特許第6696727号(P6696727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696727
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】携帯端末キーシステム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20200511BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20200511BHJP
   H04W 76/38 20180101ALI20200511BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
   H04Q9/00 301B
   B60R25/24
   H04W76/38
   !E05B49/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-44816(P2015-44816)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-165061(P2016-165061A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2017年8月22日
【審判番号】不服2019-8693(P2019-8693/J1)
【審判請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶌 優季
(72)【発明者】
【氏名】大矢 雅彦
【合議体】
【審判長】 佐藤 智康
【審判官】 岡本 正紀
【審判官】 富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−524101(JP,A)
【文献】 特開2015−41853(JP,A)
【文献】 特開2014−192724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-99/00
E05B 1/00-65/44,65/46,65/462-85/28
H03J 9/00-9/06
H04B 7/24-7/26
H04L 12/28,12/44-12/46
H04M 1/00,1/24-3/00,3/16-3/20,3/38-3/58,7/00-7/16,11/00-11/10,99/00
H04Q 9/00-9/16
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末キー及びその通信相手の両者に設けられた通信コントローラの間で無線通信が確立すると、前記携帯端末キー及び通信相手の間の通信で使用されるアプリケーションの操作が許可されて、当該アプリケーションの操作に基づく通信が可能となる携帯端末キーシステムにおいて、
前記無線通信が一旦確立したにもかかわらず相手から応答を受信することができない状態が続くと前記無線通信を無効とするときの基準として当該無線通信のリンク層において管理された時間を接続監視タイムアウトとすると、当該接続監視タイムアウトよりも短い時間間隔に設定された定期通信タイムアウトで、前記無線通信のアプリケーション層において接続確認するための信号を送受信する通信を行いつつ、前記リンク層において設定された時間間隔の接続監視タイムアウトで前記携帯端末キー及び通信相手の間の通信を行い、所定時間内に信号の受信が行われるか否かを監視することにより、通信確立の可否を判定する通信判定部と、
前記通信判定部の判定結果を基に、前記携帯端末キー及び通信相手の間の通信の作動を制御する通信制御部とを備えたことを特徴とする携帯端末キーシステム。
【請求項2】
前記接続監視タイムアウトは、ユーザの設定操作によって変更することができない予め定められた固定値であり、前記定期通信タイムアウトは、ユーザの設定操作によって変更することができる
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末キーシステム。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記通信判定部により通信不可と判定されると、前記アプリケーションの操作に基づく通信を禁止にする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末キーシステム。
【請求項4】
前記携帯端末キー及び通信相手のうち、通信を主管理するマスタに一方が位置付けされ、当該マスタからの指示に基づき作動するスレーブに他方が位置付けされ、
前記通信確立の可否判定は、前記マスタによって管理されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の携帯端末キーシステム。
【請求項5】
前記携帯端末キー及び通信相手のうち、通信を主管理するマスタに一方が位置付けされ、当該マスタからの指示に基づき作動するスレーブに他方が位置付けされ、
前記通信確立の可否判定は、前記スレーブによって管理されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の携帯端末キーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末キーにより通信相手と通信する携帯端末キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば高機能携帯電話等の携帯端末キーを車両の電子キーとして使用する携帯端末キーシステムが周知である(特許文献1等参照)。この種の携帯端末キーが車両とブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を通じて通信する場合には、予め携帯端末キーと車両とをペアリングしておく必要がある。ペアリングを行うにあたっては、車両に搭載された車載ECUをペアリングモードに移行させた上で、車両及び携帯端末キーのペアリングが実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−215047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯端末キーと車両との間の通信が一旦確立したにもかかわらず、周囲環境の影響を受けるなどして、通信が途切れてしまうことも想定される。この場合、通信が途切れたことを直ぐに判断できればよいが、現在の処理としては、通信確立後の接続イベントに入った後、相手側から応答を受けることができない時間が、通信のリンク層で管理される接続監視タイムアウト以上となったときに、通信が切断されたと判断されるようになっている。一般的に、接続監視タイムアウトは数十秒と長く、かつ手動操作によって設定変更できるものではない。よって、通信が途中で途切れたときには、切断と判断されるまでに時間がかかり、その間、ユーザは通信操作が不能になってしまう問題があった。
【0005】
本発明の目的は、一旦確立した通信が途切れてしまったことを直ぐに判断することができる携帯端末キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決する携帯端末キーシステムは、携帯端末キー及びその通信相手の両者に設けられた通信コントローラの間で無線通信が確立すると、前記携帯端末キー及び通信相手の間の通信で使用されるアプリケーションの操作が許可されて、当該アプリケーションの操作に基づく通信が可能となる構成において、前記無線通信が一旦確立したにもかかわらず相手から応答を受信することができない状態が続くと前記無線通信を無効とするときの基準として当該無線通信のリンク層において管理された時間を接続監視タイムアウトとすると、当該接続監視タイムアウトよりも短い時間間隔で、前記携帯端末キー及び通信相手の間においてアプリケーション層を通じて通信を行うことにより、通信確立の可否を判定する通信判定部と、前記通信判定部の判定結果を基に、前記携帯端末キー及び通信相手の間の通信の作動を制御する通信制御部とを備えた。
【0007】
本構成によれば、通信のリンク層で管理された変更不可の接続監視タイムアウトよりも短い時間間隔で、携帯端末キーと通信相手との間で通信を行い、この通信において、次の通信までの時間内に相手側から応答を受信することができるか否かを監視することにより、通信確立の可否を判定する。そして、その判定結果を基に、携帯端末キー及び通信相手の間の通信の作動を制御する。よって、携帯端末キーと通信相手との間の通信が確立した状態が維持されているか否かを判定するにあたって、これを短い時間のサイクルで判定することが可能となるので、一旦確立した通信が途切れたとき、これを直ぐに認識することが可能となる。
【0008】
前記携帯端末キーシステムにおいて、前記接続監視タイムアウトは、ユーザの設定操作によって変更することができない予め定められた固定値であることが好ましい。この構成によれば、一旦確立した通信が途切れたか否かを、ユーザが設定変更することができない固定値の接続監視タイムアウトよりも短い時間で、直ぐに判断することが可能となる。
【0009】
前記携帯端末キーシステムにおいて、前記通信制御部は、前記通信判定部により通信不可と判定されると、前記アプリケーションの操作に基づく通信を禁止にすることが好ましい。この構成によれば、通信が確立してアプリケーションの操作に基づく通信が許可された後、これまで確立していた通信が途切れたときには、これを直ちに認識してアプリケーションの操作に基づく通信が禁止にされる。このため、実際には通信が途切れたにもかかわらず、通信が確立していると判定されたままの状態が、長い間、続くことがなく、アプリケーションを直ちに最適な状態に切り替えることが可能となる。よって、アプリケーションを操作したのに通信の相手側を制御できない時間帯を短く抑えることが可能となる。
【0010】
前記携帯端末キーシステムにおいて、前記携帯端末キー及び通信相手のうち、通信を主管理するマスタに一方が位置付けされ、当該マスタからの指示に基づき作動するスレーブに他方が位置付けされ、前記通信確立の可否判定は、前記マスタによって管理されていることが好ましい。この構成によれば、通信確立の可否をマスタ側で管理するので、この種の判定機能をスレーブ側に設けずに済む。
【0011】
前記携帯端末キーシステムにおいて、前記携帯端末キー及び通信相手のうち、通信を主管理するマスタに一方が位置付けされ、当該マスタからの指示に基づき作動するスレーブに他方が位置付けされ、前記通信確立の可否判定は、前記スレーブによって管理されていることが好ましい。この構成によれば、通信確立の可否をスレーブ側で管理するので、この種の判定機能をマスタ側に設けずに済む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一旦確立した通信が途切れてしまったことを直ぐに判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の携帯端末キーシステムの構成図。
図2】接続イベント時に実施される定期通信の流れを示すシーケンス図。
図3】従来位置付けの接続イベントの動作例を示すシーケンス図。
図4】(a)〜(c)は別例における定期通信の構成例を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、携帯端末キーシステムの一実施形態を図1図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、携帯端末キー2を車両キーとして使用可能な携帯端末キーシステム3を備える。携帯端末キー2は、例えば高機能携帯電話(スマートフォン)や専用携帯機にキー機能(専用のアプリケーション)を登録することによって実現される。携帯端末キーシステム3の通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)が使用される。また、本例のブルートゥース通信には、通信の省電力化のためにBLE(Bluetooth Low Energy)が使用されている。
【0015】
携帯端末キー2は、携帯端末キー2の動作を管理する制御部4と、携帯端末キー2において無線通信(本例はブルートゥース通信)に準じた電波を送受信する通信部(アンテナ及び通信回路を含む)5と、外部からの解析攻撃に耐え得るセキュアエレメント6とを備える。制御部4のメモリ7には、ブルートゥース通信のペアリングがなされた車両1との紐付けの証拠となるペアリング情報8が書き込み保存されている。セキュアエレメント6には、携帯端末キー2により車両1と無線によるキー照合(ID照合)を行うときに使用されるキー情報9が書き込み保存されている。キー情報9は、携帯端末キー2の固有のIDであるキーIDと、通信を暗号化するときに使用する暗号鍵とを含む。セキュアエレメント6は、例えばSIM(Subscriber Identity Module)カードであるとよい。
【0016】
車両1は、携帯端末キー2とのID照合の動作を管理する携帯端末キーECU10と、車両1において無線通信(本例はブルートゥース通信)に準じた電波を送受信する通信部11と、データ書き込み及び読み出しが可能なメモリ12とを備える。メモリ12には、車両1に登録された携帯端末キー2のペアリング情報8及びキー情報9が書き込み保存されている。ペアリング情報8は、携帯端末キー2に登録されているものと同じものである。キー情報9は、車両1に登録された携帯端末キー2のキーID及び暗号鍵を含む。通信部11は、例えばブルートゥーストランシーバである。
【0017】
携帯端末キー2及び携帯端末キーECU10は、それぞれに同じペアリング情報8が登録されることにより、両者がペアリングされている。ペアリングは、携帯端末キー2及び携帯端末キーECU10の間で初めて通信を実行するときに、互いを認証する作業のことをいい、ペアリングが一旦済むと、以降、ペアリングをしなくとも通信を実行することが可能となる。ペアリングは、例えば携帯端末キーECU10の動作モードを「ペアリングモード」に切り替えることが必要であり、ユーザにより入力されたコード情報(PINコード、暗証番号、パスキー等)を基にリンクキーが作成され、これがペアリング情報8として両者に登録される。
【0018】
携帯端末キーシステム3において、車外に位置する携帯端末キー2と車両1との間で、通信(ブルートゥース通信)に準じたID照合(車外ID照合)が成立すると、例えば車両ドアの施解錠が許可又は実行される。この場合のID照合には、例えばキーIDの正否を確認するキーID照合と、暗号鍵を用いたチャレンジレスポンス認証とを含むとよい。また、携帯端末キーシステム3において、車内に位置する携帯端末キー2と車両1との間で、通信(ブルートゥース通信)に準じたID照合(車内ID照合)が成立すると、例えば車両電源の遷移操作(一例はエンジン始動操作)が許可される。なお、携帯端末キー2の車内外判定は、通信時に受信する電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)から判定するとよい。
【0019】
図2に示すように、携帯端末キー2は、携帯端末キー2において通信を制御する通信コントローラ15と、携帯端末キー2に登録されたアプリケーション16とを備える。通信コントローラ15は、例えば通信動作を制御するIC(制御部4のIC)であることが好ましい。また、アプリケーション16は、サーバ等の外部からインストールなどすることによって携帯端末キー2に書き込み保存されたソフトウェア(プログラム)であることが好ましい。
【0020】
携帯端末キー2の通信相手17(本例は携帯端末キーECU10、以下同様)は、通信相手17において通信を制御する通信コントローラ18と、通信相手17に登録されたアプリケーション19とを備える。通信コントローラ18は、例えば携帯端末キーECU10において通信(ブルートゥース通信)を管理するIC(携帯端末キーECU10のIC)であることが好ましい。また、アプリケーション19は、通信相手17に書き込み保存されたソフトウェア(プログラム)であることが好ましい。
【0021】
この種の無線通信は、通信機能を階層構造に分割したモデルから構築されている。通信機能は、例えば第1層〜第7層の7階層に分けられ、層ごとに通信モジュールが定義されている。一般的に、第1層が物理層、第2層がリンク層(データリンク層)、第3層がネットワーク層、第4層がトランスポート層、第5層がセッション層、第6層がプレゼンテーション層、第7層がアプリケーション層となっている。このうち、リンク層は、通信する相手との物理的な通信路を確保し、通信路にて受け渡されるデータのエラー検知などを実行する。アプリケーション層は、例えばデータ通信を利用した様々なサービスを出力したり、他のプログラムに提供したりする。
【0022】
本例の携帯端末キーシステム3は、携帯端末キー2が「マスタ」、車両1が「スレーブ」となって、無線通信(本例はブルートゥース通信)を実行する。マスタは、通信を主管理する側のことをいい、通信開始のリクエスト(トリガ)などを相手側に送信するなどして、通信の過程を主導する。一方、スレーブは、マスタからの指示を仰ぐかたちで、マスタからの指示に基づいて通信を実行する側をいう。
【0023】
BLEにおいては、携帯端末キー2及び通信相手17が通信確立する状態に遷移すると、通信接続が維持されているか否かを逐次監視する接続イベントに移行する。本例の場合、マスタ位置付けの携帯端末キー2が接続イベントを「主管理する側」となり、スレーブ位置付けとなっている通信相手17が「監視される側」となって、両者の間の通信接続が維持されているか否かが確認される。携帯端末キー2及び通信相手17が接続状態となると、携帯端末キー2は、通信相手17が通信距離範囲内にいるか否かを確認するために、所定の接続インターバルIntに従って、定期的に通信相手17と双方向通信を実行する。接続イベントは、例えば携帯端末キー2が問いかけ、通信相手17が応答する形式をとる。本例の接続インターバルIntは、一定の時間幅に設定されるとともに、連続的に発生される。
【0024】
携帯端末キーシステム3は、一旦確立した無線通信(一例はブルートゥース通信)の成立可否を判定する通信判定部22を備える。本例の通信判定部22は、アプリケーション層において短い時間間隔(定期通信タイムアウトTk)で通信(定期通信)を行うことにより、通信の成立可否を判定する。本例の場合、無線通信が一旦確立したにもかかわらず相手から応答を受信することができない状態が続くと無線通信を無効とするときの基準として無線通信のリンク層において管理された時間を接続監視タイムアウトTk’とすると、定期通信タイムアウトTkは、接続監視タイムアウトTk’よりも短い時間に設定されている。また、接続監視タイムアウトTk’は、予め設定された固定値である。
【0025】
本例の通信判定部22は、定期通信を主管理する側の通信判定部22aと、通信判定部22aの指示に基づき定期通信を行う従属側の通信判定部22bとを備える。本例の場合、通信判定部22aを携帯端末キー2に設け、通信判定部22bを通信相手17に設けることにより、定期通信の管理を携帯端末キー2側、すなわちマスタ側で実行する。
【0026】
通信判定部22aは、接続イベント下において、通信操作に関連するアプリケーション16の実行が有効になると、アプリケーション層を通じた定期通信を行うのに必要なデータ群Dpaを通信コントローラ15に出力する。なお、通信操作の一例としては、例えば携帯端末キー2における通信相手17のワイヤレス操作がある。データ群Dpaは、例えばパケット(送信先アドレス等が付加された小データ群)である。通信判定部22bは、通信判定部22aから出力されたデータ群Dpaを、無線を通じて取得できると、これに対する応答としてレスポンスDrsを通信判定部22aに無線を通じて返信する。通信判定部22aは、データ群Dpaに対するレスポンスDrsを、通信相手17側から所定の定期通信タイムアウトTk内に受信できたか否かを確認することにより、通信成立の可否を判定する。
【0027】
携帯端末キーシステム3は、通信判定部22の判定結果を基に無線通信(一例はブルートゥース通信)の作動を制御する通信制御部23を備える。本例の通信制御部23は、定期通信の管理側(本例は携帯端末キー2)に設けられる。通信制御部23は、一旦確立した通信の接続が維持されていることを確認すると、通信操作に関連するアプリケーション16の実行許可を継続する。一方、通信制御部23は、一旦確立した通信が途切れたことを確認すると、通信操作に関連するアプリケーション16の実行を禁止にする。
【0028】
次に、図2及び図3を用いて、携帯端末キーシステム3の動作を説明する。なお、本例においては、通信相手17(本例は携帯端末キーECU10)がブルートゥース通信を通じたポーリングを定期的に実施していて、ポーリングに対する接続要求を携帯端末キー2が通信相手17に送信することにより、通信接続が確立したと判断される。
【0029】
図2に示すように、ステップ101において、通信コントローラ15は、通信相手17からのポーリング信号を受信すると、接続要求Srqを通信相手17に送信する。
ステップ102において、通信コントローラ18は、携帯端末キー2から接続要求Srqを受信すると、接続完了通知Scc1をアプリケーション19に出力する。アプリケーション19は、通信コントローラ18から接続完了通知Scc1を入力することを契機に立ち上がる。
【0030】
ステップ103において、通信コントローラ15は、アプリケーション16に対しても接続完了通知Scc2を出力する。アプリケーション16は、通信コントローラ15から接続完了通知Scc2を入力することを契機に立ち上がる。
【0031】
ステップ104において、通信コントローラ15は、接続完了通知Scc2をアプリケーション16に出力した後、通信確立の維持を監視するために接続イベントに入る。このとき、通信コントローラ15は、一旦確立した通信が未だ維持されているか否かを確認する定期通信(通信成立可否の判定処理)を開始する。すなわち、通信コントローラ15は、接続インターバルIntの周期で通信相手17と定期通信を実行する。なお、接続インターバルIntは、予め設定された固定値であって、携帯端末キー2のアプリケーション等からユーザが設定変更することはできない。
【0032】
定期通信にあたり、通信コントローラ15は、接続インターバルIntの始まり(開始タイミング)において、定期通信の相手側に電波を送信する動作を行う。このとき、通信コントローラ15は、アプリケーション16からのデータ群Dpaの入力有無に応じた電波を通信相手17に送信する。本例の場合、通信コントローラ15は、電波送信のタイミングにおいて、アプリケーション16からデータ群Dpaを入力していなければ、アプリケーション層よりも下層で生成される単位データDutを定期通信の相手側に送信し、アプリケーション16からデータ群Dpaを入力していれば、これを定期通信の相手側に転送する。単位データDutは、通信プロトコルのデータの単位であって、例えばEmpty PDU(Protocol Data Unit)であることが好ましい。ここでは、データ群Dpaを入力していないので、通信コントローラ15は、単位データDutを通信相手17に送信する。
【0033】
ステップ105において、通信コントローラ18は、定期通信の管理側の通信コントローラ15から電波を受信すると、これに対する応答を実行する。このとき、通信コントローラ18は、アプリケーション19からのレスポンスDrsの有無に応じた電波を携帯端末キー2に返信する。本例の場合、通信コントローラ18は、電波返信のタイミングにおいて、アプリケーション19からレスポンスDrsを入力していなければ、単位データDutを定期通信の管理側に返信し、アプリケーション19からレスポンスDrsを入力していれば、これを定期通信の管理側に返信する。ここでは、レスポンスDrsを入力していないので、通信コントローラ18は、単位データDutを携帯端末キー2に返信する。
【0034】
ステップ106において、アプリケーション16は、通信コントローラ15から接続完了通知Scc2を入力することを契機に立ち上がり、例えば通信操作に関連するアプリケーション16として、携帯端末キー2から通信相手17を遠隔操作するワイヤレス操作を可能にする。すなわち、携帯端末キー2において、アプリケーション16の操作に基づく通信相手17との通信が可能となる。
【0035】
ステップ107において、通信判定部22aは、定期通信の管理側においてアプリケーション16の操作が有効となった後、無線通信の成立維持をアプリケーション層で確認するために用いるデータ群Dpaを、アプリケーション16から通信コントローラ15に出力する。通信コントローラ15は、アプリケーション16からデータ群Dpaを入力すると、この状態を保持する。また、通信判定部22aは、データ群Dpaの出力を起点として、例えばタイマをスタートしたり、タイムスタンプを押したりするなどして、データ群Dpaを出力してからの経過時間Txをカウントする。
【0036】
ステップ108において、通信コントローラ15は、2回目の接続インターバルIntのとき、通信相手17との定期通信を実行するが、このときアプリケーション16からデータ群Dpaを入力しているので、これを通信相手17に送信する。すなわち、通常ならば単位データDutが送信されるところ、本例はデータ群Dpaが通信相手17に送信される。
【0037】
ステップ109において、通信コントローラ18は、携帯端末キー2からデータ群Dpaを受信すると、これをアプリケーション19に出力する。
ステップ110において、通信コントローラ18は、携帯端末キー2からデータ群Dpaを受信すると、定期通信の一環として、携帯端末キー2に応答を返信する。なお、この時点では、アプリケーション19からレスポンスDrsを入力していないので、通常と同様、単位データDutを携帯端末キー2に返信する。
【0038】
ステップ111において、通信判定部22bは、通信コントローラ18からデータ群Dpaを入力することを契機に、アプリケーション層間の定期通信の返答として使用されるレスポンスDrsを、アプリケーション19から通信コントローラ18に出力する。レスポンスDrsは、パケットに類するデータ情報の一種である。通信コントローラ18は、アプリケーション19からレスポンスDrsを入力すると、この状態を保持する。
【0039】
ステップ112において、3回目の接続インターバルIntのとき、通信コントローラ15は、通信相手17との定期通信を行うが、このときアプリケーション16からデータ群Dpaを入力していないので、通常通り、単位データDutを通信相手17に送信する。
【0040】
ステップ113において、通信コントローラ18は、携帯端末キー2から単位データDutを受信すると、定期通信の一環として、携帯端末キー2に応答を返信する。このとき、通信コントローラ18は、アプリケーション19からレスポンスDrsを受けた状態を保持しているので、このレスポンスDrsを携帯端末キー2に返信する。
【0041】
ステップ114において、通信コントローラ15は、通信相手17からレスポンスDrsを受信すると、これをアプリケーション16に転送する。
このとき、通信判定部22aは、データ群Dpaの出力後に通信相手17からレスポンスDrsを取得することになるが、レスポンスDrsを取得するまでに要した経過時間Txを確認する。そして、経過時間Txが定期通信タイムアウトTk未満であれば、通信成立が維持されているとして、処理が継続され、一方で経過時間Txが定期通信タイムアウトTk以上であれば、通信が途切れたと判定される。ここでは、経過時間Txが定期通信タイムアウトTk未満となっているので、通信成立が維持されていると判断され、処理が継続される。そして、以降、同様の定期通信が繰り返される。
【0042】
本例の場合、ステップ115において、通信判定部22aは、出力したデータ群Dpaに対するレスポンスDrsを制限時間内に受け取ることができず、経過時間Txが定期通信タイムアウトTk以上となったことを確認する。このとき、通信判定部22aは、これまで確立していた通信が途切れてしまったことを認識し、その旨を通信制御部23に通知する。
【0043】
ステップ116において、通信制御部23は、通信が途切れたことを認識すると、これまで有効にしていたアプリケーション16、すなわち携帯端末キー2のワイヤレス操作を禁止に切り替える。これにより、携帯端末キー2においてアプリケーション16が強制終了されるので、携帯端末キー2で他の操作に移行することが可能となり、ユーザにとっては遠隔操作にあたっての困惑の要因にならずに済む。
【0044】
図3に、従来の位置付けの通信シーケンスを図示する。同図に示されるように、従来位置付けの定期通信では、リンク層間で双方向通信することにより、通信確立の維持を判断する方式となっている。このため、通信確立の維持を監視するにあたっては、リンク層で管理される固定値の接続監視タイムアウトTk’を使用しなくてはならず、これが長い時間に設定されていると、処理を停止するまでに長い時間がかかってしまう。一方、本例の場合は、アプリケーション層の間で定期通信を行って通信確立の可否を判定する方式をとるので、定期通信タイムアウトTkという短い時間に設定されたパラメータによって、通信確立の可否を判断することが可能となる。よって、一旦確立した通信が途切れたとき、これを直ぐに認識することができるのである。
【0045】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)一旦確立した通信の接続が維持されているか否かを監視するにあたり、通信のリンク層で管理された変更不可の接続監視タイムアウトTk’よりも短い時間間隔で、携帯端末キー2と通信相手17との間で通信(定期通信)を行い、この通信において、次の通信までの時間(定期通信タイムアウトTk)内に相手側から応答を受信することができるか否かを監視することにより、通信確立の可否を判定する。そして、その判定結果を基に、携帯端末キー2と通信相手17との間の通信の作動を制御する。よって、携帯端末キー2と通信相手17との間の通信が確立した状態が維持されているか否かを判定するにあたって、これを短い時間のサイクルで判定することが可能となるので、一旦確立した通信が途切れたとき、これを直ぐに認識することができる。
【0046】
(2)通信のリンク層において管理される接続監視タイムアウトTk’は、ユーザの設定操作によって変更することができない予め定められた固定値である。ところで、この種の接続監視タイムアウトTk’は例えば約20sと相対的に長く、接続監視タイムアウトTk’により通信確立の維持を監視しようとすると、どうしても判断が遅い処理となってしまう。一方、本例のように通信のアプリケーション層において定期通信することで通信確立を監視する方式をとれば、それよりも格段に短い時間で通信可否を判断することができる。
【0047】
(3)通信が確立してアプリケーション16の操作に基づく通信が許可された後、これまで確立していた通信が途切れたときには、これを直ちに認識してアプリケーション16の操作に基づく通信が禁止にされる。このため、実際には通信が途切れたにもかかわらず、通信が確立していると判定されたままの状態が、長い間、続くことがなく、アプリケーション16を直ちに最適な状態に切り替えることが可能となる。よって、アプリケーション16を操作したのに通信の相手側を制御できない時間帯を短く抑えることができる。
【0048】
(4)定期通信の管理はマスタで実行されるので、この種の判定機能をスレーブ側の通信相手17に設けずに済む。よって、通信相手17の構成を簡素に済ますのに有利となる。
【0049】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
図4(a)に示すように、定期通信の管理は、マスタ側で行われることに限定されず、スレーブ側で実施してもよい。この場合、定期通信を主管理する通信判定部22a及び通信制御部23をスレーブ側に設け、定期通信の従属側である通信判定部22bをマスタ側に設ける。こうすれば、定期通信を管理する主機能を携帯端末キー2に設けずに済むので、携帯端末キー2の構成を簡素に済ますのに有利となる。
【0050】
図4(b)に示すように、定期通信の管理は、スレーブからの単方向の通信によって行ってもよい。この場合の動作例としては、例えばスレーブからデータ群Dpaを送信するようにし、マスタ側でタイマをかけておく。そして、マスタのタイマがタイムアップする前にデータ群Dpaを受信することができるか否かを監視することにより、通信成立の可否を判定してもよい。こうすれば、定期通信の管理を簡素な処理で実行することができる。
【0051】
図4(c)に示すように、定期通信の管理は、マスタ及びスレーブが実際に行う通信の中で実施されてもよい。すなわち、マスタ及びスレーブが通信の過程で実際にやり取りする通信データを用い、送信した通信データに対する応答の通信データを制限時間内に受信できるか否かを通じて判定することも可能である。こうすれば、定期通信の管理を行うにあたって専用の電波を別途送信せずに済むので、処理の簡素化に有利となる。
【0052】
・データ群Dpa及びレスポンスDrsの定期通信は、単位データDutの定期通信とは別ルーチンにより、独立して実施されてもよい。
・通信コントローラ15は、例えばデータ群Dpaを入力したとき、これを直ちに通信相手17に送信する動作をとってもよい。
【0053】
・通信コントローラ18は、例えばレスポンスDrsを入力したとき、これを直ちに携帯端末キー2に送信する動作をとってもよい。
・通信機能の階層は、7層に限らず、例えば4層など、他の種類のモデルに変更可能である。
【0054】
・通信が途切れたと判断されたときに実行される動作は、ワイヤレス操作(アプリケーション16に操作に基づく通信)の禁止に限定されない。例えば、通信が途切れたことを報知する動作を実行したり、他のソフトウェアに切り替えたりするなど、種々の態様に変更可能である。
【0055】
・定期通信タイムアウトTkは、ユーザが手動変更できるようにしてもよい。
・アプリケーション16,19は、ワイヤレス操作のアプリケーションに限定されず、種々の機能のものに変更することが可能である。
【0056】
・通信コントローラ15,18は、無線通信の動作を管理するコントローラであればよい。
・ブルートゥース通信は、BLEを用いた通信に限らず、他の形式のものを採用してもよい。
【0057】
・無線通信は、ブルートゥースに限定されず、他の形式の通信に変更することができる。
・携帯端末キー2は、高機能携帯電話以外の種々の端末を採用可能である。
【0058】
・通信相手17は、携帯端末キーECU10に限らず、携帯端末キー2と通信を実行するものであればよい。
・本例の携帯端末キーシステム3は、車両1に適用されることに限らず、他のシステムや装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…車両、2…携帯端末キー、3…携帯端末キーシステム、10…通信相手の一例である携帯端末キーECU、15…通信コントローラ、16…アプリケーション、17…通信相手、18…通信コントローラ、19…アプリケーション、22(22a,22b)…通信判定部、23…通信制御部、Tk…定期通信タイムアウト、Tk’…接続監視タイムアウト。
図1
図2
図3
図4