特許第6696525号(P6696525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696525
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】プロペラファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/32 20060101AFI20200511BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   F04D29/32 A
   F04D25/08 303
   F04D29/32 G
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-54339(P2018-54339)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2019-167838(P2019-167838A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】船田 和也
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−214932(JP,A)
【文献】 特開2015−007429(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104047893(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D1/00−13/16
F04D17/00−19/02
F04D21/00−25/16
F04D29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りに側面を有するハブと、
前記ハブの前記側面に設けられた複数の翼と、を備え、
前記翼は、前記ハブに接続されている、前記翼の基部側に位置する内周部、および、前記翼の外縁側に位置する外周部を含み、
前記外周部は、1枚の翼面として形成され、
前記内周部は、所定の間隔で配置され、その全てが前記外周部に接続された複数の翼素を含んでおり、
前記内周部における隣り合う前記翼素同士の間には孔部が形成され、
前記中心軸から、前記内周部と前記外周部との境界までの距離である半径rと、前記中心軸から前記翼の前記外縁までの距離である半径Rとの比r/Rが0.4以下であり、
前記外周部における風速をV1、前記内周部における風速をV2とした場合、V1≦V2×2.0の関係式が成り立つ、
プロペラファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機は、その室外機にプロペラファンを有する。プロペラファンにおける風速は、翼外周部で速く、回転中心に向かうにつれて低下する。近年、空気調和機の省エネルギー性能向上のため、プロペラファンの風量向上が図られている。具体的には、プロペラファンの「大径化および高速回転化など」が行われている。
なお、この分野の技術は、たとえば、特開2010−101223号公報、国際公開2011/011890号公報、特表2003−503643号公報および特開2004−116511号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−101223号公報
【特許文献2】国際公開2011/0011890号公報
【特許文献3】特表2003−503643号公報
【特許文献4】特開2004−116511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な技術では、翼における径方向の風速分布が不均一となる。このため、翼の内周部において、下流側から空気を吸い込む等のサージング現象が発生し、運転状態が異常となる。プロペラファンを室外機に使用する場合、サージング現象は、騒音およびプロペラファンの破損につながるおそれがある。また、「風速が遅い、プロペラファンの内周部」は、送風にほぼ寄与しない。このため「プロペラファンの大きさに対して得られる送風量」が少なく、翼面が有効に使えていないと言える。
【0005】
本開示における1つの目的は、「『翼の、外周部での風速と内周部での風速との差(風速差)』を抑制しつつ、プロペラファンの風量向上を図ること」ができる「プロペラファンおよび空気調和機の室外機」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかるプロペラファンは、中心軸の周りに側面を有するハブと、ハブの側面に設けられた複数の翼と、を備え、翼は、「『ハブに接続されている、翼の基部』側に位置する内周部」および「『翼の外縁』側に位置する外周部」を含み、外周部は、1枚の翼面として形成され、内周部は、所定の間隔で配置され、その全てが前記外周部に接続された複数の翼素を含んでおり、前記内周部における隣り合う前記翼素同士の間には孔部が形成され、「中心軸から、『内周部と外周部との境界』までの距離」である半径rと、「中心軸から翼の外縁までの距離である半径R」との比r/Rが0.4以下であり、外周部における風速をV1、内周部における風速をV2とした場合、V1≦V2×2.0の関係式が成り立つ。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、翼外周部での風速と内周部(中央部)での風速との差を抑制しつつ、プロペラファンの風量向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1(実施例2〜3)にかかるプロペラファンを有する室外機を示す模式図である。
図2図2は、実施例1(実施例2)にかかるファンを正圧側から見た概略的な平面図である。
図3図3は、実施例1にかかるプロペラファンを概略的に示す斜視図である。
図4図4は、実施例2にかかるプロペラファンを概略的に示す斜視図である。
図5図5は、P−Q曲線図である。
図6図6は、実施例3にかかるプロペラファンを正圧側から見た平面図である。
図7図7は、実施例3にかかるプロペラファンの翼のうちの1枚を正圧側から見た平面図である。
図8図8は、実施例3にかかるプロペラファンの翼の根本周辺を正圧側から見た斜視図である。
図9図9は、実施例3にかかるプロペラファンを負圧側から見た平面図である。
図10図10は、実施例3にかかるプロペラファンの翼のうちの1枚を負圧側から見た斜視図である。
図11図11は、実施例3にかかるプロペラファンを示す側面図である。
図12図12は、実施例3にかかるプロペラファンを示す斜視図である。
図13図13は、実施例3にかかるプロペラファンの翼のうちの1枚を示す斜視図である。
図14図14は、翼素の各翼弦長、合計翼弦長の概略を示す図である。
図15図15は、半径比と風量および効率との関係を示す曲線図である。
図16図16は、翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長と風量および効率との関係を示す曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示を実施するための形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に示す各種の実施形態により、本開示の技術は限定されない。また、以下に示す各種の実施形態は、矛盾しない範囲で、適宜組合せられて実施されてもよい。なお、既出の要素の説明は省略される。
【実施例1】
【0010】
(室外機の構成)
図1は、「実施形態1にかかるプロペラファン」を有する室外機を示す模式図である。図1に示すように、実施形態1の室外機1は、空気調和機の室外機である。室外機1は、筐体6を有する。筐体6は、その内部に、「冷媒を圧縮する圧縮機3」、「圧縮機3に連結されて、冷媒が流れる熱交換器4」、および、「熱交換器4に送風するプロペラファン5A」を収容する。
【0011】
筐体6は、「外気を取り込むための吸込み口7」、および、「筐体6内の空気を排出するための吹出し口8」を有する。吸込み口7は、「筐体6の、側面6aおよび背面6c」に設けられている。吹出し口8は、筐体6の前面6bに設けられている。熱交換器4は、「筐体6の前面6bに対向する背面6c」と側面6aとにわたって配置されている。プロペラファン5Aは、吹出し口8に対向して配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転駆動される。以下の説明では、「プロペラファン5Aが回転することにより、吹出し口8から排出される風」の方向を正圧側とし、その反対側を負圧側とする。
【0012】
(実施形態1にかかるプロペラファン)
図2は、実施形態1にかかるプロペラファンを正圧側から見た概略的な平面図である。図2に示すように、実施形態1にかかるプロペラファン5Aは、外観で円柱状(若しくは多角柱状)のハブ11、および、複数の翼12Aを有している。複数の翼12Aは、「ハブ11の中心軸の周りに設けられた側面11a」に設けられている。ハブ11および複数枚の翼12Aは、「成形材料としての、例えば樹脂材料」を用いて、一体成形されている。翼は、羽根ともいう。ハブ11は、円柱状に形成されている。ハブ11は、中心軸Oとなる位置に、「ファンモータのシャフト(図示せず)が嵌め込まれるボス(図示せず)」を有する。ハブ11は、ファンモータの回転に伴って、「ハブ11の、平面視の中心軸O」を軸に、図示の“R”の方向へ回転する。ボス(図示せず)は、負圧側(図3参照)に設けられる。ハブ11の側面11aには、ハブ11の周方向に沿って所定の間隔をあけて、複数(図2の例では3つ)の翼12Aが、ハブ11と一体に形成されている。翼12Aは、板状に形成されている。
【0013】
プロペラファン5Aは、図2に示す平面視において、「翼12Aの、内周部12Aaおよび外周部12Ab」を有する。内周部12Aaは、「中心軸Oをもつ、半径r1の円」の円周内に位置する。外周部12Abは、「『中心軸Oをもつ、半径r1の円』の円周外であって、かつ、『中心軸Oをもつ、半径R1の円』の円周内」に位置する。図2に示すように、「ハブ11に連結された内周部12Aa」に比べて、「ハブ11の径方向へ延ばされた外周部12Ab」は、広い翼面積を有するように形成されている。ここで、半径r1と半径R1との比r1/R1(以下、“半径比”と呼ぶ)は、下記(1)式を満たす。
【0014】
r1/R1≦0.4・・・(1)
【0015】
例えば、半径比r1/R1=0.4は、「『中心軸Oからの半径r1』によって規定される『翼12Aにおける、内周部12Aaと外周部12Abとの境界』が、『中心軸Oから、半径R1の0.4倍の長さの位置』にあること」を意味する。なお、本実施形態では、一例として、r1=88[mm](φ=176)、および、半径R1=220[mm](φ=440)としている。
【0016】
また、プロペラファン5Aは、図2に示す平面視において、翼12Aそれぞれの内周部12Aaに、翼素12A−11および12A−12を有する。また、プロペラファン5Aは、図2に示す平面視において、「翼12Aそれぞれの内周部12Aaの、翼素12A−11と翼素12A−12との間」に、孔部12A−21を有する。孔部12A−21は、「内周部12Aaと外周部12Abとの境界(中心軸Oからの半径r1の位置)に接する」ように設けられている。すなわち、各翼12Aは、「『翼素12A−11の基部12A−11a、および、翼素12A−12の基部12A−12a』が、内周部12Aaにおいて、孔部12A−21を形成する」ように、ハブ11に接続されている。外周部12Abは、翼素12A−11および翼素12A−12から連続している。内周部12Aaおよび外周部12Abが、1枚の翼面を形成している。本実施形態では、基部12A−11aおよび基部12A−12aが、特許請求の範囲で示す基部となる。すなわち、基部12A−11aおよび基部12A−12aは、「翼12Aの、ハブ11に接続されている部分」である。
【0017】
言い換えると、2つの翼素12A−11および12A−12は、「翼12Aの外周部12Abから、内周部12Aaに向かう途中で、翼12Aが分岐されること」によって形成される。「翼素12A−11と翼素12A−12との間」の孔部12A−21は、プロペラファン5Aを通過する気流の流路となる。
【0018】
図3は、実施形態1にかかるプロペラファンを概略的に示す斜視図である。図3は、「『図2に示す複数の翼12A』のうちの1つ」を概略的に拡大した斜視図である。図3に示すように、翼12Aでは、ハブ11に対して、「回転方向(図中の“R”方向)の上流側(後縁側)に位置する翼素12A−12」が、「下流側(前縁側)に位置する翼素12A−11よりも、正圧側」に接続されている。そして、翼12Aの孔部12A−21は、中心軸O方向および周方向に関して、「翼素12A−12と翼素12A−11との間」に位置している。
【0019】
そして、プロペラファン5Aが回転した際の、外周部12Abにおける最大風速をV1[m/s]、内周部12Aaにおける最大風速をV2[m/s]とした場合、下記(2)式が成り立つ。
【0020】
V1≦V2×2.0・・・(2)
【0021】
言い換えると、「内周部12Aaにおける風速V2に対する、外周部12Abにおける風速V1の比」である風速比V1/V2が、下記(3)式を満たすことになる。(3)式は、(2)式を変形することにより得られる。
【0022】
V1/V2≦2.0・・・(3)
【0023】
なお、「『実施形態1における翼12A』が有する、翼素12A−11、12A−12および孔部12A−21」の数は、図2および図3に示した数に限られない。翼12Aは、3つ以上の翼素および2つ以上の孔部を有してもよい。すなわち、外周部12Abは、1枚の翼面(たとえば、孔をもたない翼面)として形成(構成)され、内周部12Aaは、所定の間隔で配置された複数の翼素を含んでいてもよい。
〔実施形態2〕
【0024】
(実施形態2にかかるプロペラファン)
図4は、実施形態2にかかるプロペラファンを概略的に示す斜視図である。実施形態2にかかるプロペラファン5Bは、実施形態1にかかるプロペラファン5Aと同様に、図1に示す室外機1に収容される。また、「プロペラファン5Bの、正圧側から見た概略的な平面図」は、「『図2に示す実施形態1にかかるプロペラファン5A』に関する同様の平面図」と同様である。したがって、図2に、実施形態2にかかるプロペラファン5Bおよび構成要素の符号を、カッコ書きで示している。
【0025】
図4は、「図2に示す複数の翼12Bのうちの1つ」を概略的に拡大した斜視図である。図4に示すように、翼12Bは、翼12Aの「内周部12Aa、外周部12Ab、翼素12A−11、翼素12A−12、基部12A−11a、基部12A−12a、孔部12A−21」と同様の、「内周部12Ba、外周部12Bb、翼素12B−11、翼素12B−12、基部12B−11a、基部12B−12a、孔部12B−21」を有する。ただし、翼12Bでは、「回転方向(図中の“R”方向)の上流側に位置する翼素12B−12」と、「下流側に位置する翼素12B−11」とが、「ハブ11における、中心軸O方向の同じ高さ位置」に接続されている。
【0026】
そして、実施形態2にかかる翼12Bにおいても、実施形態1にかかる翼12Aと同様に、上記(1)〜(3)式が成り立つ。
【0027】
なお、「『実施形態2にかかる翼12B』が有する翼素12B−11、12B−12および孔部12B−21」の数は、図2および図4に示した数に限られない。翼12Bは、3つ以上の翼素および2つ以上の孔部を有してもよい。すなわち、外周部12Bbは、1枚の翼面(たとえば、孔をもたない翼面)として形成(構成)され、内周部12Baは、所定の間隔で配置された複数の翼素を含んでいてもよい。
【0028】
(風量と静圧との関係、ならびに、半径比と風速比率との関係について)
図5は、P−Q曲線図である。図5は、「実施形態1および2のプロペラファンにおいて、半径比を0.4以下とし、風速比V1/V2を2.0以下とした根拠」を示す。図5では、風量Q[m3/h]を横軸とし、風圧P[Pa]を縦軸とする。
【0029】
ここで、図5は、「風速比V1/V2=1.1、1.3、1.5、1.7、2.0および2.1の場合」についてのP−Q曲線を示す。図5では、「内周部12Aa(12Ba)に、複数の翼素12A−11および12A−12(12B−11および12B−12)を有する、プロペラファン5A(5B)」に対応している。各データにかかるプロペラファンでは、「風速比V1/V2が、上記の各数値となる」ように、翼素12A−11および12A−12(12B−11および12B−12)の翼弦長(「翼素の、断面長手方向一端と他端と」を結ぶ直線の長さ)が調整されている。風速比V1/V2=2.1のプロペラファンでは、P−Q曲線の特性に、三次曲線の極小値および極大値が現れる。このことは、サージング現象が発生していることを意味する(図5中の破線丸囲み部分参照)。
【0030】
ここで、サージング現象とは、「翼12Aにおいて、内周部12Aaにおける送風能力が外周部12Abよりも低くなり、内周部12Aaでの風速と外周部12Abでの風速との差(風速差)が大きくなること」で発生する。サージング現象は、「プロペラファンのP−Q特性に、三次曲線の極小値および極大値が現れる」ような流量範囲で発生する。サージング現象は、「上記の流量範囲において、風の『圧力および流量』が、不安定になって、大きく変動する」という現象である。「この現象が発生する流量範囲」でプロペラファンを運転すると、振動および/または逆流が発生する。その結果、「異音および/または圧力脈動など」の発生により、正常運転が困難になる。
他方、風速比V1/V2≦2.0では、風速比V1/V2が小さいほど、P−Q曲線がなだらかになり、サージング現象が発生せず、且つ、風量を向上させることができた。
以上より、風速比V1/V2が2.0を超えると、翼形状によってはサージング領域が発生してしまうことが分かった。一方、風速比V1/V2が2.0以下であれば、翼形状によらず、サージング領域の発生を抑えることができることが分かった。
【0031】
なお、風量[m3/h]と入力[W]との関係については、「風速比V1/V2=2.1のプロペラファン」と比較して、「風速比V1/V2≦2.0のプロペラファン」では、「同一風量を出力するための、入力電力(プロペラファンを駆動させるために、図示しないファンモータに投入する電力)」が少なくて済む。また、入力電力が同一であれば、風速比V1/V2が大きいほど、風量が大きくなった。また、風量[m3/h]と回転数[rpm]との関係については、「風速比V1/V2=2.1のプロペラファン」と比較して、「風速比V1/V2≦2.0のプロペラファンプロペラファン」では、同じ風量を得るための回転数が少なくて済む。また、風速比V1/V2が大きいほど、風量が大きくなった。
【0032】
以上から、実施形態1および2において、プロペラファン5Aおよび5Bが、半径比r1/R1≦0.4、V1≦V2×2.0(もしくはV1/V2≦2.0)の2つの条件を満たせば、サージングの発生を抑制することができる。
〔実施形態3〕
【0033】
図6は、実施形態3にかかるプロペラファンを正圧側から見た平面図である。図7は、「『実施形態3にかかるプロペラファン』の翼のうちの1枚」を正圧側から見た平面図である。図8は、「『実施形態3にかかるプロペラファン』の、翼の根元周辺」を正圧側から見た斜視図である。また、図9は、実施形態3にかかるプロペラファンを負圧側から見た平面図である。図10は、「『実施形態3にかかるプロペラファン』の翼のうちの1枚」を負圧側から見た斜視図である。
【0034】
また、図11は、実施形態3にかかるプロペラファンを示す側面図である。図12は、実施形態3にかかるプロペラファンを示す斜視図である。図13は、「『実施形態3にかかるプロペラファン』の翼のうちの1枚」を示す斜視図である。図14は、翼素の「各翼弦長および合計翼弦長」の概略を示す図である。なお、実施形態3にかかるプロペラファン5Cは、「実施形態1にかかるプロペラファン5A、および、実施形態2にかかるプロペラファン5B」と同様に、図1に示す室外機1に収容される。
【0035】
図6図14に示すように、実施形態3にかかるプロペラファン5Cは、円柱状のハブ11、および、「ハブ11の側面に設けられた複数の翼12C」を有している。ハブ11および複数の翼12Cは、「成形材料としての、例えば樹脂材料」を用いて、一体成形されている。ハブ11の側面11aには、ハブ11の周方向に沿って、所定の間隔をあけて、複数(実施形態3の例では5つ)の翼12Cが、ハブ11と一体に形成されている。翼12Cは、板状に形成されている。
【0036】
プロペラファン5Cは、図6に示す平面視において、「翼12Cの、内周部12Caおよび外周部12Cb」を有する。内周部12Caは、「中心軸Oをもつ、半径r3の円」の円周内に位置する。外周部12Cbは、「『中心軸Oをもつ、半径r3の円』の円周外であって、かつ、『プロペラファン5Cの、半径R3の円』の円周内」に位置する。図6に示すように、「ハブ11に連結された内周部12Ca」に比べて、「ハブ11の径方向へ延ばされた外周部12Cb」は、広い翼面積を有するように形成されている。翼12Cでは、「『翼12Cの回転方向(図6に図示の“R”の方向)における上流側』である、後縁部12C−1」が、「『後縁部12C−1の反対側に位置する前縁部12C−2』側へ向かって湾曲する」ように形成されている(図11も参照)。後縁部12C−1は、中心軸Oの回転軸方向から見て、湾曲している。
【0037】
そして、翼12Cの表面(翼面)は、「ハブ11の周方向において、後縁部12C−1から前縁部12C−2に向かって、プロペラファン5Cの負圧側から正圧側に、緩やかに湾曲する」ように形成されている(例えば図9参照)。「このような翼12Cが形成されたプロペラファン5C」がR方向(図6に図示の“R”の方向)に回転することで、空気は、負圧側から正圧側へ流れる。プロペラファン5Cの回転数が大きくなるに従って、「負圧側から正圧側へ流れる空気」の量が多くなる。
【0038】
ここで、半径r3と半径R3との比r3/R3(半径比)は、下記(4)式を満たす。
【0039】
r3/R3≦0.7・・・(4)
【0040】
例えば、半径比r3/R3=0.7は、「『中心軸Oからの半径r3』によって規定される『翼12Cにおける、内周部12Caと外周部12Cbとの境界』が、『中心軸Oから、半径R3の0.7倍の長さの位置』にあること」を意味する。
【0041】
また、プロペラファン5Cは、図8図14に示すように、翼12Cそれぞれの内周部12Caに、3つの翼素12C−11、12C−12および12C−13を有する。また、プロペラファン5Cは、例えば図8に詳細を示すように、「各翼12Cの内周部12Caの、翼素12C−11と翼素12C−12との間」に、孔部12C−21を有する。さらに、プロペラファン5Cは、「各翼12Cの内周部12Caの、翼素12C−12と翼素12C−13との間」に、孔部12C−22を有する。すなわち、各翼12Cは、「『翼素12C−11の基部12C−11a、翼素12C−12の基部12C−12a、および、翼素12C−13の基部12C−13a』が、内周部12Caにおいて、孔部12C−21および12C−22を形成する」ように、ハブ11に接続されている。外周部12Cbは、「翼素12C−11、12C−12および12C−13」から連続している。内周部12Caおよび外周部12Cbが、1枚の翼面を形成している。本実施形態では、「基部12C−11a、基部12C−12a、および基部12C−13a」が、特許請求の範囲で示す基部となる。すなわち、「基部12C−11a、基部12C−12a、および基部12C−13a」は、「翼12Cの、ハブ11に接続されている部分」である。
【0042】
言い換えると、3つの翼素12C−11、12C−12および12C−13は、「翼12Cの外周部12Cbから、内周部12Caに向かう途中で、翼12Cが分岐されること」によって形成される。「『翼素12C−11と翼素12C−12との間』の孔部12C−21、および、『翼素12C−12と翼素12C−13との間』の孔部12C−22」は、プロペラファン5Cを通過する気流の流路となる。
【0043】
例えば、図7および図8に示すように、1つの翼12Cにおいて、ハブ11に対して、「回転方向(図中の“R”方向)の最も上流側(後縁側)に位置する翼素12C−13」の基部12C−13aが、「下流側(前縁側)に位置する、『翼素12C−12の基部12C−12a』および『翼素12C−11の基部12C−11a』」と比較して、「中心軸O方向に関して正圧側」に接続されている。また、「翼素12C−12の基部12C−12a」は、「翼素12C−11の基部12C−11a」よりも、ハブ11の「中心軸O方向に関して正圧側」に接続されている。そして、翼12Cの孔部12C−21は、中心軸O方向および周方向に関して、「翼素12C−12と翼素12C−11との間」に位置している。翼12Cの孔部12C−22は、中心軸O方向および周方向に関して、「翼素12C−13と翼素12C−12との間」に位置している。
【0044】
そして、「内周部12Caの、各翼素12C−11〜12C−13の翼弦長」の合計である合計翼弦長をL0[mm]とし、「翼素12C−11〜12C−13の各々の翼弦長(『翼素の、断面長手方向一端と他端と』を結ぶ直線の長さ)うちの、最小の翼弦長」をLmin[mm]とすると、下記(5)式が成り立つ。
【0045】
Lmin/L0≧0.1・・・(5)
【0046】
例えば、図14に示すように、翼素12C−11〜12C−13の各翼弦長をL1[mm]、L2[mm]およびL3[mm]とし、L1<L2<L3の大小関係が成り立つとする。このとき、Lmin=L1であり、L0=L1+L2+L3であり、上記(5)式から、L1/(L1+L2+L3)≧0.1が成り立つ。
【0047】
また、図6図14では、「孔部12C−21および12C−22が、ハブ11まで延伸する」ような態様を示している。しかし、上記(4)〜(6)式が満たされれば、「孔部12C−21および12C−22の、形状および態様など」は、適宜、変更可能である。例えば、「孔部12C−21および12C−22が、ハブ11から、それぞれ所定距離だけ離れた位置まで至る」ような態様も可能である。
【0048】
後述するように、実施形態3では、プロペラファン5Cが、「半径比r3/R3≦0.7、および、Lmin/L0≧0.1の条件」を満たせば、サージングが発生しにくく、且つ、風量を向上させることができる。
【0049】
なお、「『実施形態3における翼12C』が有する、翼素12C−11〜12C−13、および、孔部12C−21および12C−22」の数は、図8図13に示した数に限られない。翼12Cは、2つ翼素および1つ孔部を有してもよい。もしくは、翼12Cは、4つ以上の翼素および3つ以上の孔部を有してもよい。すなわち、外周部12Cbは1枚の翼面から構成され、内周部12Caは、「少なくとも1つの孔」と、「該孔を挟むように形成された複数の翼素」とを含んでいてもよい。また、孔部12C−21および12C−22は、「径方向において、内周部12Caと外周部12Cbとの境界から、ハブ11の側面まで」の範囲に形成されてもよい。また、孔部12C−21および12C−22は、「上記の境界とハブ11の側面との双方に接する」ように形成されていてもよい。
【0050】
(半径比と風量および効率との関係、ならびに、翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長と風量および効率との関係について)
図15は、半径比と「風量および効率」との関係を示すグラフ(曲線図)である。図16は、「翼素の『最小翼弦長/翼素の合計翼弦長』」と「風量および効率」との関係を示すグラフ(曲線図)である。図15は、実施形態3において、半径比を0.7以下とした根拠を示す。また、図16は、実施形態3において、翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長を0.1以上とした根拠を示す。
【0051】
図15では、半径比を横軸とし、風量Q[m3/h]および効率η(=風量Q/入力)[m3/h/W]を縦軸とする。図15では、風量Q11および効率η11が、「『プロペラファン5Cを、空気調和機の定格負荷で回転させているとき』の風量および効率」に相当する。一方、風量Q12および効率η12が、「『プロペラファン5Cを、空気調和機の定格負荷よりも高負荷で回転させているとき』の風量および効率」に相当する。定格負荷時および高負荷時のいずれでも、効率η11およびη12が、ピーク値から極端に下がらないことが好適である。
【0052】
図15において、半径比r3/R3≦0.4〜0.5のとき、効率η11およびη12がピーク値を示している。よって、定格負荷時において、半径比r3/R3≦0.7とすると、プロペラファン5Cの効率η11が、「そのピーク値から、ピーク値の概ねマイナス10%程度以下まで」の範囲に収まった。また、高負荷時において、半径比r3/R3≦0.5とすると、プロペラファン5Cの「風量Q12および効率η12」が最高となった。
【0053】
また、図16では、「翼素の基部の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長(=Lmin/L0)」を横軸とし、風量Q[m3/h]および効率η[m3/h/W]を縦軸とする。図16では、風量Q21および効率η21が、「『プロペラファン5Cを、空気調和機の定格負荷で回転させているとき』の風量および効率」に相当する。一方、風量Q22および効率η22が、「『プロペラファン5Cを、空気調和機の定格負荷よりも高負荷で回転させているとき』の風量および効率」に相当する。
【0054】
図16に示すように、定格負荷時の効率η21に関しては「翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長(=Lmin/L0)の全領域」において、定格負荷時の効率η21の低下量は、「そのピーク値の10%」と小さい。このため、「翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長(=Lmin/L0)」に特に制限はない。一方、図16において、高負荷時には、「翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長(=Lmin/L0)<0.1」において、風量Q21の低下率が、そのピーク値の40%以上となる。このことから、翼素の最小翼弦長/翼素の合計翼弦長(=Lmin/L0)≧0.1とした。
【0055】
よって、以上の実施形態1〜3によれば、「『翼12A、12Bおよび12Cの、それぞれの外周部12Ab、12Bbおよび12Cb』での風速」向上に依存することなく、「内周部12Aa、12Baおよび12Caでの風速」の向上を図れる。このため、「外周部12Ab、12Bbおよび12Cb」での風速と「内周部12Aa、12Baおよび12Ca」での風速との差(風速差)を抑制することができる。これにより、風速差によって生じる「内周部12Aa〜12Caでの気流乱れ、および、気流失速に起因するサージング現象などの、異常な運転状態」を抑制することができる。その結果、「プロペラファン5A、5Bおよび5Cの回転により発生させることができる風量」の増大を図ることができる。
【0056】
以上、実施形態を説明した。ただし、上述した内容により、本願が開示する技術は限定されない。また、上述した構成要素は、「当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、および、いわゆる均等の範囲のもの」を含む。さらに、上述した構成要素は、適宜組み合わせられることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で、「構成要素の種々の省略、置換および変更」のうち少なくとも1つを行うことができる。
なお、半径比r1/R1=0.4とは、翼12Aにおいて、内周部12Aaと外周部12Abの境界が、中心軸Oからの半径R1を1として、中心軸Oからの半径r1が半径R1の0.4倍の長さの位置であることを意味してもよい。半径比r3/R3=0.7とは、翼12Cにおいて、内周部12Caと外周部12Cbの境界が、中心軸Oからの半径R3を1として、中心軸Oからの半径r3が半径R3の0.7の長さの位置であることを意味してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 室外機
3 圧縮機
4 熱交換器
5A、5B、5C プロペラファン
6 筐体
6a 側面
6b 前面
6c 背面
7 吸込み口
8 吹出し口
11 ハブ
12A、12B、12C 翼
12Aa、12Ba、12Ca 内周部
12Ab、12Bb、12Cb 外周部
12A−21、12B−21、12C−21、12C−22 孔部
12C−1 前縁部
12C−2 後縁部
12A−11、12A−12、12B−11、12B−12、12C−11、12C−12、12C−13 翼素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図15
図16