(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被塗物上に、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含有する水性ベースコート塗料を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成せしめ、該未硬化のベースコート塗膜上に請求項1ないし3のいずれか一項に記載のクリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のクリヤーコート塗料についてさらに詳細に説明する。
【0013】
クリヤーコート塗料:
本発明の記クリヤーコート塗料には、前記アクリル樹脂(A)、水酸基含有アクリル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する。
【0014】
アクリル樹脂(A):
アクリル樹脂(A)は、N−置換(メタ)アクリルアミド(i)、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)及び(i)〜(iii)以外のその他の重合性不飽和単量体(iv)の共重合体である。
【0015】
N−置換(メタ)アクリルアミド(i)としては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド、N−プロポキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−フェノキシメチルアクリルアミド、N−フェノキシメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
なかでも、形成される塗膜の耐水付着性確保の観点から、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド、N−プロポキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドが好適に使用できる。
【0017】
水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びこれらの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル化物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
その他の重合性不飽和単量体(iv)は、上記(i)〜(iii)以外の重合性不飽和単量体であり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC1〜20アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物;ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0021】
上記アクリル樹脂(A)は、耐水付着性確保の観点から、使用する単量体合計固形分量を基準として、N−置換(メタ)アクリルアミド(i)を3〜50質量%、特に10〜30質量%、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)を1〜30質量%、特に1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)を1〜15質量%、特に1〜10質量%、及びその他の重合性不飽和単量体(iv)5〜95質量%、特に35〜88質量%の共重合体である。
【0022】
アクリル樹脂(A)の合成は、一般的な重合性不飽和単量体の重合法を用いて行うことができるが、汎用性やコストなどを考慮して、有機溶剤中における溶液重合法により行うことが最も適している。例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテートなどのエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤などの溶剤中で、アゾ系触媒、過酸化物系触媒などの重合開始剤の存在下に、約60〜約150℃の温度で共重合反応を行なうことによって、容易に得ることができる。
【0023】
上記アクリル樹脂(A)は、5,000〜100,000、特に10,000〜70,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、上記アクリル樹脂(A)は、通常5〜150mgKOH/g、特に10〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び通常10〜100mgKOH/g、特に20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0024】
なお、本明細書において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0025】
上記アクリル樹脂(A)は、クリヤーコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常5〜50質量部、好ましくは10〜45質量部の範囲内で使用することができる。
【0026】
水酸基含有アクリル樹脂(B):
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、上記樹脂(A)以外のアクリル樹脂であり、通常、水酸基含有重合性不飽和単量体及び該水酸基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な他の重合性不飽和単量体を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0027】
上記の水酸基含有重合性不飽和単量体及び該水酸基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な他の重合性不飽和単量体は、特に制限なく、アクリル樹脂(A)に関して前述した、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)及びその他の重合性不飽和単量体(iv)から適宜選択して使用することができる。
【0028】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、平滑性及び鮮映性等の仕上がり外観及び耐候性等の塗膜性能の観点から、水酸基価が80〜200mgKOH/g、特に90〜170mgKOH/g、さらに特に100〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、酸価が1〜40mgKOH/g、特に3〜30mgKOH/g、さらに特に5〜20mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。また水酸基含有アクリル樹脂(B)は、平滑性及び鮮映性等の仕上がり外観及び耐候性等の塗膜性能の観点から、重量平均分子量が4000〜20000、特に6000〜16000、さらに特に8000〜12000の範囲内であることが好ましい。
【0029】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0030】
上記水酸基含有アクリル樹脂(B)は、クリヤーコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常10〜70質量部、好ましくは15〜60質量部の範囲内で使用することができる。
【0031】
また上記アクリル樹脂(A)及び水酸基含有アクリル樹脂(B)の使用比は、複層塗膜の耐水付着性確保、光輝感の観点から両者の合計固形分量を基準として、10/90〜70/30、特に15/85〜60/40である。
【0032】
硬化剤(C):
硬化剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等が挙げられ、これらのうち、ポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂が好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができ、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また上記ポリイソシアネート化合物のうち、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性ならびに耐候性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートの誘導体を好適に使用することができる。
【0034】
上記硬化剤(C)としてポリイソシアネート化合物を用いる場合には、アクリル樹脂(A)及び水酸基含有アクリル樹脂(B)中の水酸基とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5の範囲内とするのが好適である。
【0035】
メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる公知の部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂をあげることができる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化メラミン樹脂をアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0036】
本発明のクリヤーコート塗料には、前記アクリル樹脂(A)、水酸基含有アクリル樹脂(B)及び硬化剤(C)に加えて、さらに必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに非水分散樹脂、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0037】
複層塗膜形成方法:
本発明では、被塗物上に、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含有する水性ベースコート塗料を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成せしめ、該未硬化のベースコート塗膜上に上述の通り得られるクリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成することができる。
【0038】
被塗物:
被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、中でも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0039】
これらの被塗物を構成する基材としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄板、アルミニウム板、真鍮板、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼板等の金属板;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、中でも、金属板又はプラスチック材料が好適である。
【0040】
また、上記被塗物は、上記の如き基材上に、下塗り塗膜又は下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成したものであってもよい。基材が金属製である場合は、下塗り塗膜の形成を行う前に、予めりん酸塩処理、クロム酸塩処理、金属酸化物処理等による化成処理を行っておくことが好ましい。
【0041】
下塗り塗膜は、防食性、防錆性、基材との密着性、基材表面の凹凸の隠蔽性(「下地隠蔽性」と呼称されることもある)等を付与することを目的として形成されるものであり、下塗り塗膜を形成するために用いられる下塗り塗料としては、それ自体既知のものを用いることができ、例えば、金属等の導電性基材に対しては、カチオン電着塗料やアニオン電着塗料を用いることが好ましく、また、ポリプロピレンのような低極性の基材に対しては、塩素化ポリオレフィン樹脂系塗料などを用いることが好ましい。
【0042】
下塗り塗料は、塗装後、加熱、送風等の手段によって、硬化させてもよく、また、硬化しない程度に乾燥させてもよい。下塗り塗料としてカチオン電着塗料やアニオン電着塗料を用いる場合は、下塗り塗膜と、該下塗り塗膜上に続いて形成される塗膜間における混層を防ぎ、外観に優れた複層塗膜を形成するために、下塗り塗料塗装後に加熱して下塗り塗膜を硬化させることが好ましい。
【0043】
また、上記中塗り塗膜は、下塗り塗膜との密着性、下塗り塗膜色の隠蔽性(「色隠蔽性」と呼称されることもある)、下塗り塗膜表面の凹凸の隠蔽性、耐チッピング性等を付与することを目的として上記下塗り塗膜上に形成されるものである。
【0044】
中塗り塗膜は、中塗り塗料を塗布することによって形成せしめることができ、その膜厚は硬化膜厚で通常10〜50μm、特に15〜30μmの範囲内にあることが好ましい。
【0045】
中塗り塗料としては、それ自体既知のものを用いることができ、例えば、ビヒクル成分として、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート等の架橋剤を含んでなる中塗り塗料を挙げることができる。
【0046】
中塗り塗料は、塗装後に加熱、送風等の手段によって、硬化ないしは指触乾燥させることが、中塗り塗膜上に続いて塗装される塗料との混層が抑制され、外観の優れた複層塗膜を形成することができるので好ましい。
【0047】
本発明方法では、上記の如き被塗物上に、光輝性顔料を含有する水性ベースコート塗料を塗装する。
【0048】
水性ベースコート塗料:
水性ベースコート塗料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含有するものであれば、特に制限なく従来公知の塗料を使用し得る。
【0049】
光輝性顔料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であれば特に限定されるものではない。
【0050】
このような光輝性顔料は、一般にベースフィルム上に金属膜を蒸着させ、ベースフィルムを剥離した後、蒸着金属膜を粉砕して金属片とすることにより得られる。このときの蒸着金属膜の厚み、即ち粉砕して得られる金属片の厚みとしては、代表的には0.01〜1μm程度であることが好ましい。なお、0.01μm未満では、下地の色が透過しやすく、1μmを超えると、金属片が乱反射を起こすことがある。
【0051】
なお、光輝性顔料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であるので、極めて厚みが薄い金属片である。上記金属片の粉砕の程度としては、代表的には、平均粒子径(D50)は1〜50μm、好ましくは5〜20μmであることが好ましい。平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(D50)であって、日機装社製のマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0052】
更に、上記蒸着金属膜の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル等の金属膜が挙げられる。腐食の観点からは、特にアルミニウム片を光輝性顔料として用いることが好ましい。アルミニウム片は適宜、表面処理が施されていて良い。
【0053】
上記光輝性顔料の顔料質量濃度(PWC)は、形成塗膜に金属調光沢感を付与する観点から、10〜40%、特に10〜35%の範囲内が好適である。
【0054】
なお、本明細書において、光輝性顔料の顔料質量濃度(PWC)は、塗料の固形分に対する光輝性顔料の質量割合である。
【0055】
上記水性ベースコート塗料には、従来公知の基体樹脂や硬化剤を含有させることができる。記基体樹脂としては、例えば水酸基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられ、硬化剤としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などが挙げられる。これらの基体樹脂や硬化剤は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0056】
上記水性ベースコート塗料には、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料以外に、必要に応じて、他の光輝性顔料や、着色顔料、体質顔料等の顔料を含有せしめることもできる。
【0057】
水性ベースコート塗料には、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、ポリマー微粒子、塩基性中和剤、防腐剤、防錆剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、増粘剤、消泡剤、硬化触媒、劣化防止剤、流れ防止剤、水、有機溶剤等の水性塗料調製に際して通常用いられる他の塗料用添加剤を含有させることができる。
【0058】
水性ベースコート塗料は、形成される塗膜の光輝感などの観点から、一般に2〜20質量%、特に2〜15質量%の範囲内の塗料固形分を有することが好適である。また、水性ベースコート塗料は、通常7.5〜9.0、特に7.5〜8.5の範囲内のpHを有することが好適である。
【0059】
なお、本明細書において、光輝性顔料含有水性ベースコート塗料の塗料固形分は、該光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を110℃で1時間乾燥させた後の不揮発分の質量割合であり、該光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を直径約5cmのアルミ箔カップに約2g測りとり、カップの底面に十分全体に展延した後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥前の塗料質量と乾燥後の塗料質量から算出することができる。
【0060】
光輝性顔料含有水性ベースコート塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が挙げられ、これらの塗装方法で被塗物上にウエット膜を形成せしめることができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよく、中でも、回転霧化方式の静電塗装及びエアスプレー方式の静電塗装が好ましく、回転霧化方式の静電塗装が特に好ましい。
【0061】
形成されるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行うことができる。加熱は、それ自体既知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。加熱温度は、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常10〜40分間程度とすることができる。
【0062】
水性ベースコート塗料の膜厚は、硬化膜厚として、通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜7μmの範囲内が適している。
【0063】
また、被塗物上に水性ベースコート塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その上に本発明のクリヤーコート塗料を塗装し、水性ベースコート塗料の塗膜とクリヤーコート塗膜を同時に加熱硬化させる2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることもできる。また被塗面が未硬化の中塗り塗膜面であれば3コート1ベーク方式となり得る。
【0064】
上記2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成する場合、ハジキ等の塗膜欠陥の発生を防止する等の観点から、水性ベースコート塗料の塗装後、塗膜が実質的に硬化しない温度でプレヒートを行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常50〜100℃程度とすることができ、また、プレヒートの時間は大体30秒間〜10分間、好ましくは1〜5分間程度とすることができる。
【0065】
上記のとおり得られる硬化又は未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料を回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装した後、通常約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱して硬化させることにより、優れた外観を有する複層塗膜を形成せしめることができる。
【0066】
クリヤーコート塗膜の膜厚は、塗膜外観や塗装作業性などの観点から、乾燥膜厚で、一般に15〜60μm、特に20〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0068】
アクリル樹脂(A)の製造例
製造例1
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えたガラス製4ツ口フラスコに「スワゾール1000」(コスモ石油(株)製、炭化水素系溶剤)60部、n−ブタノール30部を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温した後、n−ブチルアクリレート19.7部、メチルメタクリレート15部、スチレン30部、N−ブトキシメチルアクリルアミド20部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート12部、アクリル酸3.3部及びアゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)4部の混合物を90℃に保ったまま滴下ポンプを利用して4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後90℃に1時間保ち、撹拌を続けた。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を「スワゾール1000」10部に溶解させたものを1時間かけて一定速度で滴下し、さらに1時間90℃に保ち、固形分50%のアクリル樹脂溶液(A1)を得た。得られたアクリル樹脂は酸価が25mgKOH/g、水酸基価が50mgKOH/g及び重量平均分子量が20,000であった。
【0069】
製造例2〜10
下記表1に示す配合割合の各成分を用いる以外、製造例1と同様に操作し、アクリル(A2)〜(A10)を得た。製造例1で得られたアクリル樹脂(A1)と併せ、得られたアクリル樹脂(A1)〜(A10)の固形分濃度、重量平均分子量、酸価及び水酸基価を下記表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
水酸基含有アクリル樹脂(B)の製造例
製造例11
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、スチレン30部、n−ブチルアクリレート37.5部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート30部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。30分後、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)0.5部を「スワゾール1000」3部に溶解させた重合開始剤溶液を1時間かけて滴下した。ついで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル29部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(B1)を得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂(B1)は、水酸基価129mgKOH/g、酸価19mgKOH/g、重量平均分子量約12000であった。
【0072】
製造例12
製造例11で、スチレン30部、n−ブチルアクリレート37.5部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート30部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物を、スチレン30部、n−ブチルアクリレート40.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート27部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物に変更する以外は、製造例11と同様にして製造することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(B2)を得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂(B2)は、水酸基価129mgKOH/g、酸価19mgKOH/g、重量平均分子量約12000であった。
【0073】
クリヤーコート塗料の製造
実施例1
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1)溶液を固形分で20部、製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂(B1)溶液を固形分で40部、「BYK−300」(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分52%)0.2部、「TINUVIN900」(商品名、B.A.S.F.社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、有効成分100%)2.0部及び「TINUVIN292」(商品名、B.A.S.F.社製、ヒンダードアミン系光安定剤、有効成分100%)1.0部を均一に混合し、これに「デュラネートTLA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ(株)社製、ポリイソシアネート化合物、固形分100%、NCO含有率21.8%)40部を加えて混合し、さらに、スワゾール1000(商品名、コスモ石油社製、炭化水素系溶剤)を加えて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒のクリヤーコート塗料(1)を得た。
【0074】
実施例2〜12及び比較例1〜5
実施例1と同様にして、下記表2に示した塗料配合にて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒の各クリヤーコート塗料(2)〜(17)得た。なお、表2の各クリヤーコート塗料の配合は固形分配合である。
(注1)メラミン樹脂:「サイメル238」、商品名、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分100%
【0075】
【表2】
【0076】
試験用被塗物の作製:
縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのりん酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、熱硬化エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0077】
試験板の作製
上記試験用被塗物上に、「WP−522H N−2.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:20)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、乾燥膜厚20μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、水性ベースコート塗料(注2)を、回転霧化型のベル型塗装機「ABBカートリッジベル塗装機」(ABB社製、商品名)を用いて、乾燥膜厚が3μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で5分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化のベースコート塗面上に実施例及び比較例で得た各クリヤーコート塗料(1)〜(17)をそれぞれ乾燥膜厚30μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより各試験板を作製した。
【0078】
各試験板については、下記の試験方法により評価を行なった。その結果を表2に併せて示す。
【0079】
(注2)水性ベースコート塗料:水性ベースコート「WBC713T」(関西ペイント社製、商品名)のビヒクル成分100質量部に対して、光輝性顔料として、蒸着アルミニウムフレークペースト(「Hydroshine WS−3004」、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)を23%の顔料質量濃度(PWC)となるよう配合し、pH8.0及び塗料固形分10%となるよう調整した水性塗料を準備した。
【0080】
(試験方法)
光輝感: 角度を変えて各試験板を目視し、下記基準で光輝感を評価した。
○:目視の角度によるメタリック感の変化が大きく、フリップフロップ性に優れ、良好な光輝感を有する。
△:目視の角度によるメタリック感の変化がやや小さく、フリップフロップ性がやや劣り、光輝感はやや劣る。
×:目視の角度によるメタリック感の変化が小さく、フリップフロップ性が劣り、光輝感は劣る。
【0081】
初期付着性: 各試験板上の複層塗膜に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
◎:100個残存し、カッターによる切り込みの縁も滑らかである。
○:100個残存するが、カッターの切り込みの交差点において塗膜の小さなハガレが生じている。
△:99〜81個残存。
×:80個以下残存。
【0082】
耐水付着性: 各試験板を80℃の温水に1日間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記初期付着性試験と同様にしてゴバン目試験を行った。評価基準は初期付着性試験の場合と同じである。