特許第6696479号(P6696479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6696479バッテリ監視装置、及び監視機能付きバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696479
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】バッテリ監視装置、及び監視機能付きバッテリ
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/382 20190101AFI20200511BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20200511BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20200511BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   G01R31/382
   G01R31/367
   H01M10/48 P
   H02J7/00 X
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-107300(P2017-107300)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-204991(P2018-204991A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】楊 殿宇
(72)【発明者】
【氏名】平野 拓男
(72)【発明者】
【氏名】庄司 明
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/038035(WO,A1)
【文献】 特開2008−249554(JP,A)
【文献】 特開2006−177782(JP,A)
【文献】 特開2016−208570(JP,A)
【文献】 特開平08−185896(JP,A)
【文献】 特開平09−283182(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0276427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/382
G01R 31/367
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電極電位を監視するバッテリ監視装置であって、
前記バッテリは、導電性バッテリケースと、前記導電性バッテリケース内に充填された電解液と、前記電解液に浸された正極及び負極とを備え、前記負極は接地され、前記正極及び前記負極のうちの一方の電極は前記導電性バッテリケースに電気的に接続され、
自身の反転入力端子及び非反転入力端子のうち、一方の入力端子に、前記一方の電極と前記導電性バッテリケースとの間の電圧が入力され、他方の入力端子に基準電圧が入力されたオペアンプと、
前記正極と前記負極との間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記オペアンプの出力端子から出力される出力電圧に基づいて、前記一方の電極の電位を監視し、前記オペアンプの出力電圧、及び前記電圧検出部が検出した電圧に基づいて、他方の電極の電位を監視する監視回路とを備え、
該監視回路は、
前記正極の電圧が、前記バッテリの分解反応が開始される電圧範囲における高電圧側の閾値電圧以上であるか否かを判定するとともに、前記負極の電圧が、前記バッテリの分解反応が開始される電圧範囲における低電圧側の閾値電圧以下であるか否かを判定して、前記正極の電圧、及び前記負極の電圧が、前記バッテリの分解反応が生じない使用電圧範囲内であるかを監視する構成である
バッテリ監視装置。
【請求項2】
前記オペアンプは、前記反転入力端子及び前記非反転入力端子の各々に入力される電圧の差を増幅して前記出力電圧として出力する差動増幅回路であり、
前記監視回路は、
前記オペアンプの前記出力電圧をA/D変換する第1のA/D変換部と、
前記第1のA/D変換部の出力値に基づいて前記一方の電極の電位を監視する監視部とを備えた
請求項1に記載のバッテリ監視装置。
【請求項3】
前記監視回路は、
前記電圧検出部の検出値をA/D変換する第2のA/D変換部と、
前記第1のA/D変換部の出力値及び前記第2のA/D変換部の出力値及から、前記正極及び前記負極のうちの他方の電極と前記導電性バッテリケースとの間の電圧を算出する算出部とを備え、
前記監視部は、前記算出部の算出結果に基づいて、前記他方の電極の電位を監視する
請求項2に記載のバッテリ監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの一項に記載のバッテリ監視装置を備えた監視機能付きバッテリであって、
導電性バッテリケースと、
前記導電性バッテリケース内に充填された電解液と、
前記電解液に浸された正極及び負極と、
前記正極及び/又は前記負極の電位を監視する前記バッテリ監視装置とを備え、
前記負極は接地され、前記正極及び前記負極のうちの一方の電極は、前記導電性バッテリケースに電気的に接続された
監視機能付きバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載可能なバッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)を監視するバッテリ監視装置、及び監視機能付き車載バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ監視装置は、バッテリの正極と負極との間に交流信号を印加し、この印加状態で、バッテリの正極と外装缶との間のインピーダンス、及び、バッテリの負極と外装缶との間のインピーダンスを検出することで、バッテリの電極電位を監視してバッテリの充電状態を監視している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5888193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバッテリ監視装置では、バッテリ監視に交流信号を用いるが、交流信号を発生させる交流信号発生装置は、構成が複雑となり高価であるため、バッテリ監視装置全体が高価になるという欠点があった。また、バッテリの正極と負極との間に交流信号を印加するため、バッテリ監視時は、バッテリの充放電への悪影響を避けるため、バッテリの充放電(即ちバッテリの使用)を中断する必要があり、バッテリの電極電位を常時監視することができないという欠点があった。
【0005】
そこで、この発明は、安価に構成できると共にバッテリの電極電位を常時監視することができるバッテリ監視装置、及び監視機能付きバッテリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、バッテリの電極電位を監視するバッテリ監視装置であって、前記バッテリは、導電性バッテリケースと、前記導電性バッテリケース内に充填された電解液と、前記電解液に浸された正極及び負極とを備え、前記負極は接地され、前記正極及び前記負極のうちの一方の電極は前記導電性バッテリケースに電気的に接続され、自身の反転入力端子及び非反転入力端子のうち、一方の入力端子に、前記一方の電極と前記導電性バッテリケースとの間の電圧が入力され、他方の入力端子に基準電圧が入力されたオペアンプと、前記正極と前記負極との間の電圧を検出する電圧検出部と、前記オペアンプの出力端子から出力される出力電圧に基づいて、前記一方の電極の電位を監視し、前記オペアンプの出力電圧、及び前記電圧検出部が検出した電圧に基づいて、他方の電極の電位を監視する監視回路とを備え、該監視回路は、前記正極の電圧が、前記バッテリの分解反応が開始される電圧範囲における高電圧側の閾値電圧以上であるか否かを判定するとともに、前記負極の電圧が、前記バッテリの分解反応が開始される電圧範囲における低電圧側の閾値電圧以下であるか否かを判定して、前記正極の電圧、及び前記負極の電圧が、前記バッテリの分解反応が生じない使用電圧範囲内であるかを監視する構成である。
【0007】
この構成によれば、バッテリの負極が接地されると共にバッテリの正極及び負極のうちの一方の電極が導電性バッテリケースに電気的に接続された状態で、バッテリの上記の一方の電極と導電性バッテリケースとの間の電圧をオペアンプで検出し、オペアンプの出力電圧に基づいてバッテリの電極電位を監視するため、安価な構成で且つバッテリ使用中でも、バッテリの電極電位を監視することができる(従って、バッテリの充電状態を監視することができる)。
【0008】
また、監視対象のバッテリの内部構造は、このバッテリ監視装置のために改変されないため、このバッテリ監視装置で既存のバッテリの電極電位を監視することができる。また、オペアンプは、一般に電流が殆ど流れないため、バッテリ監視の際に電圧降下による誤差が発生せず、正確にバッテリの電極電位を監視することができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記オペアンプは、前記反転入力端子及び前記非反転入力端子の各々に入力される電圧の差を増幅して前記出力電圧として出力する差動増幅回路であり、前記監視回路は、前記オペアンプの前記出力電圧をA/D変換する第1のA/D変換部と、前記第1のA/D変換部の出力値に基づいて前記一方の電極の電位を監視する監視部とを備える。即ち、オペアンプを差動増幅回路として使用し、オペアンプの出力電圧をA/D変換でデジタル値に変換するため、バッテリの電極電位をデジタル値で正確に検出することができる。
【0010】
また、この発明の態様として、前記監視回路は、前記電圧検出部の検出値をA/D変換する第2のA/D変換部と、前記第1のA/D変換部の出力値及び前記第2のA/D変換部の出力値から、前記正極及び前記負極のうちの他方の電極と前記導電性バッテリケースとの間の電圧を算出する算出部とを備え、前記監視部は、前記算出部の算出結果に基づいて、前記他方の電極の電位を監視してもよい。
【0011】
この構成によれば、バッテリの正極及び負極のうちの他方の電極と導電性バッテリケースとの間の電圧を、上記の一方の電極と導電性バッテリとの間の電圧及び電極間電圧から計算で求めるため、安価な構成で正確に、上記の他方の電極と導電性バッテリとの間の電圧も検出することができる。
【0012】
また、本発明は、上記のバッテリ監視装置を備えた監視機能付きバッテリであって、導電性バッテリケースと、前記導電性バッテリケース内に充填された電解液と、前記電解液に浸された正極及び負極と、前記正極及び/又は前記負極の電位を監視する前記バッテリ監視装置とを備え、前記負極は接地され、前記正極及び前記負極のうちの一方の電極は、前記導電性バッテリケースに電気的に接続されたバッテリである。
この構成によれば、上記の効果を奏する監視機能付きバッテリを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、安価に構成できると共にバッテリの充電状態を常時監視することができるバッテリ監視装置、及び監視機能付きバッテリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】バッテリの正極と負極との間の電圧における測定値と計算値とを比較した図。
図2】本発明の第1実施形態に係る監視機能付きバッテリの構成の一例を示す図。
図3】監視対象のバッテリの構成の一例を示す構成図。
図4】バッテリの電極電圧と充電状態(SOC)との関係の一例を示す図。
図5】本発明の第2実施形態に係る監視機能付きバッテリの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
<第1実施形態>
図1図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る監視機能付きバッテリ1について説明する。監視機能付きバッテリ1は、自動車などの車両に搭載可能なバッテリであり、バッテリの電極電位を監視することでバッテリの充電状態(SOC)を監視し、これにより、バッテリの充放電能力を最大限に活用可能にしたものである。
【0016】
図1に示すように、本発明の発明者は、導電性バッテリケースを備えたバッテリにおいて、その導電性バッテリケースを参照極として利用して、バッテリの正極と導電性バッテリケースとの間の電圧Vpと、バッテリの負極と導電性バッテリケースとの間の電圧Vnをそれぞれ測定し、それらの測定値の差(Vp−Vn)を計算すると、その差の計算値は、正極と負極との間の電圧Vpnの測定値と一致することを見出した。このことから、正極と導電性バッテリケースとの間の電圧Vpは、導電性バッテリケースを基準とした正極の電位φpと等価であり、負極と導電性バッテリケースとの間の電圧Vnは、導電性バッテリケースを基準とした負極の電位φnと等価であることが分かる(即ちVp=φp,Vn=φn)。このことを利用して、本発明では、バッテリ2の電極電位を監視するものである。
【0017】
図2に示すように、監視機能付きバッテリ1は、監視対象のバッテリ2と、バッテリ2の正極23の電位φp(=Vp)及び負極24の電位φn(=Vn)を監視するバッテリ監視装置3とを備えている。
【0018】
図3に示すように、バッテリ2は、鉛蓄電池又はリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池であり、導電性バッテリケースを備えたものである。具体的には、バッテリ2は、導電性バッテリケース21と、導電性バッテリケース21内に充填された電解液22と、電解液22に浸された正極23及び負極24とを備えている。
【0019】
導電性バッテリケース21は、バッテリ2の内部構成要素(即ち電解液22、正極23及び負極24など)を収容するものであり、導電性部材(例えばニッケルめっき鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、及び、アルミニウム合金などの金属)で形成されると共に例えば直方体形の箱状に形成されている。
【0020】
正極23は、正極本体23aと、外部接続用の正極端子23bと、正極本体23aと正極端子23bとを電気的に接続する正極リード23cとで構成されている。正極本体23aは、例えばシート状に形成されており、電解液22内に浸されている。正極端子23bは、導電性バッテリケース21の外面(例えば上面)から突出するように設けられている。正極端子23bと導電性バッテリケース21との間には、正極端子23bと導電性バッテリケース21とを絶縁する絶縁部材40が設けられている。
【0021】
負極24も、正極23と同様に、負極本体24aと、外部接続用の負極端子24bと、負極本体24aと負極端子24bとを電気的に接続する負極リード24cとで構成されており、絶縁部材40で絶縁されて導電性バッテリケース21に設けられている。
【0022】
正極本体23aと負極本体24aとの間には、正極本体23aと負極本体24aとを絶縁するセパレータ41が配置されている。導電性バッテリケース21と正極本体23a及び負極本体24aとの間には、導電性バッテリケース21と正極本体23a及び負極本体24aとを絶縁する絶縁性フィルム42が配置されている。
【0023】
このバッテリ2では、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vn(即ち負極24の電位φn)をオペアンプで検出するために、負極端子24bが配線46を介して導電性バッテリケース21に電気的に接続されている。また、配線46には、配線46を導通又は遮断するスイッチSWが設けられている。スイッチSWは、電圧Vnの検出を行わないときは、電気回路の安定性の観点から、負極端子24bと導電性バッテリケース21との導通を遮断するためのものである。なお、このスイッチSWは、無くてもよい。また、負極24の電位φnの基準を接地点A(例えば車両ボディ)にするために、負極端子24bが配線45を介して接地点Aに接地されている。
【0024】
図2に戻って、バッテリ監視装置3は、バッテリ2の負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnを検出するオペアンプ31と、バッテリ2の正極23と負極24との間の電圧Vpnを検出する電圧検出部32と、オペアンプ31及び電圧検出部32の各々の検出結果に基づいて、バッテリ2の正極23の電位φp(=Vp)及び負極24の電位φn(=Vn)を監視する監視回路33とを備えている。
【0025】
オペアンプ31は、例えば非反転増幅回路(差動増幅回路)として機能する。オペアンプ31は、2つの入力端子(即ち反転入力端子及び非反転入力端子)と、出力端子とを備えている。
【0026】
オペアンプ31の非反転入力端子は、負極24に電気的に接続されており、これにより、オペアンプ31の非反転入力端子には、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnが入力される。オペアンプ31の反転入力端子は、抵抗R1を介して接地点Aに接地されており、これにより、オペアンプ31の反転入力端子には、基準電圧Vrとして0Vが入力される。オペアンプ31の出力端子は、監視回路33の後述のA/D変換部34に接続されると共に抵抗R2を介してオペアンプ31の反転入力端子に接続されている。
【0027】
このように構成されたオペアンプ31は、非反転入力端子に入力された電圧Vnを、一定倍率(1+R2/R1)で増幅して出力端子から出力する。なお、オペアンプ31は、非反転増幅回路として構成されているが、反転増幅回路として構成されてもよい。
【0028】
電圧検出部32は、例えば正極端子23bと負極端子24bとの間に電気的に接続されることで、バッテリ2の正極23と負極24との間の電圧Vpnを検出する。
監視回路33は、2つのA/D変換部34,35と、コントローラ36とを備えている。
【0029】
A/D変換部34(第1のA/D変換部)は、オペアンプ31の出力端子から出力された電圧Vnをデジタル値に変換してコントローラ36に出力する。A/D変換部35(第2のA/D変換部)は、電圧検出部32で検出された電圧Vpnをデジタル値に変換してコントローラ36に出力する。
【0030】
コントローラ36は、例えばIC(Integrated Circuit)として構成されている。コントローラ36は、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpを算出する算出部36aと、正極23の電位φp及び負極24の電位φnを監視する監視部36bとを備えている。
【0031】
算出部36aは、A/D変換部34の出力値(即ち電圧Vn)と、A/D変換部35の出力値(即ち電圧Vpn)とに基づいて、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vp(=Vpn+Vn)を算出する。
【0032】
監視部36bは、オペアンプ31で検出された電圧Vn及び算出部36aで算出された電圧Vpがそれぞれ、バッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1以上であるか否か及び下限電圧V2以下であるか否かを判定する。なお、上限電圧V1及び下限電圧V2は、監視部36bに予め設定されている。
【0033】
なお、バッテリ2の使用電圧範囲とは、バッテリ2の充放電時に、正極23及び負極24と電解液22との間で分解反応(例えば酸化分解反応又は還元分解反応)が起こらない(即ち正極23、負極24及び電解液22が劣化しない)、正極23及び負極24の電圧範囲である。上記の使用電圧範囲の上限電圧V1は、安全マージンを確保するために、上記の分解反応が開始する高電圧側の閾値電圧Vaよりも少し低い電圧に設定されている。また、上記の使用電圧範囲の下限電圧V2も、安全マージンを確保するために、上記の分解反応が開始する低電圧側の閾値電圧Vbよりも少し高い電圧に設定されている。
【0034】
図4は、例えばバッテリ2がリチウムイオン電池の場合の、バッテリ2の充電状態(SOC)と、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vp及び負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnとの関係を示す図である。
【0035】
図4に示すように、SOCが上昇するほど電圧Vpは上昇し、SOCが例えば60%以上になると、電圧Vpは上記の高電圧側の閾値電圧Va(例えば5V)以上になる。また、SOCが上昇するほど電圧Vnは低下し、SOCが例えば60%以上になると、電圧Vnは上記の低電圧側の閾値電圧Vb(例えば0V)以下になる。この場合、バッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1は、安全マージン確保のために、例えば5V(高電圧側の閾値電圧Va)よりも少し低い4.8Vに設定され、同様に、下限電圧V2は、例えば0V(低電圧側の閾値電圧Vb)よりも少し高い0.2Vに設定される。
【0036】
なお、上限電圧V1を高電圧側の閾値電圧Vaに接近させるほど、また、下限電圧V2を低電圧側の閾値電圧Vbに接近させるほど、バッテリ2の充電状態(SOC)を100%又は0%により近い状態まで使用可能になる。即ち、バッテリ2の充放電機能を最大限に活用可能になる。このように、バッテリ2の電極間電圧Vpnを監視するのではなく、バッテリ2の電極電位φp(=Vp),φn(=Vp)を監視することで、電極電位φp,φnと閾値電圧Va,Vbとの大小関係を正確に把握でき、これにより、バッテリ2の充電状態を100%又は0%により近い状態まで使用可能になる。
【0037】
このように構成された監視機能付きバッテリ1は、下記のように動作する。即ち、スイッチSWがオン(即ち導通)の状態では、オペアンプ31が、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vn(即ち負極24の電位φn)を常時検出してA/D変換部34を介してコントローラ36に出力すると共に、電圧検出部32が、正極23と負極24との間の電圧Vpnを常時検出してA/D変換部35を介してコントローラ36に出力する。そして、コントローラ36が、各A/D変換部34,35から出力された各電圧Vpn,Vnに基づいて、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vp(=Vpn+Vn、即ち正極23の電位φp)を算出する。そして、コントローラ36が、検出された電圧Vn及び算出された電圧Vpがそれぞれ上限電圧V1以上であるか否か及び下限電圧V2以下であるか否かを判定することで、それら各電圧Vp,Vnがバッテリ2の使用電圧範囲内にあるか否かを監視する。
【0038】
なお、バッテリ監視を常時行う場合は、スイッチSWを常時オンにし、他方、バッテリ監視を必要なときだけ行う場合は、バッテリ監視を行うときだけスイッチSWをオンにし、バッテリ監視を行わないときはスイッチSWをオフにすればよい。スイッチSWをオンにしている間は、常時、バッテリ監視が行われる。
【0039】
以上のように、この実施形態に係る監視機能付きバッテリ1によれば、監視対象のバッテリ2は、導電性バッテリケース21と、導電性バッテリケース21内に充填された電解液22と、電解液22に浸された正極23及び負極24とを備え、負極24は接地され、正極23及び負極24のうちの一方の電極(例えば負極24)は、導電性バッテリケース21に電気的に接続され、自身の反転入力端子及び非反転入力端子のうち、一方の入力端子(例えば非反転入力端子)に、上記の一方の電極(即ち負極24)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnが入力され、他方の入力端子に基準電圧Vrが入力されたオペアンプ31と、オペアンプ31の出力端子から出力される出力電圧に基づいて、上記の一方の電極の電位(即ち負極24の電位φn)を監視する監視回路33とを備えている。
【0040】
この構成によれば、バッテリ2の負極24が接地されると共にバッテリ2の正極23及び負極24のうちの一方の電極(例えば負極24)が導電性バッテリケース21に電気的に接続された状態で、上記の一方の電極(即ち負極24)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnをオペアンプ31で検出し、オペアンプ31の出力電圧に基づいてバッテリ2の電極電位(即ち負極24の電位φn)を監視するため、安価な構成で且つバッテリ使用中でも、バッテリ2の電極電位を監視することができる(従って、バッテリ2の充電状態を監視することができる)。
【0041】
また、監視対象のバッテリ2の内部構造は、このバッテリ監視装置3のために改変されないため、このバッテリ監視装置3で既存のバッテリの電極電位を監視することができる。また、オペアンプ31は、一般に電流が殆ど流れないため、バッテリ監視の際に電圧降下による誤差が発生せず、正確にバッテリ2の電極電位を監視することができる。
【0042】
また、バッテリ2の電極電位を検出するために、従来のように大型化する交流信号発生装置を用いないため、監視機能付きバッテリ1(特にバッテリ監視装置3)を小型化することができる。このため、監視機能付きバッテリ1を、配置スペースに制限がある車両(例えば自動車)に搭載する場合でも容易に搭載することができる。
【0043】
また、オペアンプ31は、反転入力端子及び非反転入力端子の各々に入力される電圧Vr,Vnの差を増幅して出力電圧として出力する差動増幅回路であり、監視回路33は、オペアンプ31の出力電圧をA/D変換するA/D変換部34(第1のA/D変換部)と、A/D変換部34の出力値に基づいて上記の一方の電極(即ち負極24)の電位を監視する監視部36bとを備える。即ち、オペアンプ31を差動増幅回路として使用し、オペアンプ31の出力電圧をA/D変換でデジタル値に変換するため、バッテリ2の電極電位をデジタル値で正確に検出することができる。
【0044】
また、正極23と負極24との間の電圧Vpnを検出する電圧検出部32を更に備え、監視回路33は、電圧検出部32の検出電圧VpをA/D変換するA/D変換部35(第2のA/D変換部)と、A/D変換部34の出力値(即ち電圧Vn)及びA/D変換部35の出力値(即ち電圧Vpn)から、正極23及び負極24のうちの他方の電極(即ち正極23)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpを算出する算出部36aとを備え、監視部36bは、算出部36aの算出結果(即ち電圧Vp)に基づいて他方の電極の電位(即ち正極23の電位φp)を監視する。
【0045】
この構成によれば、バッテリ2の正極23及び負極24のうちの他方の電極(例えば正極23)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpを、上記の一方の電極(例えば負極24)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vn及び電極間電圧Vpnから計算で求めることができるため、安価な構成で正確に、上記の他方の電極(例えば正極23)と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpも検出することができる。
【0046】
また、導電性バッテリケース21と、導電性バッテリケース21内に充填された電解液22と、電解液22に浸された正極23及び負極24と、正極23及び/又は負極24の電位を監視するバッテリ監視装置3とを備え、負極24は接地され、正極23及び負極24のうちの一方の電極(例えば負極24)は、導電性バッテリケース21に電気的に接続されるため、上記の効果を奏する監視機能付きバッテリ1を提供することができる。
【0047】
なお、この実施形態では、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnをオペアンプ31で検出し、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpは、オペアンプ31の検出値(即ち電圧Vn)と電圧検出部32の検出値(即ち電圧Vpn)とから計算で求めたが、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpをオペアンプ31で検出し、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnを、オペアンプ31の検出値(即ち電圧Vp)と電圧検出部32の検出値(即ち電圧Vpn)とから計算で求めてもよい。この場合は、負極24と導電性バッテリケース21を電気的に接続する代わりに、正極23と導電性バッテリケース21とを電気的に接続することになる。
【0048】
<参考例>
第1実施形態では、オペアンプ31を差動増幅回路として使用したが、この実施形態では、オペアンプ51〜54(図5参照)は比較回路として用いられる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0049】
図5に示すように、この実施形態のバッテリ2では、負極24だけでなく、正極23も導電性バッテリケース21に電気的に接続されている。なお、正極23と導電性バッテリケース21とを電気的に接続する配線にも、スイッチSWが設けられている。また、この実施形態のバッテリ監視装置3は、比較回路としての4つのオペアンプ51〜54と、監視回路33とを備えている。監視回路33は、コントローラ36で構成されている。
【0050】
オペアンプ51は、バッテリ2の正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpと、バッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1とを大小比較するものである。オペアンプ51の非反転入力端子には、基準電圧Vrとして、上限電圧V1が入力される。オペアンプ51の反転入力端子には、バッテリ2の正極23が接続されており、これにより、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpが入力される。オペアンプ51の出力端子は、コントローラ36に接続されている。そして、オペアンプ51は、反転入力端子に入力された電圧Vpと、非反転入力端子に入力された上限電圧V1とを比較し、その比較の結果、電圧Vpが上限電圧V1よりも低い場合は、出力端子からLレベル信号を出力し、他方、電圧Vpが上限電圧V1以上である場合は、出力端子からHレベル信号を出力する。
【0051】
オペアンプ52は、バッテリ2の正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpと、バッテリ2の使用電圧範囲の下限電圧V2とを大小比較するものである。オペアンプ52の非反転入力端子には、バッテリ2の正極23が接続されており、これにより、正極23と導電性バッテリケース21との間の電圧Vpが入力される。オペアンプ52の反転入力端子には、基準電圧Vrとして、バッテリ2の使用電圧範囲の下限電圧V2が入力される。オペアンプ52の出力端子は、コントローラ36に接続されている。そして、オペアンプ52は、非反転入力端子に入力された電圧Vpと、反転入力端子に入力された下限電圧V2とを比較し、その比較の結果、電圧Vpが下限電圧V2よりも高い場合は、出力端子からHレベル信号を出力し、他方、電圧Vpが下限電圧V2以下である場合は、出力端子からLレベル信号を出力する。
【0052】
オペアンプ53は、バッテリ2の負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnと、バッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1とを大小比較するものである。オペアンプ53の非反転入力端子には、基準電圧Vrとして、バッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1が入力される。オペアンプ53の反転入力端子には、バッテリ2の負極24が接続されており、これにより、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnが入力される。オペアンプ53の出力端子は、コントローラ36に接続されている。そして、オペアンプ53は、反転入力端子に入力された電圧Vnと、非反転入力端子に入力された上限電圧V1とを比較し、その比較の結果、電圧Vnが上限電圧V1よりも低い場合は、出力端子からLレベル信号を出力し、他方、電圧Vnが上限電圧V1以上である場合は、出力端子からHレベル信号を出力する。
【0053】
オペアンプ54は、バッテリ2の負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnと、バッテリ2の使用電圧範囲の下限電圧V2とを大小比較するものである。オペアンプ54の非反転入力端子には、バッテリ2の負極24が接続されており、これにより、負極24と導電性バッテリケース21との間の電圧Vnが入力される。オペアンプ54の反転入力端子には、基準電圧Vrとして、バッテリ2の使用電圧範囲の下限電圧V2が入力される。オペアンプ54の出力端子は、コントローラ36に接続されている。そして、オペアンプ54は、非反転入力端子に入力された電圧Vnと、反転入力端子に入力された下限電圧V2とを比較し、その比較の結果、電圧Vnが下限電圧V2よりも高い場合は、出力端子からHレベル信号を出力し、他方、電圧Vnが下限電圧V2以下である場合は、出力端子からLレベル信号を出力する。
【0054】
コントローラ36は、各オペアンプ51〜54の出力値(即ち比較結果)に基づいて、バッテリの正極23及び負極24がそれぞれバッテリ2の使用電圧範囲の上限電圧V1以上であるか否か及び下限電圧V2以下であるか否かを判定することで、それら各電圧Vp,Vnがバッテリ2の使用電圧範囲内にあるか否かを監視する。
【0055】
以上、この実施形態に係る監視機能付きバッテリ1によれば、安価な構成で正確に、バッテリ2の正極23及び負極24がそれぞれ上限電圧V1以上であるか否か及び下限電圧V2以下であるか否かを検出することができる。
【0056】
この発明は、上述の実施形態及び変形例の構成のみに限定されるものではなく、上述の実施形態及び変形例の組み合わせも含み、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…監視機能付きバッテリ
2…バッテリ
21…導電性バッテリケース
23…正極
24…負極
31,51〜54…オペアンプ
32…電圧検出部
33…監視回路
34…A/D変換部(第1のA/D変換部)
35…A/D変換部(第2のA/D変換部)
36a…算出部
36b…監視部
図1
図2
図3
図4
図5