特許第6696815号(P6696815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696815
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20200511BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20200511BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20200511BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B60H1/34 651A
   B60H1/00 102V
   B60H1/34 671A
   B60H1/34 671B
   B60N2/56
   A47C7/62 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-72875(P2016-72875)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178276(P2017-178276A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】菊地 勝美
(72)【発明者】
【氏名】相内 雄二
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−203255(JP,A)
【文献】 国際公開第84/000520(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0165033(US,A1)
【文献】 特開2015−104980(JP,A)
【文献】 特開平11−342723(JP,A)
【文献】 特開平11−105542(JP,A)
【文献】 特開平11−091339(JP,A)
【文献】 特開平07−156647(JP,A)
【文献】 特開2014−141236(JP,A)
【文献】 特開2007−050781(JP,A)
【文献】 特開平05−213056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06、
B60N 2/56、2/879、
A47C 7/00−7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配設されるシートに着座する乗員の肩部または前記肩部よりも上方の前記車両に配設され、前記シートの中心よりも前記車両の車幅方向の外側に配設される吸込口と
前記シートのシートクッションの前記車両の車幅方向の外側及び内側に配設される吹口と
前記外側の吹出口からの吹出量と前記内側の吹出口からの吹出量とを調整可能な流量調整手段と、を有し、
前記流量調整手段により前記外側の吹出口からは前記内側の吹出口よりも多くの空調風が吹き出され、前記吸込口は前記空調風を吸い込むことで、前記乗員と前記車両の窓との間に前記空調風からなる空気層を形成することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記吸込口が前記シートのシートバックの上端部またはヘッドレストに配設されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記吸込口には、前記車両の車幅方向における前記吸込口の開口領域を可変させるシャッタが配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記吸込口と前記吹出口とを繋ぐ循環風路と、を有し、
前記吸込口から吸い込まれた前記空調風は、前記循環風路を経由して前記吹出口から吹き出されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記吹出口から吹き出される前記空調風の風向を調整する吹出風向調整手段と、を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
少なくとも前記流量調整手段または前記吹出風向調整手段を制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記流量調整手段は、前記吹出口の開口面積を可変させるシャッタを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、熱の放出や熱の流入が多くなる窓際等に対して、空調風の流れを調整し車両の窓側とセンター側の寒暖差を緩和する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空気調和システムとして、以下のシステムが知られている。図9(A)では、冷房時のベント吹き出しモードにおける空調風の流れを示している。車両100の運転席シート101のヘッドレスト103を挟むように上方吸込口104が設けられ、上方吸込口104は車両前方の上方吹出口105から吹き出された空調風を吸い込んでいる。このシステムにより、運転席シート101に着座する運転手106の上半身の周囲を通るような空調風が形成されている。
【0003】
一方、図9(B)では、暖房時のフット吹き出しモードにおける空調風の流れを示している。車両100の運転席シート101の下方には下方吸込口107が設けられ、下方吸込口107は車両前方のフット吹出口108から吹き出された空調風を吸い込んでいる。このシステムにより、運転席シート101に着座する運転手の足元等の下半身の周囲を通るような空調風が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来の自動車用の熱機能構造体として、以下の構造が知られている。図10では、自動車用の熱機能構造体を適用した断熱車両の概略図を示している。車両121のサイドガラス122の外側には断熱部材123が設置され、車室内への熱の侵入を防ぎ、車室内の温度上昇を低減している。断熱部材123の材料としては、例えば、織布、不織布、発泡材、真空断熱材から選ばれる少なくとも1つが用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−86705号公報
【特許文献2】特開2005−112108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9(A)及び(B)に示す如く、従来の車両用空気調和システムでは、冷房時には運転手106の上半身の周囲を通る空調風が形成され、暖房時には運転手の下半身の周囲を通る空調風が形成されている。そして、どちらのモードの場合でも、運転席シート101の前方から吹き出された空調風を上方吸込口104または下方吸込口107から吸い込むシステムである。そのため、夏場の冷房時や冬場の暖房時等、運転手106の体全体を冷やし、あるいは、暖めたい場合に、例えば、運転手106の大腿部から胴部や頸部までを包み込むような空調風を発生させることが難しい。
【0007】
特に、車両100の窓際に位置する運転手106右側の頸部、肩部や上腕部周辺に空調風を流すことが難しく、車室内の寒暖差の厳しい領域に対して、空調風により運転手106を冷やし、あるいは、暖めることが難しいという課題がある。
【0008】
具体的には、冬場には、通常、車室内を暖房して走行するが、車室内の熱は窓を介して車室外に放出され易く、車両100のセンター側は暖かいが、車両100の窓際は寒くなり、車室内に寒暖差が発生する。特に、車両100の走行時には、車両100の周囲に発生する空気の流れにより、窓を介して車室内の熱が車外に放出され易い。その結果、窓際に位置する運転手106の頸部、肩部や上腕部周辺が寒くなり易い状態である。
【0009】
一方、夏場には、通常、車室内を冷房して走行するが、車室外の熱が窓を介して車室内に流入し易く、車室内のセンター側は冷やされるが、車両100の窓際は暑くなり、車室内に寒暖差が発生する。特に、車両100の窓際では、直射日光が差し込むこともあり、窓際に位置する運転手106の頸部、肩部や上腕部周辺が暑くなり易い状態である。
【0010】
つまり、車両100の窓際では、車室内の熱の放出や車室外からの熱の流入が発生し易く、窓際に位置する運転手106の頸部、肩部や上腕部周辺に対する寒暖対策が求められている。尚、助手席シート(図示せず)や後部座席シート等、窓際に近い位置に着座する乗員に対しても上記同様な課題があり、その解決が求められている。
【0011】
また、図10に示す如く、車両121の窓際対策として、車両121のサイドガラス122の外側に断熱部材123を設置することも可能である。しかしながら、運転席や助手席のサイドガラス122に断熱部材123としてフィルム等を貼り合せる際には、自動車窓ガラスに関する保安基準の可視光線の透過率の問題からも、使用材料が限定される。また、上記フィルム等を準備するため、材料コストや作業コスト等の余計なコストも発生する等、上記寒暖対策に対してあまり有効な対策ではないという課題がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、車両用空調装置の吸込口が車両の窓側に配設され、吹出口から吹き出された空調風の大部分を窓側へ流すことで、車両の窓側とセンター側の寒暖差を緩和する車両用空調装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用空調装置では、車両に配設されるシートに着座する乗員の肩部または前記肩部よりも上方の前記車両に配設され、前記シートの中心よりも前記車両の車幅方向の外側に配設される吸込口と前記シートのシートクッションの前記車両の車幅方向の外側及び内側に配設される吹口と前記外側の吹出口からの吹出量と前記内側の吹出口からの吹出量とを調整可能な流量調整手段と、を有し、前記流量調整手段により前記外側の吹出口からは前記内側の吹出口よりも多くの空調風が吹き出され、前記吸込口は前記空調風を吸い込むことで、前記乗員と前記車両の窓との間に前記空調風からなる空気層を形成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車両用空調装置では、前記吸込口が前記シートのシートバックの上端部またはヘッドレストに配設されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車両用空調装置では、前記吸込口には、前記車両の車幅方向における前記吸込口の開口領域を可変させるシャッタが配設されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車両用空調装置では、前記吸込口と前記吹出口とを繋ぐ循環風路と、を有し、前記吸込口から吸い込まれた前記空調風は、前記循環風路を経由して前記吹出口から吹き出されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車両用空調装置では、前記吹出口から吹き出される前記空調風の風向を調整する吹出風向調整手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の車両用空調装置では、少なくとも前記流量調整手段または前記吹出風向調整手段を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の車両用空調装置では、前記流量調整手段は、前記吹出口の開口面積を可変させるシャッタを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用空調装置では、吹出口が乗員の着座するシート中心に対して両側に配設され、吸込口が上記シート中心に対して片側にのみ配設されている。吹出口から吹き出された空調風の大部分は吸込口から吸い込まれる。従って、窓際近傍領域に吸込口を配置することで、窓際等の熱の放出や流入の多い領域に対して空調風を多く流し、空調風による車室内の寒暖差対策を行うことができる。
【0023】
また、本発明の車両用空調装置では、吸込口がシートに着座した乗員の肩部または肩部よりも上方に配設されることで、窓際の乗員の肩部及びその周辺部に空調風が確実に供給される。そして、窓際の乗員の体の一部が積極的に暖められ、または、冷やされることで、乗員の快適性が向上される。
【0024】
また、本発明の車両用空調装置では、吸込口がシートバックの上端部またはヘッドレストに配設されることで、窓際の乗員の肩部及びその周辺部に空調風が確実に供給される。そして、窓際の乗員の体の一部が積極的に暖められ、または、冷やされることで、乗員の快適性が向上される。
【0025】
また、本発明の車両用空調装置では、吸込口にシャッタが配設され、シャッタをスライド移動させることで吸込口の開口領域が調整される。そして、例えば、吸込口から吸い込む領域が、乗員の頭部に対して空調風の温度に応じて可変することで、乗員の快適性が高められる。
【0026】
また、本発明の車両用空調装置では、吹出口から吹き出された空調風の大部分は吸込口から吸い込まれ、吸い込まれた空調風は空調装置内にて温度調整された後、再び、吹出口から吹き出される。そして、空調風がシート周囲にて空調装置を介して循環することで、空調装置の負荷が低減され、車両の省エネルギ運転が実現される。
【0027】
また、本発明の車両用空調装置では、吹出口には流量調整手段が設けられ、外側の吹出口からの空調風の吹出量と内側の吹出口からの吹出量を異ならせることができる。従って、吸込口は上記シート中心に対して片側にのみ配設されるが、空調風の流れを調整することができ、窓際等の熱の放出や流入の多い領域に対して空調風を多く流し、空調風による車室内の寒暖差対策を行うことができる。
【0028】
また、本発明の車両用空調装置では、吹出口には吹出風向調整手段が設けられ、吹出口から吹き出される空気の風向が調整される。そして、吸込口は上記シート中心に対して片側にのみ配設されるが、吹出口にて空調風の風向を調整することで、乗員の体を包み込み易い空調風を発生させることができる。
【0029】
また、本発明の車両用空調装置では、車両に取り付けられた各種センサからの検出情報や乗員による操作情報等に応じて、空調風の風量や流れが、適宜、自動制御され、乗員の快適性が向上される。
【0030】
また、本発明の車両用空調装置では、吹出口にシャッタが配設され、シャッタをスライド移動させることで吹出口の開口面積が調整される。そして、シャッタによる簡易な構造により、吹出口からの吹出量が調整され、空調風の流れが調整される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態の車両用空調装置が配設された車両を説明するための概略図である。
図2】本発明の一実施形態の車両用空調装置の構成を説明する概略図である。
図3】本発明の一実施形態の車両用空調装置が配設された助手席シートを説明するための(A)斜視図、(B)上面図である。
図4】本発明の一実施形態の車両用空調装置における空調風の流れの第1実施例を説明する(A)正面図、(B)上面図、(C)断面図である。
図5】本発明の一実施形態の車両用空調装置における空調風の流れの第1実施例を説明する(A)上面図、(B)上面図である。
図6】本発明の一実施形態の車両用空調装置における空調風の流れの第2実施例を説明する(A)正面図、(B)上面図、(C)断面図である。
図7】本発明の一実施形態の車両用空調装置における空調風の流れの第3実施例を説明する正面図である。
図8】本発明の一実施形態の車両用空調装置における空調風の流れの第4実施例を説明する正面図である。
図9】従来の車両用空気調和システムを説明する(A)概略側面図、(B)概略側面図である。
図10】従来の自動車用の熱機能構造体を適用した断熱車両を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置を図面に基づき詳細に説明する。尚、一実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0033】
図1は、本実施形態の車両用空調装置3が配設された車両1を説明するための概略側面図である。図2は、本実施形態の車両用空調装置3を説明するための概略構成図である。
【0034】
図1に示す如く、車両1のダッシュボード2の奥方には車両用空調装置3の空調ユニット7が配設されている。空調ユニット7内にて冷却または加熱された空調風が、助手席シート5に設けられた吹出口6R、6Lを介して車室内へと吹き出される。吹出口6R、6Lは、シートクッション5Aの車幅方向の内側及び外側に一対配置されている。そして、車両用空調装置3は、例えば、助手席シート5等に配設され、シート用空調装置として用いられる。尚、空調ユニット7に代えて現存のHVAC(暖房換気空調装置)を用いると共に、上記HVACに繋がるダクトを助手席シート5まで延在することにより循環風路を形成しても良い。
【0035】
詳細は後述するが、助手席シート5のシートバック5Bの上端面であり、ヘッドレスト5Cよりも車両1の窓側には吸込口24(図3(B)参照)が配置されている。吹出口6R、6Lから吹き出された空調風は、乗員Pの大腿部に沿って車両1の上方へと向かった後、吸込口24から吸い込まれる。そして、吸込口24から吸い込まれた空調風は、シートバック5Bに配設された吸込ダクト8を介して空調ユニット7へと帰還する。一方、帰還した空調風は、空調ユニット7内にて温度調整され、あるいは、その温度状態のまま、再び、送風ダクト9を介して吹出口6R、6Lから吹き出される。
【0036】
つまり、吹出口6R、6Lから吹き出された空調風の大部分は直ぐに吸込口24から吸い込まれることで、車室内の空調風が循環し、車両用空調装置3の負荷が低減され、車両1の省エネ運転が実現される。
【0037】
尚、以下の説明では、車両用空調装置3が、助手席シート5に配設される場合について説明するが、この場合に限定されるものではなく、車両用空調装置3が運転席シートや後列シートに配設される場合でも良い。
【0038】
図2に示す如く、車両用空調装置3は、主に、吹出口6R、6Lと、吸込ダクト8と、送風ダクト9と、吸込口24と、空調ユニット7と、制御部11と、日射センサ16、室温センサ17、外気温センサ18等の各種センサと、操作スイッチ19とを有している。また、空調ユニット7には、チャンバ4と、吸気ダクト12と、ブロア13と、エバポレータ14と、ヒートコア15と、が配設されている。
【0039】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、車両空調制御のための各種の演算等を実行する電子制御ユニット(ECU)である。そして、制御部11は、例えば、日射センサ16、室温センサ17、外気温センサ18等の各種センサから検出された情報に基づき各種の演算等を行うことで、車室内の室温状況等の現状を判別し、各吹出口6R、6Lからの空調風の吹出量や風向等を調整する。
【0040】
チャンバ4は、例えば、車両1のダッシュボード2(図1参照)の奥方に配設され、チャンバ4の上流側にはブロア13及び吸気ダクト12が配設されている。吸気ダクト12は外気を取り込む外気吸気ダクト12Aと内気を取り込む内気吸気ダクト12Bに分岐している。そして、外気吸気ダクト12Aと内気吸気ダクト12Bとは切替ダンパ20により切替られ、チャンバ4内へと取り込まれる空気が選択される。例えば、ブロア13及び切替ダンパ20は制御部11により制御され、モータ駆動によりブロア13が駆動し、モータ駆動により切替ダンパ20が外気吸気ダクト12Aを閉塞した場合には、内気吸気ダクト12Bから車室内の空調風が取り込まれる。
【0041】
チャンバ4内には、その上流側からクーラーユニットとしてのエバポレータ14と、ヒータユニットとしてのヒータコア15とが配設されている。エバポレータ14はチャンバ4のほぼ全断面に対して配置され、ヒートコア15はチャンバ4の約上半分の断面に対して配置されている。そして、エバポレータ14とヒートコア15との間には風路調整ダンパ21が配設され、風路調整ダンパ21によりヒートコア15を通過する風量が調整されている。例えば、風路調整ダンパ21は制御部11により制御され、モータ駆動により風路調整ダンパ21がチャンバ4の上方側を多く塞ぎ、ヒートコア15を通過する風量が減少することで、車室内へと吹き出す空調風の温度は低くなる。
【0042】
チャンバ4の下流側には送風ダクト9が接続され、送風ダクト9はシートクッション5A(図1参照)内にて右側送風ダクト9Rと左側送風ダクト9Lに分岐し、その先端にはそれぞれ吹出口6R、6Lが設けられている。送風ダクト9の分岐箇所には風量調整ダンパ22が配設され、風量調整ダンパ22は送風ダクト9の流路面積を調整し、吹出口6R、6Lから吹き出される空調風の風量が調整されている。例えば、風量調整ダンパ22は制御部11により制御され、モータ駆動により吹出口6R側の右側送風ダクト9R側が多く塞がれた場合には、吹出口6Lから吹き出される空調風の風量が多くなる。
【0043】
尚、詳細は後述するが、風量調整ダンパ22は必ずしも送風ダクト9内に配設されている場合に限定するものではなく、例えば、吹出口6R、6Lに風量を調整するシャッタやルーバが配設される場合には、風量調整ダンパ22は配設されない場合でも良い。また、風量調整ダンパ22及びシャッタやルーバを組み合わせて風量が調整される場合でも良い。
【0044】
吸込ダクト8はシートバック5B(図1参照)内に配設され、その先端には吸込口24が設けられている。そして、吸込口24は、シートバック5B上端部に対して車両1の外側にのみ配設されるため、上昇した空調風の大部分は車両1の外側へ向けて流れる。
【0045】
日射センサ16、室温センサ17、外気温センサ18等の各種センサが車両1に配設され、各センサ16、17、18が制御部11に接続している。日射センサ16は太陽からの日射量を検出するセンサであり、室温センサ17は車室内の空気温度を検出するセンサであり、外気温センサ18は車室外の空気温度を検出するセンサである。制御部11は、各センサ16、17、18等から検出された情報に基づき各種の演算等を行い、例えば、切替ダンパ20、風路調整ダンパ21、風量調整ダンパ22を駆動するモータを制御し、空調風の温度や風量等を調整する。
【0046】
操作スイッチ19が、押しボタン、回転ボタンやタッチパネル等から構成され、例えば、インストルメントパネルに配設されている。乗員P(図1参照)は、操作スイッチ19を操作することで、空調モードや空調温度、風向や風量等を調整することができる。そして、操作スイッチ19は制御部11に接続し、乗員Pによる操作スイッチ19の操作に応じて、制御部11が各種制御を行い、空調風の温度、吹出口6R、6Lから吹き出される空調風の風量等が調整される。
【0047】
図3(A)は本実施形態の車両用空調装置3が配設された助手席シート5を説明するための斜視図であり、図3(B)は本実施形態の車両用空調装置3が配設された助手席シート5を説明するための上面図である。
【0048】
図3(A)に示す如く、助手席シート5は、乗員P(図1参照)が着座するシートクッション5Aと、シートクッション5Aの後方から上方に延び乗員Pの背面を支持するシートバック5Bと、シートバック5Bの上端部に配設されるヘッドレスト5Cとを有している。
【0049】
シートクッション5Aの上面側には一対の吹出口6R、6Lが配置されている。一点鎖線は助手席シート5の車幅方向の中心線23を示すが、一対の吹出口6R、6Lは助手席シート5の中心線23に対して車幅方向に左右対称に配置されている。尚、吹出口6R、6Lは車両1の前後方向に延在した開口部として形成されているが、この形状に限定するものではない。例えば、上記開口部よりも小さい円形状の吹出口6R、6Lが車両1の前後方向に一定間隔にて複数並んで配置される場合でも良く、シートクッション5Aの上面全体に上記開口部よりも小さい円形状の吹出口6R、6Lが複数配置される場合でも良い。
【0050】
送風ダクト9はシートクッション5A内に配設され、空調ユニット7(図2参照)により冷却または加熱された空調風が送風ダクト9を介して吹出口6R、6Lから車室内へと吹き出される。吹出口6R、6Lは、例えば、シートクッション5Aの上面側の端部近傍であり、中心線23側へと傾斜した面に配置されている。そして、空調風は乗員Pの大腿部に沿って乗員Pの下半身を包み込むように、吹出口6R、6Lから車両1の上方へ向けて吹き出される。
【0051】
図3(B)に示す如く、吸込口24が配置される高さは、助手席シート5に着座する乗員Pの体型を基準として決定される。上記高さを決定する際の乗員Pの体型としては、規格化された体型モデルAM50、AM95等を適宜採用して基準とする。
【0052】
具体的には、一対の吸込口24が、シートバック5Bの上端面であり、ヘッドレスト5Cよりも車両1の外側に配置されている。そして、吸込口24は車両1の車幅方向に延在した開口部として形成されている。尚、本実施形態では、吸込口24がシートバック5Bの上端面等に対して、助手席シート5の中心線23よりも車両1の車幅方向の片側に配置されている。そして、吸込口24は上記中心線23に対して片側に配置されていれば良く、片側に複数配置される場合でも良い。
【0053】
詳細は後述するが、吸込口24がシートバック5Bの上端面であり、窓際に近い側に配置されることで、吹出口6R、6Lから吹き出された空調風の大部分が乗員Pの上半身左側に流れる。そして、夏場には乗員Pの窓際の肩部やその近傍をより積極的に冷やし、冬場には乗員Pの窓際の肩部やその近傍をより積極的に暖めることができる。
【0054】
尚、乗員Pの肩部の高さとは、腕部の付け根、即ち胴部と腕部との接続部の下部である脇の下近傍から、首の付け根近傍までの高さであり、換言すれば、肩甲骨近傍から首の付け根近傍までの高さに相当する。
【0055】
先ず、図4及び図5を用いて本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れの第1実施例を説明する。図4(A)は、本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れを説明する正面図であり、図4(B)は、本実施形態の車両用空調装置3の吸込口24を説明する上面図である。図4(C)は、図4(B)に示す吸込口のA−A線方向の断面図を示している。図5(A)は、本実施形態の車両用空調装置3の吸込口24を説明する上面図であり、図5(B)は、本実施形態の車両用空調装置3の吸込口24を説明する上面図である。
【0056】
図4(A)に示す如く、助手席シート5には乗員Pが着座しており、乗員Pの車両1の車幅方向の外側と内側には車両用空調装置3の吹出口6R、6Lが配置されている。詳細は後述するが、吹出口6R、6Lから吹き出された空調風は、吹出口6R、6Lに設けられたルーバ37(図6(C)参照)により乗員Pの中心に向かって斜め上方へと吹き出される。そして、矢印26にて示すように、空調風は乗員Pの下半身を包み込むように大腿部に沿って流れ、乗員Pの中心の大腿部上方にて合流する。その後、矢印27にて示すように、合流した空調風は乗員Pの中心に沿って車両1の上方へと流れる。このとき、乗員Pから発せられる熱により乗員Pの周囲には上昇気流が起り、乗員Pに沿って吹き出された空調風は、車両1の上方へと流れ易くなっている。
【0057】
図4(B)に示す如く、シートバック5Bの上端面には、ヘッドレスト5Cよりも車両1の外側に吸込口24が配置されている。そして、吸込口24には可動式のシャッタ28が配設され、シャッタ28は車両1の車幅方向にスライドする。シャッタ28には、例えば、砂状ハッチングにて示す略矩形形状の開口部29が形成されている。尚、シャッタ28は手動にてスライドする場合でも、制御部11(図2参照)により制御され、モータによりスライドする場合でも良い。
【0058】
図示したように、吸込口24では、シャッタ28の開口部29が全て吸込口24内に位置している。この状態では、吸込口24の開口面積が最も大きくなり、吸込口24から吸い込まれる空調風の風量が最大となる。
【0059】
ここで、車両1の窓32の近くは、夏場は直射日光や外部熱の流入により暑くなり易く、冬場は車室内の熱が放出されることで寒くなり易い環境下にあり、車両1のセンター側との寒暖差が大きくなり易い領域である。そこで、図4(A)に示すように、乗員Pの中心にて合流し上昇した空調風の大部分が、矢印30にて示すように、吸込口24に向けて流れる。その結果、車両1の窓32に近い乗員Pの左側の肩部及びその周辺に対して空調風を多く流し、乗員Pの左側の肩部及びその周辺を積極的に暖めたり、または、冷やしたりすることで、乗員Pの快適性が向上される。
【0060】
更には、図4(C)に示す如く、吸込口24のシャッタ28下方の吸込ダクト8には、
例えば、車両1の前後方向に回動自在なルーバ34が配設されている。ルーバ34を車両1の前方へと傾斜させることで、矢印30にて示すように、乗員Pの前方に沿って上昇する空調風を吸込口24から吸込み易くなる。そして、矢印30にて示すように、空調風が乗員Pの頸部、肩部や上腕部周辺を包み込むような流れとなり、乗員Pの快適性が高められる。尚、ルーバ34は手動にて動く場合でも、制御部11(図2参照)により制御され、モータにより駆動する場合でも良い。
【0061】
上述したように、車両用空調装置3では、吹出口6R、6Lから吹き出された空調風が、乗員Pを包み込むように流れた後、吸込口24から吸い込まれる。吸込口24から吸い込まれた空調風は、空調ユニット7内にて温度調整等された後、再び、吹出口6R、6Lから吹き出される。そして、車両1の各シート毎に車両用空調装置3が配設された場合には、各シート毎に空調温度を調整して利用することが可能となる。また、空調ユニット7内にて温度調整された空調風の大部分が循環することで、温度調整された空調風の発散量を低減し、繰り返し空調風を循環させ、車両用空調装置3の負荷が低減され、車両1の省エネ運転が実現される。
【0062】
尚、吸込口24から吸い込まれる空調風が、吹出口24のほぼ全体から吸い込まれる場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、図5(A)に示すように、シャッタ28を車幅方向の左側へスライドさせ、吸込口24の左側(車両1の外側)が開口する場合がある。この場合には、空調風は乗員Pの頭部から離れて車両1の窓32側へと流れる。冬場の暖房による空調風は顔に直接当たることで乗員Pに不快感を与えることもあり、シャッタ28により空調風の流れを調整し、乗員Pの快適性が高められる。一方、図5(B)に示すように、シャッタ28を車幅方向の右側へスライドさせ、吸込口24の右側(車両1のセンター側)が開口する場合がある。この場合には、空調風は乗員Pの頭部側へと流れる。夏場の冷房による空調風が乗員Pの頭部近傍を流れることで、乗員の清涼感が高められる。
【0063】
また、後述する第2実施例のように、吹出口6R、6Lから吹き出される空調風の風量を異ならせる場合でも良い。この時、吹出口6Rから吹き出される風量を吹出口6Lよりも多くすることで、空調風が乗員Pの右側から左側へと流れ、乗員Pの体全体を包み込むような流れが実現される。特に、吸込口24は、乗員Pの左側にのみ配置される構造のため、吹出口6Rから車両1の上方に向けて多くの空調風を吹き出すことで、乗員Pの体全体を包み込み易くなる。
【0064】
また、吸込口24がシートバック5Bの上端面であり、ヘッドレスト5Cよりも車両1の外側に配置される場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、吸込口24がシートバック5Bの上端面であり、ヘッドレスト5Cよりも車両1のセンター側に配置される場合でも良い。通常、冬場の車両1の始動時には車室内は全体的に冷えた状態であるが、直射日光が入り込むことで、車両1のセンター側よりも窓際の方が温かい場合がある。このような場合において、車両1のセンター側へ暖房による空調風を流すことで、乗員Pの体を早く暖めることができる。
【0065】
次に、図6(A)〜(C)を用いて本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れの第2実施例を説明する。図6(A)は、本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れを説明する正面図であり、図6(B)は、本実施形態の車両用空調装置3の吹出口6R、6Lを説明する上面図である。図6(C)は、図6(B)に示す吹出口のB−B線方向の断面図を示している。尚、第2実施例の説明の際に、上述した第1実施例を、適宜、参照する。
【0066】
図6(A)に示す如く、乗員Pが着座する助手席シート5には、乗員Pの両側のシートクッション5A上面に吹出口6R、6Lが配置され、シートバック5B上端面の車両1の外側に吸込口24が配置されている。そして、吹出口6R、6Lから吹き出される空調風の風量は調整が可能であり、図示したように、吹出口6Rを塞ぎ、吹出口6Lからのみ空調風を吹き出すことも可能である。
【0067】
ここで、図6(B)に示す如く、吹出口6R、6Lにはそれぞれ可動式のシャッタ35R、35Lが配設され、シャッタ35R、35Lは車両1の前後方向にスライドする。シャッタ35R、35Lには、それぞれ、例えば、砂状のハッチングにて示す略矩形形状の開口部36Lが形成されている。尚、シャッタ35R、35Lは手動にてスライドする場合でも、制御部11(図2参照)により制御され、モータによりスライドする場合でも良い。
【0068】
図示したように、吹出口6Rでは、シャッタ35Rによりその開口部が完全に塞がれ、吹出口6Rからは空調風が吹き出されない状態となる。一方、吹出口6Lでは、シャッタ35Lの開口部36Lが全て吹出口6L内に位置している。この状態では、吹出口6Lの開口面積が最も大きくなり、吹出口6Lから吹き出される空調風の風量が最大となる。
【0069】
また、図6(C)に示す如く、吹出口6R、6Lのシャッタ35R、35L下方の送風ダクト9R、9Lには、例えば、車両1の車幅方向に回動自在なルーバ37が配設されている。ルーバ37を車両1の車幅方向へと傾斜させることで、吹出口6R、6Lから吹き出される空調風の風向を調整することができる。
【0070】
そして、吹出口6Rはシャッタ35Rにより完全に塞がれ、吹出口6Lでは、3枚のルーバ37が車両1の上下方向に向くことで、矢印38にて示すように、空調風は吹出口6Lから車両1の上方へと吹き出される。一方、吸込口24はシートバック5Bの上端部の車両1の外側(左側)にのみ配置されている。そして、図4(B)に示すように、吸込口24から吸い込まれる空調風の風量が最大となる。
【0071】
その結果、矢印38にて示すように、吹出口6Lから車両1の上方へと吹き出された空調風は、乗員Pの左側を上昇し、矢印39にて示すように、その大部分が吸込口24から吸い込まれる。つまり、乗員Pと窓32との間に空調風による空気層が形成された状態となり、夏場には窓32から外部熱が流入しても、外部熱が乗員Pまで届き難くなり、乗員Pの左側の肩部及びその周辺が暑くなり過ぎることが防止される。また、窓32を介して直射日光が当たる乗員Pの左側の肩部及びその周辺には、冷房による空調風が流れることで、乗員Pの体が冷やされ、乗員Pの快適性が向上される。そして、車両内の窓側とセンター側の寒暖差も解消され易くなる。
【0072】
同様に、冬場には、上記空気層により窓32から車室内の熱が放出され難くなり、乗員Pの左側の肩部及びその周辺が寒くなり過ぎることが防止される。また、乗員Pの左側の肩部及びその周辺には、暖房による空調風が流れることで、乗員Pの体が暖められ、乗員Pの快適性が向上される。特に、車両1の走行時には、車両1の周囲に発生する空気の流れにより、窓32を介して車室内の熱が車外に放出され易いが、上記空気層により車両1内の窓側とセンター側の寒暖差も解消され易くなる。
【0073】
尚、第2実施例においても、吹出口6Lから吹き出された空調風が吸込口24から吸い込まれ、車両用空調装置3内を循環する効果が上述した第1実施例と同様に得られる。また、吹出口6Lからのみ空調風が吹き出され、吸込口24から空調風が吸い込まれる場合について説明したがこの場合に限定するものではない。例えば、吹出口6Rの開度がシャッタ28Rにより調整され、吹出口6Rからも空調風の一部を吹き出すことで、第1実施例と同様に空調風が乗員Pを包み込むように流れる場合でも良い。また、吹出口6R、6Lを塞ぐ手段としては、シャッタ33R、33L、ルーバ37または風量調整ダンパ22(図2参照)のいずれか1つか、あるいは、その組み合わせにより行われる場合でも良い。
【0074】
次に、図7を用いて本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れの第3実施例を説明する。図7は、本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れを説明する正面図である。尚、第3実施例の説明の際に、上述した第1実施例及び第2実施例を、適宜、参照する。
【0075】
図7に示す如く、乗員Pが着座する助手席シート5には、乗員Pの両側に吹出口6R、6Lが配置されている。一方、吸込口40が、助手席シート5に着座した乗員P上方の車両1のルーフ41に配設されている。そして、吸込口40は、助手席シート5の中心線23よりも車両1の窓32側であり、ルーフサイドレール42近傍のルーフ41にのみ配設されている。
【0076】
そして、吸込口40の構造は、上述した吸込口24と同様であり、車両1の側壁33内に配設された吸込ダクト(図示せず)を介して車両用空調装置3の空調ユニット7に接続している。また、図示しないが、吸込口40には、シャッタ及びルーバが配設されている。尚、吸込口40が、助手席シート5に着座した乗員Pの肩部周辺及び肩部よりも上方の車両1のピラー(図示せず)、ルーフサイドレール42やヘッドレスト5Cに配設される場合でも良い。
【0077】
図6(B)にて上述したように、シャッタ35R、35Lにより吹出口6R、6Lの開度を調整し、ルーバ37により空調風の風向を調整する。そして、図7の矢印43にて示すように、空調風の多くが吹出口6Rから車両1の上方へ吹き出され、矢印44にて示すように、空調風の一部が吹出口6Lから乗員Pの大腿部を包み込むように吹き出される。一方、シャッタ(図示せず)による調整により吸込口24から吸い込まれる空調風の風量が最大となる。
【0078】
そして、乗員Pの右側から上昇した空調風は、矢印45、46にて示すように、乗員Pの左側の肩部及びその周辺を通り吸込口40から吸い込まれる。その結果、車両1の窓32に近い乗員Pの左側の肩部及びその周辺へ空調風を多く流し、窓際の影響を大きく受ける乗員Pの左側の肩部及びその周辺を積極的に暖めたり、または、冷やしたりすることで、乗員Pの快適性が向上される。
【0079】
尚、第3実施例においても、第1実施例や第2実施例と同様に、空調風の循環、シャッタ等による吹出口6R、6Lからの風量の調整を行うことができる。
【0080】
次に、図8を用いて本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れの第4実施例を説明する。図8は、本実施形態の車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れを説明する正面図である。尚、第4実施例の説明の際に、上述した第1実施例から第3実施例を、適宜、参照する。
【0081】
図8に示す如く、乗員Pが着座する助手席シート5には、乗員Pの両側に吹出口6R、6Lが配置されている。一方、吸込口40は、中心線23よりも車両1の窓32側であり、ルーフサイドレール42近傍のルーフ41にのみ配設されている。
【0082】
図6(A)〜図6(C)を用いて説明した第2実施例と同様に、吹出口6Rはシャッタ35Rにより完全に塞がれ、吹出口6Lでは、3枚のルーバ37が車両1の外側上方を向くことで、図8の矢印47にて示すように、空調風は吹出口6Lから車両1の上方であり、車両1の側壁33へ向けて吹き出される。一方、シャッタ(図示せず)による調整により吸込口40から吸い込まれる空調風の風量が最大となる。
【0083】
その結果、矢印48、49にて示すように、吹出口6Lから車両1の斜め上方へと吹き出された空調風は、車両1の側壁33及び窓32に沿って車両1の上方へと流れ、その大部分が吸込口40から吸い込まれる。つまり、車両1の側壁33及び窓32に沿って空調風による空気層が形成された状態となる。そして、上記空気層が形成されることでの効果は、第2実施例と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0084】
尚、第4実施例においても、第1実施例から第3実施例と同様に、空調風の循環、シャッタ等による吹出口6R、6Lからの風量の調整を行うことができる。
【0085】
上述したように、車両用空調装置3から吹き出される空調風の流れを説明する第1実施例から第4実施例では、吹出口6R、6Lが車両1の下方に配設され、吸込口24、40が車両1の上方に配設され、空調風が車両1の下方から吹き出され、車両1の上方にて吸い込まれる場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、吹出口6R、6Lの位置と吸込口24、40の位置が入れ替わり、吹出口6R、6Lが車両1の上方に配設され、吸込口24、40が車両1の下方に配設され、空調風が車両1の上方から吹き出され、車両1の下方にて吸い込まれる場合でも良い。この場合でも、上述したように、空調風による窓際対策の他、車室内の寒暖差対策を行うことができ、同様な効果を得ることができる。
【0086】
また、吹出口6R、6Lがシートクッション5Aに配設され、吸込口24がシートバックの上端面やヘッドレストに配設される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、インテグレーテッドシートベルトが配設されたシートの場合には、シート上方側に設けられるシートベルトを挿通するための開口部を吸込口として用い、一方、シート下方側に設けられるシートベルト固定するための機構を配置する開口部を吹出口として用いる場合でも良い。また、吹出口6Rがセンターコンソールに配設され、吹出口6Lがピラーに配設される場合でも良い。
【0087】
また、吸込口24が、シートバック5Bの上端面とほぼ同一面となるように配設される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、吸込ダクト8の先端側がシートバック5Bの上端面から突出し、その先端に設けられる吸込口24が助手席シート5の前方側を向くように配設される場合でも良い。この場合には、更に、助手席シート5の前方側を流れる空調風を吸い込み易くなる効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
3 車両用空調装置
5 助手席シート
6R、6L 吹出口
7 空調ユニット
8 吸込ダクト
9 送風ダクト
11 制御部
16 日射センサ
19 操作スイッチ
20 切替ダンパ
22 風量調整ダンパ
23 中心線
24 吸込口
28 シャッタ
29 開口部
32 窓
33 側壁
34 ルーバ
35R、35L シャッタ
36L 開口部
37 ルーバ
40 吸込口
41 ルーフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10