特許第6696730号(P6696730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696730
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】飲料缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   B65D1/16 111
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-75349(P2015-75349)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-5967(P2016-5967A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2018年1月17日
【審判番号】不服2019-4168(P2019-4168/J1)
【審判請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-112760(P2014-112760)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】武井 政幸
(72)【発明者】
【氏名】永澤 加奈子
【合議体】
【審判長】 高山 芳之
【審判官】 石井 孝明
【審判官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第202063307(CN,U)
【文献】 特開平7−185706(JP,A)
【文献】 特開昭63−115623(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/150673(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/103040(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/61212(US,A1)
【文献】 米国特許第5301830(US,A)
【文献】 特開2009−1858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/16, B65D1/02, B65D1/02, B21D51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状をなす缶本体と、この缶本体の開口部に巻き締められ、飲み口予定部が設けられた缶蓋と、を備えた飲料缶であって、
前記缶本体は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金により形成され、
前記缶本体は、缶軸に沿って延在する円筒状をなす缶胴部と、この缶胴部の缶軸方向下端側に設けられ、前記缶胴部と一体に成形された缶底部と、前記缶胴部の缶軸方向上端側に連接されるとともに缶軸方向上方に向かうに従い漸次縮径されるネッキング部と、を備えており、
前記缶胴部の外径が55mm以上60mm以下の範囲とされ、
前記缶蓋のシーミングパネルの上端から前記ネッキング部の下端までの缶軸方向高さが9mm以上20mm以下の範囲内とされ、
前記缶胴部の外径と前記ネッキング部の最小外径との差が6mm以上8mm以下の範囲内とされ、
前記缶本体の缶軸方向高さが120mm以上190mm以下の範囲内とされ、
前記ネッキング部は、
前記ネッキング部の下端部に位置する肩部と、
前記ネッキング部の上端部に位置する首部と、
前記肩部と前記首部との間に位置し、缶軸方向上方に向かうに従い漸次縮径されるテーパ部と、を有し、
前記缶本体の缶軸方向に沿う縦断面視において、
前記肩部は、缶軸方向に直交する径方向のうち、径方向外側へ向けて突出する凸曲線状をなしており、
前記首部は、前記径方向のうち、径方向内側へ向けて窪む凹曲線状をなしており、
前記缶本体の前記開口部のうち、缶軸方向において前記シーミングパネルと前記首部との間に位置する部分は、缶軸方向に沿って延び、
前記テーパ部の延長線と、缶軸とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、前記鋭角の角度が、27〜30°であることを特徴とする飲料缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状をなす缶本体と、この缶本体の開口部に巻き締められ、飲み口予定部が設けられた缶蓋と、を備えた飲料缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有底筒状の円筒容器から成形される飲料用容器として、開口端部に缶蓋が巻き締められた構造の飲料缶が知られている。このような飲料缶は、例えばアルミニウム等の金属板を円形状に打ち抜き、それを絞り加工して有底円筒状のカップ部材を得て、さらにそれを再絞り・しごき加工することにより、缶本体を形成し、この缶本体の開口端部に缶蓋を巻き締めることで成形される。
【0003】
ここで、缶本体の開口端部に缶蓋を巻き締める場合、例えば特許文献1、2等に開示されているように、缶本体の開口端部に缶軸方向上側に向かうに従い漸次縮径するネッキング部が形成されており、このネッキング部に缶胴部よりも径の小さな缶蓋が巻き締められている。
例えば、市場で主に流通している飲料缶においては、公称容量が350mL、500mLの場合には、缶胴部の外径が約66mm、缶蓋径が約57mmとされており、公称容量が190mL、250mLの場合には、缶胴部の外径が約53mm、缶蓋径が約50mmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−171639号公報
【特許文献2】特開平04−087940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、公称容量が350mL、500mLの缶は、缶胴の外径が約66mmと径が大きいため、女性や子ども等の手が小さな人の場合、缶を把持しにくいといった問題があった。
一方、公称容量が190mL、250mLの缶は、缶胴の外径が約53mmと比較的小径のため、手が小さな人でも把持しやすいといった利点はあるが、缶胴部の外径と缶蓋径との差が小さいため、飲むときに唇が缶の表面にフィットしにくく内容物を飲みにくいといった問題があった。また、缶胴の外径が小さく、容量を確保できないといった問題があった。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、女性や子ども等の手が小さな人であっても確実に把持することができるとともに、内容物を飲みやすい飲料缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明に係る飲料缶は、有底筒状をなす缶本体と、この缶本体の開口部に巻き締められ、飲み口予定部が設けられた缶蓋と、を備えた飲料缶であって、前記缶本体は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金により形成され、前記缶本体は、缶軸に沿って延在する円筒状をなす缶胴部と、この缶胴部の缶軸方向下端側に設けられ、前記缶胴部と一体に成形された缶底部と、前記缶胴部の缶軸方向上端側に連接されるとともに缶軸方向上方に向かうに従い漸次縮径されるネッキング部と、を備えており、前記缶胴部の外径が55mm以上60mm以下の範囲とされ、前記缶蓋のシーミングパネルの上端から前記ネッキング部の下端までの缶軸方向高さが9mm以上20mm以下の範囲内とされ、前記缶胴部の外径と前記ネッキング部の最小外径との差が6mm以上8mm以下の範囲内とされ、前記缶本体の缶軸方向高さが120mm以上190mm以下の範囲内とされ、前記ネッキング部は、前記ネッキング部の下端部に位置する肩部と、前記ネッキング部の上端部に位置する首部と、前記肩部と前記首部との間に位置し、缶軸方向上方に向かうに従い漸次縮径されるテーパ部と、を有し、前記缶本体の缶軸方向に沿う縦断面視において、前記肩部は、缶軸方向に直交する径方向のうち、径方向外側へ向けて突出する凸曲線状をなしており、前記首部は、前記径方向のうち、径方向内側へ向けて窪む凹曲線状をなしており、前記缶本体の前記開口部のうち、缶軸方向において前記シーミングパネルと前記首部との間に位置する部分は、缶軸方向に沿って延び、前記テーパ部の延長線と、缶軸とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、前記鋭角の角度が、27〜30°であることを特徴としている。
【0008】
この構成の飲料缶によれば、前記缶胴部の外径が55mm以上60mm以下の範囲内とされているので、女性や子ども等の手が小さな人であっても、缶胴部を確実に把持することができる。また、前記缶胴部の外径が55mm以上とされているので、容量を確保することができる。
さらに、前記缶蓋のシーミングパネルの上端から前記ネッキング部の下端までの缶軸方向高さが9mm以上とされるとともに前記缶胴部の外径と前記ネッキング部の最小外径との差が6mm以上とされているので、飲む時に唇が缶の表面にフィットして、内容物が飲みやすくなる。
また、前記缶蓋のシーミングパネルの上端から前記ネッキング部の下端までの缶軸方向高さが20mm以下とされるとともに前記缶胴部の外径と前記ネッキング部の最小外径との差が8mm以下とされているので、コラム強度が確保され、缶成形時や缶蓋の巻締め時に座屈が生じることを抑制できる。さらに、ネッキング部の縮径が比較的緩やかなことから、内容物の流動がスムーズとなり、内容物が飲みやすくなる。
【0009】
ここで、本発明の飲料缶においては、前記缶本体の缶軸方向高さが120mm以上190mm以下の範囲内とされている。
この場合、前記缶本体の缶軸方向高さが120mm以上とされているので、缶胴部の外径が55mm以上60mm以下の範囲内であっても、容量を十分に確保することができ、例えば公称容量250mLより容量の多い飲料缶として適用することが可能となる。また、前記缶本体の缶軸方向高さが190mm以下とされているので、運搬時等に倒缶することを抑制でき、取扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、女性や子ども等の手が小さな人であっても確実に把持することができるとともに、内容物を飲みやすい飲料缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である飲料缶の概略説明図である。
図2図1に示す飲料缶の巻き締め部の拡大説明図である。
図3】缶蓋を巻き締める前の缶本体の概略説明図である。
図4】缶本体に巻き締める前の缶蓋の概略説明図である。
図5】缶本体の製造工程を説明する概略図である。
図6図3のネッキング部及びフランジ部近傍を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である飲料缶10は、図1に示すように、有底筒状をなす缶本体20と、この缶本体20の開口部に巻き締められた缶蓋30と、を備えた巻締缶とされている。なお、本実施形態である飲料缶10は、公称容量が260mL以上440mL以下の範囲内とされている。
【0014】
缶本体20は、例えばアルミニウム若しくはアルミニウム合金により形成されており、大径の缶胴部21と、この缶胴部21の缶軸方向下端側に設けられた缶底部22と、前記缶胴部21の缶軸方向上端側に連接されるとともに缶軸方向上方に向かうに従い漸次縮径されるネッキング部23と、を備えている。
そして、缶本体20の開口部に設けられたネッキング部23に、缶胴部21よりも径の小さな缶蓋30が巻き締められている。
【0015】
ここで、缶蓋30を巻き締める前の缶本体20を図3に示す。この缶本体20は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるアルミニウム板を円形状に打ち抜き、それを絞り加工して有底円筒状のカップ部材を得て、さらにそれを再絞り・しごき加工することによって成形されており、缶底部22と缶胴部21とが一体に成形されている。缶本体20の開口端部、すなわちネッキング部23の上端には、フランジ部24が形成されており、フランジ部24の上端からネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhが9mm≦h≦20mmの範囲内とされている。
【0016】
また図6は、図3におけるネッキング部23及びフランジ部24近傍を拡大して示す図であり、缶本体20の上端部(開口部)の縦断面図(缶軸方向に沿う断面図)となっている。
この縦断面視において、ネッキング部23の下端部に位置する肩部23aは、缶軸方向に直交する径方向のうち、径方向外側へ向けて突出する凸曲線状をなしており、該肩部23aの曲率半径R1(肩部23aの外面で測定した値)は、例えば4〜8mmである。
なお、特に図示していないが、本実施形態の例では、肩部23aを成形する金型の凹部の曲率半径が10mmであり、これにより成形された肩部23aの曲率半径R1が、実測値で6.1mmであった。
【0017】
また、この縦断面視において、ネッキング部23の上端部に位置する首部23bは、前記径方向のうち、径方向内側へ向けて窪む凹曲線状をなしており、該首部23bの曲率半径R2(首部23bの外面で測定した値)は、例えば6〜10mmである。
なお、特に図示していないが、本実施形態の例では、首部23bを成形する金型の凸部の曲率半径が5.6mmであり、これにより成形された首部23bの曲率半径R2が、実測値で8.1mmであった。
【0018】
また、この縦断面視において、ネッキング部23のうち肩部23aと首部23bの間に位置するテーパ部23cが、缶軸に対して傾斜する角度(傾斜角)θは、例えば27〜30°である。具体的に前記角度θとは、図6の縦断面視において、テーパ部23cの延長線と、缶軸(又は缶軸に平行な直線)とが交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度を指す。
なお、特に図示していないが、本実施形態の例では、テーパ部23cを成形する金型のテーパ部の傾斜角が30°であり、これにより成形されたテーパ部23cの角度θが、実測値で28°であった。
【0019】
また、この縦断面視において、肩部23aの曲率半径R1中心と、首部23bの曲率半径R2中心と、の缶軸方向に沿う距離Lは、例えば9〜12mmである。
なお、特に図示していないが、本実施形態の例では、肩部23aを成形する金型の凹部の曲率半径中心と、首部23bを成形する金型の凸部の曲率半径中心と、の缶軸方向に沿う距離が、10.76mmである。
【0020】
また、缶本体20に巻き締める前の缶蓋30を図4に示す。この缶蓋30は、円板状のセンターパネル31と、環状溝32と、チャックウォール33と、シーミングパネル34とを備えている。
センターパネル31には、飲み口を形成するためのスコア(飲み口予定部)36が設けられており、このスコア36を破断させる(飲み口を開口させる)ためのタブ37が、センターパネル31の中央に形成されたリベット38に取り付けられている。
【0021】
缶蓋30のシーミングパネル34は缶本体20のフランジ部24に重なるように載置され、巻き締め装置によってシーミングパネル34とフランジ部24とを積層した状態で同時に曲げ加工することにより、図2に示すように、缶蓋30が缶本体20に巻き締められることになる。
【0022】
そして、本実施形態である飲料缶10においては、図1に示すように、缶胴部21の外径Dが、55mm≦D≦60mmの範囲とされている。
また、缶胴部21の外径Dとネッキング部23の最小外径dとの差が、6mm≦D−d≦8mmの範囲内とされている。
【0023】
さらに、図1に示すように、缶蓋30のシーミングパネル34の上端から缶本体20のネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhが、9mm≦h≦20mmの範囲内とされている。なお、缶蓋30を巻き締めた際には、缶本体20のフランジ部24が折り曲げられるために缶本体20自体の高さは低くなるが、缶本体20の上に缶蓋30が配置されることから、缶蓋30のシーミングパネル34の上端から缶本体20のネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhは、上述した缶本体20のフランジ部24の上端からネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhと略同一となる(図3及び図6を参照)。
【0024】
また、図1に示すように、缶本体20の缶軸方向高さHが、120mm≦H≦190mmの範囲内とされている。
さらに、本実施形態では、シーミング高さSが2.6mm≦S≦3.15mmの範囲内とされている。
【0025】
次に、本実施形態である飲料缶10の製造方法について説明する。
まず、成形素材として、板厚が0.25〜0.30mmのアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるアルミニウム板を準備する。
図5(a)に示すように、このアルミニウム板に打ち抜き加工を施し、円板状の板材(ブランク)を得る。
【0026】
この円板状の板材に絞り加工を施して、図5(b)に示すようなカップ状缶体を形成する。
さらに、カップ状缶体に再絞り加工を施して、図5(c)に示すようなカップ状缶体とする。
次いで、しごき加工を施し、図5(d)に示すような有底筒状缶体(有底筒状体)を形成する。この有底筒状体の開口端部は、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされる。
そして、図5(d)に示す有底筒状体の開口端部を切断して、缶軸方向の高さをその全周に亙って均一とし、図5(e)に示す有底筒状体が成形される。
【0027】
ここで、本実施形態では、絞り加工における総絞り比Aを2.4以上としている。なお、総絞り比Aとは、カップ絞り比B(図5(a)〜(b)の工程)と、再絞り比C(図5(b)〜(c)の工程)を掛け合わせた値であり、次式(1)〜(3)で表される。
カップ絞り比B=ブランク径D1/カップ径D2・・・(1)
再絞り比C=カップ径D2/胴部径D3・・・(2)
総絞り比A=カップ絞り比B×再絞り比C=ブランク径D1/胴部径D3・・・(3)
【0028】
上述のように、缶底部22及び缶胴部21を成形した後、ネッキング加工を行ってネッキング部23を成形し、フランジ加工によってネッキング部23の開口端にフランジ部24を成形する。これにより、図3及び図6に示す缶本体20が製造される。
【0029】
こうして製造された缶本体20には、その表面に塗装等の表面処理が施された後、缶本体20内部に内容物が充填される。その後、缶本体20の開口端に缶蓋30が巻き締められ、本実施形態である飲料缶10が製造されることになる。
【0030】
以上のような構成とされた本実施形態である飲料缶10によれば、缶胴部21の外径Dが55mm≦D≦60mmの範囲内とされているので、女性や子ども等の手が小さな人であっても、缶胴部21を確実に把持することができる。
また、缶蓋30のシーミングパネル34の上端からネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhが9mm以上とされ、缶胴部21の外径Dとネッキング部23の最小外径dとの差が6mm以上とされているので、飲むときに唇が飲料缶10の表面にフィットしやすく、内部に充填された飲料が飲みやすくなる。
さらに、缶蓋30のシーミングパネル34の上端からネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhが20mm以下とされ、缶胴部21の外径Dとネッキング部23の最小外径dとの差が8mm以下とされているので、ネッキング部23自体の強度が確保され、缶成形時や缶蓋30の巻締め時に座屈が生じることを抑制でき、飲料缶10を効率良く製造することが可能となる。
【0031】
なお、外径D、缶軸方向高さh、及び差D−dが上述の範囲内であると、本実施形態で説明したようにネッキング部23において、曲率半径R1を4〜8mm、曲率半径R2を6〜10mm、角度θを27〜30°、距離Lを9〜12mmとすることが容易であり、上述した作用効果がより格別顕著なものとなる。
すなわちこの場合、ネッキング部23に対して、唇がよりフィットしやすくなる。また、ネッキング部23の縮径(傾斜)が比較的緩やかなことから、内容物の流動がスムーズとなり、内容物が飲みやすくなる。
【0032】
さらに、本実施形態では、缶本体20の缶軸方向高さHが120mm以上とされているので、缶胴部21の外径Dが55mm≦D≦60mmと比較的小径であっても、容量を十分に確保することができ、例えば公称容量250mLより多い容量の飲料缶10として適用することが可能となる。また、缶本体20の缶軸方向高さHが190mm以下とされているので、運搬時等における倒缶を抑制することができ、飲料缶10の取扱いが容易となる。
【0033】
また、本実施形態では、缶蓋30のシーミングパネル34の上端からネッキング部23の下端までの缶軸方向高さhを9mm以上とするとともに、缶胴部21の外径Dとネッキング部23の最小外径dとの差が8mm以下とされているので、缶本体20を成形する絞り加工における総絞り比が2.4以上とされ、缶本体20の開口部が加工硬化していた場合であっても、ネッキング加工やフランジ加工における割れ等の発生を抑制することができる。
さらに、ネッキング部23が比較的緩やかに縮径していることから、内部に充填された飲料がネッキング部23の周縁部に滞留することなく、スムーズに流れることになる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、シーミング高さSが、2.60mm≦S≦3.15mmの範囲内と比較的大きくされているので、飲用を中断して唇を飲料缶から離した際に充填された飲料が垂れることを抑制できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0037】
(実施例1)
公称容量を350mL、缶蓋の外径を57.2mmに固定とし、缶胴部の外径Dを66mm、62mm、58mmの3種類の飲料缶を成形した。
50人のパネラーによって、この3種類の飲料缶のうち最も把持し易いものを選択させた。評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
缶胴部の外径Dが66mmの飲料缶は、市場に広く流通しているものであり、特に男性の評価が高かった。
缶胴部の外径Dが62mmの飲料缶は、どの年代、性別でも評価が低かった。
缶胴部の外径Dが58mmの飲料缶は、最も高い評価を得た。特に女性の評価が高かった。
【0040】
(実施例2)
上記の実施例1において最も評価が高かったことから、缶胴部の外径を58mmとし、外径が50.8mm、54mmの缶蓋を用いて、公称容量350mLの2種類の飲料缶を成形した。なお、飲料として炭酸飲料を充填した。
50人のパネラーによって、この2種類の飲料缶のうち最も飲み易いものを選択させた。評価結果を表2に示す。
【0041】
なお、外径が50.8mmの缶蓋を用いた飲料缶は、缶蓋のシーミングパネルの上端からネッキング部の下端までの缶軸方向高さhが13mm、缶胴部の外径Dとネッキング部の最小外径dとの差D−dが8mmとなり、本発明例の飲料缶となる。
また、外径が54mmの缶蓋を用いた場合、缶蓋のシーミングパネルの上端からネッキング部の下端までの缶軸方向高さhが8.5mm、缶胴部の外径Dとネッキング部の最小外径dとの差D−dが5.5mmとなり、比較例の飲料缶となる。
【0042】
【表2】
【0043】
外径が50.8mmの缶蓋を用いた飲料缶(缶蓋のシーミングパネルの上端からネッキング部の下端までの缶軸方向高さhが13mm、缶胴部の外径Dとネッキング部の最小外径dとの差D−dが8mm)の評価が高かった。飲み口近傍に唇が安定して接触したことが要因と推測される。
外径が54mmの缶蓋を用いた飲料缶(缶蓋のシーミングパネルの上端からネッキング部の下端までの缶軸方向高さhが8.5mm、缶胴部の外径Dとネッキング部の最小外径dとの差D−dが5.5mm)においては、唇が缶胴部とネッキング部との境界部分に接触し、飲み難さを感じたため評価が低かったものと推測される。
特に、炭酸飲料の場合、唇を缶から離間させて注ぎ込むように飲むことが困難であるため、唇を缶に接触させた状態で飲むことから、上述のように、外径が50.8mmの缶蓋を用いた飲料缶の評価が高くなったと推測される。
【0044】
以上の確認実験の結果から、本発明によれば、女性や子ども等の手が小さな人であっても確実に把持することができるとともに、内容物を飲みやすい飲料缶を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
10 飲料缶
20 缶本体
21 缶胴部
22 缶底部
23 ネッキング部
30 缶蓋
34 シーミングパネル
36 スコア(飲み口予定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6