(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合開始剤、並びに少なくとも1種の分子量が1000以下のプロトン酸の塩の存在下に、135℃以上300℃以下の重合温度で、トリオキサンとコモノマーとをカチオン重合する重合工程を含み、前記重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーの製造装置、並びにオキシメチレン共重合体の製造装置はステンレス鋼の部材を含み、ステンレス鋼の部材を、酸洗浄による不動態化処理、高温熱処理、表面研磨、及び電解研磨からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理することを含み、前記重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下である、オキシメチレン共重合体の製造方法。
前記重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれるFe、Cr、Ni及びMoの4種類の金属成分の濃度の合計値が110質量ppb以下である、請求項1に記載のオキシメチレン共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。さらに組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0020】
[I−1.重合工程]
本実施形態のオキシメチレン共重合体の製造方法は、分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合開始剤、並びに少なくとも1種の分子量が1000以下のプロトン酸の塩の存在下に、135℃以上300℃以下の重合温度で、重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であるトリオキサンとコモノマーとをカチオン重合する、重合工程を含む。
【0021】
上記オキシメチレン共重合体の製造方法によれば、固形物又は粉体を重合、粉砕、混合、溶融又は移送するために必要な特殊な製造設備を使用することなく、スタティックミキサー等の液体を取り扱うための簡素で安価な製造設備により、オキシメチレン共重合体1g中のギ酸エステル末端基が5.0μmol以下のオキシメチレン共重合体、長期間の使用及び高温・高湿度の環境の使用において劣化が少なくホルムアルデヒドの発生量が少ないオキシメチレン共重合体、あるいは低分子量成分の含有量が少ないオキシメチレン共重合体を高収率で製造することが可能となり、工業的意義は大きい。以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
[I−2.原料中の金属成分の濃度]
重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値は300質量ppb以下であることが必須である。重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値は、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。
【0023】
金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であれば、オキシメチレン共重合体1g中のギ酸エステル末端基が5.0μmol以下であり、且つ高分子量のオキシメチレン共重合体が収率良く得られる。
【0024】
また、金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であれば、相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒド発生量(A)に対する、相対湿度98%下80℃24時間及び相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒドの発生量(B)の比(B/A比)が1.80以下、且つ高分子量のオキシメチレン共重合体が収率良く得られる。
【0025】
さらには、金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であれば、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量が5.0%以下であり、且つ高分子量のオキシメチレン共重合体が収率良く得られる。
【0026】
一方、金属成分の濃度の合計値が300質量ppbを超えると、得られたオキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基が多いか、得られるオキシメチレン共重合体の劣化が速くホルムアルデヒドの発生量が多いか、得られるオキシメチレン共重合体中の低分子量成分の量が多いか、重合反応が進行しないか、あるいは重合収率が著しく低下する。金属成分の濃度の合計値の下限に特に制限はないが、分析機器の能力の限界から0.2質量ppb以上であれば測定が可能であり、工業的に制御可能な範囲といえる。
【0027】
前記金属成分としては特に限定されないが、例えば、Na、Fe、Cr、Ni、Moが挙げられる。Na成分は重合反応原料であるトリオキサン及び1,3−ジオキソランに代表されるコモノマーを製造する際の原料イオン交換水等に含まれることがある。一方、Fe、Cr、Ni、Mo成分は、重合反応原料であるトリオキサン及び1,3−ジオキソランに代表されるコモノマーの製造装置(例えば、反応器、蒸留塔、貯蔵容器、配管が挙げられる)、オキシメチレン共重合体の製造装置(例えば、重合反応器、原料トリオキサンの加熱器などが挙げられる)を構成する部材に使用される材質であるSUS316やSUS304などのステンレス鋼に含まれている。これらの金属成分は、前記重合反応原料、特に高温の重合反応原料が、ステンレス鋼などと接触すると、その表面状態によっては溶出することがある。これらのことから、重合反応原料であるトリオキサン及び1,3−ジオキソランに含まれるNaイオンや、トリオキサン及び1,3−ジオキソランに代表されるコモノマーの製造装置、オキシメチレン共重合体の製造装置の材質から溶出した金属成分は、オキシメチレン共重合体の製造において、重合反応の阻害、得られるオキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基量の増加、高温・高湿度の環境におけるホルムアルデヒドの発生量の増加、あるいは得られるオキシメチレン共重合体中の低分子量成分の増加の原因になると推察している。
【0028】
重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれるNa、Fe、Cr、Ni及びMoの5種類の金属成分の濃度の合計値は、300質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。
【0029】
特に、重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーの含まれるFe、Cr、Ni及びMoの4種類の金属成分の濃度の合計値は、110質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上50質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上20質量ppb以下が最も好ましい。上述した重合反応の阻害、得られるオキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基量の増加、高温・高湿度の環境におけるホルムアルデヒドの発生量の増加、あるいは得られるオキシメチレン共重合体中の低分子量成分の増加は、前記したステンレス鋼を空気中で加熱するなどの表面の不動態化を十分に行えば起こりにくいため、Fe、Cr、Ni、Mo成分の溶出は、ステンレス鋼表面の不動態化が十分でない場合に起こりやすいと推察している。
【0030】
重合反応に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値を300質量ppb以下にするには、トリオキサン及びコモノマーの製造装置、並びにオキシメチレン共重合体の製造装置の部材に含まれるステンレス鋼に対して、酸洗浄による不動態化処理、高温熱処理、表面研磨、及び電解研磨からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理を行い、Fe、Cr、Ni、Mo成分の溶出を可能な限り低減して、その他の金属成分を含めた濃度の合計値を低減することが好ましい。これらの表面処理は、1種を単独で行ってもよく、2種以上を組合せて行ってもよい。中でも、トリオキサン及びコモノマーが接触する、トリオキサン及びコモノマーの製造設備、貯蔵設備、輸送配管、重合設備などのステンレス鋼部材の少なくとも内面に対して、酸洗浄を行い、純水洗浄後、空気中で7時間、350℃の高温熱処理を行うことにより、比較的短時間で金属成分の溶出を抑制できるようになるので、最も好ましい。
【0031】
[I−3.トリオキサン]
重合工程に使用するトリオキサンに含まれる金属成分の濃度の合計値は特に限定されないが、300質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。なかでも、重合工程に使用するトリオキサンに含まれるNa、Fe、Cr、Ni及びMoの5種類の金属成分の濃度の合計値は、300質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。特に、重合工程に使用するトリオキサンに含まれるFe、Cr、Ni及びMoの4種類の金属成分の濃度の合計値は、110質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上50質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上20質量ppb以下が最も好ましい。これは、トリオキサンに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であると、重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値を300質量ppb以下にしやすいからである。重合工程に使用するトリオキサンとは、重合反応に使用するトリオキサンを指す。トリオキサンは、ホルムアルデヒドの3量体であって、その製造方法は特に限定されず、オキシメチレン共重合体の製造において、回収された未反応のトリオキサンも含まれる。
【0032】
前記トリオキサンは安定剤を含有していても、含有していなくてもよい。保存時の安定性を向上させるなどの為に、トリオキサンが安定剤を含有する場合は、例えば、アミン化合物を通常、トリオキサン1mol当り0.00001mmol以上0.003mmol以下、好ましくは0.00001mmol以上0.0005mmol以下、より好ましくは0.00001mmol以上0.0003mmol以下含有することが好ましい。アミン化合物の含有量が0.003mmol以下であれば、重合開始剤の失活などの悪影響を起こし難く、0.00001mmol以上であればトリオキサンの保存中にパラホルムアルデヒドの発生などが充分に抑制される。
【0033】
前記トリオキサンに安定剤として含有可能なアミン化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アルキル化メラミン、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用される。一級アミンとしてはn−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等が好適に使用される。二級アミンとしては、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピペリジン、モルホリン等が好適に使用される。三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン等が好適に使用される。アルキル化メラミンとしてはメラミンのメトキシメチル置換体であるモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサメトキシメチルメラミンあるいはその混合物等が好適に使用される。ヒンダードアミン化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチレンブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、及びN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2 ,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン縮合物等が好適に使用される。中でもトリエタノールアミンが最も好適に使用される。
【0034】
また、トリオキサンに含まれる水、ギ酸、メタノール、ホルムアルデヒド、メチラール、ジオキシメチレンジメチルエーテル、トリオキシメチレンジメチルエーテル等の金属成分以外の不純物は、トリオキサンを工業的に製造する際に不可避的に発生するものであるが、総量でトリオキサン中100質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは70質量ppm以下、最も好ましくは50質量ppm以下である。なかでも、水は50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20質量ppm以下であり、最も好ましくは10質量ppm以下である。
【0035】
[I−4.コモノマー]
コモノマーは、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを与えるコモノマーであり、好ましくは炭素数2から6のオキシアルキレンユニットを与えるコモノマーであり、特に好ましくは炭素数2のオキシエチレンユニットを与えるコモノマーである。コモノマーは例えば、環状エーテル、グリシジルエーテル化合物、環状ホルマールなどトリオキサンと共重合可能なコモノマーであれば特に限定されない。コモノマーとして具体的には、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。コモノマーとして、好ましくはエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール及び1,4−ブタンジオールホルマールからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。最も好ましくはトリオキサンとの共重合性の点から1,3−ジオキソランが用いられる。
【0036】
重合工程に使用するコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値は特に限定されないが、300質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。なかでも、重合工程に使用するコモノマーに含まれるNa、Fe、Cr、Ni及びMoの5種類の金属成分の濃度の合計値が、300質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上200質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上150質量ppb以下が最も好ましい。更には、重合工程に使用するコモノマーに含まれるFe、Cr、Ni、及びMoの4種類の金属成分の濃度の合計値が、110質量ppb以下であることが好ましく、0.2質量ppb以上50質量ppb以下がより好ましく、0.2質量ppb以上20質量ppb以下が最も好ましい。これは、コモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であると、重合工程に使用するトリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の合計値を300質量ppb以下にしやすいからである。
【0037】
前記コモノマーに含まれる水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の金属成分以外の不純物は、総量で1000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以下であり、100質量ppm以下が更に好ましく、50質量ppm以下が最も好ましい。
【0038】
前記コモノマーの使用量はトリオキサンに対して0.4質量%以上45質量%以下であり、好ましくは1.2質量%以上12質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以上6質量%以下である。コモノマーの使用量が45質量%以下であれば重合収率及び結晶化速度が低下し難く、0.4質量%以上であれば、不安定部分が減少する。
【0039】
[I−5.重合開始剤]
重合開始剤は、トリオキサンとコモノマーとの共重合に通常使用されるカチオン性重合開始剤であるプロトン酸であり、プロトン酸無水物又はプロトン酸エステル化合物も用いられる。これらの分子量は、高分子量のオキシメチレン共重合体を高収率で製造できる点から、分子量は1000以下であることが必要である。すなわち、重合開始剤は、分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0040】
前記重合開始剤の分子量は1000以下であり、好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。分子量の下限値は特に限定されず、例えば20以上、好ましくは36以上である。
【0041】
前記プロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステル化合物としては、例えば、過塩素酸、過塩素酸無水物、アセチルパークロレートなどの過塩素酸及びその誘導体;トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などのアルキル基又はアリール基がフッ素化又は塩素化されたアルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、その酸無水物並びにそのエステル化合物;ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸、トリフルオロメチルホスホン酸などのホスフィン酸又はホスホン酸及びその誘導体などが挙げられる。これらは単独又は混合物として使用される。中でも過塩素酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、それらの酸無水物及びそれらのエステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、製造効率及び経済性を勘案すると、過塩素酸、過塩素酸無水物及び過塩素酸エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種が最も好ましい。
【0042】
前記重合開始剤の使用量(反応系での存在量)は、主モノマーのトリオキサンに対して、通常0.001質量ppm以上10質量%以下の範囲であり、好ましくは0.001質量ppm以上500質量ppm以下の範囲であり、より好ましくは0.01質量ppm以上200質量ppm以下の範囲であり、最も好ましくは0.01質量ppm以上100質量ppm以下の範囲である。重合開始剤の使用量が10質量%以下であればオキシメチレン共重合体の分子量の低下などが起き難く、0.001質量ppm以上であれば重合転化率の低下などが起き難い。
【0043】
前記重合開始剤は単独で、または溶液状態で、重合反応原料へ添加される。すなわち、重合開始剤の全部又は一部を溶媒で希釈して、重合反応原料へ添加してもよい。溶液状態で添加する場合、溶媒としては、特に限定されないが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル溶剤が挙げられる。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は、生成した共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。また、1,3−ジオキソラン等のコモノマーの部分量又は全量を溶媒として使用してもよい。
【0044】
[I−6.プロトン酸の塩]
オキシメチレン共重合体の製造方法においては、上述した、重合開始剤(分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種)に、更にプロトン酸の塩を併用する。これによって、得られるオキシメチレン共重合体の分子量と重合収率が増大する。その理由は、例えば、前記重合開始剤とプロトン酸の塩の併用によって、重合中の共重合体の分解反応が抑制され、相対的に共重合体の成長反応が優勢となることによるものと推定される。即ち、例えば、135℃以上の重合温度ではプロトン酸の塩が共重合体の活性点近傍の望ましい位置に存在することにより、一般にBack−bitingと呼ばれる、共重合体の活性点がその共重合体自身を攻撃する分解反応が抑制されるものと推定している。
【0045】
プロトン酸の塩は、アルカリ成分とプロトン酸とから生成する塩であれば特に制限はない。プロトン酸の塩は、アルカリ成分に由来するカチオンと、プロトン酸に由来するアニオンとから生成する。プロトン酸の塩は、製造効率の観点から、アルカリ金属単体及びその化合物、アルカリ土類金属単体及びその化合物、アンモニア並びにアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ成分と、プロトン酸とから生成する塩であることが好ましく、アルカリ成分がアルカリ金属単体及びその化合物、並びにアルカリ土類金属単体及びその化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。すなわち、プロトン酸の塩はアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0046】
前記プロトン酸の塩を構成するプロトン酸はプロトンを放出する化合物であり、高分子量のオキシメチレン共重合体を製造するためには分子量が1000以下のプロトン酸である。プロトン酸の1モル当たりの分子量は800以下が好ましく、500以下が最も好ましい。プロトン酸の1モル当たりの分子量の下限値は特に限定されず、例えば20以上、好ましくは36以上である。このようなプロトン酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸;フッ素化又は塩素化されたアルキルスルホン酸又はアリールスルホン酸などの有機酸が挙げられる。中でも過塩素酸及びパーフルオロアルキルスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、製造効率と経済性を勘案すると過塩素酸が最も好ましい。
【0047】
前記プロトン酸とともに塩を構成するアルカリ成分は、アルカリ金属単体及びその化合物、アルカリ土類金属単体及びその化合物、アンモニア並びにアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属単体及びその化合物、並びにアルカリ土類金属単体及びその化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。アルカリ金属にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が含まれる。アルカリ土類金属は広義のアルカリ土類金属であり、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの他にベリリウムとマグネシウムも含まれる。アミン化合物には一級アミン、二級アミン、三級アミン、アルキル化メラミン、ヒンダードアミン化合物が含まれる。一級アミンとしてはn−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等が好適に使用される。二級アミンとしては、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピペリジン、モルホリン等が好適に使用される。三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン等が好適に使用される。アルキル化メラミンとしてはメラミンのメトキシメチル置換体であるモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサメトキシメチルメラミンあるいはその混合物等が好適に使用される。ヒンダードアミン化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチレンブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、及びN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン縮合物等が好適に使用される。
【0048】
前記プロトン酸の塩は純粋な物質、すなわち、塩として単離された化合物を使用してもよいし、酸アルカリ反応によって生成した物質を精製することなく使用してもよい。酸アルカリ反応によって生成した物質を精製することなく使用する場合のアルカリ成分としては、アルカリ金属の単体、アルカリ土類金属の単体、アンモニア、アミン化合物、及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコラート、有機酸塩、無機酸塩若しくは酸化物などが好適に用いられる。
【0049】
前記プロトン酸の塩の使用量(反応系での存在量)は、主モノマーのトリオキサンに対して、通常0.001質量ppm以上10質量%以下であり、好ましくは0.01質量ppm以上1質量%以下であり、最も好ましくは0.01質量ppm以上100質量ppm以下の範囲である。プロトン酸の塩の使用量が10質量%以下であれば分子量や重合収率の低下などを起こし難く、0.001質量ppm以上であれば分子量増大効果が見られる。
【0050】
前記プロトン酸の塩は、単独であるいは溶液又は懸濁液の形で、重合反応原料に添加される。すなわち、プロトン酸の塩の全部又は一部を溶媒で希釈して、重合反応原料に添加してもよい。溶液又は懸濁液の形で添加する場合、溶媒としては、特に限定されず、既述の溶媒が例示される。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は、生成した共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。また、トリオキサン、1,3−ジオキソラン等のモノマーやコモノマーの部分量又は全量を溶媒として使用してもよい。また、前記プロトン酸の塩は、予め重合開始剤と混合してから、上述した溶媒で希釈して添加してもよい。なお、前記重合開始剤及びプロトン酸の塩の全部又は一部を1気圧での沸点が115℃以下の溶媒で希釈して重合反応原料へ添加することが、重合設備を簡素にできるので好ましい。
【0051】
本発明における重合開始剤(好ましくはプロトン酸)とプロトン酸の塩のモル比は特に制限されない。重合開始剤のプロトン酸の塩に対するモル比(重合開始剤/プロトン酸塩)は、得られるオキシメチレン共重合体の分子量と重合収率の観点から、0.0005以上100以下の範囲が好ましく、0.1以上20以下の範囲がより好ましく、0.2以上10以下の範囲が最も好ましい。
【0052】
[I−7.ケトン化合物]
本発明のオキシメチレン共重合体の製造方法においては、重合開始剤(分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種)及び分子量が1000以下のプロトン酸の塩に加え、さらにケトン化合物を添加して重合反応を行うことが好ましい。すなわち、重合開始剤、分子量が1000以下のプロトン酸の塩及びケトン化合物の存在下に重合反応を行うことが好ましい。
【0053】
前記ケトン化合物としては、脂肪族ケトン及び芳香族ケトンのいずれでもよい。ケトン化合物として、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、メチル−t−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、ジn−アミルケトン、ステアロン、クロルアセトン、s−ジクロルアセトン、ジアセチル、アセチルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン及びベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。中でもアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、メチル−t−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、ジn−アミルケトン、ジアセチル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン及びベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、アセトンが最も好ましい。
【0054】
前記ケトン化合物の添加量(反応系での存在量)は、主モノマーのトリオキサンに対して、通常0.001質量ppm以上30質量%以下であり、好ましくは0.01質量ppm以上1質量%以下であり、最も好ましくは0.1質量ppm以上0.5質量%以下の範囲である。ケトン化合物の添加量が30質量%以下であれば、オキシメチレン共重合体の分子量や重合収率の低下などが起き難く、0.001質量ppm以上であれば、オキシメチレン共重合体の分子量や重合収率の増大効果が見られる。
【0055】
前記重合開始剤(分子量が1000以下のプロトン酸、プロトン酸無水物及びプロトン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種)及びプロトン酸の塩に加えて、ケトン化合物を併用することで、重合開始剤とプロトン酸の塩を用いる場合に比べて、より高い重合温度でも、オキシメチレン共重合体の分子量と重合収率の増大効果がより効果的に達成される。これは、例えば、ケトン化合物を併用することで、重合中の共重合体の分解反応が抑制され、相対的に共重合体の成長反応が優勢となることによるものと推定される。
【0056】
前記ケトン化合物は、単独であるいは溶液の形で、重合反応原料へ添加される。すなわち、ケトン化合物の全部又は一部を溶媒で希釈して、重合反応原料へ添加してもよい。溶液の形で添加する場合、溶媒としては、特に限定されず、既述の溶媒が例示される。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は生成した共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。また、トリオキサンの部分量もしくは1,3−ジオキソラン等のコモノマーの部分量又は全量を溶媒として使用してもよい。
【0057】
重合反応にケトン化合物を使用する場合、重合開始剤(好ましくはプロトン酸)のケトン化合物に対するモル比(重合開始剤/ケトン化合物)は0.00001以上10以下の範囲が好ましく、0.0001以上0.2以下の範囲がより好ましく、0.0002以上0.02以下の範囲が最も好ましい。
【0058】
生成するオキシメチレン共重合体の極限粘度は、通常0.5dl/g以上5dl/g以下に調節される。極限粘度は、好ましくは0.7以上3.5dl/g以下に調節され、最も好ましくは0.8dl/g以上2.5dl/g以下に調節される。
【0059】
[I−8.分子量調整剤]
重合工程は分子量調整剤の存在下に行われてもよい。例えば、オキシメチレン共重合体の分子量を調節する為に、分子量調節剤をトリオキサンに対して0.01質量ppm以上10質量%以下を使用することができ、0.1質量ppm以上1質量%以下が好ましい。分子量調節剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、アミド、イミド、フェノール化合物、アセタール化合物等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。特に、フェノール、2,6−ジメチルフェノール、メチラール及びポリオキシメチレンジメトキシドからなる群から選択される少なくとも1種がより好適に用いられる。最も好ましいのはメチラールである。
【0060】
前記分子量調節剤は、単独であるいは溶液の形で、重合反応原料へ添加される。すなわち、分子量調整剤の全部又は一部を溶媒で希釈して、重合反応原料へ添加してもよい。溶液の形で添加する場合、溶媒としては、特に限定されずず、既述の溶媒が例示される。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は生成した共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。また、トリオキサンの部分量もしくは1,3−ジオキソラン等のコモノマーの部分量又は全量を溶媒として使用してもよい。
【0061】
[I−9.重合反応の条件]
前記重合工程は、通常0.15MPa以上50MPa以下、好ましくは0.15MPa以上20MPa以下の、少なくとも重合機内の蒸気圧以上の加圧条件下で実施される。
【0062】
重合工程における重合温度は、重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までの間、生成したオキシメチレン共重合体が液体状態を維持可能な温度であることが必須であり、具体的には135℃以上300℃以下である。重合温度は、ケトン化合物を併用しない場合、好ましくは140℃以上220℃以下、最も好ましくは140℃以上190℃以下の温度範囲である。ケトン化合物を併用する場合、好ましくは140℃以上220℃以下、最も好ましくは140℃以上205℃以下の温度範囲である。重合工程は、重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までの間、上記重合温度を維持して実施する。重合温度が300℃以下であれば生成したオキシメチレン共重合体の分子量や重合収率が低下し難く、135℃以上であれば生成したオキシメチレン共重合体が固体として析出し難く、液体として取り扱うための簡素な装置による製造が可能となる。
【0063】
重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までの間、生成したオキシメチレン共重合体が液体状態を維持可能な温度で重合を行った場合、重合反応は弱い吸熱反応の為、反応熱以上の熱量を外部から供給しなければ、重合反応の進行に伴い重合混合物の温度は低下する。これに対して、重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までの間、生成したオキシメチレン共重合体が液体状態を維持出来ない温度で重合を行った場合、共重合体の結晶化熱による発熱が重合反応による吸熱を上回るため、その差分の発熱量以上を外部へ除熱しなければ重合の進行に伴い重合混合物の温度は上昇する。したがって、重合による内部温度が大きく上昇する場合、共重合体の析出が起こっていると判断できる。即ち、重合工程においては、重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までにおける最高温度と最低温度の差が、大きな除熱を行うことなく20℃未満となるような、十分高い重合温度で重合反応を行う。このような重合温度で重合反応を行うことにより、スタティックミキサー型反応機のような簡素で安価な重合設備による製造を行う際にも重合反応中の共重合体析出によるトラブルを防ぐことができる。
【0064】
重合開始剤添加時から重合停止剤添加時までの時間(重合時間)は、通常0.1分以上20分以下、好ましくは0.4分以上5分以下である。重合時間が20分以下であれば解重合が起こり難く、0.1分以上であれば重合収率が向上する。重合収率は通常30%以上、より好ましくは60%以上となる条件で実施する。
【0065】
重合反応は、不活性溶媒の存在下に行う溶液重合も可能であるが、溶媒の回収コストが不要な実質的に無溶媒下における無溶媒重合が好ましい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、特に限定されず、既述の溶媒が例示される。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は生成した共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。
【0066】
前記重合反応は回分式、連続式、何れの方法も可能であるが、工業的には連続式がより好ましい。上記重合反応に用いる装置としては、シェル型反応機、鋤刃混合機、管型反応機、リスト型反応機、ニーダー(例えばバスニーダー)、一軸又は二軸スクリューを備えた押出機、ダイナミックミキサー型反応機、スタティックミキサー型反応機などが挙げられる。中でも静止型混合エレメントを備えた駆動部を持たないスタティックミキサー型反応機が好適である。スタティックミキサー型反応機の内部の静止型混合エレメントは長方形の板を180度ねじった形状の右巻きねじれと左巻きねじれの2種のエレメントで構成されたものやお互いに噛み合い交差した板状の格子で構成されているものなどが好適に使用できる。
【0067】
[I−10.立体障害性フェノール化合物]
重合工程では、立体障害性フェノール化合物の存在下で共重合を行うことも可能である。立体障害性フェノール化合物を共存させる場合、その含有量はトリオキサンに対し、通常、0.0001質量%以上2.0質量%以下、好ましくは0.001質量%以上0.5質量%以下、より好ましくは0.002質量%以上0.1質量%以下である。立体障害性フェノール化合物の使用量が2.0質量%以下であれば生成するオキシメチレン共重合体の分子量の低下、重合収率の低下などを起こし難く、0.0001質量%以上であればオキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基構造などの不安定部分の生成を更に抑制するので、熱又は加水分解安定性の低下などの悪影響は起きない。
【0068】
前記立体障害性フェノール化合物は、単独であるいは溶液の形で、重合反応原料へ添加される。溶液の形で添加する場合、溶媒としては、特に限定されず、既述の溶媒が例示される。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は生成したオキシメチレン共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。また、トリオキサンの部分量もしくは1,3−ジオキソラン等のコモノマーの部分量又は全量を溶媒として使用してもよい。重合反応中の立体障害性フェノール化合物の活性を保つために、重合機入口で立体障害性フェノール化合物を単独であるいはその溶液を添加することが望ましい。
【0069】
重合工程に使用される立体障害性フェノール化合物としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。中でもトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及び3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種がより好適に使用され、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートが最も好適に使用される。
【0070】
[II−1.重合停止工程]
重合工程において、重合反応の停止は、重合停止剤を重合混合物に添加、混合することにより行うことができる。すなわち、オキシメチレン共重合体の製造方法は、重合停止剤を添加する工程を更に含むことが好ましい。重合停止剤は通常、溶融物、溶液又は懸濁液の形態で使用する。混合方法は前述の重合反応に使用可能な装置を用いて、回分式の場合は重合停止剤を重合機に一定時間後添加し、連続式の場合は重合混合物と重合停止剤を混合装置へ連続的に供給して行う。中でも静止型混合エレメントを備えた駆動部を持たないスタティックミキサー型反応機を用いて連続的に混合する方法が好適である。スタティックミキサー型反応機の内部の静止型混合エレメントは長方形の板を180度ねじった形状の右巻きねじれと左巻きねじれの2種のエレメントで構成されたものやお互いに噛み合い交差した板状の格子で構成されているものなどが好適に使用できる。
【0071】
[II−2.重合停止剤]
前記重合停止剤としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アルキル化メラミン、ヒンダードアミン化合物等のアミン化合物;三価の有機リン化合物;アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコラート等のアルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコラート等のアルカリ土類金属の塩が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。すなわち、重合停止剤は、アミン化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコラート、アルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ土類金属のアルコラートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合停止剤は単独又は2種以上の混合物として使用される。
【0072】
前記一級アミンとしてはn−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等が好適に使用される。二級アミンとしては、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピペリジン、モルホリン等が好適に使用される。三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン等が好適に使用される。アルキル化メラミンとしてはメラミンのメトキシメチル置換体であるモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサメトキシメチルメラミンあるいはその混合物等が好適に使用される。ヒンダードアミン化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチレンブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ〕、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、及びN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン縮合物等が好適に使用される。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド等が好適に使用される。
【0073】
なかでも未反応モノマーを蒸発分離する際にモノマーとの分離が容易である点で、ヒンダードアミン化合物、アルキル化メラミン、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属のアルコラートからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。上記した化合物のうち、ヒンダードアミン化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン縮合物がより好適である。アルキル化メラミンとしては、ヘキサメトキシメチルメラミンがより好適である。アルカリ金属の水酸化物又はアルコラートとしては、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシドがより好適である。そのなかで、ナトリウムメトキシドが最も好適である。
【0074】
更に重合停止剤として、アミン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートとを併用する方法は、過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属による着色やオキシメチレン共重合体の分子量低下などの悪影響を抑制することができるので、好適であり、なかでもアミン化合物とナトリウムメトキシドを併用する方法が最も好適である。
【0075】
上述した重合停止剤は単独で又は溶液若しくは懸濁液の形態で使用される。すなわち、重合停止剤の全部又は一部を溶媒で希釈して使用してもよい。重合停止剤を溶液又は懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶媒は特に限定されない。溶媒としては、水、アルコール溶剤に加えて、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の各種の脂肪族及び芳香族の有機溶剤が使用可能である。これらの中で好ましいものは、水及びアルコール溶剤並びにアセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、芳香族の有機溶剤である。なかでも、必須ではないが、1気圧での沸点が115℃以下の溶媒が好ましい。そのような溶媒は生成したオキシメチレン共重合体及び回収したトリオキサンからの蒸留分離が容易である。重合停止剤には、トリオキサンや1,3−ジオキソラン等のモノマーやコモノマーを溶媒として使用してもよい。また、別に製造したオキシメチレン共重合体により重合停止剤を希釈して添加することも好適である。
【0076】
前記重合停止剤の添加量は、重合工程で使用した重合開始剤量に対して、通常0.1モル当量以上100モル当量以下であり、好ましくは1モル当量以上10モル当量以下であり、最も好ましくは1モル当量以上2モル当量以下の範囲で使用される。重合停止剤の添加量が100モル当量以下であれば着色や分解によるオキシメチレン共重合体の分子量の低下を起こし難くい。また、0.1モル当量以上であれば解重合によるオキシメチレン共重合体の分子量の低下が起き難い。なお、重合停止剤のモル当量とは、重合開始剤1モルを失活させるのに要するモル数を意味する。
【0077】
また、重合停止剤として、アミン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートとを併用する場合は、重合工程で使用した重合開始剤量に対して、アミン化合物は通常0.1モル当量以上100モル当量以下、好ましくは1モル当量以上50モル当量以下、最も好ましくは1モル当量以上10モル当量以下の範囲で使用される。一方、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートは通常0.001モル当量以上50モル当量以下、好ましくは0.01モル当量以上5モル当量以下、最も好ましくは0.1モル当量以上2モル当量以下の範囲で使用される。0.1モル当量以上のアミン化合物をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートと併用することにより、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートの使用量を50モル当量以下に低減しても十分な重合停止効果を持ち、同時に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又はアルコラートのみを用いた場合に見られる過剰のアルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分による着色、オキシメチレン共重合体の分子量低下などの悪影響を抑制することができる。
【0078】
[II−3.重合反応の停止]
重合反応の停止は、通常0.15MPa以上50MPa以下、より好ましくは0.15MPa以上20MPa以下の、少なくとも内部の蒸気圧以上の加圧条件下で実施される。重合反応の停止は、通常130℃以上300℃以下、より好ましくは135℃以上250℃以下の温度範囲で実施される。重合停止剤を添加して重合開始剤を失活させる際の混合時間は、通常0.1分以上20分以下、より好ましくは1分以上10分以下である。
【0079】
オキシメチレン共重合体の製造方法が、重合停止剤を添加する工程を更に含む場合、内部に静止型混合エレメントを備えるスタティックミキサー型の連続重合機と、重合停止剤混合機とを直列に接続した連続重合装置を用いて、オキシメチレン共重合体を連続的に製造することが好ましい。
【0080】
[III−1.熱安定化工程]
重合反応停止後のオキシメチレン共重合体(以下、「重合混合物」ともいう)は、通常20質量%以上40質量%以下の残存モノマーや分解生成物であるホルムアルデヒド、テトラオキサン等の揮発成分を含んでいる。また、このオキシメチレン共重合体は、加熱によってホルムアルデヒドを発生するヘミアセタール末端に起因する熱的不安定部分を通常10質量%以下含有している。これらを除去するため、オキシメチレン共重合体の製造方法は、引き続き脱気装置によって、揮発成分及び熱的不安定部分の少なくとも一部をガス成分として除去する工程(熱安定化工程)を更に含むことが好ましい。
【0081】
前記脱気装置としては、フラッシュポット、一軸又は二軸スクリューを備えたベント付き押出機、一軸又は二軸の特殊形状の撹拌翼を備えた横型高粘度液脱気装置(例えば日立プラントテクノロジー社製メガネ翼重合機)、薄膜蒸発器、噴霧乾燥機、ストランド脱気装置などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。中でもフラッシュポット、一軸又は二軸スクリューを備えたベント付き押出機、一軸又は二軸の特殊形状の撹拌翼を備えた横型高粘度液脱気装置などからなる群から選択される脱気装置を単独もしくは複数台組み合わせて使用することがより好適である。また、前記揮発成分の脱気を促進するため、水などの大気圧における沸点が200℃以下の物質を、単独でまたはトリエチルアミンなどの塩基性物質とともにこれらの脱気装置に圧入後、減圧し脱気することもできる。脱気装置により分離された揮発成分(ガス成分)は、加圧装置または凝縮装置により液化するか、あるいは吸収装置により吸収され、そのまま、あるいは蒸留等により精製して重合工程へリサイクルすることができる。
【0082】
オキシメチレン共重合体の製造方法が、揮発成分及び熱的不安定部分の少なくとも一部をガス成分として除去する工程を更に含む場合、当該工程の温度は、例えば130℃以上300℃以下であり、好ましくは160℃以上250℃以下である。また当該工程の圧力は、例えば0.00001MPa以上50MPa以下であり、好ましくは0.0001MPa以上5MPa以下である。
【0083】
従って、オキシメチレン共重合体の製造方法は、重合工程で得られる重合混合物を、さらに130℃以上300℃以下の温度で0.00001MPa以上50MPa以下の圧力下にフラッシュポット、一軸又は二軸スクリューを備えたベント付き押出機及び一軸又は二軸の撹拌翼を備える横型高粘度液脱気装置からなる群から選択される少なくとも1種の脱気装置中で、揮発成分及び熱的不安定部分の少なくとも一部をガス成分として除去する工程を更に含むことが好ましい。更に、除去されたガス成分を液化し、その一部又は全部を原料トリオキサン中にリサイクルする工程を更に含むことが好ましい。ガス成分の液化方法は特に限定されず、通常用いられる方法から適宜選択することができる。例えば、ガス成分を加圧することで液化することができる。
【0084】
これらの方法により揮発成分及び熱的不安定部分をガス成分として除去した後、ペレット化することにより、熱安定性が良好で成形可能なオキシメチレン共重合体を得る事が出来る。
【0085】
また、上記の揮発成分及び熱的不安定部分を除去する工程中、もしくはその後工程において、一軸又は二軸スクリューを備えた押出機、一軸又は二軸の特殊形状の撹拌翼を備えた横型高粘度液脱気装置、スタティックミキサー等の工業的に通常使用する溶融混合装置を用いて、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤を添加混合することができる。
【0086】
[III−2.安定剤]
前記酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等の立体障害性フェノール化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0087】
前記熱安定剤としては、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、シアノグアニジン、N,N−ジアリールメラミン等のトリアジン化合物、ポリアミド化合物、尿素誘導体、ウレタン化合物等の有機化合物;ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの無機酸塩、水酸化物、有機酸塩等が挙げられる。
【0088】
なかでも立体障害性フェノール化合物及びトリアジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の安定剤を使用することが好適であり、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートとメラミンとの組合せが最も好適である。即ち、オキシメチレン共重合体の製造方法は、立体障害性フェノール化合物及びトリアジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の安定剤を添加する工程を更に含むことが好ましい。
【0089】
オキシメチレン共重合体に安定剤を添加する場合、安定剤の添加量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。安定剤の添加量は例えば、オキシメチレン共重合体に対して0.0001質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下である。
【0090】
上記オキシメチレン共重合体の製造方法によって得られる最終製品のオキシメチレン共重合体ペレットは、10torr減圧下で240℃、2時間加熱した場合の重量減少率等の方法で測定される不安定部分を例えば1.5質量%以下、通常0.1質量%以上1.4質量%以下で有し、その割合は少ない。
【0091】
上記オキシメチレン共重合体の製造方法で得られるオキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基量は、通常、オキシメチレン共重合体1g中のギ酸エステル末端基が5.0μmol以下であり、より好ましくは4.0μmol以下であり、ギ酸エステル末端基が少ない特徴がある。
【0092】
オキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基量は、実施例に記載した方法(
1H-NMR法)で測定される。前記ギ酸エステル末端基量は、実施例においては便宜上、重合反応のあと、残存モノマー、分解生成物を除去してから測定しているが、ギ酸エステル末端基量の測定時点は特に限定されるものではなく、重合停止剤投入後であってもよく、熱安定化工程後であってもよく、押し出し成形後であってもよい。
【0093】
また、上記オキシメチレン共重合体の製造方法で得られるオキシメチレン共重合体は、相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒド発生量(A)に対する、相対湿度98%下80℃24時間及び相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒドの発生量(B)の比(B/A比)が、通常、1.80以下であり、より好ましくは1.50以下であり、最も好ましくは1.40以下である。前記B/A比が1.80以下であれば、長期間の使用、及び高温・高湿度の環境の使用において、劣化が少なくホルムアルデヒドの発生量が少ない。
【0094】
オキシメチレン共重合体の前記B/A比は、実施例に記載した方法で測定される。前記B/A比は、本実施例においては、便宜上、熱安定化処理をしたオキシメチレン共重合体を用いて測定しているが、前記B/A比の測定時点は特に限定されるものではなく、重合停止剤投入後であってもよく、熱安定化工程後であってもよく、押し出し成形後であってもよい。
【0095】
さらに、上記オキシメチレン共重合体の製造方法で得られるオキシメチレン共重合体は、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量が、通常5.0%以下であり、より好ましくは4.0%以下であり、低分子量成分の量が少ない特徴がある。
【0096】
前記ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量は、実施例に記載した方法(GPC法)で測定される。前記ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量は、本実施例においては、便宜上、熱安定化処理をしたオキシメチレン共重合体を用いて測定しているが、その測定時点は特に限定されるものではなく、重合停止剤投入後であってもよく、熱安定化工程後であってもよく、押し出し成形後であってもよい。
【0097】
以上、詳述したオキシメチレン共重合体の製造方法により得られるオキシメチレン共重合体は、従来の方法で得られたオキシメチレン共重合体と同じく優れた性質を有し、同じ用途に用いることができる。
【0098】
また、上記オキシメチレン共重合体の製造方法により製造されたオキシメチレン共重合体には、着色剤、核剤、可塑剤、離型剤、蛍光増白剤あるいはポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物のような光安定剤等の添加剤を、所望により添加することができる。
【実施例】
【0099】
以下に本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また実施例、比較例において記載した用語及び測定方法を以下に説明する。
【0100】
<トリオキサン及びコモノマーに含まれる金属成分の濃度の測定>
重合反応に使用するトリオキサンとコモノマーの1,3−ジオキソランからなる混合物、約5gを合成石英ビーカーに入れ、68質量%硝酸1mlと超純水5mlを加えて、ホットプレートで加熱して、分解成分を揮発させた。ここに98質量%硫酸1mlを加え、石英時計皿でフタをして、湿式灰化を行った。更に加熱して硫酸を揮発させた後に室温まで冷却し、0.68質量%硝酸水溶液により溶解、希釈し約200gの試料溶液を調製した。ICP−MS(Agilent製 ICP−MS 7500cx)を用いて、試料溶液中の金属成分の定量分析を行った。検出されたNa、Fe、Cr、Ni及びMoの成分の濃度の合計値を求めた。
【0101】
<ギ酸エステル末端基量の測定>
オキシメチレン共重合体中のギ酸エステル末端基量は、
1H−NMRスペクトルにより定量した(分析機器:日本電子製NMR LA−500)。
1)サンプル調製:実施例及び比較例で得られたオキシメチレン共重合体、約12mgを秤量し、ヘキサフルオロイソプロパノール−d
2、1gに溶解した。
2)分析:NMRチャートの8.1ppm付近に存在するギ酸エステル末端基由来のピークと4.5ppmから5.5ppmに存在するオキシメチレン共重合体の主鎖ピークとの積分比から、オキシメチレン共重合体1g当たりのギ酸エステル末端基量(単位:μmol)を求めた。
【0102】
<B/A比の測定>
相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒド発生量(A)に対する相対湿度98%下80℃24時間及び相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒドの発生量(B)の比(B/A比)は、熱安定化処理をしたオキシメチレン共重合体を用いて以下のようにして測定した。
【0103】
1)熱安定化処理
後述する実施例及び比較例において得られたオキシメチレン共重合体45gを3torr、60℃、2時間の条件で減圧乾燥したのち、オキシメチレン共重合体100質量部当たり、メラミン0.1質量部、水酸化マグネシウム(協和化学工業製、マグサラットF)0.05質量部、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート 0.3質量部を添加・混合し、ラボプラストミル(東洋精機製4M150型、ローラミキサーR60H)を用いて窒素雰囲気下、常圧、220℃、20分間、30rpmで溶融混練した。
【0104】
2)ホルムアルデヒド発生量の測定
ホルムアルデヒド発生量の測定は、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(HS−GC)(島津製作所製ガスクロマトグラフ GC−2010plus、ヘッドスペースサンプラー Turbo Matrix40)を用いて行った。
上述のようにして熱安定化処理を行ったオキシメチレン共重合体を、3torr、100℃、3時間の条件で減圧乾燥したのち、液体窒素を用いて凍結粉砕し、60−120メッシュ篩分け品を採取して、次の2種類の熱処理を行った。
(a)常圧、相対湿度11%、80℃、3時間の条件で乾燥を行った(基準処理)。
(b)常圧、相対湿度98%、80℃、24時間の条件で加湿下熱処理を行った後、相対湿度11%、常圧、80℃、3時間の通常条件で乾燥を行った(加湿下熱処理)。
それぞれの処理後、乾燥空気中で室温まで冷却した後、オキシメチレン共重合体を1g秤量し、ヘッドスペースサンプラーにセットし、160℃、2時間保温した後、サンプラー中のホルムアルデヒド濃度を測定した。
3)B/A比の計算
上述した2)−(a)の基準処理を行ったときのホルムアルデヒド濃度(A)に対する、上述した2)−(b)の加湿下熱処理を行ったときのホルムアルデヒド濃度(B)の比(B/A比)を計算した。
【0105】
<オキシメチレン共重合体中の低分子量成分量の測定>
ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量は、熱安定化処理をしたオキシメチレン共重合体を用いて以下のようにして測定した。
【0106】
1)熱安定化処理
後述する実施例及び比較例において得られたオキシメチレン共重合体45gを3torr、60℃、2時間の条件で減圧乾燥したのち、オキシメチレン共重合体100質量部当たり、メラミン0.1質量部、水酸化マグネシウム(協和化学工業製 マグサラットF)0.05質量部、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート 0.3質量部を添加・混合し、ラボプラストミル(東洋精機製4M150型、ローラミキサーR60H)により窒素雰囲気下、常圧、220℃、20分間、30rpmで溶融混練した。
【0107】
2)数平均分子量分布の測定
上述のようにして熱安定化処理を行ったオキシメチレン共重合体の数平均分子量分布は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒に用い、検量線用標準としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフ(GPC)(昭和電工製 Shodex GPC−101)により測定して求めた。得られた分子量分布のチャートの面積比から、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満のオキシメチレン共重合体の含有量を算出した。
【0108】
<重合開始剤の調製>
過塩素酸溶液 ; 過塩素酸(HClO
4;70質量%水溶液)をジエチレングリコールジメチルエーテルで希釈して過塩素酸-ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を使用直前に調製した。
トリフルオロメタンスルホン酸溶液 ; トリフルオロメタンスルホン酸(CF
3SO
3H)をジエチレングリコールジメチルエーテルで希釈してトリフルオロメタンスルホン酸-ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を使用直前に調製した。
【0109】
<プロトン酸の塩の調製>
過塩素酸塩溶液 ; ナトリウムメトキシド(28質量%メタノール溶液)と過塩素酸(70質量%水溶液)を1:1のモル比で塩を生成する様に25℃のジエチレングリコールジメチルエーテル中で反応させ、NaClO
4−ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を重合反応直前に調製した。
トリフルオロメタンスルホン酸塩溶液 ; トリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸を1:1のモル比で塩を生成する様に25℃のジエチレングリコールジメチルエーテル中で反応させ、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアミン塩(TEAT)−ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を重合反応直前に調製した。
【0110】
<実施例及び比較例>
実施例1
重合装置として加熱ヒーターと撹拌機を有する内容積500mlのSUS316製耐圧反応器を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。SUS316製耐圧反応器は使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で350℃、7時間、高温熱処理してから使用した。反応器を80℃に加熱し、内部を乾燥窒素で乾燥・置換した後、トリオキサン200g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)、コモノマーの1,3−ジオキソラン10gを仕込み、高圧窒素により2.5MPaGに加圧した。150rpmで撹拌しながら内部温度が155℃になるまで加熱し、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)を使用直前に混合し、1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し重合を開始した。このとき、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度は、表1に示した通りであった。また、金属成分の内訳は、表3に示した通りであった。重合によって、内部圧力は3から4MPaGまで上昇した。2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の2倍モルに相当するトリ−n−ブチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止し、放圧することにより未反応モノマーや分解生成物を蒸発させてオキシメチレン共重合体を収得した。圧力の単位(MPaG)におけるGはゲージ圧であることを示す。
重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は151℃以上157℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定し、その結果を表1に示した。
【0111】
実施例2
2分間重合させた後、実施例2では使用した重合開始剤量の1.2倍モルに相当するナトリウムメトキシド(CH
3ONa)をジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例1と同様な操作を行った。重合開始後、5℃内部温度が低下したが、その後は150℃以上157℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定し、その結果を表1に示した。
【0112】
実施例3及び実施例6
重合開始時の内部温度を150℃にし、2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリ−n−オクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例1と同様な操作を行った。重合開始後、5℃内部温度が低下したが、その後は145℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定し、その結果を表1に示した。
【0113】
実施例4
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の1.5倍モルに相当するヘキサメトキシメチルメラミン(cymel303)をジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例1と同様な操作を行った。重合開始後、3℃内部温度が低下したが、その後は152℃以上157℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定し、その結果を表1に示した。
【0114】
実施例5
重合開始時の内部温度を165℃とし、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)に加えてアセトンを使用直前に混合したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例3と同様な操作を行った。重合開始後、4℃内部温度が低下したが、その後は161℃以上167℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定し、その結果を表1に示した。
【0115】
比較例1
重合装置としてジャケット、ショーグラス、2枚のZ型翼を有する内容積1LのSUS304製卓上型二軸混練機を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。重合装置の使用前には酸洗浄は行わなかった。ジャケットに70℃温水を循環させ、さらに内部を100℃の空気で1時間加熱乾燥した後、蓋を取り付けて系内を窒素置換した。原料投入口よりトリオキサン300g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)コモノマーの1,3−ジオキソラン12gを仕込み、Z型翼によって撹拌し、内部温度が70℃となってからトリオキサンに対して77ppmの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体をベンゼン溶液(溶液濃度:0.6mmol/ml)として添加し重合を開始した。このとき、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度の合計値は500質量ppb(Na:91、Fe:305、Cr:72、Ni:32、単位:質量ppb)であった。4分間重合させたのち、使用した重合開始剤量の10倍モルに相当するトリエチルアミンをベンゼン溶液(溶液濃度:5mmol/ml)としてシリンジを用いて重合装置内に添加し、15分間混合して重合を停止し、オキシメチレン共重合体を収得した。
重合開始後、共重合体の析出がショーグラスから目視で観察されると共に内部温度が102℃まで上昇した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、ギ酸エステル末端基量を測定した結果10.7μmol/g−POMであった。POMはポリオキシメチレンの略号である。
【0116】
比較例2
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例1と同様な操作を行った。比較例2ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0117】
比較例3
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例2と同様な操作を行った。比較例3ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0118】
比較例4
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例3と同様な操作を行った。比較例4ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0119】
比較例5
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例4と同様な操作を行った。比較例5ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0120】
比較例6
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例5と同様な操作を行った。比較例6ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0121】
比較例7
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の含有量の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例6と同様な操作を行った。比較例7ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0122】
実施例7
重合装置として加熱ヒーターと撹拌機を有する内容積500mlのSUS316製耐圧反応器を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。SUS316製耐圧反応器は使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で350℃、7時間、高温熱処理してから使用した。反応器を80℃に加熱し、内部を乾燥窒素で乾燥・置換した後、トリオキサン200g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)、コモノマーの1,3−ジオキソラン10gを仕込み、高圧窒素により2.5MPaGに加圧した。150rpmで撹拌しながら内部温度が150℃になるまで加熱し、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)を使用直前に混合し、1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し重合を開始した。このとき、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度は表1に示した通りであった。また、金属成分の内訳は、表3に示した通りであった。重合によって、内部圧力は3から4MPaGまで上昇した。2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、攪拌回転数を50rpmとし50分間混合して重合を停止し、放圧することにより未反応モノマーや分解生成物を蒸発させてオキシメチレン共重合体を収得した。
重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いて、B/A比を測定した。表1に結果を示した。
【0123】
実施例8
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、攪拌回転数を150rpmとし50分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例7と同様な操作を行った。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いてB/A比を測定し表1に結果を示した。
【0124】
実施例9及び実施例12
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、攪拌回転数を50rpmとし5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例7と同様な操作を行った。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いてB/A比を測定し表1に結果を示した。
【0125】
実施例10
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、攪拌回転数を150rpmとし5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例7と同様な操作を行った。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いてB/A比を測定し表1に結果を示した。
【0126】
実施例11
重合開始温度を165℃とし、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)に加えてアセトンを使用直前に混合したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は実施例9と同様な操作を行った。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は161℃以上167℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いてB/A比を測定し表1に結果を示した。
【0127】
比較例8
重合装置としてジャケット、ショーグラス、2枚のZ型翼を有する内容積1LのSUS304製卓上型二軸混練機を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。重合装置の使用前には酸洗浄は行わなかった。ジャケットに70℃温水を循環させ、さらに内部を100℃の空気で1時間加熱乾燥した後、蓋を取り付けて系内を窒素置換した。原料投入口よりトリオキサン300g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)コモノマーの1,3−ジオキソラン12gを仕込み、Z型翼によって撹拌し、内部温度が70℃となってからトリオキサンに対して77ppmの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体をベンゼン溶液(溶液濃度:0.6mmol/ml)として添加し重合を開始した。このとき、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度の合計値は500質量ppb(Na:91、Fe:305、Cr:72、Ni:32、単位:質量ppb)であった。4分間重合させたのち、使用した重合開始剤量の10倍モルに相当するトリエチルアミンをベンゼン溶液(溶液濃度:5mmol/ml)としてシリンジを用いて重合装置内に添加し、15分間混合して重合を停止し、オキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、共重合体の析出がショーグラスから目視で観察されると共に内部温度が100℃まで上昇した。得られたオキシメチレン共重合体に対して上述した熱安定化処理を行い、HS−GCを用いて測定したB/A比は2.02であった。
【0128】
比較例9
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例7と同様な操作を行った。比較例9ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0129】
比較例10
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例8と同様な操作を行った。比較例10ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0130】
比較例11
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例9と同様な操作を行った。比較例11ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0131】
比較例12
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例10と同様な操作を行った。比較例12ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0132】
比較例13
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例11と同様な操作を行った。比較例13ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0133】
比較例14
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の含有量の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3−ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例12と同様な操作を行った。比較例14ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0134】
実施例13
重合装置として加熱ヒーターと撹拌機を有する内容積500mlのSUS316製耐圧反応器を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。SUS316製耐圧反応器は使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で350℃、7時間、高温熱処理してから使用した。反応器を80℃に加熱し、内部を乾燥窒素で乾燥・置換した後、トリオキサン200g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)、コモノマーの1,3−ジオキソラン10gを仕込み、高圧窒素により2.5MPaGに加圧した。150rpmで撹拌しながら内部温度が150℃になるまで加熱し、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)を使用直前に混合し、1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し重合を開始した。このとき、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度は表1に示した通りであった。また、金属成分の内訳は、表3に示した通りであった。重合によって、内部圧力は3から4MPaGまで上昇した。2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の10倍モルに相当するトリブチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止し、放圧することにより未反応モノマーや分解生成物を蒸発させてオキシメチレン共重合体を収得した。
重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0135】
実施例14
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の1.2倍モルに相当するナトリウムメトキシドをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行いオキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0136】
実施例15
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の1.1倍モルに相当するナトリウムメトキシドをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行いオキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0137】
実施例16
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の1.0倍モルに相当するナトリウムメトキシドをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行いオキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0138】
実施例17
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の20倍モルに相当するヘキサメトキシメチルメラミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行いオキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0139】
実施例18
重合開始温度を165℃とし、トリオキサンに対して表1に示した量の重合開始剤(3質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)とプロトン酸の塩(0.5質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)に加えてアセトンを使用直前に混合し、2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行い、オキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は161℃以上167℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0140】
実施例19
2分間重合させた後、使用した重合開始剤量の100倍モルに相当するトリオクチルアミンをジエチレングリコールジメチルエーテル溶液(溶液濃度:5mmol/ml)として1mlのベンゼンと共にポンプにより圧入し、5分間混合して重合を停止したことと、重合開始剤とプロトン酸の塩を添加する前の、重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソランの全量に含まれる金属成分の濃度が表1に示した通りであった以外は、実施例13と同様な操作を行いオキシメチレン共重合体を収得した。重合開始後、約4℃内部温度が低下したが、その後は146℃以上152℃以下の間の内部温度を維持した。得られたオキシメチレン共重合体に対して前述の熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定し、その結果を表1に示した。
【0141】
比較例15
重合装置としてジャケット、ショーグラス、2枚のZ型翼を有する内容積1LのSUS304製卓上型二軸混練機を用い、バッチ式の重合によりオキシメチレン共重合体の製造を実施した。重合装置の使用前には酸洗浄は行わなかった。ジャケットに70℃温水を循環させ、さらに内部を100℃の空気で1時間加熱乾燥した後、蓋を取り付けて系内を窒素置換した。原料投入口よりトリオキサン300g(安定剤として立体障害性フェノール化合物であるヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を100質量ppm含有する。水、ギ酸、ホルムアルデヒド等の不純物はそれぞれ20質量ppm以下であった。)、コモノマーの1,3−ジオキソラン12gを仕込み、Z型翼によって撹拌し、内部温度が70℃となってからトリオキサンに対して77ppmの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.008質量%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液として)を添加し重合を開始した。このとき、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体添加前の重合に使用したトリオキサンと1,3−ジオキソラン中の金属成分の濃度の合計値は500質量ppb(Na:91、Fe:305、Cr:72、Ni:32、単位:質量ppb)であった。4分間重合させたのち、使用した重合開始剤量の10倍モルに相当するトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液(溶液濃度:5mmol/ml)としてシリンジを用いて重合装置内に添加し、15分間混合して重合を停止し、オキシメチレン共重合体を収得した。
重合開始後、内部温度が103℃まで上昇した。得られたオキシメチレン共重合体を粉砕し減圧下で低沸点物を除去した後、熱安定化処理を行い、GPCにより、ポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合を測定した結果5.9%であった。
【0142】
比較例16
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例13と同様な操作を行った。比較例16ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0143】
比較例17
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例14と同様な操作を行った。比較例17ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0144】
比較例18
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例15と同様な操作を行った。比較例18ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0145】
比較例19
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例16と同様な操作を行った。比較例19ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0146】
比較例20
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例17と同様な操作を行った。比較例20ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0147】
比較例21
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例18と同様な操作を行った。比較例21ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0148】
比較例22
SUS316製耐圧反応器を使用前に硫酸1質量%水溶液で酸洗浄後、純水とアセトンで洗浄し、空気中で100℃、1時間、乾燥してから使用し、金属成分の濃度の合計値が350質量ppb(Na:234、Fe:88、Cr:18、Ni:8.0、Mo:2.0、単位:質量ppb)であるトリオキサンと1,3-ジオキソランを重合原料に使用した以外は、実施例19と同様な操作を行った。比較例22ではオキシメチレン共重合体は生成せず、内部温度は変化しなかった。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
<実施例及び比較例の説明>
分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下の原料を用いて145℃以上167℃以下の温度で重合反応を行った実施例1から6で得られたオキシメチレン共重合体1g中のギ酸エステル末端基量は5.0μmol以下であった。これに対して、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が500質量ppbの原料を、重合開始剤により70℃以上102℃以下の温度で塊状重合させ、重合の進行と共に生成した重合物を沈殿固化させた比較例1で得られたオキシメチレン共重合体1g中のギ酸エステル末端基量は10.7μmolであった。
【0153】
さらに、分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppbを超える原料を用いて重合した比較例2から7では重合が進行しなかった。すなわち、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であること以外は同条件とした実施例1から6の重合結果と比較して、著しく劣っていた。
【0154】
また、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例1から6では、重合開始後、3℃以上5℃以下で温度が低下し、その後も重合開始時の温度から2℃までしか温度が上昇しなかった。これに対し、重合開始時温度が70℃である比較例1では重合開始後、共重合体の析出がショーグラスから目視で観察されると同時に、共重合体の結晶化熱により重合開始時温度よりも30℃以上温度が上昇した。以上のことから、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例1から6では共重合体の析出は起こっていないと認められる。
【0155】
分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下の原料を用いて146℃以上167℃以下の温度で重合反応を行った実施例7から12で得られたオキシメチレン共重合体の相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒド発生量(A)に対する、相対湿度98%下80℃24時間及び相対湿度11%下80℃3時間の熱処理を行ったオキシメチレン共重合体のホルムアルデヒドの発生量(B)の比(B/A比)は1.80以下であった。これに対して、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が500質量ppbの原料を、重合開始剤により70℃以上100℃以下の温度で塊状重合させ、重合の進行と共に生成した重合物を沈殿固化させた比較例8で得られたオキシメチレン共重合体のB/A比は、2.02と悪かった。
【0156】
さらに、分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppbを超える原料を用いて重合した比較例9から14では重合が進行しなかった。すなわち、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であること以外は同条件とした実施例7から12の重合結果と比較して、著しく劣っていた。
【0157】
また、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例7から12では、重合開始後、4℃温度が低下し、その後も重合開始時の温度から2℃までしか温度が上昇しなかったのに対し、重合開始時温度が70℃である比較例8では重合開始後、共重合体の析出がショーグラスから目視で観察されると同時に、共重合体の結晶化熱により重合開始時温度よりも30℃温度が上昇したことから、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例7から12では共重合体の析出は起こっていないと認められる。
【0158】
分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3-ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下の原料を用いて146℃以上167℃以上の温度で重合反応を行った実施例13から19で得られたオキシメチレン共重合体のポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合は5.0%以下であった。これに対して、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が500質量ppbの原料を、重合開始剤により70℃以上103℃以下の温度で塊状重合させ、重合の進行と共に生成した重合物を沈殿固化させた比較例15で得られたオキシメチレン共重合体のポリメチルメタクリレート換算数平均分子量が10000未満であるオキシメチレン共重合体の存在割合の5.9%であった。
【0159】
さらに、分子量が1000以下のプロトン酸とそのプロトン酸の塩を共存させ、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppbを超える原料を用いて重合した比較例16から22では重合が進行しなかった。すなわち、トリオキサンと1,3−ジオキソランに含まれる金属成分の濃度の合計値が300質量ppb以下であること以外は同条件とした実施例13から19の重合結果と比較して、著しく劣っていた。
【0160】
また、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例13から19では重合開始後、約4℃温度が低下し、その後も重合開始時の温度から2℃までしか温度が上昇しなかったのに対し、重合開始時温度が70℃である比較例15では重合開始後、共重合体の析出がショーグラスから目視で観察されると同時に、共重合体の結晶化熱により重合開始時温度よりも30℃以上温度が上昇したことから、重合開始時温度が150℃以上165℃以下の実施例13から19では共重合体の析出は起こっていないと認められる。
【0161】
日本国特許出願2014−261838号(出願日:2014年12月25日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。