特許第6696400号(P6696400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696400
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】コイルボビンおよび横型トランス装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20200511BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20200511BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20200511BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20200511BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01F27/28 K
   H02M3/28 Y
   H01F30/10 C
   H01F27/29 J
   H01F17/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-206682(P2016-206682)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-67675(P2018-67675A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】畠山 剛
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−149464(JP,A)
【文献】 特開昭63−253607(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/041694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 30/10
H02M 3/28
H01Q 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鍔部間に、1次巻線と2次巻線の各巻線が巻回層として巻回された、上下方向に薄い断面矩形状の巻軸部を備えた横型トランス装置に用いられるコイルボビンにおいて、
前記巻線により形成される巻回層のうちの少なくとも一方が、前記巻軸部の一端側から他端側に向けて、線径1本以上の間隔を空けたスペース巻きとされ、最終巻回に係る巻線の少なくとも一部が前記鍔部に当接して巻回されるように構成された往路部と、
前記他端側から前記一端側に向けて、前記巻軸部の上下面側で前記巻線が、前記往路部の巻線同士の間のスペースに順次巻回されて、該往路部の巻線とほぼ同一間隔でスペース巻きとされるように、かつ前記巻軸部の両側面側で該往路部の巻線を乗り越えて交差するように構成された復路部からなることを特徴とするコイルボビン。
【請求項2】
請求項1に記載の、1次巻線と2次巻線のうちの少なくとも一方が、複数の巻回層を有し、前記1次巻線と前記2次巻線により形成される全ての巻回層のうち、少なくとも1層が、請求項1に記載のコイルボビンにおける往路部と復路部の構成を備えていることを特徴とするコイルボビン。
【請求項3】
前記巻軸部に巻回される巻線と、前記巻軸部および前記鍔部の境界線とのなす角度が、前記上下面側よりも前記両側面側の方が大きい値とされていることを特徴とする請求項1または2記載のコイルボビン。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項記載のコイルボビンと、前記巻軸部内に挿入され、該コイルボビンと組み合された磁性コアとを備えたことを特徴とする横型トランス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルボビンおよび横型トランス装置に関し、詳しくは、巻線がスペース巻きで巻回された低背構造のコイルボビンおよび横型トランス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トランスの上下方向に薄い形状、すなわち低背のものが要求されることが多い。例えば、基板等に面実装される小型のトランス装置においては、一般的に横型(横巻型)が採用され、実装面に対して直交する方向の上下方向を薄くした、扁平なコイルボビンを用いることにより低背化を達成している。
さらに、今日では、このような形状のコイルボビンに、巻線を上下方向にどの程度薄く巻回できるかが、低背化促進のポイントとなっている。
【0003】
一方、トランスにおいては、巻線枠に対し、往復で一層と数えた場合、その一層分にも満たない少ない巻数の仕様においては、往路は巻線を密に巻回し、復路は直線的に引き戻すようにしたタイプのものが知られている(特許文献1を参照)。
これに対し、上述した少ない巻数の仕様において、巻線枠に対し、往復ともに間隔を空けた疎の状態で巻線を巻回するスペース巻きと称されるタイプの巻線手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3829572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、低背化構造が要求されるトランス装置において、上述したような往復ともにスペース巻きにより巻線を巻回するタイプを採用する場合に、往路と復路の巻線が交差する部分において厚みが2層分となるので、これによって上下方向の厚みが増してしまう。特に、トランスにおいては、1次巻線や2次巻線を巻軸上に各々複数層重ねて巻回することが一般的で、低背化の促進が図れないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、往復スペース巻きで巻軸上に巻線を巻回する場合において、往路と復路の巻線の交差によって低背化を促進することができない、という状況を改善し得るコイルボビンおよび横型トランス装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明のコイルボビンは、
一対の鍔部間に、1次巻線と2次巻線の各巻線が巻回層として巻回された、上下方向に薄い断面矩形状の巻軸部を備えた横型トランス装置に用いられるコイルボビンにおいて、
前記巻線により形成される巻回層のうちの少なくとも一方が、前記巻軸部の一端側から他端側に向けて、線径1本以上の間隔を空けたスペース巻きとされ、最終巻回に係る巻線の少なくとも一部が前記鍔部に当接して巻回されるように構成された往路部と、
前記他端側から前記一端側に向けて、前記巻軸部の上下面側で前記巻線が、前記往路部の巻線同士の間のスペースに順次巻回されて、該往路部の巻線とほぼ同一間隔でスペース巻きとされるように、かつ前記巻軸部の両側面側で該往路部の巻線を乗り越えて交差するように構成された復路部からなることを特徴とするものである。
ここで、「横型トランス装置」とは、実装面に対して巻軸部の軸が平行に配されたトランスをいうものとする。
【0008】
また、上述した、1次巻線と2次巻線のうちの少なくとも一方が、複数の巻回層を有し、前記1次巻線と前記2次巻線により形成される全ての巻回層のうち、少なくとも1層が、上述したコイルボビンにおける往路部と復路部の構成を備えていることが好ましい。
【0009】
前記巻軸部に巻回される巻線と、前記巻軸部および前記鍔部の境界線とのなす角度が、前記上下面側よりも前記両側面側の方が大きい値とされていることが好ましい。
また、本願発明の横型トランス装置は、上述したいずれかのコイルボビンと、前記巻軸部内に挿入され、該コイルボビンと組み合された磁性コアとを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコイルボビンおよび横型トランス装置によれば、1つの巻回層について、往路部においては、線径1本以上の間隔を空けたスペース巻きとされ、復路部においては、巻軸部の上下面側で前記巻線が、前記往路部の巻線同士の間のスペースに順次巻回されて、該往路部の巻線とほぼ同一間隔でスペース巻きとされるように、かつ巻軸部の両側面側で該往路部の巻線を乗り越えるようにして交差するように構成されている。
【0011】
したがって、上下面においては往路部と復路部の巻線が互いの間に位置することで、上下方向に往路部と復路部の巻線が積み重ねられる状況を回避することができ、低背化を促進することができる。これに対し、両側面側で、往路部と復路部の巻線を交差させるようにしているので、この両側面方向には厚みが大きくなるが、この方向の厚みは、低背化を妨げる要因とはならない。
【0012】
さらに、上述したように、上下平面では、往路部のスペース巻きの巻線間に復路部の巻線が順次配されて、復路部も往路部と略同一間隔のスペース巻きとされる。これにより、巻線の間隔が等間隔に近くなり、かつ、上下面における当該巻回層と、その下層巻回層および上層巻回層との距離が縮まり、結合力の向上につながる。
近年、結合力の向上が強く求められており、その向上する値が僅か(例えば、1/1000)であっても、要求に応じた電気的特性の向上を図り得る。本発明の横型トランスにおいては、面積の広い上下面において、均等な巻線間隔としているので、向上させ得る電気的特性について、その効果は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るコイルボビンを、上面側から見た平面図(A)、および正面側から見た正面図(B)を示すものである。
図2】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順1)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図3】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順2)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図4】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順3)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図5】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順4)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図6】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順5)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図7】本発明の実施形態に係るコイルボビンにおいて、巻回軸に巻線を巻回する手法を説明するための図(手順6)であり、(A)は正面図、(B)は右側面図を示すものである。
図8】本発明の実施形態に係るコイルボビンに巻回される巻線が、巻軸の面に応じて巻回角が相違する態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るコイルボビンおよび横型トランス装置について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のコイルボビンは、例えば、車載用の横型トランス装置に適用される。
図1は、本発明の実施形態に係る横型トランスのコイルボビン20を、上面側から見た平面図(A)、および正面側から見た正面図(B)を示すものである。
【0015】
本実施形態のコイルボビン20は、一対の鍔部21A、B間に、1次巻線と2次巻線の各巻線50が巻回層として巻回された、上下方向に薄い断面矩形状の巻軸部22を備えたものであり、さらに鍔部21A、Bの下方に、複数本の面実装端子41A、B(本実施形態においては各々5つずつ設けられている)を有する、鍔部21A、Bと一体に設けられた端子台40A、Bを備えたものである。
【0016】
上記断面矩形状の巻軸部22は中空とされており、この中空部に図示されない磁性コアを挿入し、コイルボビンと組み合わせることにより(例えば、1対のE型コアの中脚同士を、その先端部が該中空部内で対向するように、かつ1対のE型コアの両側脚同士を巻軸部22の外部で互いに突き合わせることにより)、本実施形態に係る横型トランス装置を形成することができる。
【0017】
以下、上記コイルボビンの構成についてより詳しく説明する。
コイルボビン20は、図1に示されるような形状をなし、成形性、量産性、微細加工性、電気絶縁性、低廉性および機械的な強度等を考慮し、例えば、6,6−ナイロン等の絶縁性樹脂を用いて成形される。
【0018】
また、上記コイルを構成する巻線50は、1次巻線および2次巻線を構成するものであって、銅、アルミニウム等の線材を1層以上の絶縁皮膜によって積層被覆してなり、絶縁皮膜は、例えば、フッ素系樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂や、エチレン-プロピレン-コポリマー等の熱硬化性樹脂、さらには、他の種々の樹脂材料によって形成することができる。
【0019】
ところで、本実施形態のコイルボビン20においては、上面および下面では、巻線50が巻軸部22に往路、復路ともにスペース巻きにより巻回されている。
なお、図1(A)においては、巻軸部22に1次巻線が巻回されている様子が示されているが、この1次巻線上に、絶縁テープを介して同心円状に巻回される2次巻線(図5を参照)についても同様の態様で巻回される。
【0020】
すなわち、1つの巻線(巻回層)50について、往路の巻線50Aにおいては、線径1本以上の間隔を空けたスペース巻きとされる。一方、復路の巻線50Bにおいては、巻軸部22の上下面側で巻線50Bが、往路の巻線50A同士の間のスペースに順次巻回されて、往路の巻線50Aとほぼ同一間隔でスペース巻きとされるように、かつ巻軸部22の両側面側で往路の巻線50Aを乗り越えて交差するように構成されている。
なお、往路の巻線50Aの最終巻回は、図1(A)に示す鍔部21Bに沿うように(図1(A)で示された上面とは反対側の下面、および図1(B)で示された正面とは反対側の背面の各々の一部では鍔部21Bの壁面に当接するようにして)なされ、この後の巻回は復路の巻線50Bによる巻回となる。なお、以後の説明における両側面方向とは、図1(B)の紙面奥行方向を称するものとする。また、両側面側(両側面対向側)との用語も同様に図1(B)の紙面奥行側を称するものとする。
【0021】
このように構成されたことにより、上下面においては図1(A)に示すように、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bが互いの間に位置することで、上下方向に巻線50A、Bが積み重ねられる状況を回避することができ、低背化を促進することができる。
一方、両側面側では、図1(B)に示すように、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bを交差させるようにしているので、その分、両側面対向方向には厚みが大きくなる。しかし、このことによって低背化が阻害される虞はない。
【0022】
このように、横型トランス装置において往復スペース巻きを採用すると、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bが交差することが避けられないが、この交差を全て両側面側で行い、上下面では、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bの重なりがないように巻回することで低背化が促進されるようにしている。
【0023】
また、上下面においては、図1(A)に示されるように、往路のスペース巻きの巻線間に復路の巻線が順次配されて、復路も往路と同様のスペース巻きとされ、この結果、巻線の間隔が等間隔に近くなり、かつ、上下面における当該巻回層と、その下層巻回層および上層巻回層との距離が縮まり、巻線間の結合力を向上させることが可能となる。これにより、電気的特性を向上させることができる。
【0024】
図2図7((A)は正面図、(B)は右側面図)は、上述したコイルボビン20の巻軸部22に巻線50を巻回する手法を時系列的に表したものである。なお、この図2(A)、(B)〜図7(A)、(B)は巻線の巻回処理の流れを時系列的に説明するものであって、コイルボビン20の形状は模式的に描かれたものであるから、図1(A)、(B)のものとは、一致していない。また、巻線の巻回数についても相違している。
【0025】
また、この例においては、巻軸部22上に、まず第1の1次巻線が巻回され、テープを介して2次巻線が巻回され、さらにテープを介して第2の1次巻線が巻回される。なお、
2次巻線の場合は、1次巻線とは巻線巻回の向きが逆となる(1次巻線が鍔部21A側から巻き始められるのに対し、2次巻線は鍔部21B側から巻き始められる)が、その他は1次巻線と同様の巻回態様とされている。
【0026】
まず、第1の1次巻線の巻回は、図2に示すように、図示されない鍔部21A側の端子に接続された往路の巻線50Aが、鍔部21A側から鍔部21B側に向けて巻回される(手順1)。
次に、第1の1次巻線の巻回は、図3に示すように、鍔部21Bの壁面に沿って(一部当接して)巻回されて折り返され、復路の巻線50Bが、鍔部21B側から鍔部21A側に向けて巻回されて図示されない鍔部21A側の端子に接続される(手順2)。
これにより第1の1次巻線(1層目)の巻回処理が終了する。
【0027】
次に、図4に示すように、巻回処理が終了した第1の1次巻線の上に巻姿を維持するためのテープ70Aが巻回される(手順3)。
続いて、2次巻線の巻回は、図5に示すように、図示されない鍔部21B側の端子に接続された往路の巻線50Aが、鍔部21B側から鍔部21A側に向けて巻回され、鍔部21Aの壁面に沿って(一部当接して)巻回されて折り返され、復路の巻線50Bが、鍔部
21A側から鍔部21B側に向けて巻回されて図示されない鍔部21B側の端子に接続される。これにより2次巻線(2層目)の巻回処理が終了する(手順4)。
【0028】
次に、図6に示すように、巻回処理が終了した第1の1次巻線の上に巻姿を維持するためのテープ70Bが巻回される(手順5)。
続いて、第2の1次巻線の巻回は、図7に示すように、図示されない鍔部21A側の端子に接続された往路の巻線50Aが、鍔部21A側から鍔部21B側に向けて巻回され、鍔部21Bの壁面に沿って(一部当接して)巻回されて折り返され、復路の巻線50Bが、鍔部21B側から鍔部21A側に向けて巻回されて図示されない鍔部21A側の端子に接続される。これにより第2の2次巻線(3層目)の巻回処理が終了する(手順6)。
【0029】
図2図7からも明らかなように、上記例においては、第1の1次巻線、2次巻線、および第2の1次巻線の順に、3層に亘り巻軸上に巻回されているが、いずれの層も、往路復路ともにスペース巻きとし、両側面でのみ往路の巻線50Aと復路の巻線50Bが交差されるようにしているから、両側面対向方向には厚みが大幅に増加するが、上下方向には厚みの増加が抑えられている。これにより、横型トランスにおける低背化の促進を図ることができる。
なお、上述した例のように、最下層と最上層の双方を1次巻線とすることにより、巻線の結合力を向上させることができる。
【0030】
ところで、本実施形態においては、上述した両側面側でのみ、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bが交差するようにしているが、図1(A)、(B)からも明らかなように、巻軸部22の両側面側は上下面側と比べて面積が小さく、特に、トランスが小型のものであれば、面積の小さい、巻軸部22の両側面側で確実に交差処理を行なうことは必ずしも容易ではない。
そこで、このような交差処理の効率化を図るために、図8(A)、(B)に示すように、巻回角(巻線50と、巻軸部22および鍔部21A、Bの境界線23(との平行線80)とのなす角度)を上下面と両側面とで変えることが好ましい。なお、図8(A)、(B)においては、説明の便宜上、巻線50は巻線の中心線で表されている。
【0031】
すなわち、図8(A)に示すように、上下面における巻線50の巻回角αよりも、両側面における巻線50の巻回角βを大きくとるように巻回することが好ましい。これにより、両側面において、往路の巻線50Aと復路の巻線50Bを交差させる操作が容易となり、巻回工程の作業の効率化を図ることができる。
【0032】
なお、本発明のコイルボビンおよび横型トランス装置としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様のものを適用することができる。
例えば、上記実施形態のコイルボビンおよび横型トランス装置は、車載用各種電子機器等に用いるものとされているが、本発明のコイルボビンおよびトランス装置としては、その他の種々の装置に採用可能である。
【0033】
また、コイルボビンの形状としては上記実施形態のものに限られるものではなく、種々の形状やタイプのものに変更が可能である。また、巻軸部に巻回される巻線の巻回数についても、実施形態で示された数に限られるものではなく、要求される仕様に応じて適宜選択することができる。
【0034】
また、上記実施形態においては、1次巻線と2次巻線の何れもが、往復スペース巻きで両側面で往路と復路の巻線の交差が行われるようにしているが、1次巻線と2次巻線の一方のみが往復スペース巻きで両側面で往路と復路の巻線の交差が行われるようなタイプのものとしてもよい。
さらに、用途によっては、1次巻線と2次巻線の少なくとも一方を複数層とすることがある(上記実施形態においては、1次巻線が2層とされている)が、複数層とした1次巻線および/または2次巻線の一部の層を、往復スペース巻きで両側面で往路と復路の巻線の交差が行われるようなタイプのものとしてもよい。
【0035】
また、巻軸部に巻回される巻線の形状としては、丸線、平角線やその他の種々の形状のものとすることができる。
さらに、巻線の線径、および線材や絶縁皮膜の種類としては、種々のものを採用可能である。
【0036】
コアについても、前述したように、2つのE字状のコアに限られるものではなく、断面略日字形状を構成できるものであれば、他の形状のコア要素を組み合わせたものであってもよい。また、コア要素は2つに限られるものではなく、3つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
20 コイルボビン
21A、21B 鍔部
22 巻軸部
23 境界線
40A、40B 端子台
41A、41B 面実装端子
50 巻線
50A 往路の巻線
50B 復路の巻線
70A、70B テープ
80 平行線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8