(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部分と前記第2部分とは、前記長手方向に対する直交方向にずらして配置されることで互い違いに配置されていると共に、前記第1部分の先端が前記第2部分の先端同士の間に入り込み、それぞれの先端同士の側面が対向させられている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。ここでは半導体素子として、反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが備えられるSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0015】
図1および
図2に示すように、本実施形態にかかるSiC半導体装置は、セル部として、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsを有した構成とされている。これらメインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsには、同じ構造の反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが備えられている。そして、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsの間が後述する素子分離層14によって素子分離されていて電気的に分離されている。なお、
図1は、SiC半導体装置のうちのメインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsの一部のみを拡大した図であり、
図2は、
図1中破線で示した範囲Rを拡大した図である。実際には、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsを有するセル部と、セル部を囲むガードリング部などの外周耐圧構造が形成された外周部が備えられることで、SiC半導体装置が構成されている。
【0016】
図3〜
図5に示すように、SiC半導体装置は、SiCからなる高濃度不純物層を構成するn
+型基板1の表面側に、n
+型基板1よりも低不純物濃度のSiCからなるn
-型ドリフト層2がエピタキシャル成長させられた半導体基板を用いて形成されている。つまり、裏面側がn
+型基板1による高濃度不純物層、表面側がそれよりも低不純物濃度のn
-型ドリフト層2とされた半導体基板が用いられている。n
+型基板1は、例えばn型不純物濃度が1.0×10
19/cm
3とされ、表面が(0001)Si面とされている。n
-型ドリフト層2は、例えばn型不純物濃度が0.5〜2.0×10
16/cm
3とされている。
【0017】
n
-型ドリフト層2の上層部には、p型SiCで構成されたp型ベース領域3とn型SiCで構成されたn
+型ソース領域4が順に形成されている。さらに、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通するように、トレンチ5aが形成されており、このトレンチ5a内を埋め込むようにp型ディープ層5が形成されている。
【0018】
なお、トレンチ5aは、例えば幅が1μm以下、アスペクト比が2以上の深さとされている。トレンチ5aの延設方向、つまりp型ディープ層5の延設方向については任意である。ただし、トレンチ5aを<11−20>方向に延設し、トレンチ5aのうち長辺を構成している対向する両壁面が同じ(1−100)面となるようにすると、埋込エピ時の成長が両壁面で等しくなる。このため、均一な膜質にできると共に、埋込み不良の抑制効果も得られる。
【0019】
p型ベース領域3は、チャネル領域が形成される部分で、p型不純物濃度が例えば2.0×10
17/cm
3程度とされ、厚みが300nmで構成されている。n
+型ソース領域4は、n
-型ドリフト層2よりも高不純物濃度とされ、表層部におけるn型不純物濃度が例えば2.5×10
18〜1.0×10
19/cm
3、厚さ0.5μm程度で構成されている。n
+型ソース領域4は、後述するトレンチゲート構造の両側に配置されている。また、p型ディープ層5は、n
+型ソース領域4を挟んでトレンチゲート構造と反対側に備えられており、直線状とされ、複数本が並べられることでストライプ状とされている。p型ディープ層5は、p型ベース領域3よりも不純物濃度が高く設定されており、例えばボロンもしくはアルミニウム等のp型不純物濃度が例えば1.0×10
17〜1.0×10
19/cm
3とされており、幅0.7μm、深さ2.0μm程度で構成されている。
【0020】
また、p型ベース領域3およびn
+型ソース領域4を貫通してn
-型ドリフト層2に達するように、紙面垂直方向を長手方向とするトレンチ6が形成されている。トレンチ6は、例えば幅が0.8μm、深さが1.0μmとされている。このトレンチ6の側面と接するように上述したp型ベース領域3およびn
+型ソース領域4が配置されている。
【0021】
さらに、p型ベース領域3のうちn
+型ソース領域4とn
-型ドリフト層2との間に位置する部分の表層部をチャネル領域として、このチャネル領域を含むトレンチ6の内壁面にはゲート絶縁膜7が形成されている。そして、ゲート絶縁膜7の表面にはドープトPoly−Siにて構成されたゲート電極8が形成されており、これらゲート絶縁膜7およびゲート電極8によってトレンチ6内が埋め尽くされている。
【0022】
このようにして、トレンチゲート構造が構成されている。このトレンチゲート構造は、
図3の紙面垂直方向、換言すれば
図4の左右方向を長手方向として延設されており、複数のトレンチゲート構造が
図3中の左右方向に並べられることでストライプ状とされている。また、上述したn
+型ソース領域4およびp型ディープ層5もトレンチゲート構造の長手方向に沿って延設された構造とされている。
【0023】
また、n
+型ソース領域4およびp型ディープ層5の表面やゲート電極8の表面には、層間絶縁膜9を介してメインソース電極10やセンスソース電極11が形成されている。メインソース電極10やセンスソース電極11は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn
+型ソース領域4やn型ドープの場合のゲート電極8と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp型ディープ層5と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。
【0024】
なお、これらメインソース電極10やセンスソース電極11は、層間絶縁膜9上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、層間絶縁膜9に形成されたコンタクトホールを通じて、メインソース電極10やセンスソース電極11は、メインセル領域Rmやセンスセル領域Rsそれぞれのn
+型ソース領域4およびp型ディープ層5と電気的に接触させられている。
【0025】
一方、n
+型基板1の裏面側にはn
+型基板1と電気的に接続されたドレイン電極12が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されており、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの両方に同じ構造のMOSFETが形成されている。そして、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsに備えられる反転型のMOSFETのセル面積、換言すればセル数が所定比率となるようにしてある。
【0026】
また、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間において、p型ベース領域3の表面からp型ベース領域3よりも深い位置まで素子分離層14が形成されている。この素子分離層14は、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間を素子分離、つまり電気的に分離するものであり、例えばトレンチゲート構造と同様、酸化膜などの絶縁膜14aの上にポリシリコン層14bが積まれた構造とされている。
【0027】
素子分離層14は、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に帯状に形成された枠体形状とされており、本実施形態においては、
図1に示すようにセンスセル領域Rsを囲む四角形状、より詳しくは長方形状の枠体形状で構成されている。四角形状とされた素子分離層14の相対する二辺14c、14dは、トレンチゲート構造の長手方向に沿った辺とされ、残る二辺14e、14fは、トレンチゲート構造の長手方向に対して直交する辺とされている。
【0028】
さらに、メインセル領域Rmのうちセンスセル領域Rsの近傍や、センスセル領域Rsのうちメインセル領域Rmの近傍では、MOSFETのセルが形成されていない部分が設けられている。この領域には、少なくともp型ベース領域3よりも下方に延びるp型層にて構成された電界緩和層15が形成されている。本実施形態の場合、電界緩和層15は、p型ディープ層5と同様の構成、すなわちトレンチ15a内にp型層を埋込エピ成長させることによって構成されており、直線状とされていて、複数本が並べられてストライプ状とされている。
【0029】
具体的には、p型ディープ層5は、トレンチ6のうち長手方向と平行な側面と対向して配置されている。電界緩和層15のうちの一部は、p型ディープ層5に連結されるように形成されている。つまり、電界緩和層15のうちの一部は、p型ディープ層5を
図2の紙面左右方向において延長し、トレンチゲート構造よりも突き出した構造とした部分によって構成されている。この電界緩和層15のうちの一部は、メインセル領域Rmやセンスセル領域Rsを越えて、素子分離層14の辺14e、14fの底部まで形成されている。この電界緩和層15のうち、メインセル領域Rm側からセンスセル領域Rs側に突き出すように設けられた部分が第1部分に相当し、センスセル領域Rs側からメインセル領域Rm側に突き出すように設けられた部分が第2部分に相当する。
【0030】
メインセル領域Rm側から突き出した第1部分に相当する電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した第2部分に相当する電界緩和層15は、共に、素子分離層14の辺14e、14fの底部に至る位置まで形成されている。ただし、両者は、互いに離れた位置で終端するように設けられている。このため、メインセル領域Rm側の電界緩和層15とセンスセル領域Rs側の電界緩和層15が電気的に分離されており、電界緩和層15を通じてメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとが導通しないようになっている。
【0031】
また、電界緩和層15のうちの残りの部分は、p型ディープ層5および上記した電界緩和層15のうちの一部を合わせた長さに設定され、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に配置されている。本実施形態の場合、電界緩和層15のうちの残りの部分は、メインセル領域Rmやセンスセル領域Rsのp型ディープ層5と等間隔に配置されている。
【0032】
なお、電界緩和層15の深さおよび不純物濃度については任意であるが、電界集中を緩和するためにある程度深くて高不純物濃度である方が好ましく、本実施形態ではp型ディープ層5と同じ深さ同じ不純物濃度にしてある。
【0033】
さらに、本実施形態の場合、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15は、一直線上に並べられ、先端同士が突き合わされるように対向配置されている。そして、
図2に示すように、先端同士の間に、間隔Wpが設けられている。この間隔Wpは、隣り合うp型ディープ層5および電界緩和層15同士の間隔Wd以下に設定され、ここでは間隔Wdよりも小さくされている。さらに、間隔Wdは、無バイアス時に電界緩和層15から延びる空乏層長さ以上に設定される。つまり、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15の間の最短距離が、無バイアス時に電界緩和層15から延びる空乏層長さ以上に設定される。これにより、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間の絶縁性を確保するとともにオフ時電界の入り込みを抑制することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の場合、素子分離層14の幅は、辺14c、14dと辺14e、14f共に、隣り合うp型ディープ層5および電界緩和層15同士の間隔Wdよりも広くされている。このため、辺14c、14dの底部には、少なくとも1本は電界緩和層15が配置されており、
図2中では、電界緩和層15が2本配置された状態となっている。
【0035】
このように、素子分離層14の底部に電界緩和層15を配置しているため、電界緩和層15によって素子分離層14の底部での電界集中を緩和することが可能となり、十分な耐圧構造を得ることができる。また、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsおよび素子分離層14が形成された領域に、p型ディープ層5や電界緩和層15によるp型層を等間隔に配置している。このため、セル部の全域において、MOSFETのオフ時における高電界のせり上がり、つまりp型ディープ層5や電界緩和層15の間への電界の入り込みを抑制でき、所望の耐圧を得ることが可能となっている。
【0036】
より詳しくは、素子分離層14は、半導体基板の表面に対する法線方向から見て、電界緩和層15のうちメインセル領域Rm側から突き出した部分とセンスセル領域Rs側から突き出した部分と重合する領域を除いた非重合領域を有している。そして、この非重合領域がセンスセル領域Rsを1周連続的に囲む環状構造となるように、電界緩和層15をレイアウトしている。さらに、電界緩和層15のうちメインセル領域Rm側から突き出した部分とセンスセル領域Rs側から突き出した部分との間の最短距離が、半導体基板の表面に対する法線方向から見て、無バイアス時に電界緩和層15より延びる空乏層長さ以上、かつ、間隔Wd以下に設定されている。これにより、上記効果を得ることが可能となる。
【0037】
また、素子分離層14の上には、フィールド酸化膜16を介して層間絶縁膜9が形成されている。そして、例えば素子分離層14の上方において、メインソース電極10とセンスソース電極11が分離されており、それぞれ別々に外部との接続が行えるようになっている。
【0038】
なお、図示しないが、メインセル領域Rmのうちセンスセル領域Rsの近傍や、センスセル領域Rsのうちメインセル領域Rmの近傍において、層間絶縁膜9にはコンタクトホールが形成されている。このコンタクトホールを通じて電界緩和層15がメインソース電極10もしくはセンスソース電極11に接続されている。これにより、電界緩和層15が、p型ディープ層5と同様に、各ソース電位に固定される。
【0039】
以上のようにして、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsに同じ構造の反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが備えられるSiC半導体装置が構成されている。このようなSiC半導体装置に備えられる反転型のトレンチゲート構造のMOSFETは、ゲート電極8にゲート電圧を印加すると、p型ベース領域3のうちトレンチ6に接している表面にチャネルが形成される。これにより、メインソース電極10やセンスソース電極11から注入された電子がn
+型ソース領域4からチャネルを通じて流れ、メインソース電極10およびセンスソース電極11とドレイン電極12との間に電流を流すという動作を行う。
【0040】
そして、このような反転型のMOSFETをメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsそれぞれに形成し、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsに備えられたMOSFETのセル面積を所定比率に設定してある。このため、メインセル領域Rmに流れる電流を所定比率で減少させた電流をセンスセル領域Rsに流すことができる。したがって、センスセル領域Rsに流れる電流を外部に出力することで、メインセル領域Rmに流れる電流をセンシングできる。
【0041】
このような構成のSiC半導体装置において、上記したようにメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの間を電気的に分離するように素子分離層14を備えつつ、素子分離層14の底部において電界集中が緩和されるように電界緩和層15を備えている。さらに、電界緩和層15を直線状で構成している。
【0042】
このように電界緩和層15を直線状とする場合、隣り合う電界緩和層15の間やメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間において、電界の入り込みによる耐圧低下が懸念される。しかしながら、隣り合う電界緩和層15については、隣り合うp型ディープ層5の間隔Wdと同じ間隔で形成してあることから、電界の入り込みを抑制することができる。また、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間においても、両者の間隔Wpを隣り合うp型ディープ層5の間隔Wd以下にしている。したがって、これらの間についても電界の入り込みを抑制することができる。よって、電界緩和層15を直線状で構成しても、耐圧を確保することができる。
【0043】
このため、後述するように、電界緩和層15を埋込エピ成長によって形成する場合には、電界緩和層15の形成範囲が広くないため、埋込不良を発生させることなく、的確に電界緩和層15が形成されるようにできる。したがって、電界緩和不足を生じさせることはなく、耐圧低下を抑制することが可能となって、所望の耐圧を得ることができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0044】
また、電界緩和層15をイオン注入によって形成することもできるが、その場合においても、電界緩和層15の形成範囲が広くないため、イオン注入領域の面積を小さくすることが可能となる。したがって、イオン注入による結晶ダメージを抑制することが可能となり、リークを抑制することも可能となる。
【0045】
さらに、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15の間の最短距離を、無バイアス時に電界緩和層15から延びる空乏層長さ以上に設定している。このため、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間の絶縁性を確保するとともにオフ時電界の入り込みを抑制することも可能となり、所望の耐圧を得ることが可能となる。
【0046】
続いて、本実施形態に掛かるSiC半導体装置の製造方法について、
図6を参照して説明する。ただし、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法のうち、素子分離層14の形成工程以外については、電界緩和層15をp型ディープ層5と同時に形成していること以外については従来と同様である。このため、電界緩和層15の形成や素子分離層14の形成工程を主に説明し、その他の部分については説明を省略する。なお、
図6(a)〜(f)は、
図5すなわち
図2のV−V部の断面を示している。
【0047】
〔
図6(a)に示す工程〕
まず、n
+型基板1を用意し、このn
+型基板1の表面にSiCからなるn
-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させる。または、n
+型基板1の表面に予めSiCからなるn
-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させた、いわゆるエピ基板を用意する。このようにして、裏面側がn
+型基板1で構成される高濃度不純物層、表面側が高濃度不純物層よりも低不純物濃度とされたn
-型ドリフト層2で構成される半導体基板を用意する。
【0048】
さらに、n
-型ドリフト層2の表面に、p型不純物層をエピタキシャル成長させることにより、p型ベース領域3を形成する。また、p型ベース領域3の上に、n
+型ソース領域4を形成する。
【0049】
〔
図6(b)に示す工程〕
n
+型ソース領域4の表面にレジストなどで構成されるマスク20を形成したのち、フォトリソグラフィ工程を経て、p型ディープ層5および電界緩和層15の形成予定領域においてマスク20を開口させる。そして、マスク20を用いてエッチングすることで、トレンチ15aを形成すると共に、図中には示していないがトレンチ5aを形成する。
【0050】
〔
図6(c)に示す工程〕
マスク20を除去したのち、p型層を埋込エピ成長させ、これをエッチバックすることでトレンチ5aおよびトレンチ15a内に残す。これにより、電界緩和層15を形成すると共に、図中には示していないがp型ディープ層5を形成する。
【0051】
〔
図6(d)に示す工程〕
n
+型ソース領域4やp型ディープ層5および電界緩和層15の表面に図示しないエッチングマスクを成膜したのち、素子分離層14の形成予定領域においてエッチングマスクを開口させる。また、図示していないが、これと同時にメインセル領域Rmやセンスセル領域Rs内においてトレンチ6の形成予定領域でもエッチングマスクを開口させる。そして、エッチングマスクを用いた異方性エッチングを行ったのち、必要に応じて等方性エッチングや犠牲酸化工程を行うことで、トレンチ6を形成すると同時に素子分離層14の形成予定位置にもトレンチ21を形成する。この後、エッチングマスクを除去する。このようにトレンチ6と共にトレンチ21を形成していることから、これらを同じ深さとすることができ、トレンチ6内に形成するトレンチゲート構造およびトレンチ21内に形成する素子分離層14の深さを同じにすることができる。そして、これらを同じ工程で形成できることから、特性バラツキを小さくできると共に、製造工程の簡略化による製造コスト減を図ることも可能となる。
【0052】
〔
図6(e)に示す工程〕
ゲート絶縁膜7の形成工程と素子分離層14の形成工程を同時に行う。具体的には、ウェット雰囲気を用いたパイロジェニック法による熱酸化を行ったのち、トレンチ6、21内を埋め込むようにCVD法によって酸化膜を成膜する。そして、図示しないマスクを配置すると共に、フォトリソグラフィ工程によってマスクのうちトレンチ6と対応する部分を開口させる。その後、マスクを用いて異方性エッチングを行うことで、トレンチ6の内部において酸化膜を部分的に除去する。これにより、トレンチ6の側面および底面に酸化膜が所望膜厚残され、ゲート絶縁膜7が構成される。このとき、トレンチ21内に形成された酸化膜がマスクによって覆われた状態になっていることから、トレンチ6内の酸化膜を部分的に除去した後にもトレンチ21内の酸化膜が残され、この酸化膜によって素子分離層14のうちの絶縁膜14aが構成される。
【0053】
なお、このときに形成される絶縁膜14aについては、ゲート絶縁膜7よりも厚く残るようにしている。後述するように、ゲート電極8を形成する際のポリシリコンを用いてポリシリコン層14bを形成していることから、これらが繋がった構造となる場合がある。そのような場合、ゲート電極8にゲート電圧を印加すると、ポリシリコン層14bにもゲート電圧が印加され、寄生トランジスタがオンされてしまうことが懸念される。しかしながら、絶縁膜14aをゲート絶縁膜7より厚くしておくことで、閾値電圧が高くなるようにでき、寄生トランジスタがオンしてしまうことを抑制できる。したがって、絶縁膜14aがオフ時のドレイン電界でも絶縁破壊されないようにすることができる。
【0054】
〔
図6(e)に示す工程〕
ゲート絶縁膜7および絶縁膜14aの表面にポリシリコン層を成膜したのち、エッチバック工程等を行うことにより、トレンチ6内におけるゲート絶縁膜7の表面にゲート電極8を形成すると共に絶縁膜14aの表面にポリシリコン層14bを形成する。
【0055】
この後の工程については従来と同様であるため図示しないが、次のような工程を行っている。具体的には、フィールド酸化膜16および層間絶縁膜9を成膜したのち、層間絶縁膜9をパターニングしてn
+型ソース領域4やp型ディープ層5に繋がるコンタクトホールを形成すると共に、ゲート電極8に繋がるコンタクトホールを別断面に形成する。続いて、コンタクトホール内を埋め込むように電極材料を成膜したのち、これをパターニングすることでソース電極10やゲート配線を形成する。また、n
+型基板1の裏面側にドレイン電極12を形成する。これにより、本実施形態の反転型のMOSFETを有するSiC半導体装置が完成する。
【0056】
以上説明した製造方法により、本実施形態にかかるSiC半導体装置を製造することができる。
【0057】
このような製造方法によってSiC半導体装置を製造する際に、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間が素子分離層14の底部に位置するようにする必要がある。p型ディープ層5や電界緩和層15の長手方向を<11−20>方向とする場合、トレンチ5aやトレンチ15a内にp型層を埋め込んだ際に形成されるエピファセット面の影響によって、同方向におけるマスクずれが発生し得る。このため、素子分離層14の幅Wdについては、間隔Wpに加えてマスクずれ量を加えた長さ以上に設定してある。
【0058】
また、本実施形態の場合、素子分離層14の幅Wdを隣り合うp型ディープ層5および電界緩和層15同士の間隔Wdよりも広くしてある。素子分離層14のうちのp型ディープ層5や電界緩和層15の長手方向に対して直交する方向については、エピファセット面の影響によるマスクずれが生じ難い。しかしながら、素子分離層14の幅Wdを上記した値に設定することで、仮にマスクずれが発生したとしても、電界緩和層15の少なくとも1つは素子分離層14のうちの辺14c、14dの底部に位置するようにできる。したがって、素子分離層14のうちの辺14c、14dについても、電界緩和層15による電界緩和効果を確実に得ることができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して素子分離層14の幅を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0060】
図7に示すように、本実施形態では、素子分離層14のうちの辺14c、14dの幅を辺14e、14fの幅よりも狭くし、隣り合うp型ディープ層5および電界緩和層15の間隔Wdよりも狭くなるようにしている。なお、
図7では、辺14cと辺14eしか示していないが、辺14dと辺14fについても、ここで説明した関係となるように各幅が設定されている。
【0061】
第1実施形態では、素子分離層14のうちの辺14c、14dの底部に必ず電界緩和層15が配置されるようにしたが、ここでは隣り合う電界緩和層15の間に素子分離層14のうちの辺14c、14dが配置されるようにしている。
【0062】
上記したように、p型ディープ層5および電界緩和層15を形成するためのp型層に形成されるエピファセット面は、<11−20>方向に対してマスクずれの影響を与えるが、その方向に対する直交方向へは影響をあまり与えない。このため、素子分離層14の形成位置については、<11−20>方向については所望位置からずれる可能性があるものの、その直交方向についてはほぼ所望位置通りに形成される。したがって、本実施形態のように、素子分離層14のうちの辺14c、14dを隣り合う電界緩和層15の間に形成することが可能となる。
【0063】
このように、素子分離層14のうちの辺14c、14dを隣り合う電界緩和層15の間に形成するようにしても良い。なお、このような構成としても、隣り合う電界緩和層15の間隔Wdについては、p型ディープ層5の間隔と等しくされており、電界の入り込みを抑制できる程度に設定されていることから、耐圧低下させないようにできる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して電界緩和構造を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、ここでは第1実施形態の構造に対する変更として本実施形態にかかるSiC半導体装置について説明するが、第2実施形態についても同様である。
【0065】
図8に示すように、第1実施形態と同様、第1電界緩和層15は、p型ディープ層5から延長されるように形成されていると共に、素子分離層14が形成された部分において等間隔に並ぶように形成されている。さらに、本実施形態では、隣り合う電界緩和層15の間のうちメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15の間と対応する位置にも、電界緩和層22を形成している。電界緩和層22は、素子分離層14のうちの辺14e、14fの底部に形成されており、上面形状が島状、本実施形態の場合は長円形状の島状とされていて、フローティング状態とされている。
【0066】
このように、最もp型層の間隔が空く部分、つまりメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15の間の周囲の領域に電界緩和層22を形成することができる。これにより、この領域において、p型層が配置されていない部分の間隔を狭めることが可能となり、p型層の間への電界のせり上がりを抑制することができる。よって、SiC半導体装置のさらなる耐圧向上を図ることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態のように電界緩和層22を形成する構成でも、半導体基板の表面に対する法線方向から見て、素子分離層のうち第1部分および第2部分と重合する領域を除いた非重合領域が、センスセル領域を1周連続的に囲む環状構造を有することになる。また、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15は、無バイアス時に電界緩和層15から延びる空乏層長さ以上に設定される。同様に、各電界緩和層15と電界緩和層22の間の最短距離も、無バイアス時に電界緩和層15および電界緩和層22から延びる空乏層長さ以上に設定される。これにより、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間の絶縁性を確保するとともにオフ時電界の入り込みを抑制することが可能となる。
【0068】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対してp型ディープ層5および電界緩和層15の構成を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、ここでは第1実施形態の構造に対する変更として本実施形態にかかるSiC半導体装置について説明するが、第2実施形態についても同様である。
【0069】
図9に示すように、第1実施形態と同様、p型ディープ層5および電界緩和層15は、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの両方共に、直線状のものが複数本並べられてストライプ状とされている。さらに、本実施形態では、メインセル領域Rmのp型ディープ層5および電界緩和層15とセンスセル領域Rsのp型ディープ層5および電界緩和層15とが、それぞれの長手方向に対する直交方向においてずらされ、それぞれが互い違いに配置されるようにしている。また、メインセル領域Rm側の電界緩和層15の先端がセンスセル領域Rs側の電界緩和層15の先端に入り込み、両先端の側面同士が対向するようにしている。
【0070】
このように、p型ディープ層5および電界緩和層15をメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsにおいて長手方向に対する直交方向にずらし、それぞれが互い違いに配置される構造としても良い。このようにすれば、第1実施形態のようにメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15とを対向させる場合と比較して、それぞれの電界緩和層15の間の間隔を狭めることができる。これにより、より電界緩和層15の間への電界のせり上がりを抑制することができ、SiC半導体装置のさらなる耐圧向上を図ることが可能となる。
【0071】
なお、本実施形態の構成の場合でも、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15の間の最短距離が、無バイアス時に電界緩和層15から延びる空乏層長さ以上に設定される。これにより、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間の絶縁性を確保するとともにオフ時電界の入り込みを抑制することが可能となる。
【0072】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して素子分離層14の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0073】
図10に示すように、本実施形態では、素子分離層14のうちの辺14e、14fの幅も辺14c、14dと同様に狭くしている。具体的には、辺14e、14fの幅をメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間隔Wpよりも狭くしている。そして、辺14e、14fがメインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間を通過するように配置されている。
【0074】
このように、辺14e、14fを狭くし、メインセル領域Rm側から突き出した電界緩和層15とセンスセル領域Rs側から突き出した電界緩和層15との間に配置されるようにしても、素子分離効果を発揮でき、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
ただし、上記したように、p型ディープ層5および電界緩和層15を形成するためのp型層に形成されるエピファセット面が<11−20>方向に対してマスクずれの影響を与える可能性がある。このため、マスクずれの影響を加味して素子分離層14の幅を調整することが望ましい。
【0076】
なお、本実施形態の場合、素子分離層14は、半導体基板の表面に対する法線方向から見て、電界緩和層15のうちメインセル領域Rm側から突き出した部分とセンスセル領域Rs側から突き出した部分と重合する領域を有していない。このため、素子分離層14の全域が非重合領域となる。
【0077】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0078】
(1)上記各実施形態では、p型ディープ層5や電界緩和層15を埋込エピ成長によって形成する場合について説明したが、マスクを用いたイオン注入によって形成することもできる。この場合、イオン注入領域の面積を小さくすることが可能となる。したがって、イオン注入による結晶ダメージを抑制することが可能となり、リークを抑制することも可能となる。
【0079】
また、p型ベース領域3の上にn
+型ソース領域4を連続してエピタキシャル成長させて形成したが、p型ベース領域3の所望位置にn型不純物をイオン注入することでn
+型ソース領域4を形成しても良い。
【0080】
(2)上記各実施形態では、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通するようにp型ディープ層5や電界緩和層15および電界緩和層22を形成しているが、p型ベース領域3の下方にのみp型ディープ層5を形成するようにしても良い。
【0081】
(3)上記各実施形態では、縦型のパワー素子としてnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明した。しかしながら、上記各実施形態は縦型の半導体素子の一例を示したに過ぎず、半導体基板の表面側に設けられる第1電極と裏面側に設けられる第2電極との間に電流を流す縦型の半導体素子であれば、他の構造もしくは導電型のものであっても良い。
【0082】
例えば、上記第1実施形態等では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFETとしても良い。また、上記説明では、半導体素子としてMOSFETを例に挙げて説明したが、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対してn
+型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。さらに、縦型のMOSFETとしてトレンチゲート構造のものを例に挙げて説明したが、トレンチゲート構造のものに限らず、プレーナ型のものであっても良い。
【0083】
(4)上記各実施形態では、電界緩和層15をp型ディープ層5に連結した構造としたが、これらを分断して別々に構成しても良い。その場合、電界緩和層15がp型ディープ層5の長手方向の延長線上に配置されるようにしても良いし、電界緩和層15がp型ディープ層5に対して互い違いになるように配置されるようにしても良い。
【0084】
(5)なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。