(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような耐候性試験の際には一般に、利便性を向上させることが求められている。
【0006】
したがって、耐候性試験を行う際の利便性を向上させることが可能な耐候性試験機および耐候性試験方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る
第1の耐候性試験機は、試験槽と、この試験槽内に配置され、互いに対向する第1面および第2面を有する試
料を保持する、1または複数の試料保持ボックスと、
試験槽内において放射光を放射する光源と、試料についての耐候性試験を行う際の動作制御を行う制御部とを備えたものである。
上記試料保持ボックスは、試料における第1面を、その試料保持ボックスの外部に露出させた状態にて、試料を保持するようになっている。また、上記制御部は、試料保持ボックス内の温度を上昇させた状態にて耐候性試験を行う高温試験モードと、試料における第1面および第2面のうちの一方の面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う結露試験モードと、の双方の試験モードが個別に実行されるように、動作制御を行う。
また、上記高温試験モードの際には、黒色筺体を有する試料保持ボックスが用いられると共に、この黒色筺体と、光源から放射されて試料を透過した放射光とを利用して、試料保持ボックス内の温度が上昇するようになっている。
本発明の一実施の形態に係る第2の耐候性試験機は、試験槽と、この試験槽内に配置され、互いに対向する第1面および第2面を有する試料を保持する、1または複数の試料保持ボックスと、試料についての耐候性試験を行う際の動作制御を行う制御部とを備えたものである。上記試料保持ボックスは、試料における第1面を、その試料保持ボックスの外部に露出させた状態にて、試料を保持するようになっている。また、上記制御部は、試料保持ボックス内の温度を上昇させた状態にて耐候性試験を行う高温試験モードと、試料における第1面および第2面のうちの一方の面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う結露試験モードと、の双方の試験モードが個別に実行されるように、動作制御を行う。また、上記結露試験モードの際には、蓄熱部材を内蔵した白色筺体を有する試料保持ボックスが、用いられるようになっている。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る
第1の耐候性試験方法は、互いに対向する第1面および第2面を有する試
料を保持する1または複数の試料保持ボックスを試験槽内に配置して、試料についての耐候性試験を行う際に、
試料における第1面を試料保持ボックスの外部に露出させた状態にて、その試料保持ボックスが試料を保持するようにすると共に、試料保持ボックス内の温度を上昇させた状態にて耐候性試験を行う高温試験モードと、試料における第1面および第2面のうちの一方の面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う結露試験モードと、の双方の試験モードが個別に実行されるように動作制御を行うものである。
また、上記高温試験モードの際には、黒色筺体を有する試料保持ボックスを用いるようにすると共に、この黒色筺体と、試験槽内の光源から放射されて試料を透過した放射光と、を利用して、試料保持ボックス内の温度を上昇させるようになっている。
本発明の一実施の形態に係る第2の耐候性試験方法は、互いに対向する第1面および第2面を有する試料を保持する1または複数の試料保持ボックスを試験槽内に配置して、試料についての耐候性試験を行う際に、試料における第1面を試料保持ボックスの外部に露出させた状態にて、その試料保持ボックスが試料を保持するようにすると共に、試料保持ボックス内の温度を上昇させた状態にて耐候性試験を行う高温試験モードと、試料における第1面および第2面のうちの一方の面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う結露試験モードと、の双方の試験モードが個別に実行されるように動作制御を行うものである。また、上記結露試験モードの際には、蓄熱部材を内蔵した白色筺体を有する試料保持ボックスを、用いるようになっている。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機および耐候性試験方法では、上記高温試験モードおよび上記結露試験モードの双方の試験モードが個別に実行されるように、耐候性試験の際の動作制御が行われる。これにより、多様な試験条件下での耐候性試験が実現される。
ここで、上記第1の耐候性試験機および上記第1の耐候性試験方法では、黒色筺体および放射光を用いて、試料保持ボックス内の温度が上昇し易くなる(効率良く高温状態に設定できる)ことから、高温試験モードを実行する際の利便性が向上する。
一方、上記第2の耐候性試験機および上記第2の耐候性試験方法では、白色筺体であると共に蓄熱部材を内蔵することから、例えば外光(例えば光源からの放射光など)が試料保持ボックスに照射された場合であっても、白色筺体であるため、試料保持ボックス内の温度が上昇しにくくなる(低温状態を維持し易くなる)。また、蓄熱部材を内蔵しているため、試験槽内の温度が変化した場合でも、試料保持ボックス内の温度が低温状態または高温状態を維持し易くなる。更に、試料保持ボックスに冷却装置および加熱装置等を設置しなくても済むため、試料保持ボックスの構造が簡易なものとなり、低コスト化が図られる。
【0010】
ここで、
上記第2の耐候性試験機および上記第2の耐候性試験方法においても、試験槽内において放射光を放射する光源を更に設けるようにし、上記高温試験モードの際には、黒色筺体を有する試料保持ボックスを用いると共に、この黒色筺体と、光源から放射されて試料を透過した放射光とを利用して、試料保持ボックス内の温度が上昇するようにしてもよい。このようにした場合、黒色筺体および放射光を用いて試料保持ボックス内の温度が上昇し易くなる(効率良く高温状態に設定できる)ことから、高温試験モードを実行する際の利便性が向上する。
【0011】
この場合において、試料保持ボックス内における試料の保持面とは反対側に、黒色部材および断熱部材をそれぞれ配置するようにしてもよい。このようにした場合、黒色部材を用いて、試料保持ボックス内の温度が更に上昇し易くなる(更に効率良く高温状態に設定できる)。また、断熱部材を用いることで、試料保持ボックスからの放熱が抑えられ、高温状態が維持し易くなる。これらの結果、高温試験モードを実行する際の利便性が、更に向上する。
【0012】
また、貫通空気量調節弁を黒色筺体に設けると共に、上記高温試験モードの際に、貫通空気量調節弁における開閉量が調節されることによって、試料保持ボックス内の温度が調節されるようにしてもよい。このようにした場合、例えば試験槽内に複数の試料保持ボックスが設けられている場合に、各試料保持ボックス内の温度を個別に設定できるようになる。その結果、高温試験モードを実行する際の利便性が、更に向上する。
【0014】
また、上記結露試験モードとして、試料における第1面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う第1の結露試験モードと、試料における第2面上にのみ結露を発生させた状態にて耐候性試験を行う第2の結露試験モードとを設けるようにしてもよい。このようにした場合、試料の第1面上にのみ結露を発生させる結露試験と、試料の第2面上にのみ結露を発生させる結露試験との双方がそれぞれ、個別に実現できるようになる。
【0015】
この場合において、試料保持ボックスにおける試料の保持面とは反対側の面に対して液体を噴射する液体噴射機構を更に設けると共に、制御部が上記第1の結露試験モードの際に、試験槽内の湿度を上昇させると共に、液体噴射機構による液体の噴射を利用して試料保持ボックス内の温度を下降させることによって、試料における第1面上にのみ結露を発生させるようにしてもよい。
【0016】
また、制御部が上記第2の結露試験モードの際に、試験槽内の温度を試料保持ボックス内の温度よりも下降させることによって、試料における第2面上にのみ結露を発生させるようにしてもよい。
【0017】
ここで、制御部が上記結露試験モードの際に、上記一方の面上にのみ発生する結露の状態を、結露センサを用いて制御するようにしてもよい。このようにした場合、結露の状態が精度良く調整できるため、結露試験モードの際の再現性が向上する。
【0018】
なお、上記試料としては、例えば、ガラス材料を用いたもの(自動車用ガラスなど)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機および耐候性試験方法によれば、上記高温試験モードおよび上記結露試験モードの双方の試験モードが個別に実行されるように耐候性試験の際の動作制御を行うようにしたので、多様な試験条件下での耐候性試験を実現することができる。よって、耐候性試験を行う際の利便性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(ガラス材料の試料に対する高温試験モード・結露試験モードの適用例)
2.変形例
【0022】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験機(耐候性試験機1)の概略構成例を模式的に表したものである。また、
図2は、この
図1中のII−II線に沿った矢視断面構成(X−Y断面構成)例を模式的に表したものである。なお、本発明の一実施の形態に係る耐候性試験方法は、本実施の形態の耐候性試験機1において具現化されるため、以下、併せて説明する。
【0023】
耐候性試験機1は、試験槽10内に配置された各種の材料からなる試料(試験片)9について、促進的環境条件下での耐候性試験を行うものである。この耐候性試験機1は、
図1および
図2に示したように、温度および湿度等の調節が可能な試験槽10内に、光源11、一対の試料取付枠12a,12b、試料ホルダ13、試料9を保持する試料保持ボックス14、液体噴射機構15、受光器16およびブラックパネル温度計17を備えている。耐候性試験機1はまた、
図1に示したように、回転軸120および制御部18を備えている。
【0024】
試料9は、互いに対向する第1面(表面)および第2面(裏面)を有する板状のものである。なお、試料9の材料としては、上記したように各種の材料が挙げられるが、一例として、ガラス、透明プラスチック等が挙げられる。また、このガラス材料の場合の試料9の用途としては、車両(自動車など)用が挙げられる。すなわち、試料9の一例としては、自動車用ガラスなどが挙げられる。
【0025】
光源11は、試験槽10内の中央付近に、Z軸方向に沿って延在するように配置されている。光源11は、試験槽10内において周囲に(X−Y面内方向に沿って)放射光Loutを放射するものである。この光源11は、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは紫外線蛍光ランプ等のランプ光源により構成されている。
【0026】
試料取付枠12a,12bはそれぞれ、光源11が中心位置となるようにX−Y平面内に配置された円環状の枠である。これらの試料取付枠12a,12bはそれぞれ、
図1に示したように、回転軸120が回転方向R1に沿って回転することで、この回転方向R1と同じ向きの回転方向R2に沿って、光源11を中心(回転中心)とした一定速度での回転動作を行うようになっている。これにより
図2に示したように、後述する各試料ホルダ13、各試料保持ボックス14、受光器16およびブラックパネル温度計17もまた、光源11を中心として回転方向R2に沿った回転動作が行われるようになっている。
【0027】
試料ホルダ13は、
図1に示したように、試料取付枠12a,12bの間を繋ぐようにして取り付けられており、これらの試料取付枠12a,12bに対して着脱可能となっている。各試料ホルダ13は、光源11に対向する試料取付面を有している。この試料取付面上には、
図2に示したように、後述する試料保持ボックス14、受光器16またはブラックパネル温度計17が配置されている。このような複数の試料ホルダ13全体では、例えば
図2に示したように、X−Y平面上において、それらの個数に応じた多角形状をなしている。換言すると、これら複数の試料ホルダ13は、上記した試料取付枠12a,12b上で多角形を構成するように並んで配置されている。
【0028】
(試料保持ボックス14)
試料保持ボックス14は、前述したように、試験槽10内において試料9を保持するためのボックス(耐候性試験機用試料保持ボックス)である。この試料保持ボックス14は、
図2に示したように、この例では試験槽10内に複数配置されている。このような試料保持ボックス14は、詳細は後述するが、試料9の表面を外部(試験槽10内)に露出させた状態で試料9を保持するようになっており、箱型の形状を有している。なお、この試料保持ボックス14における詳細構成例および動作例については、後述する(
図4〜
図6)。
【0029】
液体噴射機構15は、
図1に示したように、試料保持ボックス14における試料9の保持面(正面)とは反対側の面(背面)に対して、所定の液体Wを噴射する機構(スプレノズル)である。液体噴射機構15は、この例では試験槽10内において、試料保持ボックス14の背面側に配置されている。なお、この液体Wとしては、例えば、水温10℃程度の水(H
2O)などが挙げられる。
【0030】
受光器16は、光源11から放射された放射光Loutの放射照度を測定するためのもの(照度計)であり、試料取付枠12a,12b上に取り付けられている。具体的には、例えば
図2に示したように、この受光器16は、試料取付枠12a,12b上において、試料保持ボックス14が取り付けられていない(配置されていない)試料ホルダ13上に配置されている。なお、この受光器16により得られた受光データ(受光値)は、後述する制御部18へ伝送されるようになっている。
【0031】
ブラックパネル温度計17は、
図2に示したように、試料ホルダ13(試料取付面)上に取り付けられており、試料取付面の表面温度を代表する温度情報を測定するための温度計である。この温度情報としては、放射光Loutの光エネルギーが温度化された成分と、試験槽10内の環境温度成分と、試料表面を流れる風による熱伝達成分などを含んでいる。このようなブラックパネル温度計17は、例えば、バイメタル、白金抵抗体、サーミスタまたは熱電対等の感熱体と、黒色に塗装された板とを含んで構成されている。
【0032】
制御部18は、耐候性試験機1全体の動作を制御する部分である。制御部18は、このような制御動作の1つとして、例えば、受光器16により得られた受光データに基づいて光源11の放射強度を制御することにより、試料9への放射照度を制御する機能を有している。また、制御部18は、温度制御の基準をブラックパネル温度計17に選択した場合に、このブラックパネル温度計17により得られた温度情報に基づいて、図示しないヒータおよび冷凍機等の動作をそれぞれ制御することにより、試験槽10内の温度制御を行う機能(温度制御機能)を有している。もしくは、制御部18は、温度制御の基準を試験槽10内の温度計に選択した場合に、この試験槽10内の温度計により得られた温度情報に基づいて、同様に試験槽10内の温度制御を行う機能(温度制御機能)を有している。更に、制御部18は、乾球温度と湿球温度との関係から算出された相対湿度に基づいて、試験槽10内の湿度制御を行う機能(湿度制御機能)を有している。このように制御部18は、互いに影響し合う3つの要素(放射照度、ブラックパネル温度(もしくは乾球温度)、および相対湿度)に対して、同時に制御を行うようになっている。加えて、制御部18は、温度制御の基準をブラックパネル温度計17および試験槽10内の温度計の2つの基準に基づいて温度制御を行うことも可能である。この場合、制御部18は、ブラックパネル温度計17および試験槽10内の温度計より得られた各々の温度情報に基づいて、試験槽10内を循環する風量の制御も加えることで、ブラックパネル温度計17および試験槽10内の温度計の両方の温度制御を行うようになっている。
【0033】
ここで、本実施の形態では特に、制御部18は、試料9についての耐候性試験を行う際に、例えば以下の動作制御を行う。すなわち、制御部18は、後述する各種の試験モード(例えば高温試験モードおよび結露試験モード)が個別に実行されるように、動作制御を行う。なお、このような、制御部18における耐候性試験の際の動作制御の詳細については、後述する。
【0034】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
この耐候性試験機1では、試験槽10内において、必要に応じて光源11から放射光Loutが放射される。また、この際に、複数の試料保持ボックス14、受光器16およびブラックパネル温度計17が取り付けられた試料取付枠12a,12bがそれぞれ、この光源11を中心とした回転動作を行う。これにより、促進的環境条件(加速試験環境)の下で、各試料保持ボックス14内の試料9に対して、放射光Loutが照射される。このような放射光Loutの放射が所定の試験時間(例えば数時間〜数千時間程度)行われることで、各試料9(材料)の劣化度合い等が評価され、耐候性試験がなされる。更に、上記した光源11の放射による照射試験の他に、光源11の放射を行わずに、試験槽10内の温度および相対湿度を制御して行う暗黒試験もあり、照射試験および暗黒試験を繰り返すことで、耐候性試験が行われる。
【0035】
また、本実施の形態の耐候性試験機1では特に、耐候性試験の際に、上記した基本動作に加え、後述する各種の試験モード(後述する
図3参照)が個別に実行される。
【0036】
このような耐候性試験の際に、制御部18は、受光器16により得られた受光データに基づいて、光源11の放射強度を制御することにより、試料9への放射照度を制御する。これにより、受光データの値が予め設定された試験条件値と略一致(望ましくは一致)するように光源11の放電電力が制御され、安定した放射動作が担保されることになる。
【0037】
この制御部18はまた、図示しないヒータおよび冷凍機等の動作をそれぞれ制御することにより、試験槽10内の温度やブラックパネル温度計17の温度制御を行う。なお、このような温度制御は、例えばPID(Proportional-Integral-Derivative)制御を用いて行われる。
【0038】
更に、制御部18は、乾球温度と湿球温度との関係から算出された相対湿度に基づいて、図示しない湿度発生機を制御することにより、試験槽10内の相対湿度を制御する。これにより、試験槽10内の相対湿度が予め設定された試験条件値と略一致(望ましくは一致)するように湿度発生機が制御され、設定相対湿度が維持される。
【0039】
(B.各試験モードの際の動作)
次に、
図1,
図2に加えて
図3〜
図6を参照して、耐候性試験機1における、上記した各種の試験モードの際の動作について、詳細に説明する。
【0040】
図3は、耐候性試験における試験モードの一例を、模式的に表したものである。この
図3に示したように、本実施の形態の耐候性試験の例では、大きく分けて、高温試験モードおよび結露試験モードの2種類の試験モードが設けられている。また、このうちの結露試験モードとしては、この例では、結露試験モード1(表面結露)と、結露試験モード2(裏面結露)との2種類の試験モードが設けられている。すなわち、この耐候性試験の例では、合わせて、高温試験モード、結露試験モード1および結露試験モード2の3種類の試験モードが設けられていることになる。
【0041】
なお、結露試験モード1は、本発明における「第1の結露試験モード」の一具体例に対応する。また、結露試験モード2は、本発明における「第2の結露試験モード」の一具体例に対応する。
【0042】
ここで、上記した「高温試験モード」は、
図3に示したように、試料保持ボックス14内の温度を上昇させた状態(高温状態)にて行われる耐候性試験である。また、例えば試料9が前述した自動車用ガラスの場合には、この高温試験モードにおいて想定される環境条件としては、例えば、昼間における高温状態の車内環境が挙げられる。そして、この高温試験モードの際には、詳細は後述するが、試料保持ボックス14として、黒色のものが使用されるようになっている。
【0043】
一方、上記した「結露試験モード」は、試料9における表面および裏面のうちの一方の面上にのみ結露を発生させた状態にて行われる耐候性試験である。
【0044】
具体的には、上記した「結露試験モード1」は、
図3に示したように、試料9における表面(試料保持ボックス14における外面側)上にのみ結露を発生させた状態(表面結露状態)にて行われる耐候性試験である。また、例えば試料9が前述した自動車用ガラスの場合には、この結露試験モード1において想定される環境条件としては、例えば、明け方における車外での結露発生環境が挙げられる。そして、この結露試験モード1の際には、詳細は後述するが、試料保持ボックス14として、白色のものが使用されるようになっている。
【0045】
また、上記した「結露試験モード2」は、
図3に示したように、試料9における裏面(試料保持ボックス14における内面側)上にのみ結露を発生させた状態(裏面結露状態)にて行われる耐候性試験である。また、例えば試料9が前述した自動車用ガラスの場合には、この結露試験モード2において想定される環境条件としては、例えば、人間が自動車に乗車し、車内の温度および湿度が上昇し、冬場等の走行によって、外気により窓ガラスが冷却される環境が挙げられる。具体的には、例えば車内の温度が20℃、相対湿度が70%RHのとき、露点温度は約14℃であり、冬場の外気が10℃とすると、走行時の窓ガラスの温度は露点温度よりも低くなり、結露が発生することになる。そして、この結露試験モード2の際にも、詳細は後述するが、試料保持ボックス14として、白色のものが使用されるようになっている。
【0046】
このようにして本実施の形態では、試料9の表面上にのみ結露を発生させる結露試験(結露試験モード1)と、試料9の裏面上にのみ結露を発生させる結露試験(結露試験モード2)との双方がそれぞれ、個別に実現できるようになっている。
【0047】
ここで、本実施の形態の制御部18は、試料9についての耐候性試験を行う際に、これらの高温試験モードおよび結露試験モード(結露試験モード1または結露試験モード2)が個別に実行されるように、動作制御を行う。以下では、各試験モードの際の制御部18による動作制御について、詳細に説明する。
【0048】
<高温試験モード>
まず、
図3に加えて
図4を参照して、「高温試験モード」の際の動作制御について説明する。
図4は、この高温試験モードの際の試料保持ボックス14での動作例を、模式断面図にて表したものである。
【0049】
この高温試験モードの際には、
図4に示したように、試料保持ボックス14として、黒色筺体140Bを有するもの(黒色ボックス14B)が用いられている。また、この試料保持ボックス14(黒色ボックス14B)では、試料9における表面Sfおよび裏面Sbのうち、試料9の表面Sfが外部(試験槽10内の光源11側)に露出した状態で、試料9が保持されている。具体的には、
図4に示したように、試料9における上端領域および下端領域がそれぞれ、保持部材141a,141bによって保持(固定)されている。なお、試料9における表面Sfおよび裏面Sbはそれぞれ、本発明における「第1面」および「第2面」の一具体例に対応している。
【0050】
この高温試験モードの際にはまた、
図4に示したように、試料保持ボックス14内に、この試料保持ボックス14内の温度を検知するための温度センサ142が配置されている。また、試料保持ボックス14内における試料9の保持面(光源11側に位置する正面)とは反対側(背面側)に、加温用黒板143および断熱シート板144がそれぞれ配置されている。そして、上記した黒色筺体140Bにおける上側の側面および下側の側面にはそれぞれ、試料保持ボックス14内を貫通する空気(貫通空気Ain,Aout)の量を調節するための貫通空気量調節弁145a,145bが設けられている。なお、加温用黒板143は、本発明における「黒色部材」の一具体例に対応し、断熱シート板144は、本発明における「断熱部材」の一具体例に対応している。
【0051】
この高温試験モードでは、上記した黒色ボックス14Bにおける黒色筺体140Bと、光源11から放射されて試料9を透過した放射光Lout(
図4参照)とを利用して、試料保持ボックス14内の温度が上昇するようになっている。換言すると、これらの黒色筺体140Bおよび放射光Loutを利用して、試料保持ボックス14内が高温状態に設定されるようになっている。また、この高温試験モードの際に、黒色筺体140Bに設けられた貫通空気量調節弁145a,145bにおける開閉量(
図4中の矢印P1a,P1b参照)が(人手によって適宜)調節されることによって、試料保持ボックス14内の温度が調節される(調節可能となっている)。この際に、例えば温度センサ142によって検知された温度に基づいて、貫通空気量調節弁145a,145bにおける開閉量の調節が行われる。
【0052】
<結露試験モード>
次に、
図3に加えて
図5および
図6を参照して、「結露試験モード」(結露試験モード1および結露試験モード2)の際の動作制御について説明する。
【0053】
(結露試験モード1:表面結露)
最初に、
図5は、結露試験モード1(表面結露)の際の試料保持ボックス14での動作例を、模式断面図にて表したものである。
【0054】
この結露試験モード1の際には、
図5に示したように、試料保持ボックス14として、白色筺体140Wを有するもの(白色ボックス14W)が用いられている。また、この試料保持ボックス14(白色ボックス14W)においても、上記した黒色ボックス14Bの場合と同様に、試料9の表面Sfが外部(試験槽10内の光源11側)に露出した状態で、試料9が保持されている。具体的には、
図4に示したように、試料9における上端領域および下端領域がそれぞれ、保持部材141a,141bによって保持(固定)されている。また、このような試料9における表面Sf上および裏面Sb上にはそれぞれ、後述する結露の状態を検知するための結露センサ146が配置されている。
【0055】
この結露試験モード1の際においても、
図5に示したように、試料保持ボックス14内に、この試料保持ボックス14内の温度を検知するための温度センサ142が配置されている。また、試料保持ボックス14内における背面側には、高温試験モードの際の加温用黒板143および断熱シート板144の代わりに、蓄熱板147が配置されている。なお、この蓄熱板147は、本発明における「蓄熱部材」の一具体例に対応している。
【0056】
この結露試験モード1では、制御部18によって、試験槽10内(試料保持ボックス14の外部)の湿度が上昇するように制御され、高湿度状態が設定される。また、
図5に示したように、前述した液体噴射機構15によって、試料保持ボックス14における背面側に液体Wが噴射されることで、試料保持ボックス14内の温度(温度Tin)が、試験槽10内(試料保持ボックス14の外部)の温度Toutよりも下降する(Tin<Tout)。すなわち、制御部18は、このような温度条件を満たすことになるよう、液体噴射機構15における液体Wの噴射動作を制御する。なお、このときの試験槽内10の温度Toutは、例えば30℃程度であり、試験槽10内の湿度(高湿度状態の湿度)は、相対湿度=90%RH程度であり、液体Wの温度(例えば水温)は、例えば10℃程度である。上記の場合、露点温度は約28℃となるため、試料表面の温度を28℃以下にすることで、結露が発生することになる。
【0057】
このようにして制御部18は、結露試験モード1の際には、試験槽10内の湿度を上昇させる(高湿度状態に設定する)と共に、液体噴射機構15による液体Wの噴射を利用して、試料保持ボックス14内の温度を下降させる(低温状態に設定する)。その結果、
図5中の符号P2fで示したように、試料9における表面Sf上にのみ、結露が発生することになる。
【0058】
なお、このような結露試験モード1の際に、制御部18はまた、試料9の表面Sf上にのみ発生する結露の状態を、結露センサ146を用いて制御するようになっている。具体的には、制御部18は、例えば、結露センサ146の測定値に基づいて試験槽10内の湿度や温度、液体Wの温度を制御することで、結露の状態を制御する。
【0059】
(結露試験モード2:裏面結露)
続いて、
図6は、結露試験モード2(裏面結露)の際の試料保持ボックス14での動作例を、模式断面図にて表したものである。
【0060】
この結露試験モード2の際にも、
図6に示したように、試料保持ボックス14として、白色筺体140Wを有するもの(白色ボックス14W)が用いられている。また、上記した結露試験モード1の場合と同様に、試料9の表面Sfが外部(試験槽10内の光源11側)に露出した状態で、試料9が保持されている。具体的には、
図6に示したように、試料9における上端領域および下端領域がそれぞれ、保持部材141a,141bによって保持(固定)されている。また、このような試料9における表面Sf上および裏面Sb上にはそれぞれ、結露試験モード1の場合と同様に、結露センサ146が配置されている。
【0061】
この結露試験モード2の際においても、
図6に示したように、試料保持ボックス14内に、この試料保持ボックス14内の温度を検知するための温度センサ142が配置されている。また、試料保持ボックス14内における背面側には、上記した結露試験モード1の場合と同様に、蓄熱板147が配置されている。
【0062】
この結露試験モード2では、制御部18は、試験槽10内の温度Toutが試料保持ボックス14内の温度Tinよりも下降する(Tin>Tout)ように制御する(低温状態に設定する)。すなわち、制御部18は、このような温度条件を満たすこととなるように、動作制御を行う。具体的には、この結露試験モード2の際には、試料保持ボックス14内に、液体W’(水など)を予め封入し、密閉しておく(
図6参照)と共に、制御部18によって、試験槽10内(試料保持ボックス14の外部)の温度Toutを、上昇させた後に下降させる(高温状態→低温状態の順に設定する)。すると、試料保持ボックス14に内蔵された蓄熱板147における蓄熱作用によって、試料保持ボックス14内の温度Tinが、試験槽10内の温度Toutよりも高くなる(Tin>Tout)。この際、試料保持ボックス14内の液体W’は、蓄熱された温度付近の飽和蒸気となる。
【0063】
このようにして制御部18は、結露試験モード2の際には、蓄熱板147を利用して、試験槽10内の温度Toutが試料保持ボックス14内の温度Tinよりも下降する(Tin>Tout)ように制御する(低温状態に設定する)。その結果、試料保持ボックス14内の飽和蒸気は、温度が下降した試料9における裏面Sb上に接触し、
図6中の符号P2bで示したように、試料9における裏面Sb上にのみ、結露が発生することになる。
【0064】
なお、このような結露試験モード2の際にも、制御部18はまた、試料9の裏面Sb上にのみ発生する結露の状態を、結露センサ146を用いて制御するようになっている。具体的には、制御部18は、例えば、結露センサ146の測定値に基づいて試験槽10内の温度Toutを制御することで、試料保持ボックス14内の温度Tinとの温度差を生じさせ、結露の状態を制御する。
【0065】
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態の耐候性試験機1では、上記した高温試験モードおよび結露試験モード(結露試験モード1または結露試験モード2)が個別に実行されるように、耐候性試験の際の動作制御が行われる。これにより本実施の形態では、多様な試験条件下での耐候性試験が実現される。また、特にこの例では、試料9の表面上にのみ結露を発生させる結露試験(結露試験モード1)と、試料9の裏面上にのみ結露を発生させる結露試験(結露試験モード2)との双方がそれぞれ、個別に実現されることから、更に多様な試験条件下での耐候性試験が実現可能となる。
【0066】
ここで、例えば前述した自動車用ガラスでは、使用環境(自動車の車内・車外の温湿度)によって、その表面や裏面に結露が発生する場面や、車内側と車外側との温度差が大きくなる場面などがあることから、それらの影響を確認する必要がある。本実施の形態の耐候性試験機1では、上記した各種の試験モードが設けられていることで、これらの影響を確認するための多様な環境条件を再現したうえでの耐候性試験が実現可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、高温試験モードの際には、黒色筺体140Bを有する試料保持ボックス14(黒色ボックス14B)を用いると共に、この黒色筺体140Bと、光源11から放射されて試料9を透過した放射光Loutとを利用して、試料保持ボックス14内の温度が上昇するようになっている。このように、黒色筺体140Bおよび放射光Loutを用いて試料保持ボックス14内の温度が上昇し易くなる(効率良く高温状態に設定できる)ことから、高温試験モードを実行する際の利便性が向上する。
【0068】
更に、この高温試験モードの際には、試料保持ボックス14内における試料9の保持面(正面)とは反対側に、加温用黒板143および断熱シート板144がそれぞれ配置されている。これにより、加温用黒板143を用いて、試料保持ボックス14内の温度が更に上昇し易くなる(更に効率良く高温状態に設定できる)。また、断熱シート板144を用いることで、試料保持ボックス14からの放熱が抑えられ、高温状態が維持し易くなる。これらのことから、本実施の形態では、高温試験モードを実行する際の利便性が、更に向上する。
【0069】
加えて、この高温試験モードの際に、黒色筺体140Bに設けられた貫通空気量調節弁145a,145bにおける開閉量が調節されることによって、試料保持ボックス14内の温度が調節されるようになっている。これにより、例えば
図2に示したように、試験槽10内に複数の試料保持ボックス14が設けられている場合に、各試料保持ボックス14内の温度を個別に設定できるようになる。その結果、高温試験モードを実行する際の利便性が、更に向上する。
【0070】
また、本実施の形態では、結露試験モード1および結露試験モード2の際には、蓄熱板147を内蔵した白色筺体140Wを有する試料保持ボックス14(白色ボックス14W)が用いられる。このように、白色筺体140Wであると共に蓄熱板147を内蔵することから、例えば外光(例えば光源11からの放射光Loutなど)が試料保持ボックス14に照射された場合であっても、白色筺体140Wであるため、試料保持ボックス14内の温度(温度Tin)が上昇しにくくなる(低温状態を維持し易くなる)。また、蓄熱板147を内蔵しているため、試験槽10内の温度が変化した場合でも、試料保持ボックス14内の温度が低温状態または高温状態を維持し易くなる。更に、試料保持ボックス14に冷却装置および加熱装置等を設置しなくても済むため、試料保持ボックス14の構造が簡易なものとなり、低コスト化が図られる。ちなみに、例えば
図1および
図2に示したように、試料保持ボックス14が試験槽10内で回転するような場合、前述した液体噴射機構15から液体Wが断続的に噴射されることになるが、試料保持ボックス14内に蓄熱板147が設けられていることから、そのような場合であっても、試料保持ボックス14内の温度変動が抑えられる(低温状態を維持し易くなる)。
【0071】
更に、これらの結露試験モード1および結露試験モード2の際に制御部18は、試料9における一方の面(表面Sfまたは裏面Sb)上にのみ発生する結露の状態を、結露センサ146を用いて制御するようになっている。具体的には、制御部18は、例えば、試験槽10内の湿度や温度、液体Wの温度を制御することで、結露の状態を制御する。これにより、試料9上に発生する結露の状態が精度良く調整できるため、結露試験モードの際の再現性が向上する。
【0072】
以上のように本実施の形態では、高温試験モードおよび結露試験モードの双方の試験モードが個別に実行されるように耐候性試験の際の動作制御を行うようにしたので、多様な試験条件下での耐候性試験を実現することができる。よって、耐候性試験を行う際の利便性を向上させることが可能となる。
【0073】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、耐候性試験機における各機器の構成(形状、配置、個数、材料等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。具体的には、例えば上記実施の形態では、主に、ガラス材料を用いた試料の場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、ガラス材料以外の材料を用いた試料について、本発明を適用するようにしてもよい。また、試料9の用途についても、実施の形態で挙げた車両(自動車など)用には限られず、他の用途のものであってもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、前述したランプ光源を用いて本発明における「光源」を構成する場合の例について説明したが、これには限られず、例えばLED(Light Emitting Diode)等の他の光源を用いて、本発明における「光源」を構成するようにしてもよい。更に、円環状の試料取付枠としては、例えば、光源を中心とした回転動作を行うのもの(回転式のもの)ではなく、固定式のもの(光源を中心として固定配置されたもの)であってもよい。
【0076】
更に、上記実施の形態では、試料保持ボックスにおける構成(形状、配置、個数、材料等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態では、試料保持ボックスが試験槽内に複数配置されている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、試験槽内に試料保持ボックスが1つだけ配置されているようにしてもよい。
【0077】
加えて、上記実施の形態では、制御部による各種の制御動作や耐候性試験方法等について説明したが、上記実施の形態で説明した手法には限られず、他の手法を用いて各種の制御動作や耐候性試験等を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態では、耐候性試験の際の試験モードの一例として、高温試験モードおよび結露試験モードを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、これらの高温試験モードおよび結露試験モードに加えて、試料表面降雨試験や低温凍結試験等の他の試験モードを併用して耐候性試験を行うようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態で説明した一連の制御は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、上記した各機能をコンピュータ(マイクロコンピュータ等)により実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。