチング液及びクラッド層に使用される材料の組合せは、エッチング液がクラッド層よりも犠牲材料をエッチングすることに対して強い選択性を有するように選択されるべきである。導波路コアがエッチング液に対して脆弱である場合、パッシベーション誘電体をビア内の導波路コアの露出面に付けて、導波路コアのエッチングを防ぐことができる。
【0025】
一例として、犠牲層に使用される犠牲材料は、InGaAs、AlInAs及びAlGaInAsのうちの1つ又は複数を含むことができ、クラッド層は、InPを含むことができる。犠牲層をエッチングするが、クラッド層をそれほどエッチングしないであろう可能性のあるエッチング液には次のものが含まれる:
・HPO−H
・HSO−H
・クエン酸−H
・HNO
・酒石酸−HNO
・酒石酸−H、及び、
・HF−H
【0026】
犠牲層中の犠牲材料は、導波路構造体の側部に適所に残り、熱的に制御可能なもの以外のデバイスの領域に適所に残ってもよい。これは、それらの領域が基板と熱的に接触することを確実にし、それは、それらの領域の温度制御を助ける。エッチングされた領域に空隙を残す代わりに、それは、熱絶縁材料、すなわち犠牲材料よりも熱絶縁性の材料で充填又は部分的に充填されてもよい。
【0027】
犠牲層に使用される犠牲材料は、2つ以上の個別層として形成されてもよいが、この場合、これら個別の層の全てが依然として集合的に犠牲材料を形成する。一構成では、犠牲材料は、InGaAsの最上層と共にAlInAsの下層を含むことができる。この特定の構成は、いくつかの利点を有する。後続の層のためのより良い成長形態は、AlInAsと比較してInGaAs上で達成可能であるように思われ、湿式エッチング及び乾式エッチングの手順の組合せを含む処理スキームが有利に使用され得る。材料の組合せは、利得部分の下に残っている層における熱伝導率の最適化を可能にする。InGaAsによる光吸収は、迷光(導波されていない光)を制御するのを助ける。代替として、InGaAsのみを犠牲層として使用することができる。
【0028】
図6は、さらなる構成要素を有する例示的な構造体を示す。上部及び下部クラッド601、603、導波路コア層602、導波路リッジ604、犠牲層605、ビア607並びに基板606は、図3の構造体のものと等価である。構造体は、パッシベーション誘電体609、ヒータ抵抗器610、及び、接地接点611、612をさらに含む。パッシベーション誘電体609は、導波路コアを湿式エッチングから遮蔽し、リッジ導波路をヒータ抵抗器610から電気的に絶縁する。パッシベーション誘電体は、これらの機能の一方又は両方を実行するように構成することができる。図4に戻って参照すると、パッシベーション誘電体は、湿式エッチング4002の導入前に中間構造体410に適用されてもよい。ヒータ抵抗器610は、レーザーの熱的な同調に必要とされるようにリッジ導波路に加熱を提供する。接地接点611、612は、導波路コアにおけるキャリア密度振動の減少及びフェルミ準位のクランピングを引き起こし、それは、ショットノイズの抑制、及び特に10MHzから100MHzの範囲における性能の改善をもたらす。p接地接点611が、先行技術のアンダーカット設計で可能であるよりも導波路リッジによりよく接続されているので、示された構造体のショットノイズは、図2に示された構造体に基づく等価構造体と比較して著しく低減される。接地接点及びヒータの他の構成が可能である。例えば、導波路リッジの上部に接地接点があり、リッジの両側にヒータがあるか、又は、リッジに隣接する上部クラッド層の一方又は両方のギャップ内に接地接点があってもよい。ヒータは、リッジの頂部、リッジの側部又はその両方と接触していてもよい。
【0029】
図7は、代替の例示的な構造体を示す。上部及び下部クラッド701、703、導波路コア層702、導波路リッジ704、犠牲層705、ビア707及び基板706は、図3の構造体のものと等価である。この構造体は、ヒータ抵抗器709、710、接地接点711、712及び支持リッジ713をさらに含む。接地接点711は、導波管リッジ704の頂部に配置され、ヒータ709、710は、リッジの両側に等距離に配置されている。パッシベーション誘電体714は、ヒータと半導体との間の電気的接触を防ぐために設けられている。パッシベーション誘電体714は、接地接点711と導波路リッジ704との間の接触を可能にするためのギャップを有する。この構成は、図6の構成と比べて改善された位相雑音を提供する。支持リッジ713は、機械分野で使用される「C−ビーム」又は「平行フランジチャネル」に似ている様式で、オーバーハングの機械的強度を向上させる。支持リッジ713の上部クラッド701は、機械的完全性を高めるために厚くすることができる。
【0030】
図6及び図7の追加の特徴は、任意の適切な配置で、又は本明細書で言及されているが、図面には提示されていない他の特徴と組み合わせることができる。例えば、支持リッジ713を設けずに、接地接点611、612と支持リッジ713の配置、又は、ヒータ抵抗器709、710と接地接点712の配置を有する構造体を設けてもよい。
【0031】
図8に示すように、同様の断熱構造体を埋め込みヘテロ構造レーザーに適用することができる。図8は、上部及び下部クラッド801、803、導波路コア層802、導波路804、絶縁領域808、犠牲層805、ビア807及び基板806を含む導波路構造体を示す。基板806、ビア807及び犠牲層805は、図6及び図7のものと等価である。導波路804及び分離領域808は、図1Bの構造体115及び分離領域116と等価である。接地接点811、812は、図6のものと対応する配置で示されているが、図7の配置と同等の配置であってもよい。ヒータは、導波路構造体804の周囲の任意の適切な位置に適用され得、例えば、ヒータ809、810について示されているように、導波路構造体の両側に適用される。ヒータ814とその下にある構成要素との間の電気的接触を防ぐために、パッシベーション誘電体が付けられている。十分な熱絶縁を提供するために、アンダーカットは、少なくとも導波路コアを超えて、すなわち導波路構造体804を超えて延びるべきである。
【0032】
上記に開示された導波路構造体は、熱的に制御可能な部分を有する任意の導波路に使用することができる。例えば、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザーでは、導波路構造体を後部DBR部及び/又は位相制御部に使用してこれらの部分の熱制御を改善することができる。
【符号の説明】
【0033】
101 pクラッド
102 導波路コア層
103 nクラッド層
104 基板
105 導波路リッジ
111 pクラッド
112 導波路コア層
113 nクラッド層
114 基板
115 導波路リッジ
116 絶縁領域
201 上部pクラッド層
202 導波路コア
203 下部nクラッド層
204 導波路リッジ
205 犠牲材料層
206 基板
207 ビア
208 空隙
209 支持構造
301 上部pクラッド
302 導波路コア
303 下部nクラッド
304 導波路リッジ
305 犠牲層
306 基板
307 ビア
308 空隙
400 層状構造体
401 導波路コア層
402 導波路コア層
403 下部クラッド層
404 導波路リッジ
405 犠牲層
406 基板層
407 ビア
408 空隙
410 中間構造体
411 上部クラッド層
412 導波路コア層
413 下部クラッド層
415 犠牲層
601 上部クラッド
602 導波路コア層
603 下部クラッド
604 導波路リッジ
605 犠牲層
606 基板
607 ビア
609 パッシベーション誘電体
610 ヒータ抵抗器
611 接地接点
612 接地接点
701 上部クラッド
702 導波路コア層
703 下部クラッド
704 導波路リッジ
705 犠牲層
706 基板
707 ビア
709 ヒータ
710 ヒータ
711 接地接点
712 接地接点
713 支持リッジ
714 パッシベーション誘電体
801 上部クラッド
802 導波路コア層
803 下部クラッド
804 導波路
805 犠牲層
806 基板
807 ビア
808 絶縁領域
809 ヒータ
810 ヒータ
811 接地接点
812 接地接点
4000 エッチング
4001 エッチング
4002 エッチング
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8