(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シャフトが一端側に最大に移動した場合の前記第1対向面と前記第1軸受部との隙間量である第1最小隙間量は、前記シャフトが一端側に最大に移動した場合の前記第2対向面と前記第2軸受部との隙間量である第2最小隙間量と異なる請求項1に記載の過給機。
前記軸受壁部のうち前記挿通孔の中心よりも上方に形成され、前記第2軸受部から前記シャフトの一端側に窪み、前記軸受壁部の外周に開口する上側油保持部を備える請求項1または2に記載の過給機。
前記軸受壁部のうち前記挿通孔の中心よりも下方に形成され、前記第2軸受部から前記シャフトの一端側に窪み、前記挿通孔の内周面に開口する下側油保持部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の過給機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図に示す矢印L方向を過給機Cの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。
図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2(ハウジング)を備える。ベアリングハウジング2の左側には、締結機構3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング6が連結される。過給機本体1は、ベアリングハウジング2、タービンハウジング4、コンプレッサハウジング6が一体化されて構成される。
【0019】
ベアリングハウジング2には、軸受孔2aが形成されている。軸受孔2aは、過給機Cの左右方向に貫通する。軸受孔2aには、軸受部材7が収容される。ここでは、一例として、軸受部材7がセミフローティング軸受によって構成されている。シャフト8は、軸受部材7によって回転自在に軸支されている。シャフト8の左端部には、タービンインペラ9が設けられている。タービンインペラ9は、タービンハウジング4内に回転自在に収容されている。シャフト8の右端部には、コンプレッサインペラ10が設けられている。コンプレッサインペラ10は、コンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0020】
コンプレッサハウジング6には、吸気口11が形成されている。吸気口11は、過給機Cの右側に開口する。吸気口11は、不図示のエアクリーナに接続される。ディフューザ流路12は、ベアリングハウジング2およびコンプレッサハウジング6の対向面によって形成される。ディフューザ流路12は、シャフト8(コンプレッサインペラ10)の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路12の径方向内側は、コンプレッサインペラ10を介して吸気口11に連通している。ディフューザ流路12は、吸気口11から吸気された空気を昇圧する。
【0021】
コンプレッサハウジング6には、環状のコンプレッサスクロール流路13が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は、ディフューザ流路12よりもシャフト8(コンプレッサインペラ10)の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口、および、ディフューザ流路12に連通している。コンプレッサインペラ10が回転すると、吸気口11からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。吸気口11から吸気された空気は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において、遠心力の作用により加圧加速される。また、空気は、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0022】
タービンハウジング4には、吐出口14が形成されている。吐出口14は、過給機Cの左側に開口する。吐出口14は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング4には、流路15が形成される。流路15よりもシャフト8(タービンインペラ9)の径方向外側には、環状のタービンスクロール流路16が設けられる。タービンスクロール流路16は、流路15、および、不図示のガス流入口に連通している。ガス流入口には、エンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。ガス流入口からタービンスクロール流路16に導かれた排気ガスは、流路15およびタービンインペラ9を介して吐出口14に導かれる。タービンインペラ9は、排気ガスの流通により回転する。タービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達される。コンプレッサインペラ10の回転力によって、上記のとおりに、空気が昇圧されてエンジンの吸気口に導かれる。
【0023】
図2は、
図1の一点鎖線部分の抽出図である。過給機Cは、軸受構造Aを備えている。軸受構造Aは、シャフト8のラジアル荷重およびスラスト荷重を受けるために設けられる。以下では、軸受構造Aについて詳述する。軸受部材7は、円筒状の本体部7aを備えている。本体部7aは、軸受孔2aに収容される。本体部7aの内周には、2つのラジアル軸受面7bが形成されている。2つのラジアル軸受面7bは、シャフト8の軸方向に互いに離隔している。軸受部材7の本体部7aには、シャフト8が挿通されている。シャフト8は、2つのラジアル軸受面7bによって回転自在に軸支されている。
【0024】
本体部7aには、ピン孔7cが形成されている。ピン孔7cは、シャフト8の径方向に貫通する。ピン孔7cは、2つのラジアル軸受面7bの間に位置している。ベアリングハウジング2には、取り付け孔2bが形成されている。ピン孔7cは、取り付け孔2bに対してシャフト8の径方向に対向する。取り付け孔2bには、ピン17が取り付けられている。ピン17の先端側は、軸受部材7のピン孔7c内に進入している。軸受部材7は、ピン17によって、シャフト8の回転方向および軸方向の移動が規制されている。
【0025】
本体部7aには、油孔7dが形成されている。油孔7dは、本体部7aを内周面から外周面まで貫通する。例えば、油孔7dの外周面側の開口は、ベアリングハウジング2に形成された油路2cの軸受孔2a側の開口に対向する。油路2cから軸受孔2aに供給された潤滑油の一部は、油孔7dを通って本体部7aの内周に導かれる。また、軸受孔2aに供給された潤滑油の残りの一部は、本体部7aの外周面と軸受孔2aの内周面との間に形成された間隙に供給される。
【0026】
本体部7aの外周面には、2つのダンパ面7eが設けられている。2つのダンパ面7eは、シャフト8の軸方向に互いに離隔している。2つのダンパ面7eは、それぞれラジアル軸受面7bの径方向外側に位置している。ダンパ面7eは、本体部7aの外周面において、軸受孔2aの内周面との間隙が最も狭くなる部位である。本体部7aの外周面と軸受孔2aの内周面との間に形成された間隙に供給された潤滑油が、ダンパとして機能する。これにより、シャフト8の振動が抑制される。
【0027】
シャフト8には、大径部8aが設けられる。大径部8aは、軸受孔2a内に位置する。例えば、大径部8aは、シャフト8のうち、軸受部材7の本体部7aに挿通される部位よりも、外径が大きい。大径部8aには、第1対向面8bが設けられている。第1対向面8bは、シャフト8の一端側(
図2中右側、コンプレッサインペラ10側)に臨む。軸受部材7の本体部7aには、第1軸受部7fが設けられている。第1軸受部7fは、シャフト8の他端側(
図2中左側、タービンインペラ9側)に臨む。第1軸受部7fは、本体部7aにおけるタービンハウジング4側の端面である。第1軸受部7fは、第1対向面8bに、シャフト8の一端側から対向する。つまり、軸受部材7の第1軸受部7fは、シャフト8の第1対向面8bと軸方向に対向する。
【0028】
シャフト8の一端側(
図2中右側、コンプレッサインペラ10側)には、小径部8cが設けられている。小径部8cは、軸受部材7の本体部7aに挿通される部位よりも外径が小さい。シャフト8には、本体部7aに挿通される部位と、小径部8cとの外径差により、段差部8dが形成される。
【0029】
図3は、
図1の破線部分の抽出図である。シャフト8の小径部8cには、回転部材20(シャフトに取り付けられた部材)が設けられている。回転部材20は、軸受部材7よりもシャフト8の一端側に位置している。回転部材20よりもシャフト8の一端側には、コンプレッサインペラ10が設けられている。回転部材20は、軸受部材7とコンプレッサインペラ10との間に挟持される。回転部材20は、円筒形状の本体20aを備えている。本体20aには、一端から他端まで貫通する挿入孔20bが形成されている。挿入孔20bには、シャフト8が挿通されている。本体20aの外周には、フランジ部20cおよび飛散部20dが形成されている。
【0030】
フランジ部20cおよび飛散部20dは、本体20aの外周面から径方向外側に突出する部位である。フランジ部20cは、本体20aのうち、タービンインペラ9側の端部に設けられている。飛散部20dは、本体20aのうち、軸方向の一端と他端との距離が大凡等しい位置(軸方向の中央近傍)に設けられている。フランジ部20cと飛散部20dとは、シャフト8の軸方向に互いに離隔している。フランジ部20cの外径は、飛散部20dの外径よりも大きい。ただし、フランジ部20cの外径は、飛散部20dの外径以下でもよい。ここでは、フランジ部20cは、飛散部20dよりも、シャフト8の軸方向の厚み(肉厚)が僅かに大きい。ただし、フランジ部20cの厚みは、飛散部20dの厚み以下でもよい。
【0031】
本体20aの外径は、飛散部20dを境にして先端側と基端側とで異なる。飛散部20dよりもコンプレッサインペラ10側(先端側)の外径は、飛散部20dよりもフランジ部20c側(基端側)の外径に比べて大きい。ただし、本体20aの外径は、飛散部20dを境にして先端側と基端側とで同じでもよい。また、飛散部20dよりもコンプレッサインペラ10側(先端側)の外径が、飛散部20dよりもフランジ部20c側(基端側)の外径に比べて小さくともよい。本体20aのうち、飛散部20dよりもコンプレッサインペラ10側(先端側)の外周面には、2つのシール溝20eが形成されている。
【0032】
ベアリングハウジング2には、開口部2dが形成されている。開口部2dは、ベアリングハウジング2のうち、コンプレッサハウジング6が取り付けられる面に形成された穴である。開口部2dは、軸受孔2aとコンプレッサハウジング6との間に位置する。開口部2dの内径は、軸受孔2aの内径よりも大きい。ベアリングハウジング2には、軸受孔2aと開口部2dとの外径差により、当接面2eが形成される。当接面2eは、シャフト8の軸方向に大凡垂直な面である。
【0033】
ベアリングハウジング2の開口部2dには、シール部材Sが設けられている。シール部材Sは、例えば、開口部2dに圧入により取り付けられる。ただし、シール部材Sは、ボルト等の取り付け部材や接着剤等により、開口部2dに取り付けられてもよい。シール部材Sは、区画壁部30を備えている。区画壁部30の平面形状は、円形である。シール部材Sは、区画壁部30の一方の平面を当接面2eに当接させている。区画壁部30は、径方向外側の一部が当接面2eに当接している。当接面2eに対向する区画壁部30の平面には、傾斜面30aが形成されている。傾斜面30aは、径方向内側ほど当接面2eから離隔する方向に傾斜している。当接面2eと区画壁部30との間には空間31が形成される。空間31は、軸受部材7の径方向外側において環状に延在し、シャフト8よりも下方が開放されている。
【0034】
区画壁部30の中心には中央孔30bが形成されている。中央孔30bは、区画壁部30をシャフト8の軸方向に貫通する。中央孔30bには、シャフト8および回転部材20が挿通されている。中央孔30bの内周面には、回転部材20のフランジ部20cの外周面の一部が径方向に対向する。フランジ部20cの外周面と、中央孔30bの内周面との間には、僅かに隙間が形成されている。フランジ部20cのうち、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)が中央孔30b内に位置する。フランジ部20cのうち、シャフト8の他端側(タービンインペラ9側)が、中央孔30bよりも軸受部材7側に位置する。
【0035】
シール部材Sは、シール壁部32を備えている。シール壁部32は、平面部32aを有する。平面部32aの平面形状は、円形である。シール壁部32は、区画壁部30とシャフト8の軸方向に離隔している。シール壁部32は、平面部32aを区画壁部30に対向させている。シール部材Sには、延在部33が設けられている。延在部33は、区画壁部30からシール壁部32まで延在する。延在部33は、区画壁部30およびシール壁部32の径方向外側の一部を接続している。
【0036】
シール部材Sには、空間34が形成される。空間34は、区画壁部30、シール壁部32、延在部33に囲繞される。空間34は、区画壁部30とシール壁部32との間に形成されている。延在部33は、開口部2dの内周面に沿って周方向に延在する。ただし、延在部33には、シャフト8よりも下方に切り欠きが形成されている。したがって、空間34は、シャフト8よりも下方が開放されている。
【0037】
シール壁部32の中心側には、軸受壁部35が設けられている。軸受壁部35は、シール壁部32のうち、区画壁部30よりもシャフト8の径方向内側に突出した部位である。軸受壁部35には、挿通孔35aが形成されている。挿通孔35aは、軸受壁部35をシャフト8の軸方向に貫通する。挿通孔35aには、シャフト8および回転部材20が挿通されている。挿通孔35aの内周面には、回転部材20のうち、飛散部20dよりも先端側の外周面が径方向に対向する。本体20aの外周面と、挿通孔35aの内周面との間には、僅かに隙間が形成されている。回転部材20の本体20aに形成された2つのシール溝20eは、挿通孔35a内に位置している。2つのシール溝20eには、環状のシールリングsrがそれぞれ設けられている。シールリングsrの外周面は、挿通孔35aの内周面に押し付けられている。シールリングsrの内周側は、シール溝20e内に進入している。ただし、シールリングsrの内周面と、シール溝20eの底部とは、シャフト8の径方向に離隔している。
【0038】
回転部材20の飛散部20dには、第2対向面20fが設けられている。第2対向面20fは、本体20aの外周面から径方向に延在する環状の平面である。第2対向面20fは、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に臨む。つまり、第2対向面20fは、大径部8aに設けられた第1対向面8bと同一方向に臨んでいる(
図2参照)。第2対向面20fは、第1対向面8b、および、軸受部材7の第1軸受部7fよりも、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。
【0039】
軸受壁部35には、環状の第2軸受部35bが設けられている。第2軸受部35bは、第2対向面20fに、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)から対向する。第2軸受部35bは、挿通孔35aよりもシャフト8の径方向外側に位置する。つまり、軸受壁部35には、挿通孔35aが形成される。挿通孔35aには、シャフト8が挿通される。軸受壁部35のうち、挿通孔35aよりもシャフト8の径方向外側には、第2軸受部35bが設けられる。軸受壁部35は、シール壁部32の平面部32aよりも区画壁部30側に突出している。したがって、第2軸受部35bは、シール壁部32の平面部32aよりも、区画壁部30側に位置する。第2軸受部35bおよび第2対向面20fの径方向外側には、空間34が位置する。第2対向面20fと第2軸受部35bとの間には、シャフト8の軸方向に隙間が形成される。第2対向面20fと第2軸受部35bとの間に形成される隙間は、空間34に連通している。
【0040】
回転部材20のフランジ部20cには、第3対向面20gが設けられている。第3対向面20gは、大径部8aに設けられた第1対向面8bと、回転部材20(飛散部20d)に設けられた第2対向面20fとの間に設けられる。第3対向面20gは、挿入孔20bから径方向に延在する環状の平面である。第3対向面20gは、シャフト8の他端側(タービンインペラ9側)に臨む。つまり、第3対向面20gは、大径部8aに設けられた第1対向面8bに対向する方向に臨む(
図2参照)。換言すれば、第3対向面20gは、第1対向面8bおよび第2対向面20fと反対方向に臨んでいる。第3対向面20gの内周側は、シャフト8の段差部8dに軸方向に接触している。第3対向面20gの外周側は、軸受部材7の本体部7aの外周面よりも径方向に突出している。
【0041】
軸受部材7の本体部7aには、第3軸受部7gが設けられている。第3軸受部7gは、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に臨む。第3軸受部7gは、本体部7aにおけるコンプレッサインペラ10側の端面である。第3軸受部7gは、第3対向面20gに、シャフト8の他端側(タービンインペラ9側)から対向する。つまり、軸受部材7の第3軸受部7gは、回転部材20の第3対向面20gと軸方向に対向する。シャフト8が挿通される本体部7a(軸受部材7)の一端面には、第3対向面20gに対向する第3軸受部7gが設けられる。本体部7aの他端面には、第1対向面8bに対向する第1軸受部7fが設けられる。
【0042】
図4は、第2軸受部35bの一例を説明する図である。
図4に示す矢印の方向は、シャフト8の回転方向を示している。軸受壁部35に設けられる第2軸受部35bは、シャフト8の回転方向に環状に延在している。第2軸受部35bには、パッド40(図中ハッチングで示す)が複数(ここでは4つ)設けられている。ここでは、各パッド40が、シャフト8の回転方向に均等に離隔して配されている。
【0043】
シャフト8の回転方向に隣り合う2つのパッド40の間には、テーパ面41が形成されている。テーパ面41は、パッド40よりも突出高さが低い部位である。テーパ面41の突出高さは、シャフト8の回転方向の後方側から前方側に向かって、連続的に高くなる。つまり、テーパ面41のうち、シャフト8の回転方向の後端部分では、隣接するパッド40との段差が最も大きい。テーパ面41のうち、シャフト8の回転方向の前端部分は、隣接するパッド40と面一となる。
【0044】
第2軸受部35bには、上側油保持部42および下側油保持部43が2つずつ設けられている。上側油保持部42および下側油保持部43は、パッド40に隣接する。上側油保持部42および下側油保持部43は、いずれもテーパ面41に形成された溝である。上側油保持部42は、挿通孔35aの中心Oよりも上方に位置する2つのパッド40に対して、シャフト8の回転方向の前方側に隣接している。したがって、上側油保持部42は、軸受壁部35のうち、挿通孔35aの中心よりも上方に形成されている。
【0045】
上側油保持部42は、第2軸受部35bからシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に窪む。上側油保持部42は、第2軸受部35b(軸受壁部35)の外周に開口している。換言すれば、上側油保持部42は、径方向外側に向けて開口している。上側油保持部42には、シャフト8の径方向内側に底部42aが設けられている。上側油保持部42は、シャフト8の軸方向および径方向のいずれにも貫通していない。
【0046】
下側油保持部43は、挿通孔35aの中心Oよりも下方に位置する2つのパッド40に対して、シャフト8の回転方向の前方側に隣接している。したがって、下側油保持部43は、軸受壁部35のうち、挿通孔35aの中心Oよりも下方に形成されている。下側油保持部43は、第2軸受部35bからシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に窪む。下側油保持部43は、挿通孔35aの内周面に開口している。換言すれば、下側油保持部43は、径方向内側に向けて開口している。下側油保持部43は、シャフト8の径方向外側に底部43aが設けられている。下側油保持部43は、シャフト8の軸方向および径方向のいずれにも貫通していない。
【0047】
図3に示すように、シール壁部32の平面部32aには、導油溝32bが形成されている。導油溝32bは、延在部33から軸受壁部35まで、シャフト8の径方向に延在する溝である。導油溝32bの幅(シャフト8の回転方向の幅)は、上側油保持部42の幅(シャフト8の回転方向の幅)よりも大きい。また、導油溝32bと上側油保持部42とは、シャフト8の回転方向の位置が一部重なっている。つまり、上側油保持部42の径方向外側に、導油溝32bが位置している。導油溝32bの内径側は、軸受壁部35の第2軸受部35bまで延在している。したがって、シール壁部32に形成された導油溝32bは、第2軸受部35bに形成された上側油保持部42に連通する。
【0048】
なお、導油溝32bの数は限定されない。導油溝32bは、1つの上側油保持部42に対してのみ設けてもよいし、2つの上側油保持部42それぞれに設けてもよい。さらには、下側油保持部43の径方向外側に位置する導油溝32bを設けてもよい。また、導油溝32bの深さ、幅、形状は特に限定されるものではない。例えば、導油溝32bは、径方向内側から外側まで一定の幅でもよい。導油溝32bの幅は、径方向外側ほど広くなってもよい。
【0049】
また、第1軸受部7fおよび第3軸受部7gの形状も特に限定されるものではない。ここでは、第1軸受部7fおよび第3軸受部7gは、第2軸受部35bのパッド40およびテーパ面41を有するものとする。
【0050】
次に、
図2および
図3を用いて、軸受構造Aの作用について説明する。
図2に示すように、軸受部材7の本体部7aは、ピン17によって軸方向の移動が規制される。軸受部材7(本体部7a)は、大径部8aおよび回転部材20によって軸方向に挟まれている。
図2中、左側のラジアル軸受面7bを潤滑した後の潤滑油の一部は、ラジアル軸受面7bから第1軸受部7f側に排出される。潤滑油は、シャフト8の回転による遠心力の作用で、第1軸受部7fの径方向内側から径方向外側に向かって排出される。潤滑油は、第1軸受部7fと第1対向面8bとの間に油膜を形成する。
【0051】
図2中、右側のラジアル軸受面7bを潤滑した後の潤滑油の一部は、ラジアル軸受面7bから第3軸受部7g側に排出される。潤滑油は、シャフト8の回転による遠心力の作用で、第3軸受部7gの径方向内側から径方向外側に向かって排出される。潤滑油は、第3軸受部7gと第3対向面20gとの間に油膜を形成する。シャフト8は、
図2中右側に移動すると、第1軸受部7fと第1対向面8bとの間の油膜圧力によって支持される。すなわち、第1軸受部7fは、シャフト8からスラスト荷重を受けるスラスト軸受として機能する。シャフト8は、
図2中左側に移動すると、第3軸受部7gと第3対向面20gとの間の油膜圧力によって支持される。すなわち、第3軸受部7gは、シャフト8からスラスト荷重を受けるスラスト軸受として機能する。つまり、本体部7aの軸方向の両端面は、スラスト荷重を受けるスラスト軸受として機能する。
【0052】
図3に示すように、第3軸受部7gと第3対向面20gとの隙間に導かれた潤滑油は、回転部材20の回転により、空間31に飛散する。空間31に飛散した潤滑油の一部は、空間31の下方からベアリングハウジング2の底部側に排出される。また、空間31に飛散した潤滑油の一部は、区画壁部30の中央孔30bと、回転部材20のフランジ部20cとの隙間から、コンプレッサインペラ10側に導かれる。
【0053】
フランジ部20cよりもコンプレッサインペラ10側に導かれた潤滑油の一部は、回転部材20の回転により、空間34に飛散する。空間34に飛散した潤滑油の一部は、空間34の下方からベアリングハウジング2の底部側に排出される。空間34において、シャフト8よりも上方に飛散した潤滑油の一部は、シール壁部32の平面部32aに付着する。平面部32aに付着した潤滑油の一部は、重力により軸受壁部35に到達する。軸受壁部35に到達した潤滑油は、第2軸受部35bと第2対向面20fとの隙間に進入する。潤滑油は、第2軸受部35bと第2対向面20fとの間に油膜を形成する。シャフト8は、
図2中右側に移動すると、第2軸受部35bと第2対向面20fとの間の油膜圧力によって支持される。すなわち、第2軸受部35bは、シャフト8からスラスト荷重を受けるスラスト軸受として機能する。
【0054】
第2軸受部35bには、上側油保持部42が形成されている。上側油保持部42は、軸受壁部35の外周面に開口している。そのため、第2軸受部35bと第2対向面20fとの隙間に潤滑油が進入しやすい。上側油保持部42は、底部42aを備えている。上側油保持部42は、径方向に非貫通である。そのため、上側油保持部42に進入した潤滑油が、テーパ面41やパッド40に導かれやすい。また、上側油保持部42には、平面部32aに形成された導油溝32bが連通している。したがって、上側油保持部42に潤滑油が導かれやすい。
【0055】
第2軸受部35bには、下側油保持部43が形成されている。下側油保持部43は、挿通孔35aに開口している。そのため、シャフト8の下方において、下側油保持部43に潤滑油が進入しやすい。下側油保持部43は、底部43aを備えている。下側油保持部43は、径方向に非貫通である。そのため、下側油保持部43に進入した潤滑油が、テーパ面41やパッド40に導かれやすい。挿通孔35a内には、シールリングsrが設けられている。シールリングsrにより、第2軸受部35bと第2対向面20fとの隙間に進入した潤滑油のコンプレッサインペラ10側への漏出が抑制される。
【0056】
上記の過給機Cによれば、シャフト8がタービンインペラ9側からコンプレッサインペラ10側に移動した場合に、第1軸受部7fおよび第2軸受部35bがスラスト軸受として機能する。したがって、第1軸受部7fのみを設ける場合に比べて、スラスト容量が拡大し、軸受性能が向上する。
【0057】
なお、第1軸受部7fと第1対向面8bとが軸方向に対向する面積は、第2軸受部35bと第2対向面20fとが軸方向に対向する面積と、同じでもよいし異なってもよい。また、第1対向面8bと第1軸受部7fとの隙間量と、第2対向面20fと第2軸受部35bとの隙間量との関係は、特に限定されない。
【0058】
図5は、合計隙間量を説明する図である。ピン17により、軸受部材7の軸方向の移動が規制されている。ピン17の外周面と、ピン孔7cの内周面との間の隙間量は、L1とL2との合計となる。軸受部材7は、ピン17の外周面と、ピン孔7cの内周面との間の隙間量(L1+L2)の範囲内で、軸方向に移動する。また、シャフト8は、第1軸受部7fと第1対向面8bとの隙間(L3)、および、第3軸受部7gと第3対向面20gとの隙間(L4)の合計量(L3+L4)の範囲内で、軸受部材7に対して軸方向に移動する。つまり、シャフト8は、合計隙間量(L1+L2+L3+L4)の範囲内で、軸方向に移動する。
【0059】
シャフト8が一端側(コンプレッサインペラ10側)に最大に移動した場合、第1対向面8bと第1軸受部7fとの隙間量(L3)は最小となる(第1最小隙間量)。また、第2軸受部35bと第2対向面20fとの隙間量(
図3のL5参照)は、シャフト8の軸方向の位置によって変化する。シャフト8が一端側(コンプレッサインペラ10側)に最大に移動した場合、第2対向面20fと第2軸受部35bとの隙間量(L5)は最小となる(第2最小隙間量)。
【0060】
第1最小隙間量(L3)と第2最小隙間量(L5)とが同程度であれば、第1軸受部7fおよび第2軸受部35bの双方がスラスト荷重を受ける。この場合、第1軸受部7fを径方向に拡大せずとも、スラスト容量を大きくすることができる。つまり、過給機Cの小型化を図りながらも、スラスト容量を大きくし、軸受性能を向上することができる。
【0061】
第1最小隙間量(L3)と第2最小隙間量(L5)とが異なる場合には、第1軸受部7fおよび第2軸受部35bに対するスラスト荷重の作用が異なる。例えば、第1最小隙間量(L3)が第2最小隙間量(L5)よりも小さい場合には、第2軸受部35bよりも第1軸受部7fに大きなスラスト荷重が作用する。換言すれば、第2最小隙間量(L5)が、合計隙間量(L1+L2+L3+L4)よりも大きい場合には、第2軸受部35bよりも第1軸受部7fに大きなスラスト荷重が作用する。
【0062】
過給機Cの長期の稼働により、シャフト8の合計隙間量(L1+L2+L3+L4)が大きくなる場合がある。合計隙間量(L1+L2+L3+L4)が大きくなると、シャフト8の軸方向の移動範囲が大きくなる。初期の状態において、第1軸受部7fのみがスラスト軸受として機能するように、第2最小隙間量(L5)が、第1最小隙間量(L3)(合計隙間量(L1+L2+L3+L4))よりも大きく設定されたとする。この場合、当初は第1軸受部7fのみがスラスト軸受として機能する。その後、シャフト8の合計隙間量(L1+L2+L3+L4)が大きくなると、第2軸受部35bが追加的にスラスト軸受として機能する。また、第2軸受部35bのみがスラスト軸受として機能するように、第1最小隙間量(L3)が、第2最小隙間量(L5)よりも大きく設定されたとする。この場合、初期の状態では、第2軸受部35bのみがスラスト軸受として機能する。第1軸受部7fが追加的にスラスト軸受として機能する。以上のように、上記の各隙間量L1〜L5の関係は、用途に応じて設計すればよい。
【0063】
図6は、第1変形例を説明する図である。第1変形例では、上記実施形態の回転部材20の本体20aのうち、フランジ部20cと飛散部20dの間の外周面は、挿通孔35aの内周面よりも径方向外側に位置する。本体20aに貫通孔20hが形成されている。回転部材20の本体20aおよび貫通孔20h以外の構成は、上記実施形態と同じである。回転部材20は、軸受部材7よりもシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に設けられる。回転部材20には、フランジ部20cおよび飛散部20dが設けられている。飛散部20dには、第2対向面20fが設けられ、フランジ部20cには、第3対向面20gが設けられている。
【0064】
貫通孔20hは、本体20aを第2対向面20fから第3対向面20gまで貫通する。つまり、貫通孔20hは、第2対向面20fに一端が開口し、他端が第2対向面20fよりも第3対向面20g側(シャフト8の他端側、タービンインペラ9側)に開口している。貫通孔20hは、第3対向面20g側の開口が、第2対向面20f側の開口よりも径方向内側に位置している。貫通孔20hの延長線上(コンプレッサインペラ10側)には、第2軸受部35bが位置している。貫通孔20hは、第3軸受部7gと第3対向面20gとの隙間から、第2軸受部35bに潤滑油を流出させる。貫通孔20hにより、第2軸受部35bに十分に潤滑油が供給される。なお、貫通孔20hは、フランジ部20cに1つのみ設けてもよい。また、貫通孔20hは、フランジ部20cに、シャフト8の回転方向に複数設けてもよい。
【0065】
図7は、第2変形例を説明する図である。第2変形例では、飛散部20dに貫通孔20hAが形成されている。貫通孔20hA以外の構成は、上記実施形態と同じである。回転部材20は、軸受部材7よりもシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に設けられる。回転部材20には、フランジ部20cおよび飛散部20dが設けられている。飛散部20dには、第2対向面20fが設けられ、フランジ部20cには、第3対向面20gが設けられている。飛散部20dには、貫通孔20hAが形成されている。
【0066】
貫通孔20hAは、飛散部20dを一端側から他端側まで貫通する。つまり、貫通孔20hAは、第2対向面20fに一端が開口し、他端が第2対向面20fよりも第3対向面20g側(シャフト8の他端側、タービンインペラ9側)に開口している。貫通孔20hAのうち、第3対向面20g側の開口が、第2対向面20f側の開口よりも径方向内側に位置している。貫通孔20hAの延長線上(コンプレッサインペラ10側)には、第2軸受部35bが位置している。貫通孔20hAは、フランジ部20cと飛散部20dの間の空間から、第2軸受部35bに潤滑油を流出させる。貫通孔20hAにより、第2軸受部35bに十分に潤滑油が供給される。なお、貫通孔20hAは、飛散部20dに1つのみ設けてもよい。また、貫通孔20hAは、飛散部20dに、シャフト8の回転方向に複数設けてもよい。
【0067】
図8Aは、第3変形例を説明する図である。
図8Bは、第4変形例を説明する図である。第3変形例および第4変形例では、第2軸受部35bの平面形状が上記実施形態と異なる。
図8Aに示す第3変形例の第2軸受部35bには、上側油保持部42および下側油保持部43に代えて、油保持部44が設けられている。油保持部44は、いずれもテーパ面41に形成された溝である。油保持部44は、各パッド40に対して、シャフト8の回転方向の前方側に隣接している。ここでは、4つの油保持部44が、シャフト8の回転方向に均等に離隔して設けられている。
【0068】
油保持部44は、第2軸受部35bからシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に窪む。油保持部44のうち、シャフト8の径方向外側が、第2軸受部35b(軸受壁部35)の外周に開口している。換言すれば、油保持部44は、径方向外側に向けて開口している。また、油保持部44のうち、シャフト8の径方向内側が、挿通孔35aに開口している。換言すれば、油保持部44は、径方向内側に向けて開口している。したがって、油保持部44は、第2軸受部35bにおいて、径方向に貫通している。
【0069】
図8Bに示す第4変形例の第2軸受部35bには、パッド45(図中ハッチングで示す)およびテーパ面46が設けられている。また、第4変形例の第2軸受部35bにも、第3変形例の油保持部44が形成されている。パッド45は、第2軸受部35bの外周縁の近傍に設けられている。パッド45は、第2軸受部35bの全周に亘って延在している。パッド45の径方向内側には、テーパ面46が設けられている。テーパ面46は、パッド45よりも突出高さが低い部位である。テーパ面46は、第2軸受部35bの全周に亘って延在している。テーパ面46の突出高さは、シャフト8の径方向内側から外側に向かって連続的に高くなる。つまり、テーパ面46のうち、シャフト8の径方向内側の端部では、パッド45との段差が最も大きい。テーパ面46のうち、シャフト8の径方向外側の端部は、パッド45と面一となる。油保持部44は、パッド45の外周縁から、テーパ面46の内周縁まで径方向に延在している。上記の第3変形例および第4変形例の第2軸受部35bによっても、上記実施形態と同様の作用効果が実現される。
【0070】
図9は、第5変形例を説明する図である。第5変形例では、上記実施形態のシール部材Sに代えて、シール部材SSが設けられている。ここでは、上記実施形態と同じ構成については、上記と同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。シール部材SSは、ディフレクタ50を備える。ディフレクタ50は、上記実施形態のシール部材Sのうち、区画壁部30と形状が近似している(
図3参照)。ディフレクタ50は、一方の平面を当接面2eに当接させている。ディフレクタ50は、径方向外側の一部がボルトにより当接面2eに固定されている。ただし、ディフレクタ50は、圧入や接着剤等、他の方法で開口部2dに取り付けられてもよい。ディフレクタ50のうち、当接面2eに対向する平面には、傾斜面50aが設けられている。傾斜面50aは、外径側から内径側に向かうほど、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。
【0071】
ディフレクタ50のうち、傾斜面50aよりも内径側には、軸受壁部51が設けられている。軸受壁部51には、挿通孔51aが形成されている。挿通孔51aは、軸受壁部51をシャフト8の軸方向に貫通する。挿通孔51aには、シャフト8および回転部材20が挿通されている。
【0072】
なお、第5変形例では、回転部材20の本体20aが、シャフト8の軸方向に2つに分割されている。本体20aは、フランジ部20cが設けられた部材と、飛散部20dが設けられた部材とに2分割されている。軸受壁部51は、フランジ部20cよりもシャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に位置している。軸受壁部51は、フランジ部20cの外周面よりも、シャフト8の径方向内側まで延在している。したがって、軸受壁部51は、フランジ部20cに対して、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)から軸方向に対向する。
【0073】
第5変形例では、回転部材20のフランジ部20cに、第2対向面20fが設けられている。第2対向面20fは、本体20aの外周面から径方向に延在する環状の平面である。第2対向面20fは、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)に臨む。
【0074】
軸受壁部51には、環状の第2軸受部51bが設けられている。第2軸受部51bは、第2対向面20fに、シャフト8の一端側(コンプレッサインペラ10側)から対向する部位である。第2軸受部51bは、挿通孔51aよりもシャフト8の径方向外側に位置する。つまり、軸受壁部51には、シャフト8が挿通される挿通孔51aが形成される。軸受壁部51には、挿通孔51aよりもシャフト8の径方向外側に第2軸受部51bが設けられる。第2軸受部51bの平面形状は、第2軸受部35bと同じである(
図4参照)。第2軸受部51bおよび第2対向面20fの径方向外側には、空間31が位置する。第2対向面20fと第2軸受部51bとの間には、シャフト8の軸方向に隙間が形成される。第2対向面20fと第2軸受部51bとの間に形成される隙間は、空間31に連通している。
【0075】
なお、回転部材20のフランジ部20cには、第3対向面20gが設けられている。第3対向面20gは、シャフト8の他端側(タービンインペラ9側)に臨む。つまり、第3対向面20gは、第2対向面20fと反対方向に臨んでいる。第3対向面20gは、軸受部材7に設けられた第3軸受部7gに軸方向に対向する。
【0076】
また、シール部材SSは、シールプレート52を備えている。シールプレート52は、上記のシール壁部32、延在部33および軸受壁部35が一体に形成されたものである。シールプレート52は、開口部2dに圧入により取り付けられる。ただし、シールプレート52は、ボルト等の取り付け部材や接着剤等、他の方法で開口部2dに取り付けられてもよい。軸受壁部51とシールプレート52との間には、空間34が形成される。シールプレート52の中心側は、飛散部20dの外周面よりも径方向内側に突出している。
【0077】
シールプレート52には、シール収容孔52aが形成されている。シール収容孔52aは、シールプレート52をシャフト8の軸方向に貫通する。シール収容孔52aには、シャフト8および回転部材20が挿通されている。回転部材20の本体20aに形成された2つのシール溝20eは、シール収容孔52a内に位置している。2つのシール溝20eには、環状のシールリングsrがそれぞれ設けられている。
【0078】
第5変形例では、第3軸受部7gと第3対向面20gとの隙間に導かれた潤滑油は、回転部材20の回転により、空間31に飛散する。空間31に飛散した潤滑油の一部は、空間31の下方からベアリングハウジング2の底部側に排出される。また、空間31に飛散した潤滑油の一部は、ディフレクタ50に付着する。ディフレクタ50に付着した潤滑油の一部は、重力により軸受壁部51に到達する。軸受壁部51に到達した潤滑油は、第2軸受部51bと第2対向面20fとの隙間に進入する。潤滑油は、第2軸受部51bと第2対向面20fとの間に油膜を形成する。シャフト8は、
図9中右側に移動すると、第2軸受部51bと第2対向面20fとの間の油膜圧力によって支持される。すなわち、第2軸受部51bは、シャフト8からスラスト荷重を受けるスラスト軸受として機能する。
【0079】
第2軸受部51bと第2対向面20fとの隙間に進入した潤滑油の一部は、飛散部20d側に排出される。飛散部20d側に排出された潤滑油は、回転部材20の回転により、空間34に飛散する。空間34に飛散した潤滑油は、空間34の下方からベアリングハウジング2の底部側に排出される。
【0080】
第5変形例では、第2軸受部51bが、上記実施形態の第2軸受部35bよりも、シールリングsrから離隔している。第2軸受部51bをスラスト軸受として機能させるためには、第2軸受部51bへの潤滑油の供給が必須である。潤滑油の供給が要求される第2軸受部51bが、シールリングsrから離隔して配されるので、上記実施形態に比べて、コンプレッサインペラ10側への潤滑油の漏出抑制効果が高い。
【0081】
また、第5変形例において、飛散部20dに、第1変形例の貫通孔20hが設けられる。貫通孔20hにより、第2軸受部51bに十分な潤滑油が供給される。第2軸受部51bに供給される潤滑油が増加しても、コンプレッサインペラ10側に潤滑油が漏出しにくい。第5変形例において、貫通孔20hは必須の構成ではない。飛散部20dに貫通孔20hが設けられずともよい。なお、第5変形例では、回転部材20の組み付け工程上、ディフレクタ50とシールプレート52とを分離させる必要がある。したがって、上記実施形態では、第5変形例に比べて、部品点数を削減することができるといった利点がある。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
上記実施形態および各変形例では、軸受部材7にラジアル軸受面7bおよび第1軸受部7f、第3軸受部7gが設けられている。つまり、軸受部材7は、ラジアル荷重とスラスト荷重とを1つの部材で受ける。ただし、第1軸受部7fまたは第3軸受部7gが設けられる部材と、ラジアル軸受面7bが設けられる部材とを別部材としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態および各変形例では、過給機Cに軸受構造Aが設けられる場合について説明した。しかし、軸受構造Aは、過給機Cに限らず、種々の回転機械に適用可能である。スラスト荷重が作用する方向が一方向のみの回転機械では、上記の第3軸受部7gは必須の構成ではない。
【0085】
また、上記実施形態および各変形例では、シャフト8に取り付けられた回転部材20に第2対向面20fおよび第3対向面20gが設けられている。しかし、第2対向面20fおよび第3対向面20gのいずれか一方または双方は、シャフト8を加工することで、シャフト8に一体に形成されてもよい。
【0086】
また、上記実施形態および各変形例では、シャフト8の大径部8aに第1対向面8bが設けられている。しかし、シャフト8のうち、軸受部材7よりも他端側(タービンインペラ9側)に、シャフト8と別体の部材を取り付けてもよい。シャフト8と別体の部材に、第1対向面8bが形成されてもよい。