特許第6696670号(P6696670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6696670ピリジニルアミノピリミジン誘導体の塩、その製造方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696670
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ピリジニルアミノピリミジン誘導体の塩、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20200511BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   A61K31/506
   A61P35/00
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-547437(P2018-547437)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-507787(P2019-507787A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】CN2017000202
(87)【国際公開番号】WO2017152706
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】201610126987.0
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508252745
【氏名又は名称】上海艾力斯医薬科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100155848
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 東成
(72)【発明者】
【氏名】羅 会兵
(72)【発明者】
【氏名】周 華勇
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/015453(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/014448(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104761544(CN,A)
【文献】 特表2019−507776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00−401/14
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)化合物のメシル酸塩。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載する式(I)化合物のメシル酸塩の製造方法であって、
溶剤中で式(I)化合物をメシル酸に直接反応させて式(I)化合物のメシル酸塩を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
前記溶剤はアセトンと水の混合溶剤であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載する式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項5】
請求項1に記載する式(I)化合物のメシル酸塩の、癌治療の薬物の製造における使用。
【請求項6】
請求項4に記載する薬物組成物の、癌治療の薬物の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピリジニルアミノピリミジン誘導体の塩に関し、具体的に、本発明は、N−{2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−5−{[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]アミノ}ピリジン−3−イル}アクリルアミドのメシル酸塩、その製造方法、当該塩を含む薬物組成物、及び、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌治療における当該塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、細胞の成長及び増殖過程における極めて重要な駆動因子であることが確認されている。上皮成長因子受容体のファミリーは、EGFR(Erb−B1)、Erb−B2(HER−2/neu)、Erb−B3及びErb−B4からなる。上皮成長因子受容体は、肺癌、結腸癌、乳癌といった大部分の癌の疾患進行に関連している。EGFRの過剰発現と突然変異が予後不良の乳癌にとって主要な危険因子であることが、すでに明確に実証されている。
【0003】
現在、研究の最前線とされているのは不可逆的な第三世代EGFR阻害薬である。中国特許出願第CN201410365911.4号は下記式(I)の構成の化合物を開示している。当該化合物は、EGFRの活性型突然変異(例えば、エクソン19の欠失による活性型突然変異や、L858Rの活性型突然変異)、及びT790Mの薬剤耐性型突然変異に対する活性阻害力が野生型EGFR(WT EGFR)に対する活性阻害力よりも明らかに高く、良好な選択性を有している。且つ、毒性及び副作用が少なく、安全性に優れている。
【0004】
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、式(I)化合物のメシル酸塩、その製造方法、当該塩を含む薬物組成物、及び、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌治療における当該塩の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)化合物のメシル酸塩を提供する。
【0007】
【化2】
【0008】
本発明は、式(I)化合物のメシル酸塩の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、更に、溶剤中で式(I)化合物をメシル酸に直接反応させて式(I)化合物のメシル酸塩を得る、式(I)化合物のメシル酸塩の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む薬物組成物を提供する。
【0011】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤とを含む薬物組成物を提供する。
【0012】
本発明は、抗腫瘍薬物として用いられる式(I)化合物のメシル酸塩を提供する。
【0013】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩の、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌治療の薬物の製造における使用を提供する。
【0014】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩の、癌治療の薬物の製造における使用を提供する。
【0015】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩の、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌治療における使用を提供する。
【0016】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩を含む薬物組成物の、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌治療の薬物の製造における使用を提供する。
【0017】
本発明は、更に、式(I)化合物のメシル酸塩を含む薬物組成物の、癌治療の薬物の製造における使用を提供する。
【0018】
本発明は、更に、EGFRの活性型又は薬剤耐性型突然変異体に起因する哺乳動物、特にヒトの疾病、とりわけ癌を治療する方法を提供する。前記方法は、式(I)化合物のメシル酸塩を、又は、治療有効量の式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体、賦形剤若しくは希釈剤とを含む薬物組成物を患者に投与することを含む。
【0019】
本発明は、更に、癌を治療する方法を提供する。前記方法は、式(I)化合物のメシル酸塩を、又は、治療有効量の式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体、賦形剤若しくは希釈剤とを含む薬物組成物を患者に投与することを含む。
【0020】
本発明で言及する癌としては、例えば、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、前立腺癌、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、消化管間質腫瘍(GIST)、甲状腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、腎臓癌、未分化大細胞型リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、中皮腫が挙げられるがこれらに限られず、特に、上皮成長因子受容体の790番目のトレオニンがメチオニンに突然変異する(EGFR T790M)タイプの腫瘍をより良好に適用されるものとして挙げられる。例えば、本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、非小細胞癌(EGFR T790M)の治療薬物として使用可能である。
【0021】
本発明で提供する式(I)化合物の製造方法は、中国特許出願第CN201410365911.4号における実施例1の方法を参照するものであり、なかでも中間体1cと中間体2aの製造において中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例をそのまま引用する。
【0022】
【化3】
【0023】
中間体1cと中間体2aが置換又はカップリング反応を経ることで化合物(II)が得られ、化合物(II)のニトロ基が還元されることで化合物(III)が得られ、化合物(III)と塩化アクリルがアシル化されることで化合物(I)が得られる。中間体1cと中間体2aの置換又はカップリング反応は、遷移金属触媒による触媒作用下で行ってもよい。前記遷移金属触媒としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム/4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンが挙げられるが、これに限られず、ニトロ基の還元方法で採用される当該分野において公知の一般的な還元剤が挙げられ、当該還元剤として、鉄粉、亜鉛粉、硫化ナトリウム、H/白金(IV)ジオキシドが挙げられるが、これらに限られない。
【0024】
本発明で提供する式(I)化合物のメシル酸塩の製造方法は、以下の通りである。
【0025】
【化4】
【0026】
溶剤中で式(I)化合物をメシル酸に直接反応させて式(I)化合物のメシル酸塩を得る。前記溶剤として、アセトンと水の混合溶剤が挙げられるが、これに限られない。
【0027】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、ヒトを含む哺乳動物に対し、経口投与、経直腸投与、非経腸・非経胃投与(静脈内投与、筋肉内投与又は皮下投与)、局所投与(粉剤、軟膏剤又は点滴剤)、又は腫瘍内投与することができる。
【0028】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩の投与量は、約0.05〜50mg/体重kg/日とすればよく、例えば、0.1〜45mg/体重kg/日、更に例えば、0.5〜35mg/体重kg/日とすればよい。
【0029】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、経口投与に用いられる固体剤形として製造することができ、当該固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤等が挙げられるが、これらに限られない。これらの固体剤形において、本発明にかかる式(I)化合物のメシル酸塩は活性成分として、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムといった少なくとも1種の一般的な不活性賦形剤(又は担体)と混合され、或いは次の成分:(1)充填剤又は増量剤(例えば、デンプン、乳糖、蔗糖、ブドウ糖、マンニトール、ケイ酸等);(2)結合剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、蔗糖、アラビアゴム等);(3)保湿剤(例えばグリセロール等);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、いくつかの複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウム等);(5)溶解遅延剤(例えば、パラフィン等);(6)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物等);(7)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール等);(8)吸着剤(例えば、カオリン等);(9)潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム等);又はこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、丸剤には、緩衝剤が含まれてもよい。
【0030】
前記固体剤形(例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、顆粒剤)は、コーティング及びシェル材料(例えば、腸溶コーティングと当該分野において公知のその他材料)でコーティング又はマイクロカプセル化してもよい。これらは不透明剤であってもよく、そして、これら組成物中の活性成分の放出は、遅延した方式で消化器内のある部分において放出されてもよい。使用可能な包埋成分の実例は、重合体物質、ワックス類物質である。必要に応じて、活性成分は前記賦形剤のうちの1種又は複数種とともにマイクロカプセルを形成してもよい。
【0031】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、経口投与に用いられる液体剤形として製造することができ、当該液体剤形としては、薬学的に許容可能な乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、チンキ等が挙げられるが、これらに限られない。液体剤形は、活性成分である式(I)化合物のメシル酸塩のほか、当該分野において一般的に用いられる不活性希釈剤(例えば、水及びその他の溶剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ジメチルホルムアミド及び油脂類、特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ひまし油、ゴマ油等)、又はこれら物質の混合物等を含んでもよい。これら不活性希釈剤のほか、本発明の液体剤形は、一般的な助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、矯味剤及び香料等)を含んでもよい。
【0032】
前記懸濁化剤としては、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、マイクロクリスタリンセルロース、アルミニウムメトキシド及び寒天等、又はこれら物質の混合物が挙げられる。
【0033】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、非経口注射に用いられる剤形として製造することができ、当該剤形としては、生理的に許容可能な無菌の含水若しくは無水溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液、及び、新たに溶解して得られる無菌の注射可能な溶液又は分散液に用いられる無菌粉末が挙げられるが、これらに限られない。適切な担体、希釈剤、溶剤又は賦形剤としては、水、エタノール、ポリオール及びこれらの適切な混合物が挙げられる。
【0034】
本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、局所投与に用いられる剤形として製造することができ、当該剤形としては、例えば、軟膏剤、散剤、座薬、点滴剤、噴射剤、吸入剤等が挙げられる。活性成分としての本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、無菌条件下において、生理的に許容可能な担体及び任意の防腐剤、緩衝剤、或いは必要に応じて推進剤とともに混合される。
【0035】
本発明は、更に、薬物組成物を提供し、当該薬物組成物は本発明における式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤とを含む。薬物組成物を製造する際、通常は、本発明における式(I)化合物のメシル酸塩と、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤とを混合する。
【0036】
一般的な製造方法に基づいて、前記本発明の組成物を一般的な薬物製剤として製造することができる。例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、乳濁液剤、懸濁剤、分散液、溶液剤、シロップ、エリキシル剤、軟膏剤、点滴剤、座薬、吸入剤、噴射剤等である。
【0037】
本発明に係る式(I)化合物のメシル酸塩は、単独で投与してもよいし、或いは他の薬学的に許容可能な治療剤と組み合わせて投与してもよく、特に、他の抗腫瘍薬物と組み合わせて投与してもよい。前記治療剤としては、DNAの化学構造に作用する抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン)、ヌクレオチドの合成に影響する抗腫瘍薬物(例えば、メトトレキサート(MTX)、5−フルオロウラシル(5FU)等)、核酸の転写に影響する抗腫瘍薬物(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、アクラシノマイシン、ミトラマイシン等)、チューブリンの合成に作用する抗腫瘍薬物(例えば、パクリタキセル、ビノレルビン等)、アロマターゼ阻害薬(例えば、アミノグルテチミド、レンタロン、レトロゾール、アナストロゾール等)、細胞シグナル経路阻害剤(例えば、上皮成長因子受容体阻害剤であるイマチニブ(Imatinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)等)が挙げられるが、これらに限られない。組み合わされる各成分は、同時に投与してもよいし、或いは順に投与してもよく、単一製剤の形式で投与してもよいし、或いは製剤形式とせずに投与してもよい。上記の組み合わせには、本発明における化合物と1種類のその他の活性剤の組み合わせが含まれるだけでなく、本発明における化合物と2種類又は更に多くの種類のその他の活性剤の組み合わせも含まれる。
【0038】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩を胃内投与する場合の絶対的バイオアベイラビリティの測定方法は次の通りである。
【0039】
静脈投与:健康なSDラットをランダムに群分けする。測定する化合物を所定の投与量Dで静脈投与し、投与前と、投与から5min後、15min後、0.5h後、1.0h後、2.0h後、4.0h後、8.0h後、12h後及び24h後に眼球後静脈叢から採血する。これを分離して血漿を作製し、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法により血漿中の薬物濃度を測定することで、薬物濃度−時間曲線を取得する。
【0040】
胃内投与:健康なSDラットをランダムに群分けする。測定物質を所定の投与量Dで胃内投与し、投与前と、投与から0.5h後、1.0h後、2.0h後、4.0h後、6.0h後、8.0h後、10h後、12h後及び24h後にラットの眼球後静脈叢から静脈血を採取する。これを分離して血漿を作製し、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法により血漿中の薬物濃度を測定することで、薬物濃度−時間曲線を取得する。
【0041】
投与量を補正した後、薬物濃度−時間曲線よりも下の面積(AUC0−t)を計算することで、絶対的バイオアベイラビリティFを得る。計算式は、F=(AUC胃内投与×D静脈)/(AUC静脈×D胃内投与)×100%である。
【0042】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩による動物の移植瘤に対する成長阻害効果は、一般的な方法で測定すればよく、好ましい評価方法としては、ヒト肺癌H1975ヌードマウス皮下移植瘤に対する成長阻害作用である。実験方法:ヒト肺癌H1975細胞株(5×10株/匹)をヌードマウスの右側背部の皮下に接種する。腫瘍が平均(100〜150)mmまで成長してから、腫瘍の大きさとマウスの体重に基づきランダムに群分けする。測定する化合物を所定の投与量で胃内投与するとともに、溶剤対照群については同量の溶剤を胃内投与する。毎日1回投与し、連続して21日投与する。実験の全過程において、マウスの体重と腫瘍の大きさを毎週2回測定し、毒性反応出現の有無を観察する。
【0043】
腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径)である。
【発明の効果】
【0044】
本発明の有益な効果は、次の通りである。
【0045】
本発明で提供する式(I)化合物のメシル酸塩は、動物の体内において優れたバイオアベイラビリティを有する。
【0046】
本発明における式(I)化合物のメシル酸塩は、動物の移植瘤の成長をより良く阻害できるとともに、良好な安全性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、実施例2で作製して得た式(I)化合物のメシル酸塩と、比較例2の物質(即ち、中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例16)を25mg/kg投与した場合のヒト肺癌H1975ヌードマウス皮下移植瘤の腫瘍体積の変化曲線である。
図2図2は、実施例2で作製して得た式(I)化合物のメシル酸塩と、比較例2の物質(即ち、中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例16)を25mg/kg投与した場合のヒト肺癌H1975ヌードマウスの体重の変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、具体的な実施例とともに、本発明を更に詳細に述べる。これらの実施例は本発明を例示して説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例において具体的条件を明記していない実験方法は、一般的な条件或いはメーカー推奨の条件に基づいて行われたものである。別途説明がない限り、部数及びパーセンテージはそれぞれ重量部及び重量パーセントを指す。
【0049】
I.作製にかかる実施例
実施例1:N−{2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−5−{[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]アミノ}ピリジン−3−イル}アクリルアミド
中間体1c:N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−ニトロピリジン−2,5−ジアミンの製造方法については、中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例を引用する。
【0050】
【化5】
【0051】
中間体2a:3−(2−クロロピリミジン−4−イル)−1−メチル−1H−インドールの製造方法については、中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例を引用する。
【0052】
【化6】
【0053】
化合物(II):N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]−3−ニトロピリジン−2,5−ジアミンの合成
【0054】
【化7】
【0055】
丸底フラスコに、3−(2−クロロピリミジン−4−イル)−1−メチル−1H−インドール(73mg、0.3mmol)、N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−ニトロピリジン−2,5−ジアミン(100mg、0.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(14mg、0.015 mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(14mg、0.03mmol)、リン酸カリウム(127mg、0.6mmol)及び8mlのジオキサンを投入し、アルゴンガス保護下において95℃で5h反応させた。濾過して、濾液を減圧により蒸発乾燥させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により140mgの生成物を得た。収率は86%であった。MS m/z:545[M+1]。
【0056】
化合物(III):N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]ピリジン−2,3,5−トリアミンの合成
【0057】
【化8】
【0058】
丸底フラスコに、N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]−3−ニトロピリジン−2,5−ジアミン(150mg、0.27mmol)、白金ジオキシド(60mg)及び10mlのメタノールを投入し、水素ガスを導入して室温下で1h反応させた。濾過して、プレプレートで分離することで(ジクロロメタン:メタノール=10:1)、80mgの標的化合物を得た。収率は56%であった。MS m/z:515[M+1]。
【0059】
化合物(I):N−{2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−5−{[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]アミノ}ピリジン−3−イル}アクリルアミドの合成
【0060】
【化9】
【0061】
丸底フラスコに、N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−N−[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]ピリジン−2,3,5−トリアミン(80mg、0.16mmol)と5mlのジクロロメタンを投入して、氷水浴で冷却し、塩化アクリル0.5Nのジクロロメタン溶液(0.5ml、0.25mmol)を加えた。氷水浴で1.5時間反応させてから、反応液を50mlの酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、濾液を減圧により濃縮し、プレプレートで分離純化することで(ジクロロメタン:メタノール=10:1)、20mgの標的生成物を得た。収率は23%であった。MS m/z:569[M+1]。
【0062】
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ10.41(s,1H),10.27(s,1H),8.68(s,1H),8.44(s,1H),8.28(t,J=8.5Hz,2H),8.18(s,1H),7.52(d,J=8.0Hz,1H),7.29−7.14(m,3H),6.98(s,1H),6.28(d,J=17.1Hz, 1H),5.76(d,J=10.4Hz,1H),5.00(q,J=9.0Hz,2H),3.89(s,3H),3.61(s,2H),3.28(s,2H),2.80(s, 3H),2.73(s,6H)。
【0064】
実施例2:N−{2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−5−{[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]アミノ}ピリジン−3−イル}アクリルアミドのメシル酸塩の合成
【0065】
【化10】
【0066】
三つ口フラスコに、N−{2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}−6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−5−{[4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)ピリミジン−2−イル]アミノ}ピリジン−3−イル}アクリルアミドを1g(1.76mmol)、35mlのアセトン、7mlの水、169mgのメシル酸を投入し、全て溶解するまで50℃で加熱した。減圧により蒸発乾燥させ、アセトニトリルを加えてから再び減圧により蒸発乾燥させた。残留物にアセトンを加えて超音波濾過し、濾過後のケーキを乾燥させて685mgの標的生成物を得た。収率は59%であった。
【0067】
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ9.80(s,1H),9.23(s,1H),8.53(s,1H),8.42(s,1H),8.30(d,J=5.4Hz,2H),8.23(s,1H),7.52(d,J=8.2Hz,1H),7.25(t,J=7.2Hz,1H),7.22(d,J=8.0Hz,1H),7.15(t,J=7.4Hz,1H),6.70(dd,J=17.0,10.2Hz,1H),6.34(dd,J=17.0,1.7Hz,1H),5.83(dd,J=10.3,1.6Hz,1H),5.02(q,J=9.1Hz,2H),3.88(s,3H),3.65(t,J=6.0Hz,2H),3.33(t,J=6.0Hz,2H),2.86(s,6H),2.81(s,3H),2.44(s,3H)。
【0068】
II.活性測定にかかる実施例
測定にかかる実施例1:SDラット(Sprague Dawleyラット)による薬物吸収実験
静脈投与:上海西普爾−必凱実験動物有限公司(Shanghai Sippr−BK laboratory animal Co.Ltd.)から提供された健康なSDラット(オス・メス各16匹、体重200〜280g)をランダムに4群に分けた。下表に列記した投与量で上記の実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の物質を静脈投与し、投与前と、投与から5min後、15min後、0.5h後、1.0h後、2.0h後、4.0h後、8.0h後、12h後及び24h後にラットの眼球後静脈叢から静脈血0.2mlを採取した。これを分離して血漿を作製し、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法により血漿中の薬物濃度を測定することで、薬物濃度−時間曲線を取得した。
【0069】
表1に主な薬物動態パラメータを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1のうち、比較例1の物質構成は下記の通りであり、中国特許出願第CN201410365911.4号における実施例2の方法で作製して得た。
【0072】
【化11】
【0073】
比較例2の物質構成は下記の通りであり、中国特許出願第CN201410365911.4号における実施例16の方法で作製して得た。
【0074】
【化12】
【0075】
1/2:半減期、Cmax:血漿中薬物の最高濃度、AUC0−t:薬物濃度−時間曲線よりも下の面積
胃内投与:上海西普爾−必凱実験動物有限公司から提供された健康なSDラット(オス・メス各16匹、体重200〜280g)をランダムに4群に分けた。下表に列記した投与量で上記の実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の物質を胃内投与し、投与前と、投与から0.5h後、1.0h後、2.0h後、4.0h後、6.0h後、8.0h後、10h後、12h後及び24h後にラットの眼球後静脈叢から静脈血0.2mlを採取した。これを分離して血漿を作製し、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法により血漿中の薬物濃度を測定することで、薬物濃度−時間曲線を取得した。
【0076】
表2に主な薬物動態パラメータを示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2における比較例1、比較例2の構成及び製造方法は、表1と同様である。
【0079】
投与量を補正した後、AUC0−tを計算することで絶対的バイオアベイラビリティFを得た。計算式はF=(AUC胃内投与×D静脈)/(AUC静脈×D胃内投与)×100%であり、得られた絶対的バイオアベイラビリティFを表2に示す。
【0080】
結論:実施例2における式(I)化合物のメシル酸塩を胃内投与した場合の絶対的バイオアベイラビリティは最高で28.28%に達し、実施例1における式(I)化合物、比較例1及び比較例2における胃内投与の場合の絶対的バイオアベイラビリティよりも明らかに優れていた。
【0081】
測定にかかる実施例2:ヒト肺癌H1975ヌードマウス皮下移植瘤に対する成長阻害作用
本発明における実施例2で作製して得た式(I)化合物のメシル酸塩と、比較例2の物質(比較例2の構成は下記の通りであり、製造方法については中国特許出願第CN201410365911.4号の実施例16を参照した)によるヒト肺癌H1975ヌードマウス皮下移植瘤に対する阻害作用を観察した。
【0082】
【化13】
【0083】
細胞培養:H1975を10%のFBSを加えたRPMI−1640培地に置いて、5%のCOを含有する37℃の恒温培養器にて培養した。接種のために、対数期の細胞を採取してカウントした。
【0084】
実験動物:BALB/c nudeヌードマウス、15匹、雄、6週零、18〜20g、各群5匹、上海動物実験センターより購入。
【0085】
実験群として、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶剤対照群、実施例2(25mg/kg)群、及び比較例2(25mg/kg)群の3つを設定した。
【0086】
実験方法:ヒト肺癌H1975細胞株(5×10株/匹)を実験用マウスの右側背部の皮下に接種し、腫瘍の成長状況を定期的に観察した。移植瘤の直径をノギスで測定し、腫瘍が平均(100〜150)mmまで成長してから、腫瘍の大きさとマウスの体重に基づきランダムに群分けした。実施例2と比較例2の物質を25mg/kgずつ胃内投与するとともに、溶剤対照群については同量の溶剤を胃内投与した。毎日1回投与し、連続して21日投与した。実験の全過程において、マウスの体重と腫瘍の大きさを毎週2回測定し、毒性反応出現の有無を観察した。
【0087】
腫瘍体積の計算式:腫瘍体積(mm)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径)。
【0088】
3つの実験群の腫瘍成長曲線を図1に、体重曲線を図2に示す。
【0089】
結論:本発明の実施例2における式(I)化合物のメシル酸塩は、ヒト肺癌H1975ヌードマウス皮下移植瘤の成長に対し良好な阻害作用を発揮した。阻害効果は比較例2よりも明らかに優れており、且つ、良好な安全性を示した。
【0090】
本文中で言及した全ての文献は、いずれも引用によって本願に組み込まれている。なお、本願における上記の開示内容を精読することで、当業者は本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明について各種の補足、変更又は修正を行うことができ、これらの変形はいずれも本願の請求項に記載された範囲に含まれる。
図1
図2