特許第6696432号(P6696432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6696432光電変換素子、およびこれに用いられる有機半導体化合物
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  • 特許6696432-光電変換素子、およびこれに用いられる有機半導体化合物 図000125
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696432
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】光電変換素子、およびこれに用いられる有機半導体化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20200511BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20200511BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01L31/04 112A
   H01L31/04 112D
   H01L31/04 152G
   H01L31/04 152H
   H01L31/04 152B
   C08G61/12
【請求項の数】9
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2016-563575(P2016-563575)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2015081543
(87)【国際公開番号】WO2016093003
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-252026(P2014-252026)
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−509474(JP,A)
【文献】 特開2014−090114(JP,A)
【文献】 特開2014−103153(JP,A)
【文献】 特開2009−197218(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0092912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、前記活性層に、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、式(b1)〜(b16)、(b19)〜(b25)、(b28)のいずれかで表される共重合成分(2)とが交互に配置されたドナー−アクセプター型半導体ポリマーである高分子化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】
[式(1)中、
、Aは、それぞれ独立に、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環、炭化水素基もしくはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環、または、炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、もしくは、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。]
【化3】
[式(b1)〜(b16)、(b19)〜(b25)、(b28)中、R30〜R44、R46〜R55、R58はそれぞれ独立に、炭素数8〜30の炭化水素基を表し、A30、A31は、それぞれ独立に、A1、A2と同様の基を表し、jは1〜4の整数を表す。●は、式(1)で表される構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表すものとする。]
【請求項2】
前記高分子化合物のA1、A2が、それぞれ、下記式(a1)〜(a4)で表される基であることを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】
[式(a1)〜(a4)中、
21〜R23、R25、それぞれ独立に、炭素数8〜30の炭化水素基を表す。R24は水素原子、または炭素数8〜30の炭化水素基を表す。*はベンゾビスチアゾールのベンゼン環に結合する結合手を表す。]
【請求項3】
前記活性層に、さらにn型有機半導体化合物を含有する請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記n型有機半導体化合物が、フラーレンもしくはその誘導体である請求項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記カソードと前記活性層との間に電子輸送層を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記アノードと前記活性層との間にホール輸送層を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記カソードが透明電極である請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記アノードが金属電極である請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子において、特定のベンゾビスチアゾール骨格の構造単位を有する高分子化合物を含有する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体化合物は、有機エレクトロニクス分野において最も重要な材料の1つであり、電子供与性のp型有機半導体化合物や電子受容性のn型有機半導体化合物に分類することができる。p型有機半導体化合物やn型有機半導体化合物を適切に組合せることにより様々な素子を製造することができ、このような素子は、例えば、電子と正孔の再結合により形成される励起子(エキシトン)の作用により発光する有機エレクトロルミネッセンスや、光を電力に変換する有機薄膜太陽電池、電流量や電圧量を制御する有機薄膜トランジスタに応用されている。
【0003】
これらの中でも、有機薄膜太陽電池は、大気中への二酸化炭素放出がないため環境保全に有用であり、また簡単な構造で製造も容易であることから、需要が高まっている。しかしながら、有機薄膜太陽電池の光電変換効率はいまだ十分ではない。光電変換効率ηは短絡電流密度(Jsc)と開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)の積「η=開放電圧(Voc)×短絡電流密度(Jsc)×曲線因子(FF)」で算出される値であり、光電変換効率を高めるためには、開放電圧(Voc)の向上に加え、短絡電流密度(Jsc)や曲線因子(FF)の向上も必要となる。
【0004】
開放電圧(Voc)は、p型有機半導体化合物のHOMO(最高被占軌道)準位とn型有機半導体化合物のLUMO(最低空軌道)準位のエネルギー差に比例するものであるため、開放電圧(Voc)を向上するためには、p型有機半導体のHOMO準位を深くする(引き下げる)必要がある。
【0005】
また、短絡電流密度(Jsc)は、有機半導体化合物が受け取るエネルギーの量と相関するものであり、有機半導体化合物の短絡電流密度(Jsc)を向上するためには、可視領域から近赤外領域までの広い波長範囲の光を吸収させる必要がある。有機半導体化合物が吸収できる光のうち、もっとも低いエネルギーの光の波長(もっとも長い波長)が吸収端波長であり、この波長に対応したエネルギーがバンドギャップエネルギーに相当する。そのため、より広い波長範囲の光を吸収させるためにはバンドギャップ(p型半導体のHOMO準位とLUMO準位のエネルギー差)を狭くする必要がある。
【0006】
一方、p型有機半導体化合物の研究も盛んに行われている。例えば、非特許文献1には、4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b;2’,3’,−d]シロールと2,1,3−ベンゾチアジアゾールの共重合体が提案されている。しかし、非特許文献1に記載のp型有機半導体化合物は、HOMO準位が十分に深くない場合がある。また、非特許文献2には、ベンゾジチオフェン骨格を有するp型有機半導体化合物が提案されている。しかし、非特許文献2に記載のp型有機半導体化合物は、合成法の問題から導入できる骨格や置換基が限定される。
また、特許文献1、2では、それぞれベンゾビスチアゾール骨格を有する化合物が提案されているが、変換効率が明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−238530号公報
【特許文献2】特開2010−053093号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jianhui Hou、他4名、「Synthesis, Characterization, and Photovoltaic Properties of a Low Band Gap Polymer Based on Silole-Containing Polythiophenes and 2,1,3-Benzothiadiazole」 Journal of the American Chemical Society, 2008, 130, 16144-16145.
【非特許文献2】Latian Dou、他8名、「Systematic Investigation of Benzodithiophene- and Diketopyrrolopyrrole-Based Low-Bandgap Polymers Designed for Single Junction and Tandem Polymer Solar Cells」 Journal of the American Chemical Society, 2012, 134, 10071-10079.
【非特許文献3】福地栄一郎、他5名、 「ローバンドギャップポリマーPCBTBTを用いた逆型有機薄膜太陽電池を用いた評価と酸化による特性変動」太陽エネルギー, 2012, 38, 53-58.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高い開放電圧を発現する光電変換素子の提供にある。また、光電変換素子の能力は、有機半導体化合物の種類や組み合わせ、光電変換素子の構成等に依存し、有機半導体化合物ではHOMOと開放電圧とが密接に関連していることから、より多様な骨格や置換基を導入できる高分子化合物を用いた光電変換素子を提供することにある。近年は非特許文献3に示されるように安定性の高さから基材側に電子を捕集する電極(カソード)有する逆型構成素子に注目が集まっており、素子構成の検討も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、変換効率の高い光電変換素子の作製のため、すなわち開放電圧(Voc)を向上しながら短絡電流密度(Jsc)を向上するためには、p型有機半導体化合物に広い波長の範囲の光を吸収させると同時にHOMO準位を適度に深くすることを見出した。そして、p型有機半導体化合物におけるHOMO準位と化学構造との相関に着目して鋭意検討を行った。その結果、特定の構造の高分子化合物を有する有機半導体化合物を用い、素子構造を検討することによって、HOMO準位やLUMO準位を適切な範囲に調整できるため、開放電圧(Voc)の高い光電変換素子を作製できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は基材と、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、前記活性層に、式(1)で表される特定のベンゾビスチアゾール骨格の構造単位を有する高分子化合物(以下、「高分子化合物(1)」ということがある。)を含有することを特徴とする。
【化3】

[式(1)中、
、Aは、それぞれ独立に、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環、炭化水素基もしくはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環、または、炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、もしくは、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。]
上記式(1)において、A1、A2は、それぞれ、下記式で表される基であることが好ましい。
【0012】
【化4】

[式(a1)〜(a5)中、R21〜R23、R25〜R26は、それぞれ独立に、炭素数8〜30の炭化水素基を表す。R24は水素原子、または炭素数8〜30の炭化水素基を表す。*はベンゾビスチアゾールのベンゼン環に結合する結合手を表すものとする。]
【0013】
本発明の光電変換素子に用いられる高分子化合物(1)は、ドナー−アクセプター型半導体ポリマーであることが好ましい。
【0014】
前記活性層には、さらにn型有機半導体化合物を含有することが好ましく、n型半導体化合物はフラーレンもしくはその誘導体であることが好ましい。
【0015】
本発明の光電変換素子は、前記カソードと前記活性層との間に電子輸送層を有することが好ましく、前記アノードと前記活性層との間にホール輸送層を有することが好ましい。また、前記カソードが透明電極であることが好ましく、前記アノードが金属電極であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に用いられる高分子化合物(1)は、深いHOMO準位を有し、可視領域から近赤外領域の幅広い光を吸収できる。これにより、図1に示される素子構造をもつ光電変換素子は高い開放電圧(Voc)得ることが可能となり、高い光電変換効率ηを得ることが可能である。また、本発明に用いられる高分子化合物(1)を構成するベンゾビスチアゾール骨格には、置換基として様々な置換基を導入することが可能であり、光電変換素子特性に様々な影響を与える材料の特性(結晶性、製膜性、吸収波長)を制御できる。素子構成としては基板側に電子を捕集する逆型構成素子が作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は基材と、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された光電変換素子の素子構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
【0019】
・ 光電変換素子
本発明に係る光電変換素子は基材と、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、前記活性層は、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物を含有する。
【化5】
【0020】
本発明の一実施形態に係る光電変換素子(VII)を図1に示す。図1は一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を表すが、本発明に係る光電変換素子が図1の構成に限られるわけではない。
【0021】
光電変換素子(VII)は、基材(I)と、電極(カソード)(II)と、活性層(IV)と、電極(アノード)(VI)と、がこの順に配置された構造を有する。光電変換素子(VII)はさらに、バッファ層(電子輸送層)(III)とバッファ層(ホール輸送層)(V)とを有することが好ましい。すなわち光電変換素子(VII)は、基材(I)と、カソード(II)と、バッファ層(電子輸送層)(III)と、活性層(IV)と、バッファ層(ホール輸送層)(V)と、アノード(VI)と、がこの順に配置された構造を有することが好ましい。もっとも、本発明に係る光電変換素子は、電子輸送層(III)およびホール輸送層(V)を有さなくてもよい。以下、これらの各部について説明する。
【0022】
<1.1 活性層(IV)>
活性層(IV)は光電変換が行われる層を指し、通常、単独もしくは複数のp型半導体化合物と単独もしくは複数のn型半導体化合物を含む。p型半導体化合物の具体例として、高分子化合物(1)および、後述する有機半導体化合物(10)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明では、p型半導体化合物として、少なくとも高分子化合物(1)を用いることが必要である。光電変換素子(VII)が光を受けると、光が活性層(IV)に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気がカソード(II)及びアノード(VI)から取り出される。本発明においては、高分子化合物(1)がp型半導体化合物として用いられる。
【0023】
活性層(IV)の膜厚は、特に限定されないが、70nm以上が好ましく、より好ましくは90nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、活性層(IV)の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは750nm以下であり、さらに好ましくは500nm以下である。
【0024】
活性層(IV)の膜厚が70nm以上であることにより、光電変換素子(VII)の変換効率の向上が期待できる。また、活性層(IV)の膜厚が70nm以上であることは、膜内の貫通短絡を防止できる点でも好ましい。活性層(IV)の厚さが1000nm以下であることは、内部抵抗が小さくなり、かつ電極(II),(VI)間の距離が離れすぎず電荷の拡散が良好となるために好ましい。さらには、活性層(IV)の膜厚を70nm以上、1000nm以下にすることは、活性層(IV)を作製するプロセスにおける再現性が向上する点で好ましい。
【0025】
一般的に、活性層を厚くすればするほど、電極、又は電子輸送層若しくはホール輸送層までの、活性層中で発生した電荷の移動距離が増加することから、電荷の電極への輸送が妨げられる。このように、活性層(IV)が厚い場合、光を吸収できる領域は増えるものの、光吸収によって生じた電荷の輸送が困難であることから、光電変換効率が低下する。
そのため、活性層(IV)の膜厚を70nm以上500nm以下にすることは電圧確保、変換効率向上の点からも好ましい。
【0026】
[1.1.1 活性層の層構成]
活性層(IV)の層構成としては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが積層された薄膜積層型、又はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型等が挙げられる。なかでも、光電変換効率がより向上しうる点で、バルクヘテロ接合型の活性層が好ましい。
【0027】
バルクヘテロ接合型の活性層
バルクヘテロ接合型の活性層は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合された層(i層)を有する。i層はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離した構造を有し、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)が電極まで輸送される。
【0028】
i層に含まれるp型半導体化合物のうち、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上が、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、後述する共重合成分(2)からなる高分子化合物(1)である。該高分子化合物(1)はp型半導体化合物として好適な性質を有するため、p型半導体化合物に該高分子化合物(1)のみを含むことが特に好ましい。
【0029】
i層中でのp型半導体化合物とn型半導体化合物との重量比(p型半導体化合物/n型半導体化合物)は、良好な相分離構造を得ることにより光電変換効率を向上させる観点から、0.5以上が好ましく、より好ましくは1以上であり、一方、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、特に好ましくは2以下である。
【0030】
i層は、塗布法及び蒸着法(例えば共蒸着法)を含む任意の方法により形成することができるが、塗布法を用いることは、より簡単にi層を形成できるため好ましい。本発明に係る高分子化合物(1)は溶媒に対する溶解性を有するため、塗布成膜性に優れる点で好ましい。塗布法によりi層を作製する場合、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布すればよい。p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液は、p型半導体化合物を含む溶液とn型半導体化合物を含む溶液をそれぞれ調製後混合して作製してもよく、後述する溶媒にp型半導体化合物及びn型半導体化合物を溶解して作製してもよい。
【0031】
塗布液中のp型半導体化合物とn型半導体化合物との合計濃度は、特に限定されないが、十分な膜厚の活性層を形成する観点から塗布液全体に対して1.0重量%以上であることが好ましく、半導体化合物を十分に溶解させる観点から塗布液全体に対して4.0重量%以下であることが好ましい。
【0032】
塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、フレキソ法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。塗布液の塗布後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい
【0033】
塗布液の溶媒としては、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を均一に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0034】
なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等のケトン類;又は、エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類である。
【0035】
バルクヘテロ接合型の活性層を塗布法によって形成する場合、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液に、さらに添加剤を加えてもよい。バルクヘテロ接合型の活性層におけるp型半導体化合物とn型半導体化合物との相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の乖離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程等に対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。塗布液に、p型半導体化合物又はn型半導体化合物と親和性の高い添加剤を含有することにより、好ましい相分離構造を有する活性層が得られ、光電変換効率が向上しうる。
【0036】
添加剤が活性層(IV)から失われにくくなる点で、添加剤は固体もしくは高沸点であることが好ましい。
【0037】
具体的には、添加剤が固体である場合には、添加剤の融点(1気圧)は通常35℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上である。
【0038】
添加剤が液体である場合の沸点(1気圧)は80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上である。
【0039】
添加剤の例としては、固体であれば炭素数10以上の脂肪族炭化水素類又は芳香族化合物等が挙げられる。具体的な例としてはナフタレン化合物が挙げられ、特にナフタレンに1以上8以下の置換基が結合した化合物が好ましい。ナフタレンに結合している置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基又は芳香族基が挙げられる。
【0040】
添加剤が液体であれば炭素数8以上の脂肪族炭化水素類又は芳香族化合物等が挙げられる。具体的な例としてはジハロゲン炭化水素化合物が挙げられ、特にオクタンに1以上8以下の置換基が結合した化合物が好ましい。オクタンに結合している置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、又は芳香族基が挙げられる。添加剤の別の例としては、4以上6以下のハロゲン原子が結合しているベンゼン化合物が挙げられる。
【0041】
p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液に含まれる添加剤の量は、塗布液全体に対して0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。また、塗布液全体に対して10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。添加剤の量がこの範囲にあることにより、好ましい相分離構造が得られうる。
【0042】
[1.1.2 p型半導体化合物]
活性層(IV)は、p型半導体化合物として、高分子化合物(1)を少なくとも含有する。
【0043】
(高分子化合物(1))
本発明の光電変換素子に用いられる高分子化合物(以下、「高分子化合物(1)」ということがある。)は、p型半導体化合物の1種であり、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位(以下、「式(1)で表される構造単位」ということがある。)を有する。
【0044】
【化6】
【0045】
[式(1)中、
、Aは、それぞれ独立に、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環、炭化水素基もしくはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環、または、炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、もしくは、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。]
【0046】
本発明の光電変換素子に用いられる高分子化合物は、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する。そのため、HOMO準位を深くしながらバンドギャップを狭めることができ、光電変換効率を高めるのに有利である。高分子化合物(1)は、好ましくは、式(1)で表される構造単位と、後述する共重合成分(2)とを共重合したドナー−アクセプター型半導体ポリマーである。ドナー−アクセプター型半導体ポリマーは、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが交互に配置した高分子化合物を意味する。ドナー性ユニットは、電子供与性の構造単位を意味し、アクセプター性ユニットは、電子受容性の構造単位を意味する。前記ドナー−アクセプター型半導体ポリマーは、式(1)で表される構造単位と、後述する共重合成分(2)とが交互に配置した高分子化合物であることが好ましい。このような構造とすることで、p型半導体化合物として好適に用いることができる。
【0047】
式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位では、A1、A2は互いに同一であっても異なっていてもよいが、製造が容易である観点からは、同一であることが好ましい。
式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位においては、A1、A2は、それぞれ、下記式(a1)〜(a5)で表される基であることが好ましい。A1、A2が下記式(a1)〜(a5)で表される基であると、短波長の光を吸収することができるため、より一層光電変換効率を高めることができる。
【0048】
【化7】
【0049】
[式(a1)〜(a5)中、R21〜R23、R25〜R26は、それぞれ独立に、炭素数8〜30の炭化水素基を表す。R24は水素原子、または炭素数8〜30の炭化水素基を表す。*はベンゾビスチアゾールのベンゼン環に結合する結合手を表すものとする。]
【0050】
24としては、炭素数8〜30の炭化水素基が好ましい。
21〜R26の炭素数8〜30の炭化水素基は、分岐を有する炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは分岐鎖状飽和炭化水素基である。R21〜R26の炭化水素基は、分岐を有することにより、有機溶剤への溶解度を上げることができ、適度な結晶性を得ることができる。A1、A2の炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物(1)の合成が困難となることがある。そのため、A1、A2の炭化水素基の炭素数は、好ましくは8〜25であり、より好ましくは8〜20であり、さらに好ましくは8〜16である。
【0051】
21〜R26で表される炭素数8〜30の炭化水素基としては、例えば、n−オクチル基、1−n−ブチルブチル基、1−n−プロピルペンチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n−ノニル基、1−n−プロピルヘキシル基、2−n−プロピルヘキシル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、1−メチルオクチル基、2−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、2,3,3,4−テトラメチルペンチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n−デシル基、1−n−ペンチルペンチル基、1−n−ブチルヘキシル基、2−n−ブチルヘキシル基、1−n−プロピルヘプチル基、1−エチルオクチル基、2−エチルオクチル基、1−メチルノニル基、2−メチルノニル基、3,7−ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n−ウンデシル基、1−n−ブチルヘプチル基、2−n−ブチルヘプチル基、1−n−プロピルオクチル基、2−n−プロピルオクチル基、1−エチルノニル基、2−エチルノニル基等の炭素数11のアルキル基;n−ドデシル基、1−n−ペンチルヘプチル基、2−n−ペンチルヘプチル基、1−n−ブチルオクチル基、2−n−ブチルオクチル基、1−n−プロピルノニル基、2−n−プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n−トリデシル基、1−n−ペンチルオクチル基、2−n−ペンチルオクチル基、1−n−ブチルノニル基、2−n−ブチルノニル基、1−メチルデシル基、2−メチルデシル基等の炭素数13のアルキル基;n−テトラデシル基、1−n−ヘプチルヘプチル基、1−n−ヘキシルオクチル基、2−n−ヘキシルオクチル基、1−n−ペンチルノニル基、2−n−ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n−ペンタデシル基、1−n―ヘプチルオクチル基、1−n−ヘキシルノニル基、2−n−ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n−ヘキサデシル基、1−n−オクチルオクチル基、1−n−ヘプチルノニル基、2−n−ヘプチルノニル基、2−n−ヘキシルデシル基等の炭素数16のアルキル基;n―ヘプタデシル基、1−n−オクチルノニル基等の炭素数17のアルキル基;n−オクタデシル基、1−n−ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n−ノナデシル基等の炭素数19のアルキル基;n−エイコシル基、n−オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n−ヘンエイコシル基等の炭素数21のアルキル基;n−ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n−トリコシル基等の炭素数23のアルキル基;n−テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;等が挙げられる。好ましくは炭素数8〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8〜16のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数8〜16の分岐鎖状アルキル基であり、特に好ましくはn−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−n−ブチルオクチル、2−n−ヘキシルデシル基である。R21〜R25が上記の基であると、高分子化合物(1)の、有機溶剤への溶解度が向上し、適度な結晶性を有するため好ましい。
【0052】
式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位は、A、Aが、それぞれ独立に、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環、炭化水素基もしくはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環、または、炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、もしくは、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいフェニル基であることが好ましい。特に、A1、A2の基が下記式(a1)〜(a5)で表される基であると、式(1)で表される構造単位は高い平面性を有することから、効率的にπ−πスタッキングが形成されるため、変換効率を一層向上できるため、より好ましい。
【0053】
【化8】
【0054】
[式(a1)〜(a5)中、*は結合手を表し、R21〜R23、R25〜R26は、それぞれ独立に、炭素数8〜30の炭化水素基を表す。R24は水素原子、または炭素数8〜30の炭化水素基を表す。*は、ベンゾビスチアゾールのベンゼン環に結合する結合手を表す。]
【0055】
1、A2は、式(1)で表される構造単位全体として平面性に優れる観点から、式(a1)、または(a3)で表される基がより好ましく、式(a1−1)〜(a1−5)、(3−1)〜(3−10)で表される基がさらに好ましく、式(a1−1)〜(a1−3)、(a3−1)〜(a3−6)で表される基が特に好ましい。式中、*はベンゾビスチアゾールのベンゼン環に結合する結合手を表す。
【0056】
【化9】
【0057】
式(1)で表される構造単位としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0058】
【化10-1】
【0059】
【化10-2】
【0060】
【化10-3】
【0061】
(共重合成分(2))
本発明に用いられる高分子化合物(1)は、前記式(1)で表される構造単位と組合せて、共重合成分(2)を含有することが好ましい。共重合成分(2)は、ドナー−アクセプター型半導体ポリマーを形成する構造単位(ドナー性ユニット、アクセプター性ユニット)として、従来公知の構造単位を用いることができる。特に限定されないが、具体的には、以下の構造単位を挙げることができ、これらを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0062】
【化11】
【0063】
[式(b1)〜(b28)中、R30〜R58は、それぞれ独立に、R21〜R26の炭素数8〜30の炭化水素基と同様の基を表し、A30、A31は、それぞれ独立に、A1、A2と同様の基を表し、jは1〜4の整数を表す。●は、式(1)で表される構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表すものとする。]
【0064】
なお、上記式(b1)〜(b15)で表される基は、アクセプター性ユニットとして作用する基であり、式(b17)〜(b28)で表される基は、ドナー性ユニットとして作用する基である。式(b16)で表される基は、A30、A31の種類により、アクセプター性ユニットとして作用することもあれば、ドナー性ユニットとして作用することもある。
【0065】
本発明に用いる高分子化合物(1)中の式(1)で表される構造単位の繰り返し比率は、特段の制限は無いが、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0066】
高分子化合物(1)中の共重合成分(2)の繰り返し単位の比率は、特段の制限は無いが、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0067】
本発明に係る高分子化合物(1)における、繰り返し単位の式(1)で表される構造単位と共重合成分(2)との配列状態は、交互、ブロック及びランダムのいずれでもよい。すなわち、本発明に係る高分子化合物(1)は、交互コポリマー、ブロックコポリマー、及びランダムコポリマーのいずれでもよい。好ましくは交互に配列しているものである。
【0068】
高分子化合物(1)中、式(1)で表される構造単位および共重合成分(2)は、それぞれ1種のみを含んでいてもよい。また、式(1)で表される構造単位を2種以上含んでいてもよいし、また、共重合成分(2)を2種以上含んでいてもよい。式(1)で表される構造単位および共重合成分(2)の種類に制限はないが、通常8以下、好ましくは5以下である。特に好ましくは式(1)で表される構成単位のうち1種と、共重合成分(2)のうち1種類を交互に含んでいる高分子化合物(1)であり、最も好ましくは式(1)で表される構成単位1種のみと、共重合成分(2)1種類のみを交互に含んでいる高分子化合物(1)である。
【0069】
高分子化合物(1)の好ましい具体例を以下に示す。しかしながら、本発明に係る高分子化合物(1)は以下の例示に限られない。以下の具体例において、R30〜R49はn−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−n−ブチルオクチル、2−n−ヘキシルデシル基を表す。高分子化合物(1)が複数の繰り返し単位を含む場合は、各繰り返し単位の数の比率は任意である。
【0070】
【化12-1】
【0071】
【化12-2】
【0072】
【化12-3】
【0073】
【化12-4】
【0074】
【化12-5】
【0075】
【化12-6】
【0076】
【化12-7】
【0077】
【化12-8】
【0078】
【化12-9】
【0079】
【化12-10】
【0080】
【化12-11】
【0081】
【化12-12】
【0082】
【化12-13】
【0083】
【化12-14】
【0084】
【化12-15】
【0085】
【化12-16】
【0086】
【化12-17】
【0087】
【化12-18】
【0088】
【化12-19】
【0089】
【化12-20】
【0090】
【化12-21】
【0091】
【化12-22】
【0092】
【化12-23】
【0093】
【化12-24】
【0094】
【化12-25】
【0095】
【化12-26】
【0096】
【化12-27】
【0097】
【化12-28】
【0098】
【化12-29】
【0099】
【化12-30】
【0100】
【化12-31】
【0101】
【化12-32】
【0102】
【化12-33】
【0103】
【化12-34】
【0104】
【化12-35】
【0105】
【化12-36】
【0106】
【化12-37】
【0107】
【化12-38】
【0108】
【化12-39】
【0109】
【化12-40】
【0110】
【化12-41】
【0111】
【化12-42】

【0112】
【化12-43】
【0113】
【化12-44】
【0114】
【化12-45】
【0115】
【化12-46】
【0116】
【化12-47】
【0117】
【化12-48】
【0118】
【化12-49】
【0119】
【化12-50】
【0120】
【化12-51】
【0121】
【化12-52】
【0122】
【化12-53】
【0123】
【化12-54】
【0124】
【化12-55】
【0125】
【化12-56】
【0126】
【化12-57】
【0127】
【化12-58】
【0128】
【化12-59】
【0129】
【化12-60】
【0130】
【化12-61】
【0131】
【化12-62】
【0132】
【化12-63】
【0133】
【化12-64】
【0134】
【化12-65】
【0135】
【化12-66】
【0136】
【化12-67】
【0137】
【化12-68】
【0138】
【化12-69】
【0139】
【化12-70】
【0140】
【化12-71】
【0141】
【化12-72】
【0142】
【化12-73】
【0143】
【化12-74】
【0144】
【化12-75】
【0145】
【化12-76】
【0146】
【化12-77】
【0147】
【化12-78】
【0148】
【化12-79】
【0149】
【化12-80】
【0150】
【化12-81】
【0151】
【化12-82】
【0152】
【化12-83】
【0153】
【化12-84】
【0154】
本発明に用いる高分子化合物(1)は、長波長領域(600nm以上)に吸収を持つ。また、高分子化合物(1)を用いた光電変換素子は、高い開放電圧(Voc)を示し、高い光電変換特性を示す。高分子化合物(1)をp型有機半導体化合物とし、フラーレン化合物をn型有機半導体化合物として組み合わせると、特に高い光電変換特性を示す。また本発明に係る高分子化合物(1)は、HOMOエネルギー準位が低く酸化されにくい利点もある。
【0155】
また、高分子化合物(1)は溶媒に対して高溶解性を示すために、塗布成膜が容易であるという利点がある。また、塗布成膜を行う際に溶媒の選択の幅が広がるために、成膜により適した溶媒を選択でき、形成された活性層の膜質を向上させることができる。このことも、本発明に係る高分子化合物(1)を用いた光電変換素子が高い光電変換特性を示す一因であると考えられる。
【0156】
本発明の高分子化合物(1)の重量平均分子量、および数平均分子量は、一般に、2,000以上、500,000以下であることが好ましくり、より好ましくは3,000以上、200,000以下である。本発明の高分子化合物(1)の重量平均分子量、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて算出することができる。
【0157】
本発明に係る高分子化合物(1)は、好ましくは光吸収極大波長(λmax)が400nm以上、より好ましくは450nm以上にあり、一方、通常1200nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下にある。また、半値幅が通常10nm以上、好ましくは20nm以上であり、一方、通常300nm以下である。また、本発明に係る高分子化合物(1)の吸収波長領域は太陽光の吸収波長領域に近いほど望ましい。
【0158】
本発明に係る高分子化合物(1)の溶解度は、特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上、さらに好ましくは0.8重量%以上であり、一方、通常30重量%以下、好ましくは20重量%である。溶解性が高いことは、より厚い活性層を成膜することが可能となる点で好ましい。
【0159】
本発明に係る高分子化合物(1)は分子間で相互作用するものであることが好ましい。本発明において、分子間で相互作用するということは、高分子化合物の分子間でのπ−πスタッキングの相互作用等によってポリマー鎖間の距離が短くなることを意味する。相互作用が強いほど、高分子化合物が高いキャリア移動度及び/又は結晶性を示す傾向がある。すなわち、分子間で相互作用する高分子化合物においては分子間での電荷移動が起こりやすいため、活性層(IV)内のp型半導体化合物(高分子化合物(1))とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノード(VI)へ輸送できると考えられる。
【0160】
(高分子化合物(1)の製造方法)
本発明に用いる高分子化合物(1)の製造方法には特に限定はないが、例えば、ベンゾビスチアゾールを出発原料として 式(3)で表される化合物、
【0161】
【化13】

[式(3)中、R1〜R6は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。]
式(4)で表される化合物、
【0162】
【化14】

[式(4)中、X、R1〜R6は、上記と同様の基を表す。]
式(5)で表される化合物、
【0163】
【化15】


[式(5)中、A1、A、R〜Rは、それぞれ上記と同様の基を表す。]
式(6)で表される化合物、および、
【0164】
【化16】

[式(6)中、A1、Aは、それぞれ上記と同様の基を表す。]
式(7)で表される化合物
【0165】
【化17】

[式(7)中、A1、Aは、それぞれ上記と同様の基を表す。M1、Mはそれぞれ独立に、ホウ素原子または錫原子を表す。R7〜R10は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または、炭素数6〜10のアリールオキシ基を表す。R7、R8は、M1とともに環を形成していてもよく、R9、R10は、M2とともに環を形成していてもよい。m、nは、それぞれ、1または2の整数を表す。また、m、nが2のとき、複数のR7、R9は、それぞれ同一でも、異なっていてもよい。]
を経る製造方法により製造することが可能である。
【0166】
1〜R6の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜8である。R1〜R6の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、オクタデシル基が挙げられる。R1〜R6の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜8であり、より好ましくは6〜7であり、特に好ましくは6である。R1〜R6の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。中でも、R1〜R6としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、分岐を有する脂肪族炭化水素基がより好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。
【0167】
上記式(7)の化合物は例えば下記のようにして製造する事が可能である。
第一工程:ベンゾビスチアゾールに塩基とハロゲン化シラン化合物とを反応させ、式(3)で表される化合物を得る工程
第二工程:式(3)で表される化合物に塩基とハロゲン化試薬とを反応させ、式(4)で表される化合物を得る工程。
【0168】
さらに下記第三工程、第四工程および第五工程を含むこと工程により式(7)で表される化合物を得ることが可能である。
第三工程:式(4)で表される化合物に、式(8)および/または(9)で表される化合物と反応させて。
【0169】
【化18】

【0170】
[式(8)、(9)中、A1、Aは、それぞれ上記と同様の基を表す。R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、又は、*−M(R13k14を表す。R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または、炭素数6〜10のアリールオキシ基を表す。Mは、ホウ素原子または錫原子を表す。R13、R14は、Mとともに環を形成していてもよい。kは、1または2の整数を表す。また、kが2のとき、複数のR13は、それぞれ同一でも、異なっていてもよい。*は、A1、またはA1、との結合手を表す。]で表される化合物を反応させて、式(4)で表される化合物を得る工程
第四工程:式(5)で表される化合物を、酸または塩基で処理して、式(6)で表される化合物を得る工程
第五工程:式(6)で表される化合物とハロゲン化錫化合物とを反応させて、式(7)で表される化合物を得る工程
【0171】
カップリング反応
さらに、高分子化合物(1)は、カップリング反応によって、式(1)で表される構造単位と、共重合成分(2)とを交互に配置するように組合せてドナー−アクセプター型高分子化合物として製造することができる。
【0172】
カップリング反応は、金属触媒の存在下、式(6)で表される化合物と、下記式(B1)〜(B21)で表される化合物のいずれかと反応させることによって行ことが可能である。
【化19】

[式(B1)〜(B28)中、R30〜R58は、それぞれ独立に、R21〜R26の炭素数8〜30の炭化水素基と同様の基を表し、A30、A31は、それぞれ独立に、A1、A2と同様の基を表す。Xはハロゲン原子を表す。jは1〜4の整数を表す。]
【0173】
(その他のp型半導体化合物)
活性層(IV)は、p型半導体化合物として、本発明に係る高分子化合物(1)を少なくとも含有する。しかしながら、高分子化合物(1)とは異なるp型半導体化合物を、高分子化合物(1)と混合及び/又は積層して併用することも可能である。併用しうる他のp型半導体化合物としては、特に限定されないが、有機半導体化合物(10)が挙げられる。以下、有機半導体化合物(10)について説明する。なお、有機半導体化合物(10)は、高分子有機半導体化合物であっても、低分子有機半導体化合物であっても差し支えないが、高分子有機半導体であることが好ましい。
【0174】
(有機半導体化合物(10))
有機半導体化合物(10)としては、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体化合物;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体化合物等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させたコポリマー半導体化合物も挙げられる。共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、J.Polym. Sci.Part A:Polym.Chem.2013,51,743−768、 J.Am.Chem.Soc.2009,131,13886−13887、 Angew. Chem.Int.Ed.2013,52,8341−8344、 Adv.Mater.2009,21,2093−2097等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。有機半導体化合物(10)は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。有機半導体化合物(10)を用いることで吸収波長帯の追加による吸光量の増加などが期待できる。
【0175】
有機半導体化合物(10)の具体例としては以下のものが挙げられるが、以下のものに限定されるわけではない。
【0176】

【0177】
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.9eV以上、より好ましくは−5.7eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.9eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることによりp型半導体化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
【0178】
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−4.5eV以上、好ましくは−4.3eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギ−準位が−3.9eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
【0179】
LUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法が挙げられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又は常温常圧下、紫外線光電子分析装置(理研計器社製、「AC−3」)によりイオン化ポテンシャルを測定が挙げられる。
その中でも好ましくはAC−3測定であり、本発明ではAC−3測定法を用いるものとする。
【0180】
[1.1.3 n型半導体化合物]
n型有機半導体化合物としては、特に限定されないが、一般的に、その最低空軌道(LUMO)準位が3.5〜4.5eVであるようなπ電子共役系化合物であり、例えば、フラーレンもしくはその誘導体、オクタアザポルフィリン等、p型有機半導体化合物の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げる事ができる。
【0181】
これらのn型有機半導体化合物のうち、本発明の特定構成単位を有する高分子化合物(1)(p型有機半導体化合物)と高速かつ効率的に電荷分離ができるためフラーレンもしくはその誘導体が好ましい。
フラーレンやその誘導体としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレン、C240フラーレン、C540フラーレン、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0182】
フラーレン誘導体としては、フェニル−C61−酪酸エステル、ジフェニル−C62−ビス(酪酸エステル)、フェニル−C71−酪酸エステル、フェニル−C85−酪酸エステルまたはチエニル−C61−酪酸エステルが好ましく、上記の酪酸エステルのアルコール部分の好ましい炭素数は1〜30、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4、最も好ましくは1である。
【0183】
好ましいフラーレン誘導体を例示すると、フェニル−C61−酪酸メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C61−酪酸n−ブチルエステル([60]PCBnB)、フェニル−C61−酪酸イソブチルエステル([60]PCBiB)、フェニル−C61−酪酸n−ヘキシルエステル([60]PCBH)、フェニル−C61−酪酸n−オクチルエステル([60]PCBO)、ジフェニル−C62−ビス(酪酸メチルエステル)(ビス[60]PCBM)、フェニル−C71−酪酸メチルエステル([70]PCBM)、フェニル−C85−酪酸メチルエステル([84]PCBM)、チエニル−C61−酪酸メチルエステル([60]ThCBM)、C60ピロリジントリス酸、C60ピロリジントリス酸エチルエステル、N−メチルフラロピロリジン(MP−C60)、(1,2−メタノフラーレンC60)−61−カルボン酸、(1,2−メタノフラーレンC60)−61−カルボン酸t−ブチルエステル、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレンが挙げられる。
【0184】
<1.2 カソード(II),アノード(VI)>
カソード(II),およびアノード(VI)は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極には、電子の捕集に適した電極(II)(カソード)と、正孔の捕集に適した電極(VI)(アノード)とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透光性を有する透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層(IV)に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
【0185】
カソード(II)は、一般には仕事関数がアノードよりも小さい値を有する導電性材料で
構成され、活性層(IV)で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
【0186】
カソード(II)の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金等が挙げられる。これらの物質は小さい仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が大きいことから、上記のような小さい仕事関数の材料でなくとも、アルミニウムやマグネシウム等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
【0187】
カソード(II)が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOを用いることが好ましい。
【0188】
カソード(II)の膜厚に特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。カソード(II)の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード(II)の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソード(II)が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
【0189】
カソード(II)のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/sq以上、一方、1000Ω/sq以下、好ましくは500Ω/sq以下、さらに好ましくは100Ω/sq以下である。
【0190】
アノード(VI)とは、一般には仕事関数がカソードよりも大きい導電性材料で構成され、活性層(IV)で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
【0191】
アノード(VI)の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は大きい仕事関数を有する材料であるため、好ましい。また、ホール輸送層(V)の材料として酸化亜鉛のようなn型半導体化合物で導電性を有するものを用いる場合、酸化インジウムスズ(ITO)のように小さい仕事関数を有する材料を、アノード(VI)の材料として用いることもできる。電極保護の観点から、カソード(II)の材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金である。
【0192】
アノード(VI)の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。アノード(VI)の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード(VI)の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノード(VI)を透明電極として用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
【0193】
アノード(VI)のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/sq以下、好ましくは500Ω/sq以下、さらに好ましくは100Ω/sq以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/sq以上である。
【0194】
アノード(VI)の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
【0195】
さらに、カソード(II)及びアノード(VI)は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、カソード(II)及びアノード(VI)に対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
【0196】
<1.3 基材(I)>
光電変換素子(VII)は、通常は支持体となる基材(I)を有する。すなわち、基材上に、電極(II),(VI)と、活性層(IV)とが形成される。
【0197】
基材(I)の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材(I)の材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル若しくはポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;等が挙げられる。
【0198】
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
【0199】
基材(I)の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。また、基材(I)の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材(I)の膜厚が5μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材(I)の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。基材(I)の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材(I)の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材(I)の膜厚が0.5cm以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
【0200】
<1.4 バッファ層(III,V)>
光電変換素子(VII)は、活性層(IV)とカソード(II)(以下、「電極(II)」ともいう。),アノード(VI)(以下、「電極(VI)」ともいう。)の間にバッファ層(III),(V)を有することが好ましい。バッファ層は、ホール輸送層(V)及び電子輸送層(III)に分類することができる。バッファ層を設けることで、活性層(IV)とカソード(II)との間での電子又は正孔の移動が容易となるほか、電極間の短絡が防止されうる。もっとも本発明において、バッファ層(III),(V)は存在しなくてもよい。
【0201】
ホール輸送層(V)と電子輸送層(III)とは、1対の電極(II),(VI)の間に、活性層(IV)を挟むように配置される。すなわち、本発明に係る光電変換素子(VII)がホール輸送層(V)と電子輸送層(III)との両者を含む場合、アノード(VI)、ホール輸送層(V)、活性層(IV)、電子輸送層(III)、及びカソード(II)がこの順に配置される。本発明に係る光電変換素子(VII)がホール輸送層(V)を含み電子輸送層(III)を含まない場合は、アノード(VI)、ホール輸送層(V)、活性層(IV)、及びカソード(II)がこの順に配置される。
【0202】
[1.4.1 電子輸送層(III)]
電子輸送層(III)は、活性層(IV)からカソード(II)へ電子の取り出しを行う層であり、電子取り出しの効率を向上させる電子輸送性の材料であれば特段の制限はなく、有機化合物でも無機化合物でも良いが、無機化合物が好ましい。
【0203】
無機化合物の材料の好ましい例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはセシウム等のアルカリ金属の塩、又は金属酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム又はフッ化セシウムのようなフッ化物塩が好ましく、金属酸化物としては、酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体特性を有する金属酸化物が好ましく、導電性高分子としてはポリエチレンイミンエトキシレートが好ましい。無機化合物の材料としてより好ましくは、酸化チタン(TiOx)又は酸化亜鉛(ZnO)のような、n型半導体特性を有する金属酸化物である。特に好ましくは酸化亜鉛(ZnO)、ポリエチレンイミンエトキシレートである。これらは単独で使用しても良いし積層してもよい。このような材料の動作機構は不明であるが、カソード(II)と組み合わされた際に、仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
【0204】
電子輸送層(III)の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子輸送層(III)の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進されうる点で好ましい。電子輸送層(III)の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体化合物への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
【0205】
電子輸送層(III)の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子輸送層(III)の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。電子輸送層(III)の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。
【0206】
電子輸送層(III)の膜厚は特に限定はないが、通常0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1.0nm以上である。一方、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。電子輸送層(III)の膜厚が0.1nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子輸送層(III)の膜厚が100nm以下であることで、電子が取り出しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
【0207】
[1.4.2 ホール輸送層(V)]
ホール輸送層(V)は、活性層(IV)からアノード(VI)へ正孔の取り出しを行う層であり、正孔取り出しの効率を向上させることが可能な正孔輸送性の材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、三酸化モリブデン、五酸化バナジウム又は酸化ニッケル等のp型半導体特性を有する金属酸化物、上述のp型半導体化合物等が挙げられる。その中でも好ましくはスルホン酸をドーピングした導電性ポリマーが挙げられ、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、酸化モリブデンや酸化バナジウムなどの金属酸化物がより好ましい。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
【0208】
ホール輸送層(V)の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1.0nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。ホール輸送層(V)の膜厚が0.2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、ホール輸送層(V)の膜厚が400nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
【0209】
電子輸送層(III)及びホール輸送層(V)の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。電子輸送層(III)に半導体化合物を用いる場合は、活性層(IV)と同様に、半導体化合物前駆体を含む層を形成した後に、前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
【0210】
<1.5 光電変換素子の製造方法>
光電変換素子(VII)の製造方法に特に制限は無いが、下記の方法に従い、基材(I)、カソード(II)、電子輸送層(III)、活性層(IV)、ホール輸送層(V)、およびアノード(VI)を順次積層することにより作製することができる。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させ、UV−オゾン処理を実施しアノード付き基材が出来る。次いで、電子輸送層として使用する0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm 40秒)した後に175℃で30分間アニールし酸化亜鉛に変換した電子輸送層を形成できる。後にグローブボックス内に搬入しで不活性ガス雰囲気下でドナー材料・アクセプター材料の混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施することで活性層を形成出来る。次いで減圧下にて酸化モリブデンを蒸着しホール輸送層を作製できる。最後に電極である銀を蒸着しアノードとし、光電変換素子を得ることが出来る
また、異なる構成を有する光電変換素子、例えば、電子輸送層(III)及びホール輸送層(V)のうちの少なくとも1つを有さない光電変換素子も、同様の方法により作製することができる。
【0211】
<1.6 光電変換特性>
光電変換素子(VII)の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子(VII)にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
【0212】
また、光電変換素子の耐久性を測定する方法としては、光電変換素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
【0213】
光電変換素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
【0214】
<2.本発明に係る有機薄膜太陽電池>
本発明に係る光電変換素子(VII)は、太陽電池、なかでも有機薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。
【0215】
本発明に係る有機薄膜太陽電池の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。本発明に係る有機薄膜太陽電池を適用できる分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
【0216】
本発明に係る有機薄膜太陽電池ではそのまま用いても、基材(I)上に太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。具体例を挙げると、基材として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けることにより、太陽電池モジュールとして太陽電池パネルを作製することができる。
【実施例】
【0217】
合成例で用いた測定方法は、下記の通りである。
【0218】
(NMRスペクトル測定)
ベンゾビスチアゾール化合物について、NMRスペクトル測定装置(Agilent社(旧Varian社)製、「400MR」、及び、Bruker社製、「AVANCE500」)を用いて、NMRスペクトル測定を行った。
【0219】
(高分解能マススペクトル測定)
ベンゾビスチアゾール化合物について、質量分析装置(Bruker Daltnics社製、「MicrOTOF」)を用いて、高分解能マススペクトル測定(APCI:大気圧化学イオン化法)を行った。
【0220】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))
ベンゾビスチアゾール化合物について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量測定を行った。測定に際しては、ベンゾビスチアゾール化合物を0.5g/Lの濃度となるように移動相溶媒(クロロホルム)に溶解して、下記条件で測定を行い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて換算することによって、ベンゾビスチアゾール化合物の重量平均分子量を算出した。測定におけるGPC条件は、下記の通りである。
移動相:クロロホルム
流速:0.6ml/min
装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel(登録商標) SuperHM-H´2 + TSKgel(登録商標)SuperH2000(東ソー社製)
【0221】
(IRスペクトル)
ベンゾビスチアゾール化合物について、赤外分光装置(JASCO社製、「FT/IR−6100」)を用い、IRスペクトル測定を行った。
【0222】
(紫外可視吸収スペクトル)
0.03g/Lの濃度になる様に、得られたベンゾビスチアゾール化合物をクロロホルムに溶解し、紫外・可視分光装置(島津製作所社製、「UV−2450」、「UV−3150」)、及び、光路長1cmのセルを用いて紫外可視吸収スペクトル測定を行った。
【0223】
(融点測定)
ベンゾビスチアゾール化合物について、融点測定装置(Buchi社製、「M−560」)を用い、融点測定を行った。
【0224】
(イオン化ポテンシャル測定)
ガラス基板上にベンゾビスチアゾール化合物を50nm〜100nmの厚みになるように成膜した。この膜について、常温常圧下、紫外線光電子分析装置(理研計器社製、「AC−3」)によりイオン化ポテンシャルを測定した。
【0225】
以下に本特許に用いられる高分子化合物(1)の合成の一例を示す。本発明に使用される高分子化合物(1)はもとより下記合成例によって制限を受けるものではなく、合成法自体も前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて合成することも勿論可能である。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0226】
合成例1
DBTH−DT(2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)の合成
【0227】
【化20】
【0228】
窒素雰囲気下、200mLフラスコにDBTH(ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、4g、20.8mmol)およびテトラヒドロフラン(160mL)を加え−40℃に冷却してリチウムジイソプロピルアミド溶液(1.5M溶液、29.1mL、43.7mmol)を滴下した。その後−40℃で1時間攪拌した後に、トリイソプロピルクロライド(8.8mL、41.6mmol)を滴下して、室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、10%食塩水を加え分液して得られた水層を酢酸エチルで1回抽出した後に、有機層をまとめて飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)で精製するとDBTH−DT(2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が7.14g(収率68%)で白色固体として得られた。1H−NMR測定、13C−NMR測定、融点測定、高分解能マススペクトル分析により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【0229】
合成例2
DI−DBTH−DT(4,8−ジヨード−2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)の合成
【0230】
【化21】
【0231】
窒素雰囲気下、200mLフラスコにDBTH−DT(2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、3g、5.88mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(1.84mL、12.4mmol)およびテトラヒドロフラン(60mL)を加え−40℃に冷却してリチウムジイソプロピルアミド溶液(1.5M溶液、8.24mL、12.4mmol)を滴下した。その後、0℃で30分攪拌した後に、−80℃に冷却してよう素(7.47g、29.4mmol)を加え室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液して得られた水層を酢酸エチルで1回抽出した後に、有機層をまとめて5%重曹水次いで飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製するとDI−DBTH−DT(4,8−ジヨード−2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が1.95g(収率44%)で白色固体として得られた。1H−NMR測定、13C−NMR測定、融点測定、高分解能マススペクトル分析により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【0232】
合成例3
DBTH−EHT(4,8−ビス[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾールの合成反応
【0233】
【化22】
【0234】
窒素雰囲気下、30mLフラスコにDI−DBTH−DT(4,8−ジヨード−2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、800mg、1.06mmol)、トリブチル[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]スタンナン(1.80g、3.70mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)−クロロホルム付加体(115mg、0.08mmol)、トリス(2−フリル)ホスフィン(39mg、0.37mmol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(16mL)を加え60℃に昇温した後に19時間反応した。その後、室温まで冷却してテトラブチルアンモニウムフルオリド溶液(1Mテトラヒドロフラン溶液、5.2mL、3.18mmol)を加え3時間反応した。反応終了後、水を加えクロロホルムで2回抽出して得られた有機層を水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製するとDBTH−EHT(4,8−ビス[5−(2−ジエチルヘキシル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が442mg(収率83%)で黄色固体として得られた。1H−NMR測定、13C−NMR測定、IRスペクトル測定、高分解能マススペクトル分析により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【0235】
合成例4、5
合成例3と同様に、DBTH−C8THO(4,8−ビス(5−オクチルチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例4)、DBTH−DMOT(4,8−ビス[5−(3,7−ジメチルオクチル)チオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例5)を得た。収率は83〜84%であった。
【0236】
合成例6
DBTH−EHT−DSM(4,8−ビス[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]−2,6−ビストリメチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)の合成(DBTH−EHTのスズ化反応)
【0237】
【化23】
【0238】
窒素雰囲気下、30mLフラスコにDBTH−EHT(4,8−ビス[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、400mg、0.69mmol)およびテトラヒドロフラン(12mL)を加え0℃に冷却してリチウムジイソプロピルアミド溶液(2M溶液、0.76mL、1.51mmol)を滴下した。その後、0℃で30分攪拌した後に、−80℃に冷却してトリメチルすずクロリド(1.72mL、1.72mmol)を加え室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、水を加えてトルエンで1回抽出して得られた有機層を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過・濃縮して得られた粗品をGPC−HPLC(JAIGEL−1H、2H、クロロホルム)で精製するとDBTH−EHT−DSM(4,8−ビス[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]−2,6−ビストリメチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が434mg(収率70%)で橙色固体として得られた。1H−NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【0239】
合成例7、8
合成例6と同様に、DDBTH−C8THO−DSM(4,8−ビス(5−オクチルチオフェン−2−イル)−2,6−ビストリメチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例7)、DBTH−DMOT−DSM(4,8−ビス[5−(3,7−ジメチルオクチル)チオフェン−2−イル]−2,6−ビストリメチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例8)を得た。収率は33〜34%であった。
【0240】
合成例9
P−DBTH−EHT−O−IMTHの合成
【0241】
【化24】
【0242】
窒素雰囲気下、20mLフラスコに、DBTH−EHT−DSB(4,8−ビス[5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル]−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、150mg、0.13mmol)、O−IMTH−DB(1,3−ジブロモ−5−オクチルチエノ[3,4−c]ピロール−4,6−ジオン、57mg、0.13mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)−クロロホルム付加体(5.4mg、5.2μmol)、トリス(o−トリル)ホスフィン(6.3mg、21μmol)およびクロロベンゼン(12mL)を加え120℃で23時間反応した。反応終了後、メタノール(60mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)することでP−DBTH−EHT−O−IMTHが89mg(82%)で黒色固体として得られた。
【0243】
合成例10
合成例9と同様に、P−DBTH−EHT−EH−DPP(合成例10)を得た。収率は43%であった。
【0244】
合成例11
DHD−DBTH(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)の合成反応
【化25】
【0245】
窒素雰囲気下、50mLフラスコに、DI−DBTH−DT(4,8−ジヨード−2,6−ビス−トリイソプロピルシラニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、3g、4.0mmol)、2−ヘキシルデカノール(5.8g、23.8mmol)、よう化銅(I)(151mg、0.79mmol)、1,10−PHT(1,10−フェナントロリン、286mg、1.59mmol)、t−ブトキシナトリウム(1.14g、11.9mmol)および1,4−ジオキサン(30mL)を加え、還流下23時間反応した。室温に冷却後テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M−テトラヒドロフラン溶液、12.0mL、11.9mmol)を加え室温で更に3時間反応した。反応終了後、水を加えてクロロホルムで2回抽出して得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製するとDHD−DBTH(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が1.30g(収率49%)で褐色油状として得られた。
【0246】
合成例12、13
合成例11と同様に、DEH−DBTH(4,8−ビス(2−エチルヘキシロキシ)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例12)、DDMO−DBTH(4,8−ビス(3,7−ジメチルオクチロキシ)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例13)を得た。収率は44〜60%であった。
【0247】
合成例14
DHD−DBTH−DSB(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)の合成(DHD−DBTHのスズ化反応)
【0248】
【化26】
【0249】
窒素雰囲気下、30mLフラスコにDHD−DBTH(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、1g、1.49mmol)およびテトラヒドロフラン(20mL)を加え−80℃に冷却してn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、1.95mL、3.12mmol)を滴下した。その後30分攪拌した後に、トリブチルすずクロリド(0.87mL、3.19mmol)を加え室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、水を加えてトルエンで1回抽出して得られた有機層を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過・濃縮して得られた粗品をGPC−HPLC(JAIGEL−1H、2H、クロロホルム)で精製するとDHD−DBTH−DSB(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)が1.12g(収率63%)で褐色油状として得られた。1H−NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【0250】
合成例15〜16
合成例14と同様に、DEH−DBTH−DSB(4,8−ビス(2−エチルヘキシロキシ)−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例15)、DDMO−DBTH−DSB(4,8−ビス(3,7−ジメチルオクチロキシ)−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(合成例16)を得た。収率は36〜63%であった。
【0251】
合成例17
P−DHD−DBTH−O−IMTHTの合成
【0252】
【化27】
【0253】
窒素雰囲気下、20mLフラスコに、DHD−DBTH−DSB(4,8−ビス(2−ヘキシルデシロキシ)−2,6−ビストリブチルスタンニルベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール、0.14mmol)、O−IMTHT−DB(1,3−ジブロモ−5−オクチルチエノ[3,4−c]ピロール−4,6−ジオン、0.14mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)−クロロホルム付加体(5.6mg、5.4μmol)、トリス(o−トリル)ホスフィン(6.2mg、22μmol)およびクロロベンゼン(12mL)を加え120℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(60mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)することでP−DHD−DBTH−O−IMTHTが収率75%で固体として得られた。
【0254】
合成例18〜21
合成例17と同様に、P−DHD−DBTH−TDZT(合成例18)、P−DHD−DBTH−DMO−DPP(合成例19)、P−DHD−DBTH−3HTDZT(合成例18)、P−DEH−DBTH−EH−DPP(合成例20)、P−DDMO−DBTH−EH−BDT(合成例21)を得た。収率は19〜99%であった。
【0255】
(光電変換素子の評価方法)
光電変換素子に0.05027mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてソーラーシミュレーター(CEP2000、AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm2、分光計器製)を用い、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)により、ITO電極とアルミニウム電極との間における電流−電圧特性を測定した。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、曲線因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。
【0256】
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm2)の際の電圧値であり、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度である。曲線因子FFとは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = (Pmax/Pin)×100
= (Voc×Jsc×FF/Pin)×100
【0257】
<実施例1>
【化28】

(p型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液の作製)
p型半導体化合物としてP−DHD−DBTH−O−IMTHT[化28]の構造を有する高分子化合物を用いた。
n型半導体化合物としてPC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル,フロンティアカーボン社製,NS−E100H)を、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:2(重量)、合計濃度2.5wt%でクロロベンゼンに溶解させた。この溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液を得た。
【0258】
(光電変換素子の作製)
酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させた。
【0259】
UV−オゾン処理を実施後、電子輸送層として使用する0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm
40秒)した後に175℃で30分間アニールした。
【0260】
グローブボックス内に搬入しで不活性ガス雰囲気下でp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施した。
【0261】
蒸着機にて、ホール輸送層である酸化モリブデンを蒸着した。その後、電極である銀を蒸着して逆型構成デバイスとした。得られたデバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0262】
<実施例2>
【化29】

p型半導体化合物としてP−DHD−DBTH−TDZT[化29]の構造を有する高分子化合物を用いた。
PCBM(C61)をn型半導体化合物として用いて、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:1.5(重量)、合計濃度2.0wt%でクロロベンゼンに溶解させて0.45μmのフィルターに通して混合溶液とした。得られた混合溶液を用いて、実施例1と同様にデバイスを作製した。得られた逆型構成デバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0263】
<実施例3>
【化30】

p型半導体化合物としてP−DBTH−EHT−O−IMTH[化30]の構造を有する高分子化合物を用いた。
PCBM(C61)をn型半導体化合物として用いて、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:2(重量)、合計濃度6.0wt%でクロロベンゼンに溶解させて0.45μmのフィルターに通して混合溶液とした。得られた混合溶液を用いて、実施例1と同様に逆型構成デバイスを作製した。得られたデバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0264】
<実施例4>
【化29】

p型半導体化合物としてP−DHD−DBTH−TDZT[化29]の構造を有する高分子化合物を用いた。
PCBM(C61)をn型半導体化合物として用いて、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:1.5(重量)、合計濃度2.0wt%でクロロベンゼンに溶解させて0.45μmのフィルターに通してp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液を得た。
【0265】
(光電変換素子の作製)
酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させた。
【0266】
UV−オゾン処理を実施後、電子輸送層として使用する0.05wt%ポリエチレンイミンエトキシレート/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm 40秒)した後に100℃で1分間アニールした。
【0267】
グローブボックス内に搬入しで不活性ガス雰囲気下でp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施した。
【0268】
蒸着機にて、ホール輸送層である酸化モリブデンを蒸着した。その後、電極である銀を蒸着して逆型構成デバイスとした。得られたデバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0269】
<実施例5>
【化29】

p型半導体化合物としてP−DHD−DBTH−TDZT[化29]の構造を有する高分子化合物を用いた。
PCBM(C61)をn型半導体化合物として用いて、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:1.5(重量)、合計濃度2.0wt%でクロロベンゼンに溶解させて0.45μmのフィルターに通してp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液を得た。
【0270】
(光電変換素子の作製)
酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させた。
【0271】
UV−オゾン処理を実施後、電子輸送層として使用する0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm
40秒)した後に175℃で30分間アニールした。
さらに電子輸送層を積層するため0.05wt%ポリエチレンイミンエトキシレート/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm 40秒)した後に100℃で1分間アニールした。
【0272】
グローブボックス内に搬入しで不活性ガス雰囲気下でp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施した。
【0273】
蒸着機にて、ホール輸送層である酸化モリブデンを蒸着した。その後、電極である銀を蒸着して逆型構成デバイスとした。得られたデバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0274】
<実施例6>
【化29】

p型半導体化合物としてP−DHD−DBTH−TDZT[化29]の構造を有する高分子化合物を用いた。
PCBM(C61)をn型半導体化合物として用いて、p型半導体化合物:n型半導体化合物=1:1.5(重量)、合計濃度2.0wt%でクロロベンゼンに溶解させて0.45μmのフィルターに通してp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液を得た。
【0275】
(光電変換素子の作製)
酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させた。
【0276】
UV−オゾン処理を実施後、電子輸送層として使用する0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2−メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm
40秒)した後に175℃で30分間アニールした。
【0277】
グローブボックス内に搬入しで不活性ガス雰囲気下でp型半導体化合物・n型半導体化合物の混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施した。
【0278】
蒸着機にて、ホール輸送層である酸化バナジウムを蒸着した。その後、電極である銀を蒸着して逆型構成デバイスとした。得られたデバイスは上記光電変換素子の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0279】
【表1】
【0280】
上記の様に本発明に用いた高分子化合物で作製された光電変換素子は、HOMO準位が適度に深いため、殆どが0.74V以上の高電圧を示すことが確認され最高では0.87Vを達成した。さらに、本発明の用いられた高分子化合物は製造方法により、多様な骨格や置換基を導入できることが確認され、光電変換素子のVocの細かな調整が可能である。
【符号の説明】
【0281】
(VII) 光電変換素子
(VI) アノード
(V) ホール輸送層
(IV) 活性層
(III)電子輸送層
(II) カソード
(I) 基材
図1