(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1送液ポートと前記出力ポートとの間の接続が遮断されることなく前記第1状態と前記第3状態との間で切り替えられ、前記第2送液ポートと前記出力ポートとの間の接続が遮断されることなく前記第2状態と前記第3状態との間で切り替えられるように構成されている請求項1に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
前記第1ポンプ部と前記切替バルブとの間の系内圧力を検出する第1圧力センサ及び前記第2ポンプ部と前記切替バルブとの間の系内圧力を検出する第2圧力センサをさらに備えた請求項1から4のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
前記第2状態において、前記第1センサにより検出される圧力がシステム圧力に近づくように前記第1圧力センサの出力に基づいて前記第1ポンプ部を動作させ、前記第1状態において、前記第2センサにより検出される圧力がシステム圧力に近づくように前記第2圧力センサの出力に基づいて前記第2ポンプ部を動作させるように構成された予圧動作部をさらに備えた請求項5に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
前記予圧動作部は、前記第2状態において前記第1センサにより検出される圧力がシステム圧力と略同一となるように前記第1ポンプ部を動作させ、前記第1状態において、前記第2センサにより検出される圧力がシステム圧力と略同一となるように前記第2圧力センサの出力に基づいて前記第2ポンプ部を動作させるように構成されている請求項6に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
前記予圧動作を実行する前記第1ポンプ部又は前記第2ポンプ部の動作に基づいてリーク量を算出するリーク量算出部をさらに備えた請求項6又は7に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
システム圧力が持続的に低下するとき、前記第1圧力センサにより検出される圧力がシステム圧力よりも大きいとき及び前記第2圧力センサにより検出される圧力がシステム圧力よりも大きいときに、前記切替バルブを前記第3状態にするように構成された圧力解放部をさらに備えた請求項5から9のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用バイナリポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイナリポンプを用いたグラジエント分析では、一方の溶媒のみを送液している際に、システム圧力の上昇によってその一方の溶媒が動作を停止させているポンプ部側の流路へ逆流する場合がある。このような逆流が生じると、その後、動作を停止させていたポンプ部を動作させてもう一方の溶媒を送液しようとする際に送液に遅れが生じ、所望の混合比率の移動相が得られないという問題がある。移動相の混合精度が悪いと分離や分析再現性が悪化する。
【0005】
そこで本発明は、バイナリポンプによる各溶媒の送液精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切替バルブは、上述のバイナリポンプに用いられるものである。当該切替バルブは、第1ポンプ部が接続される第1送液ポートと、第2ポンプ部が接続される第2送液ポートと、送液対象の液を出力する出力部に通じる出力ポートと、を備えている。そして、前記第1送液ポートを前記出力ポートと接続し、前記第2送液ポートをいずれのポートにも接続しない第1状態、前記第2送液ポートを前記出力ポートと接続し、前記第1送液ポートをいずれのポートにも接続しない第2状態、及び前記第1送液ポートと前記第2送液ポートの両ポートを前記出力ポートと接続する第3状態のいずれかの状態に切り替えるように構成されている。
【0007】
バイナリポンプに6方バルブを組み込むことは従来から提案されている。例えば特開2007−327847号公報では、2種類の液を送液するバイナリポンプに6方バルブを組み込み、6方バルブによって一方のポンプ部(第1ポンプ部)のみを出力ポートに接続した状態と両方のポンプ部(第1ポンプ部と第2ポンプ部)を同時に出力ポートに接続した状態のいずれか一方の状態に切り替えられるように構成したものが開示されている。開示の構成では、第1ポンプ部のみを出力ポートに接続している間、第2ポンプ部は出力ポートに接続されないため、第2ポンプ部側への液の逆流を防止することができる。一方で、この構成では、第2ポンプ部のみを出力ポートに接続した状態にはすることができない。そのため、第1ポンプ部からの送液流量が0%で第2ポンプ部からの送液流量が100%という状態から開始するようなグラジエント分析では逆流を防止することができない。本発明の切替バルブでは、第1ポンプ部のみが出力ポートに接続された状態(第1状態)と第2ポンプ部のみが出力ポートに接続された状態(第2状態)のいずれの状態にもすることができる点において通常の6方バルブとは異なる。
【0008】
また、上記のように通常の6方バルブをバイナリポンプに組み込んだ構成では、第1ポンプ部のみが出力部に接続された状態と両方のポンプ部が出力ポートに接続された状態との間で切り替える際に、第1ポンプ部と出力ポートとの間の接続が一時的に遮断されてしまう。
【0009】
これに対し、本発明の切替バルブにおいては、前記第1送液ポートと前記出力ポートとの間の接続が遮断されることなく前記第1状態と前記第3状態との間で切り替えられ、前記第2送液ポートと前記出力ポートとの間の接続が遮断されることなく前記第2状態と前記第3状態との間で切り替えられるように構成されていることが好ましい。そうすれば、状態の切替え時に連続的に送液を行なうことができ、安定した送液を行なうことができる。さらに、上記のように通常の6方バルブをバイナリポンプに組み込んだ構成では、第2ポンプ部が送液を開始してから出力ポートと合流部の間の流路が液置換されるまでの間は移動相の組成の正確さが損なわれてしまう。これに対し、本発明の切替バルブにおいては、流路を液置換するための遅れが生じず、移動相の組成の正確さが損なわれない。
【0010】
本発明の切替バルブは、前記出力ポートとして第1出力ポートと第2出力ポートの2つの出力ポートを含み、前記第1状態及び前記第3状態において前記第1送液ポートが前記第1出力ポートと接続され、前記第2状態及び前記第3状態において前記第2送液ポートが前記第2出力ポートと接続されるように構成されていてもよい。
【0011】
また、切替バルブは、ドレインに通じるドレインポートを備え、前記第1送液ポート又は前記第2送液ポートの少なくとも一方を前記ドレインポートに接続する第4状態に切り替えられるように構成されていてもよい。そうすれば、この切替バルブを第4状態にすることで、第1ポンプ部又は第2ポンプ部をドレインへ接続してこれらのポンプ部から切替バルブまでの系内のパージを行なうことができる。
【0012】
本発明に係るバイナリポンプは、第1ポンプ部と、前記第1ポンプ部とは別に設けられた第2ポンプ部と、送液対象の液を出力する出力部と、前記第1ポンプ部が接続された第1送液ポート、前記第2ポンプ部が接続された第2送液ポート及び前記出力部に通じる出力ポートを備え、前記第1送液ポートを前記出力ポートと接続し、前記第2送液ポートをいずれのポートにも接続しない第1状態、前記第2送液ポートを前記出力ポートと接続し、前記第1送液ポートをいずれのポートにも接続しない第2状態、及び前記第1送液ポートと前記第2送液ポートの両ポートを前記出力ポートと接続する第3状態のいずれかの状態に切り替えるように構成された上記の切替バルブと、を備えている。
【0013】
バイナリポンプは、前記第1ポンプ部と前記切替バルブとの間の系内圧力を検出する第1圧力センサ及び前記第2ポンプ部と前記切替バルブとの間の系内圧力を検出する第2圧力センサをさらに備えていることが好ましい。そうすれば、第1ポンプ部と切替バルブとの間の系内圧力や第2ポンプ部と切替バルブとの間の系内圧力をモニタしながらその検出値に基づいた各ポンプ部の動作制御が可能になり、送液の安定性を向上させることができる。
【0014】
第1圧力センサ及び第2圧力センサによる検出値に基づいた各ポンプ部の動作制御の一例として、予圧動作を行なうことが挙げられる。予圧動作を行なうように構成されたバイナリポンプの構成の具体的な一例としては、前記第2状態において、前記第1センサにより検出される圧力がシステム圧力に近づくように前記第1圧力センサの出力に基づいて前記第1ポンプ部を動作させる第1予圧動作と、前記第1状態において、前記第2センサにより検出される圧力がシステム圧力に近づくように前記第2圧力センサの出力に基づいて前記第2ポンプ部を動作させる第2予圧動作を実行するように構成された予圧動作部をさらに備えているものが挙げられる。かかる予圧動作部を備えていることにより、動作を停止させているポンプ部側の系内圧力がシステム圧力(動作しているポンプ部の送液圧力)に近い圧力に維持されるので、動作を停止させていたポンプ部が出力ポートに接続された瞬間の液の逆流が抑制され、送液流量の乱れや送液精度の低下が抑制される。
【0015】
さらに好ましい実施態様としては、予圧動作部が、前記第2状態において前記第1センサにより検出される圧力がシステム圧力と略同一となるように前記第1ポンプ部を動作させ、前記第1状態において、前記第2センサにより検出される圧力がシステム圧力と略同一となるように前記第2圧力センサの出力に基づいて前記第2ポンプ部を動作させるように構成されている。圧力が「略同一」であるとは、圧力が完全に同一であるだけでなく、送液精度に影響を与えない程度に小さい圧力差がある場合をも含む。これにより、動作を停止させているポンプ部側の系内圧力がシステム圧力と同程度の圧力に維持されるので、動作を停止させていたポンプ部が出力ポートに接続された瞬間の液の逆流を抑制する効果がさらに向上する。
【0016】
ところで、切替バルブが第1状態又は第2状態となっているときに出力ポートとの間の接続が遮断されているポンプ部側の流路は密閉系となっており、その圧力は一定に維持されて自然に圧力が低下することはあり得ないはずである。そのため、例えばシステム圧力が一定になっているときに、出力ポートとの間の接続が遮断されているポンプ部がその系内圧力を高めるように予圧動作を行なっている場合には、密閉系であるはずの流路内の圧力が自然に低下していることを意味する。密閉系である流路内の圧力が自然に低下する要因として液漏れが考えられる。すなわち、予圧動作中の各ポンプ部の動作によって液漏れの発生とそのリーク量を検知することができる。
【0017】
そこで、本発明のバイナリポンプにおいては、予圧動作中における前記第1ポンプ部又は前記第2ポンプ部による送液量に基づいてリーク量を算出するリーク量算出部をさらに備えていてもよい。
【0018】
さらに、前記リーク量算出部によりリーク量が検出されたときは警告を発するように構成されていることが好ましい。そうすれば、液漏れの発生をユーザが容易に認識することができる。リーク量の検出は、例えばしきい値に基づいて行なうことができ、予圧動作中における第1ポンプ部又は第2ポンプ部による送液量が予め設定されたしきい値を超えたときに警告を発するように構成されていてもよい。液漏れの検知の際に発せられる警告の方法としては、バイナリポンプや液体クロマトグラフに設けられ又は接続された液晶ディスプレイ等の表示部にその旨を表示する方法や警告音を発生させる方法が考えられる。また、警告が発せられたときにデータファイルなどの記録部に警告履歴を保存するように構成されていてもよい。
【0019】
また、送液条件によって又は分析カラム等でのリークの発生によって、システム圧力が低下していく場合がある。そのような場合に、いずれか一方のポンプ部側の流路を出力部と遮断して密閉系にしているとシステム圧力の低下に伴ってその流路内の圧力がシステム圧力よりも相対的に高くなる。その状態でポンプ部を出力部に接続すると、圧力差によってそのポンプ部側の流路内の液が急激に送液されてしまい、移動相の組成に影響を与えたり、送液流量が不安定になったりするなどの問題がある。
【0020】
そこで、本発明のバイナリポンプにおいては、前記第2状態において前記第1圧力センサにより検出される圧力がシステム圧力よりも大きいとき、及び前記第1状態において前記第2圧力センサにより検出される圧力がシステム圧力よりも大きいとき、及び前記第3状態においてシステム圧力が持続的に低下するときに、前記切替バルブを前記第3状態にするように構成された圧力解放部をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、上記のような問題の発生を防止することができる。
【0021】
本発明に係る液体クロマトグラフは、分析流路と、前記分析流路中で移動相を送液する上述のバイナリポンプと、前記分析流路上における前記バイナリポンプよりも下流側に設けられ、前記分析流中に試料を注入する試料注入部と、前記分析流路上における前記試料注入部よりもさらに下流側に設けられ、前記試料注入部により前記分析流路中に注入された試料を成分ごとに分離する分析カラムと、前記分析流路上における前記分析カラムよりもさらに下流側に設けられ、前記分析カラムで分離された成分を検出する検出器と、を備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る切替バルブでは、第1送液ポートを出力ポートと接続し、第2送液ポートをいずれのポートにも接続しない第1状態、第2送液ポートを出力ポートと接続し、第1送液ポートをいずれのポートにも接続しない第2状態、及び第1送液ポートと第2送液ポートの両ポートを出力ポートと接続する第3状態のいずれかの状態に切り替えるように構成されているので、この切替バルブをバイナリポンプに用いることによって、送液を停止しているポンプ部側への液の逆流を防止することができ、送液精度を向上させることができる。
【0023】
本発明に係るバイナリポンプは、上記の切替バルブを用いて各ポンプ部と出力部との間の接続状態を切り替えるようになっているので、送液を停止しているポンプ部側への液の逆流が防止され、送液精度が向上する。
【0024】
本発明に係る液体クロマトグラフは上記のバイナリポンプを用いて移動相を送液するようになっているので、移動相を構成する溶媒の組成が正確に制御され、分析の再現性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る切替バルブ、バイナリポンプ及び液体クロマトグラフの一実施例について説明する。
【0027】
図1を用いて、一実施例の液体クロマトグラフの流路構成について説明する。
【0028】
この実施例の液体クロマトグラフは、分析流路2、バイナリポンプ4、ミキサ14、試料注入部16、分析カラム18及び検出器20を備えている。バイナリポンプ4は溶媒であるA液とB液をミキサ14へ送液するものであり、ミキサ14はバイナリポンプ4により送液されたA液とB液を混合するものである。試料注入部16は分析流路2上におけるミキサ14よりも下流側に設けられ、分析流路2中に試料を注入する。分析カラム18は分析流路2上における試料注入部16よりもさらに下流側に設けられ、分析流路2中に注入された試料を分離する。検出器20は分析流路2上における分析カラム18よりもさらに下流側に設けられ、分析カラム18で分離された試料成分を検出する。
【0029】
バイナリポンプ4は、A液を容器から吸入して送液する第1ポンプ部6aとB液を容器から吸入して送液する第2ポンプ部6bを備えている。第1ポンプ部6aと第2ポンプ部6bは切替バルブ12の互いに異なるポートにそれぞれ第1送液流路8a、第2送液流路8bを介して接続されている。
【0030】
図1では切替バルブ12は概略的に示されているが、切替バルブ12は、第1送液流路8aのみをミキサ14へ接続した第1状態、第2送液流路8bのみをミキサ14へ接続した第2状態、及び第1送液流路8aと第2送液流路8bの両方をミキサ14へ接続した第3状態に少なくとも切り替えることができる。第1送液流路8a上と第2送液流路8b上のそれぞれに圧力センサ10aと10bが設けられている。
【0031】
なお、
図1では切替バルブ12とミキサ14が単一の流路で接続されているように図示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、A液とB液が個別の流路で出力されミキサ14で合流混合される構成であってもよい。後述する
図2から
図5の実施例はA液とB液を個別の流路でミキサ14へ出力する構成を示しており、後述する
図6〜
図9の実施例はA液とB液を単一の流路でミキサ14へ出力する構成を示している。
【0032】
バイナリポンプ4のより具体的な構成の一例を
図2から
図5を用いて説明する。
【0033】
この実施例のバイナリポンプ4は、切替バルブ12として6つのポートa〜fを有するロータリー式の6方バルブが用いられている。6つのポートa〜fは同一円周上に60度間隔で均等に配置されている。ポートaには第1送液流路8a、ポートbにはミキサ14に通じる流路、ポートcにはドレイン、ポートdには第2送液流路8b、ポートeにはミキサ14に通じる流路、ポートfにはドレインがそれぞれ接続されている。ポートaは第1送液ポートをなし、ポートdは第2送液ポートをなす。また、ポートbは第1出力ポートをなし、ポートeは第2出力ポートをなすとともに、これらのポートb及びeがミキサ14に液を出力する出力部をなしている。
【0034】
また、この実施例では、ポンプ部6a及び6bが直列ダブルプランジャ方式の構成で示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、並列ダブルプランジャ方式など液を送液する構成であればいかなる方式の構成であってもよい。
【0035】
ポンプ部6aと切替バルブ12のポートaとを接続する第1送液流路8a上における圧力センサ10aよりも切替バルブ12側に、ダンパ22aが設けられている。さらに、ポンプ部6bと切替バルブ12のポートdとを接続する第2送液流路8b上における圧力センサ10bよりも切替バルブ12側に、ダンパ22bが設けられている。なお、ダンパ22a及び22bは必須の構成要素ではなく、必ずしも設けられている必要はない。
【0036】
切替バルブ12のロータには互いに隣り合うポート間を接続するための2つの溝が設けられている。2つの溝は互いに隣り合うポート間を接続するために必要な長さよりも長く(例えば75°分の長さ)設けられており、ロータの回転によって流路の接続状態を、後述する第1状態(
図2の状態)、第2状態(
図3の状態)、第3状態(
図4の状態)、第4状態(
図5の状態)のいずれかの状態に切り替えることができるように構成されている。
【0037】
図2に示されているように、切替バルブ12が第1状態になると、ポートa−b間が接続されて第1送液流路8aがミキサ14と接続される一方で、第2送液流路8bの接続されているポートdはいずれのポートとも接続されず、第2送液流路8bの下流端が閉じられた状態となる。第2送液流路8bがミキサ14とは遮断されるため、A液のみを送液する際にこの第1状態とすることで、A液が第2送液流路8b側へ逆流することが防止される。
【0038】
図3に示されているように、切替バルブ12が第2状態になると、ポートd−e間が接続されて第2送液流路8bがミキサ14と接続される一方で、第1送液流路8aの接続されているポートaはいずれのポートとも接続されず、第1送液流路8aの下流端が閉じられた状態となる。第1送液流路8aがミキサ14とは遮断されるため、B液のみを送液する際にこの第2状態とすることで、B液が第1送液流路8a側へ逆流することが防止される。
【0039】
図4に示されているように、切替バルブ12が第3状態になると、ポートa−b間が接続されると同時にポートd−e間が接続され、第1送液流路8aと第2送液流路8bがともにミキサ14へ接続される。A液とB液を同時にミキサ14へ送液する際はこの第3状態となる。
【0040】
図5に示されているように、切替バルブ12が第4状態になると、ポートa−f間が接続されると同時にポートc−d間が接続され、第1送液流路8aと第2送液流路8bがともにドレインへ接続される。この状態にすることで、第1送液流路8a内及び第2送液流路8b内のパージを行なうことができる。
【0041】
ポンプ部6a、6b及び切替バルブ12の動作は制御部24によって制御される。制御部24は予め設定されたグラジエントプログラムに基づいて切替バルブ12の切替え動作とともにポンプ部6a及び6bの動作速度を制御するように構成されているが、そのような通常の送液動作のほかに、予圧動作、液漏れの検知及び漏れ量の算出、圧力解放といった動作を行なうための機能として、予圧動作部26、リーク量算出部28及び圧力解放部30を備えている。
【0042】
ここで、制御部24はバイナリポンプ4に設けられた専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータ又は液体クロマトグラフ全体を統括的に制御する専用のコンピュータ若しくは汎用のコンピュータであってもよい。予圧動作部26、リーク量算出部28及び圧力解放部30は、制御部24内に設けられた記憶領域に格納されたプログラムをCPU等の演算素子が実行することによって得られる機能である。
【0043】
上述のように、この実施例のバイナリポンプ4では、A液の濃度が100%でB液の濃度が0%の状態からB液の濃度を上昇させていくモードと、B液の濃度が100%でA液の濃度が0%の状態からB液の濃度を下降させていくモードの2種類のグラジエントモードを実行することができる。
【0044】
A液の濃度が100%でB液の濃度が0%の状態からB液の濃度を上昇させていくモードでは、最初にA液のみを送液している間は切替バルブ12を第1状態(
図2)にして第2送液流路8bとミキサ14との間の接続を遮断する。このとき、第1送液流路8a内の圧力、すなわちシステム圧力よりも第2送液流路8b内の圧力が低くなっていると、その後、切替バルブ12が第3状態(
図4)に切り替えられた瞬間にA液が第2送液流路8b側へ逆流し、B液の送液に遅れが生じる。その結果、移動相の送液流量に乱れが生じたり、移動相組成の再現性が低下して液体クロマトグラフの分析結果の再現性が損なわれたりするという問題がある。
【0045】
B液の濃度が100%でA液の濃度が0%の状態からB液の濃度を下降させていくモードでも同様である。すなわち、最初にB液のみを送液している間は切替バルブ12を第2状態(
図3)にして第1送液流路8aとミキサ14との間の接続を遮断する。このとき、第2送液流路8b内の圧力、すなわちシステム圧力よりも第1送液流路8a内の圧力が低くなっていると、その後、切替バルブ12が第3状態(
図4)に切り替えられた瞬間にB液が第1送液流路8a側へ逆流し、A液の送液に遅れが生じる。
【0046】
上記の問題を防止するため、この実施例では、制御部24に予圧動作部26が設けられている。予圧動作部26は、ミキサ14との間の接続が遮断されて密閉系となっている送液流路8a又は8b内の圧力をシステム圧力と同程度の圧力に維持するように、圧力センサ10a及び10bの出力値に基づいてポンプ部6a及び6bの動作を制御する。
【0047】
例えば、切替バルブ12が第1状態となっていて第1ポンプ部6aからのA液のみをミキサ14へ送液している場合には、第2圧力センサ10bにより検出される第2送液流路8b内の圧力がシステム圧力と同程度の圧力となるように、第2ポンプ部6bの送液動作を制御する。この場合、第2圧力センサ10bの出力値と比較の対象となるのは第1圧力センサ10aの出力値であってもよいし、第1圧力センサ10aとは別に設けられ、少なくとも切替バルブ12が第1状態のときにシステム圧力を検出することができる圧力センサの出力値であってもよい。
【0048】
逆に、切替バルブ12が第2状態となっていて第2ポンプ部6bからのB液のみをミキサ14へ送液している場合には、第1圧力センサ10aにより検出される第1送液流路8a内の圧力がシステム圧力と同程度の圧力となるように、第1ポンプ部6aの送液動作を制御する。この場合、第1圧力センサ10aの出力値と比較の対象となるのは第2圧力センサ10bの出力値であってもよいし、第2圧力センサ10bとは別に設けられ、少なくとも切替バルブ12が第2状態のときにシステム圧力を検出することができる圧力センサの出力値であってもよい。
【0049】
なお、予圧動作部26の最も好ましい形態は、この実施例において説明しているように、密閉系となっている側の流路8a又は8b内の圧力をシステム圧力と「同程度」にするように構成されているものであるが、必ずしもこれに限られない。切替バルブ12が第1状態又は第2状態になっているときにオフライン状態となっているポンプ部6a又は6b側の流路8a又は8b内の圧力をシステム圧力に近づけれていれば、切替バルブ12が第1状態又は第2状態から第3状態に切り替えられた瞬間の液の逆流を抑制する効果があるため、例えばシステム圧力の50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上を予圧動作の目標値として設定してもよい。
【0050】
リーク量算出部28は、上記の予圧動作時におけるポンプ部6a及び6bの動作に基づいて液漏れの検知及びそのリーク量を算出するように構成されている。既述のように、出力ポートとの間の接続が遮断されているポンプ部側は密閉系となっているため、自然に圧力が低下することはあり得ない。そのため、例えばシステム圧力が一定である場合に、出力ポートとの間の接続が遮断されているポンプ部がその系内圧力を高めるように予圧動作を行なっている場合には、その系内圧力が自然に低下しているということになり、その系で液漏れが発生していることが考えられる。
【0051】
上記のいずれのグラジエントモードにおいても、グラジエント送液を開始する前の段階でA液のみ又はB液のみを送液した状態が一定時間継続する(
図10、
図11参照。)。この間、システム圧力はほとんど変動しないため、ミキサ14との間の接続が遮断されている送液流路8a又は8b内の圧力がシステム圧力と同程度になった後は、ポンプ部6a又は6bの予圧動作は終了し、そのポンプ部6a又は6bはほとんど動作しないはずである。そうであるにも拘わらずポンプ部6a又は6bが動作する場合には、液漏れが発生していると考えられる。したがって、このときのポンプ部6a又は6bの送液動作に基づいてリーク量を算出することができる。
【0052】
また、送液条件や分析カラム18における液漏れ等によってシステム圧力が低下していく場合があり、そのようなときに切替バルブ12を第1状態又は第2状態にしていずれか一方の送液流路8a又は8bを密閉系にすると、その送液流路8a又は8b内の圧力がシステム圧力よりも高くなることがある。この状態で、切替バルブ12を第3状態に切り替えると、系内圧力がシステム圧力よりも高くなった送液流路8a又は8b内の液が急激に送液されてしまい、移動相の送液流量が乱れたり、移動相の組成の正確性が損なわれたりするという問題がある。
【0053】
そのため、この実施例の制御部24は圧力解放部30を備えている。圧力解放部30は、システム圧力が持続的に低下する場合や圧力センサ10aと10bにより検出される送液流路8aと8b内の圧力がシステム圧力よりも高い場合に、送液流路8a及び8bが密閉系にならないように切替バルブ12を第3状態にするように構成されている。切替バルブ12が第3状態になっていれば、送液流路8a及び8bが密閉系にならないため、これらの流路8a及び8b内の圧力がシステム圧力よりも高い状態で維持されることはない。
【0054】
図2から
図5に示したバイナリポンプ4の構成では、切替バルブ12を6方バルブによって構成し、A液とB液をそれぞれ個別の流路を介してミキサ14へ出力するようになっているが、本発明はこれに限定されない。
図6から
図9に示されているように、A液とB液を共通の流路を介してミキサ14へ出力するように構成してもよい。
【0055】
図6から
図9に示されたバイナリポンプ4の構成について説明すると、この実施例における切替バルブ12'は4つのポートa〜dを有する4ポートバルブによって構成されている。切替バルブ12'のロータには、ポート間を接続するための溝が1つのみ設けられており、その溝は180度分の円弧形状を有し、同時に3つのポート間を接続することができるようになっている。
【0056】
切替バルブ12'のポートaには第1送液流路8aが、ポートbにはミキサへ通じる流路が、ポートcには第2送液流路8bが、ポートdにはドレインがそれぞれ接続されている。ポートa、ポートb及びポートcはそれぞれ第1送液ポート、出力ポート及び第2送液ポートをそれぞれなしている。この切替バルブ12'も、
図2から
図5に示したバイナリポンプ4の切替バルブ12と同様に、第1状態から第4状態に切り替えることができる。
【0057】
切替バルブ12'が第1状態になると、
図6に示されているように、ポートa−b間が接続され、第1送液流路8aがミキサ14と接続される一方で、第2送液流路8bが接続されているポートcは他のいずれのポートとも接続されない。
【0058】
ロータが第1状態から時計回りに90度回転した状態が第2状態である。切替バルブ12'が第2状態になると、
図7に示されているように、ポートb−c間が接続され、第2送液流路8bがミキサ14と接続される一方で、第1送液流路8aが接続されているポートaは他のいずれのポートとも接続されない。
【0059】
ロータが第1状態から時計回りに45度又は第2状態から反時計回りに45度だけ回転した状態が第3状態である。切替バルブ12'が第3状態になると、ポートa−b−c間が1つの溝によって同時に接続され、第1送液流路8aと第2送液流路8bが共通の流路を介してミキサ14と接続される。
【0060】
ロータが第3状態から180度回転した状態が第4状態である。切替バルブ12'が第4状態になると、ポートa−d−c間が1つの溝によって同時に接続され、第1送液流路8aと第2送液流路8bが同時にドレインと接続される。
【0061】
以上のように、4ポートバルブを切替バルブ12'として用いても、6ポートバルブを切替バルブ12として用いた場合と同様の機能をもたせることができる。
【0062】
なお、以上において説明した実施例では、切替バルブ12、12'としてポートが同一円周上において均等に配置されたものが用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、同一円周上においてポートが不均等に配置されたものを用いることもできる。
【0063】
同一円周上においてポートが不均等に配置された切替バルブ12"を用いたバイナリポンプ4の一実施例を
図10から
図13に示す。
【0064】
この実施例の切替バルブ12"は6つのポートa〜fを有し、ポートaとb、cとd、fとeの間隔が45度、ポートbとcの間の間隔が90度、ポートaとf、dとeの間の間隔が67.5度となっている。ポートaには第1送液流路8a、ポートb、cにはミキサ14に通じる流路、ポートdには第2送液流路8b、ポートe、fにはドレインがそれぞれ接続されている。ポートaは第1送液ポートをなし、ポートdは第2送液ポートをなす。また、ポートbは第1出力ポートをなし、ポートcは第2出力ポートをなすとともに、これらのポートb及びcがミキサ14に液を出力する出力部をなしている。
【0065】
切替バルブ12"のロータには互いに隣り合うポート間を接続するための2つの溝が設けられている。2つの溝の長さはポートaとf、dとeの間の間隔と同じ67.5度分に相当する長さとなっており、これらの溝の間の狭い方の間隔は45度、広い方の間隔は180度となっている。切替バルブ12"としてこのような6ポートバルブを用いても、第1状態(
図10の状態)、第2状態(
図11の状態)、第3状態(
図12の状態)、第4状態(
図13の状態)のいずれかの状態に切り替えることができる。第1状態から第4状態の各状態において実現される流路構成はそれぞれ、
図2から
図5を用いて説明した切替バルブ12'と同じである。
【0066】
以上において説明した実施例の各系内圧力、A液の流量、B液の流量、B液濃度の時間変化と切替バルブ12、12'又は12"の切替え動作について、
図14及び
図15を用いて説明する。
図14はA液(水系溶媒)の濃度が100%でB液(有機溶媒)の濃度が0%の状態からB液の濃度を上昇させていくグラジエントモードの場合、
図15はB液(有機溶媒)の濃度が100%でA液(水系溶媒)の濃度が0%の状態からB液の濃度を下降させていくグラジエントモードの場合を示している。これらの図において最上段のグラフは第1圧力センサ10aの出力値(実線)と第2圧力センサ10bの出力値(破線)を示している。そのグラフの下には、上から順にA液の流量、B液の流量、B液の濃度の時間変化を示すグラフが示されている。そして、最下段に切替バルブ12の状態を括弧付きで示しており、(1)は第1状態(
図2、
図6又は
図10の状態)、(2)は第2状態(
図3、
図7又は
図11の状態)、(3)は第3状態(
図4、
図8又は
図12の状態)、(4)は第4状態(
図5、
図9又は
図13の状態)を意味する。
【0067】
まず、A液(水系溶媒)の濃度が100%でB液(有機溶媒)の濃度が0%の状態からB液の濃度を上昇させていくグラジエントモードの場合について
図14を用いて説明すると、装置を起動した後、切替バルブ12、12'又は12"は第4状態に切り替えられて、各ポンプ部6a、6bのプランジャ位置の原点復帰や送液流路8a、8b内のパージが実行される。その後、移動相の送液を開始するために、まず第1状態に切り替えられて第1ポンプ部6aによってA液が所定の流量でミキサ14へ送液され、A液の送液流量が安定してから切替バルブ12、12'又は12"が第3状態に切り替えられてB液の送液も開始され、グラジエント分析が開始される。
【0068】
A液の送液流量が安定するまでの間、第2送液流路8bは密閉系となっているが、この間に第2送液流路8b内の圧力がシステム圧力と同程度の圧力となるようにポンプ部6bの予圧動作(予圧送液)が行なわれる。グラジエント分析が開始されると、A液(水系溶媒)よりも粘性の低いB液(有機溶媒)の濃度が上がっていくため、システム圧力が低下していく。その後、B液の濃度が100%となったところでグラジエント分析が終了する。
【0069】
グラジエント分析が終了すると、切替バルブ12、12'又は12"が再び第1状態に切り替えられ、第1ポンプ部6aからのA液のみがミキサ14へ送液され、その流量が安定した後で再び切替バルブ12、12'又は12"が第3状態に切り替えられて次のグラジエント分析が開始される。第1状態から第3状態に切り替えられるまでの間も、第2送液流路8b内の圧力がシステム圧力と同程度の圧力となるようにポンプ部6bの予圧動作(予圧送液)が行なわれる。
【0070】
次に、B液(有機溶媒)の濃度が100%でA液(水系溶媒)の濃度が0%の状態からB液の濃度を下降させていくグラジエントモードの場合について
図15を用いて説明する。この場合も、装置起動から送液を開始するまでの動作は上記の場合と同じである。このモードでは、送液を開始する際に、切替バルブ12、12'又は12"が第2状態に切り替えられ、第2ポンプ部6bからのB液のみが所定の流量でミキサ14へ送液される。B液の送液流量が安定してから切替バルブ12、12'又は12"が第3状態に切り替えられてA液の送液も開始され、グラジエント分析が開始される。
【0071】
B液の送液流量が安定するまでの間、第1送液流路8aは密閉系となっているが、この間に第1送液流路8a内の圧力がシステム圧力と同程度の圧力となるようにポンプ部6aの予圧動作(予圧送液)が行なわれる。グラジエント分析が開始されると、B液(有機溶媒)よりも粘性の高いA液(水系溶媒)の濃度が上がっていくため、システム圧力が上昇していく。その後、B液の濃度が0%となったところでポンプ部6aの動作を停止してグラジエント分析を終了する。
【0072】
ポンプ部6aの動作を停止した直後は、第1送液流路8aのダンパ22aに圧縮状態のA液が残っている。したがって、ポンプ部6aの動作を停止してすぐに切替バルブ12、12'又は12"を第2状態に切り替えると、第1送液流路8a内の圧力が高い状態で維持される。一方で、ポンプ部6aからA液の送液が停止されてポンプ部6bからB液のみが送液される状態になると、システム圧力は低下していく。これにより、ポンプ部6aの動作を停止した直後に切替バルブ12、12'又は12"を第2状態に切り替えてしまうと、第1送液流路8a内の圧力がシステム圧力よりも高い状態で維持されることになり、次に切替バルブ12、12'又は12"を第3状態に切り替えたときに第1送液流路8a内のA液が圧力差によって急激にミキサ14へ送液されてしまう。
【0073】
そこで、このモードでは、グラジエント分析が終了して第1ポンプ部6aの動作を停止した後も、切替バルブ12、12'又は12"を第3状態のままで維持して第1送液流路8a内の圧力を解放し、第1送液流路8a内の圧力が解放され安定した後で、切替バルブ12、12'又は12"を第2状態に切り替える。
【0074】
以上において説明した切替バルブ、バイナリポンプ及び液体クロマトグラフの実施形態は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。上記の実施例において切替バルブは6方バルブや4方バルブによって実現されているが、必ずしもこれらの構成を備えている必要はない。切替バルブとしては、第1送液ポートを出力ポートに接続した第1状態、第2送液ポートを出力ポートに接続した第2状態、及び第1送液ポートと第2送液ポートの両ポートを出力ポートに接続した第3状態に選択的に切り替えることができる構成であれば、いかなる構成であってもよい。