(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレリアクタコアは、原料流体が熱媒体として生成物との熱交換によって昇温される際、前記プレ温調流路において原料流体の一部を先立って反応させる、請求項1から請求項11のうちいずれか1項に記載のリアクタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態及び他の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るリアクタ1は、原料流体M(
図2参照)と熱媒体HC(
図3参照)との間の熱交換によって、原料流体Mを反応させて、生成物P(
図2参照)を生成するものである。リアクタ1の具体的な構成を説明する前に、原料流体Mの反応について簡単に説明する。
【0017】
原料流体Mの反応の種類としては、原料流体Mの加熱による吸熱反応と、原料流体Mの冷却による発熱反応とがある。前者の反応(吸熱反応)の例としては、例えば、後記の化学式(1)に示すメタンのスチーム改質反応、後記の化学式(2)に示すメタンのドライリフォーミング反応等が挙げられる。
【0018】
CH
4 + H
2O → 3H
2 + CO ・・・化学式(1)
CH
4 + CO
2 → 2H
2 + 2CO ・・・化学式(2)
後者の反応(発熱反応)の例としては、例えば、後記の化学式(3)に示すシフト反応、後記の化学式(4)に示すメタネーション反応、後記の化学式(5)に示すフィッシャー-トロプシュ(Fischer tropsch)合成反応等が挙げられる。
【0019】
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ・・・化学式(3)
CO + 3H
2 → CH
4 + H
2O ・・・化学式(4)
(2n+1)H
2 + nCO → C
nH
2n+2 + nH
2O ・・・化学式(5)
なお、原料流体Mの反応は、メタンのスチーム改質反応等に限定されるものでなく、アセチル化反応、付加反応、アルキル化反応、脱アルキル化反応、水素脱アルキル化反応、還元性アルキル化反応、アミン化反応、芳香族化反応、アリール化反応、自熱式改質反応、カルボニル化反応、脱カルボニル化反応、還元性カルボニル化反応、カルボキシル化反応、還元性カルボキシル化反応、還元性カップリング反応、縮合反応、分解(クラッキング)反応、水素分解反応、環化反応、シクロオリゴマー化反応、脱ハロゲン化反応、二量体化反応、エポキシ化反応、エステル化反応、交換反応、ハロゲン化反応、水素ハロゲン化反応、同族体形成反応、水和反応、脱水反応、水素化反応、脱水素化反応、水素カルボキシル化反応、水素ホルミル化反応、水添分解反応、水素金属化反応、ヒドロシリル化反応、加水分解反応、水素化処理反応、異性体化反応、メチル化反応、脱メチル化反応、置換反応、ニトロ化反応、酸化反応、部分酸化反応、重合反応、還元反応、逆水性ガスシフト反応、スルホン化反応、短鎖重合反応、エステル交換反応、及び三量体化反応であっても構わない。
【0020】
熱媒体HCとしては、燃焼ガス等の高温ガス、水、油、冷媒等が用いられており、原料流体Mの反応の種類及び反応条件に応じて適切なものが選択される。具体的には、例えば、原料流体Mの反応がメタンのスチーム改質反応である場合には、燃焼ガス等の高温ガスが熱媒体HCとして用いられる。原料流体Mの反応がメタンのドライリフォーミング反応である場合には、例えば、高温ガス等が熱媒体HCとして用いられる。原料流体Mの反応がシフト反応である場合には、例えば、油、水(水蒸気を含む)、溶融塩等が熱媒体HCとして選択され、原料流体Mの反応がメタネーション反応である場合には、例えば、油、水(水蒸気を含む)、溶融塩等が熱媒体HCとして用いられる。原料流体Mの反応がフィッシャー−トロプシュ合成反応である場合には、例えば、水(水蒸気を含む)等が熱媒体HCとして用いられる。
【0021】
以下、リアクタ1の具体的な構成について説明する。また、
図2においては、メイン触媒部材及びプレ触媒部材の図示を省略してある。
図3においては、メインフィン及びプレフィンの図示を省略してある。
図5においては、一部のメイン触媒部材及び一部のメインフィンのみを模式的に図示してある。
図7においては、一部のプレ触媒部材及び一部のプレフィンのみを模式的に図示してある。
図9A及び
図9Bには、原料流体の反応が吸熱反応である場合における運転中の温度状態が一例として示されている。
図10A及び
図10Bには、原料流体の反応が発熱反応である場合における運転中の温度状態が一例として示されている。
【0022】
図1及び
図5に示すように、リアクタ1は、原料流体Mを反応させて生成物Pを生成するメインリアクタコア3を具備している。メインリアクタコア3は、複数の支柱5を介して適宜箇所に設置されている。また、メインリアクタコア3は、原料流体Mの反応場を形成する(原料流体Mを反応させる)ための矩形板状の複数(多数)のメイン反応構造体(メイン反応部材)7と、矩形板状の複数(多数)のメイン温調構造体(メイン温調部材)9とを含む。メイン反応構造体7とメイン温調構造体9とは、上下方向(リアクタ1の高さ方向(Z方向))に沿って交互に積層される。そして、各メイン反応構造体7及び各メイン温調構造体9の具体的な構成は、次のようになる。
【0023】
図2から
図5に示すように、メイン反応構造体7は、ステンレス鋼等の鉄系の合金、又はインコネル625,インコネル617、Haynes alloy 230等のニッケル合金(耐熱合金の一例)により構成されている。また、メイン反応構造体7の片面(上面)には、左方向に向かって原料流体Mを流通させる複数のメイン反応流路11が前後方向(リアクタ1の奥行方向(X方向))に等間隔に形成されている。各メイン反応流路11は、左右方向(リアクタ1の幅方向(Y方向))へ延びており、本実施形態にあっては、一例として、各メイン反応流路11の流路長さ(左右方向の長さ)は、数10cm程度に設定されている。各メイン反応流路11の右端側は、原料流体Mの流れ方向の入口側(導入側)に相当する。各メイン反応流路11の左端側は、原料流体M又は生成物Pの流れ方向の出口側(導出側)に相当し、かつ原料流体Mを導出するように開口されている。
【0024】
ここで、各メイン反応流路11の断面形状は、矩形である。本実施形態にあっては、一例として、各メイン反応流路11の幅寸法は、2〜60mmに設定されており、各メイン反応流路11の高さ寸法は、1〜10mm、好ましくは、4〜8mmに設定されている。
【0025】
メイン反応構造体7の正面(前面)の右端側には、原料流体Mを導入するための原料導入口13が設けられている。また、メイン反応構造体7の片面の右端側には、原料導入口13と複数のメイン反応流路11の右端側(入口側)を連絡するメイン反応連絡流路15が形成されている。メイン反応連絡流路15は、前後方向へ延びている。
【0026】
なお、メインリアクタコア3は、模式的に図示したものである。本実施形態にあっては、一例として、メイン反応構造体7の個数は、数10個であり、各メイン反応構造体7におけるメイン反応流路11の本数は、数10本である。また、メイン反応連絡流路15の個数は、メイン反応流路11の個数に応じた個数に変更しても構わない。更に、リアクタ1の運転中におけるメイン反応流路11内の最大圧力は、原料流体Mの反応の種類及び反応条件に応じて、0.0〜20.0MPaGの範囲内の所定の圧力に設定されている。
【0027】
メイン温調構造体9は、メイン反応構造体7と同じ材料により構成されている。また、メイン温調構造体9の片面には、メイン反応流路11内の原料流体Mの流れ方向に沿って(当該流れ方向と逆方向(対向流方向)である右方向に向かって)熱媒体HCを流通させる複数のメイン温調流路(加熱流路)17が前後方向に等間隔に形成されている。なお、メイン反応流路11内の原料流体Mの流れ方向に対する上記方向は、厳密な方向を意味するだけでなく、本実施形態の効果を奏することを条件として、ある程度の傾きを許容するものである。各メイン温調流路17は、左右方向へ延びており、本実施形態にあっては、一例として、各メイン温調流路17の流路長さ(左右方向の長さ)は、数10cm程度に設定されている。各メイン温調流路17の左端側は、熱媒体HCの流れ方向の入口側(導入側)に相当する。メイン温調流路17の右端側は、熱媒体HCの流れ方向の出口側(導出側)に相当し、かつ熱媒体HCを導出するように開口されている。
【0028】
ここで、各メイン温調流路17の断面形状は、矩形である。本実施形態にあっては、一例として、各メイン温調流路17の幅寸法は、2〜60mmに設定されており、各メイン温調流路17の高さ寸法は、1〜10mm、好ましくは、4〜8mmに設定されている。また、各メイン温調流路17は、対応するメイン反応流路11に上下に対向してある。
【0029】
メイン温調構造体9の正面(前面)の左端側には、熱媒体HCを導入するための熱媒導入口19が設けられている。また、メイン温調構造体9の片面の左端側には、熱媒導入口19と複数のメイン温調流路17の左端側(入口側)を連絡するメイン温調連絡流路21が形成されており、このメイン温調連絡流路21は、前後方向へ延びている。
【0030】
なお、前述のように、メインリアクタコア3は、模式的に図示したものである。本実施形態にあっては、一例として、メイン温調構造体9の個数は、数10個であり、各メイン温調構造体9におけるメイン温調流路17の本数は、数10本である。また、メイン温調連絡流路21の個数は、メイン温調流路17の個数に応じた個数に変更しても構わない。更に、リアクタ1の運転中におけるメイン温調流路17内の最大圧力は、原料流体Mの反応の種類及び反応条件に応じて、0.0〜20.0MPaGの範囲内の所定の圧力に設定されている。
【0031】
図5に示すように、最下部のメイン温調構造体9は、最下部のメイン温調構造体9以外の各メイン温調構造体9よりも厚肉になっている。最下部のメイン温調構造体9以外の各メイン温調構造体9は、メイン反応構造体7と同じ形状になっている。また、最上部のメイン温調構造体9には、複数のメイン温調流路17を覆う矩形板状のメイン蓋構造体(メイン蓋部材)23が設けられている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、各メイン反応流路11内には、原料流体Mの反応を促進する触媒を担持したメイン触媒部材25が着脱可能に設けられている。また、各メイン触媒部材25は、ステンレス鋼等により構成され、かつ左右方向へ延びており、各メイン触媒部材25の断面は、一例として、波形状を呈している。ここで、触媒は、原料流体Mの反応の種類に応じて適宜に選択されるものである。例えば、原料流体Mの反応がメタンのスチーム改質反応である場合には、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Co(コバルト)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)の群から選択される1種又は複数種の金属が触媒として用いられる。なお、各メイン反応流路11内にメイン触媒部材25が着脱可能に設けられる代わりに、各メイン反応流路11内に触媒が塗布(担持の一例)されるようにしても構わない。
【0033】
各メイン温調流路17内には、一対のメインフィン(メインバッフル)27が着脱可能に設けられており、一対のメインフィン27は、上下に重ね合わされている。また、各メインフィン27は、ステンレス鋼等により構成され、かつ左右方向へ延びており、各メインフィン27の断面は、一例として、波形状を呈している。
【0034】
図1及び
図7に示すように、メインリアクタコア3の左側(リアクタ1の幅方向の一方側)には、原料流体Mの一部を先立って反応させるプレリアクタコア29が複数の支柱31を介して設置されている。プレリアクタコア29は、メインリアクタコア3に分離可能に一体化(接続)されている。なお、プレリアクタコア29がメインリアクタコア3に一体化される代わりに、メインリアクタコア3に対して離隔させても構わない。この場合、プレリアクタコア29とメインリアクタコア3とを分離する際、プレ反応流路37の出口側とメイン反応流路11の入口側とを接続する連絡部材を具備することで、プレリアクタ流路37からメイン反応流路11に原料流体を供給する。また、メイン反応流路11の出口側とプレ温調流路43の入口側を接続する連絡部材を具備することで、メイン反応流路11からプレ温調流路43に原料流体を供給する。
【0035】
プレリアクタコア29は、原料流体Mの反応場を形成するための矩形板状の複数(多数)のプレ反応構造体33と、矩形板状の複数(多数)のプレ温調構造体35とが上下方向に沿って交互に積層してなるものである。そして、各プレ反応構造体33及び各プレ温調構造体35の具体的な構成は、次のようになる。
【0036】
図2から
図4、及び
図7に示すように、プレ反応構造体33は、メイン反応構造体7と同じ材料により構成されている。また、プレ反応構造体33の片面(上面)には、右方向に向かって原料流体Mを流通させる複数のプレ反応流路37が前後方向に等間隔に形成されている。各プレ反応流路37は、左右方向(リアクタ1の幅方向)へ延びており、本実施形態にあっては、一例として、各プレ反応流路37の流路長さ(左右方向の長さ)は、数10cm程度に設定されている。各プレ反応流路37の左端側は、原料流体Mの流れ方向の入口側(導入側)に相当し、かつ原料流体Mを導入するように開口されている。各プレ反応流路37の右端側は、原料流体Mの流れ方向の出口側(導出側)に相当する。
【0037】
ここで、各プレ反応流路37の断面形状は、矩形である。本実施形態にあっては、一例として、各プレ反応流路37の幅寸法は、2〜60mmに設定され、各プレ反応流路37の高さ寸法は、1〜10mm、好ましくは、4〜8mmに設定されている。
【0038】
プレ反応構造体33の正面(前面)の右端側には、原料流体M(生成物Pを一部含む)を導出するための原料導出口39が設けられている。また、プレ反応構造体33の片面の右端側には、複数のプレ反応流路37の右端側(出口側)と原料導出口39を連絡するプレ反応連絡流路41が形成されており、このプレ反応連絡流路41は、前後方向へ延びている。
【0039】
なお、プレリアクタコア29は、模式的に図示したものである。本実施形態にあっては、一例として、プレ反応構造体33の個数は、数10個であり、各プレ反応構造体33におけるプレ反応流路37の本数は、数10本である。また、プレ反応連絡流路41の個数は、プレ反応流路37の個数に応じた個数に変更しても構わない。更に、リアクタ1の運転中におけるプレ反応流路37内の最大圧力は、原料流体Mの反応の種類及び反応条件に応じて、0.0〜20.0MPaGの範囲内の所定の圧力に設定されている。
【0040】
プレ温調構造体35は、メイン反応構造体7と同じ材料により構成されている。また、プレ温調構造体35の片面(上面)には、プレ反応流路37内の原料流体Mの流れ方向の逆方向(対向流方向)である左方向に向かって熱媒体HCとしての生成物Pを流通させる複数のプレ温調流路43が前後方向に等間隔に形成されている。各プレ温調流路43は、左右方向へ延びており、本実施形態にあっては、一例として、各プレ温調流路43の流路長さ(左右方向の長さ)は、数10cm程度に設定されている。各プレ温調流路43の右端側は、熱媒体HCの流れ方向の入口側(導入側)に相当し、かつ熱媒体HCとしての生成物Pを導出するように開口されている。各プレ温調流路43の左端側は、熱媒体HCの流れ方向の出口側(導出側)に相当する。更に、各プレ温調流路43の入口側(右端側)は、対応するメイン反応流路11の出口側(左端側)に直結(直接的に連通)している。なお、プレリアクタコア29をメインリアクタコア3に対して離隔させた場合には、各プレ温調流路43の入口側が対応するメイン反応流路11の出口側に連絡部材(図示省略)等を介して連通することになる。
【0041】
ここで、各プレ温調流路43の断面形状は、矩形である。本実施形態にあっては、一例として、各プレ温調流路43の幅寸法は、2〜60mmに設定されており、各プレ温調流路の高さ寸法は、1〜10mm、好ましくは、4〜8mmに設定されている。また、各プレ温調流路43は、対応するプレ反応流路37に上下に対向してある。
【0042】
プレ温調構造体35の正面(前面)の左端側には、生成物Pを導出するための生成物導出口45が設けられている。また、プレ温調構造体35の片面の左端側には、複数のプレ温調流路43の左端側(入口側)と生成物導出口45を連絡するプレ温調連絡流路47とが形成されている。プレ温調連絡流路47は、前後方向へ延びている。
【0043】
なお、前述のように、プレリアクタコア29は、模式的に図示したものである。本実施形態にあっては、一例として、プレ温調構造体35の個数は、数10個であり、各プレ温調構造体35におけるプレ温調流路43の本数は、数10本である。また、プレ温調連絡流路47の個数は、プレ温調流路43の個数に応じた個数に変更しても構わない。更に、リアクタ1の運転中におけるプレ温調流路43内の最大圧力は、原料流体Mの反応の種類及び反応条件に応じて、0.0〜20.0MPaGの範囲内の所定の圧力に設定されている。
【0044】
図7に示すように、最下部のプレ温調構造体35は、最下部のプレ温調構造体35以外の各プレ温調構造体35よりも厚肉になっている。最下部のプレ温調構造体35以外の各プレ温調構造体35は、プレ反応構造体33と同じ形状になっている。また、最上部のプレ温調構造体35には、複数のプレ温調流路43を覆う矩形板状のプレ蓋構造体(プレ蓋部材)49が設けられている。
【0045】
図7及び
図8に示すように、各プレ反応流路37内には、原料流体Mの反応を促進する触媒を担持したプレ触媒部材51が着脱可能に設けられている。また、各プレ触媒部材51は、メイン触媒部材25と同じ材料により構成され、かつ左右方向へ延びている。各プレ触媒部材51の断面は、一例として、波形状を呈している。なお、各プレ反応流路37内にプレ触媒部材51が着脱可能に設けられる代わりに、各プレ反応流路37内に触媒が塗布されるようにしても構わない。
【0046】
各プレ温調流路43内には、一対のプレフィン(プレフィンバッフル)53が着脱可能に設けられている。一対のプレフィン53は、上下に重ね合わされている。また、各プレフィン53は、メインフィン27と同じ材料により構成され、かつ左右方向へ延びている。各プレフィン53の断面は、一例として、波形状を呈している。
【0047】
図1及び
図2に示すように、プレリアクタコア29の左側には、各プレ反応流路37内に原料流体Mを導入するためのドーム状の第1原料導入チャンバ(中空状の原料導入部材の一例)55が着脱可能に設けられている。第1原料導入チャンバ55の内部は、各プレ反応流路37に連通している。また、第1原料導入チャンバ55の中央部には、第1原料供給ポート57が設けられている。第1原料供給ポート57は、原料流体Mを供給する原料供給源(図示省略)に接続されている。
【0048】
プレリアクタコア29の正面(前面)の右端側には、各原料導出口39から導出した原料流体Mを集合して排出するための箱形の原料排出チャンバ(中空状の生成物排出部材の一例)59が設けられている。また、原料排出チャンバ59は、上下方向へ延びており、原料排出チャンバ59の内部は、各原料導出口39に連通している。更に、原料排出チャンバ59の中央部には、原料排出ポート61が設けられている。
【0049】
メインリアクタコア3の右側には、各メイン反応流路11内に原料流体Mを導入するための箱形のメイン原料導入チャンバ(中空状の原料導入部材の一例)63が設けられている。また、第2原料導入チャンバ63は、上下方向へ延びており、第2原料導入チャンバ63の内部は、各原料導入口13に連通している。更に、第2原料導入チャンバ63の中央部には、第2原料供給ポート65が設けられている。そして、原料排出ポート61と第2原料供給ポート65の間には、各プレ反応流路37の出口側と各メイン反応流路11の入口側を原料排出チャンバ59及び第2原料導入チャンバ63を介して連絡(連通)する連絡部材67が配設されている。
【0050】
プレリアクタコア29の正面の右端側には、各生成物導出口45から導出した生成物Pを集合して排出するための箱形の生成物排出チャンバ(中空状の生成物排出部材の一例)69が設けられている。また、生成物排出チャンバ69は、上下方向へ延びており、生成物排出チャンバ69の内部は、各生成物導出口45に連通している。更に、生成物排出チャンバ69の中央部には、生成物排出ポート71が設けられている。生成物排出ポート71は、生成物Pに対して後処理等を行う別の処理器(図示省略)に接続されている。
【0051】
図1及び
図3に示すように、メインリアクタコア3の背面(後面)の左端側には、各熱媒導入口19に熱媒体を導入するための箱形の熱媒導入チャンバ(中空状の熱媒導入部材の一例)73が設けられている。また、熱媒導入チャンバ73は、上下方向へ延びており、この熱媒導入チャンバ73の内部は、各メイン温調流路17に連通している。そして、熱媒導入チャンバ73の上部には、熱媒供給ポート75が設けられている。熱媒供給ポート75は、熱媒体HCを供給する熱媒供給源77に供給配管79を介して接続されている。更に、供給配管79の途中には、熱媒調整バルブ等の熱媒調整器81が配設されている。熱媒調整器81は、各メイン反応流路11の出口側の温度(生成物Pの温度)が目標温度になるように、各メイン温調流路17に供給される熱媒体HCの流量又は温度を調節するものである。なお、生成物Pが一酸化炭素(CO)を含まない場合には、熱媒調整器81を省略しても構わない。
【0052】
メインリアクタコア3の右側には、各メイン温調流路17から導出した熱媒体HCを集合して排出するためのドーム状の熱媒排出チャンバ(中空状の熱媒排出部材の一例)83が着脱可能に設けられている。熱媒排出チャンバ83の内部は、各メイン温調流路17に連通している。また、熱媒排出チャンバ83の中央部には、熱媒排出ポート85が設けられている。熱媒排出ポート85は、熱媒体HCを回収する熱媒回収器(図示省略)に接続されている。
【0053】
続いて、熱交換ステップと予熱交換ステップとを有する本実施形態に係る生成物生成方法を含めて、本実施形態の作用について説明する。なお、説明の便宜上、リアクタ1による原料流体Mの反応を吸熱反応とする。
【0054】
熱交換ステップ(メイン反応ステップ)
原料供給源から第1原料供給ポート57を経由して第1原料導入チャンバ55内(プレリアクタコア29側)に原料流体Mを供給することにより、原料流体Mが各プレ反応流路37内に導入される。各プレ反応流路37内に導入された原料流体Mは、各プレ反応流路37内を紙面右方向に向かって流通し、各原料導出口39から原料排出チャンバ59内へ導出する。続いて、原料排出チャンバ59内へ導出された原料流体Mは、原料排出ポート61、連絡部材67、及び第2原料供給ポート65を経由して、第2原料導入チャンバ63内に供給される。
【0055】
第2原料導入チャンバ63内に供給された原料流体Mは、各原料導入口13から各メイン反応流路11に導入され、各メイン反応流路11内を紙面左方向に向かって流通する。換言すれば、第1原料導入チャンバ55内に供給された原料流体Mは、各プレ反応流路37内及び連絡部材67等を経由して、各メイン反応流路11内に導入され、各メイン反応流路11内を紙面左方向に向かって流通する。また、熱媒供給源77(リアクタ1の外部)から熱媒導入チャンバ73内(メインリアクタコア3側)に熱媒体HCを供給することにより、熱媒体HCが各熱媒導入口19から各メイン温調流路17に導入され、各メイン温調流路17内を紙面右方向に向かって流通する。すると、各メイン反応流路11内の原料流体Mと対応するメイン温調流路17内の熱媒体HCとの間で熱交換が行われ、原料流体Mを加熱することができる。これにより、各メイン触媒部材25に担持された触媒の反応促進作用も相まって、原料流体Mを反応温度まで上げて反応(吸熱反応)させ、生成物Pを生成して、各メイン反応流路11の出口側から導出することができる。なお、熱交換に寄与した熱媒体HCは、各メイン温調流路17の出口側から熱媒排出チャンバ83内へ導出され、熱媒排出ポート85からリアクタ1の外側の熱媒回収器へ排出される。
【0056】
予熱交換ステップ(プレ反応ステップ)
一方、前述のように、第1原料導入チャンバ55内に供給された原料流体Mは、各プレ反応流路37内に導入され、各プレ反応流路37内を紙面右方向に向かって流通する。また、各メイン反応流路11から導出された生成物Pは、各プレ温調流路43に導入され、各プレ温調流路43内を紙面左方向に向かって流通する。すると、各プレ反応流路37内の原料流体Mと対応するプレ温調流路43内の熱媒体HCとしての生成物Pとの間で熱交換が行われ、プレリアクタコア29内において原料流体Mを予熱しかつ生成物Pを冷却することができる。これにより、各プレ触媒部材51に担持された触媒の反応促進作用も相まって、原料流体Mの一部を先立って反応させると共に、生成物Pの温度を低下させることができる。
【0057】
なお、熱交換に寄与した熱媒体HCとしての生成物Pは、各生成物導出口45から生成物排出チャンバ69内へ導出され、生成物排出ポート71からリアクタ1の外側の別の処理器へ排出される。
【0058】
ここで、リアクタ1の運転中の温度状態(原料流体M、生成物P、及び熱媒体HCの温度状態)は、一例として、
図9Aに示すようになる。即ち、プレリアクタコア29内において、原料流体Mが熱媒体HCとしての生成物Pとの熱交換によって350℃から600℃まで昇温される。続いて、メインリアクタコア3内において、原料流体Mが熱媒体HCとの熱交換によって反応(吸熱反応)して、850℃の生成物Pが生成される。なお、プレリアクタコア29内における熱負荷(消費熱量)は、リアクタ1全体の熱負荷の3割に相当し、メインリアクタコア3内における熱負荷は、リアクタ1全体の熱負荷の7割に相当する。
【0059】
また、各メイン反応流路11及び各メイン温調流路17の流路断面の少なくとも一辺は数mm程度になっており、各メイン反応流路11及び各メイン温調流路17の単位体積当たりの比表面積が大きくなっている。また、各一対のメインフィン27によって各メイン温調流路17内における熱媒体HCの流れに乱流を発生させ、かつ各メイン温調流路17内における伝熱面積を増やすことができる。これにより、各メイン反応流路11内の原料流体Mと対応するメイン温調流路17内の熱媒体HCとの間の熱交換性能(伝熱効率)を高めることができる。
【0060】
同様に、各プレ反応流路37及び各プレ温調流路43の流路断面の少なくとも一辺は数mm程度になっており、各プレ反応流路37及び各プレ温調流路43の単位体積当たりの比表面積が大きくなっている。また、各一対のプレフィン53によって各プレ温調流路43内における熱媒体HCとしての生成物Pの流れに乱流を発生させ、かつ各プレ温調流路43内における伝熱面積を増やすことができる。これにより、各プレ反応流路37内の原料流体Mと対応するプレ温調流路43内の生成物Pとの間の熱交換性能を高めることができる。
【0061】
要するに、プレリアクタコア29内において生成物Pを冷却できるため、リアクタ1によって生成物Pの熱を自己回収することができ、生成物Pの温度を低下させて、リアクタ1の外側における生成物Pの熱回収量が増えることを十分に抑制することができる。特に、各プレ反応流路37内の原料流体Mと対応するプレ温調流路43内の生成物Pとの間の熱交換性能を高めることができるため、リアクタ1によって生成物Pの熱を短時間で自己回収することができる。
【0062】
前述の作用の他に、リアクタ1の運転中に、各メイン反応流路11の出口側の温度を監視しながら、熱媒調整器81によって各メイン温調流路17に供給される熱媒体HCの流量又は温度を調節する。これにより、各メイン反応流路11の出口側の温度(生成物Pの温度)を目標温度(設定温度)にすることができる。
【0063】
また、メインリアクタコア3がプレリアクタコア29に分離可能になっているため、メイン触媒部材25に担持した触媒が劣化等した場合に、メインリアクタコア3の左側からメイン触媒部材25の交換を容易に行うことができる。また、プレフィン53が損傷等した場合に、プレリアクタコア29の右側からプレフィン53の交換を容易に行うことができる。また、熱媒排出チャンバ83がメインリアクタコア3の右側に対して着脱可能であるため、メインフィン27が損傷等した場合に、メインリアクタコア3の右側からメインフィン27の交換を容易に行うことができる。更に、第1原料導入チャンバ55がプレリアクタコア29の左側に対して着脱可能であるため、プレ触媒部材51に担持した触媒が劣化等した場合に、プレリアクタコア29の左側からプレ触媒部材51の交換を容易に行うことができる。
【0064】
従って、本実施形態によれば、リアクタ1によって生成物Pの熱を短時間で自己回収し、リアクタ1の外側における生成物Pの熱回収量が増えることを十分に抑制できる。従って、メインリアクタコア3側、換言すれば、リアクタ1側に供給される熱媒体HCの熱エネルギー(投入エネルギー)を低減し、又リアクタ1の外側においてスチームを余剰に生成することを回避して、プラント全体のエネルギー効率を高めることができる。
【0065】
また、各プレ反応流路37内の原料流体Mと対応するプレ温調流路43内の熱媒体HCとしての生成物Pとの間の熱交換性能等を高めることができるため、原料流体Mの反応速度及び生成物Pの収率を向上させることができる。
【0066】
また、各メイン反応流路11の出口側の温度を目標温度にすることができるため、生成物PがCO(一酸化炭素)を含む場合であっても、生成物Pによる前記別の処理器等の関連設備(図示省略)のメタルダスティングを十分に防止することができる。
【0067】
また、メインリアクタコア3の左側からメイン触媒部材25の交換及びプレリアクタコア29の右側からプレフィン53の交換等を容易に行うことができるため、リアクタ1のメンテナンス性を向上させることができる。
【0068】
なお、原料流体Mの反応が発熱反応である場合には、リアクタ1の運転中の温度状態は、一例として、
図10Aに示すようになる。
【0069】
(他の実施形態)
図9Bに示すように、他の実施形態に係るリアクタ1Aの構成のうち、前述の実施形態に係るリアクタ1(
図1及び
図9A等参照)の構成と異なる点について簡単に説明する。
【0070】
各プレ温調流路43の入口側が対応するメイン反応流路11の出口側に直結する代わりに、各プレ反応流路37の出口側(右端側)は、対応するメイン反応流路11の入口側(左端側)に直結してある。また、
図1及び
図9A等に示す例では、リアクタ1が各プレ反応流路37の出口側と各メイン反応流路11の入口側を連絡する連絡部材67を具備している。これに代わり、
図9Bに示す例では、リアクタ1は、各メイン反応流路11の出口側と各プレ温調流路43の入口側とを連絡する連絡部材87を具備している。更に、リアクタ1Aの運転中に、各メイン反応流路11から導出された生成物Pが、連絡部材87を経由して各プレ温調流路43内に導入されるようになっている。
【0071】
なお、
図9Bには、原料流体Mの反応が
吸熱反応である場合におけるリアクタ1Aの運転中の温度状態が一例として示されている。また、原料流体Mの反応が発熱反応である場合には、リアクタ1Aの運転中の温度状態は、一例として、
図10Bに示すようになる。
【0072】
そして、他の実施形態においても、前述の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0073】
なお、本開示は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。即ち、プレリアクタコア29の個数を1つから複数に変更しても構わない。メイン温調流路17内の熱媒体HCの流れ方向をメイン反応流路11内の原料流体Mの流れ方向と逆方向でなく、同方向に変更しても構わない。プレ温調流路43内の熱媒体HCとしての生成物Pの流れ方向をプレ反応流路37内の原料流体Mの流れ方向と逆方向でなく、同方向に変更しても構わない。以下にメイン温調流路17内の熱媒体HCの流れ方向をメイン反応流路11内の原料流体Mの流れ方向とする場合を例示する。
【0074】
例えば、メイン温調流路17に生成物の生成反応が発熱反応である原料流体Mを供給する。一方、メイン反応流路11に生成物の生成反応が吸熱反応である原料流体HCを供給する。この場合、メイン温調流路17を原料流体Mが進むに従って発熱反応が発生し、反応熱が生じる。この反応熱をメイン反応流路11で生じさせる吸熱反応の熱源に用いることができる。これにより、熱の有効利用が可能である。
【0075】
また、例えば、メイン反応流路11内で一定温度で原料流体Mを反応させる場合であって、触媒が失活しないように入口温度に保つよう、メイン温調流路17に原料流体HCとして冷媒を流通させる。これにより、触媒が失活しないように除熱をしながら流路内で反応させ続けることが可能である。
【0076】
このように、本開示は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。